以下、本発明を実施するための形態について図面を参照しつつ説明する。尚、本発明は、以下の実施形態に限定されず、車両の運転時に用いられる流体ブレーキ機構及び車両の駐車時に用いられる駐車バネブレーキ機構の両方が作動可能なブレーキシリンダ装置に用いられ、駐車バネブレーキ機構の作動を解放する、駐車ブレーキ手動解放装置に関して、広く適用することができるものである。また、本発明は、その駐車ブレーキ手動解放装置を備えるブレーキシリンダ装置、そのブレーキシリンダ装置を備えるブレーキ装置に関して、広く適用することができるものである。
尚、本実施形態の駐車ブレーキ手動解放装置、ブレーキシリンダ装置、及びブレーキ装置については、鉄道車両用として用いられる場合を例にとって説明する。また、本実施形態では、ブレーキ装置が踏面ブレーキ装置として構成された形態を例にとって説明するが、この通りでなくてもよい。即ち、本発明は、踏面ブレーキ装置以外のブレーキ装置に対しても適用することができる。例えば、本発明は、ディスクブレーキ装置として構成されたブレーキ装置に対しても適用することができる。
[ブレーキ装置]
図1は、本発明の一実施の形態に係るブレーキ装置1の一部断面を含む図である。図2は、図1に示すブレーキ装置1の一部を拡大して示す図であって、本発明の一実施の形態に係るブレーキシリンダ装置2を示す図である。図1及び図2に示すブレーキ装置1は、図示が省略された鉄道車両(本実施形態における車両)に設置される。尚、図1は、ブレーキ装置1が鉄道車両に設置された状態で、鉄道車両の車輪100の車軸方向からブレーキ装置1を見た図である。
図1及び図2に示すように、ブレーキ装置1は、ブレーキシリンダ装置2、ブレーキ出力部11、ロッド12、ロッド支持機構13、ロッド駆動部14、等を備えて構成されている。ブレーキ装置1は、踏面ブレーキ装置として構成されている。そして、ブレーキ装置1は、ブレーキシリンダ装置2が作動することで、ブレーキシリンダ装置2に対して相対移動可能に支持されたブレーキ出力部11が、ロッド駆動部14及びロッド12を介して駆動され、ブレーキ力を出力するように構成されている。
尚、ロッド12は、車輪100の車軸方向に対して直交する方向に沿って延びるように設置されている。一方、ブレーキシリンダ装置2は、そのシリンダ本体23の軸方向が、ロッド12が延びる方向に対して略直交する方向に沿って延びるように、設置されている。そして、本実施形態では、ブレーキシリンダ装置2は、そのシリンダ本体23の軸方向が、車輪100が設けられる鉄道車両の上下方向に沿って延びるように、設置されている。
ブレーキ出力部11は、制輪子として設けられ、ブレーキ出力部11は、ロッド12に連動して駆動されてブレーキ力を出力するように設けられている。そして、ブレーキ出力部11は、ライニング15、ライニング保持部16、等を備えて構成されている。
ライニング15には、車輪100の踏面100aに対して当接可能な制動面15aが設けられている。ブレーキ出力部11がロッド12によって駆動されることで、ライニング15の制動面15aが車輪100の踏面100aに当接して押し付けられる。そして、制動面15aが踏面100aに押し付けられることによって生じる摩擦により、車輪100の回転が制動される。
ライニング保持部16は、ライニング15が固定され、ライニング15を保持する部材として設けられている。また、ライニング保持部16は、ロッド12の先端側の端部に対して、揺動自在に連結されている。尚、ロッド12の先端側は、ブレーキシリンダ装置2のシリンダ本体23から突出した状態で配置されている。また、ライニング保持部16は、シリンダ本体23に対して揺動自在に連結されたハンガー部材17に対しても揺動可能に連結されている。
ロッド12は、ブレーキシリンダ装置2の作動に伴って駆動され、ブレーキシリンダ装置2からの出力をブレーキ出力部11に伝達する軸部材として設けられている。ロッド12は、ブレーキシリンダ装置2がブレーキ力を出力する際の作動に伴って、シリンダ本体23から突出する方向(図2にて矢印Aで示す方向)に移動する。これにより、ロッド12は、ライニング15を車輪100に押し付けてブレーキ力を発生させる。また、ロッド12は、ブレーキシリンダ装置2がブレーキ力を解除する際の作動に伴ってシリンダ本体23に退避する方向(図2にて矢印Bで示す方向)に移動する。これにより、ロッド12は、ライニング15を車輪100から離間させてブレーキ力を解除する。
ロッド支持機構13は、シリンダ本体23の内部に設置されている。このロッド支持機構13は、ロッド12をシリンダ本体23に対して揺動可能且つ変位可能に支持する機構として設けられている。そして、ロッド支持機構13には、外側ケース部18、内側ケース部19、固定ローラ20、可動ローラ21、戻しバネ22、等が備えられている。
外側ケース部18は、筒状の部分を備えて構成されており、本実施形態では、2つの筒状の部材が直列に組み合わされて構成されている。外側ケース部18の内側には、内側ケース部19、ロッド12のブレーキ出力部11に連結される先端側と反対側の端部、等が収納されている。そして、外側ケース部18は、シリンダ本体23に対して、ロッド12の軸方向と平行な方向に沿ってスライド移動自在に支持されている。尚、ロッド12は、その軸方向が車輪100の車軸方向に対してほぼ直交する方向に沿って延びるように、配置されている。
内側ケース部19は、外側ケース部18の内側に収納されている。そして、内側ケース部19には、ロッド12の先端側と反対側の端部の外周に設けられた外周ねじ部12aに螺合するねじ溝が内周に形成されたねじ穴19aが設けられている。尚、ロッド支持機構13には、外周ねじ部12aのねじ穴19aに対する螺合位置を変位させることで、ロッド12の内側ケース部19に対する相対位置を変位させる、位置調整機構が設けられている。
また、内側ケース部19には、その外周に、球面の一部を成すような球面状の外周曲面bが設けられている。そして、外側ケース部18には、内側ケース部19の外周曲面19bに対して摺動自在な内周曲面18aが設けられている。内周曲面18aは、球面の一部を成すような凹み球面状の曲面として形成されるとともに、外周曲面19bの曲率に対応する曲率の曲面として構成されている。摺動する外周曲面19bと内周曲面18aとにより、内側ケース部19と外側ケース部18とにおいては、球面軸受が構成されている。この球面軸受により、内側ケース部19が外側ケース部18に対して揺動自在に支持され、ロッド12がシリンダ本体23に対して揺動可能に支持されている。
固定ローラ20は、シリンダ本体23に対する相対位置が固定されるとともにシリンダ本体23に回転自在に支持された円筒状のローラとして構成されている。固定ローラ20は、例えば、ロッド12の軸方向と平行な方向である外側ケース部18の軸方向に直行する方向において、外側ケース部18の両側に一対で設けられている。
可動ローラ21は、外側ケース部18の壁部に対して外側で回転自在に支持された円筒状のローラとして構成されている。可動ローラ21は、例えば、外側ケース部18の軸方向に直行する方向において、外側ケース部18の両側に一対で設けられている。そして、各可動ローラ21は、その外周が各固定ローラ20に対向する位置で、各固定ローラ20に対して離間して配置されている。
更に、可動ローラ21は、回転することで、シリンダ本体23に対して転動して相対変位可能に支持されている。また、シリンダ本体23には、ロッド12の軸方向とほぼ平行な方向に沿って可動ローラ21を転動させるガイド部(図示省略)が設けられている。尚、可動ローラ21は、外側ケース部18に回転自在に支持されていなくてもよい。例えば、外側ケース部18に開口が設けられ、その開口を介して、可動ローラ21が内側ケース部19に対して回転自在に支持されていてもよい。
戻しバネ22は、一端側の端部がシリンダ本体23の内側の段部に対して当接し、他端側の端部が外側ケース部18の内側の段部に対して当接するコイルバネとして設けられている。そして、戻しバネ22は、圧縮された状態で設置されている。
戻しバネ22は、上記のように設置されていることで、ロッド12の軸方向と略平行な方向に沿って、シリンダ本体23に対して外側ケース部18を車輪100から離間する方向(図2における矢印B方向)に付勢するように構成されている。戻しバネ22が、車輪100から離間する方向に外側ケース部18を付勢することで、外側ケース部18とともに、内側ケース部19及びこれに螺合するロッド12が、車輪100から離間する方向に付勢されることになる。この戻しバネ22の付勢力により、ブレーキシリンダ装置2がブレーキ力を解除する際の作動に伴う後述のロッド駆動部14の変位に伴って、ロッド12が、シリンダ本体23に退避する方向に移動することになる。
ロッド駆動部14は、ブレーキシリンダ装置2の作動に伴ってロッド支持機構13を介してロッド12を駆動する部材として設けられている。ロッド駆動部14は、シリンダ本体23の内部に収納されている。そして、ロッド駆動部14は、楔状に形成された楔状部分14aを有する楔体として設けられている。また、ロッド駆動部14は、楔状部分14aが突出する基端部14bにおいて、ブレーキシリンダ装置2における後述の第1ピストン31に対して固定されている。
楔状部分14aは、基端部14bからロッド支持機構13に向かって突出するように設けられている。そして、楔状部分14aは、基端部14b側からロッド支持機構13側に向かって先細り形状の楔状に形成されている。楔状部分14aの先端側、即ち、楔状部分14aにおける基端部14b側と反対側は、固定ローラ20と可動ローラ21との間に挿入された状態で配置されている。また、楔状部分14aにおける固定ローラ20と可動ローラ21との間に挿入された先端側は、固定ローラ20の外周と可動ローラ21の外周とに接触するように、配置されている。尚、楔状部分14aは、固定ローラ20及び可動ローラ21の各組合せに対応して複数設けられていてもよい。また、楔状部分14aは、固定ローラ20及び可動ローラ21の複数の組み合わせのうちのいずれか1つの組み合わせに対応して1つ設けられていてもよい。
ブレーキシリンダ装置2のブレーキ力を出力する際の作動に伴って第1ピストン31がロッド支持機構13に向かって移動すると、第1ピストン31とともに、ロッド駆動部14もロッド支持機構13に向かって移動する。そして、ロッド駆動部14の移動に伴って、楔状部分14aに接触する固定ローラ20は、シリンダ本体23に対して同じ位置で回転する。一方、楔状部分14aに接触する可動ローラ21は、ロッド駆動部14の移動に伴って、楔状部分14aによって車輪100側に向かって(図2の矢印A方向にむかって)付勢される。
上記により、可動ローラ21は、回転しながら、シリンダ本体23に対して転動しながら車輪100側に向かって相対移動する。即ち、ロッド駆動部14の移動に伴って、楔状部分14aによって、固定ローラ20と可動ローラ21との間の間隔が広がるように、可動ローラ21が駆動される。そして、可動ローラ21とともに、外側ケース部18、内側ケース部19及びロッド12が、車輪100側に向かって移動することになる。これにより、ロッド12とともに移動するブレーキ出力部11のライニング15が車輪100の踏面100aに当接し、車輪100の回転が制動されることになる。
[ブレーキシリンダ装置]
次に、ブレーキシリンダ装置2について詳しく説明する。図3は、図2に示すブレーキシリンダ装置2の一部を拡大して示す図である。ブレーキシリンダ装置2は、ブレーキ装置1に組み込まれた状態で、鉄道車両に設置される。そして、図1乃至図3に示すように、ブレーキシリンダ装置2は、シリンダ本体23、流体ブレーキ機構24、駐車バネブレーキ機構25、軸部26、伝達機構27、ロック機構28、本発明の一実施の形態に係る駐車ブレーキ手動解放装置3、等を備えて構成されている。ブレーキシリンダ装置2における上記の各機構等は、例えば、鉄系材料等の金属材料を素材とする構成要素を主要な構成要素として形成されている。
また、本実施形態では、ブレーキシリンダ装置2は、圧力流体としての圧縮空気によって作動するように構成されている。即ち、流体ブレーキ機構24及び駐車バネブレーキ機構25は、圧力流体として圧縮空気の供給及び排出が行われることで作動するように構成されている。そして、ブレーキシリンダ装置2は、流体ブレーキ機構24及び駐車バネブレーキ機構25の両方が作動可能な装置として構成されている。
シリンダ本体23は、筒状に形成された部分を有し、内側に流体ブレーキ機構24、駐車バネブレーキ機構25、軸部26、伝達機構27、前述のロッド支持機構13、前述のロッド駆動部14、等を収納している。また、シリンダ本体23には、ロック機構28、駐車ブレーキ手動解放装置3、前述のブレーキ出力部11、前述のロッド12、等が設置されている。そして、シリンダ本体23は、例えば、鉄道車両の台車に固定されて設置されている。尚、シリンダ本体23の軸方向と、後述する流体ブレーキ機構24の第1ピストン31の中心軸線方向と、後述する駐車バネブレーキ機構25の第2ピストン35の中心軸線方向と、後述する軸部26のスピンドル38の軸方向とは、一致する方向として又は互いに平行な方向として構成されている。
また、シリンダ本体23には、第1ポート37a及び第2ポート37bが設けられている。第1ポート37aは、圧力流体供給源としての第1の圧縮空気供給源(図示省略)に接続されている。第2ポート37bは、圧力流体供給源である第2の圧縮空気供給源(図示省略)に接続されている。
第1の圧縮空気供給源から供給される圧縮空気(圧力流体)は、上位のコントローラ(図示省略)からの指令に基づいて作動するブレーキ制御装置(図示省略)を介して第1ポート37aに供給される。そして、第1ポート37aからシリンダ本体23内に供給された圧縮空気は、上記のコントローラからの指令に基づいて上記のブレーキ制御装置を介して排出される。また、第2の圧縮空気供給源から供給される圧縮空気(圧力流体)は、上記のコントローラからの指令に基づいて作動する駐車バネブレーキ制御電磁弁(図示省略)を介して第2ポート37bに供給される。そして、第2ポート37bからシリンダ本体23内に供給された圧縮空気は、上記のコントローラからの指令に基づいて上記の駐車バネブレーキ制御電磁弁を介して排出される。
流体ブレーキ機構24は、圧力流体としての圧縮空気の給排によって作動する。この流体ブレーキ機構24は、鉄道車両の運転時のブレーキ動作のために用いられる常用ブレーキ機構として設けられている。そして、流体ブレーキ機構24は、第1圧力室29、第1バネ30、第1ピストン31、等を備えて構成されている。
第1圧力室29は、シリンダ本体23内において第1ピストン31によって区画されることで形成されている。そして、第1圧力室29は、第1ポート37aに連通しており、前述の第1の圧縮空気供給源からの圧縮空気が供給される。また、第1圧力室29に供給された圧縮空気は、第1ポート37aから排出される。
第1バネ30は、シリンダ本体23内において第1ピストン31によって区画された領域に配置されており、第1ピストン31を介して第1圧力室29に対向するように配置されている。第1バネ30は、本実施形態では、圧縮された状態でシリンダ本体23内に配置されて第1ピストン31を付勢するコイルバネとして設けられている。そして、第1バネ30は、その一端側の端部が第1ピストン31に当接してこの第1ピストン31を付勢するように配置されている。また、第1バネ30は、その他端側の端部がシリンダ本体23の内壁に固定されたバネ受けプレート32に当接して支持されている。
第1ピストン31は、シリンダ本体23内で往復動自在に配置されるとともに、シリンダ本体23の内壁に対して摺動自在に配置されている。そして、第1ピストン31は、第1ポート37aから第1圧力室29に圧縮空気が供給されることで、圧縮された第1バネ30の弾性回復による付勢力に抗して移動するように構成されている。従って、流体ブレーキ機構24は、第1圧力室29と第1バネ30とが対向して作用する第1ピストン31を有し、第1圧力室29に圧縮空気が供給されることで第1バネ30の付勢力に抗して第1ピストン31が所定のブレーキ作動方向(図3にて矢印Cで示す方向)に移動するように構成されている。
また、第1ピストン31には、第1圧力室29側と反対側において、ロッド駆動部14の基端部14bが固定されている。これにより、第1ピストン31が上記のブレーキ作動方向に移動すると、ロッド駆動部14は、第1ピストン31とともに、そのブレーキ作動方向に移動する。そして、ロッド駆動部14が第1ピストン31とともにブレーキ作動方向に移動することで、前述のロッド支持機構13を介してロッド12が駆動される。これにより、ロッド12によって駆動されるブレーキ出力部11からブレーキ力が出力される。
駐車バネブレーキ機構25は、鉄道車両の駐車時にブレーキ状態を維持するために用いられる駐車用のブレーキ機構として設けられている。そして、駐車バネブレーキ機構25は、第2圧力室33、第2バネ34、第2ピストン35、等を備えて構成されている。
第2圧力室33は、シリンダ本体23内において第2ピストン35によって区画されることで形成されている。そして、第2圧力室33は、第2ポート37bに連通しており、前述の第2の圧縮空気供給源からの圧縮空気が供給される。また、第2圧力室33に供給された圧縮空気は、第2ポート37bから排出される。
第2バネ34は、シリンダ本体23内において第2ピストン35によって区画された領域に配置されており、第2ピストン35を介して第2圧力室33に対向するように配置されている。第2バネ34は、本実施形態では、圧縮された状態でシリンダ本体23内に配置されて第2ピストン35を付勢するコイルバネとして設けられている。そして、第2バネ34は、その一端側の端部がシリンダ本体23の端部の内壁に当接して支持されている。また、第2バネ34は、その他端側の端部が第2ピストン35に当接してこの第2ピストン35を付勢するように配置されている。また、本実施形態では、第2バネ34は、複数(2つ)設けられている。そして、複数の第2バネ34は、同一の中心軸線を中心とした同心状に配置されている。
第2ピストン35は、シリンダ本体23内で往復動自在に配置されるとともに、シリンダ本体23の内壁に対して摺動自在に配置されている。そして、第2ピストン35は、第1ピストン31と同一の方向に移動可能に設けられている。そして、第2ピストン35は、第2ポート37bから第2圧力室33に圧縮空気が供給されることで、圧縮された第2バネ34の弾性回復による付勢力に抗して、前述のブレーキ作動方向とは反対方向のブレーキ解除方向(図3にて矢印Dで示す方向)に移動するように構成されている。一方、第2ピストン35は、第2圧力室33内に供給された圧縮空気が第2ポート37bを通じて排出されることで、第2バネ34の付勢力によりブレーキ作動方向(図3にて矢印Cで示す方向)に移動するように構成されている。従って、駐車バネブレーキ機構25は、第2圧力室33と第2バネ34とが対向して作用する第2ピストン35を有し、第2圧力室33に圧縮空気が供給されている状態から排出される状態へと移行することで第2バネ34の付勢力により第2ピストン35がブレーキ作動方向に移動するように構成されている。
尚、第2ピストン35において第2圧力室33に対向する端部は、シリンダ本体23の周方向に沿って延びるリング状の端部として形成されている。一方、シリンダ本体23には、第2ピストン35のリング状の端部の内側で周方向に沿って筒状に形成された内側筒状部36が設けられている。そして、第2ピストン35のリング状の端部は、シリンダ本体23の内壁に対して摺動するとともに内側筒状部36の外周に対しても摺動するように配置されている。
軸部26は、スピンドル38、軸受39、等を備えて構成されている。そして、軸部26は、スピンドル38の端部において第1ピストン31に連結され、第1ピストン31とともに変位するように設けられている。
スピンドル38は、第1ピストン31に対して、ロッド駆動部14がブレーキ作動方向に向かって突出するように固定される側と反対側であるブレーキ解除方向に向かって突出するように配置されている。このスピンドル38は、第1ピストン31とは別体に形成された軸状の部材として設けられている。そして、スピンドル38は、後述の伝達機構27とともに駐車バネブレーキ機構25からの付勢力を第1ピストン31に伝達するように構成されている。
また、スピンドル38は、第1ピストン31に連結される側の端部において、外周に沿って周方向に延びる凸状の段部38aが設けられている。そして、第1ピストン31の径方向における中央部分には、凹み部分が設けられ、この凹み部分の内周には、段部38aに対して係合する縁状に形成されたスピンドル保持部31aが設けられている。第1ピストン31におけるスピンドル保持部31aは、第1ピストン31がブレーキ作動方向に移動するときに、スピンドル38の端部の段部38aと係合し、スピンドル38をブレーキ作動方向に付勢する。
軸受39は、例えば、ボール状の部材として設けられ、駐車バネブレーキ機構25からの付勢力によってスピンドル38に作用するスラスト荷重を受ける軸受として構成されている。そして、軸受39は、第1ピストン31の中央部分に設けられた上記の凹み部分に配置され、スピンドル38の端部と第1ピストン31との間で両者に当接した状態で配置されている。駐車バネブレーキ機構25からの付勢力は、後述の伝達機構27、スピンドル38、及び軸受39を介して、第1ピストン31に伝達される。
伝達機構27は、駐車バネブレーキ機構25における第2ピストン35のブレーキ作動方向の付勢力を第1ピストン31とともに変位する軸部26に伝達する機構として設けられている。伝達機構27は、噛み合い式のクラッチ機構を含む機構として構成されている。そして、伝達機構27は、ねじ部40、クラッチホイール41、クラッチスリーブ42、クラッチボックス43、等を備えて構成されている。
尚、伝達機構27は、第2ピストン35の径方向における内側に配置されている。第2ピストン35には、径方向の内側において、流体ブレーキ機構24側と反対側が外部に対して閉じられた状態の筒状の領域を区画する内側筒状部35aが設けられている。そして、内側筒状部35aの内側の筒状の領域に、伝達機構27の一部が配置されている。
ねじ部40は、スピンドル38に一体に形成されたおねじ部分として設けられている。そして、ねじ部40は、スピンドル38における第1ピストン31に連結される側と反対側の部分の外周に形成されている。
クラッチホイール41は、ねじ部40に螺合する筒状のナット部材として設けられている。クラッチホイール41とねじ部40が設けられたスピンドル38とは、同一の中心軸線を中心とした同心状に配置されている。そして、クラッチホイール41には、内周にねじ部40に螺合するめねじ部分が設けられている。また、クラッチホイール41は、筒状に形成されたクラッチボックス43の内側に配置され、クラッチボックス43に対して、一対の軸受44を介して回転自在に支持されている。これにより、クラッチホイール41は、スピンドル38とクラッチボックス43との相対移動に伴って、ねじ部40に対して螺合する相対位置を変えながら、スピンドル38に対して回転して軸方向に相対変位可能に構成されている。
クラッチスリーブ42は、筒状の部材として設けられ、クラッチボックス43の内側に配置されている。そして、クラッチスリーブ42は、クラッチボックス43に対して、スピンドル38の軸方向と平行な方向に沿ってスライド移動自在に支持されている。また、クラッチスリーブ42は、クラッチホイール41に対して、第1ピストン31と反対側に配置されている。そして、クラッチスリーブ42のブレーキ作動方向における端部(第1ピストン31側の端部)は、クラッチホイール41のブレーキ解除方向における端部(第1ピストン31側と反対側の端部)に対して対向して配置されている。
また、クラッチスリーブ42のブレーキ解除方向における端部、即ち、クラッチスリーブ42のクラッチホイール41に対向する側と反対側の端部は、軸受45を介して、第2ピストン35における内側筒状部35aの端部に対して支持されている。軸受45は、第2ピストン35の付勢力をクラッチスリーブ42に伝達するスラスト軸受として設けられている。そして、軸受45は、クラッチスリーブ42の端部を第2ピストン35に対してスピンドル38の中心軸線を中心として回転可能に支持している。
また、クラッチスリーブ42及びクラッチホイール41における互いに対向する端部には、回転止め機構46が設けられている。回転止め機構46は、クラッチホイール41に設けられた凹凸歯46aと、クラッチスリーブ42に設けられた凹凸歯46bとで構成されている。凹凸歯46aは、クラッチホイール41におけるクラッチスリーブ42に対向する側の端部に形成され、クラッチホイール41の端部の周方向に亘って設けられている。凹凸歯46bは、クラッチスリーブ42におけるクラッチホイール41に対向する側の端部に形成され、クラッチスリーブ42の端部の周方向に亘って設けられている。凹凸歯46a及び凹凸歯46bは、互いに対向するクラッチホイール41の端部とクラッチスリーブ42の端部とが当接することで、互いに噛み合う形状の歯として形成されている。
第2ピストン35がブレーキ作動方向に移動してスピンドル38に対して相対移動すると、クラッチスリーブ42も第2ピストン35とともにスピンドル38に対して相対移動する。そして、クラッチスリーブ42は、スピンドル38に螺合したクラッチホイール41に当接する。このとき、クラッチホイール41の凹凸歯46aとクラッチスリーブ42の凹凸歯46bとが、噛み合うことになる。尚、クラッチスリーブ42は、クラッチボックス43に対して、軸方向にのみ変位可能で回転方向の変位が規制されている。このため、凹凸歯46aと凹凸歯46bとが噛み合うと、クラッチボックス43に対するクラッチホイール41の相対回転が規制されて止められることになる。このように、回転止め機構46は、クラッチホイール41の回転を止めるための機構として設けられている。
クラッチボックス43は、ねじ部40、クラッチホイール41、及びクラッチスリーブ42が内側に配置される筒状の部材として設けられている。また、クラッチボックス43は、シリンダ本体23の内側において、シリンダ本体23の内側筒状部36及び第2ピストン35の内側筒状部35aの内側に配置されている。そして、クラッチボックス43は、シリンダ本体23の内側筒状部36の内周と第2ピストン35の内側筒状部35aの内周とに対して、スピンドル38の軸方向と平行な方向に沿って摺動して変位可能に支持されている。また、クラッチボックス43は、後述するロック機構28のラッチ部材49が係合していない状態では、シリンダ本体23の内側筒状部36の内周と第2ピストン35の内側筒状部35aの内周とに対して、周方向にも摺動して変位可能に支持されている。即ち、上記の状態では、クラッチボックス43は、シリンダ本体23及び第2ピストン35に対して、スピンドル38の中心軸線を中心として回転可能に支持されている。
また、クラッチボックス43は、内側に、内周に沿って延びる段部43aが設けられている。この段部43aに対して、前述の一対の軸受44が取り付けられている。これにより、クラッチボックス43は、一対の軸受44を介して、クラッチホイール41を回転自在に保持している。
また、クラッチボックス43の内周は、クラッチスリーブ42の外周に対して摺動自在に接触している。そして、クラッチボックス43は、内側において、クラッチスリーブ42をスピンドル38の軸方向と平行な方向に沿ってスライド移動自在に支持している。尚、クラッチボックス43には、内側に突出した突起状の突出部43bが設けられている。クラッチボックス43の内周から内側に突出した突出部43bの端部は、クラッチスリーブ42の外周においてスピンドル38の軸方向と平行な方向に延びるように形成された溝に対して、摺動自在に嵌め込まれている。これにより、クラッチスリーブ42がクラッチボックス43に対してスピンドル38の軸方向と平行な方向にスライド移動する際に、そのスライド移動方向がガイドされるように構成されている。
また、クラッチボックス43のシリンダ本体23及び第2ピストン35に対する相対位置は、位置調整バネ(47a、47b)によって調整されている。位置調整バネ47aと位置調整バネ47bとが、クラッチボックス43を互いに逆方向に付勢することで、クラッチボックス43のシリンダ本体23及び第2ピストン35に対する相対位置が調整される。
より具体的には、位置調整バネ47aは、圧縮された状態のコイルバネとして設けられ、クラッチボックス43のブレーキ作動方向における端部側でクラッチボックス43の内側に配置されている。そして、位置調整バネ47aは、ブレーキ作動方向における端部が、シリンダ本体23に対して支持されている。より詳細には、位置調整バネ47aのブレーキ作動方向における端部は、内側筒状部36の内周の周方向に沿って延びるとともにこの内周から内側に突出したフランジ状部分36aに対して支持されている。一方、位置調整バネ47aのブレーキ解除方向における端部は、クラッチボックス43の段部43aに対して支持されている。上記の構成により、位置調整バネ47aは、シリンダ本体23に対してクラッチボックス43をブレーキ解除方向に付勢している。
位置調整バネ47bは、圧縮された状態のコイルバネとして設けられ、クラッチボックス43のブレーキ解除方向における端部側でクラッチボックス43の外側に配置されている。そして、位置調整バネ47bは、ブレーキ作動方向における端部が、クラッチボックス43に対して支持されている。より詳細には、位置調整バネ47bのブレーキ作動方向における端部は、クラッチボックス43の筒状の部分の外周に取り付けられたリング43cに当接し、クラッチボックス43に対して支持されている。一方、位置調整バネ47bのブレーキ解除方向における端部は、第2ピストン35に対して支持されている。より詳細には、位置調整バネ47bのブレーキ解除方向における端部は、第2ピストン35の内側筒状部35aに形成された段状の部分に対して当接して支持されている。上記の構成により、位置調整バネ47bは、第2ピストン35に対してクラッチボックス43をブレーキ作動方向に付勢している。
上記のように、位置調整バネ47bは、クラッチボックス43を位置調整バネ47a側に向かって位置調整バネ47aと反対方向に付勢している。これらの位置調整バネ(47a、47b)により、クラッチボックス43のシリンダ本体23及び第2ピストン35に対する相対位置が調整される。
また、クラッチボックス43の段部43aとクラッチスリーブ42のブレーキ作動方向における端部との間には、離間用バネ48が設置されている。離間用バネ48は、圧縮された状態のコイルバネとして設けられている。そして、離間用バネ48は、クラッチホイール41の凹凸歯46aとクラッチスリーブ42の凹凸歯46bとを互いに離間させる方向に付勢するバネとして設けられている。
図4は、図1に示すブレーキ装置1の一部を拡大して示す図であって、駐車ブレーキ手動解放装置3とその近傍とを示す図である。また、図4では、ブレーキシリンダ装置2におけるロック機構28の一部も図示されている。
図1乃至図4に示すロック機構28は、第1圧力室29及び第2圧力室33を内側に区画するシリンダ本体23から外側に一端側が突出するラッチ部材49を有している。そして、ロック機構28は、ラッチ部材49の他端側が伝達機構27のクラッチボックス43に係合することで、駐車バネブレーキ機構25の作動時に軸部26の第2ピストン35に対する相対変位を規制して駐車バネブレーキ機構25を作動させたままロック状態とする機構として構成されている。また、ロック機構28は、更に、ラッチ付勢バネ50、ラッチロックピン51、等も備えて構成されている。
ラッチ部材49は、その長手方向が、シリンダ本体23の軸方向に直交する方向に沿って、即ち、シリンダ本体23の径方向に沿って延びるように配置されている。そして、ラッチ部材49は、シリンダ本体23の径方向に沿ってスライド移動可能なように、シリンダ本体23に対して支持されている。
また、ラッチ部材49は、その長手方向における一端側の端部がシリンダ本体23から外側に突出した状態で、配置されている。尚、ラッチ部材49の一端側は、シリンダ本体23に取り付けられてラッチ部材49のシリンダ本体23の外部への脱落を防止する脱落防止部材52によって、支持されている。脱落防止部材52には、ラッチ部材49の一端側が貫通する貫通孔が設けられている。そして、ラッチ部材49の他端側には、脱落防止部材52の貫通孔の直径寸法よりも寸法が大きくなるように段状に広がった段部49aが設けられている。これにより、ラッチ部材49が脱落防止部材52の貫通孔を通過してシリンダ本体23の外部に脱落してしまうことが防止される。
また、ラッチ部材49は、その長手方向における他端側の端部の先端に、クラッチボックス43に設けられたラッチ刃43dに対して係合する係合刃49bが設けられている。ラッチ刃43dは、ラッチ部材49の係合刃49bに噛み合って係合する刃として設けられている。そして、ラッチ刃43dは、クラッチボックス43のブレーキ作動方向における端部の外周に沿って多数並んで設けられている。
また、ラッチ刃43d及び係合刃49bは、刃先がスピンドル38の軸方向と平行な方向に沿って延びるように構成されている。そして、ラッチ刃43dのいずれかに係合刃49bが係合していることで、シリンダ本体23に対するクラッチボックス43の相対回転が止められた状態が維持されることになる。即ち、スピンドル38の中心軸線を中心とするクラッチボックス43のシリンダ本体23内での回転が、ラッチ刃43dと係合刃49bとの係合によって規制される。そして、ラッチ刃43dと係合刃49bとの係合が解除されない限り、そのクラッチボックス43の回転が止められた状態が維持されることになる。
ラッチ付勢バネ50は、ラッチ部材49をシリンダ本体23の内側に向かって付勢するバネとして設けられる。ラッチ付勢バネ50は、ラッチ部材49の長手方向において圧縮された状態でラッチ部材49の周囲に配置されたコイルバネとして設けられている。そして、ラッチ付勢バネ50は、その一方の端部が、ラッチ部材49の一端側に配置され、その他方の端部が、ラッチ部材49の他端側に配置されている。より詳細には、ラッチ付勢バネ50の一方の端部が、シリンダ本体23に取り付けられた脱落防止部材52に対して当接して支持されている。そして、ラッチ付勢バネ50の他方の端部が、ラッチ部材49の段部49aに当接して支持されている。
上記により、ラッチ付勢バネ50は、シリンダ本体23に対して、ラッチ部材49をクラッチボックス43側に向かって付勢するように構成されている。即ち、ラッチ付勢バネ50は、ラッチ部材49の係合刃49bをクラッチボックス43のラッチ刃43dに係合させる方向に付勢するように構成されている。
ラッチロックピン51は、ピン状の部材として設けられ、その長手方向がスピンドル38の軸方向と平行に延びるように配置されている。そして、ラッチロックピン51は、シリンダ本体23に対して、スピンドル38の軸方向と平行な方向に沿ってスライド移動自在に支持されている。尚、本実施形態では、シリンダ本体23の軸方向、スピンドル38の軸方向、及びラッチロックピン51の長手方向は、上下方向、即ち鉛直方向を向くように設定されている。このため、ラッチロックピン51は、シリンダ本体23に対して、重力によって下方に落下する方向にスライド移動可能に支持されている。
また、ラッチロックピン51は、ブレーキ作動方向における端部側、即ち、下端側が、ラッチ部材49に設けられた貫通孔49cに挿入されている。ラッチ部材49の貫通孔49cは、ラッチ部材49における係合刃49bが設けられる他端側に形成され、スピンドル38の軸方向と平行な方向に沿ってラッチ部材49を貫通するように形成されている。
また、ラッチ部材49には、貫通孔49cの中心側に向かって突出する突起状のロックピン押し上げ部49dが設けられている。そして、ラッチロックピン51のブレーキ作動方向における端部には、スピンドル38の軸方向に対して斜めの方向に広がったテーパ面51aが設けられている。テーパ面51aは、ラッチ部材49の貫通孔49c内において、ロックピン押し上げ部49dに当接可能に配置されている。これにより、ラッチ部材49がラッチ付勢バネ50に付勢されてクラッチボックス43に向かって移動したときには、ロックピン押し上げ部49dがテーパ面51aに対して摺動することで、ラッチロックピン51が上方に押し上げられることになる。
一方、後述する駐車ブレーキ手動解放装置3が操作されることで、ラッチ部材49がラッチ付勢バネ50の付勢力に抗してクラッチボックス43から離間する方向に移動したときには、ラッチロックピン51は、所定の距離を落下し、貫通孔49cを貫通して下方に移動する。そして、シリンダ本体23には、ラッチ部材49をスライド移動自在に支持する部分であって、ラッチロックピン51の下端部(ブレーキ作動方向における端部)に対向する箇所には、逃がし孔53が設けられている。このため、ラッチロックピン51が上記のように貫通孔49cを貫通して移動したときには、ラッチロックピン51におけるテーパ面51aが設けられている下端部は、逃がし孔53に挿入された状態となる。尚、逃がし孔53に挿入されたラッチロックピン51の端部は、第1ピストン31に当接して支持される。
また、ラッチロックピン51は、駐車バネブレーキ機構25が作動した状態で、ブレーキ解除方向における端部、即ち、上端部において、第2ピストン35の内側筒状部35aに対して段状に設けられたリング状の端部に対して当接可能に配置されている。尚、駐車バネブレーキ機構25が作動した状態では、第2バネ34が第2ピストン35を付勢しているため、駐車ブレーキ手動解放装置3が操作されていない状態及び操作された状態のいずれの状態でも、ラッチロックピン51の上端部は、第2ピストン35に対して当接する。そして、駐車バネブレーキ機構25が作動した後に一旦駐車ブレーキ手動解放装置3が操作された状態では、ラッチロックピン51は、下端部が逃がし孔53に挿入された状態で、上端部が第2ピストン35に当接した状態となる。
上記により、駐車ブレーキ手動解放装置3に加えられた操作力が無くなった状態でも、ラッチロックピン51が上方に押し戻されることが防止される。即ち、ラッチ付勢バネ50の付勢力を伝達するラッチ部材49のロックピン押し上げ部49dがテーパ面51aを付勢しても、ラッチロックピン51が上方に押し上げられることが防止される。これにより、ラッチ部材49がクラッチボックス43に向かって移動することが、ラッチロックピン51によって阻止される。そして、ラッチ部材49の係合刃49bがクラッチボックス43のラッチ刃43dに係合することが阻止される。
伝達機構27及びロック機構28は、上述のように構成される。これにより、駐車バネブレーキ機構25が作動すると、伝達機構27により、スピンドル38と第2ピストン35とが連結される。即ち、第2圧力室33に圧縮空気が供給されている状態から排出される状態へと移行し、駐車バネブレーキ機構25が作動すると、第2バネ34の付勢力により第2ピストン35とともにクラッチスリーブ42がスピンドル38に対して移動する。そして、第2ピストン35がスピンドル38に対して移動すると、クラッチスリーブ42の凹凸歯46bとクラッチホイール41の凹凸歯46aとが噛み合う。これにより、クラッチホイール41の回転が止められてスピンドル38と第2ピストン35とが連結される連結状態となる。尚、駐車バネブレーキ機構25の作動は、流体ブレーキ機構24が作動した状態で行われる。即ち、第1圧力室29の圧縮空気が供給されて流体ブレーキ機構24が作動した状態で、第2圧力室33から圧縮空気が排出され、駐車バネブレーキ機構25が作動する。
また、上記のように、駐車バネブレーキ機構25が作動してスピンドル38と第2ピストン35とが連結された状態では、駐車ブレーキ手動解放装置3が操作されていなければ、ロック機構28のラッチ部材49が伝達機構27に係合している。これにより、ロック機構28は、スピンドル38の第2ピストン35に対する相対変位を規制して駐車バネブレーキ機構25を作動させたままロック状態とするように構成されている。
即ち、ラッチ付勢バネ50に付勢されたラッチ部材49の係合刃49bがクラッチボックス43のラッチ刃43dに係合していることで、クラッチボックス43の第2ピストン35及びシリンダ本体23に対する回転が規制されている。そして、クラッチボックス43に対するクラッチスリーブ42の回転が、クラッチボックス43の突出部43bとクラッチスリーブ42の溝との係合によって、規制されている。更に、凹凸歯46b及び凹凸歯46aの噛み合いにより、クラッチホイール41とクラッチスリーブ42との相対回転が規制され、スピンドル38のクラッチホイール41に対する相対回転も規制されている。このように、ロック機構28は、伝達機構27を介して、スピンドル38の第2ピストン35に対する相対変位を規制して駐車バネブレーキ機構25を作動させたままロック状態とするように構成されている。
一方、伝達機構27は、駐車バネブレーキ機構25の作動が解除されている状態、即ち、第2圧力室33に圧縮空気が供給されている状態では、スピンドル38と第2ピストン35との連結を解除している非連結状態とするように構成されている。即ち、第2圧力室33に圧縮空気が供給されている状態では、クラッチスリーブ42の凹凸歯46bとクラッチホイール41の凹凸歯46aとが離間して噛み合っていない。このため、クラッチホイール41がクラッチボックス43に対して回転自在な状態であり、スピンドル38と第2ピストン35との連結が解除された非連結状態となっている。
[駐車ブレーキ手動解放装置]
次に、駐車ブレーキ手動解放装置3について詳しく説明する。図1乃至図4に示す駐車ブレーキ手動解放装置3は、ブレーキシリンダ装置2に用いられる。駐車ブレーキ手動解放装置3は、新設のブレーキシリンダ装置2に組み込まれてもよく、また、既設のブレーキシリンダ装置2に対して取り付けられてもよい。
駐車ブレーキ手動解放装置3は、手動操作によって操作されることで、軸部26の第2ピストン35に対する相対変位を許容させてロック機構28による駐車バネブレーキ機構25のロック状態を解除し、駐車バネブレーキ機構25の作動を解放する装置として設けられている。そして、駐車ブレーキ手動解放装置3は、てこ部54、ケーブル部55、操作部56、取付部57、等を備えて構成されている。
図5は、図1に示すブレーキ装置1における駐車ブレーキ手動解放装置3の一部とその近傍とを示す図である。図4及び図5に示すように、てこ部54は、シリンダ本体23に取り付けられた取付部57のてこ支持部材57aに対して回転方向に揺動可能に連結された部材として設けられている。そして、てこ部54は、例えば、プレート状の本体部分に対して、支点部分54a、力点部分54b、作用点部分54c、等が一体に形成された部材として設けられている。
支点部分54aは、シリンダ本体23に取り付けられた部材であるてこ支持部材57aに対して回転軸を介して連結されている。これにより、支点部分54aは、てこ支持部材57aに対して回転可能に連結されている。
力点部分54bは、後述するケーブル部55の一方の端部に対して、回転軸を介して連結されている。これにより、後述する操作部56に加えられてケーブル部55を介して伝達される操作力が、力点部分54bに対して伝達されることになる。
作用点部分54cは、ラッチ部材49の一端側に対してリング状部材58を介して連結されている。リング状部材58は、例えば、ワイヤが複数周に亘って巻かれるようにして形成されたリング状の部分を有し、ラッチ部材49とてこ部54の作用点部分54cとに連結される部材として設けられている。そして、リング状部材58は、ラッチ部材49の一端側に対しては、ラッチ部材49の一端側に設けられた貫通孔において、遊嵌状態で係止するように取り付けられている。これにより、リング状部材58は、ラッチ部材49の一端側に対して、揺動自在に連結されている。
また、リング状部材58は、そのリング状の部分の内側において、てこ部54の作用点部分54cに対して係合するように設置されている。作用点部分54cには、リング状部材58のリング状の部分の内側に係合する凹部54dが設けられている。リング状部材58のリング状の部分の内側の一部が、凹部54dに遊嵌状態で嵌り込んで引っ掛かるように係合することで、リング状部材58とてこ部54とが連結されている。尚、本実施形態では、凹部54dは、作用点部分54cにおいて、鉤状に屈曲した突起状の部分により構成されている。
後述する操作部56に加えられてケーブル部55を介して伝達される操作力が、力点部分54bに対して伝達されると、てこ部54は、支点部分54aを中心とする回転方向に揺動する。これにより、作用点部分54cが、リング状部材58をシリンダ本体23の外側に向かって引っ張るように、変位する。そして、リング状部材58がシリンダ本体23の外側に向かってシリンダ本体23から離間するように変位すると、リング状部材58に連結されたラッチ部材49の一端側が、シリンダ本体23の外側に向かって引き出されることになる。
上記のように、てこ部54は、ケーブル部55を介して伝達された操作力によって駆動され、てこ支持部材57aに対して揺動する。そして、てこ部54は、てこ支持部材57aに対して揺動することで、ラッチ部材49の一端側をシリンダ本体23の外側に向かって引き出してラッチ部材49の他端側の伝達機構27に対する係合を解除するように構成されている。尚、ラッチ部材49の他端側の伝達機構27に対する係合が解除されるときは、てこ部54に伝達された操作力が、ラッチ付勢バネ50の付勢力に対抗する方向に作用する。これにより、ラッチ部材49が、ラッチ付勢バネ50の付勢力に抗して、シリンダ本体23の外側に向かって引き出されることになる。
また、てこ部54は、支点部分54aから力点部分54bまでの距離と、支点部分54aから作用点部分54cまでの距離とが、同じとなるように設定されている。より詳細には、支点部分54aにおけるてこ支持部材57aに対する揺動中心位置から力点部分54bにおけるケーブル部55の端部に対する揺動中心位置までの距離と、支点部分54aにおける上記の揺動中心位置から作用点部分54cにおける凹部54dの中央位置までの距離とが、同じとなるように設定されている。
ケーブル部55は、操作部56に加えられた操作力を伝達しててこ部54を揺動させる機構として設けられている。ケーブル部55における一方の端部には、てこ部54の力点部分54bが連結される。ケーブル部55における他方の端部には、手動操作によって操作される操作部56が取り付けられている。そして、ケーブル部55には、図4及び図5に示すように、ワイヤケーブル55a、ケーブルガイド55b、てこ連結側ロッド55c、ハンドル連結側ロッド55d、てこ連結部55e、等が備えられている。
ワイヤケーブル55aは、例えば、複数の金属製のワイヤがロープ状に撚り合わされて一体化されたケーブルとして設けられている。そして、ワイヤケーブル55aにおける一方の端部は、シリンダ本体23の側方に配置され、てこ連結側ロッド55cが固定されている。てこ連結側ロッド55cは、軸状の部材として設けられている。そして、てこ連結側ロッド55cは、ワイヤケーブル55aに固定される側と反対側の端部において、てこ連結部55eを介しててこ部54に連結されている。
また、ワイヤケーブル55aにおける他方の端部は、シリンダ本体23から離れて配置されて、ハンドル連結側ロッド55dが固定されている。ハンドル連結側ロッド55dは、軸状の部材として設けられている。そして、ハンドル連結側ロッド55dは、ワイヤケーブル55aに固定される側と反対側の端部において、操作部56のハンドル56aに固定されている。
ケーブルガイド55bは、ワイヤケーブル55aの長手方向の移動をガイドする細長い筒状のガイド部材として設けられている。ケーブルガイド55bの長手方向に沿って延びるケーブルガイド55bの内側の細長い貫通孔には、ワイヤケーブル55aが貫通した状態で挿通されている。上記により、ケーブルガイド55bは、操作部56が操作された際に、ワイヤケーブル55aがケーブルガイド55bの長手方向に沿った方向に移動することをガイドするように構成されている。また、ケーブルガイド55bは、例えば、その長手方向が所定の曲率半径に沿って湾曲しながら方向を変化させて延びるように、屈曲形成されている。これにより、ワイヤケーブル55aも、ケーブルガイド55bの湾曲方向に沿って移動することになる。尚、本実施形態では、ケーブルガイド55bの長手方向が所定の曲率半径に沿って湾曲しながら方向を略90度変化させて延びる形態を例示している。
てこ連結部55eは、ワイヤケーブル55aの一方の端部に固定されたてこ連結側ロッド55cと、てこ部54の力点部分54bとを連結する機構として設けられている。そして、てこ連結部55eは、ケース59a、ナット59b、等を備えて構成されている。
ケース59aは、内側にてこ連結側ロッド55cの端部が挿入される空間領域が形成された部材として設けられている。そして、ケース59aは、てこ部54の力点部分54bに対して、回転軸を介して揺動可能に連結されている。これにより、てこ連結側ロッド55cと力点部分54bとが互いに揺動可能に連結されている。
また、ケース59aには、てこ連結側ロッド55cが挿入される挿入口が設けられている。そして、この挿入口の内周には、めねじ部分が設けられている。一方、てこ連結側ロッド55cにおけるケース59aの挿入口に挿入される端部には、上記のめねじ部分に螺合するおねじ部分が設けられている。ケース59aの挿入口のめねじ部分とてこ連結側ロッド55cの端部のおねじ部分とが螺合することで、ケース59aとてこ連結側ロッド55cとが連結されている。
また、ケース59aの挿入口のめねじ部分とてこ連結側ロッド55cの端部のおねじ部分との螺合位置が調整されることで、ケース59aから外部に露出するてこ連結側ロッド55cの長さが調整されることになる。これにより、ハンドル連結側ロッド55d、ワイヤケーブル55a、及びてこ連結側ロッド55cによって規定される、操作部56からケース59aまでの長さが調整されることになる。即ち、上記のめねじ部分とおねじ部分との螺合位置が調整されることで、操作部56からてこ部54に連結される位置までのケーブル部55の長さが調整されることになる。
ナット59bは、てこ連結側ロッド55cのおねじ部分に対してケース59aの外側の位置で螺合するめねじ部分が設けられたナットとして設けられている。そして、ナット59bは、てこ連結側ロッド55cのおねじ部分がケース59aの挿入口のめねじ部分に螺合して螺合位置が調整された状態で、てこ連結側ロッド55cのおねじ部分に対する螺合位置が規定される。このとき、ナット59bは、ケース59aに向かって端部が当接して締め込まれるように、てこ連結側ロッド55cのおねじ部分に対する螺合位置が調整される。即ち、てこ連結側ロッド55cのおねじ部分が、ケース59aのめねじ部分と、ケース59aに当接するナット59bとに螺合して固定される。これにより、てこ連結側ロッド55cのケース59aに対する位置がずれてしまうことが防止されることになる。
尚、てこ連結側ロッド55cのケース59aに対する位置の調整及び固定形態は、上記の形態に限られなくてもよい。例えば、ケース59aの挿入口の内周にめねじ部分が設けられおらず、ナット59bと、ケース59aの内側に配置されててこ連結側ロッド55cのおねじ部分に螺合する他のナットとによって、てこ連結側ロッド55cのケース59aに対する位置の調整及び固定が行われてもよい。
操作部56は、駐車ブレーキ手動解放装置3によって駐車バネブレーキ機構25の作動が解放される際に、手動操作によって操作される部分として設けられている。そして、操作部56は、ハンドル56a、スライド支持部56b、等を備えて構成されている。
ハンドル56aは、図示が省略された操作者の手によって引っ張り操作が加えられる部分として設けられている。そして、ハンドル56aは、例えば、手の指の間で引っ掛かり易いように、軸状の部分に対して傘状に広がった部分が設けられた形状に形成されている。
また、ハンドル56aにおける軸状の部分には、その軸方向に沿って延びるとともにハンドル連結側ロッド55dの端部が挿入される孔が形成されている。更に、ハンドル56aにおける傘状の部分には、ハンドル56aの軸状の部分の内側の孔に連通する貫通孔が形成されている。この貫通孔には、おねじ部分が設けられたねじ部材60が挿入される。また、ハンドル連結側ロッド55dには、ワイヤケーブル55aに固定される側と反対側であってハンドル56aの軸状の部分の孔に挿入される側の端部に、ねじ部材60に螺合するめねじ部分が内周に設けられたねじ孔が形成されている。そして、ハンドル56aの軸状の部分の孔にハンドル連結側ロッド55dが挿入された状態で、ねじ部材60が、ハンドル56aの傘状の部分の貫通孔を貫通してハンドル連結側ロッド55dの端部のねじ孔に螺合することで、ハンドル56aとハンドル連結側ロッド55dとが、固定されている。
支持部56bは、ハンドル56aとケーブル部55の他方の端部とを鉄道車両の台車又は台車に取り付けられた部材に対して支持するための機構として設けられている。本実施形態では、図4に示すように、支持部56bが、鉄道車両の台車に取り付けられた部材である支え板101に対して、ハンドル56aとケーブル部55の他方の端部とを支持する形態を例示している。
支持部56bは、筒部61a、固定ナット61b、等を備えて構成されている。筒部61aは、筒状の部材として設けられている。そして、筒部61aには、その長手方向の中途部分の外周において、リング状に外側に広がるとともに支え板101に対して当接するフランジ状の部分が設けられている。筒部61aは、筒状の部分が支え板101に設けられた貫通孔を貫通するとともに、フランジ状の部分が支え板101に当接した状態で、支え板101に対して取り付けられる。
また、筒部61aには、その長手方向に沿って延びる貫通孔が設けられている。この貫通孔には、ワイヤケーブル55aの他方の端部とこれに固定されたハンドル連結側ロッド55dとが挿通された状態で配置される。筒部61aの内側の貫通孔は、その内周において、ハンドル連結側ロッド55dを筒部61aの長手方向に沿ってスライド移動自在に支持している。
尚、ハンドル連結側ロッド55dにおけるハンドル56aに固定される端部は、筒部61aから突出した状態で配置されている。ハンドル56aにおける傘状の部分と反対側の軸状の部分の端部は、支え板101を挟んでフランジ状の部分と反対側に配置された筒部61aの端部に対して、当接可能に配置されている。また、筒部61aの貫通孔におけるワイヤケーブル55aが挿入されている端部側の内周には、ケーブルガイド55bの端部が嵌合して固定されている。
固定ナット61bは、支え板101に取り付けられた筒部61aを支え板101に固定するためのナットとして設けられている。固定ナット61bは、内周にめねじ部分が設けられている。そして、固定ナット61bは、そのめねじ部分において、筒部61aにおける支え板101の貫通孔に挿通される部分の外周に設けられたおねじ部分に螺合するように構成されている。支え板101に取り付けられた筒部61aに固定ナット61bが螺合することで、筒部61aのフランジ状の部分と固定ナット61bとの間で支え板101が締め付けられ、支持部56bが支え板101に対して固定される。
取付部57は、てこ部54及びケーブル部55をシリンダ本体23に取り付けて支持するための機構として設けられている。そして、取付部57は、てこ支持部材57a、ロッドガイド57b、ブラケット57c、等を備えて構成されている。尚、てこ支持部材57a及びブラケット57cは、例えば、鋼製の部材で形成され、ロッドガイド57bは、例えば、樹脂製の部材で形成されている。
てこ支持部材57aは、シリンダ本体23に対して固定されて取り付けられる部材として設けられ、てこ部54が支点部分54aにおいて回転可能に連結されている。これにより、てこ支持部材57aは、てこ部54をシリンダ本体23に対して揺動可能に連結している。
ロッドガイド57bは、ブラケット57cを介してシリンダ本体23に対して固定される筒状の部材を備え、てこ連結側ロッド55cの移動をガイドする機構として設けられている。そして、ロッドガイド57bは、その長手方向に沿って延びる貫通孔が設けられている。この貫通孔には、ワイヤケーブル55aの一方の端部とこれに固定されたてこ連結側ロッド55cとが挿通された状態で配置される。そして、ロッドガイド57bの内側の貫通孔は、その内周において、てこ連結側ロッド55cをロッドガイド57bの長手方向に沿ってスライド移動自在に支持している。
また、ロッドガイド57bは、その長手方向がシリンダ本体23の軸方向と平行な方向に延びるように、シリンダ本体23に固定されたブラケット57cに設置されている。そして、ロッドガイド57bの貫通孔が延びる方向も、シリンダ本体23の軸方向と平行な方向に沿って延びるように、設定されている。これにより、てこ連結側ロッド55cの移動方向が、シリンダ本体23の軸方向と平行な方向沿ってガイドされている。尚、ブラケット57cは、シリンダ本体23に対して一端側が固定され、他端側にロッドガイド57bが固定される支持部材として設けられる。即ち、ブラケット57cは、シリンダ本体23に対してロッドガイド57bを片持ち状に支持する部材として設けられている。
上述した駐車ブレーキ手動解放装置3においては、ラッチ部材49の長手方向であるとともにラッチ部材49が移動する方向が、シリンダ本体23の径方向、即ち、シリンダ本体23の軸方向に直交する方向に沿って延びるように設定されている。また、てこ連結側ロッド55cの長手方向であるとともにてこ連結側ロッド55cが移動する方向が、シリンダ本体23の軸方向に沿って延びるように設定されている。このため、駐車ブレーキ手動解放装置3においては、ラッチ部材49がシリンダ本体23の外側に向かって引き出される方向と、操作部56が操作されたときにケーブル部55の一方の端部がてこ部54を揺動させるように移動する方向とが、互いに略直交する方向において、交差するように設定されている。
また、駐車ブレーキ手動解放装置3においては、上記のように、てこ連結側ロッド55cが移動する方向が、シリンダ本体23の軸方向に沿って延びるように設定されている。即ち、駐車ブレーキ手動解放装置3においては、操作部56が操作されたときにケーブル部55の一方の端部がてこ部54を揺動させるように移動する方向が、シリンダ本体23の軸方向と平行な方向に沿って延びるように設定されている。
[装置の作動]
次に、ブレーキ装置1、ブレーキシリンダ装置2、及び駐車ブレーキ手動解放装置3の作動について説明する。図1乃至図3は、流体ブレーキ機構24と駐車バネブレーキ機構25とがいずれも作動しておらず緩められた状態にあるブレーキ装置1及びブレーキシリンダ装置2を示している。例えば、鉄道車両の運転中でブレーキ動作が行われていないときは、図1乃至図3に示す状態となる。この状態では、前述したブレーキ制御装置(図示省略)によって、第1の圧縮空気供給源(図示省略)からブレーキ制御装置及び第1ポート37aを介した圧縮空気の第1圧力室29への供給は行われないように制御されている。そして、第1圧力室29内の圧縮空気はブレーキ制御装置及び第1ポート37aを介して自然に排出される。このため、シリンダ本体23内において第1バネ30によって第1ピストン31がブレーキ解除方向(図3の矢印D方向)に付勢され、第1ピストン31がシリンダ本体23の内側の壁部であって第1圧力室29を区画する壁部に当接した状態となっている。
一方、図1乃至図3に示す状態においては、前述した駐車バネブレーキ制御電磁弁(図示省略)の制御に基づいて、第2の圧縮空気供給源(図示省略)から駐車バネブレーキ制御電磁弁及び第2ポート37bを介して圧縮空気が第2圧力室33に供給される。このため、第2圧力室33に供給された圧縮空気の作用による付勢力によって第2ピストン35が第2バネ34の付勢力に抗してブレーキ解除方向に移動した状態となっている。この状態では、クラッチホイール41の凹凸歯46aとクラッチスリーブ42の凹凸歯46bとは噛み合っておらず、空隙が形成された状態になっている。
一方、上記のブレーキ制御装置の制御に基づいて第1の圧縮空気供給源から圧縮空気が第1ポート37aを介して第1圧力室29に供給されることで流体ブレーキ機構24が作動する。このとき、第1圧力室29に供給された圧縮空気の作用による付勢力によって第1ピストン31が第1バネ30の付勢力に抗してブレーキ作動方向(図3の矢印C方向)に移動する。これにより、第1ピストン31とともにロッド駆動部14もブレーキ作動方向に移動する。これにより、ロッド駆動部14の楔状部分14aによって、可動ローラ21が、固定ローラ20から離間しながら車輪100側に向かって付勢される。そして、可動ローラ21とともに、外側ケース部18、内側ケース部19及びロッド12が、車輪100側に向かって移動する。これにより、ロッド12とともに移動するブレーキ出力部11のライニング15が車輪100の踏面100aに当接し、車輪100の回転が制動される。
また、上記の作動の際、第1ピストン31とともにスピンドル38もブレーキ作動方向に移動するが、スピンドル38に設けられたねじ部40にはクラッチホイール41が螺合している。しかし、スピンドル38が第1ピストン31とともにブレーキ作動方向に移動するときは、クラッチホイール41がクラッチボックス43に対して軸受44で回転自在に支持されている。このため、スピンドル38のブレーキ作動方向への移動に伴って、クラッチホイール41がスピンドル38の周りで回転する。これにより、スピンドル38のみがブレーキ作動方向に移動することになる。
次に、駐車バネブレーキ機構25の作動について説明する。駐車バネブレーキ機構25は、流体ブレーキ機構24が作動して完全に鉄道車両が停止した状態で、用いられる。そして、駐車バネブレーキ機構25の作動は、流体ブレーキ機構24が作動したままの状態で行われる。即ち、第1圧力室29に圧縮空気が供給されて第1ピストン31がブレーキ作動方向に付勢されている状態で、駐車バネブレーキ機構25の作動が開始される。
駐車バネブレーキ機構25は、前述の駐車バネブレーキ制御電磁弁の制御に基づいて、第2圧力室33から第2ポート37b及び駐車バネブレーキ制御電磁弁を介して圧縮空気が排出されることで作動する。第2圧力室33内に供給されていた圧縮空気が第2ポート37b及び駐車バネブレーキ制御電磁弁を介して排出されると、第2バネ34の付勢力によって第2ピストン35がブレーキ作動方向に移動する。第2ピストン35がブレーキ作動方向に移動すると、第2ピストン35とともにクラッチスリーブ42もブレーキ作動方向に移動する。そして、クラッチスリーブ42がクラッチホイール41に当接し、クラッチホイール41の凹凸歯46aとクラッチスリーブ42の凹凸歯46bとが噛み合う。
上記の状態では、ラッチ部材49の係合刃49bとクラッチボックス43のラッチ刃43dとが係合し、クラッチボックス43のシリンダ本体23に対する相対回転が規制されている。更に、クラッチボックス43に対してもクラッチスリーブ42の相対回転が規制されている。このため、凹凸歯46aと凹凸歯46bとが噛み合うと、シリンダ本体23に対して、クラッチボックス43及びクラッチスリーブ42を介して、クラッチホイール41の回転が規制されることになる。これにより、クラッチホイール41の回転が止められてスピンドル38と第2ピストン35とが連結される連結状態となる。そして、この連結状態では、ロック機構28により、駐車バネブレーキ機構25は、作動した状態のままロックされたロック状態となっている。このロック状態では、車輪100の回転が制動された状態が維持される。尚、駐車バネブレーキ機構25を一旦作動させた状態では、第1圧力室29への圧縮空気の供給が行われず、徐々に、第1圧力室29から圧縮空気が排出された状態となる。
一方、第2圧力室33に圧縮空気を供給して駐車バネブレーキ機構25の作動を解除することまでせずに鉄道車両の駐車位置を牽引車で少し移動させたい場合など、駐車バネブレーキ機構25の作動を手動操作によって解放したい場合には、駐車ブレーキ手動解放装置3の操作が行われる。駐車ブレーキ手動解放装置3の操作が行われていない状態では、ラッチ付勢バネ50によってラッチ部材49が付勢され、ラッチ部材49の係合刃49bとクラッチボックス43のラッチ刃43dとが係合した状態が維持される(図3及び図5を参照)。即ち、ロック機構28によって、駐車バネブレーキ機構25のロック状態が維持される。
上記の状態から、操作者(図示省略)による操作部56の手動操作が行われる。即ち、操作部56のハンドル56aが支え板101から離間する方向に引っ張られる手動操作が行われる。尚、図6は、ブレーキ装置1、ブレーキシリンダ装置2、及び駐車ブレーキ手動解放装置3の作動を説明するための図であって、駐車ブレーキ手動解放装置3の手動操作が一旦行われた状態を示す図である。また、図7は、図6に示すブレーキ装置1における駐車ブレーキ手動解放装置3の一部とその近傍とを示す図である。
操作部56のハンドル56aが引っ張られる操作が行われることで、ハンドル56aとともにハンドル連結側ロッド55d及びワイヤケーブル55aも引っ張られることになる。これにより、ワイヤケーブル55aがケーブルガイド55bに沿って移動し、ワイヤケーブル55aの一方の端部に固定されたてこ連結側ロッド55cがシリンダ本体23の軸方向と平行な方向に沿って、ロッドガイド57bに移動方向をガイドされながら、移動する。このとき、てこ連結側ロッド55cは、ロッドガイド57bの貫通孔に深く挿入される方向に移動する。尚、本実施形態では、シリンダ本体23の軸方向は上下方向を向くように設定されており、ワイヤケーブル55aとともに引っ張られるてこ連結側ロッド55cは、上方に引き上げられるように移動することになる。
てこ連結側ロッド55cが上記のように移動すると、てこ連結側ロッド55cに対しててこ連結部55eを介して連結されたてこ部54が、支点部分54aを中心として揺動する。これにより、てこ部54に対してリング状部材58を介して連結されたラッチ部材49が、シリンダ本体23の外側に向かって引き出されるように駆動される。即ち、操作部56に加えられてケーブル部55及びてこ部54を介して伝達された操作力により、ラッチ部材49が、ラッチ付勢バネ50の付勢力に抗して、シリンダ本体23の外側に向かって引き出されるように移動する。これにより、図6及び図7に示すように、ラッチ部材49の係合刃49bとクラッチボックス43のラッチ刃43dとの係合が解除される。
ラッチ部材49の係合刃49bとクラッチボックス43のラッチ刃43dとの係合が解除されると、クラッチボックス43が、シリンダ本体23に対して相対回転可能な状態となる。即ち、クラッチボックス43と、クラッチボックス43に対して突出部43bにて係合したクラッチスリーブ42と、クラッチスリーブ42に対して凹凸部(46a、46b)を介して噛み合ったクラッチホイール41とが、一体の状態で、シリンダ本体23に対して相対回転可能な状態となる。
クラッチボックス43、クラッチスリーブ42及びクラッチホイール41がシリンダ本体23に対して相対回転可能な状態では、スピンドル38と第2ピストン35との連結が解除された状態となる。即ち、スピンドル38の第2ピストン35に対する相対回転が許容された状態となる。そして、上記の状態では、第1圧力室29には圧縮空気は供給されていない。このため、第1ピストン31を付勢する第1バネ30の付勢力によって、第1ピストン31とともにスピンドル38がブレーキ解除方向に移動することになる。そして、スピンドル38のブレーキ解除方向への移動に伴って、クラッチボックス43、クラッチスリーブ42及びクラッチホイール41がシリンダ本体23に対して回転し、スピンドル38のブレーキ解除方向への移動が許容されることになる。
上記のように、操作部56が手動操作によって操作されることで、スピンドル38の第2ピストン35に対する相対変位が許容されてロック機構28による駐車バネブレーキ機構25のロック状態が解除される。これにより、駐車バネブレーキ機構25の作動が手動で解放されることになる。
[本実施形態の効果]
本実施形態によると、操作者は、手動操作により駐車バネブレーキ機構25の作動を解放する際、ケーブル部55の他方の端部に取り付けられた操作部56を引っ張るように操作する。その結果、ケーブル部55の一方の端部に連結されたてこ部54の力点部分54bが駆動され、てこ部54が揺動する。そして、てこ部54が揺動することで、ラッチ部材49の一端側がシリンダ本体23の外側に向かって引き出され、ラッチ部材49の他端側の伝達機構27に対する係合が解除される。これにより、手動操作によって、駐車バネブレーキ機構25のロック状態が解除されて駐車バネブレーキ機構25の作動が解放されることになる。
また、本実施形態によると、ラッチ部材49がシリンダ本体23の外側に向かって引き出される方向と、操作部56が操作者によって操作されたときにケーブル部55の一方の端部がてこ部54を揺動させるように移動する方向とが、交差するように設定されている。このため、てこ部54を介してラッチ部材49に連結されるケーブル部55の端部がシリンダ本体23の軸方向に直交する方向に対して更に直交する方向(本実施形態では、シリンダ本体23の軸方向と平行な方向)に沿って引き出されることになる。そして、操作者による引っ張り操作の操作力が、ケーブル部55及びてこ部54によってラッチ部材49に伝達され、シリンダ本体23の軸方向に直交する方向には、ラッチ部材49のみが移動する。
よって、ラッチ部材49の端部の近傍でシリンダ本体23の軸方向に直交する方向に向かって操作者がケーブル部55を引き出すような操作が不要となる。これにより、シリンダ本体23の軸方向に直交する方向においてスペースの制限を受ける場合であっても、操作者は、操作部56を操作することで、ケーブル部55及びてこ部54を介して、ラッチ部材49を容易に引き出すことができる。即ち、シリンダ本体23の軸方向に直交する方向においてスペースの制限を受ける場合であっても、操作者は、駐車バネブレーキ機構25の作動を解放するための手動操作を容易に行うことができる。また、ラッチ部材49を引き出すためのケーブル部55も容易に設置することができる。
従って、本実施形態によると、シリンダ本体23の軸方向に直交する方向においてスペースの制限を受ける場合であっても、駐車バネブレーキ機構25の作動を解放するための手動操作を容易に行うことができる、駐車ブレーキ手動解放装置3、ブレーキシリンダ装置2、及びブレーキ装置1を提供することができる。
また、本実施形態によると、てこ部54の作用点部分54cには、ラッチ部材49の一端側に連結されたリング状部材58に係合する凹部54dが設けられる。このため、ラッチ部材49の一端側のリング状部材58が引き出されることでラッチ部材49が引き出される形式のロック機構28を有するブレーキシリンダ装置2に対しても、凹部54dをリング状部材58に係合させることで、容易に、駐車ブレーキ手動解放装置3を取り付けることができる。
また、本実施形態によると、駐車バネブレーキ機構25の作動の解放のための手動操作の際、ケーブル部55の一方の端部は、シリンダ本体23の軸方向と平行な方向に沿って、てこ部54を揺動させる。このため、シリンダ本体23の軸方向に直交する方向におけるスペースの制限が大きいような場合であっても、シリンダ本体23の近傍のスペースを効率よく活用して、ケーブル部55を容易に設置することができる。
また、本実施形態によると、てこ部54は、支点部分54aから力点部分54bまでの距離と、支点部分54aから作用点部分54cまでの距離とが、同じとなるように設定されている。このため、ケーブル部55の操作量とラッチ部材49の変位量とをほぼ同じ量に設定することができる。これにより、操作者は、ラッチ部材49の引き出し量を把握し易くなり、操作性の更なる向上を図ることができる。
[変形例]
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述の実施の形態に限られるものではなく、請求の範囲に記載した限りにおいて様々に変更して実施することができるものである。例えば、次のような変形例を実施することができる。
(1)前述の実施形態では、ブレーキ装置が踏面ブレーキとして構成された形態を例にとって説明したが、この通りでなくてもよい。本発明は、踏面ブレーキ装置以外のブレーキ装置に対して適用されてもよい。例えば、ディスクブレーキ装置として構成されたブレーキ装置に対して、本発明が適用されてもよい。
ディスクブレーキ装置としてのブレーキ装置は、例えば、本発明のブレーキシリンダ装置、ロッド、ブレーキ出力部、キャリパボディ、等を備えて構成される。ロッドは、ブレーキシリンダ装置の作動に伴って駆動される。ブレーキ出力部は、ロッドに連動して駆動されてブレーキ力を出力する。キャリパボディは、一対のブレーキてこを備えて構成される。一対のブレーキてこの一方には、ブレーキシリンダ装置のシリンダ本体の端部が連結される。一対のブレーキてこの他方には、ブレーキ出力部が連結される。そして、一対のブレーキてこにおけるブレーキシリンダ装置及びブレーキ出力部に連結される側と反対側には、制輪子が設けられる。ブレーキシリンダ装置が作動することで、一対のブレーキてこが駆動され、上記の制輪子によって車両の車軸側のディスクが挟み込まれ、ブレーキ力力が生じることになる。このようなディスクブレーキ装置に対しても、本発明を適用することができる。
(2)前述の実施形態では、流体ブレーキ機構及び駐車バネブレーキ機構において用いられる圧力流体として、圧縮空気を例にとって説明したが、この通りでなくてもよい。圧縮空気以外の圧力流体が、流体ブレーキ機構及び駐車バネブレーキ機構において用いられてもよい。例えば、圧油が、流体ブレーキ機構及び駐車バネブレーキ機構において圧力流体として用いられてもよい。
(3)前述の実施形態では、伝達機構として、第2ピストンのブレーキ作動方向の付勢力を第1ピストンとともに変位する軸部に伝達する機構を例にとって説明したが、この通りでなくてもよい。第2ピストンのブレーキ作動方向の付勢力を第1ピストンに直接的に伝達する伝達機構の形態が実施されてもよい。また、伝達機構は、第2ピストンのブレーキ作動方向の付勢力を第1ピストン又は第1ピストンとともに変位する軸部に伝達する機構であればよく、前述の実施形態に限らず、伝達機構の構造を種々変更して実施してもよい。
(4)また、ロック機構は、ラッチ部材の他端側が伝達機構に係合することで、駐車バネブレーキ機構の作動時に第1ピストン又は軸部の第2ピストンに対する相対変位を規制して駐車バネブレーキ機構を作動させたままロック状態とする機構であればよく、前述の実施形態に限らず、ロック機構の構造を種々変更して実施してもよい。
(5)てこ部の形状については、前述の実施形態で例示した形態に限らず、種々変更して実施してもよい。また、前述の実施形態では、てこ部の支点部分が、シリンダ本体に取り付けられた部材に対して回転可能に連結される形態を例にとって説明したが、この通りでなくてもよい。支点部分がシリンダ本体に対して回転可能に連結されるてこ部の形態が実施されてもよい。
また、前述の実施形態では、支点部分から力点部分までの距離と、支点部分から作用点部分までの距離とが、同じとなるように設定されたてこ部を例にとって説明したが、この通りでなくてもよい。支点部分から力点部分までの距離と、支点部分から作用点部分までの距離との関係については、種々変更されてもよい。例えば、てこ部において、支点部分から力点部分までの距離が、支点部分から作用点部分までの距離よりも大きくなるように設定されることで、操作部に加えることが必要な操作力を低減することができる。
(6)前述の実施形態では、ワイヤケーブル、ケーブルガイド、てこ連結側ロッド、ハンドル連結側ロッド、てこ連結部を備えて構成されたケーブル部の形態を例示したが、この通りでなくてもよい。即ち、ケーブル部は、一方の端部がてこ部の力点部分に連結され、手動操作によって操作される操作部が他方の端部に取り付けられ、操作部に加えられた操作力を伝達しててこ部を揺動させる形態であればよく、前述の実施形態で例示した形態に限らず、種々変更して実施してもよい。
(7)前述の実施形態では、操作部が操作されたときにケーブル部の一方の端部がてこ部を揺動させるように移動する方向が、シリンダ本体の軸方向と平行な方向として設定されている形態を例にとって説明したが、この通りでなくてもよい。ラッチ部材がシリンダ本体の外側に向かって引き出される方向と、操作部が操作されたときにケーブル部の一方の端部がてこ部を揺動させるように移動する方向とが、交差するように設定されている形態でればよく、前述の実施形態で例示した形態に限らず、種々変更して実施してもよい。
(8)図8は、変形例を説明するための図であって、変形例に係るブレーキ装置における駐車ブレーキ手動解放装置の一部とその近傍とを示す図である。尚、図8に示す変形例の説明においては、前述の実施形態と同様に構成される要素については、図面において前述の実施形態と同一の符号を付すことで、或いは前述の実施形態と同一の符号を引用することで、説明を省略する。
図8に示す変形例では、前述の実施形態の駐車ブレーキ手動解放装置3において、調整目印部62が更に設けられている。調整目印部62は、操作部56からてこ部54に連結される位置までのケーブル部55の長さの調整のためにケーブル部55の長さを規定する目印として用いられる。そして、調整目印部62は、鉄道車両に設置されたブレーキシリンダ装置2に駐車ブレーキ手動解放装置3が艤装される際に、上記の目印として用いられる。或いは、調整目印部62は、駐車ブレーキ手動解放装置3が取り付けられたブレーキシリンダ装置2が車両に艤装される際に、上記の目印として用いられる。
調整目印部62は、てこ部54の揺動方向におけるシリンダ本体23に対する位置を規定する目印として設けられている。また、調整目印部62は、第2圧力室33から圧縮空気が排出されているとともに、ラッチ部材49の係合刃49bと伝達機構27のクラッチボックス43のラッチ刃43dとの係合が解除されて、駐車バネブレーキ機構25のロック状態が解除された調整時の状態において、てこ部54の上記の位置を規定する目印として設けられている。
また、図8に示す変形例では、調整目印部62は、てこ部54に設けられている。そして、調整目印部62は、シリンダ本体23に取り付けられた部材である脱落防止部材52の所定位置に当接可能な突起状又は段状に形成された凸部として設けられている。また、脱落防止部材52には、凸部としての調整目印部62に当接して調整目印部62の位置決めを行うための当接部52aが、シリンダ本体23の外側に向かって延びるように設けられている。
当接部52aのシリンダ本体23からの突出長さ、即ち、当接部52aと調整目印部62との当接位置は、第2圧力室33に圧縮空気が供給された状態で、ラッチ部材49の係合刃49bとクラッチボックス43のラッチ刃43dとが係合可能なように設定される。即ち、上記の当接位置は、当接部52aと調整目印部62とが当接した状態であって、第2圧力室33に圧縮空気が供給された状態で、ラッチ付勢バネ50によって付勢されてラッチ部材49がシリンダ本体23の内側に移動し、係合刃49bとラッチ刃43dとが係合可能なように設定される。尚、第2圧力室33に圧縮空気が供給され、ラッチ付勢バネ50によってラッチ部材49が付勢されて移動すると、ラッチ部材49とともに、凹部54dに遊嵌状態で連結されたリング状部材58が、てこ部54に対して相対移動する。そして、リング状部材58のリング状の部分の内側が凹部54dに係合する。このようにリング状部材58が凹部54dに係合したときに、係合刃49bとラッチ刃43dとが係合可能なように、上記の当接位置が設定される。
前述のように、駐車ブレーキ手動解放装置3の艤装時或いはブレーキシリンダ装置2の艤装時に、操作部56からてこ部54に連結される位置までのケーブル部55の長さの調整が行われる。そして、ケーブル部55の長さ調整は、駐車ブレーキ手動解放装置3がシリンダ本体23及び支え板101に取り付けられた状態で行われる。
上記の状態で、まず、作業者によって、てこ部54の調整目印部62が、脱落防止部材52の当接部52aに当接した状態に保持される。そして、この状態で、ケース59aの挿入口のめねじ部分とてこ連結側ロッド55cの端部のおねじ部分との螺合位置が調整され、ナット59bがケース59aに向かって締め込まれる。これにより、前述のように、操作部56からてこ部54に連結される位置までのケーブル部55の長さが調整されることになる。また、このとき、操作部56のハンドル56aにおける軸状の部分の端部は、筒部61aの端部に対して当接した状態で配置されている。
図8に示す変形例によると、鉄道車両に設置されたブレーキシリンダ装置2に駐車ブレーキ手動解放装置3が艤装される際、又は、駐車ブレーキ手動解放装置3が取り付けられたブレーキシリンダ装置2が鉄道車両に艤装される際、艤装作業の作業者は、調整目印部62を目印として、ケーブル部55の長さを調整することができる。そして、調整目印部62は、第2圧力室33から圧縮空気が排出されているとともに駐車バネブレーキ機構25のロック状態が解除された調整時の状態で、てこ部54の揺動方向におけるシリンダ本体23に対する位置を規定する目印として設けられている。このため、作業者は、艤装の際に、ケーブル部55の長さ調整のために第2圧力室33に圧縮空気を供給して駐車バネブレーキ機構25を非作動の状態とする必要がない。よって、艤装の際に、ケーブル部55の長さ調整を容易に行うことができる。そして、ケーブル部55の長さ調整の調整不良の発生も抑制されることになる。
また、この変形例によると、艤装時に、作業者は、突起状又は段状に形成された凸部として設けられた調整目印部62をシリンダ本体23に取り付けられた脱落防止部材52の所定位置に当接させることで、容易にケーブル部55の長さ調整を行うことができる。
尚、図9は、調整目印部62が設けられていない駐車ブレーキ手動解放装置3の誤った調整例を示す図である。図9に示す例では、調整目印部62が設けられていないため、艤装作業の作業者は、ケーブル部55の長さを調整するための目印を確保し難く、ケーブル部55の長さ調整作業が難しくなってしまう。その結果、図9に示すような、ケーブル部55の長さ調整の調整不良が発生してしまう虞がある。即ち、第2圧力室33に圧縮空気が供給された状態で、ラッチ付勢バネ50によってラッチ部材49が付勢されても、ラッチ部材49が十分にシリンダ本体23の内側に移動できず、係合刃49bとラッチ刃43dとが係合できない状態になってしまう虞がある。しかしながら、図8に示す変形例によると、前述のように、ケーブル部55の長さ調整の調整不良の発生が抑制される。これにより、第2圧力室33に圧縮空気が供給された状態で、ラッチ付勢バネ50によって付勢されてラッチ部材49がシリンダ本体23の内側に移動し、係合刃49bとラッチ刃43dとの係合を確保することができる。
(9)図10は、調整目印部に関する他の変形例を説明するための図であって、変形例に係るブレーキ装置における駐車ブレーキ手動解放装置の一部とその近傍とを示す図である。尚、図10に示す変形例の説明においては、前述の実施形態と同様に構成される要素については、図面において前述の実施形態と同一の符号を付すことで、或いは前述の実施形態と同一の符号を引用することで、説明を省略する。
図10に示す変形例では、前述の実施形態の駐車ブレーキ手動解放装置3において、調整目印部63が更に設けられている。調整目印部63は、操作部56からてこ部54に連結される位置までのケーブル部55の長さの調整のためにケーブル部55の長さを規定する目印として用いられる。そして、調整目印部63は、鉄道車両に設置されたブレーキシリンダ装置2に駐車ブレーキ手動解放装置3が艤装される際に、上記の目印として用いられる。或いは、調整目印部63は、駐車ブレーキ手動解放装置3が取り付けられたブレーキシリンダ装置2が車両に艤装される際に、上記の目印として用いられる。
調整目印部63は、てこ部54の揺動方向におけるシリンダ本体23に対する位置を規定する目印として設けられている。また、調整目印部63は、第2圧力室33から圧縮空気が排出されているとともに、ラッチ部材49の係合刃49bと伝達機構27のクラッチボックス43のラッチ刃43dとの係合が解除されて、駐車バネブレーキ機構25のロック状態が解除された調整時の状態で、てこ部54の上記の位置を規定する目印として設けられている。
また、図10に示す変形例では、調整目印部63は、長穴63a及びピン部63bを備えて構成されている。長穴63aは、てこ部54の力点部分54bと、てこ連結部55eと、のうちの一方に設けられている。ピン部63bは、力点部分54bとてこ連結部55eとのうちの他方に設けられている。図10に示す変形例では、長穴63aが力点部分54bに設けられ、ピン部63bがてこ連結部55eに設けられている。ピン部63bは、長穴63aの内側を長穴63aの長手方向に沿って変位可能なピン状に設けられている。そして、ピン部63bは、てこ連結部55eのケース59aに固定されている。
尚、長穴63aがてこ連結部55eに設けられ、ピン部63bが力点部分54bに設けられた形態が実施されてもよい。また、てこ連結部55eは、ケーブル部55の一方の端部に設けられてこの端部を力点部分54bに連結する連結部を構成している。
そして、調整目印部63は、ケーブル部55の長さ調整の際に、長穴63aの長手方向における一方の縁部とピン部63bとが当接するよう構成されている。即ち、調整目印部63は、第2圧力室33に圧縮空気が供給されてラッチ部材49の他端側の端部の係合刃49bが伝達機構27のクラッチボックス43のラッチ刃43dに係合するように移動する際に、ラッチ部材49のシリンダ本体23に対する移動を許容するてこ部54の揺動が可能なように、前述の調整時の状態において長穴63aの長手方向における一方の縁部とピン部63bとが当接するよう構成されている。これにより、調整目印部63は、てこ部54のシリンダ本体23に対する位置を規定するように構成されている。
尚、図10に示す変形例では、長穴63aの長手方向は、シリンダ本体23の軸方向と平行な方向に沿って延びるように設定されている。そして、ケーブル部55の長さ調整の際、ピン部63bは、長穴63aの長手方向におけるリング状部材58に近い側の縁部である一方の縁部に当接可能に構成されている。
前述のように、駐車ブレーキ手動解放装置3の艤装時或いはブレーキシリンダ装置2の艤装時に、操作部56からてこ部54に連結される位置までのケーブル部55の長さの調整が行われる。そして、ケーブル部55の長さ調整は、駐車ブレーキ手動解放装置3がシリンダ本体23及び支え板101に取り付けられた状態で行われる。
上記の状態で、まず、作業者によって、てこ連結部55eに設けられたピン部63bが、てこ部54に設けられた長穴63aの一方の端部(リング状部材58側の端部)に当接した状態に保持される。このとき、ラッチ部材49はラッチ付勢バネ50によってクラッチボックス43に向かって付勢されており、ラッチ部材49の他端側の端部に設けられた係合刃49bは、クラッチボックス43の外周に当接した状態で配置されている。尚、係合刃49bは、ラッチ刃43dに係合していない状態で、クラッチボックス43の外周に当接している。
そして、上記の状態で、ケース59aの挿入口のめねじ部分とてこ連結側ロッド55cの端部のおねじ部分との螺合位置が調整され、ナット59bがケース59aに向かって締め込まれる。これにより、前述のように、操作部56からてこ部54に連結される位置までのケーブル部55の長さが調整されることになる。また、このとき、操作部56のハンドル56aにおける軸状の部分の端部は、筒部61aの端部に対して当接した状態で配置されている。
図10に示す変形例によると、鉄道車両に設置されたブレーキシリンダ装置2に駐車ブレーキ手動解放装置3が艤装される際、又は、駐車ブレーキ手動解放装置3が取り付けられたブレーキシリンダ装置2が鉄道車両に艤装される際、艤装作業の作業者は、調整目印部63を目印として、ケーブル部55の長さを調整することができる。そして、調整目印部63は、第2圧力室33から圧縮空気が排出されているとともに駐車バネブレーキ機構25のロック状態が解除された調整時の状態において、てこ部54の揺動方向におけるシリンダ本体23に対する位置を規定する目印として設けられている。このため、作業者は、艤装の際に、ケーブル部55の長さ調整のために第2圧力室33に圧縮空気を供給して駐車バネブレーキ機構25を非作動の状態とする必要がない。よって、艤装の際に、ケーブル部55の長さ調整を容易に行うことができる。そして、ケーブル部55の長さ調整の調整不良の発生も抑制されることになる。
また、この変形例によると、艤装時に、作業者は、てこ部54の力点部分54bに設けられた長穴63aの縁部に対して、ケーブル部55のてこ連結部55eに設けられたピン部63bを当接させることで、容易にケーブル部55の長さ調整を行うことができる。そして、調整時に長穴63aの縁部とピン部63bとを当接させることで、ラッチ部材49の伝達機構27への係合方向におけるシリンダ本体23に対する移動が確実に許容されるため、ケーブル部55の長さ調整の調整不良の発生も確実に抑制されることになる。
尚、図11は、図10に示す変形例に係る駐車ブレーキ手動解放装置3の作動を説明するための図である。図10に示す変形例によると、前述のように、ケーブル部55の長さ調整の調整不良の発生が抑制される。これにより、図11に示すように、第2圧力室33に圧縮空気が供給された状態で、ラッチ付勢バネ50によって付勢されてラッチ部材49がシリンダ本体23の内側に移動し、係合刃49bとラッチ刃43dとの係合を確保することができる。
(10)図12は、変形例に係るブレーキ装置1b、ブレーキシリンダ装置2b、及び駐車ブレーキ手動解放装置3bを示す図である。また、図13は、図12の一部の拡大図であり、図14は、図12に示すブレーキ装置1bの一部を矢印F方向から見た図であって、一部の機構部品を省略して示す図である。
変形例に係るブレーキ装置1bは、図12等に示すように、上記実施形態の場合と比べて、駐車ブレーキ手動解放装置3bが設けられる位置が異なっている。具体的には、本変形例では、駐車ブレーキ手動解放装置3bは、ブレーキシリンダ装置2bよりも車輪100側の位置に設けられている。また、これに伴って、ロック機構28の位置も、ブレーキシリンダ装置2bにおける車輪100側の部分に配置されている。
そして、本変形例に係るブレーキ装置1bでは、図13及び図14等に示すように、上記実施形態の場合と比べて、てこ部64の構成が大きく異なっている。以下では、前述の実施形態と同様に構成される要素については、図面において前述の実施形態に示す変形例と同一の符号を付すことで、或いは前述の実施形態と同一の符号を引用することで、説明を省略する。
てこ部64は、図13及び図14に示すように、てこ本体部65と、一対の支持部70とを有している。てこ部64では、てこ本体部65が一対の支持部70によってシリンダ本体23に対して回転自在に支持されている。一対の支持部70は、シリンダ本体23に対して固定されている。
てこ本体部65は、力点側プレート部66(力点側部分)と、作用点側プレート部67(作用点側部分)と、これらを連結するシャフト部68とを有している。
シャフト部68は、細長い筒状に形成された部分として設けられ、その両端部が一対の支持部70によって回転自在に支持されている。シャフト部68には、平頭ピン71が挿通している。平頭ピン71の先端部には、Cリング72が取り付けられている。これにより、シャフト部68が支持部70から抜け落ちるのが防止されている。なお、平頭ピン71は、てこ部64の支点部分64aとして動作する挿通ピン(支点軸)として設けられている。
力点側プレート部66は、図13に示すように、平面視でやや長い略楕円形状に形成されたプレート状の部分として設けられ、長手方向一方側の部分が、シャフト部68における一方側の部分に一体に形成されている。力点側プレート部66における長手方向他方側の部分は、てこ部64の力点部分64bとして設けられている。力点部分64bには、2枚のプレート部73aと該2枚のプレート部73aを連結する連結部73bとが一体に形成された力点操作部73が取り付けられている。この力点操作部73には、ワイヤケーブル55aが接続されている。また、力点側プレート部66及び2枚のプレート部73aには、力点側プレート部66が2枚のプレート部73aに挟まれた状態で平頭ピン74が挿通している。平頭ピン74の先端部には、Cリング75が取り付けられている。これにより、平頭ピン74の抜け止めが図られるとともに、該平頭ピン74の中心軸を中心として、力点側プレート部66と力点操作部73とが相対的に回転する。
作用点側プレート部67は、ラッチ部材49の一端側に対してリング状部材58を介して連結される作用点部分64c、を有するプレート状の部分として設けられている。作用点側プレート部67は、シャフト部68の長手方向における力点側プレート部66が設けられている部分と反対側に一体に形成されている。
本変形例のてこ部64は、上記実施形態に係るてこ部54と概ね同様に動作する。具体的には、操作部56のハンドル56a(図12参照)が引っ張られる操作が行われることで、ハンドル56aとともにワイヤケーブル55a及び力点操作部73も引っ張られ、力点側プレート部66も同様に引っ張られる。これにより、シャフト部68が図13における時計回り方向に回転するため、作用点側プレート部67も同様に時計回り方向に回転して揺動する。その結果、上記実施形態の場合と同様、リング状部材58を介して連結されたラッチ部材49が、シリンダ本体23の外側に向かって引き出される。
ところで、上記実施形態及び本変形例の場合、ブレーキシリンダ装置は、該ブレーキシリンダ装置が鉄道車両に取り付けられた状態において、シリンダ本体の軸方向が鉛直方向に沿うように配置されている。このように配置されたブレーキシリンダ装置において、例えば設置スペースの都合上、てこ部を、シリンダ本体における鉄道車両の車輪100側に設置したい場合がある。しかし、シリンダ本体における鉄道車両の車輪100側のスペースには、ハンガー部材17を支えるためのハンガー部材支持部17a等、他の部材が配置されているため、比較的スペースが限られている。よって、このスペースに、例えば上記実施形態のてこ部54を設置しようとすると、該てこ部54の力点部分54bとハンガー部材支持部17aとが干渉してしまう。
これに対して、本変形例に係るてこ部64では、図14に示すように、シャフト部68をハンガー部材支持部17aの幅方向に沿って延びるように形成し、力点部分64bを作用点部分64cと反対側の端部に一体に形成している。これにより、力点部分64bがハンガー部材支持部17aに干渉してしまうのを回避している。従って、本変形例によれば、ラッチ部材49を引っ張るためのてこ部の配置自由度を向上できる。
以上、本変形例に係るブレーキシリンダ装置2bでは、てこ部64において、作用点側プレート部67と、力点側プレート部66とが、支点軸(平頭ピン71)の軸方向において離間して配置される。これにより、てこ部64の力点部分64bがハンガー部材支持部17aに干渉するのを回避している。従って、この構成によれば、鉄道車両に対するてこ部64の配置自由度を向上できる。
また、ブレーキシリンダ装置2bでは、てこ部64を、シリンダ本体の軸方向が鉛直方向に沿うように該シリンダ本体が車両に設置された状態での、シリンダ本体における車両側のスペース、という比較的狭いスペースに、他の部材との干渉を避けて設置することができる。
また、ブレーキシリンダ装置2bでは、力点部分64bと作用点部分64cとが支点軸の軸方向に離間した形状のてこ部64を構成することができる。
(11)図15は、変形例に係るブレーキ装置1a、ブレーキシリンダ装置2a、及び駐車ブレーキ手動解放装置3aを示す図である。また、図16は、図15に示すブレーキ装置1a、ブレーキシリンダ装置2a、及び駐車ブレーキ手動解放装置3aを図15の矢印E方向から見た図である。尚、図15及び図16に示す変形例の説明においては、前述の実施形態又は図8に示す変形例と同様に構成される要素については、図面において前述の実施形態又は図8に示す変形例と同一の符号を付すことで、或いは前述の実施形態又は図8に示す変形例と同一の符号を引用することで、説明を省略する。
変形例に係るブレーキ装置1aは、前述の実施形態のブレーキ装置1と同様に構成され、同様の構成要素を備えて構成されている。また、変形例に係るブレーキシリンダ装置2aは、前述の実施形態のブレーキシリンダ装置2と同様に構成され、同様の構成要素を備えて構成されている。また、変形例に係る駐車ブレーキ手動解放装置3aは、前述の実施形態の駐車ブレーキ手動解放装置3と同様に構成され、同様の構成要素を備えて構成されている。しかし、ブレーキ装置1a、ブレーキシリンダ装置2a、及び駐車ブレーキ手動解放装置3aは、ブレーキ装置におけるブレーキシリンダ装置及び駐車ブレーキ手動解放装置の配置に関し、ブレーキ装置1、ブレーキシリンダ装置2、及び駐車ブレーキ手動解放装置3とは異なっている。以下、この異なる点のみについて説明する。
図16は、鉄道車両(図示省略)に設置されたブレーキ装置1aについて、鉄道車両の車輪の車軸方向から見た状態を示している。図15及び図16に示すブレーキ装置1aのブレーキ出力部11は、鉄道車両の車輪に対して、前述の実施形態のブレーキ装置1のブレーキ出力部11の姿勢と同じ姿勢で配置されている。しかし、ブレーキ装置1aにおけるブレーキシリンダ装置2aの姿勢が、ブレーキ装置1におけるブレーキシリンダ装置2の姿勢とは異なっている。
前述の実施形態のブレーキシリンダ装置2は、シリンダ本体23の軸方向及びスピンドル38の軸方向が、上下方向、即ち鉛直方向を向くように設定されている。これにより、ブレーキシリンダ装置2は、鉄道車両に対して、いわゆる縦置きの姿勢で設置されている。しかし、図15及び図16に示す変形例に係るブレーキシリンダ装置2aは、シリンダ本体23の軸方向及びスピンドル38の軸方向が、水平方向を向くとともに、鉄道車両の車輪の車軸方向と平行な方向を向くように設定されている。これにより、ブレーキシリンダ装置2aは、鉄道車両に対して、いわゆる横置きの姿勢で設置されている。
図15及び図16に示す駐車ブレーキ手動解放装置3aは、前述の実施形態の駐車ブレーキ手動解放装置3と同様に、ラッチ部材49がシリンダ本体23の外側に向かって引き出される方向と、操作部56が操作されたときにケーブル部55の一方の端部がてこ部54を揺動させるように移動する方向とが、交差するように設定されている。しかし、駐車ブレーキ手動解放装置3aは、操作部56が操作されたときにケーブル部55の一方の端部がてこ部54を揺動させるように移動する方向の設定において、駐車ブレーキ手動解放装置3とは異なっている。具体的には、駐車ブレーキ手動解放装置3aにおいては、操作部56が操作されたときにケーブル部55の一方の端部がてこ部54を揺動させるように移動する方向が、シリンダ本体23の外周の接線方向に平行な方向に沿って延びるように設定されている。
上述した変形例に係るブレーキ装置1a、ブレーキシリンダ装置2a、及び駐車ブレーキ手動解放装置3aによっても、前述の実施形態に係るブレーキ装置1、ブレーキシリンダ装置2、及び駐車ブレーキ手動解放装置3と同様の効果を奏することができる。即ち、上記の変形例によると、シリンダ本体23の軸方向に直交する方向においてスペースの制限を受ける場合であっても、駐車バネブレーキ機構25の作動を解放するための手動操作を容易に行うことができる、駐車ブレーキ手動解放装置3a、ブレーキシリンダ装置2a、及びブレーキ装置1aを提供することができる。
また、上記の変形例によると、駐車バネブレーキ機構25の作動の解放のための手動操作の際、ケーブル部55の一方の端部は、シリンダ本体23の外周の接線方向に平行な方向に沿って、てこ部54を揺動させる。このため、シリンダ本体23の軸方向に直交する方向におけるスペースの制限が大きいような場合であっても、シリンダ本体23の近傍のスペースを効率よく活用して、ケーブル部55を容易に設置することができる。
(12)図8、図10に示す変形例において、調整目印部が設けられた駐車ブレーキ手動解放装置を説明したが、調整目印部の形態については、図8、図10に示す形態に限られなくてもよい。即ち、調整目印部は、駐車ブレーキ手動解放装置又はブレーキシリンダ装置の艤装の際に、操作部からてこ部に連結される位置までのケーブル部の長さの調整のためにケーブル部の長さを規定する目印として用いられる形態であれば、前述の変形例に限らず、種々変更して実施されてもよい。例えば、調整目印部が、てこ部と、てこ部の支点部分が回転可能に連結されるシリンダ本体又はシリンダ本体に取り付けられた部材と、のそれぞれに対して、刻印或いは表示された線又は図柄などの指標として、構成されてもよい。この場合、ケーブル部の長さ調整を行う作業者は、てこ部に設けられた指標と、シリンダ本体又はシリンダ本体に取り付けられた部材に設けられた指標とを、目印とし、これらの両指標を一致させた状態でてこ部を保持し、ケーブル部の長さを調整することができる。