JP5908877B2 - 熱利用方法 - Google Patents
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Description
廃熱の活用においては、熱の需要と供給の時間的または空間的ミスマッチが問題となる。これを解消するための技術として、廃熱源からの熱を蓄熱体に熱エネルギーとして貯蔵し(貯熱)、需要に応じて熱エネルギーを取り出す(放熱)、蓄熱が挙げられる。
蓄熱には、蓄熱体の一次相転移に伴う転移熱を利用する潜熱蓄熱と、転移熱を利用せずに蓄熱体の温度変化により貯熱/放熱する顕熱蓄熱とがあるが、潜熱蓄熱は、一般的に、顕熱蓄熱に比べて蓄熱密度が大きく、放熱温度が一定であるという特徴がある。
潜熱蓄熱装置では、装置構造が簡易的であるという理由から、潜熱蓄熱体と熱媒体とを直接接触させる方法が、広く採用されている。このような潜熱蓄熱装置は、例えば特許文献1に開示されている。
このとき、例えば、熱媒体の流量が速すぎると、潜熱蓄熱体との熱交換が不十分となって温まり切らずに外部に流出してしまい、熱利用の観点から好ましくない。このため、熱媒体の流量は、熱媒体と潜熱蓄熱体との熱交換速度によって上限が決定される。
したがって、何らかの理由で一時的に熱利用量を増大させたい場合であっても、容器の外部に流出する熱媒体の流量を、熱交換速度による上限を超えて大きくできず、対応できないという問題がある。
本発明は、以上の点を鑑みてなされたものであり、潜熱蓄熱装置において一時的に熱利用量を増大できることを目的とする。
(1)潜熱蓄熱体を収容する下方空間と、上記下方空間よりも上側の空間であって上記潜熱蓄熱体よりも比重の小さい熱媒体が溜まる上方空間と、を有する容器と、上記下方空間に配置されて上記容器の外部と連通し、上記熱媒体を上記容器の外部から上記潜熱蓄熱体内に流入するための吐出口を外周面に有する流入管と、上記上方空間に配置されて上記容器の外部と連通し、上記上方空間にある上記熱媒体を上記容器の外部に流出するための吸入口を外周面に有する流出管と、上記上方空間にある上記熱媒体を、上記流出管の上記吸入口から上記容器の外部に流量変動自在に流出させ、廃熱を発生する廃熱エリアに設置された廃熱エリア熱交換器または当該廃熱を利用する熱利用エリアに設置された熱利用エリア熱交換器を経由して、上記流入管の上記吐出口から流量変動自在に上記潜熱蓄熱体内に流入させる流出入制御部と、上記上方空間にある上記熱媒体の液位を検出する液位センサと、を備える潜熱蓄熱装置。
(2)上記上方空間における上記吸入口よりも上側の空間である有効空間の容積が、上記容器の全容積に対して、10〜40%である、上記(1)に記載の潜熱蓄熱装置。
(4)上記臨時放熱運転において上記熱媒体を上記第2の流量で流出させる際に、上記液位センサに上記熱媒体の液位を検出させ、当該液位が上記吸入口よりも高いうちに、上記流出入制御部を制御して、上記容器の外部に流出する上記熱媒体の流量を、上記潜熱蓄熱体内に流入する上記熱媒体の流量以下の流量にする、上記(3)に記載の熱利用方法。
このような潜熱蓄熱装置1は、例えば、ゴミ焼却場、発電所、製鉄所等の工場20で発生した廃熱を、工場20とは別の建屋である施設30においてエアコン等に利用する場合に用いられる。
以下、潜熱蓄熱装置1を詳細に説明する。
まず、通常運転(貯熱運転および放熱運転)を説明する。貯熱運転を行なった後に放熱運転を行なうことで、工場20の廃熱を潜熱蓄熱体2に熱エネルギーとして貯蔵し、貯蔵した熱エネルギーを取り出して利用できる。
貯熱運転を開始する前の時点では、容器4は常温である。このため、容器4の下方空間4aに収容されている潜熱蓄熱体2は、例えばエリスリトールの場合には融点が118℃であるため、固相である。固相である潜熱蓄熱体2の上側の上方空間4bには、液相である熱媒体3が溜まっている。なお、上方空間4bが空である場合には、例えば容器4に設けられた図示しない栓から、液相の熱媒体3を導入すればよい。このとき、熱媒体3の液位は、液位センサ9により検出されており、吸入口8よりも高い所定の位置(以下、「定常位置」ともいう)となっている。
そして、ポンプ10を作動させて、上方空間4bに溜まっている熱媒体3を、吸入口8から吸入して流出管6を通して容器4の外部に流出させる。容器4の外部に流出した熱媒体3は、循環管13aを流通する過程で、熱交換器12aにおいて、取り込まれている蒸気と熱交換して加熱される。なお、熱交換器12aに取り込まれている蒸気は、熱交換により除熱され、適宜排気される。
潜熱蓄熱体2内に流入した熱媒体3aは、比重が潜熱蓄熱体2よりも小さいため、上方空間4bの熱媒体3まで浮上して、熱媒体3に取り込まれる。熱媒体3aは、浮上中に、潜熱蓄熱体2と直接接触して熱交換する。すなわち、熱媒体3aに供給された熱は、潜熱蓄熱体2に伝導される。
熱媒体3の流出流量と流入流量とが同量であるため、液位センサ9により検出される熱媒体3の液位は、貯熱運転の間、定常位置からほぼ不変である。
次に、通常の放熱運転を説明する。基本的な流れは、貯熱運転と同じである。
放熱運転の開始時点(貯熱運転の終了時点)では、容器4の下方空間4aに収容されている潜熱蓄熱体2は、部分的な場合を含めて液相であり、潜熱を貯熱している。また、上方空間4bに溜まっている熱媒体3も、潜熱蓄熱体2の融点と同程度の高温となっており、かつ、液位が吸入口8よりも高い定常位置にある。
そして、ポンプ10を作動させて、上方空間4bに溜まっている高温の熱媒体3を、吸入口8から吸入して流出管6を通して容器4の外部に流出させる。容器4の外部に流出した熱媒体3は、循環管13bを流通する過程で、熱交換器12bに取り込まれている流体と熱交換して除熱される。熱交換器12bに取り込まれている流体は、熱を帯びた熱媒体3から熱伝導されて加熱され、施設30のエアコンの熱媒体として使用される。こうして、貯熱運転で潜熱蓄熱体2に貯熱された工場20の廃熱が、取り出されて利用される。
潜熱蓄熱体2内に流入した低温の熱媒体3aは、潜熱蓄熱体2との比重差によって浮上する。このとき、低温の熱媒体3aは、浮上中に、潜熱蓄熱体2と熱交換し、液相の潜熱蓄熱体2から伝熱されて、高温の熱媒体3aと化して、上方空間4bにある高温の熱媒体3に取り込まれる。
まず、放熱運転においては、流入管5から流入した低温の熱媒体3aが、浮上中に潜熱蓄熱体2と熱交換し、高温となって上方空間4bにある高温の熱媒体3に取り込まれる。 しかし、このとき、熱媒体3aの流入速度が速すぎると、潜熱蓄熱体2との熱交換が不十分となって、高温とならないまま、上方空間4bにある熱媒体3に取り込まれてしまう。そうすると、上方空間4bにある熱媒体3の温度が低下し、低温の熱媒体3が流出することになる。低温の熱媒体3が流出すると、施設30での熱交換器12bにおける熱利用の観点から好ましくない。
このため、放熱運転における熱媒体3の流量は、流入管5から流入した低温の熱媒体3aが、その浮上中に潜熱蓄熱体2と十分に熱交換できて高温となる流量に設定する。このように、熱媒体3と潜熱蓄熱体2との熱交換速度によって上限が決定される熱媒体3の流量を「第1の流量」とする。「第1の流量」は、この上限の流量を含む、ある程度の幅を持った流量である。
放熱運転における熱媒体3の流出流量および流入流量は、「第1の流量」の範囲で、ともに同量とする。
ところで、貯熱運転の終了後または通常の放熱運転の途中において、例えば、冬の明け方に施設30内に設置されているエアコンの稼働台数や設定温度を上げたい場合など、一時的に熱利用量を増大させたい場合も想定される。その場合、熱媒体3の流量を「第1の流量」の上限よりも大きくすることを要するが、そうすると、上述したように、低温の熱媒体3が容器4から流出してしまうため、熱利用の観点から問題となる。
しかしながら、このとき、潜熱蓄熱装置1において、後述する臨時放熱運転を行えば、一時的に熱利用量を増大できる。以下、臨時放熱運転について説明する。
この状態で、まず、ポンプ10を調整して、上方空間4bからの熱媒体3の流出流量を、一時的に「第1の流量」の上限よりも大きい「第2の流量」にする。熱媒体3の流出流量を「第2の流量」にすれば、熱交換器12bにおいて、施設30内に設置されたエアコンの熱媒体である流体と熱交換できる熱媒体3の量も増大するため、施設30内に設置されたエアコンの稼働台数や設定温度を上げたい場合など、一時的な熱利用量の増大に対応できる。
これにより、熱媒体3aの流入流量は、最大でも、熱媒体3と潜熱蓄熱体2との熱交換速度により決定される上限の流量となるため、流量が速すぎて潜熱蓄熱体2との熱交換が不十分で高温とならないまま、上方空間4bにある熱媒体3に取り込まれることがなくなる。つまり、上方空間4bにある熱媒体3の温度が低下して、低温の熱媒体3が流出管6から流出することが防止される。このように、臨時放熱運転では「第2の流量」で流出させて、熱利用することができる。
なお、熱媒体3の流入流量は「第1の流量」にするが、ゼロにはしない。これは、流入管5の吐出口7から吐出する熱媒体3の流量をゼロにすると、潜熱蓄熱体2が吐出口7から逆流するおそれがあるからである。
しかし、臨時放熱運転の開始前である貯熱運転の終了後または通常の放熱運転の途中においては、上述したように、熱媒体3の液位は吸入口8よりも高い定常位置にあるので、臨時放熱運転の開始後、しばらくは、高温の熱媒体3を流出できる。
ところで、臨時放熱運転が終了した時点では、流量調整タンク11には、流入流量を減じるために貯留していた熱媒体3が貯えられている。そこで、臨時放熱運転の終了後に移行した放熱運転において流量調整タンク11の熱媒体3を放出してもよい。この場合、例えば、ポンプ10を調整して、容器4から外部に流出する熱媒体3の流出流量を「第1の流量」の上限よりも小さくしつつ、流量調整タンク11から熱媒体3を徐々に放出させ、容器4内の潜熱蓄熱体2に流入する熱媒体3の流入流量を「第1の流量」の上限以下の流量とすればよい。
また、臨時放熱運転の終了後に移行した放熱運転は、流量調整タンク11から熱媒体3を放出させずに通常どおりに行ない、放熱運転後の貯熱運転において、流量調整タンク11から熱媒体3を放出させるようにしてもよい。
有効空間4b1の容積は、容器4および下方空間4aの寸法が一定であれば、上方空間4bにおける流出管6の位置に応じて変動する。
ここで、流出管6の位置が高く、有効空間4b1の容積が小さすぎる場合、上述した臨時放熱運転の際に、高温のまま流出する熱媒体3の量が相対的に少なくなってしまう。このため、臨時放熱運転を長くできる観点からは、有効空間4b1の容積は大きい方が好ましい。
一方で、有効空間4b1の容積が大きすぎる場合、有効空間4b1の上部にある熱媒体3は、下方空間4aにある潜熱蓄熱体2からの熱を受けにくく、冷めやすい等の問題が生じるおそれがある。
そこで、有効空間4b1の容積は、容器4の全容積に対して、10〜40%が好ましく、20〜30%がより好ましい。この範囲であれば、臨時放熱運転を適宜に長くでき、かつ、熱媒体3も冷めにくくできる。
このとき、容器4の寸法は、長さ0.7m×幅0.7m×高さ1.0mで、有効空間4b1の容積は、容器4の全容積に対して30%であった。
また、潜熱蓄熱体2としてエリスリトール(融点:118℃)300kgを用い、熱媒体3として油(NeoSK−OIL L400(綜研テクニックス社製))を用いた。
なお、潜熱蓄熱体2と熱媒体3との熱交換速度によって決定される「第1の流量」の上限を、70L/minとした。
放熱運転および臨時放熱運転において熱利用に供されて容器4内に流入する熱媒体3の温度は、90℃で一定に保った。
まず、通常の貯熱運転を行ない潜熱蓄熱体2を融解させた。
次に、通常の放熱運転として、ポンプ10を作動させ、容器4に収容されている熱媒体3を流出流量60L/minで容器4の外部に流出させて熱利用に供しつつ、流量調整タンク11を作動させないで、流出流量と同じ流入流量60L/minで容器4内に流入させた。このような放熱運転を30分間行なったが、この間、容器4の外部に流出した熱媒体3の平均温度は、114℃であった。
まず、通常の貯熱運転を行ない潜熱蓄熱体2を融解させた。
次に、通常の放熱運転として、ポンプ10を作動させ、容器4に収容されている熱媒体3を流出流量120L/minで容器4の外部に流出させて熱利用に供しつつ、流量調整タンク11を作動させないで、流出流量と同じ流入流量120L/minで容器4内に流入させた。このような放熱運転を15分間行なったが、この間、容器4の外部に流出した熱媒体3の平均温度は、105℃であった。
まず、通常の貯熱運転を行ない潜熱蓄熱体3を融解させた。貯熱運転の終了後における容器4の熱媒体3の温度は115℃であった。
次に、液位センサ9に容器4内の熱媒体3の液位を検出させて、熱媒体3の液位が吸入口8よりも高く保たれていることを確認しながら、2分間の臨時放熱運転を行なった。具体的には、ポンプ10を作動させ、容器4に収容されている熱媒体3を流出流量120L/minで容器4の外部に流出させて熱利用に供しつつ、流量調整タンク11を作動させて、流入流量60L/minで容器4内に流入させた。この間、容器4の外部に流出した熱媒体3の温度は114℃であった。なお、容器4内の熱媒体3の液位は、臨時放熱運転中に低下を続けたが吸入口8よりは高く推移し、容器4の外部への熱媒体3の流出は終始可能であった。
臨時放熱運転の終了後、通常の放熱運転を行なった。具体的には、ポンプ10を調整して、熱媒体3を流出流量60L/minで容器4の外部に流出させて熱利用に供しつつ、臨時放熱運転時に流量調整タンク11に貯えられた熱媒体3を放出させないで、流出流量と同じ流入流量60L/minで容器4内に流入させた。このとき、容器4の外部に流出した熱媒体3の平均温度は、当初は114℃であったが、放熱の進行につれて低下した。
2:潜熱蓄熱体
3,3a:熱媒体
4:容器
4a:下方空間
4b:上方空間
4b1:有効空間
5:流入管
6:流出管
7:吐出口
8:吸入口
9:液位センサ
10:ポンプ(流出入制御部)
11:流量調整タンク(流出入制御部)
12:熱交換器
12a:熱交換器(廃熱エリア熱交換器)
12b:熱交換器(熱利用エリア熱交換器)
13,13a,13b:循環管(流出入制御部)
14,14a,14b:弁(流出入制御部)
20:工場(廃熱エリア)
30:施設(熱利用エリア)
Claims (3)
- 潜熱蓄熱体を収容する下方空間と、前記下方空間よりも上側の空間であって前記潜熱蓄熱体よりも比重の小さい熱媒体が溜まる上方空間と、を有する容器と、
前記下方空間に配置されて前記容器の外部と連通し、前記熱媒体を前記容器の外部から前記潜熱蓄熱体内に流入するための吐出口を外周面に有する流入管と、
前記上方空間に配置されて前記容器の外部と連通し、前記上方空間にある前記熱媒体を前記容器の外部に流出するための吸入口を外周面に有する流出管と、
前記上方空間にある前記熱媒体を、前記流出管の前記吸入口から前記容器の外部に流量変動自在に流出させ、廃熱を発生する廃熱エリアに設置された廃熱エリア熱交換器または当該廃熱を利用する熱利用エリアに設置された熱利用エリア熱交換器を経由して、前記流入管の前記吐出口から流量変動自在に前記潜熱蓄熱体内に流入させる流出入制御部と、
前記上方空間にある前記熱媒体の液位を検出する液位センサと、
を備える潜熱蓄熱装置を用いた熱利用方法であって、
前記液位センサにより検出される前記熱媒体の液位が前記吸入口よりも高い定常位置にある状態で、前記流出入制御部を制御して、前記上方空間にある前記熱媒体を流出させて、前記廃熱エリア熱交換器で熱交換させ、当該流出の流量と同じ流量で前記潜熱蓄熱体内に流入させる貯熱運転を行なう工程と、
前記液位センサにより検出される前記熱媒体の液位が前記定常位置にある状態で、前記流出入制御部を制御して、前記上方空間にある前記熱媒体を前記熱媒体と前記潜熱蓄熱体との熱交換速度により上限が決定される第1の流量で流出させて、前記熱利用エリア熱交換器で熱交換させ、当該流出の流量と同じ流量で前記潜熱蓄熱体内に流入させる放熱運転を行なう工程と、
前記流出入制御部を制御して、一時的に、前記上方空間にある前記熱媒体を前記第1の流量の上限よりも大きい第2の流量で流出させて前記熱利用エリア熱交換器で熱交換させ、前記潜熱蓄熱体内に前記第1の流量で流入させる臨時放熱運転を行なう工程と、
を備える熱利用方法。 - 前記臨時放熱運転において前記熱媒体を前記第2の流量で流出させる際に、前記液位センサに前記熱媒体の液位を検出させ、当該液位が前記吸入口よりも高いうちに、前記流出入制御部を制御して、前記容器の外部に流出する前記熱媒体の流量を、前記潜熱蓄熱体内に流入する前記熱媒体の流量以下の流量にする、請求項1に記載の熱利用方法。
- 前記上方空間における前記吸入口よりも上側の空間である有効空間の容積が、前記容器の全容積に対して、10〜40%である、請求項1または2に記載の熱利用方法。
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