JP5907076B2 - リジン/アルギニン/オルニチントランスポーターをコードする遺伝子の弱化された発現を有する腸内細菌科の細菌を使用するl−アミノ酸の製造方法 - Google Patents

リジン/アルギニン/オルニチントランスポーターをコードする遺伝子の弱化された発現を有する腸内細菌科の細菌を使用するl−アミノ酸の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、微生物工業に関し、特に、リジン/アルギニン/オルニチントランスポーター(lysine/arginine/ornithine transporter)をコードする1またはそれ以上の遺伝子の発現が弱化された腸内細菌科(Enterobacteriaceae family)の細菌を使用するL-アミノ酸の製造方法に関する。
従来、L-アミノ酸は、自然源(natural sources)から得られた微生物の株、又はその変異体を利用する発酵法によって工業的に製造されている。典型的には、微生物は、L-アミノ酸の生産収量を増強するよう改変されている。
L-アミノ酸の生産収量を増強するための多数の技術が報告されており、これには組換えDNAにより微生物を形質転換することによるものが含まれる(例えば、特許文献1を参照のこと)。生産収量を増強するための他の技術には、アミノ酸の生合成に関与する酵素の活性を増加させること、及び/又は、結果として生じたL-アミノ酸によって引き起こされるフィードバック阻害の標的酵素を脱感作することが含まれる(例えば、特許文献2〜5を参照のこと)。
L-アミノ酸の生産収量を増強させる他の方策は、標的L-アミノ酸の分解に関与する1又は幾つかの遺伝子、標的L-アミノ酸の前駆体を標的L-アミノ酸の生合成経路から分岐させる遺伝子、炭素フラックス、窒素フラックス、及びリン酸フラックスの再分配に関与する遺伝子、ならびに毒素をコードする遺伝子等、の発現を弱化させることである。
サルモネラ・チフィムリウム(Salmonella typhimurium)のhisJ遺伝子及びargT遺伝子は、2つのペリプラズム結合タンパク質(periplasmic binding proteins)、すなわちJ及びLAO、をコードする。J及びLAOは、それぞれヒスチジン及びアルギニンの輸送に関与し、且つ、共通の膜結合成分、すなわちPタンパク質、と相互作用する。これら2つの遺伝子の全塩基配列は既に決定されている。2つの遺伝子は、高い相同性(70%)を示し、恐らくは、単一の先祖遺伝子のタンデム重複により生じたものである。コードされた2つのタンパク質は、今では別個の機能を果たすが、膜結合Pタンパク質の同一の部位との相互作用を可能とするのに十分な相同性を依然として保持している(非特許文献1)。
トラフィックATPアーゼ(ABCトランスポーター)のスーパーファミリーは、細菌のペリプラズム輸送系(パーミアーゼ)及び種々の真核生物のトランスポーターを含む。S. typhimurium及びEscherichia coliのヒスチジンパーミアーゼは、4つのサブユニットを含む膜結合複合体と、基質結合タンパク質(HisJ)とを含む可溶性受容体により構成され、ATPによって活性化する。ヒスチジンの輸送は、ATP及びリガンドであるHisJの両者に完全に依存し、且つ、pH、温度、及び塩濃度の影響を受けることが明らかとなっている。輸送は不可逆的であり、輸送が停止した段階で蓄積はプラトーに到達する。このパーミアーゼは、ADPにより、および高濃度の内部ヒスチジンにより、阻害される。ヒスチジンによる阻害は、恐らくは、膜結合複合体HisQ/M/Pが基質結合部位を含むことを示唆している。再構成されたパーミアーゼの活性は、生体内での輸送速度に対して、約40〜70%のターンオーバー速度に相当する(非特許文献2)。
Salmonella typhimuriumのペリプラズムヒスチジンパーミアーゼの膜結合複合体は、2つ内在性膜タンパク質であるHisQとHisM、及び2コピーのATP結合サブユニットであるHis
Pにより構成されている。この複合体は、可溶性受容体及びペリプラズムに局在するヒスチジン結合タンパク質であるHisJによる活性の誘導の際にATPを加水分解する。ヌクレオチド結合成分は、内在性膜成分であるHisQ及びHisMから解離し得ることが明らかとなっている。この複合体は、HisPを欠失させたHisQ及びHisMを含む膜、及び純粋な可溶性のHisPを用いて再構成することができる。HisPは、HisPを欠失させた複合体、すなわちHisQMに対して高い親和性を有することが明らかとなっており、2つのHisP分子は互いに独立に各HisQMユニットに補給される。in vitroで再会合された複合体は、完全に正常な性質を有し、可溶性のHisPの特性とは異なり、本来の複合体と同一の特性でHisJ及びATPアーゼ阻害剤に応答する。これらの結果は、HisPはATPの加水分解に絶対的に必要であり、HisQMはATPを加水分解することができず、HisPはHisQMに依存して可溶性受容体HisJからの誘導シグナルを中継し、HisQMはHisPのATPアーゼ活性を調節することを示す。また、HisPは、リン脂質に曝露された際に構造(conformation)を変化させることも示されている(非特許文献3)。
E. coliのArgTタンパク質は、28kDaの細胞質性の前駆体タンパク質及び25.8kDaの成熟ペリプラズムタンパク質であり得る。定常期の適応調節におけるタンパク質分解の関与を解明するために、Escherichia coliのclpA、clpX、及びclpPプロテアーゼ変異体を、生育時、および炭素飢餓時に、プロテオーム解析に供した。clpA、clpX、又はclpP変異体において、ペリプラズムのリジン−アルギニン−オルニチン結合タンパク質ArgTは、後期定常期の野生型細胞に典型的に見られる誘導を示さなかった(非特許文献4)。
しかしながら、現在のところ、L-アミノ酸を生産する目的で、リジン/アルギニン/オルニチントランスポーターをコードする遺伝子の発現を弱化させることについての報告はない。
米国特許第4,278,765号 国際公開第95/16042号 米国特許第4,346,170号 米国特許第5,661,012号 米国特許第6,040,160号
Higgins C. F., Ames G. F., Proc Natl Acad Sci USA.; 78(10): 6038-42 (1981) Liu C. E., Ames G. F., J. Biol. Chem.; 272(2): 859-66 (1997) Liu P. Q., Ames G. F., Proc Natl Acad Sci USA.; 95(7): 3495-500 (1998) Weichart D. et al., Journal of Bacteriology, Vol. 185, No. 1, p. 115-125 (2003)
本発明の態様には、L-アミノ酸生産株の生産性を増強すること、および、これらの株を使用するL-アミノ酸を製造する方法を提供することが含まれる。
argT-hisJQMPクラスターの発現を弱化させることにより、アミノ酸、例えば、L-リジン、L-アルギニン、オルニチン、及びシトルリン等のジアミノモノカルボン酸、の生産を増強させることができることが見出された。
本発明は、アミノ酸、例えば、L-リジン、L-アルギニン、オルニチン、及びシトルリン等のジアミノモノカルボン酸を生産する増大した能力を有する腸内細菌科の細菌を提供する。
本発明の一態様は、腸内細菌科のL-アミノ酸生産細菌であって、リジン/アルギニン/オルニチントランスポーターをコードする1またはそれ以上の遺伝子の発現が弱化されるように改変された細菌を提供することである。
本発明の更なる態様は、前記リジン/アルギニン/オルニチントランスポーターをコードする遺伝子が、argT-hisJQMPクラスターの1またはそれ以上の遺伝子である前記細菌を提供することである。
本発明の更なる態様は、前記リジン/アルギニン/オルニチントランスポーターをコードする1またはそれ以上の遺伝子の発現が、前記1またはそれ以上の遺伝子の不活化により弱化された前記細菌を提供することである。
本発明の更なる態様は、前記argT-hisJQMPクラスターの1またはそれ以上の遺伝子が不活化されている前記細菌を提供することである。
本発明の更なる態様は、Escherichia属に属する前記細菌を提供することである。
本発明の更なる態様は、Escherichia coliである前記細菌を提供することである。
本発明の更なる態様は、Pantoea属に属する前記細菌を提供することである。
本発明の更なる態様は、前記L-アミノ酸が、ジアミノモノカルボン酸である前記細菌を提供することである。
本発明の更なる態様は、前記ジアミノモノカルボン酸が、L-リジン、L-アルギニン、オルニチン、及びシトルリンからなる群より選択される前記細菌を提供することである。
本発明の更なる態様は、L-アミノ酸を製造する方法であって、前記細菌を培地中で培養すること、およびL-アミノ酸を培地から回収することを含む方法を提供することである。
本発明の更なる態様は、前記L-アミノ酸が、ジアミノモノカルボン酸である前記細菌を提供することである。
本発明の更なる態様は、前記ジアミノモノカルボン酸が、L-リジン、L-アルギニン、オルニチン、及びシトルリンからなる群より選択される前記細菌を提供することである。
本発明を以下に詳細に説明する。
1.細菌
ここに開示する主題に基づく細菌は、ジアミノモノカルボン酸等のL-アミノ酸を生産することのできる腸内細菌科の細菌であって、リジン/アルギニン/オルニチントランスポーターをコードする1またはそれ以上の遺伝子の発現が弱化されるように改変された細菌である。
「L-アミノ酸を生産する細菌」という記載は、培地中で培養した場合に、L-アミノ酸を生産して培地中に分泌する能力を有する細菌を意味してよい。
「L-アミノ酸を生産する細菌」という用語は、E. coli K-12等のE. coliの野生株又は親株よりも多い量で、ジアミノモノカルボン酸等のL-アミノ酸を生産して培地中への蓄積を引き起こすことのできる細菌を意味してもよく、細菌が、0.5 g/L以上、他の例では1.0
g/L以上の量で、培地中への標的L-アミノ酸の蓄積を引き起こすことができることを意味してもよい。
「ジアミノモノカルボン酸」という用語は、L-リジン、L-アルギニン、オルニチン、及びシトルリンを包含してよい。これらのアミノ酸は、アミノ基の存在により正の電荷を有する。
腸内細菌科は、エシェリヒア(Escherichia)属、エンテロバクター(Enterobacter)属、エルビニア(Erwinia)属、クレブシエラ(Klebsiella)属、パントエア(Pantoea)属、フォトラブダス(Photorhabdus)属、プロビデンシア(Providencia)属、サルモネラ(Salmonella)属、セラチア(Serratia)属、シゲラ(Shigella)属、モルガネラ(Morganella)属、エルシニア(Yersinia)属等に属する細菌を包含する。特に、NCBI(National Center for Biotechnology Information)データベース(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/Taxonomy/Browser/wwwtax.cgi?id=543)で使用される分類により腸内細菌科(Enterobacteriaceae)に分類されるものを使用することができる。Escherichia属又はPantoea属に属する細菌が好ましい。
「Escherichia属に属する細菌」という記載は、細菌が、微生物学の当業者に公知の分類に従って、Escherichia属に分類されることを意味してよい。Escherichia属に属する細菌としては、限定されるものではないが、エシェリヒア・コリ(Escherichia coli(E. coli))が挙げられる。
Escherichia属に属する細菌は特に限定されないが、例えば、Neidhardt, F. C.らによって記載された細菌(Escherichia coli and Salmonella typhimurium, American Society for Microbiology, Washington D.C., 1208, Table 1)を使用することができる。
「Pantoea属に属する細菌」という記載は、細菌が、微生物学の当業者に公知の分類に従って、Pantoea属に分類されることを意味してよい。エンテロバクター・アグロメランス(Enterobacter agglomerans)の幾つかの種は、最近では、16S rRNAの塩基配列解析等に基いて、パントエア・アグロメランス(Pantoea agglomerans)、パントエア・アナナティス(Pantoea ananatis)、パントエア・スチュアールティ(Pantoea stewartii)等に再分類されている(Int. J. Syst. Bacteriol., 43, 162-173 (1993))。
「リジン/アルギニン/オルニチントランスポーターをコードする1またはそれ以上の遺伝子の発現が弱化された」という記載は、改変された細菌が、改変されていない細菌と比較して、減少した量のリジン/アルギニン/オルニチントランスポーターを含有するように改変されたことを意味してもよく、改変された細菌が、リジン/アルギニン/オルニチントランスポーターを合成することができないことを意味してもよい。
「遺伝子の不活化」という記載は、改変された遺伝子が、完全に不活性なタンパク質をコードすることを意味してよい。遺伝子の欠損、遺伝子のリーディングフレームのシフト、ミスセンス/ナンセンス変異の導入、又は遺伝子の隣接領域(プロモーター、エンハンサー、アテニュエーター、リボソーム結合部位等の遺伝子の発現を制御する配列を含む)の改変により、改変されたDNA領域が遺伝子を本来の形で発現できないことも可能である
細菌の染色体上の標的遺伝子の有無は、PCRやサザンブロッティング等を含む周知の方法によって検出することができる。また、遺伝子発現のレベルは、ノーザンブロッティングや定量的RT-PCR等を含む種々の周知の方法を使用し、遺伝子から転写されたmRNAの量を測定することによって見積もることができる。遺伝子によってコードされるタンパク質の量または分子量は、SDS-PAGEとそれに続けてイムノブロッティングアッセイ(ウエスタンブロッティング分析)を行うこと等を含む周知の方法によって測定することができる。
リジン/アルギニン/オルニチントランスポーターをコードする1またはそれ以上の遺伝子としては、argT-hisJQMPクラスターを構成する遺伝子が挙げられる。
argT遺伝子(ECK2304, b2310と同義)はArgTをコードし、ArgTはリジン/アルギニン/オルニチンABCトランスポーター(B2310と同義)のサブユニットである。E. coliのargT遺伝子(GenBank accession number NC_000913.2; gi:16130244におけるヌクレオチド2,425,031〜2,425,813に相補的なヌクレオチド)は、遺伝子hisJと遺伝子ubiXとの間に位置する(両遺伝子は、E. coli株K-12の染色体上でargTと同一の方向に配向している)。argT遺伝子の塩基配列及びargT遺伝子によってコードされるArgTのアミノ酸配列を、それぞれ配列番号1及び配列番号2に示す。
hisJ遺伝子(ECK2303, b2309と同義)はHisJをコードし、HisJはヒスチジンABCトランスポーター(B2309と同義)のサブユニットである。E. coliのhisJ遺伝子(GenBank accession number NC_000913.2; gi:16130244におけるヌクレオチド2,424,028〜2,424,810に相補的なヌクレオチド)は、遺伝子argTと遺伝子hisQとの間に位置する(両遺伝子は、E.
coli株K-12の染色体上でhisJと同一の方向に配向している)。hisJ遺伝子の塩基配列及びhisJ遺伝子によってコードされるHisJのアミノ酸配列を、それぞれ配列番号3及び配列番号4に示す。
hisJ遺伝子の発現の弱化は本発明に必須ではないが、hisJの発現を弱化させてもよい。
hisQ遺伝子(ECK2302, b2308と同義)はHisQをコードし、HisQはリジン/アルギニン/オルニチンABCトランスポーター(B2308と同義)のサブユニットである。E. coliのhisQ遺伝子(GenBank accession number NC_000913.2; gi:16130243におけるヌクレオチド2,423,252〜2,423,938に相補的なヌクレオチド)は、遺伝子hisJと遺伝子hisMとの間に位置する(両遺伝子は、E. coli株K-12の染色体上でhisQと同一の方向に配向している)。hisQ遺伝子の塩基配列及びhisQ遺伝子によってコードされるHisQのアミノ酸配列を、それぞれ配列番号5及び配列番号6に示す。
hisM遺伝子(ECK2301, b2307と同義)はHisMをコードし、HisMはリジン/アルギニン/オルニチンABCトランスポーター(B2307と同義)のサブユニットである。E. coliのhisM遺伝子(GenBank accession number NC_000913.2; gi:16130242におけるヌクレオチド2,422,539〜2,423,255に相補的なヌクレオチド)は、遺伝子hisQと遺伝子hisPとの間に位置する(両遺伝子は、E. coli株K-12の染色体上でhisMと同一の方向に配向している)。hisM遺伝子の塩基配列及びhisM遺伝子によってコードされるHisMのアミノ酸配列を、それぞれ配列番号7及び配列番号8に示す。
hisP遺伝子(ECK2300, b2306と同義)はHisPをコードし、HisPはリジン/アルギニン/オルニチンABCトランスポーター(B2306と同義)のサブユニットである。E. coliのhisP遺伝子(GenBank accession number NC_000913.2; gi:16130241におけるヌクレオチド2,421,758〜2,422,531に相補的なヌクレオチド)は、遺伝子hisMとORF yfcIとの間に位置す
る(両遺伝子は、E. coli株K-12の染色体上でhisPと同一の方向に配向している)。hisP遺伝子の塩基配列及びhisP遺伝子によってコードされるHisPのアミノ酸配列を、それぞれ配列番号9及び配列番号10に示す。
腸内細菌科の属又は株の間でDNA配列に幾分かの差異があり得るため、argT-hisJQMPクラスターは、配列番号1、配列番号3、配列番号5、配列番号7、及び配列番号9に示される遺伝子には限定されず、ArgT、HisJ、HisQ、HisM、及びHisPのバリアントタンパク質(variant proteins)をコードする、配列番号1、配列番号3、配列番号5、配列番号7、及び配列番号9に相同な遺伝子を含んでいてよい。「バリアントタンパク質」という記載は、アミノ酸の欠失、挿入、付加、又は置換のいずれであるかにかかわらず配列中に変異を有するが、タンパク質の機能は維持されているタンパク質を意味してよい。バリアントタンパク質における変異の数は、タンパク質の三次元構造における位置又はアミノ酸残基の種類に依存する。バリアントタンパク質における変異の数は、配列番号2、配列番号4、配列番号6、配列番号8、及び配列番号10において、1〜30、他の例では1〜15、更に他の例では1〜5であってよい。このような変異は、タンパク質の機能に重要ではないタンパク質の領域において生じうる。これは、幾つかのアミノ酸は互いに高い相同性を有しているため、そのような変異によっては三次元構造又は活性は影響を受けないからである。したがって、argT-hisJQMPクラスターの遺伝子によってコードされるタンパク質のバリアントは、タンパク質の機能が維持される限り、配列番号2、配列番号4、配列番号6、配列番号8、及び配列番号10に示すアミノ酸配列全体に対して、80%以上、他の例では90%以上、95%以上、他の例では98%以上、更に他の例では99%以上の相同性を有し得る。この明細書では、「相同性」という用語は、「同一性」を意味してよい。
2つのアミノ酸配列の間の相同性は、周知の方法、例えば、3つのパラメータ(スコア、同一性、及び類似性)を計算するコンピュータプログラムBLAST 2.0を使用して決定することができる。
更に、argT-hisJQMPクラスターの遺伝子は、機能的なタンパク質をコードする限り、配列番号1、配列番号3、配列番号5、配列番号7、及び配列番号9に示す塩基配列又はこの塩基配列から調製することのできるプローブと、ストリンジェントな条件下でハイブリダイズするバリアントであってよい。「ストリンジェントな条件」は、特異的なハイブリッド、例えば、60%以上、他の例では70%以上、他の例では80%以上、他の例では90%以上、他の例では95%以上、他の例では98%以上、更に他の例では99%以上の相同性を有するハイブリッドが形成され、非特異的なハイブリッド、例えば、前記より低い相同性を有するハイブリッドが形成されないような条件を含む。例えば、ストリンジェントな条件としては、1×SSC、0.1%SDS、好ましくは0.1×SSC、0.1%SDSの塩濃度で、60℃で、1回またはそれ以上、他の例では2回又は3回、洗浄することが挙げられる。洗浄時間は、ブロッティングに使用する膜の種類に依存し、原則として、製造業者によって推奨されているものとすべきである。例えば、ストリンジェントな条件下でHybond(商標名)N+ナイロン膜(アマシャム)について推奨される洗浄時間は15分である。洗浄は、2〜3回行うことができる。プローブの長さは、ハイブリダイゼーション条件に応じて適宜選択することができ、通常は100 bp〜1kbpである。
argT-hisJQMPクラスターの遺伝子の発現は、遺伝子によってコードされるタンパク質の細胞内の活性が非改変株と比較して減少するよう、遺伝子に変異を導入することにより、弱化させることができる。このような遺伝子の変異は、遺伝子によってコードされるタンパク質におけるアミノ酸の置換を引き起こす1以上の塩基の置換(ミスセンス変異)、終止コドンの導入(ナンセンス変異)、フレームシフトを引き起こす1又は2塩基の欠失、薬剤耐性遺伝子の挿入、又は遺伝子の一部若しくは遺伝子の全体の欠失であってよい(Qiu, Z. and Goodman, M. F., J. Biol. Chem., 272, 8611-8617 (1997); Kwon, D. H.ら、
J. Antimicrob. Chemother., 46, 793-796 (2000))。argT-hisJQMPクラスターの遺伝子の発現は、各遺伝子の、プロモーターやシャイン-ダルガルノ(SD)配列等の発現調節配列を改変することによっても弱化させることができる(WO95/34672; Carrier, T. A. and
Keasling, J. D., Biotechnol Prog 15, 58-64 (1999))。
例えば、遺伝子組換えによって変異を導入するために、以下の方法を用いることができる。活性の低下した変異型タンパク質をコードする変異型遺伝子を調製することができ、その変異型遺伝子を含むDNA断片を用いて、改変すべき細菌を形質転換することができる。その後、相同組換えによって、染色体上の本来の(native)遺伝子を変異型遺伝子で置換し、この結果得られる株を選択することができる。相同組換えを使用するこのような遺伝子置換は、直鎖DNAを用いて行うことができ、これは「Redドリブンインテグレーション(Red-driven integration)」として知られている(Datsenko, K.A. and Wanner, B.L., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 97, 12, p 6640-6645 (2000), WO2005/010175)。または、相同組換えを使用する遺伝子置換は、温度感受性複製制御領域を含むプラスミドを用いる方法により行うことができる(Proc. Natl. Acad. Sci., USA, 97, 12, p6640-6645 (2000)、米国特許第6,303,383号及び5,616,480号)。更に、宿主中で複製できないプラスミドを使用することにより、上記したような相同組換えを使用する遺伝子置換による部位特異的変異の導入を行うこともできる。
標的遺伝子の発現は、遺伝子のコード領域にトランスポゾン又はIS因子(IS factor)を挿入することによっても弱化させることができ(米国特許第5,175,107号)、又は、従来の方法、例えば、UV照射又はニトロソグアニジン(N-methyl-N'-nitro-N-nitrosoguanidine)処理を用いる変異誘発処理によっても弱化させることができる。
標的遺伝子の不活化は、従来の方法、例えば、UV照射又はニトロソグアニジン(N-methyl-N'-nitro-N-nitrosoguanidine)処理を用いる変異誘発処理、部位特異的変異誘発、相同組換えを使用する遺伝子破壊、及び/又は「Redドリブンインテグレーション(Red-driven integration)」とも呼ばれる挿入−欠失変異誘発(Yu, D. et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 2000, 97:12: 5978-83 and Datsenko, K.A. and Wanner, B.L., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 2000, 97:12: 6640-45)によっても行うことができる。
プラスミドDNAの調製、DNAの消化及び連結、形質転換、オリゴヌクレオチドのプライマーとしての選択のための方法等は、当業者に周知の通常の方法であってよい。これらの方法は、例えば、Sambrook, J., Fritsch, E.F., and Maniatis, T., "Molecular Cloning:
A Laboratory Manual, Second Edition", Cold Spring Harbor Laboratory Press (1989)に記載されている。
L-アミノ酸生産細菌
リジン/アルギニン/オルニチントランスポーターをコードする1またはそれ以上の遺伝子の発現が弱化された細菌は、ジアミノモノカルボン酸等のL-アミノ酸を生産することのできる細菌であってよく、ここに開示する主題に基づく方法において使用することができる。
細菌は、ジアミノモノカルボン酸等のL-アミノ酸を生産する能力をもともと(inherently)有する細菌において、リジン/アルギニン/オルニチントランスポーターをコードする遺伝子の発現を弱化させることにより得られる。あるいは、細菌は、リジン/アルギニン/オルニチントランスポーターをコードする遺伝子の発現が既に弱化された細菌に対して、ジアミノモノカルボン酸等のL-アミノ酸を生産する能力を付与することにより得られる。
L-リジン生産細菌
Escherichia属に属するL-リジン生産細菌又は親株としては、L-リジンアナログに対する耐性を有する変異体が挙げられる。L-リジンアナログは、Escherichia属に属する細菌の生育を阻害するが、培地中にL-リジンが存在する場合、この阻害は完全に又は部分的に脱感作される。L-リジンアナログとしては、限定されるものではないが、オキサリジン、リジンハイドロキサメート、S-(2-アミノエチル)-L-システイン(AEC)、γ‐メチルリジン、α‐クロロカプロラクタム等が挙げられる。これらのリジンアナログに対する耐性を有する変異体は、Escherichia属に属する細菌を従来の人工的な変異誘発処理に供することによって得ることができる。L-リジンを製造するのに有用な細菌株としては、特に、Escherichia coli AJ11442 (FERM BP-1543, NRRL B-12185;米国特許第4,346,170号参照)及びEscherichia coli VL611が挙げられる。これらの微生物においては、L-リジンによるアスパルトキナーゼのフィードバック阻害が脱感作されている。
WC196株は、Escherichia coliのL-リジン生産細菌として使用することができる。この細菌株は、Escherichia coli K-12から誘導されたW3110株から、W3110株の染色体上の野生型lysC遺伝子を、352位のスレオニンがイソロイシンによって置換されたことによりL-リジンによるフィードバック阻害が脱感作された変異型アスパルトキナーゼIIIをコードする変異型lysC遺伝子で置換し、この結果得られた株にAEC耐性を与えることにより、育種された(米国特許第5,661,012号)。この結果得られた株は、Escherichia coli AJ13069と命名され、工業技術院生命工学工業技術研究所(現、独立行政法人産業技術総合研究所特許生物寄託センター、日本国 茨城県つくば市東1丁目1番地1 中央第6 (郵便番号305-8566))に、1994年12月6日に寄託され、FERM P-14690の受託番号が付与された。その後、1995年9月29日にブダペスト条約に基づく国際寄託に移管され、FERM BP-5252の受託番号が付与された(米国特許第5,827,698号)。
L-リジンを生産することができる細菌を誘導するのに使用することができる親株としては、L-リジン生合成酵素をコードする1またはそれ以上の遺伝子の発現が増強された株が挙げられる。このような遺伝子としては、限定されるものではないが、ジヒドロジピコリネート合成酵素(dapA)、アスパルトキナーゼ(lysC)、ジヒドロジピコリネートレダクターゼ(dapB)、ジアミノピメレートデカルボキシラーゼ(lysA)、ジアミノピメレートデヒドロゲナーゼ(ddh)(米国特許第6,040,160号)、ホスホエノールピルビン酸カルボキシラーゼ(ppc)、アスパルテートセミアルデヒドデヒドロゲナーゼ(asd)、及びアスパルターゼ(aspA)(EP1253195A)をコードする遺伝子が挙げられる。また、親株は、エネルギー効率に関与する遺伝子(cyo)(EP1170376A)、ニコチンアミドヌクレオチドトランスヒドロゲナーゼをコードする遺伝子(pntAB)(米国特許第5,830,716号)、ybjE遺伝子(WO2005/073390)、又はこれらの組合せについて発現を増大した株であってよい。
L-リジンを生産することができる細菌を誘導するのに使用することができる親株としては、L-リジンの生合成経路から分岐してL-リジン以外の化合物を生成するための反応を触媒する酵素の活性が減少したか、この活性を有さない株が挙げられる。L-リジンの生合成経路から分岐してL-リジン以外の化合物を生成するための反応を触媒する酵素としては、ホモセリンデヒドロゲナーゼ、リジンデカルボキシラーゼ(米国特許第5,827,698号)、及びリンゴ酸酵素(malic enzyme)(WO2005/010175)が挙げられる。
L-アルギニン生産細菌
L-アルギニンを生産することができる細菌を誘導するのに使用することができる親株としては、限定されるものではないが、E. coli 237株 (VKPM B-7925)(米国特許出願第2002/058315A1号)及び変異型N-アセチルグルタミン酸合成酵素を保有するその誘導体株(ロシア連邦特許出願第2001112869号)、E. coli 382株 (VKPM B-7926)(EP1170358A1)、ならびにN-アセチルグルタミン酸合成酵素をコードするargA遺伝子が導入されたアルギニン
生産株(EP1170361A1)等のEscherichia属に属する株が挙げられる。
L-アルギニンを生産することができる細菌を誘導するのに使用することができる親株としては、L-アルギニンの生合成酵素をコードする1つまたはそれ以上の遺伝子の発現が増強された株も挙げられる。このような遺伝子としては、N-アセチルグルタミルリン酸レダクターゼ(argC)、オルニチンアセチルトランスフェラーゼ(argJ)、N-アセチルグルタミン酸キナーゼ(argB)、アセチルオルニチントランスアミナーゼ(argD)、オルニチンカルバモイルトランスフェラーゼ(argF)、アルギノコハク酸合成酵素(argG)、アルギノコハク酸リアーゼ(argH)、及びカルバモイルリン酸合成酵素(carAB)をコードする遺伝子が挙げられる。
L-シトルリン生産細菌
L-シトルリン生産細菌、又はシトルリンを生産することのできる細菌を誘導するのに使用することのできる親株としては、限定されるものではないが、E. coliの変異型N-アセチルグルタミン酸合成酵素株である237/pMADS11、237/pMADS12及び237pMADS13(RU2215783, EP1170361B1, US6790647B2)等のEscherichia属に属する株が挙げられる。
また、シトルリンを生産する細菌は、アルギニンを生産することのできるいずれかの細菌、例えばE. coli 382株 (VKPM B-7926)から、argG遺伝子によってコードされるアルギノコハク酸合成酵素を不活化させることにより容易に得られる。
「アルギノコハク酸合成酵素の不活化」という記載は、細菌が不活性なアルギノコハク酸合成酵素を含有するように改変されたことを意味してもよく、細菌がアルギノコハク酸合成酵素を合成することができないことを意味してもよい。アルギノコハク酸合成酵素の不活化は、argG遺伝子の不活化によって行うことができる。
「argG遺伝子の不活化」という記載は、改変された遺伝子が、完全に非機能的なタンパク質をコードすることを意味する。遺伝子の一部または全体の欠失、遺伝子のリーディングフレームのシフト、ミスセンス/ナンセンス変異の導入、又は遺伝子の隣接領域(プロモーター、エンハンサー、アテニュエーター、リボソーム結合部位等の遺伝子の発現を制御する配列を含む)の改変により、改変されたDNA領域が遺伝子を本来の形で発現できないことも可能である。
細菌の染色体上のargG遺伝子の有無は、PCRやサザンブロッティング等を含む周知の方法によって検出することができる。また、遺伝子発現のレベルは、ノーザンブロッティングや定量的RT-PCR等を含む種々の周知の方法を使用し、遺伝子から転写されたmRNAの量を測定することによって見積もることができる。argG遺伝子によってコードされるタンパク質の量は、SDS-PAGEとそれに続けてイムノブロッティングアッセイ(ウエスタンブロッティング分析)を行うこと等を含む周知の方法によって測定することができる。
argG遺伝子の発現は、遺伝子によってコードされるタンパク質の細胞内の活性が非改変株と比較して減少するよう、染色体上の遺伝子に変異を導入することにより、弱化させることができる。遺伝子の発現の弱化をもたらす変異には、遺伝子によってコードされるタンパク質におけるアミノ酸の置換を引き起こす1以上の塩基の置換(ミスセンス変異)、終止コドンの導入(ナンセンス変異)、フレームシフトを引き起こす1又は2塩基の欠失、薬剤耐性遺伝子の挿入、又は遺伝子の一部若しくは遺伝子の全体の欠失が含まれる(Qiu, Z. and Goodman, M.F., J. Biol. Chem., 272, 8611-8617 (1997); Kwon, D. H. et al, J. Antimicrob. Chemother., 46, 793-796 (2000))。argG遺伝子の発現は、プロモーターやシャイン-ダルガルノ(SD)配列等の発現調節配列を改変することによっても弱化させることができる(WO95/34672; Carrier, T.A. and Keasling, J.D., Biotechnol Pro
g 15, 58-64 (1999))。
例えば、遺伝子組換えによって変異を導入するために、以下の方法を用いることができる。活性の低下した変異型タンパク質をコードする変異型遺伝子を調製し、その変異型遺伝子を含むDNA断片を用いて、細菌を形質転換する。その後、相同組換えによって、染色体上の本来の(native)遺伝子を変異型遺伝子によって置換し、この結果得られる株を選択する。相同組換えを使用する遺伝子置換または遺伝子破壊は、直鎖DNAを用いて行うことができ、これは「Redドリブンインテグレーション(Red-driven integration)」として知られている(Datsenko, K.A. and Wanner, B.L., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 97, 12, p 6640-6645 (2000))。または、相同組換えを使用する遺伝子置換は、温度感受性複製開始点を有するプラスミドを用いて行うことができる(米国特許第6,303,383号又はJP 05-007491A)。更に、宿主中で複製できないプラスミドを使用する上記したような相同組換えを使用して、遺伝子置換による部位特異的変異を組込むこともできる。
遺伝子の発現は、遺伝子のコード領域にトランスポゾン又はIS因子(IS factor)を挿入することによっても弱化させることができ(米国特許第5,175,107号)、又は、従来の方法、例えば、UV照射又はニトロソグアニジン(N-methyl-N'-nitro-N-nitrosoguanidine)を用いる変異誘発によっても弱化させることができる。
L-オルニチン生産細菌
オルニチンを生産することのできる細菌は、いずれかのアルギニン生産細菌、例えば、E. coli 382株(VKPM B-7296)から、argF及びargIの両遺伝子によりコードされるオルニチンカルバモイルトランスフェラーゼを不活化させることにより容易に取得することができる。オルニチンカルバモイルトランスフェラーゼの不活化は、上記と同様の手法で行うことができる。
2.本発明の方法
ここに開示した主題に基づく例示的な方法には、細菌を培地中で培養して、L-アミノ酸を生産して培地中に分泌させ、培地からL-アミノ酸を回収することによるL-アミノ酸の製造が含まれる。
培養、ならびに培地からのL-アミノ酸の回収及び精製等は、細菌を使用してアミノ酸を製造する従来の発酵法と同様のやり方で行うことができる。
培養に使用する培地は、炭素源、窒素源、ミネラル、および必要に応じて、選択された細菌が生育のために要求する適量の栄養素を含む限り、合成培地であってもよく、天然培地であってもよい。炭素源には、グルコースおよびスクロース等の種々の炭水化物および種々の有機酸が含まれ得る。選択された微生物の同化の様式によっては、エタノール及びグリセリンを含むアルコールを使用してよい。窒素源としては、アンモニア及び硫酸アンモニウム等の種々のアンモニウム塩、アミン等の他の窒素化合物、ペプトン、大豆加水分解物、及び消化された発酵微生物等の天然の窒素源を使用することができる。ミネラルとしては、モノリン酸カリウム、硫酸マグネシウム、塩化ナトリウム、硫酸第一鉄、硫酸マンガン、塩化カルシウム等を使用することができる。ビタミンとしては、チアミン、酵母エキス等を使用することができる。
培養は、20〜40℃の温度で、他の例では30〜38℃の温度で、振盪および/または通気攪拌によるような好気的な条件下で、行うことができる。培養のpHは、通常は5〜9、他の例では6.5〜7.2である。培養のpHは、アンモニア、炭酸カルシウム、種々の酸、種々の塩基、及び緩衝液を用いて調整することができる。通常は、1〜5日間の培養により、液体培地中に標的のL-アミノ酸が蓄積する。
培養後、細胞等の固形分は、遠心分離又は膜ろ過によって液体培地から除去することができ、その後、L-アミノ酸は、イオン交換、濃縮、及び/又は結晶化の方法によって回収および精製することができる。
以下の非限定的な実施例を参照し、以下、本発明を更に具体的に説明する。
実施例1.不活化されたargT-hisJQMPクラスターを有する株の構築
1.argT-hisJQMPクラスターの欠失
argT-hisJQMPクラスターを欠失した株は、Datsenko, K. A.とWanner, B. L. (Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 2000, 97(12), 6640-6645)によって最初に開発された「Redドリブンインテグレーション(Red-driven integration)」と呼ばれる方法により構築した。プライマーP1(配列番号11)及びP2(配列番号12)、並びにテンプレートとしてプラスミドpMW118-attL-Cm-attR(WO05/010175)を使用し、cat遺伝子によりコードされるCmRマーカーを含むDNA断片をPCRにより取得した。プライマーP1は、argT遺伝子の5'末端に位置する領域に相補的な領域及びattR領域に相補的な領域の両方を含む。プライマーP2は、hisP遺伝子の3'末端に位置する領域に相補的な領域及びattL領域に相補的な領域の両方を含む。PCRの条件は次の通りである:95℃で3分の変性工程;2回の第1のサイクルのプロフィール:95℃で1分、50℃で30秒、72℃で40秒;最後の25サイクルのプロフィール:95℃で30秒、54℃で30秒、72℃で40秒;最後の工程:72℃で5分。
1.6 kbのPCR産物を取得してアガロースゲルで精製し、プラスミドpKD46を有するE. coli MG1655株(ATCC700926)のエレクトロポーレーションに使用した。プラスミドpKD46(Datsenko, K. A. and Wanner, B. L., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 2000, 97:12: 6640-45)は、温度感受性の複製開始点、λファージの2,154塩基のDNA断片(ヌクレオチド位置31088〜33241, GenBank accession no. J02459)、並びにアラビノース誘導性ParaBプロモーターの制御下にあるλRed相同組換え系の遺伝子(γ、β、およびエキソ(exo)遺伝子)を含む。プラスミドpKD46は、MG1655株の染色体へのPCR産物の組込みに必要である。MG1655株は、アメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション(P. O. Box 1549 Manassas, VA 20108, U.S.A.)から入手することができる。
エレクトロコンピテント細胞は次のようにして調製した。E. coli MG1655/pKD46を、アンピシリン(100 mg/l)を含有するLB培地中で30℃で一夜生育させ、培養液を、アンピシリン及びL-アラビノース(1mM)を含有する5mlのSOB培地(Sambrookら、"Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Second Edition", Cold Spring Harbor Laboratory Press, 1989)で100倍に希釈した。細胞を、OD600が約0.6になるまで30℃で通気しながら生育させた後、100倍に濃縮し、氷冷した脱イオン水を用いて3回洗浄することによりエレクトロコンピテント化させた。エレクトロポーレーションは、70μlの細胞及び約100 ngのPCR産物を使用して行った。エレクトロポーレーション後の細胞を、1mlのSOC培地(Sambrookら、"Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Second Edition", Cold Spring Harbor Laboratory Press, 1989)を用いて37℃で2.5時間インキュベートした後、クロラムフェニコール(30μg/ml)を含有するL-寒天上にプレーティングし、37℃で生育させてCmR組換え体を選択した。その後、pKD46プラスミドを除去するために、Cmを有するL-寒天上で42℃で2回継代(passages)を行い、得られたコロニーのアンピシリン感受性を試験した。
2.PCRによるargT-hisJQMPクラスター欠失の検証
argT-hisJQMPクラスターを欠失しCm耐性遺伝子で標識された組換え体を、PCRによって検証した。部位特異的(locus-specific)プライマーP3(配列番号13)及びP4(配列番
号14)を検証のためのPCRで使用した。PCRによる検証の条件は次の通りである:94℃で3分の変性工程;30サイクルのプロフィール:94℃で30秒、54℃で30秒、72℃で1分;最後の工程:72℃で7分。組換え株の細胞をテンプレートとして用いた反応で取得したPCR産物は、1650bpの長さであった。組換え株を、MG1655ΔargT-hisJQMP::catと命名した。
実施例2.E. coli 382ΔargT-hisPによるL-アルギニンの生産
L-アルギニン生産におけるargT-hisJQMPクラスターの不活化の効果を試験するために、上記のE. coli MG1655ΔargT-hisP::catの染色体由来のDNA断片を、E. coliアルギニン生産株382にP1トランスダクション(Miller, J. H. Experiments in Molecular Genetics, Cold Spring Harbor Lab. Press, 1972, Plainview, NY)によって導入し、382ΔargT-hisP株を得た。382株は、Russian National Collection of Industrial Microorganisms (VKPM) (Russia, 117545 Moscow, 1 Dorozhny proezd, 1)に2000年4月10日に受託番号VKPM B-7926の下で寄託され、その後、2001年5月18日にブダペスト条約に基づく寄託に移管された。
E. coli 382株及び382ΔargT-hisP株の両株を、それぞれ、3mlのニュートリエントブロス中で37℃で18時間振盪しながら培養し、0.3 mlの得られた培養液を20×200 mmの試験管中の2mlの発酵培地に接種し、ロータリーシェーカーで32℃で48時間培養した。
培養後、培地中に蓄積するL-アルギニンの量を、以下の移動相:ブタノール:酢酸:水=4:1:1(v/v)を用いたペーパークロマトグラフィーにより測定した。ニンヒドリン(2%)のアセトン溶液を、発色試薬として使用した。L-アルギニンを含むスポットを切り出し、CdCl2の0.5%水溶液を用いてL-アルギニンを溶出させ、L-アルギニンの量を540 nmで分光学的に見積もった。8つの独立した試験管発酵の結果を表1に示す。表1から分かるように、382ΔargT-hisP株は、382と比較して、より多い量のL-アルギニンを生産した。
発酵培地の組成(g/l)は以下の通りであった。
グルコース 48.0
(NH4)2SO4 35.0
KH2PO4 2.0
MgSO4・7H2O 1.0
チアミンHCl 0.0002
酵母エキス 1.0
L-イソロイシン 0.1
CaCO3 5.0
グルコース及び硫酸マグネシウムは別々に滅菌した。CaCO3は、180℃で2時間乾熱滅菌した。pHは7.0に調整した。
Figure 0005907076
実施例3.E. coli AJ11442-ΔargT-hisPによるL-リジンの生産
リジン生産におけるargT-hisJQMPクラスターの不活化の効果を試験するために、上記のE. coli MG1655ΔargT-hisP::cat株の染色体由来のDNA断片を、E. coliリジン生産株AJ11442にP1トランスダクション(Miller, J. H. Experiments in Molecular Genetics, Cold
Spring Harbor Lab. Press, 1972, Plainview, NY)によって導入し、AJ11442ΔargT-hisP株を得ることができる。AJ11442株は、工業技術院生命工学工業技術研究所(現、独立行政法人産業技術総合研究所特許生物寄託センター、日本国茨城県つくば市東1丁目1番地1 中央第6 (郵便番号305-8566))に1981年5月1日に寄託され、FERM P-5084の受託番号が付与された。その後、同株は、1987年10月29日に、ブダペスト条約に基づく国際寄託に移管され、FERM BP-1543の受託番号が付与された。
E. coli AJ11442株及びAJ11442ΔargT-hisP株の両株を、ストレプトマイシン(20mg/l)を含有するL-培地中で37℃で培養することができ、0.3mlの得られた培養液を、500mlフラスコ中の必要な薬剤を含有する20mlの発酵培地中に接種することができる。培養は、115rpmの攪拌速度で往復振盪装置を使用して37℃で16時間実施することができる。培養後、培地中のL-リジンの量および残存グルコースの量を、公知の方法(サクラ精機製のバイオテックアナライザー(Biotech-analyzer) AS210)により測定することができる。その後、それぞれの株について、L-リジンの収量を消費されたグルコースに対して計算することができる。
発酵培地の組成(g/l)は以下の通りである。
グルコース 40
(NH4)2SO4 24
K2HPO4 1.0
MgSO4・7H2O 1.0
FeSO4・7H2O 0.01
MnSO4・5H2O 0.01
酵母エキス 2.0
pHをKOHにより7.0に調整し、115℃で10分間培地をオートクレーブする。グルコース及びMgSO4・7H2Oは別々に滅菌する。CaCO3は、180℃で2時間乾熱滅菌し、終濃度30g/lで培地に添加する。
実施例4.E. coli382ilvA+ΔargGΔargT-hisP株によるシトルリンの生産
シトルリン生産におけるargT-hisJQMPクラスターの不活化の効果を試験するために、シトルリン生産株382ilvA+ΔargGを以下のように構築した。
E. coli K12株由来の野生型ilvA遺伝子をP1トランスダクションで導入することにより、アルギニン生産株382(VKPM B-7926)から382ilvA+株を得た。382ilvA+株は、最少寒天培地上で良好に生育するコロニーが選択された。その後、Datsenko, K. A.とWanner, B. L. (Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 2000, 97(12), 6640-6645)によって最初に開発された「Redドリブンインテグレーション(Red-driven integration)」と呼ばれる方法によって、382ilvA+株の染色体上のargG遺伝子を欠失させることにより、シトルリン生産株382ilvA+ΔargGを取得した。
プライマーP5(配列番号15)及びP6(配列番号16)、並びにテンプレートとしてプラスミドpMW118-attL-Cm-attR(WO05/010175)を使用し、cat遺伝子によってコードされるCmRマーカーを含むDNA断片をPCRによって取得した。プライマーP5は、argG遺伝子の5'末端に位置する領域に相補的な領域及びattR領域に相補的な領域の両方を含む。プライマーP6は、argG遺伝子の3'末端に位置する領域に相補的な領域及びattL領域に相補的な領域
の両方を含む。PCRの条件は次の通りである:95℃で3分の変性工程;2回の第1のサイクルのプロフィール:95℃で1分、50℃で30秒、72℃で40秒;最後の25サイクルのプロフィール:95℃で30秒、54℃で30秒、72℃で40秒;最後の工程:72℃で5分。
1.85 kbpのPCR産物を取得してアガロースゲルで精製し、細菌の染色体にPCR産物を組込むのに必要なプラスミドpKD46で予め形質転換されたE. coli 382ilvA+株をエレクトロポーレーションに使用した。エレクトロコンピテント細胞は、実施例1に記載したようにして調製した。エレクトロポーレーションは、70μgの細胞及び約100ngのPCR産物を使用して行った。実施例1に記載したように、エレクトロポーレーション後の細胞をインキュベートし、pKD46プラスミドを除去した。
argG遺伝子を欠失しCm耐性遺伝子で標識された形質転換体をPCRによって検証した。部位特異的プライマーP7(配列番号17)及びP8(配列番号18)を検証のためのPCRで使用した。PCRによる検証の条件は次の通りである:94℃で3分の変性工程;30サイクルのプロフィール:94℃で30秒、54℃で30秒、72℃で1分;最後の工程:72℃で7分。組換え株の細胞をテンプレートとして用いた反応で得られたPCR産物は、1350bpの長さであった。この組換え株を、382ilvA+ΔargG::catと命名した。
その後、int-xis系を使用し、E. coli 382ilvA+ΔargG::cat株の染色体からCm耐性遺伝子(cat遺伝子)を除去した。この目的のために、pMW-intxis-tsプラスミド(WO05/010175)でE. coli 382ilvA+ΔargG::cat株を形質転換した。プラスミドpMW-intxis-tsは、λファージのインテグラーゼ(Int)をコードする遺伝子及びエクシジョナーゼ(excisionase)(Xis)をコードする遺伝子を担持し、温度感受性の複製能を有する。形質転換体クローンは、100μg/mlのアンピシリンを含有するLB培地上で選択した。プレートを30℃で一夜インキュベートした。単離したコロニーを37℃(この温度では、リプレッサーCItsは部分的に不活化され、int/xis遺伝子の転写は脱抑制(derepress)される)で塗り広げ、次いでCmSApRなバリアントを選抜することにより、形質転換体クローンのcat遺伝子及びpMW-intxis-tsプラスミドを除去した。当該株の染色体からのcat遺伝子の除去は、PCRによって検証した。部位特異的プライマーP7(配列番号17)及びP8(配列番号18)を検証のためのPCRで使用した。PCRによる検証の条件は前記した通りである。cat遺伝子が除去された細胞をテンプレートとして用いた反応で得られたPCR産物は、〜0.44 kbpの長さであった。こうして、シトルリン生産株382ilvA+ΔargGが得られた。
シトルリン生産におけるargT-hisJQMPクラスターの不活化の効果を試験するために、上記のE. coli株MG1655ΔargT-hisP::catの染色体由来のDNA断片を、E. coliシトルリン生産株382ilvA+ΔargGにP1トランスダクション(Miller, J. H. Experiments in Molecular
Genetics, Cold Spring Harbor Lab. Press, 1972, Plainview, NY)によって導入し、382ilvA+ΔargGΔargT-hisP株を得た。
E. coli 382ilvA+ΔargG株及び382ilvA+ΔargGΔargT-hisP株の両株を、それぞれ、3mlのニュートリエントブロス中で37℃で18時間振盪しながら培養し、0.3 mlの得られた培養液を20×200 mmの試験管中の2mlの発酵培地に接種し、ロータリーシェーカーで32℃で48時間培養した。
培養後、培地中に蓄積するシトルリンの量を、以下の移動相:ブタノール:酢酸:水=4:1:1(v/v)を用いたペーパークロマトグラフィーにより決定した。ニンヒドリン(2%)のアセトン溶液を、発色試薬として使用することができる。シトルリンを含むスポットを切り出し、CdCl2の0.5%水溶液を用いてシトルリンを溶出させ、シトルリンの量を540 nmで分光学的に見積もった。8つの独立した試験管発酵の結果を表2に示す。表2から分かるように、382ilvA+ΔargGΔargT-hisP株は、382ilvA+ΔargGと比較して、より
多い量のLシトルリンを生産した。
発酵培地の組成(g/l)は以下の通りであってよい。
グルコース 48.0
(NH4)2SO4 35.0
KH2PO4 2.0
MgSO4・7H2O 1.0
チアミンHCl 0.0002
酵母エキス 1.0
L-アルギニン 0.1
CaCO3 5.0
グルコース及び硫酸マグネシウムは別々に滅菌する。CaCO3は、180℃で2時間乾熱滅菌する。pHは7.0に調整する。
Figure 0005907076
実施例5.E. coli株382ΔargFΔargIΔargT-hisPによるオルニチンの生産
オルニチン生産におけるargT-hisJQMPクラスターの不活化の効果を試験するために、上記のE. coli株MG1655ΔargT-hisP::catの染色体由来のDNA断片を、E. coliのオルニチン生産株382ΔargFΔargIにP1トランスダクション(Miller, J. H. Experiments in Molecular Genetics, Cold Spring Harbor Lab. Press, 1972, Plainview, NY)によって導入し、382ΔargFΔargIΔargT-hisP株を得ることができる。382ΔargFΔargI株は、Datsenko,
K. A.とWanner, B. L. (Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 2000, 97(12), 6640-6645)によって最初に開発された「Redドリブンインテグレーション(Red-driven integration)」と呼ばれる方法によって、382株(VKPM B-7926)の染色体上のargF及びargI遺伝子を順次欠損させることにより取得することができる。この手順に従い、argF又はargI遺伝子に隣接する領域及びテンプレートプラスミド内の抗生物質耐性を与える遺伝子の両者に相同な2対のPCRプライマーを構築することができる。プラスミドpMW118-attL-Cm-attR(WO05/010175)をPCR反応におけるテンプレートとして使用することができる。
E. coli 382ΔargFΔargI株及び382ΔargFΔargIΔargT-hisP株の両株を、それぞれ、3mlのニュートリエントブロス中で37℃で18時間振盪しながら培養することができ、0.3 mlの得られた培養液を20×200 mmの試験管中の2mlの発酵培地に接種し、ロータリーシェーカーで32℃で48時間培養した。
培養の後、培地中に蓄積するオルニチンの量を、以下の移動相:ブタノール:酢酸:水=4:1:1(v/v)を用いたペーパークロマトグラフィーにより決定することができる。ニンヒドリン(2%)のアセトン溶液を、発色試薬として使用することができる。オルニチンを含むスポットを切り出し、CdCl2の0.5%水溶液を用いてオルニチンを溶出させ、オルニチンの量を540 nmで分光学的に見積もることができる。
発酵培地の組成(g/l)は以下の通りであってよい。
グルコース 48.0
(NH4)2SO4 35.0
KH2PO4 2.0
MgSO4・7H2O 1.0
チアミンHCl 0.0002
酵母エキス 1.0
L-イソロイシン 0.1
L-アルギニン 0.1
CaCO3 5.0
グルコース及び硫酸マグネシウムは別々に滅菌する。CaCO3は、180℃で2時間乾熱滅菌する。pHは7.0に調整する。
本発明をその好適な態様を参照して詳細に説明したが、本発明の範囲を逸脱することなく、種々の変更を行うことができ、また、等価物を用いることができることは、当業者に明らかであろう。ここに引用した参考文献は全て、参照によりこの出願の一部として組み込まれる。
本発明によれば、腸内細菌科の細菌によるL-リジン、L-アルギニン、オルニチン、及びシトルリン等のL-アミノ酸の製造を改善することができる。

Claims (6)

  1. L-アミノ酸を製造する方法であって、
    腸内細菌科のL-アミノ酸生産細菌を培地中で培養すること、および
    前記L-アミノ酸を培地から回収すること、
    を含み、
    前記細菌が、argT-hisJQMPクラスターを欠失している、方法。
  2. 前記細菌が、エシェリヒア(Escherichia)属に属する、請求項に記載の方法。
  3. 前記細菌が、エシェリヒア・コリ(Escherichia coli)である、請求項に記載の方法。
  4. 前記細菌が、パントエア(Pantoea)属に属する、請求項に記載の方法。
  5. 前記L-アミノ酸が、ジアミノモノカルボン酸である、請求項1〜のいずれか1項に記載の方法。
  6. 前記ジアミノモノカルボン酸が、L-リジン、L-アルギニン、L-オルニチン、及びL-シトルリンからなる群より選択される、請求項に記載の方法。
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