JP5905198B2 - 薬剤誘発性吐き気のオピオイド拮抗薬による治療 - Google Patents
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Description
本出願は、2007年10月1日に出願の米国仮出願第60/976,652号の優先権を主張し、この明細書の記載は本願明細書に全体として含まれるものとする。
発明の分野
本発明は、便秘の治療を増強しつつ、吐き気のような胃腸の薬剤誘発性副作用を治療する方法に関する。
非常に多くの吐き気止めの組成物や抗嘔吐組成物が存在するが、これらの組成物はそれ自体の望ましくない患者の副作用をしばしば生じる。その結果として、しばしば、患者は、軽減しようとする状態と治療法の副作用との間で選ぶことの立場に置かれる。
他の実施態様において、本発明は、塩素イオンチャネル活性化剤とオピオイド拮抗薬を同時投与することによって胃腸障害を治療する方法を提供する。このような同時投与された治療は、便通をよくするだけでなく吐き気や他の副作用を治療することができる。従って、同時投与された塩素イオンチャネル活性化剤とオピオイド拮抗薬の相乗作用は、本発明の他の態様として企図される。
胃腸障害の治療に有効な塩素イオンチャネル活性化剤は、タイプ2の塩素イオンチャネル活性化剤、例えば、ルビプロストンを含む。例示した実施態様において、ルビプロストンによる胃腸障害の治療によって誘導される吐き気は、オピオイド拮抗薬、例えば、末梢性オピオイド拮抗薬メチルナルトレキソンを投与することによって緩和される。
適切な塩素イオンチャネル活性化剤は、プロスタグランジン誘導体を含む。例えば、1つの種類は、適切には、プロスタグランジンE1(PGE1)の誘導体及び類似体、例えば、二環式脂肪酸である誘導体である。ルビプロストンは、PGE1代謝産物類似体であり、便秘の治療に特に価値が高い塩素イオンチャネル活性化剤である。
適切なオピオイド拮抗薬は、一般的には、いくつかの異なる種類の化合物に属する複素環アミン化合物を含む。例えば、1つの種類は、適切には、モルフィナンの第3級誘導体、特に、ノルオキシモルホンの第3級誘導体である。一実施態様において、ノルオキシモルホンの第3級誘導体は、例えば、ナロキソン又はナルトレキソンである。
本発明の一部の実施態様において、オピオイド拮抗薬は、μオピオイド拮抗薬であり得る。他の実施態様において、オピオイド拮抗薬は、κオピオイド拮抗薬であり得る。本発明は、また、μ拮抗薬の組み合わせ、κ拮抗薬の組み合わせ、μ拮抗薬とκ拮抗薬の組み合わせ、例えば、メチルナルトレキソンとアルビボモパンの組み合わせ、又はナルトレキソンとメチルナルトレキソンの組み合わせを含む、1つを超えるオピオイド拮抗薬の投与を包含する。
本発明は、ある種の薬剤、詳しくはイオンチャネルモジュレータ、特に塩素イオンチャネル活性化剤の、例えば、便秘、の治療のための投与に伴う、吐き気や嘔吐のような胃腸の副作用を改善させる、例えば、緩和する、阻止する、軽減する、或いは低減させる方法を提供する。
本発明の少なくとも1つの実施態様を説明する前に、本発明がこの出願において実施例によって例示される以下の説明に示される詳細に限定されないことは理解されるべきである。このような説明及び実施例が添付の特許請求の範囲に示される本発明の範囲を制限することを意図しない。本発明は、他の実施態様も可能であり、種々の方法で実施されること或いは実行されることも可能である。以下の詳細な説明が薬剤としてルビプロストン及びその有効な誘導体を用いる実施態様よって本発明を記載するが、吐き気が有害な副作用である他のイオンチャネルモジュレータ、他の塩素イオンチャネル活性化剤、又は他の便秘防止薬(anti-constipation agent)も、本発明の原理に従って用いるのに適切であり得ることは理解すべきである。
更に、本明細書に引用されるあらゆる特許又は特許文献を含むあらゆる参考文献が先行技術を構成するとは認められない。特に、特にことわらない限り、本明細書における文献について述べることは、米国或いは他の国の当該技術において共通の一般知識の一部をなしていると認めることにならないことが理解される。参考文献のいかなる説明も、著者が主張することを述べており、出願人は、本明細書に引用される文献のいずれもの正確さと適切さに挑戦する権利を留保する。
更に、本明細書において“含む”、“含んでいる”、“有する”、及びその変形の使用は、例えば、最終結果に影響しない他の工程及び成分が加えられ得る、その後に記載される項目及びその等価物だけでなく追加の項目を包含することを意味する。この用語は、“からなっている”及び“から本質的になっている”を包含している。“から本質的になっている”の使用は、追加の成分及び/又は工程が特許請求された組成物又は方法の基本的で新規な特徴を物質的に変えない場合に限り、組成物又は方法が追加の成分及び/又は工程を含むことができることを意味する。
“被検者”は、哺乳動物、例えば、ヒト、マウス、イヌ、ネコを意味する。
“アルキル”は、飽和され、鎖中に炭素原子1〜約10個を有する直鎖、分枝鎖、又は環状であってもよい一価の脂肪族炭化水素基、及びその中の鎖のすべての組み合わせ及び部分的組み合わせを意味する。例示的アルキル基としては、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、ペンチル、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、及びシクロヘキシルが挙げられるが、これらに限定されない。
“低級アルキル”は、炭素原子1〜約6個を有するアルキル基を意味する。
“アルケニル”は、少なくとも1つの炭素-炭素二重結合を含有し且つ鎖中に炭素原子2〜約10個を有する一価の脂肪族炭化水素基、及びその中の鎖のすべての組み合わせ及び部分的組み合わせを意味する。例示的なアルケニル基としては、ビニル、プロペニル、ブチニル、ペンテニル、ヘキセニル及びヘプチニルが挙げられるが、これらに限定されない。
“アルキニル”は、少なくとも1つの炭素-炭素三重結合を有し且つ鎖中に炭素原子2〜約10個を含有する一価の脂肪族炭化水素基、及びその中の鎖のすべての組み合わせ及び部分的組み合わせを意味する。例示的なアルキニル基としては、エチニル、プロピニル、ブチニル、ペンチニル、ヘキシニル、及びヘプチニルが挙げられるが、これらに限定されない。
“アルキレン”は、炭素原子1〜約6個を有する二価の脂肪族炭化水素基、及びその中の鎖のすべての組み合わせ及び部分的組み合わせを意味する。アルキレン基は、直線、分枝鎖、又は環状であり得る。アルキレン基に沿って1つ以上の酸素、イオウ、又は場合により置換されていてもよい窒素原子を場合により挿入することができ、ここで、窒素置換基は、前述のアルキル基である。
“シクロアルキル”は、炭素約3〜約10個を有する飽和単環式又は二環式炭化水素環、及びその中の鎖のすべての組み合わせ及び部分的組み合わせを意味する。シクロアルキル基は、場合により1つ以上のシクロアルキル基置換基で置換されていてもよい。例示的なシクロアルキル基としては、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、及びシクロヘプチルが挙げられるが、これらに限定されない。
“アシル”は、アルキルが前述した通りであるアルキル-CO基を意味する。例示的なアシル基としては、アセチル、プロパノイル、2-メチルプロパノイル、ブタノイル、及びパルミトイルが挙げられるが、これらに限定されない。
“アリール”は、炭素約6〜約10個を含有する芳香族炭素環基、及びその中の環のすべての組み合わせ及び部分的組み合わせを意味する。アリール基は、場合により1つ又は2つ以上のアリール基置換基で置換されていてもよい。例示的なアリール基としては、フェニル及びナフチルが挙げられるが、これらに限定されない。
“アリール置換アルキル”は、末端炭素で、場合により置換されていてもよいアリール基、好ましくは場合により置換されていてもよいフェニル環により置換された、線状アルキル基、好ましくは低級アルキル基を意味する。例示的なアリール置換アルキル基は、例えば、フェニルメチル、フェニルエチル、及び3-(4-メチルフェニル)プロピルが挙げられる。
“ハロ”は、フルオロ、クロロ、ブロモ又はヨードを意味する。
オピオイド拮抗薬に関する“末梢性”は、主に中枢神経系の外部の生理系及び成分に作用するオピオイド拮抗薬を示す。言い換えれば、これらは、中枢神経系(CNS)活性が低下するか又はほとんどない。例えば、これらは、オピオイドの中枢作用を阻止するのに有効な量で血液脳関門を容易に越えない。即ち、これらは、末梢的に投与される場合、オピオイドの鎮痛効果をほとんど阻止しない。つまり、これらは、オピオイドの鎮痛作用を低下させない。本発明の方法に使われる末梢性オピオイド拮抗薬化合物は、適切にはCNSにおける薬理学的活性の約5-15%未満を示し、約0%のCNS活性(即ち、全くない)が最も適切である。末梢性オピオイド拮抗薬の中枢に作用しない特性は、分子又は化学種の電荷、極性及び/又はサイズにしばしば関連づけられる。例えば、本明細書に記載される末梢的に作用する第4級アミンオピオイド拮抗薬は正に荷電するが、中枢に作用する第3級アミンオピオイド拮抗薬は中性分子である。本発明において有効な末梢性オピオイド拮抗薬は、典型的には、μ及び/又はκオピオイド拮抗薬である。
本明細書に用いられる“副作用”の用語は、薬剤の目的又は望ましい作用以外の作用を示すことを意味する。副作用は、有益な場合もあり、望ましくない、即ち、有害な場合もある。この場合、望ましくない作用は、ルビプロストンのような塩素イオンチャネル活性化剤の投与の後にしばしば発生する。このような望ましくない副作用には、胃腸の副作用、例えば、吐き気、嘔吐、下痢、腹部の膨満と痛みが含まれる。
本明細書に用いられる“治療する”又は“治療”の用語は、予防のような病状の制御、ケア、病状の改善、減弱、緩和、病状の減少、及び病態の進行の阻止又は停止のいかなる手段をも含む。
本発明の方法の以下の説明において、特に指定されない限り、プロセス工程は室温及び大気圧で行われる。
本発明は、塩素イオンチャネル活性化剤、例えば、ルビプロストンのようなタイプ2の塩素イオンチャネル活性化剤とオピオイド拮抗薬の組み合わせを用いる組成物及び方法に関する。ルビプロストンと、メチルナルトレキソンのようなオピオイド拮抗薬の組み合わせは、予想外にルビプロストンの胃腸の副作用を治療し、ルビプロストンの便秘防止(即ち、緩下)効力を増強するのにも価値があり得る。
本発明の特に興味深い塩素イオンチャネル活性化剤は、プロスタグランジンE1(PGE1)誘導体又は代謝産物である。例えば、米国特許第7,064,148号、同第6,982,283号、同第7,253,295号を参照のこと、各々の記載は本願明細書に含まれるものとする。PGE1代謝産物類似体であるルビプロストンが特に関連がある。ルビプロストンは、以下の式(A)に示される二環式脂肪酸であり、小腸の内層においてタイプ2の塩素イオンチャネルを活性化する。これにより、腸液の分泌が増加することになり、便の通過が改善される。結果として、腹部の不快感と痛みを含む便秘、及び腹部膨満による症状が改善される。現在、ルビプロストンは、慢性特発性便秘や便秘による過敏性腸症候群の徴候に対して米国における市場での売買が承認されている。しかしながら、ルビプロストンは、吐き気や嘔吐だけでなく、腹部の膨満と痛み、下痢、頭痛及び副鼻腔炎を含む望ましくない副作用を有する。
オピオイド拮抗薬は、それらの末梢限定特性を維持しつつ、構造が変化し得る化合物の一種を形成する。これらの化合物としては、第3級及び第4級モルフィナン、特にノルオキシモルホン誘導体、N-置換ピペリジン、特に、ピペリジン-N-アルキルカルボキシレート、第3級及び第4級ベンゾモルファン、ノルモルフィナン誘導体、特に6-カルボキシノルモルフィナン誘導体が挙げられる。末梢限定拮抗薬は、構造が変化するが、典型的には、荷電され、極性であり、及び/又は高分子量を有し、これらのそれぞれが血液脳関門を越えることを妨害する。
血液脳関門を越えるとともに中枢(及び末梢)活性であるオピオイド拮抗薬の例としては、例えば、ナロキソン、ナルトレキソン(それぞれ、Baxter Pharmaceutical Products, Inc.から市販されている)、及びナルメフェン(例えば、DuPont Pharmaから入手できる)が挙げられる。これらは、吐き気、例えば、薬剤誘発性吐き気だけでなく、便秘のために治療されている患者の他の副作用を治療するのに価値があり得る。
本発明に有効な末梢オピオイド拮抗薬は、第4級モルフィナン誘導体である化合物、特に、式(I)の第4級ノルオキシモルホンであり得る:
式(I)のノルオキシモルホン誘導体は、例えば、米国特許第4,176,186号の手順に従って調製することができ、この明細書の記載は本願明細書に含まれるものとする; 米国特許第4,719,215号; 同第4,861,781号; 同第5,102,887号; 同第5,972,954号; 同第6,274,591号; 米国特許出願第2002/0028825号, 同第2003/0022909号; PCT公開第WO 99/22737号、同第WO 98/25613号も参照のこと、これらのすべての明細書の記載は本願明細書に含まれるものとする。
特に価値の高い式(I)の化合物は、N-メチルナルトレキソン(又は簡単にメチルナルトレキソン)であり、ここで、Rは、式(II)に示されるシクロプロピルメチルである:
メチルナルトレキソンは、オピオイド拮抗薬ナルトレキソンの第4級誘導体である。メチルナルトレキソンは、塩として存在し、それ故、本明細書に用いられる“メチルナルトレキソン”又は“MNTX”は、塩を包含する。“メチルナルトレキソン”又は“MNTX”としては、詳しくは、メチルナルトレキソンのブロマイド塩、クロライド塩、ヨーダイド塩、炭酸塩、及び硫酸塩が挙げられるが、これらに限定されない。文献において、例えば、MNTXのブロマイド塩に用いられる名称としては、以下が挙げられる: メチルナルトレキソンブロマイド; N-メチルナルトレキソンブロマイド; ナルトレキソンメトブロマイド; ナルトレキソンメチルブロマイド; SC-37359; MRZ-2663-BR; 及びN-シクロプロピルメチルノルオキシ-モルヒネ-メトブロマイド。
メチルナルトレキソンは、例えば、Mallinckrodt Pharmaceuticals、セントルイス、ミズーリから市販されている。メチルナルトレキソンは、水に溶けやすい白色結晶性粉末として、典型的にはブロマイド塩として供給される。供給される化合物は、逆相HPLCによって純度99.4%であり、その方法によって0.011%未満の四基化されないナルトレキソンを含有する。メチルナルトレキソンは、例えば、約5mg/mLの濃度で滅菌溶液として調製することができる。
他の適切な末梢性オピオイド拮抗薬には、式(III)によって示されるN-置換ピペリジン、特に、ピペリジン-N-アルキルカルボキシレートが含まれてもよい:
Eは、以下の基
Yは、OR18又はNR19R20であり; ここで、R18は、水素、アルキル、アルケニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、シクロアルキル置換アルキル、シクロアルケニル置換アルキル、又はアリール置換アルキルであり; R19は、水素又はアルキルであり; R20は、水素、アルキル、アルケニル、アリール、シクロアルキル、シクロアルケニル、シクロアルキル置換アルキル、シクロアルケニル置換アルキル、又はアリール置換アルキルであるか、又はR19とR20が結合している窒素原子と一緒になってピロール及びピペリジンより選ばれる複素環を形成し; R21は、水素又はアルキルであり; nは、0〜4である)。
有益であり得る具体的なピペリジン-N-アルキルカルボキシレートは、N-アルキルアミノ-3,4,4-置換ピペリジン、例えば、式(IV)として以下に示されるアルビモパンである:
更に他の適切な末梢性オピオイド拮抗薬化合物には、第4級ベンゾモルファン化合物が含まれてもよい。
本発明の方法に使うことができる第4級ベンゾモルファン化合物は、以下の式(V)を有する:
本発明の方法に使うことができるベンゾモルファン化合物の個々の第4級誘導体としては、式(V)の以下の化合物が挙げられる: 2'-ヒドロキシ-5,9-ジメチル-2,2-ジアリル-6,7-ベンゾモルファニウムブロマイド; 2'-ヒドロキシ-5,9-ジメチル-2-n-プロピル-2-アリル-6,7-ベンゾモルファニウムブロマイド; 2'-ヒドロキシ-5,9-ジメチル-2-n-プロピル-2-プロパルギル-6,7-ベンゾモルファニウムブロマイド; 及び2'-アセトキシ-5,9-ジメチル-2-n-プロピル-2-アリル-6,7-ベンゾモルファニウムブロマイド。
本発明の方法に使うことができる他の第4級ベンゾモルファン化合物は、例えば、米国特許第3,723,440号に記載され、この明細書の全体の開示内容は本願明細書に含まれるものとする。
他の末梢性オピオイド拮抗薬には、“6-カルボキシノルモルフィナン誘導体、その合成及び使用”と称する米国出願第11/888,955号に記載されている、6-カルボキシノルモルフィナン誘導体、特にN-メチル-C-ノルモルフィナン誘導体が含まれてもよく、この明細書の記載は本願明細書に全体として含まれるものとする。
上記のように、本発明の化合物が適切に存在し、医薬的に許容され得る塩として配合されることになる。
本発明の方法で使われる化合物は、プロドラッグの形で存在することができる。本明細書に用いられる“プロドラッグ”は、このようなプロドラッグが哺乳類の被検者に投与される場合、生体内で式(I)〜(V)又は本発明の方法に使われる他の式又は化合物の活性親薬剤を放出する共有結合したあらゆる担体を含むことを意図する。プロドラッグが医薬品(例えば、溶解性、バイオアべイラビリティ、製造等)の非常に多くの望ましい品質を増強することが知られているので、所望により、本方法に使われる化合物をプロドラッグの形で送達することができる。従って、本発明は、プロドラッグを送達する方法を企図する。本発明に使われる化合物のプロドラッグは、化合物に存在する官能基を変性することによって変性が通常の操作で又は生体内で親化合物へ切断されるような方法で調製することができる。
述べたように、本発明の方法に使われる化合物は当業者に良く知られる多くの方法で調製することができる。本発明に関連して開示されるすべての製剤は、ミリグラム、グラム、マルチグラム、キログラム、マルチキログラム、又は市販薬規模を含む、いかなる規模でも実施されることを企図している。
本発明の方法に使われる化合物は、1つ以上の非対称的に置換された炭素原子を含有することができ、光学活性体又はラセミ体で分離することができる。従って、個々の立体化学又は異性体の形が詳しく示されない限り、すべてのキラル体、ジアステレオマー体、ラセミ体、エピマー体、及び構造のすべての幾何異性体を意図している。このような光学活性体をどのように調製し分離するかは、当該技術において良く知られている。例えば、立体異性体の混合物は、ラセミ体の分割、順層クロマトグラフィ、逆相クロマトグラフィ、キラルクロマトグラフィ、優先塩形成、再結晶等を含むがこれらに限定されない標準技術によって、又はキラル出発材料からの合成によって或いは標的キラル中心の計画的合成によって分離することができる。
本発明の方法は、一般的に言えば、医学的に許容され得る任意の投与方法、例えば、臨床的に許容され得ない副作用を引き起こすことなく活性化合物の有効レベルを生じる任意の方法を用いて実施することができる。このような投与方法には、経口、経腸、局所(粉末、軟膏、点滴、経皮貼付、又はイオントフォレシスデバイスによって)、経皮、舌下、筋肉内、注入、静脈内、肺、筋肉内、腔内、耳(例えば、点耳剤によって)、経鼻、吸入、眼内、又は皮下が含まれる。
投与される場合、本発明の化合物は、医薬的に許容され得る量で、また、医薬的に許容され得る組成物又は製剤で投与される。このような製剤は、通常、塩、緩衝剤、防腐剤、及び場合により他の治療成分を含有することができる。
医薬品で用いられる場合、塩は、医薬的に許容され得るものであるが、医薬的に許容され得ない塩はその医薬的に許容され得る塩を調製するために都合よく用いられてもよく、本発明の範囲から除外されない。上記のように、このような薬理的に且つ医薬的に許容され得る塩としては、以下の酸から調製されるものが挙げられるが、これらに限定されない: 塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸、マレイン酸、酢酸、サリチル酸、p-トルエンスルホン酸、酒石酸、クエン酸、メタンスルホン酸、ギ酸、コハク酸、ナフタレン-2-スルホン酸、パモ酸、3-ヒドロキシ-2-ナフタレンカルボン酸、及びベンゼンスルホン酸。適切な緩衝剤としては、酢酸及びその塩(1-2% w/v); クエン酸及びその塩(1-3% w/v); ホウ酸及びその塩(0.5-2.5% w/v); 及びリン酸及びその塩(0.8-2% w/v)が挙げられるが、これらに限定されない。
投与を容易にするために、末梢性オピオイド拮抗薬の医薬組成物は、1つ以上の医薬的に許容され得る賦形剤、例えば、滑沢剤、希釈剤、結合剤、担体、崩壊剤を含有してもよい。他の補助物質には、例えば、安定剤、湿潤剤、乳化剤、浸透圧に影響する塩、着色化合物、香味化合物、及び/又は芳香族活性化合物が含まれてもよい。
医薬的に許容され得る担体又は賦形剤は、補助非毒性固体、半固体又は液体充填剤、希釈剤、封入材料、又はいかなるタイプの製剤補助物質をも意味する。例えば、適切な医薬的に許容され得る担体、希釈剤、溶媒、又は賦形剤としては、水、塩(緩衝)溶液、アルコール、アラビアゴム、鉱油、植物油、ベンジルアルコール、ポリエチレングリコール、ゼラチン、炭水化物、例えば、ラクトース、アミロース又はデンプン、ステアリン酸マグネシウム、タルク、ケイ酸、粘性パラフィン、植物油、脂肪酸モノグリセリド、脂肪酸ジグリセリド、ペンタエリトリトール脂肪酸エステル、ヒドロキシルメチルセルロース、ポリビニルピロリドン等が挙げられるが、これらに限定されない。適当な流動性は、例えば、レシチンのようなコーティング材料の使用、分散の場合に必要とされた粒径の維持によって、界面活性剤の使用によって維持することができる。微生物の作用の防止は、種々の抗菌物質、例えば、抗菌剤、抗真菌剤、パラベン、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸等の物質を含むことによって確実にすることができる。
医薬的に許容され得る固体担体が用いられる場合には、本発明の方法に用いるのに適切な化合物の剤形は、錠剤、カプセル剤、散剤、坐剤、又はロゼンジ剤であり得る。液体担体が用いられる場合には、剤形は、軟ゼラチンカプセル剤、経皮貼付剤、エアゾール噴霧剤、局所クリーム、シロップ剤又は液体懸濁剤、乳剤、又は液剤であり得る。
経腸適用については、錠剤、糖衣錠、液剤、点滴剤、坐剤、又はカプセル剤、例えば、軟ゼラチンカプセル剤が特に適切である。甘味賦形剤が使われるシロップ剤、エリキシル剤等が使用し得る。
述べたように、他のデリバリシステムには、徐放性、遅延放出、又は徐放性のデリバリシステムが含まれてもよい。このようなシステムは、本発明の化合物の反復投与を避け、患者と医師に対する便宜が増大し、且つ化合物の持続性血漿レベルを維持し得る。多くのタイプの徐放性デリバリシステムが利用可能であり、当業者に既知である。徐放性組成物或いは放出制御組成物は、例えば、リポソーム又は活性化合物が特異的に分解可能なコーティングで保護されているものとして、例えば、マイクロカプセル化、複数のコーティング等によって配合することができる。従って、本発明のオピオイド拮抗薬は、経腸的に被覆された錠剤又はカプセルとして投与することができる。一部の実施態様において、オピオイド拮抗薬は、緩慢な注入法によって又は持続放出法又は放出制御法によって又は凍結乾燥粉末として投与される。
一実施態様において、本発明の化合物は、被検者に化合物の連続投薬用法、例えば、最小血漿レベルのオピオイド拮抗薬を維持するとともに、好ましくは、従来の用法による薬剤レベルの急増と底値を排除する用法で投与される。適切には、連続投与量は、本明細書に開示される送達法のいずれかを用いて被検者に化合物を毎日投与することによって達成することができる。一実施態様において、連続投与量は、被検者に連続注入を用いて、又は経時化合物の放出を容易にする機序、例えば、経皮貼付剤、又は徐放性製剤によって達成することができる。適切には、本発明の化合物は、化合物の濃度をルビプロストンのような塩素イオンチャネル活性化剤で治療することによって誘導される吐き気を阻止するか又は低減させるのに有効な被検者の血漿で維持するのに充分な量で被検者に連続して放出される。
所望により、有効な一日量は、投与のために複数の用量に分けることができる。その結果として、単回投与組成物は、一日量を構成するような量又はその約数を含有することができる。述べたように、当業者は、良好な医療及び個々の患者の臨床症状によって決定される有効な用量及び同時投与用法(本明細書に記載されるように)を容易に最適化することができる。
一般に、オピオイド拮抗薬、特に末梢性拮抗薬の経口用量は、1日あたり約0.01〜約80mg/kg体重の範囲にある。1〜20mg/kg体重の範囲にある経口用量が望ましい結果を得ることが予想される。一般に、静脈内投与や皮下投与を含む非経口投与は、約0.001〜5mg/kg体重の範囲にある。0.05〜0.5mg/kg体重の範囲にある用量が望ましい結果を得ることが予想される。用量は、投与方法によっては局所或いは体組織の望ましい薬剤レベルを達成するように適切に調整することができる。例えば、経腸的に被覆された製剤におけるオピオイド拮抗薬の経口投与のための用量が被覆されていない経口投与量の10〜30%であることが予想される。患者の応答がこのような投与量で不充分である場合には、より多量の投与量(又は異なったより局部的な送達経路による30%より効果的に多量の用量)でさえ患者の許容量が可能である程度まで使うことができる。化合物の適切な体組織レベルを達成するように1日あたり複数回投与が企図される。適切な体組織レベルは、例えば、当業者に既知の通常のHPLC法を用いて薬剤の患者の血漿レベルの測定によって、決定することができる。
同時投与可能な薬剤は、混合物として、例えば、単一製剤或いは単一錠剤に配合されてもよい。これらの製剤は、例えば、米国特許第6,277,384号; 同第6,261,599号; 同第5,958,452号、PCT公開第WO 98/25613号に記載される製剤のような非経口であっても経口であってもよく、これらの明細書の各々の記載は本願明細書に含まれるものとする。
本発明は、更に、以下の実施例によって説明されるが、本発明の範囲を制限するものとして解釈されてはならない。
ラットは、食性変化によって嘔吐刺激に反応し、異食として知られるカオリン(クレーの一種)のような非栄養素物質の摂取増加として明らかにされている(Mitchell et al., 1976; Takeda et al., 1993; Takeda et al., 1995)。我々は、実験動物における吐き気の基準としてカオリン摂取を数量化し、薬剤誘発性異食摂取が選択された薬理学的物質によって減少し得ることを見出した(Aung et al., 2003; Aung et al., 2005)。
重さが150-300gの成体雄ウィスター系ラット(Harlan Sprague Dawley、インディアナポリス、インディアナ州)を用いた。動物すべてを、12時間明/12時間暗サイクルによる環境的に制御された状態で標準分離ケージ(45cm×35cm×25cm)に収容した。ラットは、実験の全体に連続して利用可能な分離された容器内に配置された、水、標準実験ラット固形飼料(Harlan-Teklad、マディソン、ウィスコンシン州)及びカオリン(以下参照のこと)に自由に接近することが可能であった。
観察の開始前に(0日目)、3日間の適応期間があった。
カオリンは、すでに記載された方法に基づいて調製した(Mitchell et al., 1976; Takeda et al., 1995)。手短に言えば、99gの薬理学的グレードのカオリン(又は水和したケイ酸アルミニウム; Fisher、フェアロウン、ニュージャージー州)を1gのアラビアゴム(Fisher)と、即ち、蒸留水によって、99:1の比で混合して、厚いペーストを形成した。ペーストを、ステンレス鋼トレー上に延ばし、標準サイズのラット固形飼料ペレットと同様の形状とサイズに切断した。ペレットを、鋼トレー上に配置し、室温で72時間完全に乾燥した。
ラットに、経口強制飼養によって2日連続(0〜24時間)で朝にルビプロストンを投与した。各ルビプロストン投与の30分前に、賦形剤、ナロキソン、又はメチルナルトレキソン(MNTX)の前処置を腹腔内に投与した。ラットを直ちにと2時間目に観察して、動物が苦しんでいないことを確かめ、落ち着いていた。動物は、検査薬投与後に落ち着きのなさ、呼吸困難、又は下痢のような副作用の徴候を示さなかった。
実験の間、カオリンと食糧のペレットの重さをほぼ0.1gに量り、前の日から残っているカオリンと食糧を集めた後、毎朝同一時間に容器に置き換えた。カオリンと食糧摂取量を5日間24時間毎に測定した。データを平均±標準誤差(S.E.)で表した。濃度曲線(AUC)の下の面積を算出した。データを、2つの要素としてグループと時間による2方向分散分析(ANOVA)を用いて分析した。P < 0.05で統計的有意性をみなした。結果を以下に述べる。
5.0g/kgのルビプロストン投与後、賦形剤グループと比較してカオリン摂取量が著しく増加し(P < 0.01)、ルビプロストンが吐き気を誘導することが示された。このカオリン摂取量の増加は、30g/kgのナロキソン(非選択的オピオイド拮抗薬)投与によって著しく減少した(P < 0.01)。
2. ルビプロストン誘発性吐き気に関するメチルナルトレキソンの用量依存的作用
ラットにおけるルビプロストン(LBP)によって誘導されるカオリン摂取量に関するメチルナルトレキソン(MNTX)による前処置の結果を図1に示す。LBPによって誘導されるカオリン摂取量増加は、MNTXによって用量依存的方法で減少した(P < 0.01)。言い換えれば、MNTXは、ルビプロストン誘発性カオリン経口摂取を用量依存的方法で減少させた。各グループについて、n=7。MNTX(3.0mg/kgプラス賦形剤)は、カオリン摂取量を増加させなかった。更に、ルビプロストンとメチルナルトレキソンの組み合わせは、これらの実験動物において食糧摂取量と体重にほとんど影響しなかった。
データは、メチルナルトレキソンがルビプロストン誘発性吐き気を著しく軽減することを示した。従って、メチルナルトレキソンは、ルビプロストンと同時投与される場合、ルビプロストン誘発性吐き気を減少させるのに臨床的価値を有し得る。
3. 慢性特発性便秘におけるオピオイド拮抗薬の役割
前の研究からのデータは、特発性便秘(Kreek et al., 1983)及び過敏性腸症候群(Hawkes et al., 2002)の場合にナロキソンが有効であり得ることを示した。本発明者らの以前の試験管内実験は、単離されたモルモットの回腸とヒト小腸の電気刺激によって誘発される収縮のモルヒネによる阻止をメチルナルトレキソンが逆転させたことを示した(Yuan et al., 1995)。この実験における興味深い所見は、メチルナルトレキソンのみを組織浴に加えた場合、筋収縮によって生じた力が対照レベルと比較して27%まで用量関連方法で増強され、これらの2つの種において内因性オピオイドによる抑制性調節が示されることであった。単離されたヒト腸における筋収縮の増強は、モルモット回腸組織より著しく大きく、ヒト胃腸運動の調節における内因性オピオイド作用がより強くなり得ることが示される。
要約すると、本発明は、オピオイド拮抗薬、特に、末梢限定オピオイド拮抗薬、例えば、メチルナルトレキソンを用いて、薬剤誘発性胃腸副作用、例えば、便秘防止剤によって誘導される吐き気、例えば、ルビプロストン誘発性吐き気を改善する方法を提供する。オピオイド拮抗薬は、便秘防止剤、例えば、タイプ2塩素イオンチャネル活性化剤、例えば、ルビプロストンの便秘防止作用を増強することができる。更に、タイプ2塩素イオンチャネル活性化剤、例えば、ルビプロストンは、慢性特発性便秘、オピオイド誘導腸機能不全、オピオイド誘導便秘、術後イレウス、過敏性腸症候群、便秘による過敏性腸症候群、胃腸運動障害、機能性胃腸障害、胃食道逆流性疾患、十二指腸胃逆流、機能性胸やけ、消化不良、胃不全麻痺、慢性腸偽閉塞、又は結腸偽閉塞が挙げられるがこれらに限定されない胃腸障害の治療においてオピオイド拮抗薬の作用を増強することができる。
すべての公開、特許及び特許出願の明細書の記載は、それぞれ個々の公開、特許又は特許出願の明細書の記載が詳細に及び個別に示されるかのように、同じ程度まで本願明細書に明白に含まれるものとする。本開示内容と含まれるものとした特許、公開及び文献との間に不一致がある場合には、本開示が支配しなければならない。
本発明を、種々の個々の実施態様及び技術によって記載してきた。しかしながら、本発明の真意及び範囲を維持しつつ多くの変更及び修正がなされることは理解されるべきである。
Claims (14)
- ルビプロストンによる治療に伴う胃腸副作用を低減させるための医薬組成物であって、末梢性オピオイド拮抗薬を含み、
前記末梢性オピオイド拮抗薬が、N-メチルナルトレキソン、N-メチルナロキソン、N-メチルナロルフィン、N-ジアリルノルモルフィン、N-アリルレバロルファン、及びN-メチルナルメフェンからなる群より選ばれる化合物の第4級塩を含む第4級モルフィナン化合物である、医薬組成物。 - 副作用が、吐き気又は嘔吐又はこれらの双方である、請求項1に記載の医薬組成物。
- 末梢性オピオイド拮抗薬が、メチルナルトレキソンである、請求項1に記載の医薬組成物。
- ルビプロストンの投与に伴う有害な胃腸副作用を治療するための医薬組成物であって、ルビプロストンと末梢性オピオイド拮抗薬を含み、
前記末梢性オピオイド拮抗薬が、N-メチルナルトレキソン、N-メチルナロキソン、N-メチルナロルフィン、N-ジアリルノルモルフィン、N-アリルレバロルファン、及びN-メチルナルメフェンからなる群より選ばれる化合物の第4級塩を含む第4級モルフィナン化合物である、医薬組成物。 - 有害な副作用が、吐き気又は嘔吐又はこれらの双方である、請求項4に記載の医薬組成物。
- 第4級モルフィナン化合物の第4級塩が、N-メチルナルトレキソンである、請求項4に記載の医薬組成物。
- ルビプロストン誘発性胃腸副作用の頻度及び/又は重症度を軽減するための医薬組成物であって、末梢性オピオイド拮抗薬を含み、
前記末梢性オピオイド拮抗薬が、N-メチルナルトレキソン、N-メチルナロキソン、N-メチルナロルフィン、N-ジアリルノルモルフィン、N-アリルレバロルファン、及びN-メチルナルメフェンからなる群より選ばれる化合物の第4級塩を含む第4級モルフィナン化合物である、医薬組成物。 - 胃腸副作用が、吐き気又は嘔吐又はこれらの双方である、請求項7に記載の医薬組成物。
- 経口、舌下、筋肉内、皮下、静脈内、又は経皮投与される、請求項7に記載の医薬組成物。
- 投与が、経口である、請求項9に記載の医薬組成物。
- 末梢性オピオイド拮抗薬が、メチルナルトレキソンである、請求項7に記載の医薬組成物。
- メチルナルトレキソンの有効量が、1日あたり0.001mg/kg〜80mg/kg体重である、請求項11に記載の医薬組成物。
- メチルナルトレキソンの有効量が、1日あたり0.05mg/kg〜50mg/kg体重である、請求項12に記載の医薬組成物。
- メチルナルトレキソンの有効量が、1日あたり1mg/kg〜20mg/kg体重である、請求項12に記載の医薬組成物。
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