JP5904053B2 - 放射線遮蔽構造体および盛土 - Google Patents

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Description

本発明は、放射性物質または放射性物質で汚染された物質から発生する放射線を遮蔽して、環境に対する悪影響を低減するための放射線遮蔽構造体および盛土に関するものである。
先の東日本大震災により、津波によって発生した瓦礫は2500万トンを超えていると推計されており、焼却炉等の処理容量を遥かに上回っていることから、多くの瓦礫は未だに適切な処分がなされず、発生地周辺に野積みになっている。また、放射性物質で汚染された瓦礫の広域処理に関しては運搬等のコストもかかることから、簡便ではない。
特に福島県周辺においては、福島第一原子力発電所における水素爆発、炉心溶融事故により放射性物質が飛散し、瓦礫が放射性物質で汚染されたことから、その処理が困難を極めることが予測される。事故を受けて定められた特別措置法、「平成二十三年三月十一日に発生した東北地方太平洋沖地震に伴う原子力発電所の事故により放出された放射性物質による環境の汚染への対処に関する特別措置法施行規則」(平成23年12月14日環境省令第33号)第14条では、原子力発電所の事故に伴って環境に放出された放射性セシウムに汚染された廃棄物について、一般的な処理方法(分別、焼却、埋立処分等)を想定し、安全に処理するための基準として、8000Bq/kgという数値が定められた。
その一方で、盛土を利用した海岸防災林は、津波被害に対する多重防御策の一つとして役立つことが評価されており、被災地の復旧・復興に向けて、早期の復旧・再生が求められている。しかしながら、被災地では地盤沈下が著しく、その地域は広大に広がっており、これら沈下した地盤の嵩上げのために多量の土が必要である。すでに被災地周辺では、需要増により土の値段が上昇しており、今後、土不足が懸念される。
従来より、医療、原子炉運転などの分野において放射線の遮蔽材として多種多様なものが用いられており、鉄、鉛、コンクリートなどが重要な遮蔽材料として用いられてきた。しかしながら、鉄、鉛はコンクリートと比較して価格が高く、また厚さを増していくと加工性も悪化するため、鉄鋼スラグを骨材としたコンクリートが放射線遮蔽材料として近年注目されている。鉄鋼スラグは鉄分を多く含み比重が大きいという性質を持つため放射線遮蔽には有利であるといえる。
特許文献1には、製鋼ダスト、製鋼スラグ、硫黄を加熱して冷却固化する技術が開示されている。特許文献2には、水、セメント、蛇紋岩及び風砕スラグよりなる放射線遮蔽コンクリートが開示されている。特許文献3には、銅水砕スラグ、電炉酸化スラグを含有した高比重コンクリートが開示されている。また、非特許文献1においては、電炉酸化スラグを骨材に利用した特殊コンクリートが開示されている。
特開昭59−43395号公報 特開平2−281200号公報 特開2006−45027号公報
「電気炉酸化スラグ骨材の特殊コンクリートへの実用化」森野ら、コンクリート工学年次論文報告集、Vol.20、No.2、1998
しかしながら、特許文献1に記載の加熱−冷却固化の技術では、加熱コストが高く、亜硫酸ガスの発生もあるため、安価、安全な製造は期待できない。また、特許文献2、3および非特許文献1のように、コンクリートの骨材としてスラグを用いる技術では、コンクリートは一般に、密度の経年変化が大きいため、時間を経るにつれ遮蔽能力が低下するという問題がある。さらに、施工後に骨材中のスラグに含有されるfree−CaO(遊離石灰)やfree−MgO(遊離マグネシア)によってコンクリートが膨張し、ヒビ割れを生ずる可能性もあり、その結果、構造物自体の強度低下、アルカリの溶出等、数々の問題が予測される。
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたものであって、安価で、かつ高い放射線遮蔽効果を長期に亘って発揮できる放射線遮蔽構造体および盛土を提供することを目的とする。
環境省の特別措置法に従えば、放射性セシウムに汚染された瓦礫も、8000Bq/kg以下であれば、海岸防災林などの盛土として使用可能であると考えられる。その場合、環境に漏れ出す放射線量が出来る限り低いレベルとなるように施工できることが好ましい。
そこで本発明者らは、鋭意検討した結果、鉄鋼スラグを放射線遮蔽材として利用することを見出した。本発明の要旨は以下の通りである。
[1]放射性物質または放射性物質で汚染された物質を鉄鋼スラグで被覆、前記放射性物質または放射性物質で汚染された物質から放射される放射線を遮蔽することを特徴とする放射線遮蔽構造体。
[2]前記鉄鋼スラグは、下記式(1)もしくは(2)を満足することにより算出される厚さx以上で、放射性物質または放射性物質で汚染された物質を被覆することを特徴とする[1]に記載の放射線遮蔽構造体。
R=a・A・B・exp(−μx)・・・(1)
R=a・A・B・exp(−μx)/(1+(x/100))・・・(2)
ここで、
R:空間放射線量率規制値[μSv/h]
a:放射能濃度Bq/kgから空間放射線量率μSv/hへの変換係数[(μSv/h)/(Bq/kg)]
A:放射性物質または放射性物質で汚染された物質の放射能濃度[Bq/kg]
B:ビルドアップ係数[−]
μ:線減衰係数[cm−1
x:鉄鋼スラグの被覆厚さ[cm]
とする。
[3][1]または[2]に記載の放射線遮蔽構造体を用いることを特徴とする盛土。
[4]前記放射線遮蔽構造体に、さらに土を被覆することを特徴とする[3]に記載の盛土。
[5]前記放射性物質または放射性物質で汚染された物質と前記鉄鋼スラグとの間、前記放射性物質または放射性物質で汚染された物質の前記鉄鋼スラグに被覆されていない部分、および前記鉄鋼スラグと前記土との間に、遮水シートを設けることを特徴とする[4]に記載の盛土。
[6]前記鉄鋼スラグの被覆厚さは、0.1m〜5.0mであることを特徴とする[3]〜[5]のいずれか一項に記載の盛土。
なお、本発明の放射線遮蔽構造体は、放射性物質または放射性物質で汚染された物質と、放射性物質または放射性物質で汚染された物質から放射される放射線を減衰、遮蔽する遮蔽体(被覆)とを有し、外部の環境にもれ出る放射線量が前記放射性物質または放射性物質で汚染された物質から放射される放射線量よりも弱くなっている構造体のことをいう。また、ここでの遮蔽とは完全に放射線を遮ることを意味するものではなく、放射線を減衰させ弱める効果を言う。
本発明によれば、簡便かつ安価な放射線遮蔽構造体が提供できる。また、本発明によれば、放射性汚染物質の隔離、遮蔽や、地上や海底のホットスポット等からの放射線を遮蔽することができる。さらに、本発明によれば、放射線の漏洩を最大限抑制しながら、放射線で汚染された瓦礫を海岸防災林等への盛土に利用することができる。
本発明の第一の実施形態に係る斜視図である。 本発明の第二の実施形態に係る断面図である。 本発明の第三の実施形態に係る断面図である。 放射線遮蔽効果を測定する装置の概要図である。 透過率(推定値)の結果を示すグラフである。 放射線汚染瓦礫からなる盛土の一例を示す図である。
図1は本発明の第1の実施形態を示す図であり、放射性物質または放射性物質で汚染された物質の貯蔵、廃棄、隔離等のための施設で用いることができる放射線遮蔽構造体である。容器1は内壁2および外壁3で構成されており、内壁2および外壁3の間には鉄鋼スラグ4が充填されている。そして、放射性汚染物質5は、鉄鋼スラグ4に覆われた状態で、容器1内に充填される。鉄鋼スラグは、鉄分を多く含み、比重が大きいことから、放射線遮蔽効果が大きい。したがって、本実施形態において、鉄鋼スラグを放射線遮蔽材として用いることにより、高い放射線遮蔽効果を得ることができる。なお、容器1の内壁2および外壁3の材料としては、鉄鋼スラグを充填したときに崩壊しない程度の強度を有する材料であればよい。また、放射線汚染物質5は、放射能濃度基準である8000Bq/kg以下のものを想定している。
容器1の天井部を覆蓋する際には、鉄鋼スラグ4を放射性汚染物質5の上に直接被覆してもよい。さらに鉄鋼スラグの上に雨等を防ぐ屋根、またはシートを設けることにより、例えば、屋外における放射線汚染物質5の保管時において、雨水による有害物質の溶出等も防ぐことが出来る。
図2は、本発明の第2の実施形態を示す図であり、放射性物質または放射性物質で汚染された物質を利用した盛土の例である。なお、本発明における盛土とは、津波被害に対する多重防御策の一つである海岸防災林などを植えるための土をはじめとして、堤防や土手などを形成するための構造体のことである。盛土を形成する土地に、放射性汚染物質5を積み上げ、成形する。このとき、放射性汚染物質5を積み上げる前に、底面に遮水シート7を設置し、雨水による放射性物質の溶出防止を行ってもよい。なお、放射線汚染物質5は放射能濃度基準である8000Bq/kg以下のものを想定している。
本発明において、鉄鋼スラグ4は、放射性汚染物質5の外側に覆いかぶさるように盛られ、堆積される。鉄鋼スラグ4は、鉄分を多く含み、比重が大きいことから、放射線汚染物質5の外側に客土6などの土が直接盛られる場合と比較して、放射線遮蔽効果が大きい。また、使用する客土6を減らすことができるため、客土の使用量低減にも貢献することができる。
なお、使用した鉄鋼スラグ4からアルカリ等の溶出が懸念されるような場合には、図2に示すように、鉄鋼スラグ4と放射性汚染物質5との間、すなわち放射性汚染物質5の外側や、鉄鋼スラグ4の外側にも遮水シート7を設けることにより、スラグと雨水との接触、アルカリ等の溶出を防止することができる。また、施工後、鉄鋼スラグ内に含まれるfree−CaO(遊離石灰)やfree−MgO(遊離マグネシア)によってスラグが膨張しても、本発明のような盛土には多くの空隙があるため、盛土全体の膨張は空隙の緩衝作用によって抑制することができる。
図3は、本発明の第3の実施形態を示す図であり、放射線で汚染された海底の土壌が海水にむき出しになっている部分に鉄鋼スラグを堆積し、放射線で汚染された海底の土壌を被覆していることを示す図である。放射線で汚染された土壌、すなわち放射性汚染物質5の上に鉄鋼スラグ4を被覆することから、非常に簡便である。鉄鋼スラグ4の直上は海水8に覆われるが、鉄鋼スラグ4は比重が重いため、海流によって巻き上がったり、移動したりすることもほとんどないと考えられる。また、鉄鋼スラグ4は、海水中では一般的にある程度の固化が進行するため、放射性汚染物質5からずれてしまうこともないと考えられる。また、海水中ではアルカリの溶出が推測されるが、海流による希釈のため、pHの上昇幅は僅かであり、被覆上部の海水中における生態系への影響はほとんどないと考えられる。
本発明において、鉄鋼スラグの粒径は、最大粒径が50mm以下、好ましくは、30mm以下に粉砕されたものであれば、特に加工することなく用いることができる。具体的には、50mm以下、好ましくは、30mm以下の篩目を通過したものを用いることができ、これらを放射性物質または放射性物質で汚染された物質の外側を覆うように配置(被覆)することで本発明の目的が達成される。また、放射性物質または放射性物質で汚染された物質の外側全部を被覆せずともよく、必要な部分を被覆するのみでよい。
本発明において、鉄鋼スラグは、下記式(1)もしくは(2)を満足することにより算出される厚さx以上で、放射性物質または放射性物質で汚染された物質を被覆することが好ましい。
R=a・A・B・exp(−μx)・・・(1)
R=a・A・B・exp(−μx)/(1+(x/100))・・・(2)
ここで、
R:空間放射線量率規制値[μSv/h]
a:放射能濃度Bq/kgから空間放射線量率μSv/hへの変換係数[(μSv/h)/(Bq/kg)]
A:放射性物質または放射性物質で汚染された物質の放射能濃度[Bq/kg]
B:ビルドアップ係数[−]
μ:線減衰係数[cm−1
x:被覆厚さ(鉄鋼スラグの被覆厚さ)[cm]
以下に、式(1)および式(2)の算出方法を説明する。
通常、上述のような放射線汚染物質から発生する放射線の多くはγ線であることから、本発明においては、γ線の遮蔽を考慮している。
γ線が放射線遮蔽材により減衰されるとき、一般に散乱線も含めた減弱は以下の式で表される。
I=I・B・exp(−μx)・・・(3)
式(3)を変換すると、下記式(4)となる。
I/I=B・exp(−μx)・・・(4)
ここで、
:遮蔽前の空間放射線量率[μSv/h]
I:遮蔽後の空間放射線量率[μSv/h]
I/I:透過率
μ:線減衰係数[cm−1
x:放射線遮蔽材厚さ[cm]
B:ビルドアップ係数[−]
なお、γ線が放射線遮蔽材により減衰するとき、散乱光子も一部測定点に入射するため、非衝突線のみの線量に比べると増加する。これをビルドアップ効果という。ビルドアップ係数Bは、B=(測定点に入射するγ線による線量)/(測定点に入射する非衝突線による線量)で定義される。
ここで、線減衰係数μは、遮蔽実験を実施して実験的に求めてもよいし、遮蔽材に含まれる元素、各元素に対する質量吸収係数、比重、対象核種などから、理論的に算出することも可能である。
ある放射性物質または放射性物質で汚染された物質からの放射線の遮蔽を考え、放射性物質または放射性物質で汚染された物質の量に対する、放射線遮蔽材を隔てた反対側の空間放射線量率は、式(3)に、I=a・Aを代入して、
I=a・A・B・exp(−μx)・・・(1)´
となる。
ここで、放射線遮蔽材厚さは被覆層の厚さ、つまり本発明においては鉄鋼スラグの被覆厚さといえるので、
I:鉄鋼スラグを隔てた反対側の空間放射線量率[μSv/h]
a:放射能濃度Bq/kgから空間放射線量率μSv/hへの変換係数[(μSv/h)(Bq/kg)]
A:放射性物質または放射性物質で汚染された物質の放射能濃度[Bq/kg]
B:ビルドアップ係数[−]
μ:線減衰係数[cm−1
x:鉄鋼スラグの被覆厚さ[cm]
である。
ここで、R:空間放射線量率規制値[μSv/h]とすると、
R=a・A・B・exp(−μx)・・・(1)
を満たす鉄鋼スラグの被覆厚さxがあれば、鉄鋼スラグの外側の環境においては、空間放射線量率規制値以下になるといえる。
現状では、追加被ばく量が年間1mSvを超えないという前提で、0.19μSv/hという数値が環境省より示されている。したがって、放射性物質または放射性物質で汚染された物質に対する鉄鋼スラグの被覆厚さは、Rに0.19μSv/hを代入することにより求めることができる。また、Aで表される放射性物質または放射性物質で汚染された物質の放射能濃度は、各対象物質の放射能濃度を測定することにより求めることができる。なお、放射能濃度の測定は、一般的なゲルマニウム半導体検出器やNaI(Tl)シンチレーションスペクトロメータを用いることができる。
次に、aで表される放射能濃度Bq/kgから空間放射線量率μSv/hへの変換係数について説明する。放射性物質または放射性物質で汚染された物質が点線源とみなせる場合には、例えば、社団法人日本アイソトープ協会(2001)、アイソトープ手帳第10版に核種ごとに記載されている、実効線量率定数を利用できる。放射性物質または放射性物質で汚染された物質の空間的な影響が無視できない場合には、放射性物質または放射性物質で汚染された物質の形状を仮定し、形状を微小なメッシュで要素に分割し、各要素の測定点との距離、および、要素から測定点までの間に介在する他の要素による遮蔽効果を理論計算などによって求め、各要素から測定点に到達する放射線量を積分することによってaや空間放射線量率を求めることができる。もちろん、実際に形状を作製して実験的に求めてもよい。
また、ビルドアップ係数Bは、上記に定義したもののほかに、ビルドアップ係数の近似として、福田乙三(1963)、「放射線しゃへい壁の施工」、鹿島建設技術研究所出版部に記載の、B≒μx(ただし、μxが1を超えないときはB≒1)を用いてもよい。
このようにして式(1)中の各数値を求めて代入することにより、最低限必要な鉄鋼スラグの被覆厚さxを求めることができる。
ただし、放射性物質または放射性物質で汚染された物質の堆積物の空間放射線量率は、一般的に、放射性物質または放射性物質で汚染された物質を含む堆積物から1m離れた地点で測定される。当然ながら、被覆後は、被覆した厚さx分だけ堆積物は厚くなる。被覆後であっても、被覆前の堆積物(放射性物質または放射性物質で汚染された物質)から1mの距離であれば式(1)が成り立つ。しかしながら、被覆後に被覆した堆積物から1mの距離で測定する場合には、被覆前の測定点よりも、被覆厚さxの分だけ、放射性物質または放射性物質で汚染された物質の堆積物から測定点が離れることになる。
したがって、被覆後に測定する空間放射線量率は、測定距離が離れるという影響を考慮する必要がある。この場合、一般に距離の2乗に反比例して放射線が減衰すると考えられるので、式(1)は、以下の式(2)のようになる。
R=a・A・B・exp(−μx)/(1+(x/100))・・・(2)
ここで、
R:空間放射線量率規制値[μSv/h]
a:放射能濃度Bq/kgから空間放射線量率μSv/hへの変換係数[(μSv/h)/(Bq/kg)]
A:放射性物質または放射性物質で汚染された物質の放射能濃度[Bq/kg]
B:ビルドアップ係数[−]
μ:線減衰係数[cm−1
x:鉄鋼スラグの被覆厚さ[cm]
実際の施工の場合には、これらの推算結果にいくらかの安全率を掛けて厚さを決定すれば、より安全な盛土を作製できる。
本発明において、鉄鋼スラグの被覆厚さは、0.1m〜5.0mであることが好ましい。この被覆厚さは、薄すぎると放射線遮蔽効果が十分ではなくなり、また、施工するにあたり被覆厚さを一定にすることも困難になる。一方で、厚すぎるとスラグの運搬、施工などのコストが高くなる。本発明において、好ましくは0.2m〜3.0m、より好ましくは0.3m〜1.0mとする。このような被覆厚さに設定することにより、十分な放射線遮蔽効果を維持しながら、簡便、安価な施工が可能となる。
本発明の鉄鋼スラグの放射線遮蔽効果について試験を行い、本発明の効果を検証した。
縦19.6cm、横14.1cm、充填物を入れる部分の厚さを種々変更することができる容器に鉄鋼スラグを充填し、板状のスラグ充填照射試料を作製した。スラグ充填照射試料の充填物(スラグ)厚さは、10cm、16.5cm、26.5cmの3水準を用意した。鉄鋼スラグは、製鋼工程で発生する脱リンスラグを用いた。スラグ組成を表1に示す。表1に示すスラグ組成の残部は、酸素及び不純物からなる。なお、鉄鋼スラグの最大粒径は30mm以下であり、篩目が30mmの篩を通過したものである。
Figure 0005904053
比較例として、砂を用いた。前述のスラグ充填照射試料と同様に、板状の砂充填照射試料を作製し試験を行った。砂は、鹿島コンクリート(株)製、鹿島砂を用いた。なお、充填物のかさ比重は、スラグ充填物2.07、砂1.81であった。
試験に用いた装置図を図4に示す。図4(a)は装置の概要図であり、図4(b)は、線源方向からの概要図である。放射線約0.6PBq(PBq=ペタベクレル=1015Bq)の60Co密閉線源を有するγ線照射装置にて試験を行った。線源9の中心から約2500mmの位置(空間放射線量率:約25Gy/h(γ線では≒25Sv/h))に、前述したスラグ充填照射試料、砂充填照射試料および充填物を入れていない空の容器(照射試料10)を設置し、照射試料を透過した空間放射線量率をそれぞれ測定した。なお、空間放射線量率を空間線量率と称することもある。照射試料10を透過した空間放射線量率を測定するために、検出器11が設置されている。検出器11の周囲は、鉛製覆い12により遮蔽されている。鉛製覆い12は、照射試料10を透過した放射線の空間放射線量率のみを検出するために設置している。つまり、他の部分から反射してくる放射線が検出器11に入るのを防ぐ目的で設置している。検出器には、応用技研製電位計:AE−1110a、および、応用技研製電離箱:C−111Fを用いて、測定を行った。得られた結果を表2に示す。なお、[充填物入り容器透過後の空間放射線量率]/[空容器のみ(充填物なし)透過後の空間放射線量率]を算出し、充填物を入れている容器の影響を除外した充填物のみの透過率を算出した。
Figure 0005904053
表2より、充填物がスラグの場合の方が砂の場合よりも透過率が低いものとなっており、砂よりスラグの方が優れた遮蔽材となることが分かった。
表2の結果は、放射線源が60Coの場合であるが、放射線汚染瓦礫中の放射性物質は、134Csおよび137Csが主成分と考えられ、特に長期的には、半減期が約2年の134Csよりも、半減期約30年の137Csが主成分となっていくと考えられる。そこで、遮蔽体が同一でも、放射性物質の核種により、透過率が異なるため、表2の試験結果を用いて137Csが放射線源の場合の鉄鋼スラグおよび砂の透過率の推定値を算出した。スラグ及び砂のそれぞれの厚さの時の60Coでの透過率を用いて、透過率表から、スラグ及び砂のコンクリート相当厚さを求め、その厚さを137Csでの透過率表に当てはめて137Csでの透過率の推定を行った。なお、透過率表は、財団法人原子力安全技術センター(2007)、「放射線施設のしゃへい計算実務マニュアル」に記載の透過率表を用いた。透過率の結果を表3および図5に示す。
Figure 0005904053
表3および図5から、いずれの厚さにおいても、充填物が砂の場合よりも鉄鋼スラグの方が、透過率が低いため、137Csが放射線源の場合においても、本発明の鉄鋼スラグの遮蔽効果が砂の遮蔽効果を上回っているといえる。
次に、前記式(4)の代りにB≒μx(ただし、μxが1を超えないときはB≒1)と近似した下記式(4)´および式(4)´´を用い、これに、表3に記載の試験結果である137Csでの透過率推定値を代入し、線減衰係数μを求めた。また、異なる遮蔽材の厚さにおいて得られた線減衰係数μの算術平均(線減衰係数平均値)を求めた。結果を表4に示す。
I/I≒μx・exp(−μx)・・・(4)´
ただし、μxが1を超えないときは、
I/I≒exp(−μx)・・・(4)´´
Figure 0005904053
したがって、スラグ、砂、それぞれについて線減衰係数平均値を用いると式(4)´は、以下のようになる。
スラグ :I/I≒0.2149x・exp(−0.2149x)・・・(5)
砂 :I/I≒0.1859x・exp(−0.1859x)・・・(6)
ただし、B≒μxが1を超えないとき、
スラグ(x≦1/0.2149≒4.653の場合):I/I≒exp(−0.2149x)・・・(5)´
砂(x≦1/0.1859≒5.379の場合):I/I≒exp(−0.1859x)・・・(6)´
また、遮蔽効果を比較する意味で、放射線の減衰率すなわち透過率(I/I)が、例えば、1/2、1/10になるような厚さを、式(5)、式(5)´、式(6)および式(6)´より算出し、結果を表5に示す。
Figure 0005904053
表5より、スラグは、砂と比較して約1.2倍、放射線遮蔽効果が高いと考えられる。
次に、放射線汚染堆積物を鉄鋼スラグで被覆する場合、最低限必要な被覆厚さについて具体的に推算し、本発明の効果を検証した。
原子力安全基盤機構、災害廃棄物の放射能汚染状況の調査報告書(平成23年度)より、図6のような、底辺20m、上辺10m、高さ5mの放射性物質で汚染された瓦礫の台形錐を仮定し、これを放射線遮蔽材で被覆した場合の空間放射線量率を推算した。放射線汚染瓦礫の放射能濃度Aを8000Bq/kgとし、8000Bq/kgの汚染瓦礫の前記台形錐から1m離れた地点での空間放射線量率を推算した。具体的には、上記調査報告書中の図(図5.8)の放射能濃度と空間放射線量率との相関を示す線の傾きから、放射能濃度Bq/kgから空間放射線量率μSv/hへの変換係数aを、0.0004[(μSv/h)/(Bq/kg)]と見積もった。
これを、スラグまたは砂で被覆すると仮定し、瓦礫表面から1mの距離において測定する場合において、規制値を下回るために必要な厚さxを式(1)によって求めた。この時、R=0.19μSv/h、a=0.0004[(μSv/h)/(Bq/kg)]、A=8000Bq/kg、μ=0.2149(スラグの場合)、μ=0.1859(砂の場合)、を用いた。なお、式(1)中のBは、スラグに関しては、x>1/0.2149≒4.653の場合、B=0.2149xとし、x≦1/0.2149≒4.653の場合、B=1とした。また、砂に関しては、x>1/0.1859≒5.379の場合、B=0.1859xとし、x≦1/0.1859≒5.379の場合、B=1とした。また、構造物から1m離れた地点で測定する場合における必要な厚さxは、距離の2乗に反比例して放射線が減衰すると仮定した式(2)を用いて求めた。用いた値は上記と同じ値を用いた。結果を表6に示す。
Figure 0005904053
表6より、スラグは砂よりも高い放射線遮蔽効果を有することが分かった。8000Bq/kg程度の放射性物質または放射性物質で汚染された物質の堆積物であれば、鉄鋼スラグにより約20cm被覆することにより、規制値を下回ると考えられる。このように、鉄鋼スラグを用いることにより、放射線遮蔽効果の高い盛土を構築することが可能となる。
1 容器
2 内壁
3 外壁
4 鉄鋼スラグ
5 放射性汚染物質
6 客土
7 遮水シート
8 海水
9 線源
10 照射試料
11 検出器
12 鉛製覆い

Claims (6)

  1. 放射性物質または放射性物質で汚染された物質を鉄鋼スラグのみで被覆し、前記放射性物質または放射性物質で汚染された物質から放射される放射線を遮蔽することを特徴とする放射線遮蔽構造体。
  2. 前記鉄鋼スラグは、下記式(1)もしくは(2)を満足することにより算出される厚さx以上で、放射性物質または放射性物質で汚染された物質を被覆することを特徴とする請求項1に記載の放射線遮蔽構造体。
    R=a・A・B・exp(−μx)・・・(1)
    R=a・A・B・exp(−μx)/(1+(x/100))・・・(2)
    ここで、
    R:空間放射線量率規制値[μSv/h]
    a:放射能濃度Bq/kgから空間放射線量率μSv/hへの変換係数[(μSv/h)/(Bq/kg)]
    A:放射性物質または放射性物質で汚染された物質の放射能濃度[Bq/kg]
    B:ビルドアップ係数[−]
    μ:線減衰係数[cm−1
    x:鉄鋼スラグの被覆厚さ[cm]
    とする。
  3. 請求項1または2に記載の放射線遮蔽構造体を用いることを特徴とする盛土。
  4. 前記放射線遮蔽構造体に、さらに土を被覆することを特徴とする請求項3に記載の盛土。
  5. 前記放射性物質または放射性物質で汚染された物質と前記鉄鋼スラグとの間、前記放射性物質または放射性物質で汚染された物質の前記鉄鋼スラグに被覆されていない部分、および前記鉄鋼スラグと前記土との間に、遮水シートを設けることを特徴とする請求項4に記載の盛土。
  6. 前記鉄鋼スラグの被覆厚さは、0.1m〜5.0mであることを特徴とする請求項3〜5のいずれか一項に記載の盛土。
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