しかしながら、特許文献1には、空気層を形成する方法については開示がない。また、特許文献2では、p型コンタクト層上に一様に金属膜を形成して、n電極の下方に相当する部分の金属膜に、エッチングにより窓を形成している。そして、特許文献2の方法は、金属膜を介してp型コンタクト層と導電性基板とを接合することにより、n電極の下部に相当する窓部分に空気層を形成する方法である。
このため、特許文献2の方法では、p型コンタクト層を導電性基板に接合することで空気層を形成する方法であるので、成長基板をエピタキシャル成長層から剥離させて、n型コンタクト層側から光を出力させる基板リフトオフによる素子にしか用いることができない。
そこで、本発明の目的は、電流が電極の下方の発光層の領域に集中しないように、電極の下方に相当する部分に空気層を容易に形成することである。
第1の発明は、III 族窒化物半導体から成る第1伝導型コンタクト層、発光層、第2伝導型コンタクト層を少なくとも有する積層体を有し、その積層体のうちの第1伝導型コンタクト層に接合した電流拡散のための透光性導電膜とを有するIII 族窒化物半導体発光素子の製造方法において、第1伝導型コンタクト層に対する第1電極、第2伝導型コンタクト層に対する第2電極において、発光層の発光面に対して正射影を形成する電極のうち、少なくとも一方の電極を遮蔽電極とするとき、第1伝導型コンタクト層の上方であって、遮蔽電極の正射影領域の少なくとも一部の領域に、エッチング可能な材料による可溶解層を形成し、第1伝導型コンタクト層及び可溶解層を覆う金属酸化物から成る透明導電膜を形成し、透明導電膜を熱処理して、透明導電膜を結晶化し、可溶解層のエッチングが可能なエッチング媒体に、透明導電膜を晒して、可溶解層をエッチングして、可溶解層の除去された領域に空気層を形成することを特徴とするIII 族窒化物半導体発光素子の製造方法である。
ここにおいて、発光素子は、第1伝導型コンタクト層側から光を出力するフェースアップ型(ワイヤボンディング型)であっても、成長基板側から光を出力するフェースダウン型であっても、エピタキシャル成長層を成長基板上に成長させた後に、第1伝導型コンタクト層を支持基板に接合した後、成長基板を剥離させて、露出した第2伝導型コンタクト層側から光を出力する基板リフトオフ型であっても良い。
フェースアップ型の発光素子においては、第1伝導型コンタクト層から光を外部に出力するために、第1伝導型コンタクト層に対する第1電極が光を遮蔽する遮蔽電極となる。このために、透明導電性膜の遮蔽電極の下方部分に、空気層が形成される。また、フェースダウン型発光素子及び基板リフトオフ型発光素子においては、第1伝導型コンタクト層が透明導電膜と、絶縁膜とを介して、パッド電極や電極を兼ねる反射膜に接合される。そして、絶縁膜に形成された孔を介して、透明導電膜とパッド電極とを接続する、第1伝導型コンタクト層に対する第1電極が形成される。また、第1電極、第2電極は、単一面積の電極であっても、透明導電膜やコンタクト層との接触部分が、複数の島状であっても、線状や、櫛歯状のパターンであっても良い。
これらの型の発光素子では、発光層から反射膜に向かう光、及び反射膜で反射されて光出力面に向かう光に対して、第1電極が光を遮蔽する遮蔽電極となる。このために、第1伝導型コンタクト層の上方であって、この遮蔽電極の形成される領域の下方に、空気層が形成される。なお、「上方」、「下方」は、発光素子の使用状況、すなわち、光の出力する方向に対する定義ではなく、成長基板上にエピタキシャル層を成長させる方向を上方、逆方向を下方と定義する。したがって、フェースアップ型発光素子の場合には、光出力方向とエピタキシャル成長層の成長方向とが一致しており、第1伝導型コンタクト層の外側、すなわち、発光層とは逆の側が、上方となる。逆に、ファースダウン型発光素子と基板リフトフオ型発光素子の場合には、最初に成長させるエピタキシャル成長層の側から光が出力されるので、光取り出し方向と、エピタキシャル成長方向とは、逆向きになる。本発明では、発光素子の型にかかわらず、一様に定義するために、エピタキシャル成長方向、すなわち、第1伝導型コンタクト層の外向き(発光層と反対側の向き)を上方と定義している。
また、基板リフトオフ型発光素子の場合には、上述したように第1伝導型コンタクト層に対する第1電極が遮蔽電極となる場合の他、第2伝導型コンタクト層側から光が出力されるので、第2伝導型コンタクト層の面上に第2電極が形成される場合には、この第2電極も遮蔽電極となる。したがって、第1伝導型コンタクト層の上方であって、この第2電極の正射影領域(上方)に、空気層が形成されていても良い。なお、遮蔽電極の正射影領域の少なくとも一部の領域に、可溶解層が形成されるとは、可溶解層又は空気層の形成領域が遮蔽電極の正射影領域と完全に一致している場合の他、可溶解層又は空気層の形成領域が、正射影領域を内部に包含している場合、正射影領域の大部分を占める中心部を含んでいるが、少ない面積の周辺部は含んでいない場合、正射影領域の一部分に含まれている場合、正射影領域の一部分を含む場合をも含むものとする。
空気層の存在により、発光層における遮蔽電極の正射影領域には、空気層により電流の流れが抑制されるので、この正射影領域での発光が抑制され、電流は他の領域に迂回して流れる。この結果、遮蔽電極で遮蔽される光の発光を抑制して、遮蔽されない光の強度を向上させることができる。また、空気層は、屈折率が最も小さいので、第1伝導型コンタクト層の空気層に対する屈折率比を大きくできる。この結果、全反射の臨界角を小さくでき、空気層側への光の透過を抑制することができる。これらの作用により、発光素子の外部量子効率を向上させることができる。
可溶解層は、空気層を形成するための層である。この可溶解層は、第1伝導型コンタクト層の面上に接合して形成されることが望ましい。しかしながら、第1伝導型コンタクト層と可溶解層との間に、可溶解層に対してエッチング耐性の大きい絶縁膜が形成されていても良い。また、第1伝導型コンタクト層の面上に、空気層と第1伝導型コンタクト層との間の導電性を向上させない程度に薄い透明導電膜を形成した後に、可溶解層を形成し、さらに、全面に透明導電膜を形成しても良い。すなわち、可溶解層は、第1伝導型コンタクト層の面上に形成される透明導電膜の内部に形成されていても良い。また、第1伝導型コンタクト層と透明導電膜との間に透光性、導電性、耐エッチング性の高い薄膜が形成されていても良い。第1伝導型コンタクト層をエッチング媒体から保護するためである。透明導電膜の内部に可溶解層を形成する方法は、フォトリソグラフィ、透明導電膜の選択形成など、各種の方法を用いることができる。
また、遮蔽電極の形成は、空気層を形成した後に形成することが、望ましい。可溶解層のエッチングが容易であるためである。しかし、遮蔽電極にエッチング耐性があれば、遮蔽電極を形成した後に、可溶解層をエッチングして空気層を形成しても良い。
透明導電膜は、発光層からの発光の波長に対して、透過率が高く、導電率が高い材料であれば、任意である。透明導電膜は、一般的には、金属酸化物を採用することができる。例えば、インジウム錫酸化物(ITO)、インジウム亜鉛酸化物(IZO)、酸化亜鉛(ZnO)、アルニミウム亜鉛酸化物(AZO)、ガリウム亜鉛酸化物(GZO)、フッ素錫酸化物(FTO)、ニオブチタン酸化物(TNO)、カドミニウム錫酸化物(CTO)である。金属酸化物の場合には、熱処理による結晶化を行うことで、粒界を形成して、この粒界で形成される経路を通して、エッチング媒体を可溶解層まで浸透させることができる。透明導電膜の熱処理の温度は、600℃以上、750℃以下が望ましい。この温度範囲の時には、粒界の形成を効果的に行うことができる。
可溶解層の材料は、透明導電膜に比較して、容易にエッチングされる材料であれば良い。例えば、可溶解層には、二酸化シリコン(SiO2 )、窒化シリコン(SiN)、金属のうち少なくとも1種を用いることができる。また、エッチング媒体は、可溶解層を容易にエッチングでき、透明導電膜をエッチングし難い材料を用いることができる。可溶解層のエッチングは、フッ化水素(HF)によるウエットエッチング、又は、少なくともフッ化炭素系ガスを含むガス(望ましくは酸素ガスを含む)によるプラズマエッチングを採用することができる。
上記発明において、第1伝導型コンタクト層は、p型コンタクト層であり、遮蔽電極は、第1伝導型コンタクト層に対する電極とすることができる。また、第1伝導型コンタクト層は、p型コンタクト層であり、第2伝導型コンタクト層はn型コンタクト層であり、遮蔽電極は、第2伝導型コンタクト層に対する電極とすることができる。
本発明は、第1伝導型コンタクト層の上に、可溶解層と透明導電膜を形成して、熱処理をすることで透明導電膜を結晶化した後に、エッチング媒体に、透明導電膜を晒すことで、結晶化により透明導電膜に生じた粒界を介して、エッチング媒体を可溶解層に導入することができる。これにより、可溶解層を容易にエッチングして除去して、可溶解層の形成された領域を空気層とすることができる。この空気層は、発光層からの光を遮蔽する遮蔽電極の正射影領域に形成されていることから、発光層のこの部分での電流密度を低減でき、この領域で発光強度を低下できる。また、電流は発光層の他の領域に迂回するので、同一駆動電流に対しては、発光出力を向上させることかできる。また、空気層は、屈折率が小さいので、全反射臨界角を小さくでき、第1伝導型コンタクト層からの光が遮蔽電極によって吸収される前に空気層により第1伝導型コンタクト層側に反射させることができる。これらの結果として、発光素子の外部量子効率を向上させる構造を、容易に製造することができる。
以下、本発明の具体的な実施例について図を参照して説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。
本実施例は、フェースアップ型の発光素子である。図1は、本実施例1の半導体発光素子1を示す断面図であり、図2はその平面図である。厚さ100μmのサファイヤ基板101の上には窒化アルミニウム(AlN)から成る膜厚約20nmのバッファ層102が設けられ、その上にシリコン(Si)ドープのGaNから成る膜厚約8.0μmの高キャリア濃度n+層であるn型コンタクト層104(第2伝導型コンタクト層)が形成されている。このn型コンタクト層104の電子濃度は5×1018/cm3である。この層の電子濃度は、高い程、望ましいが、2×1019/cm3まで、増加可能である。そして、n型コンタクト層104の上にIn0.03Ga0.97Nからなる歪み緩和層105が200nmの厚さに形成されている。そして、その歪み緩和層105の上に、膜厚20nmのノンドープのGaNと膜厚3nmのノンドープのGa0.8In0.2Nからなる3周期分積層した多重量子井戸構造(MQW)の発光層106が形成されている。発光層106の上にはマグネシウム(Mg)ドープのAl0.15Ga0.85Nから成る膜厚約60nmのクラッド層に相当するp型層107が形成されている。さらに、p型層107の上にはマグネシウム(Mg)ドープのGaNから成る膜厚約130nmのp型コンタクト層108(第1伝導型コンタクト層)が形成されている。
また、p型コンタクト層108の上にはスパッタ法により形成されたITOから成る透明導電膜10が形成されている。p型コンタクト層108の平面上周辺部には、環状に幅3μmの露出部5が形成されている。この露出部5の幅は、発光効率から言えば、狭い程望ましいが、段差の側壁におけるpn接合の短絡の防止を考慮すると、最低、1μm設けるのが望ましい。透明導電膜10の上には、SiO2 から成る透光性絶縁膜20が形成されている。透明導電膜10の厚さは、70nm、透光性絶縁膜20は、厚さ、200nmである。透光性絶縁膜20に開けられた窓に形成されたpパッド電極40(第1電極)は、厚さ0.01μmのチタン(Ti)と、厚さ0.5μmの金(Au)との2重構造で構成されている。また、p電極パッド40は、TiとAuの合金で構成されていても良い。発光層106から放射された光は、p型コンタクト層108の側から出力される。したがって、このpパッド電極40は、この光に対しては、外部への光の放出を遮ることになる。したがって、本実施例では、p電極パッド40が遮蔽電極となる。
一方、p型コンタクト層108からエッチングして、露出したn型コンタクト層104上には、nパッド電極30(第2電極)が形成されている。nパッド電極30は2重構造をしており、膜厚約18nmのバナジウム(V)層31と、膜厚約1.8μmのアルミニウム(Al)層32とをn型コンタクト層104の一部露出された部分である電極形成部16に、順次積層させることにより構成されている。
そして、pパッド電極40の下方のp型コンタクト層108の上面において、透明導電膜10とp型コンタクト層108との間に厚さ140nmの空気層50が形成されている。この空気層50は、pパッド電極40のp型コンタクト層108上の正射影領域に形成される。したがって、空気層50の平面形状は、pパッド電極40の平面形状と同一である。
次に、本実施例に係る半導体発光素子の製法について説明する。まず、サファイア基板101上に、MOCVD法により、400℃において、窒化アルミニウム(AlN)の低温成長によるバッファ層102が形成される。次に、それぞれのIII 族窒化物半導体のエピタキシャル成長の最適温度に調整しつつ、MOCVD法によってIII 族窒化物半導体からなるn型コンタクト層104、歪み緩和層105、発光層106、p型層107、p型コンタクト層108を順に積層させた。MOCVD法において用いる原料ガスは、窒素源として、アンモニア(NH3 )、Ga源として、トリメチルガリウム(Ga(CH3 )3 )、In源として、トリメチルインジウム(In(CH3 )3 )、Al源として、トリメチルアルミニウム(Al(CH3 )3 )、n型ドーピングガスとして、シラン(SiH4 )、p型ドーピングガスとしてシクロペンタジエニルマグネシウム(Mg(C5 H5 )2 )、キャリアガスとしてH2 またはN2 である。
以上の半導体層のエピタキシャル成長については、良く知られた方法である。図3に示すように、p型コンタクト層108の上面の、後に形成されるpパッド電極40の正射影領域にSiO2 から成る可溶解層61が140nmの厚さに形成された。この可溶解層61の形成は、次のように行った。p型コンタクト層108の全面にSiO2 膜を厚さ140nmにCVD法により形成した。その後、SiO2 膜の全面に、フォトレジスト膜を形成して、フォトリソグラフィにより、フォトレジスト膜を、pパッド電極40の正射影領域に残した。次に、残されたフォトレジスト膜をマスクとして、フォトレジスト膜で覆われていないSiO2 膜の領域を希フッ化水素酸液でエッチングして除去した。これにより、p型コンタクト層108上のpパッド電極40の正射影領域に厚さ140nmのSiO2 から成る可溶解層61が形成された。次に、図4に示すように、ITOを、スパッタリングにより、厚さ70nmに、可溶解層61及びp型コンタクト層108の上面に、一様に堆積させて透明導電膜12を形成した。
次に、その透明導電膜12の上の全面に、フォトレジスト膜13を塗布し、フォトリソグラフィにより、nパッド電極30の形成領域に、フォトレジスト膜13に窓を開けた。次に、この状態で、ウエットエッチングを行い、nパッド電極30の形成領域の透明導電膜12が除去された。そして、フォトレジスト膜13と透明導電膜12との2重膜をマスクとして、塩素プラズマによりドライエッチングを行った。この結果、図5に示すように、n型コンタクト層104が露出して、電極形成部16が形成された。次に、フォトレジスト膜13が除去され、この状態の透明導電膜12が、図1に示す半導体発光素子1の透明導電膜10となる。
次に、この状態で、素子は、減圧(1Pa)、窒素雰囲気中、700℃で、3分間、加熱処理されて、透明導電膜10は結晶化された。この時、結晶粒界が現れた。次に、n型コンタクト層104の露出部である電極形成部16と段差の側壁18と透明導電膜10の外周部及び、その他の必要な箇所をフォトレジストでマスクして、素子を50℃に保持し、透明導電膜10を、四フッ化炭素ガス(CF4 )と酸素ガスとの混合ガスのプラズマ中に、15分間晒した。エッチングガスは、透明導電膜10に形成された結晶粒界による微小隙間を介し、又は、粒界をエッチングしつつ、透明導電膜10の内部に浸透し、可溶解層61に至り、可溶解層61がエッチングされた。この結果、この領域に、図1に示す空気層50が形成された。この状態を、光学顕微鏡で観察したところ、可溶解層61が除去されて、空気層50が形成されたことが確認された。なお、比較列として、透明導電膜10の熱処理をせずに、同一エッチングガスのプラズマ雰囲気中に、透明導電膜10を晒したが、この場合には可溶解層61は除去されず、空気層50は形成されなかったことが確認された。
この後、最表面上に一様にフォトレジストを塗布し、露光及び現像により、透明導電膜10上のpパッド電極40の形成領域に窓を形成して、厚さ0.01μmにTiと、厚さ0.5μmにAuを堆積して、フォトレジストをリフトオフして、pパッド電極40を形成した。その後、同様に、最表面上に一様にフォトレジストを塗布し、露光及び現像により、n型コンタクト層104の電極形成部16に対応する部分に窓を開けて、厚さ18nmにVと、厚さ1.8μmにAlを堆積して、nパッド電極30を形成した。その後、最表面上に一様にSiO2 を200nmの厚さに堆積して、さらに面上に一様に、フォトレジストを塗布し、露光及び現像により、所定領域に窓を開けて、フッ素系のエッチングガスによりドライエッチングを行い、その後、レジストを除去して、透光性絶縁膜20を形成した。このようにして、p型コンタクト層108の上面であって、pパッド電極40の下方の正射影領域に空気層50を有した透明導電膜10が形成された。
本実施例は、フェースアップ型の発光素子であり、p電極(第1電極)とn電極(第2電極とが、配線状に形成された発光素子である。実施例1と同一機能を果たす部分については、同一の符号が付されている。図6は、発光素子2の平面図、図7は、図6における、A−A矢視の断面図である。透明導電膜10の上面に透光性絶縁膜21が形成され、その上にp配線電極41が形成されている。p配線電極41は、透光性絶縁膜21に形成された窓を介して、透明導電膜10に接続されている。また、透光性絶縁膜21に形成された窓を介して、透明導電膜10上に伸びたp配線電極41上にpパッド電極40が形成されている。また、透光性絶縁膜21の上に、直線状のn配線電極33が設けられている。そして、n配線電極33は透光性絶縁膜21に設けられた複数の孔を介して、n型コンタクト層104に接合している。また、nパッド電極30が形成されるn型コンタクト層104の露出面上にも、n配線電極33は延設されており、その露出面上に延設されたn配線電極33上に、nパッド電極30が設けられている。そして、pパッド電極40とnパッド電極30を除く、素子の全表面上に透光性絶縁膜20が形成されている。本発光素子2は、透明導電膜10との接続部と、n型コンタクト104との接続部とを除いて、p配線電極41とn配線電極33とが、透明導電膜10の上方に透光性絶縁膜21を介して、同一面上に形成されていることが特徴である。
本実施例は、第1電極と第2電極とが、櫛歯状に配設されたものである。そして、pパッド電極40とp配線電極41とn配線電極33の、p型コンタクト層108上の正射影領域に、空気層50が形成されている。空気層50の形成は、実施例1と同一である。すなわち、p型コンタクト層108が形成された後に、p型コンタクト層108の面上のp配線電極41とpパッド電極40とn配線電極33の正射影領域に、実施例1と同様にSiO2 から成る可溶解層を形成した。ただし、n配線電極33のn型コンタクト層104との接続部(円形の孔)には、可溶解層は形成されていない。次に、その可溶解層及び残部のp型コンタクト層108面上に、一様な厚さの透明導電膜10を形成し、実施例1と同一条件(減圧、700℃)で、熱処理を行った。次に、四フッ化炭素ガス(CF4 )と酸素との混合ガスのプラズマ中に、透明導電膜10を晒すことで、可溶解層を除去して、空気層50を形成した。その次に、透光性絶縁膜21を形成し、透光性絶縁膜21に透明導電膜10とn型コンタクト層104に対するコンタクトのための孔を形成して、p配線電極41とn配線電極33と、pパッド電極40と、nパッド電極30とを形成した。その後、pパッド電極40と、nパッド電極30を除き、素子2の上面の全面を覆うように、透光性絶縁膜20を形成した。本願発明は、このような発光素子にも用いることができる。
このフェースアップ素子において、n配線電極33の形成部分にp型コンタクト層108からn型コンタクト層104の表面までエッチングして、露出したnコンタク層104上にn配線電極33を接合するように形成しても良い。この場合には、n配線電極33は遮蔽電極とはならないので、n配線電極33の下方には空気層50は形成されず、p配線電極41の下方にのみ空気層50が形成れれる。
上記実施例では、p配線電極41、n配線電極33の正射影領域と一致する領域に空気層50を形成したが、正射影領域の一部に形成されていても良い。
例えば、図8、9に示すように、p配線電極41と透明導電膜10との接触部分の直下に同一形状又は一回り大きい形状の空気層50を形成しても良い。透明導電膜10が70nmと薄いため、この接触部分はp型コンタクト層108に極めて近くなり、光を強く遮蔽することになるので、この接触部分の直下に空気層50を形成すると効果的である。
本実施例は、フェースダウン型(フリップチップ型)発光素子に関するものである。図10は、発光素子3の縦断面図である。pバンプ電極65とnパンプ電極60とを除いた平面図は、図2と同一である。実施例1と同一の構成部分には、同一の符号が付されている。透明導電膜10の上に、SiO2 から成る透光性絶縁膜20が形成されており、その透光性絶縁膜20の上に、Agから成る反射膜70が形成されている。そして、反射膜70と、露出している透光性絶縁膜20の上及び発光素子2の上面に、SiO2 から成る透光性絶縁膜21が形成されている。すなわち、透光性絶縁膜20と透光性絶縁膜21は一体となり、その内部に反射膜70が存在している。また、pパッド電極40には、pバンプ電極65が、nパッド電極30には、nバンプ電極60が接合している。このような半導体発光素子2において、pパッド電極40のp型コンタクト層108上の正射影領域における、透明導電膜10とp型コンタクト層108との界面上に空気層50が形成されている。透明導電膜10とオーミック接触が得られるpパッド電極40の反射率が低い場合に、発光層106におけるpパッド電極40の正射影領域の電流密度を低減させることができる。また、空気層50の存在により、空気層50とp型コンタクト層108との間の屈折率差により、全反射の臨界角を小さくして、発光層106から放射された光を、より多く、p型コンタク層108側に反射させることができる。空気層50の製造方法は、実施例1と同一である。すなわち、p型コンタクト層108が形成された後に、p型コンタクト層108の面上のpパッド電極40の正射影領域に、実施例1と同様にSiO2 から成る可溶解層を形成した。次に、その可溶解層及び残部のp型コンタクト層108面上に、一様な厚さの透明導電膜10を形成し、実施例1と同一条件(減圧、700℃)で、熱処理を行った。次に、四フッ化炭素ガス(CF4 )と酸素との混合ガスのプラズマ中に、透明導電膜10を晒すことで、可溶解層を除去して、空気層50を形成した。本願発明は、このような発光素子にも用いることができる。
実施例4の発光素子は、図6、7、又は、図8、9に示す配線電極を用いた発光素子を、フェースダウン型発光素子としたものである。すなわち、図7に示す構造の素子の最上層の透光性絶縁膜20の上に、Agから成る反射膜、さらに、この反射膜を覆う透光性絶縁膜を形成したのち、nパンプ電極30とpバンプ電極40とを、給電基板にフェースダウンで接合した発光素子としても良い。この場合も、実施例3と同様に、p配線電極41は、導電率が高いが、反射率の低い材料で構成された場合に、空気層50により、発光層106のp配線電極41とn配線電極33の正射影領域での電流密度を低減させて、電流を他の領域に迂回させることができる。図8、9の場合には、大きく遮光される、p配線電極41と透明導電膜10との接触部分のみの正射影領域での電流密度を低減させて、電流を他の領域に迂回させることができる。また、空気層50で、光をp型コンタクト層108側に反射させることができ、外部量子効率を向上させることができる。
本実施例は、成長基板上にエピタキシャル層を形成した後、最上層のp型コンタクト層を低融点金属で支持基板に接合した後、成長基板を剥離させる基板リフトオフ型の発光素子にも用いることができる。基板リフトオフ型の発光素子4の縦断面を図11に示す。光は、n型コンタクト層104側から出力される。n型コンタクト層104上には、櫛歯状又は、格子状のn配線電極33と、矩形発光面の角の部分にn配線電極33に接続するnパッド電極(図示略)が形成されている。そして、p型コンタクト層108上には、透明導電膜10が形成され、その上にAgから成る反射膜70が形成されている。そして、p型コンタクト層108は、バリア層とハンダ層の複層から成る接合層72を介して導電性の支持基板74に接合されている。その支持基板74の裏面の全面に、p電極42が形成されている。n配線電極33は、発光層106からの光を遮蔽する遮蔽電極となる。本実施例では、透明導電膜10とp型コンタクト層108との界面上の、n配線電極33の正射影領域に、空気層50が形成されている。空気層50の形成方法は、実施例1と同一である。すなわち、p型コンタクト層108が形成された後に、p型コンタクト層108面上の、後に形成されるn配線電極33の正射影領域に、実施例1と同様にSiO2 から成る可溶解層を形成した。次に、その可溶解層及び残部のp型コンタクト層108面上に、一様な厚さの透明導電膜10を形成し、実施例1と同一条件(減圧、700℃)で、熱処理を行った。次に、四フッ化炭素ガス(CF4 )と酸素との混合ガスのプラズマ中に、透明導電膜10を晒すことで、可溶解層を除去して、空気層50を形成した。次に、反射膜70、接合層72を介して、支持基板74と透明導電膜10とを接合し、成長基板を除去して、n型コンタクト層104を露出させた。その後に、支持基板50の裏面にp電極42を形成し、n型コンタクト層104の表面上であって、空気層50の直上に該当する部分にn配線電極33を形成した。本願発明は、このような発光素子にも用いることができる。この場合にも、発光層106におけるn配線電極33の正射影領域の電流密度は、空気層50の存在により小さくして、電流を他の領域に迂回させることができる。したがって、この発光素子においても、外部量子効率を向上させることができる。
また、基板リフトオフ型の発光素子においても、支持基板をセラミックスなどの絶縁性材料とした場合には、p型コンタクト層に対する電極も光出力面側に形成する必要がある。この場合に、実施例4のように、p型コンタクト層に対する一様給電のために透明導電膜が用いられるが、この透明導電膜に対して櫛歯状や格子状のp配線電極を形成して、素子の側部でそのp配線電極を露出してpパッド電極を形成することも行われている。この場合に、p型コンタクト層上の、p配線電極の正射影領域に、可溶解層を形成して、透明導電膜を形成して、実施例1と同一の条件で熱処理した後に、四フッ化炭素ガス(CF4 )と酸素との混合ガスのプラズマに、透明導電膜を晒して、可溶解層を除去して、空気層を形成しても良い。この場合の空気層の作用は、実施例4と同一である。この場合には、n配線電極33とp配線電極とが、共に、遮蔽電極となる。
上記の全実施例において、半導体発光素子のエピタキシャル成長層の層構成は一例であって、任意の構成を採用することができる。発光層を構成する単一量子井戸構造や多重量子井戸構造は、少なくともインジウム(In)を含むIII族窒化物系化合物半導体Aly Ga1-y-z Inz N(0≦y<1,0<z≦1)から成る井戸層を含むものが望ましい。発光層の構成は、例えばドープされた、又はアンドープのGa1-zInzN(0<z≦1)から成る井戸層と、当該井戸層よりもバンドギャップが大きい任意の組成のIII族窒化物系化合物半導体AlGaInNから成る障壁層が挙げられる。好ましい例としてはアンドープのGa1-zInzN(0<z≦1)の井戸層とアンドープのGaNから成る障壁層である。ここでドープは、ドーパントを意図的に原料ガスに含ませて目的とする層に添加していることを意味し、アンドープは、原料ガスにドーパントを含ませないで、意図的にドーパントを添加しないものを意味する。したがって、アンドープは、近接の層から拡散して自然にドーピングされている場合をも含む。
III 族窒化物半導体層を結晶成長させる方法としては、分子線気相成長法(MBE)、有機金属気相成長法(MOVPE)、ハイドライド気相成長法(HVPE)、液相成長法等が有効である。半導体発光素子を構成する各層のIII−V族窒化物半導体は、少なくともAlxGayInN(0≦x≦1,0≦y≦1,0≦x+y≦1)にて表される2元系、3元系若しくは4元系の半導体から成るIII−V族窒化物系化合物半導体で形成することができる。また、これらのIII族元素の一部は、ボロン(B)、タリウム(Tl)で置き換えても良く、また、窒素(N)の一部をリン(P)、砒素(As)、アンチモン(Sb)、ビスマス(Bi)で置き換えても良い。
更に、これらの半導体を用いてn型の層を形成する場合には、n型不純物として、SiGe、Se、Te、C等を添加し、p型の層を形成する場合には、p型不純物としては、、Be、Ca、Sr、Ba等を添加することができる。成長基板は、サファイアの他、炭化珪素、酸化亜鉛などを用いることができる。支持基板には、導電性シリコン基板、銅などの金属基板を用いることができる。
また、上記実施例では、可溶解層は、SiO2 を用いたが、その他、窒化シリコン(SiN)、金属など、ドライ、ウエットのエッチング媒体により溶解できる材料であれば、任意である。可溶解層の厚さは、80nm以上、200nm以下が望ましい。80nmよりも薄いと、反射機能が低下するので望ましくない。また、200nm以上とすると、透明性導電膜で覆う場合に段差が大きくなるために、望ましくない。
また、透明導電膜には、インジウム錫酸化物(ITO)を用いたが、熱処理により結晶化して結晶粒界が現れる材料であれば任意である。透光性の金属酸化物は、この傾向を有するので望ましい。ITOの他、これに属する材料として、インジウム亜鉛酸化物(IZO)、酸化亜鉛(ZnO)、アルニミウム亜鉛酸化物(AZO)、ガリウム亜鉛酸化物(GZO)、フッ素錫酸化物(FTO)、ニオブチタン酸化物(TNO)、カドミニウム錫酸化物(CTO)のうちの少なくとも1種を用いても良い。可溶解層の形成は、CVD法を用いたが、この他、スパッタリング、電子ビーム蒸着法などを用いることができる。また、透明導電膜の形成は、非晶質となれば、任意の方法を用いることができる。実施例では、スパッタリングを用いたが、CVD法、電子ビーム蒸着法などを用いることができる。透明導電膜の熱処理温度は、700℃で行ったが、600℃以上、750℃とすることができる。600℃より低いと透明導電膜の結晶化が起こらないので望ましくない。750℃より高くすると、半導体層にダメージを与えるので望ましくない。また、透明導電膜の厚さは、30nm以上、200nm以下が望ましい。30nmよりも薄いと、電流拡散機能が低下し、又は、可溶解層を覆うことが困難となるので、望ましくない。また、200nmよりも厚いと、光透過率が低下するので望ましくない。透明導電膜に形成された粒界を介して、可溶解層のエッチングは、四フッ化炭素ガスと酸素ガスとの混合ガスによる反応性プラズマを用いたが、その他のフッ素系ガスのプラズマ、フッ化水素酸などのフッ酸系の液によるウェットエッチングを用いることができる。