JP5899048B2 - 金ナノ粒子を形成する微生物及びこれを用いた金ナノ粒子の形成方法 - Google Patents
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Description
この発明は、金化合物を生体反応により金ナノ粒子に変換・濃縮する微生物及びこれを用いた金ナノ粒子の形成方法に関する。
有価金属の産出のため、鉱石の採掘が世界各地で進められている。一方で、採鉱に伴って排出される低品位の鉱石や鉱山廃水、製錬廃水などの管理処分には多大な費用を要するため、大規模かつ良質の鉱山が発見され難くなっている昨今、有価金属の採掘コストは一層高騰してきている。
低品位鉱石や鉱山廃水にも有価金属は含まれるが、含有量が低く、従来の製錬等の技術ではコストに見合う回収が困難であることから、現状では未利用のまま廃棄されることがほとんどである。従って、これらの管理処分に要する費用負担を軽減するため、未利用の有価金属を低コストで回収するか、又は回収された金属をより付加価値の高い金属材料として資源化することが求められている。
そこで有価金属のうち、金の還元による金ナノ粒子の形成について、微生物を用いた種々の提案がされている。
例えば、引用文献5及び6には、γ-Proteobacteria綱に属する微生物Pseudomonas aeruginosa及びStenotrophomonas maltophiliaの三価金[Au(III)]還元によるナノ粒子形成について開示されている。また、引用文献7には、β-Proteobacteria綱に属する微生物Cupriavidus metalliduransによる金粒子生成について開示されている。その他、種々の細菌、真菌がAu(III)還元を行い、金ナノ粒子を形成する提案がなされている(非特許文献2、3及び4)。
N. Miyata, Y. Tani, K Iwahori, and M. Soma: Enzymatic formation of manganese oxides by an Acremonium-like hyphomycete fungus, strain KR21-2. FEMS Microbiol. Ecol., 47, 101-109(2004).
D. Mandal, M. E. Bolander, D. Mukhopadhyay, G. Sarkar, and P. Mukherjee: The use of microorganisms for the formation of metal nanoparticles and their application. Appl. Microbiol. Biotechnol., 69, 485-492(2006).
P. Mohanpuria, N. K. Rana, and S. K. Yadav: Biosynthesis of nanoparticles: thechnological concepts and future applications. J. Nanopart. Res., 10, 507-517(2008).
F. Reith, M. F. Lengke, D. Falconer, D. Craw, and G. Southam: The geomicrobiology of gold. ISMEJ., 1, 567-584(2007).
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F. Reith et al.: Mechanisms of gold biomineralization in the bacterium Cupriavidus metallidurans. Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 106, 17757-17762(2009).
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上記の分類群に属する微生物がAu(III)還元によってナノ粒子を形成する報告がなされているが、この他の微生物についても、金鉱山の浸出液や廃水中の金化合物(塩化金酸など)を生体反応により金ナノ粒子に変換・濃縮し得るか否か検討する余地がある。また従来の微生物では、好気または嫌気(無酸素)のどちらか一つの条件で金ナノ粒子の生成が報告されているが、両条件で生成できる微生物の報告はなされていない。
そこで、本発明は、金ナノ粒子を形成する新規な微生物及びこれを用いた金ナノ粒子の形成方法を提供することを目的とする。
上記目的を達成するため、本発明者らは、秋田県内で採取した休廃止鉱山周辺土壌やコンポスト(堆肥)等の環境試料から、金酸イオンを還元して金ナノ粒子を形成することができる数種の菌株を分離することに成功した。
これらの菌株は、その菌学的性質から上記文献に記載されているいずれの菌種とも一致せず、金酸イオンを還元して金ナノ粒子を形成することができる新規な微生物であることが確認されたので、本発明に至った。
即ち、請求項1の発明は、
金の還元能力を有する、コリモナス(Collimonas)属に属し、受託番号NITE P−1104の微生物である。
金の還元能力を有する、コリモナス(Collimonas)属に属し、受託番号NITE P−1104の微生物である。
請求項2の発明は、
金の還元能力を有する、ディアドバクター(Dyadobacter)属に属し、受託番号NITE P−1246の微生物である。
金の還元能力を有する、ディアドバクター(Dyadobacter)属に属し、受託番号NITE P−1246の微生物である。
請求項3の発明は、
金の還元能力を有する、ペドバクター(Pedobacter)属に属し、受託番号NITE P−1247、NITE P−1248、NITE P−1249から選択される微生物である。
金の還元能力を有する、ペドバクター(Pedobacter)属に属し、受託番号NITE P−1247、NITE P−1248、NITE P−1249から選択される微生物である。
請求項4の発明は、
請求項1乃至3いずれか一項記載の微生物に金化合物を接触させ、前記微生物が前記金化合物から金酸イオンを還元することを特徴とする金粒子の形成方法である。
請求項1乃至3いずれか一項記載の微生物に金化合物を接触させ、前記微生物が前記金化合物から金酸イオンを還元することを特徴とする金粒子の形成方法である。
請求項5の発明は、
前記金化合物における金の価数が3であることを特徴とする請求項4記載の金粒子の形成方法である。
前記金化合物における金の価数が3であることを特徴とする請求項4記載の金粒子の形成方法である。
請求項6の発明は、
前記金酸イオンの還元が好気条件又は嫌気条件下で行われることを特徴とする請求項4又は5記載の金粒子の形成方法である。
前記金酸イオンの還元が好気条件又は嫌気条件下で行われることを特徴とする請求項4又は5記載の金粒子の形成方法である。
請求項7の発明は、
請求項1乃至3いずれか一項記載の微生物から無細胞抽出液を調製し、前記抽出液と金化合物及び補酵素NADHを混合して前記金化合物から金酸イオンを還元することを特徴とする金粒子の形成方法である。
請求項1乃至3いずれか一項記載の微生物から無細胞抽出液を調製し、前記抽出液と金化合物及び補酵素NADHを混合して前記金化合物から金酸イオンを還元することを特徴とする金粒子の形成方法である。
本発明によれば、金ナノ粒子を形成する新規な微生物及びこれを用いた金ナノ粒子の形成方法を提供することができる効果がある。
以下、本発明を詳細に説明する。本発明に係る微生物は、秋田県内の休廃鉱山周辺の土壌試料から分離したものである。
次に、本発明に係る微生物のスクリーニング培地とその組成は表1の通りである。
培地に添加するAu化合物には、以下のテトラクロロ金酸カリウムを用いた。前記Au化合物は、水溶液をフィルター減菌(孔径0.2μm)したものを所定の濃度となるように培地に添加した。
・テトラクロロ金酸カリウム(和光純薬工業株式会社、KAuCl4)
Au価数:Au3+(Au(III))、テトラクロロ金酸(AuCl4 −)として溶存
金を還元する微生物(以下「Au還元菌」という)のスクリーニングのアプローチを図1に示す。
Au価数:Au3+(Au(III))、テトラクロロ金酸(AuCl4 −)として溶存
金を還元する微生物(以下「Au還元菌」という)のスクリーニングのアプローチを図1に示す。
図1における集積培養によるアプローチにおいて、予備的に、土壌試料の懸濁液を1mM KAuCl4を含む1/10TSB培地(TSB培地を10倍希釈したもの)に接種し、室温(約25℃)で振盪培養を開始したところ、即座に培地が紫色に変色し始めた。ここで、非特許文献2によれば、Au還元によりAu(0)(元素態Au)のナノ粒子が生成すると培養液が赤紫〜青紫色を呈するとされていることから、この培地成分による化学的なAu(III)還元(Auナノ粒子の形成)が起こることが判明した。よって、このような培地では微生物によるAu還元活性を評価することは困難となるため、
・培地成分自体による非生物的なAu還元が起こらないこと
・微生物が増殖してAu還元活性が評価できること
の2点を満たす培地を選定する必要がある。
・培地成分自体による非生物的なAu還元が起こらないこと
・微生物が増殖してAu還元活性が評価できること
の2点を満たす培地を選定する必要がある。
そのような培地として、本実施形態ではmGY培地を作製して使用した。mGY培地では、培地成分によるAu還元は、目視では観察されなかった。
mGY培地はpH7.2を示し、pH緩衝作用はほとんど無い。しかし、リン酸緩衝液(1.2g/L K2HPO4及び0.8g/L KH2PO4;pH7.0)を添加したmGY培地では、KAuCl4は水和物を形成し不溶化してしまったため、緩衝剤は添加せずに用いることにした。
Au還元菌のスクリーニング時のもう一つの問題として、KAuCl4の毒性が挙げられる。予備的な検討として、0.5または1mM KAuCl4を含むmGY培地に土壌試料を添加し、Au還元菌の集積培養を試みたが、KAuCl4により微生物増殖が大きく抑制されたため、短期間でのKAuCl4含有培地によるAu還元菌の集積は困難であると判断された。
そこで、本実施形態では、図1の「マイクロプレートの利用」に準じた以下の手法を採用した。
・R2A寒天培地を用いた希釈平板法により、微生物コロニーを収集する。
・それぞれの微生物をマイクロプレートの各ウェルでmGY培地を用いて生育させる。
・微生物を生育させた後、各培養液にKAuCl4を添加し、Au(III)還元活性の有無を判別する。
・R2A寒天培地を用いた希釈平板法により、微生物コロニーを収集する。
・それぞれの微生物をマイクロプレートの各ウェルでmGY培地を用いて生育させる。
・微生物を生育させた後、各培養液にKAuCl4を添加し、Au(III)還元活性の有無を判別する。
土壌試料の少量を減菌水道水に懸濁した後、101〜104倍に段階希釈し、その50μLをR2A平板培地に播種して25℃で5日間インキュベートした。この間に生じた細菌及び真菌のコロニーをランダムに釣菌し、新しいR2A寒天培地に移した。
これらの微生物のAu(III)還元活性は、48穴マイクロプレート(減菌済み)を用いて評価した。すなわち、マイクロプレートの各ウェルにmGY培地1mLを分注し、分離した微生物株を植種して25℃で2〜3日間インキュベートした。そして、各々の培養液にフィルター減菌したKAuCl4を0.2mMとなるように添加し、さらに25℃でインキュベートした。
上述のとおり、Au還元によりAu(0)(元素態Au)のナノ粒子が生成すると培養液が赤紫〜青紫色を呈するとされているので(非特許文献2)、前記各ウェルの培養液において、前記色調を示す菌株をAu還元菌とみなした。図2は、Au還元活性を示した陽性ウェルの様子を示したものである。分離した菌株は4℃で保存した。
(Au還元菌の分離)
前記R2A寒天培地を用いた希釈平板法により、種々の環境試料から微生物(細菌、真菌)を合計201株分離し、mGY培地を分注したマイクロプレートでAu還元活性の有無を評価した。
前記R2A寒天培地を用いた希釈平板法により、種々の環境試料から微生物(細菌、真菌)を合計201株分離し、mGY培地を分注したマイクロプレートでAu還元活性の有無を評価した。
図3は、48穴マイクロプレートを用いた細菌分離株のAu(III)還元活性の評価を表す図であって、培養2日後に、Au(III)を0.2mMまたは0.4mMとなるように各ウェルに添加して試験を開始した。
前記201株の微生物のうち、細菌12株で明瞭なAu(III)還元活性が認められ、これらの菌株をAu(III)還元菌として保存した(表2)。
表2の結果から、D−25、D−22、E−29、K−22およびM1−1と称した細菌が相対的にAu(III)還元能力の高い菌株であると推察された。
(分離株の菌学的性質)
(1)分離株の分子系統解析
得られた分離株について、16S rRNA遺伝子配列に基づいた分子系統解析により分類同定を試みた。
(1)分離株の分子系統解析
得られた分離株について、16S rRNA遺伝子配列に基づいた分子系統解析により分類同定を試みた。
R2A培地上で生育させた菌体(細菌)からのDNAの抽出は、ISOIL for Beads Beating(株式会社ニッポンジーン製)を用いて行った。培養菌体を専用の2mL容プラスチックチューブに採取し、950μLのLysis Solution BBと50μLのLysis Solution 20Sを添加した。その後チューブを、ビードビーターを用いて激しく撹拌してから遠心分離した(12,000×g、1分間、室温)。遠心分離後、上清600μLを新しいチューブに移し、400μLのPurifiction Solutionを添加し、十分に混合した。次に、600μLのクロロホルムを添加混合し、遠心分離した(12,000×g、15分間、室温)。遠心分離後、水槽800μLを新しいチューブに移し、800μLのPrecipitation Solutionを添加し十分に混合した後、遠心分離した(20,000×g、15分間、4℃)。上清を捨て、1mLの70%エタノールを添加し十分に混合した後、遠心分離した(20,000×g、5分間、4℃)。その後上清を捨て、風乾した後、沈澱を50μLのTE緩衝液(pH8.0)に溶解した。
抽出したゲノムDNAをユニバーサルプライマー27fと1492r(細菌の16S rRNA遺伝子領域を標的とする)を用いてPCR増幅した(表3)。PCRは反応容量20μLにて、Thermal Cycler 2720 (Applied Biosystems 社)を用いて行った。PCR酵素TaKaRa Ex Taq (TaKaRa)とそれに付属していたPCR試薬により反応溶液を調整した。反応液20μLあたりの組成は、減菌水14.7μL,緩衝液2μL、ゲノムDNA1μL(<1ng)、10pmol/Lの各プライマー0.8μLずつ、dNTP溶液1.6μL、Ex Taq 0.1μL(0.025U)とした。なお、大腸菌ゲノムを鋳型DNAとした反応液を陽性コントロール、鋳型DNA溶液を添加しなかった反応液を陰性コントロールとした。温度サイクリングは、94℃−1分の初期変性後、熱変性94℃−30秒、アニーリング55℃−30秒、伸長反応72℃−90秒を1サイクルとして30サイクル行った。PCR後、反応液を5μL採取し、1.5%アガロースゲル電気永動で分析した。検出はアガロースゲルをエチジウムブロミドで染色し、UVイルミネーター(UVP)で行った。
得られたPCR断片(約1,500bp)のシーケンシング解析を行った。シーケンシング反応にはプライマー27f、519f、1099f、520r、1492rを用い(表3)、ABI Prism 3100 Genetic Analyzer (Applied Biosystems)で塩基配列を決定した。塩基配列結果はGenBankにてBLASTによる相同性検索を行った。相同性が示された配列とともにCLUSTAL Wを用いてマルチプルアラインメントを行い、MEGA4.0を用いて近隣結合法により分子系統樹を作成した。
各分離株について塩基配列をもとに分類を行ったところ、D−25株は、これまでにAu還元活性が報告されていないコリモナス(Collimonas)属細菌の塩基配列と相同性が高いことが明らかになった。表4にD−25株の相同性検索の結果を、図4に分子系統樹を示す。なお、D−25株の16S rRNA遺伝子配列(部分配列)を配列表に示した。
また、Au(III)還元活性が高かったD−22株も、これまでにAu還元活性が報告されていないディアドバクター(Dyadobacter)属細菌の塩基配列と相同性が高いことが明らかになった。
さらに、Au(III)還元活性が高かったE−29株、K−22株及びM1−1株についても、これまでにAu還元活性が報告されていないペドバクター(Pedobacter)属細菌の塩基配列と相同性が高いことが明らかになった。
表5にD−22株、E−29株、K−22株及びM1−1株の相同性検索の結果を、図5に分子系統樹を示す。また、D−22株、E−29株、K−22株及びM1−1株の16S rRNA遺伝子配列(部分配列)を配列表に示した。
(2)D−25株の形態観察及び生理・生化学試験
前記分離株のうち、D−25株について形態観察及び生理・生化学試験を行った。その結果を図6、表6、表7及び表8に示す。
前記分離株のうち、D−25株について形態観察及び生理・生化学試験を行った。その結果を図6、表6、表7及び表8に示す。
(考察)
D−25株はコリモナス(Collimonas)属細菌と16S rRNA遺伝子配列が99%以上一致していたこと、分子系統樹においてコリモナス(Collimonas)属の系統枝に含まれていたことから、D−25株は本属に帰属するものと推察される。
D−25株はコリモナス(Collimonas)属細菌と16S rRNA遺伝子配列が99%以上一致していたこと、分子系統樹においてコリモナス(Collimonas)属の系統枝に含まれていたことから、D−25株は本属に帰属するものと推察される。
次に、形態観察の結果、D−25株は運動性を有さないグラム陰性桿菌で、R2A寒天培地上で粘稠性のコロニーを形成し、嫌気条件下で生育せず、グルコースを酸化せず、カタラーゼ反応及びオキシターゼ反応はともに陽性を示した(表6)。
また、生理・生化学試験の結果、D−25株は硝酸塩を還元せず、インドールを産生せず、アルギニンジヒドロラーゼ活性を示さず、グルコース、L-アルビノース及びD-マンニトールなどを資化し、n-カプリン酸および酢酸フェニルなどは資化しなかった(表7)。
また、酵素反応の試験結果、D−25株はアルカリホスタファーゼ、エステラーゼ(C4)及びエステラーゼ リパーゼ(C8)などの活性を示し、バリン アリルアミターゼやα-ガラクトシダーゼなどの活性は示さなかった(表8)。
これらの性状は16S rRNA遺伝子配列に基づく系統解析の結果から帰属が推察されたコリモナス(Collimonas)属の既知種に類似点が多く認められた。ただし、運動性を示さず(表6)、バリンアリルアミダーゼ活性を示さない点は(表8)、コリモナス(Collimonas)属の既知種の性状とは異なっていた。
上記菌学的性質から、D−25株をコリモナス(Collimonas)属分類群に帰属するものと推定した。この菌株は、平成23年6月9日付けで独立行政法人製品評価技術基盤機構特許微生物寄託センターに受託番号NITE P−1104として寄託されている。
コリモナス(Collimonas)属細菌ではAu(III)還元活性は報告されていないため、D−25株は新規のAu(III)還元菌であるといえる。
そして、上述したように本菌株はAu(III)還元活性を示す微生物であるので、この微生物により、金鉱山の浸出液や廃水中に含まれる金化合物を金ナノ粒子に変換・濃縮し、効率よく金を回収・資源化することができる。
(3)D−22株の形態観察及び生理・生化学試験
前記分離株のうち、D−22株について形態観察及び生理・生化学試験を行った。その結果を図7、表9、表10に示す。
前記分離株のうち、D−22株について形態観察及び生理・生化学試験を行った。その結果を図7、表9、表10に示す。
(考察)
D−22株はディアドバクター(Dyadobacter)属細菌と16S rRNA遺伝子配列が97%以上一致していたこと、分子系統樹においてディアドバクター(Dyadobacter)属の系統枝に含まれていたことから、D−22株は本属に帰属すると推察される。
D−22株はディアドバクター(Dyadobacter)属細菌と16S rRNA遺伝子配列が97%以上一致していたこと、分子系統樹においてディアドバクター(Dyadobacter)属の系統枝に含まれていたことから、D−22株は本属に帰属すると推察される。
形態観察の結果、D−22株は運動性を有さないグラム陰性桿菌で、R2A寒天培地上で粘稠性のある黄色コロニーを形成し、グルコースを酸化せず、カタラーゼ反応およびオキシダーゼ反応はともに陽性を示した(表9)。
また、生理・生化学試験の結果、D−22株は硝酸塩を還元せず、インドールを産生せず、アルギニンジヒドロラーゼやウレアーゼなどの活性を示さず、エスクリンを加水分解し、グルコース、L−アラビノースおよびD−マンノースなどを資化し、グルコン酸カリウムやn−カプリン酸を資化しなかった(表10)。本株は嫌気条件で生育した。
これらの性状は16S rRNA遺伝子配列解析の結果において帰属が示唆されたディアドバクダー(Dyadobacter)属の性状に類似すると考えられ、塩基配列解析の結果と併せて、D−22株をディアドバクダー(Dyadobacter)属分類群に帰属するものと推定した。この菌株は、平成24年2月21日付けで独立行政法人製品評価技術基盤機構特許微生物寄託センターに受託番号NITE P−1246として寄託されている。
これまでに、ディアドバクダー(Dyadobacter)属細菌ではAu(III)還元活性は報告されていないため、D−22株は新規のAu(III)還元菌であるといえる。
そして、上述したように本菌株はAu(III)還元活性を示す微生物であるので、この微生物により、金鉱山の浸出液や廃水中に含まれる金化合物を金ナノ粒子に変換・濃縮し、効率よく金を回収・資源化することができる。
(4)E−29株の形態観察及び生理・生化学試験
前記分離株のうち、E−29株について形態観察及び生理・生化学試験を行った。その結果を図8、表11、表12に示す。
前記分離株のうち、E−29株について形態観察及び生理・生化学試験を行った。その結果を図8、表11、表12に示す。
(考察)
E−29株は一部のペドバクター(Pedobacter)属細菌(P. cryoconitis)と16S rRNA遺伝子配列が99%以上一致していたこと、分子系統樹においてPedobacter属の系統枝に含まれていたことから、E−29株は本属に帰属すると推察される。
E−29株は一部のペドバクター(Pedobacter)属細菌(P. cryoconitis)と16S rRNA遺伝子配列が99%以上一致していたこと、分子系統樹においてPedobacter属の系統枝に含まれていたことから、E−29株は本属に帰属すると推察される。
形態観察の結果、E−29株は運動性を有さないグラム陰性桿菌で、R2A寒天培地上で粘稠性のあるクリーム色コロニーを形成し、グルコースを酸化し、カタラーゼ反応およびオキシダーゼ反応はともに陽性を示した(表11)。
また、生理・生化学試験の結果、E−29株は硝酸塩を還元せず、アルギニンジヒドロラーゼ活性を示さず、ゼラチンを加水分解し、β−ガラクトシダーゼ活性を示し、グルコース、D−マンノースおよびD−マンニトールなどを資化し、L−アラビノースやN−アセチル−D−グルコサミンなどを資化しなかった(表12)。本株は嫌気条件では生育しなかった。
これらの性状は16S rRNA遺伝子配列解析の結果において帰属が示唆されたペドバクター(Pedobacter)属の性状に類似すると考えられ、塩基配列解析の結果と併せて、E−29株をペドバクター(Pedobacter)属分類群に帰属するものと推定した。この菌株は、平成24年2月21日付けで独立行政法人製品評価技術基盤機構特許微生物寄託センターに受領番号NITE P−1247として寄託されている。
これまでに、ペドバクター(Pedobacter)属細菌ではAu(III)還元活性は報告されていないため、E−29株は新規のAu(III)還元菌であるといえる。
そして、上述したように本菌株はAu(III)還元活性を示す微生物であるので、この微生物により、金鉱山の浸出液や廃水中に含まれる金化合物を金ナノ粒子に変換・濃縮し、効率よく金を回収・資源化することができる。
(5)K−22株の形態観察及び生理・生化学試験
前記分離株のうち、K−22株について形態観察及び生理・生化学試験を行った。その結果を図9、表13、表14に示す。
前記分離株のうち、K−22株について形態観察及び生理・生化学試験を行った。その結果を図9、表13、表14に示す。
(考察)
K−22株は一部のペドバクター(Pedobacter)属細菌(P. nyackensis)と16S rRNA遺伝子配列が98%以上一致していたこと、分子系統樹においてペドバクター(Pedobacter)属の系統枝に含まれていたことから、K−22株は本属に帰属すると推察される。
K−22株は一部のペドバクター(Pedobacter)属細菌(P. nyackensis)と16S rRNA遺伝子配列が98%以上一致していたこと、分子系統樹においてペドバクター(Pedobacter)属の系統枝に含まれていたことから、K−22株は本属に帰属すると推察される。
形態観察の結果、K−22株は運動性を有さないグラム陰性桿菌で、R2A寒天培地上でのコロニー色は黄色を呈し、グルコースを酸化せず、カタラーゼ反応およびオキシダーゼ反応はともに陽性を示した(表13)。
また、生理・生化学試験の結果、K−22株は硝酸塩を還元せず、エスクリンを加水分解し、ゼラチンを加水分解せず、β−ガラクトシダーゼ活性を示し、グルコース、L−アラビノースおよびD−マンノースを資化し、D−マンニトール、グルコン酸カリウムおよびn−カプリン酸などを資化しなかった(表14)。本株は嫌気条件では生育しなかった。
これらの性状は16S rRNA遺伝子配列解析の結果において帰属が示唆されたペドバクター(Pedobacter)属の性状に類似すると考えられ、塩基配列解析の結果と併せて、K−22株をペドバクター(Pedobacter)属分類群に帰属するものと推定した。この菌株は、平成24年2月21日付けで独立行政法人製品評価技術基盤機構特許微生物寄託センターに受領番号NITE P−1248として寄託されている。
これまでに、ペドバクター(Pedobacter)属細菌ではAu(III)還元活性は報告されていないため、K−22株は新規のAu(III)還元菌であるといえる。
そして、上述したように本菌株はAu(III)還元活性を示す微生物であるので、この微生物により、金鉱山の浸出液や廃水中に含まれる金化合物を金ナノ粒子に変換・濃縮し、効率よく金を回収・資源化することができる。
(6)M1−1株の形態観察及び生理・生化学試験
前記分離株のうち、M1−1株について形態観察及び生理・生化学試験を行った。その結果を図10、表15、表16に示す。
前記分離株のうち、M1−1株について形態観察及び生理・生化学試験を行った。その結果を図10、表15、表16に示す。
(考察)
M1−1株は一部のペドバクター(Pedobacter)属細菌(P. panaciterrae)と16S rRNA遺伝子配列が98%以上一致していたこと、分子系統樹においてペドバクター(Pedobacter)属の系統枝に含まれていたことから、M1−1株は本属に帰属すると推察される。
M1−1株は一部のペドバクター(Pedobacter)属細菌(P. panaciterrae)と16S rRNA遺伝子配列が98%以上一致していたこと、分子系統樹においてペドバクター(Pedobacter)属の系統枝に含まれていたことから、M1−1株は本属に帰属すると推察される。
形態観察の結果、M1−1株は運動性を有さないグラム陰性桿菌で、R2A寒天培地上で粘稠性のあるクリーム色のコロニーを形成し、グルコースを酸化し、カタラーゼ反応およびオキシダーゼ反応はともに陽性を示した(表15)。
また、生理・生化学試験の結果、M1−1株は硝酸塩を還元せず、エスクリンを加水分解し、ゼラチンを加水分解せず、β−ガラクトシダーゼ活性を示し、グルコース、L−アラビノースおよびD−マンノースを資化し、D−マンニトール、グルコン酸カリウムおよびn−カプリン酸などを資化しなかった(表16)。本株は嫌気条件では生育しなかった。
これらの性状は16S rRNA遺伝子配列解析の結果において帰属が示唆されたペドバクター(Pedobacter)属の性状に類似すると考えられ、塩基配列解析の結果と併せて、M1−1株をペドバクター(Pedobacter)属分類群に帰属するものと推定した。この菌株は、平成24年2月21日付けで独立行政法人製品評価技術基盤機構特許微生物寄託センターに受領番号NITE P−1249として寄託されている。
これまでに、ペドバクター(Pedobacter)属細菌ではAu(III)還元活性は報告されていないため、M1−1株は新規のAu(III)還元菌であるといえる。
そして、上述したように本菌株はAu(III)還元活性を示す微生物であるので、この微生物により、金鉱山の浸出液や廃水中に含まれる金化合物を金ナノ粒子に変換・濃縮し、効率よく金を回収・資源化することができる。
(分離株の培養液で生成したAuナノ粒子の形態)
上記分離株のうち、D−25株とM1−1株をそれぞれTSB培地で2日間振盪培養した後、遠心分離により集菌し、減菌水で洗浄してから再び減菌水に懸濁した。この懸濁液に0.5mM KAuCl4を添加し、暗所、室温で5日間静置してAu(III)を還元させた。金粒子を含む培養液上清を、孔径0.2μmのメンブランフィルターで濾過してから減圧遠心機により濃縮して透過型電子顕微鏡観察を行った。
上記分離株のうち、D−25株とM1−1株をそれぞれTSB培地で2日間振盪培養した後、遠心分離により集菌し、減菌水で洗浄してから再び減菌水に懸濁した。この懸濁液に0.5mM KAuCl4を添加し、暗所、室温で5日間静置してAu(III)を還元させた。金粒子を含む培養液上清を、孔径0.2μmのメンブランフィルターで濾過してから減圧遠心機により濃縮して透過型電子顕微鏡観察を行った。
分離株の培養液に金化合物を添加すると紫色を呈することから、Auはナノ粒子として存在しているものと考えられる。このことは、培養液を孔径0.2μmのメンブランフィルターで濾過したとき、濾液が紫色を呈したことからも支持される。
電子顕微鏡観察の結果、図11に示されるように、D−25株及びM1−1株共にAuナノ粒子が形成されていることが確認された。粒子のサイズはおよそ5〜40nm、形態は球形、三角形、五角形、六角形のものが観察され、粒子としては不均一であることがわかった。
前記粒子の形態は、非特許文献8に記載されている真菌Helminthosporum solaniの培養液で形成されたものと類似しているが、粒子サイズはD−25株と比較して大きい(〜50μm)。
また、非特許文献9によれば、細菌Rhodopseudomas capsulataにおいて、pH7の培養液でAu還元させた場合は10〜20nmのナノ粒子が形成されるが、pH4の条件では60%以上が三角形のナノプレート(50〜400nm)として存在することが報告されている。
従って、D−25株やM1−1株で観察されたAuナノ粒子についても、培養条件によってそれらの形態は大きく変化する可能性がある。
なお、培養液を遠心分離して集めた菌体画分も紫色を呈したので、多量のAu粒子が含まれると推察される。
前記実施形態では、細菌分離株が好気条件でAu(III)還元することを説明したが、本実施例では、上記菌株が嫌気条件でもAu(III)還元を示すか否かを検討したので説明する。
(D−25株)
D−25株をmGY培地で振盪培養した後、その10mLを減菌した20mLバイアル瓶に移し、KAuCl4を0.2mMとなるように添加した。このバイアル瓶に窒素ガスを10分間通気して酸素を置換した後、ブチルゴム栓とアルミキャップで密栓して嫌気条件とした。バイアル瓶は25℃で静置した。
D−25株をmGY培地で振盪培養した後、その10mLを減菌した20mLバイアル瓶に移し、KAuCl4を0.2mMとなるように添加した。このバイアル瓶に窒素ガスを10分間通気して酸素を置換した後、ブチルゴム栓とアルミキャップで密栓して嫌気条件とした。バイアル瓶は25℃で静置した。
この結果を図12に示す。Au添加後2日間で、培養液は紫青色を示し(図12(c))、Au(III)還元活性が認められた。非特許文献4、7、9によれば、微生物は、嫌気条件において金化合物を電子受容体として利用して還元するか、好気条件で還元するか、どちらか一つの条件下での活性が報告されてきたが、D−25株では好気及び嫌気条件下でAu還元活性が発現することが明らかになった。本株を用いることにより、好気および嫌気の両条件で金ナノ粒子を製造できることから、排水の性状や設備の状況に合わせて最適な製造プロセスを構築することができる。
(D−22株、E−29株、K−22株、M1−1株)
D−25株と同様に、D−22株、E−29株、K−22株、M1−1株は好気条件(静置条件)でAu(III)還元活性をもつ細菌として分離されたものである。これらの菌株がD−25株のように、嫌気条件下においてもAu還元するか否か調査した。
D−25株と同様に、D−22株、E−29株、K−22株、M1−1株は好気条件(静置条件)でAu(III)還元活性をもつ細菌として分離されたものである。これらの菌株がD−25株のように、嫌気条件下においてもAu還元するか否か調査した。
D−22株、E−29株、K−22株、M1−1株の各々をmGY培地で振盪培養した後、その10mLを滅菌した20mLバイアル瓶に移し、KAuCl4を0.2mMとなるように添加した。このバイアル瓶に窒素ガスを10分間通気して酸素を置換した後、ブチルゴム栓とアルミキャップで密栓して嫌気条件とした。バイアル瓶は25℃で静置した。
その結果、培養開始後48時間までに培養液は青紫色または赤紫色を呈し、菌体のAu(III)還元による金ナノ粒子の形成が確認された。したがって、これらの分離株もD−25株と同様に、好気および嫌気の両条件においてAu(III)還元活性をもつことが示された。これらの菌株を用いることにより、好気および嫌気の両条件で金ナノ粒子を製造できることから、排水の性状や設備の状況に合わせて最適な製造プロセスを構築することができる。
前記実施形態では、好気または嫌気条件下で、D−25株の菌体に金酸イオンを接触させて金ナノ粒子を形成させた。本実施例では、菌体からの酵素抽出液でもAu(III)還元を示すか否かを検討したので説明する。
(D−25株)
D−25株を好気条件で2日間振盪培養したあと、0.05 mM KAuCl4を添加し、12時間嫌気条件に設置した。この菌体を氷中で冷却しながら超音波処理で破砕し、4℃、12000 rpm、10分間の遠心分離により、無細胞抽出液を調製した。この抽出液に0.1 mM KAuCl4を添加し28℃で30分静置してもAu還元は認められなかったが、この溶液に0.5 mM NADH(還元型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド)を添加すると、溶液は青紫色を示し、金ナノ粒子が生成した(図13)。このことから、D−25株はNADH依存性Au(III)還元酵素活性を保有し、この酵素を利用すれば金酸イオンを菌体に接触させることなく金ナノ粒子を形成できることがわかった。菌体を利用する場合には、金ナノ粒子の形成時に菌体成分が混入するが、菌体から抽出した酵素を利用することにより、有機物の混入を最大限に抑えた金ナノ粒子の標品を得ることができる。
D−25株を好気条件で2日間振盪培養したあと、0.05 mM KAuCl4を添加し、12時間嫌気条件に設置した。この菌体を氷中で冷却しながら超音波処理で破砕し、4℃、12000 rpm、10分間の遠心分離により、無細胞抽出液を調製した。この抽出液に0.1 mM KAuCl4を添加し28℃で30分静置してもAu還元は認められなかったが、この溶液に0.5 mM NADH(還元型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド)を添加すると、溶液は青紫色を示し、金ナノ粒子が生成した(図13)。このことから、D−25株はNADH依存性Au(III)還元酵素活性を保有し、この酵素を利用すれば金酸イオンを菌体に接触させることなく金ナノ粒子を形成できることがわかった。菌体を利用する場合には、金ナノ粒子の形成時に菌体成分が混入するが、菌体から抽出した酵素を利用することにより、有機物の混入を最大限に抑えた金ナノ粒子の標品を得ることができる。
なお、非特許文献7によれば、細菌であるStenotrophomonas maltophiliaにおいて、好気条件で増殖した菌体の無細胞抽出液で同様の酵素活性が既に示されているが、Stenotrophomonas maltophiliaが嫌気条件でも酵素活性を発現するか否かは明らかにされていない。
(D−22株、E−29株、K−22株、M1−1株)
次に、分離した4菌株がD−25株と同様にAu(III)還元酵素を産生し、無細胞抽出液でも金ナノ粒子を形成するか否かを調査した。各々の菌株を、mGY培地を用いて25℃で2日間振盪培養した。この後、0.05mM KAuCl4を添加して8〜15時間嫌気条件で静置した。各々の菌体から、前述したように超音波処理により菌体破砕を行い、無細胞抽出液を調製した。
次に、分離した4菌株がD−25株と同様にAu(III)還元酵素を産生し、無細胞抽出液でも金ナノ粒子を形成するか否かを調査した。各々の菌株を、mGY培地を用いて25℃で2日間振盪培養した。この後、0.05mM KAuCl4を添加して8〜15時間嫌気条件で静置した。各々の菌体から、前述したように超音波処理により菌体破砕を行い、無細胞抽出液を調製した。
無細胞抽出液中のAu(III)還元酵素活性は96穴マイクロプレートを用いて測定した。反応溶液の全量を250μLとして、この溶液中に無細胞抽出液(50〜200μL)、0.5mM NADH、0.1mM KAuCl4を含むようにした。なおKAuCl4を最後に添加し、添加後直ちにマイクロプレートリーダー(TECAN社)を用いて、5分ごとに波長495nmにおける吸光度を計測した。単位時間当たりの吸光度の変化量を求めて、Au(III)還元速度を算出した。
この試験と並行して、無細胞抽出液を添加しない反応液についても同様にAu(III)還元速度を算出し、酵素添加時の速度から差し引くことで、NADHによる非酵素的な還元量を除外した。
無細胞抽出液のタンパク質濃度は測定キット(同仁化学製、CBB染料を用いたBradford法による)を用いて測定した。タンパク質標準溶液には所定の濃度のウシ血清アルブミンを使用した。
試験の結果、全ての菌株の無細胞抽出液において、NADHを添加しない場合はAu(III)還元酵素活性は検出されなかった(図14)。また、無細胞抽出液を加えない場合、NADHによる非酵素的なAu(III)還元は殆ど認められなかったが(Au還元速度(ΔA495nm/分):0.001以下)、無細胞抽出液とNADHの両方を添加すると反応液は直ちに赤紫色を呈し、明確なAu(III)還元活性が検出された(図14、表17)。
これらの結果から、D−22株、E−29株、K−22株およびM1−1株は、D−25株と同様に、NADH依存性のAu(III)還元酵素活性を保有し、酵素反応により金ナノ粒子を形成できることが示された。これらの菌体を利用する場合には、金ナノ粒子の形成時に菌体成分が混入するが、それぞれの菌体から抽出した酵素を利用することにより、有機物の混入を最大限に抑えた金ナノ粒子の標品を得ることができる。
以上、添付図面等を参照して本発明の好ましい実施形態、実施例を説明したが、本発明はかかる実施形態、実施例に限定されること無く、特許請求の範囲の記載から把握される技術的範囲において種々に変更可能である。
Claims (7)
- 金の還元能力を有する、コリモナス(Collimonas)属に属し、受託番号NITE P−1104の微生物。
- 金の還元能力を有する、ディアドバクター(Dyadobacter)属に属し、受託番号NITE P−1246の微生物。
- 金の還元能力を有する、ペドバクター(Pedobacter)属に属し、受託番号NITE P−1247、NITE P−1248、NITE P−1249から選択される微生物。
- 請求項1乃至3いずれか一項記載の微生物に金化合物を接触させ、前記微生物が前記金化合物から金酸イオンを還元することを特徴とする金粒子の形成方法。
- 前記金化合物における金の価数が3であることを特徴とする請求項4記載の金粒子の形成方法。
- 前記金酸イオンの還元が好気条件又は嫌気条件下で行われることを特徴とする請求項4又は5記載の金粒子の形成方法。
- 請求項1乃至3いずれか一項記載の微生物から無細胞抽出液を調製し、前記抽出液と金化合物及び補酵素NADHを混合して前記金化合物から金酸イオンを還元することを特徴とする金粒子の形成方法。
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