JP5897964B2 - 導電性ローラの製造方法 - Google Patents
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Description
この現像ローラは、例えば、ニッケルメッキされたステンレス製丸棒からなる導電性軸心の外周に導電性を有するポリウレタン弾性体からなる弾性体層が所定の肉厚で備えられ、さらに、このポリウレタン弾性体層の外周に樹脂被膜が施されて表面層が形成されたりしている(下記特許文献1参照)。
この現像ローラなどの導電性ローラは、カーボンブラックや黒鉛などの導電性粒子が前記ポリウレタン弾性体層や前記表面層に含有されており、前記導電性軸心から前記表面層までの電気抵抗値がこれらの導電性粒子の含有量などによって調整されている。
例えば、下記特許文献1の実施例(段落0028)には、前記導電性軸心を収容させて所定温度に加熱しておいた型に、ひまし油系のポリオール、二官能イソシアネート、及び、カーボンブラックなどを含んだ分散液を注入し、該型内でポリオールと二官能イソシアネートとを反応、硬化させて導電性を有するポリウレタン弾性体層を前記導電性軸心の周りに形成させることが記載されている。
即ち、ポリウレタン弾性体層を形成させる場合には、前記注入口から前記排出口へと分散液の流れを一方通行とすることで、分散液内部に気泡を巻き込むことを防止する方法が広く採用されている。
ここで、本発明者が見出した事実によれば、このような分散液の注入は、比較的短時間に完了するものの先に注入された分散液は予熱された型によって後から注入される分散液よりも多くの熱を受け取るために硬化反応時の挙動を長手方向一端側と他端側とでわずかに異ならせて得られるポリウレタン弾性体層の電気的な特性に影響を及ぼすことがある。
即ち、従来のこの種の導電性ローラにおいては、全体の電気特性を一定化させることが難しく、特に長手方向において電気特性を異ならせるおそれを有している。
より詳しくは、集中分散の程度を表すIδ指数が所定の範囲内であることが導電性ローラにとって好適であることを見出した。
本実施形態における前記現像ローラ1は、該芯金2の外周に略一定の厚みで備えられたポリウレタン弾性体層3(以下、単に「弾性体層3」ともいう)と、該弾性体層3の外周面を覆う表面層4とを有している。
前記芯金2としては、特に限定されるものではなく、例えば、銅、鉄、アルミニウム、ニッケル等の金属及びその合金からなるものや、これらに、溶融メッキ、電解メッキ、無電解メッキなどの手段によるメッキを施したものを用いることができる。
なかでも、本実施形態における前記芯金2としては、ステンレス鋼にニッケルメッキなどのメッキを施したものが好適である。
これらポリエステルポリオールは、1種が単独のものを選択する必要はなく2種以上を組み合わせて用いてもよい。
なお、前記水酸基価は、JIS K0070に準じた方法により求められる値である。
なお、前記平均官能基数とは、ポリエステルポリオールの製造に用いられる開始剤分子の活性水素基の数によって決定される理論的官能基数を意味する。
なお、これらのポリイソシアネートは、1種が単独で、又は2種以上が組み合わされて用いられ、好ましくは、2,4−TDIと2,6−TDIとの混合物(2,4−TDI/2,6−TDI=80/20質量比)が用いられ得る。
なかでも、カーボンブラックと黒鉛とを併用することが特に好ましい。
そのため、黒鉛は、電子状態が半金属的であり、通常、粒子自体の導電性がカーボンブラックに比べて優れたものとなっている。
一方で黒鉛は、粒子自体の導電性が優れているために含有量による電気特性の調整がカーボンブラックに比べて容易である。
一方で、黒鉛を採用した場合は、このような影響を受け難いため、この現像ローラ1に対する継続的な課電を実施しても、弾性体層3の電気特性に変化を生じさせにくい。
このような点から、導電性粒子としては、カーボンブラックと黒鉛とを併用することが好ましいものである。
また、弾性体層3の形成に用いる黒鉛としては、通常、その平均粒子径が1〜8μmのものを用いることができ、平均粒子径が3〜5μmであることが好ましい。
なお、ファーネスブラックを採用する場合には、一般呼称で分類されるFEF系、ISAF系、HAF系等のカーボンブラックが挙げられる。
なお、このようなIδ指数や、そのバラツキについては、弾性体層が実質的にその機能を求められている範囲内において上記のような要件を満足していれば良く、例えば、両端部のようにトナーと接触することがない範囲にまで上記のようなIδ指数を示す状態となっていることが求められるものではない。
本実施形態の導電性ローラの製造方法によって前記現像ローラ1を作製するのにあたっては、まず、前記芯金2を収容可能で、且つ、前記弾性体層3の外形よりも僅かに大きな内部空間を有する金型を用意する。
また、該金型としては、前記内部空間の長手方向一端側に外部から当該内部空間に前記分散液を注入させるための注入口を開口させ、且つ、該注入口の開口された側とは反対側の他端側において前記分散液を外部に排出可能な排出口を開口させているものが好適に用いられる。
即ち、本実施形態において用いる前記金型としては、前記注入口から分散液を注入し前記内部空間に分散液を充満させた後に前記注入口からさらに分散液を注入して前記排出口から過剰な分散液を排出させることにより、内部に気泡の形成等を抑制させ得るように形成されているものが好ましい。
このとき、カーボンブラックや黒鉛については、ポリエステルポリオールと二官能イソシアネートとの混合前にこれらの内のいずれか一方に分散させて予備分散液を形成させておくことが好ましく、ポリエステルポリオールと二官能イソシアネートとの通常の配合割合から勘案してポリエステルポリオールにカーボンブラックや黒鉛を分散させて予備分散液を作製した後で該予備分散液に二官能イソシアネートを混合して前記分散液を作製することが好ましい。
即ち、第一のポリエステルポリオールや第二のポリエステルポリオールをカーボンブラックや黒鉛を分散させた際に常温では自然流動を生じないような高粘度なものとなる量とし、例えば、カーボンブラックの含有量が5〜15質量%となるように第一のポリエステルポリオールの量を調整し、この第一のポリエステルポリオールにカーボンブラックを分散させて粘土状物を形成させ、これに高せん断を加えつつ混練を実施することで凝集塊の形成を抑制させることができる。
また、同様に黒鉛の含有量が10〜30質量%となるように第二のポリエステルポリオールの量を調整し、この第二のポリエステルポリオールに黒鉛を分散させて粘土状物を形成させ、これに高せん断を加えつつ混練を実施することで凝集塊の形成を抑制させることができる。
そして、これら混練物を前記第三のポリエステルポリオールで希釈して流動性の良好な状態にさせることで凝集塊の形成を抑制させた予備分散液を作製することができる。
また、この時の分散液の液温としては、同液温で前記分散液を30分保持した時においてもその粘度が10000mPa・sを超えないような温度を選択することが好ましい。
なお、通常、分散液は液温が高い方が粘度は低くなるが、仮に4000mPa・sの粘度となる低めの温度を選択した場合でも、30分保持した後に10000mPa・sを超える粘度となってしまうような場合であれば、前記分散液に反応遅延剤を含有させて上記条件を充足させるようにしてもよい。
ただし、過度に型を低温にしておくのは現像ローラの生産性の観点から好ましいものではない。
従って、分散液を注入する際の型の温度は、例えば、70℃以上とすることが好ましく、80℃以上とすることが特に好ましい。
即ち、分散液や型の温度についての上記要件は、分散液が流動性の良好な状態で、且つ、型内で硬化反応が過度に進行しない条件で型内への分散液の注入を行うことを表している。
その後、この型ごと加熱することで、型内で分散液を反応硬化させて前記弾性体層3を形成させることができる。
このときの型の加熱温度としては、特に限定されるものではないが、前記Tanδのピークが30分以内に出現する温度とすることが好ましい。
その結果、分散液を型内に注入し終えた時点では、排出口側と注入口側とにおいてポリエステルポリオールと二官能イソシアネートとの反応度合いに違いを生じさせることになり、これが電気特性の違いとなって現れることになる。
また、本実施形態においては型内が分散液で充満された後で、実質的な硬化反応が開始されることからこの硬化反応中に黒鉛粒どうしをある程度集合させて黒鉛粒子の集中分散構造を弾性体層中に形成させることができる。
従って、芯金から弾性体層表面までに良好なる導電パスが形成され、優れた導電性を発揮させることができる。
なお、この「Iδ指数」とは、考案者にちなんで「森下のIδ指数」などとも呼ばれて生物界における生物個体数の分布を表現する指数などに広く用いられているもので、下記のような式によって求められる値である。
従って、上記のようなIδ指数を示す本実施形態の現像ローラは弾性体層中に導電性の粒子が十分な集中分散状態で分散されていることがわかる。
また、そのバラツキが小さいことから、この弾性体層は電気特性が場所によって異なるおそれが低いことがわかる。
また、本実施形態においては、電気特性の均質性に特に強い要望があり、本発明の効果をより顕著に発揮させうる点において、電子写真装置用の現像ローラを例示しているが、電子写真装置用の他の導電性ローラや、電子写真装置用以外の導電性ローラについても当然ながら本発明が意図する範囲のものである。
次いで、上記と同じポリエステルポリオール42.97gに日本黒鉛工業株式会社製天然黒鉛、商品名「UP5」10.74gを分散させて高いせん断を加えて混練を行い混練物Bを得た。
さらに、上記と同じポリエステルポリオール199gに遅延剤を添加した混和物Cを作製した。
この分散液を一旦120℃に加熱した後に、Anton Paar社製レオメータ、型名「Phisica MCR301」に測定治具「PP25型」を装着し、振り角:0.5%、角周波数:1Hz、パラメータ読み取りサイクル:5秒の条件によって貯蔵弾性率(E’)と損失弾性率(E”)とを求め、その比率(E”/E’)を計算してTanδの値の時間変化を求めた。
なお、測定は、測定治具の設定温度を80℃、100℃、140℃の3通りで行った。
結果を図2〜4に示す。
この測定から、図2に示すように分散液を80℃の一定温度で加熱した際の弾性率の時間変化において観察されるTanδが極大値を示すのは180min以上の時間であることがわかった。
また、図3からは、分散液を100℃の一定温度で加熱した際の弾性率の時間変化において観察されるTanδが極大値を示す時間が86.5minであることがわかった。
さらに、図4からは、分散液を140℃の一定温度で加熱した際の弾性率の時間変化において観察されるTanδが極大値を示す時間が24.2minであることがわかった。
前記と同様に、BROOKFIELD社製粘度計、型名「LVDV−I Prime」に「No.S63」ロータを装着して、該ロータが分散液の液面下約55mmに没する状態で60rpmの回転数で回転させて分散液の粘度の温度依存性を調査した。
結果、各温度における前記分散液の粘度は、下記表1の通りであることがわかった。
(実施例1)
内径(直径)17mm×長さ230mmの内部空間を有し、一端側に分散液の注入口が形成され、他端側に分散液の排出口が形成されている金型に直径12mmの芯金を収容させ、これを80℃に加熱した。
この金型に120℃に加熱された分散液を前記注入口から注入し、前記排出口から分散液を排出させるようにした後で、この金型を7分の時間をかけて145℃の温度に加熱して脱型し、表面を研磨後、図5(概略図)に示すような厚み2mmのポリウレタン弾性体層を有する導電性ローラを作製した。
この導電性ローラをSUS板上に横置し、前記芯金の両端にそれぞれ4.9Nの荷重を掛けて弾性体層の表面をSUS板に押付けた状態とし、30Vの直流電圧を60秒印加した後の電気抵抗値を測定した。
図5に示されているように弾性体層の注入口側の端から排出口側に向けて5mmの測定箇所Aにおいて、芯金から弾性体層表面までの電気抵抗値を−300Vの直流電圧を印加して測定した。
なお、この測定箇所Aにおける電気抵抗値の測定は、周方向に離れた3箇所で実施した。
同様に、弾性体層の長手方向中央部の測定箇所B、弾性体層の排出口側の端から注入口側に向けて5mmの測定箇所Cにおいてもそれぞれ3箇所の電気抵抗値を測定した。
この測定によって得られた合計9箇所の測定値の内、最大値(Rmax)と最小値(Rmin)との比(Rmax/Rmin)を求め、この比の常用対数(log(Rmax/Rmin))をとった場合に、その値が0.8以下(概ね、Rmax/Rmin<6.3)となる場合を合格判定「○」とし、最大値と最小値の違いが1桁以上(log(Rmax/Rmin)≧1)の場合を不合格判定「×」とし、該不合格判定に相当する場合と前記合格判定となる場合の中間を「△」とした。
前記測定位置Aにおける弾性体層の薄片試料を採取し、黒鉛粒子などがはっきりと認識できる程度の倍率に拡大して顕微鏡写真を撮影した(図6(a))。
得られた画像をRGB分離して、R分だけを取り出し、画像解析ソフト「WinROOF」を使って1.46μm四方ごとの区画の明るさを、256階調に(明るい方が数値が高くなるように)分類し、調査区画数256×256区画(q)の内のJ番目の調査区画の明るさの値を「xj」として、下記式に基づいてIδ指数を求めた。
なお、測定位置Cにおいても同様に顕微鏡写真(図6(c))を撮影したが、先の測定位置A,Bと同様に導電剤が集中分散している様子が確認できた。
分散液の温度、型温度、及び、分散液注入後に型を145℃にまで加熱するのにかけた時間を表2に示す通りとしたこと以外は、実施例1と同様に導電性ローラを作製し、実施例1と同様に評価を行った。
なお、比較例1においては、測定位置Bの顕微鏡写真(図7(b))と測定位置Cの顕微鏡写真(図7(c))において実施例1と同様に導電剤が集中分散している様子が確認できたが、注入口に近い測定位置A(図7(a))では、測定位置B,Cに比べて導電剤を微分散した状態になっており、電気特性を相違させていることが確認できた。
この参考例においては、注入口と排出口とが形成された金型ではなく、内部空間の全長にわたって形成されたスリットを有し、該スリットの中央部分から分散液を注入させ、該スリットの口元から分散液が溢れた時点で金型の加熱を開始させた。
従って、このスリット部分については、熱の伝わり方が他の部分と違ったものと見られ、このスリットに沿って導電剤の分散状況が比較例1の測定位置Aに近い状況となっている部分が弾性体層に形成されていた。
なお、この参考例1の導電性ローラは、弾性体層の他の部分は、実施例1の導電性ローラと同様に導電剤が集中分散していた。
Claims (3)
- ポリエステルポリオールと二官能イソシアネートとが含有され、且つ導電性粒子が分散されている分散液を導電性軸芯が収容されている型内に注入し、該型内で前記ポリエステルポリオールと前記二官能イソシアネートとを反応させることにより、前記導電性軸芯の周りに導電性を有するポリウレタン弾性体層を形成させる導電性ローラの製造方法であって、
前記分散液を粘度が500mPa・s以上4000mPa・s以下となる液温にし、且つ、前記型の温度を同温度で前記分散液を加熱した際にTanδ(損失弾性率/貯蔵弾性率)が90分以降に極大値を示す温度にして前記注入を実施し、
前記導電性粒子として黒鉛、及び、カーボンブラックを含有させた前記分散液を用いることを特徴とする導電性ローラの製造方法。 - 前記液温が、前記分散液を30分保持した場合でも該分散液の粘度が10000mPa・sを超えない温度である請求項1記載の導電性ローラの製造方法。
- 作製する導電性ローラが、電子写真装置用の現像ローラである請求項1又は2記載の導電性ローラの製造方法。
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