JP5896375B2 - 改変型グルコース脱水素酵素遺伝子 - Google Patents

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    • C12Y101/9901Glucose dehydrogenase (acceptor) (1.1.99.10)

Description

本発明は、フラビンアデニンジヌクレオチド(FAD)を補酵素とし、グルコースの1位の水酸基を脱水素(酸化)する反応を触媒する、フラビン結合型グルコース脱水素酵素(GLD)等に関する。より詳細には、1,10-フェナントロリンに対する感受性が低減した改変型GLDポリペプチド及び改変型GLDをコードするポリヌクレオチド、該酵素の製造方法、該酵素を使用することを特徴とするグルコースの測定方法、グルコース測定試薬組成物、並びにグルコース測定用のバイオセンサ等に関する。尚、本明細書において、特に断りがない限り、グルコース等の単糖類はD−体を意味する。
血中グルコース濃度は糖尿病の重要なマーカーである。従来、血中グルコース濃度の測定にはグルコース酸化酵素が用いられてきたが、グルコース酸化酵素は溶存酸素濃度の影響を受け、計測値に誤差が生じるため、近年、酸素の影響を受けないグルコース脱水素酵素も広く使用されている。
酸素の影響を受けない市販のグルコース脱水素酵素として、ピロロキノリンキノン(PQQ)を補酵素とするグルコース脱水素酵素(PQQ-GDH)が知られているが、従来のPQQ-GDHは、マルトースやガラクトース等、グルコース以外の糖類にも反応してしまうという欠点を有している。
これに対して、本発明者のグループは、フラビンを補酵素とする、新規な可溶性のグルコース脱水素酵素(GLD)をアスペルギルス・テレウスから見出し(特許文献1)、遺伝子のクローニングに成功した(特許文献2)。これらのGLDは、溶存酸素の影響を受けず、グルコースの1位の水酸基を酸化し、マルトースやガラクトースに対する作用性(酵素活性)が低い、というこれまでに無い優れた特性を有するものである。
一方、特許文献3には糖尿病患者、特に2型糖尿病患者を対象に1,10-フェナントロリンなどを投与することで、冠動脈疾患のリスクを低減させる治療法について記載されており、特許文献4には血液循環促進・血栓形成阻止因子であるADAM8を阻害することで止血する方法もしくは亢進することで血液の凝固を阻害する方法について記載されている。その中でADAM8の阻害剤として1,10-フェナントロリンが記載されている。特許文献5には血液検体中のタンパク質が分解されることを防ぐ為に1,10-フェナントロリンなどを含むことを特徴とする採血管の発明が記載されている。従って、特許文献3又は4に記載の治療を受けた糖尿病患者の血液を測定試料として用いる場合、又は、特許文献5に記載の採血管に保管された血液を用いて血中グルコース濃度を測定する際に血糖測定器のグルコース測定用酵素が1,10-フェナントロリンの影響を受ける場合には、血中に含まれる1,10-フェナントロリンにより本来の血糖値ではない値が計測され、その結果、測定者が誤った処置を取る可能性がある。
国際公開第2004/058958号パンフレット 国際公開第2006/101239号パンフレット 国際公開第2003/077901号パンフレット 特開2010−275216号公報 特許第4496407号明細書
このように、従来のGLDは、1,10-フェナントロリン等の阻害剤の影響を受けてしまうため、阻害剤によってより阻害されにくいGLDが求められており、これを提供することが本発明の解決すべき課題である。
即ち、本発明は、上記課題を解決し、1,10-フェナントロリン等の阻害剤によって阻害されにくいという優れた特性を有する改変型GLDをコードする新規な遺伝子(ポリヌクレオチド)及び酵素(ポリペプチド)、該遺伝子により組換えられた形質転換細胞を用いる該酵素の製造方法、並びに、得られた該酵素を使用することを特徴とするグルコースの測定方法、グルコース測定試薬組成物、及びグルコース測定用のバイオセンサ等を提供することを目的とする。
即ち、本発明は以下の各態様に係るものである。
[態様1]
配列番号1で示される野生型のフラビン結合型グルコース脱水素酵素(GLD)アミノ酸配列において、298、338、340、341、343、352、354、424、426、431、及び432位のアミノ酸からなる群から選択される少なくとも1つのアミノ酸残基における置換を含み、且つ、野生型GLDと比較して阻害剤に対する感受性が低下した改変型GLD。
[態様2]
阻害剤が終濃度1mMの条件で共存した測定系において、阻害剤が共存しない場合と比べ40%以上の相対活性を示す、態様1記載の改変型GLD。
[態様3]
アミノ酸置換が、A298I、A298V、V338M、S340G、S340N、S340V、S340W、H341A、H341C、H341D、H341E、H341F、H341G、H341I、H341K、H341L、H341M、H341N、H341P、H341Q、H341R、H341S、H341V、H341W、H341Y、D343A、D343E、D343F、D343H、D343I、D343K、D343L、D343M、D343N、D343Q、D343R、D343S、D343W、D343Y、D343V、G352A、G352C、G352D、G352E、G352F、G352I、G352K、G352L、G352M、G352N、G352P、G352Q、G352R、G352S、G352T、G352V、G352W、G352Y、K354A、K354C、K354D、K354E、K354F、K354G、K354H、K354M、K354N、K354P、K354Q、K354Y、K354H、K354R、K354S、Y424C、Y424D、Y424E、Y424K、Y424N、Y424Q、Y424R、Y424S、Y424T、Y424V、G426A、G426C、G426D、G426E、G426F、G426H、G426I、G426K、G426L、G426M、G426N、G426P、G426R、G426S、G426T、G426W、G426Y、G426V、V431F、F432I、F432K、F432L、F432M、F432Q、F432R、F432T、及びF432V、並びに、これらの任意の組み合わせから成る群から選択される、態様1又は2記載の改変型GLD。
[態様4]阻害剤が1,10-フェナントロリンである、態様1ないし3のいずれか一項に記載の改変型GLD。
[態様5]
配列番号1で示される野生型のフラビン結合型グルコース脱水素酵素(GLD)アミノ酸配列において、A298I、S272T+A298V+A369T、V338M+Q382H、L250V+S340G+D399N、S340N、S340V、S340W、H341A、H341C、H341D、H341E、H341F、H341G、H341I、H341K、H341L、H341M、H341N、H341P、H341Q、H341R+G499S、H341S、H341V、H341W、H341Y、D343A、D343E+L562H、R250L+D343E+K494E、D343F、D343H、D343I、D343K、D343L、D343M、D343N+S490S、D343Q、D343R、D343S、D343W、D343Y、D343V、G352A、G352C、G352D、G352E、G352F、G352I、G352K、G352L、G352M、G352N、G352P、G352Q、G352R、G352S、G352T、G352V、G352W、G352Y、K354A、K354C、K354D、K354E、K354F、K354G、K354H、K354M、M342L+K354N、K354P、K354Q、K354Y、K354H、K354R、K354S、Y424C、Y424D、Y424E、Y424K、Y424N、Y424Q、Y424R、Y424S、Y424T、Y424V、G426A、G426C、G426D、G426E、G426F、G426H、G426I、G426K、G426L、G426M、G426N、G426P、G426R、G426S+A578V、G426T、G426W、G426Y、G426V、V431F、F432I、F432K、F432L、F432M、F432Q、F432R、F432T、及びF432V、並びに、これらの任意の組み合わせからなる群から選択されるアミノ酸置換を有する改変型GLD。
[態様6]
態様1ないし5のいずれか一項に記載の改変型GLDをコードするポリヌクレオチド。
[態様7]
配列番号1で示される野生型のフラビン結合型グルコース脱水素酵素(GLD)アミノ酸配列をコードするポリヌクレオチドが配列番号2に示される塩基配列を有する、態様6記載のポリヌクレオチド。
[態様8]
態様6又は7記載のポリヌクレオチドを保有する組換えベクター。
[態様9]
態様8記載の組換えベクターを用いることによって作製された形質転換細胞。
[態様10]
大腸菌、酵母、又は糸状菌である、態様9記載の形質転換細胞。
[態様11]
態様9又は10の形質転換細胞を培養し、得られた培養物から改変型GLDを採取することを特徴とする、改変型GLDの製造方法。
[態様12]
態様1ないし5のいずれか一項に記載の改変型GLD又は態様11記載の製造方法で得られた改変型GLDを使用することを特徴とする、グルコースの測定方法。
[態様13]
態様1ないし5のいずれか一項に記載の改変型GLD又は態様11記載の製造方法で得られた改変型GLDを含有することを特徴とする、グルコース測定試薬組成物。
[態様14]
態様1ないし5のいずれか一項に記載の変型GLD又は態様11記載の製造方法で得られた改変型GLDを使用することを特徴とする、グルコース測定用のバイオセンサ。
本発明のポリヌクレオチドを利用することにより、阻害剤に対する感受性が低下した改変型GLDを、例えば遺伝子組換え技術等により均質かつ大量に生産することが可能となり、加えて該GLDを用いたより正確な血糖測定が可能となる。
本発明の改変型GLD H341Wを用いて得られたグルコース測定のための検量線(x軸:基質濃度[mg/dL]、y軸:相対活性[%])を示す。 本発明の改変型GLD H341Wを用いて得られたグルコース測定のための検量線(x軸:1/基質濃度 [mM]、y軸:1/反応速度)を示す。 本発明の改変型GLD F432Lを用いて得られたグルコース測定のための検量線(x軸:基質濃度[mg/dL]、y軸:相対活性[%])を示す。 本発明の改変型GLD F432Lを用いて得られたグルコース測定のための検量線(x軸:1/基質濃度 [mM]、y軸:1/反応速度) を示す。
本明細書ではアミノ酸残基を1文字略号で表現しており、グリシンはG、アラニンはA、バリンはV、ロイシンはL、イソロイシンはI、フェニルアラニンはF、チロシンはY、トリプトファンはW、セリンはS、スレオニンはT、システインはC、メチオニンはM、アスパラギン酸はD、グルタミン酸はE、アスパラギンはN、グルタミンはQ、リジンはK、アルギニンはR、ヒスチジンはH、プロリンはPで表される。更に、「S272T」などの表現は特定のアミノ酸配列の開始アミノ酸であるメチオニン(M)を1番目として、272番目のセリン(S)をスレオニン(T)に置換することを意味する。更に、「S272T+A298V+A369T」は272番目、298番目、369番目のアミノ酸に対する置換を同時に行うことを意味している。
本発明の改変型GLDは、配列番号1(シグナルペプチドを含む)で示される野生型のフラビン結合型グルコース脱水素酵素(GLD)アミノ酸配列において、298、338、340、341、343、352、354、424、426、431及び432番目のアミノ酸からなる群から選択される少なくとも1つのアミノ酸残基における置換を含み、且つ野生型GLDに対して阻害剤に対する感受性が低下していることを特徴とする。
上記のアミノ酸残基における置換の代表的な例として、A298I、A298V、V338M、S340G、S340N、S340V、S340W、H341A、H341C、H341D、H341E、H341F、H341G、H341I、H341K、H341L、H341M、H341N、H341P、H341Q、H341R、H341S、H341V、H341W、H341Y、D343A、D343E、D343F、D343H、D343I、D343K、D343L、D343M、D343N、D343Q、D343R、D343S、D343W、D343Y、D343V、G352A、G352C、G352D、G352E、G352F、G352I、G352K、G352L、G352M、G352N、G352P、G352Q、G352R、G352S、G352T、G352V、G352W、G352Y、K354A、K354C、K354D、K354E、K354F、K354G、K354H、K354M、K354N、K354P、K354Q、K354Y、K354H、K354R、K354S、Y424C、Y424D、Y424E、Y424K、Y424N、Y424Q、Y424R、Y424S、Y424T、Y424V、G426A、G426C、G426D、G426E、G426F、G426H、G426I、G426K、G426L、G426M、G426N、G426P、G426R、G426S、G426T、G426W、G426Y、G426V、V431F、F432I、F432K、F432L、F432M、F432Q、F432R、F432T、及びF432Vからなる群から選択されるアミノ酸置換を挙げることが出来る。
本明細書中で定義される「感受性」は、当該化合物共存下及び非共存下での「相対活性」によって評価され、「相対活性」は、本明細書に記載する酵素活性測定において、阻害剤を添加しない場合の酵素活性(ブランク値)を100%とした場合の阻害剤添加時の酵素活性(サンプル値)の相対値(%)から導かれる。従って、相対活性が高ければ阻害剤に対する感受性は低下したことになる。逆に相対活性が低い場合は感受性が増加したことになる。
好ましくは、本発明の改変型GLDは野生型GLDと比較して、阻害剤の終濃度(測定時の測定系における阻害剤の濃度)が1mMの場合に、少なくとも40%、好ましくは少なくとも60%、より好ましくは少なくとも80%、更に好ましくは少なくとも90%、最も好ましくは少なくとも95%の相対活性を有すものである。尚、阻害剤への感受性は形質転換体の培養条件及び酵素活性の測定条件等によって変動する場合があるので、同一の条件下で野生型GLDと改変型GLDについて相対活性を測定して比較する必要がある。
本発明において「阻害剤」とは、配列番号1(シグナルペプチドを含む)で示される野生型のフラビン結合型グルコース脱水素酵素(GLD)の酵素活性を阻害する活性を有する化合物を意味し特に化合物の種類は問わない。例えば、1,10-フェナントロリン及びプロフラビン塩酸塩、並びに、これら化合物に化学構造又は物理化学的性質が類似しており上記酵素を実質的に阻害する活性を有する物質等を含む。
従って、本発明の改変型GLDの好適例は、実施例に具体的に記載されているように、配列番号1で示される野生型のGLDアミノ酸配列において、H341D、H341G、H341L、H341S、D343M、G352E、G352Q、G352Y、G426I、G426K、G426L、G426V、F432L、F432I、F432K、及び、F432Rなる群から選択されるアミノ酸置換を有する改変型GLD(以上、野生型GLDと比較して、阻害剤の終濃度が1mMの場合に、90%〜95%の相対活性を有するもの)、並びに、S340W、H341A、H341C、H341F、H341I、H341K、H341M、H341Q、H341V、H341W、D343F、D343K、D343L、D343V、及びD343Yなる群から選択されるアミノ酸置換を有する改変型GLD(以上、野生型GLDと比較して、阻害剤の終濃度が1mMの場合に、95%より高い相対活性を有するもの)である。
尚、上記の変換位置は、フラビン結合型グルコース脱水素酵素で、配列番号1と好ましくは少なくとも60%、より好ましくは少なくとも70%、更に好ましくは少なくとも80%、少なくとも85%、特に好ましくは少なくとも90%、95%以上、又は98%以上の相同性を有するアミノ酸配列において同等の位置であっても良い。本発明における相同性とは、比較対象となる基準配列の全長にわたり、所定の同一性を有する各配列をいう。このような配列の同一性パーセンテージは、基準配列を照会配列として比較するアルゴリズムをもった公開又は市販されているソフトウエアを用いて計算することができる。例として、BLAST、FASTA又はGENETYX(ソフトウエア開発株式会社製)等を用いることができ、これらはデフォルトパラメーターで使用することができる。
本発明の改変型GLDは、上記のアミノ酸置換に加えて、上記のように野生型GLDに対して阻害剤に対する感受性が低下している限り、配列番号1で示されるアミノ酸配列において、更に1個〜数個(例えば、1〜5個、好ましくは1〜3個)のアミノ酸が置換、欠失又は付加されていても良い。
本発明の改変型GLDをコードするポリヌクレオチドの一例として、配列番号1で示される野生型GLDのアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチドとして配列番号2に示される塩基配列を有するものを挙げることが出来る。その他、同一のアミノ酸をコードする限り別のコドンが使用されていても良い。例えば、ポリヌクレオチドで形質転換させる宿主細胞の種類等に応じて使用コドンを適宜最適化することが出来る。
尚、本発明において、「ポリヌクレオチド」とは、プリン又はピリミジンが糖にβ-N-グリコシド結合したヌクレオシドのリン酸エステル(ATP(アデノシン三リン酸)、GTP(グアノシン三リン酸)、CTP(シチジン三リン酸)、UTP(ウリジン三リン酸);又はdATP(デオキシアデノシン三リン酸)、dGTP(デオキシグアノシン三リン酸)、dCTP(デオキシシチジン三リン酸)、dTTP(デオキシチミジン三リン酸))が100個以上結合した分子を言い、具体的には本発明の改変型GLDをコードする染色体DNA(イントロンを含むDNA)、染色体DNAから転写されたmRNA、mRNAから合成されたcDNA及び、それらを鋳型としてPCR増幅したポリヌクレオチドを含む。「オリゴヌクレオチド」とはヌクレオチドが2-99個連結した分子を言う。また「ポリペプチド」とは、アミド結合(ペプチド結合)又は非天然の残基連結によって互いに結合した30個以上のアミノ酸残基から構成された分子を意味し、さらには、これらに糖鎖が付加したものや、人工的に化学的修飾がなされたもの等も含む。又、本発明のポリヌクレオチドには、改変型GLDのシグナル配列をコードする塩基配列を形質転換細胞の種類等に応じて適宜含むことも出来る。
本発明のポリヌクレオチドは、当業者の公知の任意の方法で容易に調製することが可能である。例えば、本明細書の実施例に具体的に記載されているように、配列番号2に示された塩基配列を有するポリヌクレオチドを含むプラスミドから野生型GLD遺伝子を単離し、これに基づき、適当なオリゴヌクレオチドプライマー(プローブ)のセットを用いた当業者に公知の各種PCR法を利用してランダム変異又は部位特異的変異を導入することにより、本発明の改変型GLDをコードするポリヌクレオチドを調製することができる。
更に、文献(例えばCarruthers(1982)Cold Spring Harbor Symp. Quant. Biol. 47:411-418;Adams(1983)J. Am. Chem. Soc. 105:661; Belousov(1997)Nucleic Acid Res. 25:3440-3444; Frenkel(1995)Free Radic. Biol. Med. 19:373-380;Blommers(1994)Biochemistry 33:7886-7896; Narang(1979)Meth. Enzymol. 68:90; Brown(1979)Meth. Enzymol. 68:109; Beaucage(1981)Tetra. Lett. 22:1859; 米国特許第4,458,066号)に記載されているような周知の化学合成技術により、in vitroにおいて本発明のポリヌクレオチドを合成することができる。
本発明の組換えベクターは、クローニングベクター又は発現ベクターであり、インサートとしてのポリヌクレオチドの種類や、その使用目的等に応じて適宜のものを使用して、当業者に公知の任意の方法で作製することができる。例えば、cDNA又はそのORF領域をインサートとして本発明の改変型GLDを生産する場合には、in vitro転写用の発現ベクターや、大腸菌、枯草菌等の原核細胞、酵母、カビなどの糸状菌、昆虫細胞、哺乳動物細胞等の真核細胞のそれぞれに適した発現ベクターを使用することもできる。
本発明の形質転換細胞としては、例えば、大腸菌、枯草菌等の原核細胞や、酵母、アスペルギルス・オリゼ等の糸状菌(カビ)、昆虫細胞、哺乳動物細胞等の真核細胞等を使用することができる。これら細胞は、改変型GLDの糖鎖の要、不要、その他のペプチド修飾の必要性に応じて、適宜宿主は選択することができる。これらの形質転換細胞は、電気穿孔法、リン酸カルシウム法、リポソーム法、DEAEデキストラン法など当業者に公知の任意の方法によって組換えベクターを細胞に導入することによって調製することができる。組換えベクター及び形質転換細胞の具体例として、下記実施例に示した組換えベクターと、このベクターによる形質転換大腸菌及び形質転換カビが挙げられる。
本発明の改変型GLDを大腸菌などの微生物でDNAを発現させて生産させる場合には、微生物中で複製可能なオリジン、プロモーター、リボソーム結合部位、DNAクローニング部位、ターミネーター配列等を有する発現ベクターに前記のポリヌクレオチドを組換えた発現ベクターを作成し、この発現ベクターで宿主細胞を形質転換したのち、得られた形質転換体を培養すれば、改変型GLDを微生物で大量生産することができる。この際、任意の翻訳領域の前後に開始コドンと停止コドンを付加して発現させれば、任意の領域を含む改変型GLD断片を得ることもできる。あるいは、他の蛋白質との融合蛋白質として発現させることもできる。この融合蛋白質を適当なプロテアーゼで切断することによっても目的とする改変型GLDを取得することができる。大腸菌用発現ベクターとしては、pUC系、pBluescriptII、pET発現システム、pGEX発現システム、pCold発現システムなどが例示できる。
或いは、本発明の改変型GLDを真核細胞で発現させて製造する場合には、前記ポリヌクレオチドを、プロモーター、スプライシング領域、ポリ(A)付加部位等を有する真核細胞用発現ベクターに挿入して組換えベクターを作製し、真核細胞内に導入すれば、改変型GLDを真核細胞で生産することができる。プラスミドのような状態で細胞内に維持することもできるし、染色体中に組みこませて維持することもできる。発現ベクターとしては、pKA1、pCDM8、pSVK3、pSVL、pBK-CMV、pBK-RSV、EBVベクター、pRS、pYE82などが例示できる。また、pIND/V5-His、pFLAG-CMV-2、pEGFP-N1、pEGFP-C1などを発現ベクターとして用いれば、Hisタグ、FLAGタグ、GFPなど各種タグを付加した融合蛋白質としてFAD結合型グルコース脱水素酵素ポリペプチドを発現させることもできる。真核細胞としては、サル腎臓細胞COS-7、チャイニーズハムスター卵巣細胞CHOなどの哺乳動物培養細胞、出芽酵母、分裂酵母、カビ、カイコ細胞、アフリカツメガエル卵細胞などが一般に用いられるが、本発明の改変型GLDを発現できるものであれば、いかなる真核細胞でもよい。発現ベクターを真核細胞に導入するには、電気穿孔法、リン酸カルシウム法、リポソーム法、DEAEデキストラン法など公知の方法を用いることができる。
特に、本発明の改変型GLDをコードするポリヌクレオチドを保有するアスペルギルス・オリゼ(Aspergillus oryzae)由来の組換えベクターで、適当なアスペルギルス・オリゼ株を形質転換するクローニングが好適である。
本発明の改変型GLDを原核細胞や真核細胞で発現させた後、培養物(菌体、もしくは菌体外に分泌された酵素を含む培養液、培地組成物等)から目的蛋白質を採取、即ち、単離精製するためには、公知の分離操作を組み合わせて行うことができる。例えば、尿素などの変性剤や界面活性剤による処理、熱処理、pH処理、超音波処理、酵素消化、塩析や溶媒沈殿法、透析、遠心分離、限外濾過、ゲル濾過、SDS-PAGE、等電点電気泳動、イオン交換クロマトグラフィー、疎水性クロマトグラフィー、逆相クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー(タグ配列を利用した方法及び改変型GLDに特異的なポリクローナル抗体、モノクローナル抗体を用いる方法も含む)、などが挙げられる。このような方法で、本発明の改変型GLDを大量に製造することができる。
また、本発明の改変型GLDは、本発明のポリヌクレオチド(cDNA又はその翻訳領域)を有するベクターからin vitro転写によってRNAを調製し、これを鋳型としてin vitro翻訳を行うことによりin vitroで製造することができる。
改変型GLDをin vitro発現させて製造する場合には、前記のポリヌクレオチドを、RNAポリメラーゼが結合できるプロモーターを有するベクターに挿入して組換えベクターを作成し、このベクターを、プロモーターに対応するRNAポリメラーゼを含むウサギ網状赤血球溶解物や小麦胚芽抽出物などのin vitro翻訳系に添加すれば、改変型GLDをin vitroで生産することができる。RNAポリメラーゼが結合できるプロモーターとしては、T3、T7、SP6などが例示できる。これらのプロモーターを含むベクターとしては、pKA1、pCDM8、pT3/T718、pT7/319、pBluescriptIIなどが例示できる。
以上に記載された方法で製造することができる本発明の改変型GLDは、電子受容体存在下でグルコースを脱水素する反応を触媒する酵素であるから、この反応による変化が利用できる用途であれば、特に制限されない。例えば、生体物質を含む試料中のグルコースの測定及び測定用試薬、消去用試薬へ使用するなどの医療分野、臨床分野への使用が可能であり、補酵素結合型グルコース脱水素酵素を使用した物質生産においても使用可能である。
本発明のグルコース脱水素酵素は、グルコース測定試薬に用いることができる。該測定試薬は、牛血清アルブミン(BSA)若しくは卵白アルブミン、該酵素と作用性のない糖類若しくは糖アルコール類、カルボキシル基含有化合物、アルカリ土類金属化合物、アンモニウム塩、硫酸塩又はタンパク質等から成る群より選ばれる熱安定化剤、又は緩衝剤等の当業者に公知の他の任意成分を適宜含有させ、該酵素や試薬成分の熱安定性や保存安定性を高めることができる。更に、被験試料中に存在する、測定に影響を与える夾雑物質の影響を抑える公知の物質を該測定試薬に含ませることができる。
本発明のグルコース脱水素酵素は、試料液中のグルコース濃度を測定するグルコースセンサとしてのバイオセンサに用いることができる。
本発明のバイオセンサは、酵素として本発明のグルコース脱水素酵素を反応層に使用したセンサであればよい。例えば、該バイオセンサは、絶縁性基板上にスクリーン印刷や蒸着などの方法を利用して電極系を形成し、更に酸化還元酵素と電子受容体とを含む測定試薬を備えることによって作製される。このバイオセンサの測定試薬に基質を含む試料液を接触させると、測定試薬が溶解して酵素と基質が反応し、これにともなって電子受容体が還元される。酵素反応終了後、還元された電子受容体を電気化学的に酸化させ、このとき、このバイオセンサは得られる酸化電流値から試料液中の基質濃度を測定することが可能である。この他に、発色強度又はpH変化などを検知する方式のバイオセンサも構築可能である。これらのバイオセンサにより、測定対象物質を基質とする酵素を選択することによって、様々な物質の測定が可能である。
バイオセンサの電子受容体としては、電子の授受能に優れた物質を用いることができる。電子の授受能に優れた物質とは、一般的に「電子伝達体」、「メディエータ」あるいは「酸化還元媒介剤」と呼ばれる化学物質やタンパク質性の電子メディエータであり、これらに該当する化学物質として、例えば、特表2002−526759に挙げられた電子伝達体や酸化還元媒介剤などを利用してもよい。
更に本発明のグルコース脱水素酵素は、バイオ電池に用いることができる。本発明のバイオ電池は、酸化反応を行うアノード極及び還元反応を行うカソード極から構成され、必要に応じてアノードとカソードを隔離する電解質層を含んで構成される。上記の電子メディエータ及びグルコース酸化還元酵素又は上記の融合体を含む酵素電極をアノード電極に使用し、基質を酸化することによって生じた電子を電極に取り出すと共に、プロトンを発生させる。一方、カソード側には、一般的にカソード電極に使用される酵素を使用すれば良く、例えばラッカーゼ、アスコルビン酸オキシダーゼ又はビリルビンオキシダーゼを使用し、アノード側で発生させたプロトンを酸素と反応させることによって水を生成させる。電極としては、カーボン、金、白金等、一般的にバイオ電池に使用される電極を用いることができる。
[酵素活性測定法]
分光光度計(日本分光社製 V-660)を用いて測定する場合は次の手順に従い測定を行った。
0.1M リン酸カリウム緩衝液(pH7.0)1.0mL、1.0M D−グルコース1.0mL、3mM 2,6−ジクロロフェノールインドフェノール(以下DCIPという)0.14mL、3mM 1−メトキシ−5−メチルフェナジウムメチルサルフェイト(以下1−m−PMSという)0.2mL、メタノール0.06mL、蒸留水0.55mLを3mL石英セル(光路長1cm)に添加し、恒温セルホルダー付き分光光度計にセットして37℃で10分間インキュベート後、酵素溶液0.05mLを添加後、DCIPの600nmにおける吸光度変化(ΔABS/min)を測定する。DCIPのpH7.0におけるモル吸光係数を16.3×103cm-1-1とし、1分間に1μmolのDCIPが還元される酵素活性が実質的に該酵素活性1unitと等価であることから、吸光度変化より該酵素活性を式1に従って求めた。実施例8においては上記の試薬組成中のメタノールを蒸留水に置きかえ測定を行った。
また、実施例3および6にて実施したようなプレートリーダー(日本モレキュラーデバイス社製 SpectraMax Plus384)を用いて酵素活性を測定する場合は次の手順に従った。
予め適当な希釈倍率に希釈しておいた培養上清を1ウェルあたり100μlずつ96マイクロプレートに添加した。そこに1M リン酸カリウム緩衝液(pH7.0)、1.0M D−グルコース、3mM DCIP、3mM 1−m−PMSそしてメタノールの容積比がそれぞれ0.1:1:0.14:0.2:0.06からなる酵素活性測定試薬を1ウェルあたり100μlずつ添加し、DCIPの600nmにおける吸光度変化(ΔABS/min)を測定する。分光光度計を用いた活性測定手順により酵素活性が既知となっている酵素溶液の吸光度変化との間で比例換算を行うことにより、酵素溶液の酵素活性を算出することができる。
また、以下の実施例において、分光光度計、プレートリーダーのいずれで測定した場合も上記試薬組成にて測定した酵素活性値をブランク値とし、上記試薬組成中のメタノールを阻害剤である1,10-フェナントロリン濃度またはプロフラビン塩酸塩濃度が50mMのメタノール溶液に置き換えて(阻害剤の終濃度:1mM)測定した値をサンプル値とする。
Figure 0005896375
尚、本発明を実施するために使用する様々な技術は、特にその出典を明示した技術を除いては、公知の文献等に基づいて当業者であれば容易かつ確実に実施可能である。例えば、遺伝子工学及び分子生物学的技術はSambrook and Maniatis, in Molecular Cloning-A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory Press, New York, 1989; Ausubel, F. M. et al., Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley & Sons, New York, N.Y, 1995などに記載の方法あるいはそこで引用された文献記載の方法又はそれらと実質的に同様な方法や改変法に基づき実施可能である。さらに、この発明における用語は基本的にはIUPAC-IUB Commission on Biochemical Nomenclatureによるものであり、あるいは当該分野において慣用的に使用される用語の意味に基づくものである。
以下、実施例に則して本発明を更に詳しく説明する。尚、本発明の技術的範囲はこれらの記載によって何等制限されるものではない。又、本明細書中に引用される文献に記載された内容は、本明細書の一部として本明細書の開示内容を構成するものである。
(プラスミドpAFF4の構築)
特許文献1に公開されているアスペルギルス・テレウス(Aspergillus terreus)FERM BP-08578株由来のGLD遺伝子を通常の方法により単離し、シグナル配列(配列番号1における1〜19番目のアミノ酸配列)をコードする部位を除いた(以下野生型GLD遺伝子と言う)。野生型GLD遺伝子を鋳型とし、配列番号3および4に記載のオリゴヌクレオチドをそれぞれプライマーDNA(F)、プライマーDNA(R)としPCRを行った。このとき、プライマーDNA(F)は予めリン酸化しておいた。得られたPCR産物をSalIで処理した後に、予めNaeI、SalIで処理し、Nae1の切断部位は脱リン酸化しておいたプラスミドpAFF2(独立行政法人産業技術総合研究所より分譲)に対して導入し、プラスミドpAFF3GLDを取得した。続いて、野生型GLD遺伝子を鋳型とし、配列番号5および6に記載のオリゴヌクレオチドをそれぞれプライマーDNA(F)、プライマーDNA(R)としてPCRを行い、得られたPCR産物をBglIIおよびSphIで処理し、予めBglIIとSphIで処理しておいたpAFF3GLDに対し導入しプラスミドpAFF4GLDを取得した。以下の実験にはpAFF4GLDを用いた。
プライマーDNA(F):5’ ggcagatcttccaactccacgtccgccaaatatgattat 3’(配列番号3)
プライマーDNA(R):5’ ctgcaggtcgacgcatgcctaacgacgaccagcatcggccttgatgag 3’(配列番号4)
プライマーDNA(F):5’ ggcagatcttccaactccacgtccgccaaatatgattat 3’(配列番号5)
プライマーDNA(R):5’ acatgcatgctctagactaacgacgaccagcatcggccttgatgag 3’(配列番号6)
(ランダム変異を導入した改変型GLD遺伝子を持つ形質転換体の取得)
野生型GLD遺伝子にランダム変異を導入するために、下記のようなオリゴヌクレオチドをデザインし、合成した。なお、プライマーDNA(F)は制限酵素BglII切断部位を有し、プライマーDNA(R)は制限酵素XbaI切断部位を有する。
プライマーDNA(F):5’ggcagatcttccaactccacgtccgccaaatatgattat 3’(配列番号7)
プライマーDNA(R):5’acatgcatgctctagactaacgacgaccagcatcggccttgatgag 3’(配列番号8)
実施例1で取得した野生型GLD遺伝子(配列番号2)を含むプラスミドpAFF04GLDと、本実施例で合成した配列番号7記載のプライマーDNA(F)、及び配列番号8記載のプライマーDNA(R)を用い、GeneMorph II Random Mutagenesis Kit(STRATAGENE社製)を用いて、キットに添付されている実験手順に従ってランダム変異を導入したプラスミドを取得した。宿主としてE. coli JM109 Competent Cells(タカラバイオ社製)を形質転換した後、選択マーカーであるアンピシリンナトリウム(和光純薬社製)を50μg/mL濃度含有するLB寒天プレートにまき、37℃で一晩培養して、形質転換体を取得した。取得した大腸菌形質転換体からillustra plasmid mini spin kit(GEヘルスケア社製)を用いてランダム変異を導入したプラスミドを抽出した。抽出したプラスミドをSaccharomyces cerevisiae BY4741(例えば OpenBiosystems社製 品番YSC1048)に導入した。導入にはFrozen-EZ Yeast Transformation II Kit(ZYMO RESERACH社製)を用いた。
(ランダム変異を導入した改変型GLD遺伝子を持つ形質転換体のGLD酵素活性評価)
96マイクロウェルプレート(Nunc社製)の各ウェルに125μLのイーストエクストラクト(BD社製)1.0%、トリプトン(BD社製) 2.0%、グルコース(和光純薬製) 2.0%からなるYPD培地を分注し、実施例2で取得した酵母の形質転換体を1コロニーずつ植菌し、30℃、1,000rpmで24時間振とう培養した。培養後、遠心して上清を回収した。前述の酵素活性測定法に従い、プレートリーダーを用いてブランク値およびサンプル値を測定し、サンプル値をブランク値にて除した値を相対活性(%)とした。野生株と比べて相対活性が優位に増加した変異株を選別し、遺伝子解析を実施した結果、表1の通りだった。
Figure 0005896375
(部位特異的な置換変異を導入した改変型GLD遺伝子を持つ形質転換体の取得:その1)
GLD遺伝子に部位特異的な置換変異を導入するために、下記のようなオリゴヌクレオチドをデザインし、合成した。
尚、オリゴヌクレオチド中の「NNN」には置換変異のアミノ酸をコードする任意の塩基配列(コドン)が該当する。例えば、置換変異のアミノ酸が、アラニン(A)の場合はGCC、システイン(C)の場合はTGC、アスパラギン酸(D)の場合はGAC、グルタミン酸(E)の場合はGAG、フェニルアラニン(F)の場合はTTC、グリシン(G)の場合はGGC、ヒスチジン(H)の場合はCAC、イソロイシン(I)の場合はATC、リジン(K)の場合はAAG、ロイシン(L)の場合はCTT、メチオニン(M)の場合はATG、アスパラギン(N)の場合はAAC、プロリン(P)の場合はCCC、グルタミン(Q)の場合はCAG、アルギニン(R)の場合はCGT、セリン(S)の場合はTCC、スレオニン(T)の場合はACT、バリン(V)の場合はGTC、トリプトファン(W)の場合はTGG、チロシン(Y)の場合はTATが該当する。またこれらの塩基配列は配列番号2に記載の塩基配列を元に決定した。
配列番号1のアミノ酸配列の298番目のアラニン(A)を任意のアミノ酸と置換変異させるプライマーを配列番号9とし、同様に、その他の位置のアミノ酸の置換用のプライマーを配列番号10〜17とした。
プライマーDNA(A298):5’ tgtctctgccggtnnnttgaagtccccggc 3’ (配列番号9)
プライマーDNA(S340):5’ aggaccaagtgaacnnncacatggatgcat 3’ (配列番号10)
プライマーDNA(H341):5’ ccaagtgaacagcnnnatggatgcatcggg 3’ (配列番号11)
プライマーDNA(D343):5’ gaacagccacatgnnngcatcgggcaacac 3’ (配列番号12)
プライマーDNA(G352):5’ cacttccatctctnnnaccaaggcagtctc 3’ (配列番号13)
プライマーDNA(K354):5’ catctctggaaccnnngcagtctcctaccc 3’ (配列番号14)
プライマーDNA(Y424):5’ tgaagtcctgaacnnnccgggcagcgcgac 3’ (配列番号15)
プライマーDNA(V431):5’ cagcgcgacgtccnnntttgcagaattctg 3’ (配列番号16)
プライマーDNA(F432):5’ cgcgacgtccgtgnnngcagaattctgggc 3’ (配列番号17)
実施例1で取得した野生型GLD遺伝子を含むプラスミドpAFF4GLDと、実施例4で合成した配列番号9のプライマーDNA、及びプライマーDNAと相補的な合成オリゴヌクレオチドを用い、QuikChangeII Site-Directed Mutagenesis Kit(STRATAGENE社製)を用いて、キットに添付されている実験手順に従って置換変異を導入したプラスミドを取得した。宿主として、 coli JM109 Competent Cells(タカラバイオ社製)を形質転換した後、選択マーカーであるアンピシリンナトリウム(和光純薬社製)を50μg/mL含有するLB寒天(BD社製)プレートにまき、37℃で一晩培養して、野生型GLDのアミノ酸配列の298位のアラニンが各アミノ酸に置換された改変型GLDをコードする改変型GLD遺伝子を持つ形質転換体を取得した。上記方法と同様にして、野生型GLD遺伝子を含むプラスミドpAFF04GLDと、実施例4で合成した配列番号10から17に記載の各プライマーDNA、及び各プライマーDNAと相補的な合成オリゴヌクレオチドを用いて、各々の置換変異を導入したプラスミドを取得した。形質転換も上記同様に行い、野生型GLDのアミノ酸配列の一部が置換された各々の改変型GLDをコードする改変型GLD遺伝子を持つ形質転換体を取得した。
更に、実施例2と同様に、こうして取得した大腸菌形質転換体からillustra plasmid mini spin kit(GEヘルスケア社製)を用いて部位特異的な置換変異を導入したプラスミドを抽出した。抽出したプラスミドをSaccharomyces cerevisiae BY4741に導入した。
(部位特異的な置換変異を導入した改変型GLD遺伝子を持つ形質転換体のGLD酵素活性評価
:その1)
実施例5により取得した酵母の形質転換体について、実施例3に記載の手順と同様にして相対活性が野生株と比較して顕著に増加した変異株を選別した。それら変異株の相対活性の測定結果を表2〜4に示す。また、A298V、V338M、S340G、S340N、S340V、S340W、H341A、H341C、H341D、H341F、H341G、H341I、H341K、H341L、H341M、H341N、H341Q、H341R、H341S、H341V、H341W、H341Y、D343A、D343E、D343F、D343H、D343I、D343K、D343L、D343M、D343N、D343Q、D343S、D343W、D343Y、D343V、G352A、G352F、G352I、G352M、G352N、G352P、G352Q、G352R、G352S、G352W、G352Y、Y424C、Y424K、Y424N、Y424Q、Y424R、Y424S、Y424V、G426A、G426C、G426F、G426H、G426I、G426K、G426L、G426M、G426N、G426S、G426T、G426W、G426Y、G426V、V431F、F432I、F432K、F432L、F432M、F432Q、F432R、F432T、F432Vにおいては、1,10-フェナントロリンと併せてプロフラビン塩酸塩に対する感受性も優位に低下(プロフラビン塩酸塩による阻害に対する相対活性45%以上)していた。
Figure 0005896375
Figure 0005896375
Figure 0005896375
(精製酵素を用いた1,10-フェナントロリン及びプロフラビン塩酸塩感受性の評価)
500mL容坂口フラスコにYPD培地を150mL入れ、実施例5にて取得した341位のヒスチジンがトリプトファンに置換した改変株および432位のフェニルアラニンがロイシンに置換した変異株を植菌し、30℃、120rpm、48時間の条件で培養した。
培養液を3,000×gで5分間遠心し、上澄み液を10μmメンブレンフィルターにてろ過した。ろ液をViva spin 20-10k(GEヘルスケア社製)等を用いて濃縮し、透過液の電気伝導度が10μS/cm以下になるまで脱塩を行った。
得られた酵素溶液を1mM リン酸カリウム緩衝液(pH7.0)で平衡化させておいたDEAEセルファイン A-500-mカラム(直径 1.0cm×高さ 6.0cm)に通液し酵素を吸着させた。同緩衝液で洗浄し、さらに10mM リン酸カリウム緩衝液(pH7.0)を通液した。得られた活性画分を集めViva spin2-10k(GEヘルスケア社製)にて濃縮し精製酵素とした。
得られた精製酵素溶液を適切な濃度に希釈後、前述の酵素活性測定法に倣い分光光度計を用いてサンプル値及びブランク値を測定した。
測定の結果を表5に示す。精製酵素においても1,10-フェナントロリンおよびプロフラビン塩酸塩の感受性が大きく低下していることが判った。
Figure 0005896375
(高濃度の阻害剤による感受性の評価)
実施例3および6に記載の手順と同様にして高濃度の阻害剤の共存下で相対活性を測定した。その結果(表6)から、阻害剤の終濃度1〜20mMにおいて、野生型と比較して本発明の改変型GLDの相対活性は顕著に増加していることが判明した。
Figure 0005896375
(改変型GLDを用いたD-グルコースの定量)
実施例7で得た、341位のヒスチジンがトリプトファンに置換した改変株および432位のフェニルアラニンがロイシンに置換した改変株から得た改変型GLDを使用し、前述の酵素活性測定法に倣い分光光度計を用いてD-グルコースの定量を行った。反応測定系において、終濃度が0.3、5.0、15、25、50mMとなるようD-グルコースを添加し、600nmにおけるDCIPの吸光度変化(ΔAbs/min)を測定した。この吸光度変化を既知のグルコース濃度(0.3、5.0、15、25、50mM)に対してプロットしたところ、検量線が作成できた(図1A〜図1D)。これより本発明の改変型GLDを用いてグルコースの定量が可能であることが示された。
本発明のポリヌクレオチドにてコードされる改変型GLDは、1,10-フェナントロリンの影響を受けにくいことから、より高精度な自己血糖測定(SMBG)装置にも利用することができ、糖尿病患者の自己管理及び治療に大きく資する。

Claims (13)

  1. 配列番号1のアミノ酸配列と少なくとも90%の同一性を有する、フラビン結合型グルコース脱水素酵素(GLD)のアミノ酸配列において、
    A298I、A298V、S272T+A298V+A369T、V338M、V338M+Q382H、S340G、S340N、S340V、S340W、L250V+S340G+D399N、H341A、H341C、H341D、H341E、H341F、H341G、H341I、H341K、H341L、H341M、H341N、H341P、H341Q、H341R、H341S、H341V、H341W、H341Y、H341R+G499S、D343A、D343E、D343F、D343H、D343I、D343K、D343L、D343M、D343N、D343Q、D343R、D343S、D343W、D343Y、D343V、D343E+L562H、R250L+D343E+K494E、D343N+S490S、G352A、G352C、G352D、G352E、G352F、G352I、G352K、G352L、G352M、G352N、G352P、G352Q、G352R、G352S、G352T、G352V、G352W、G352Y、K354A、K354C、K354D、K354E、K354F、K354G、K354H、K354M、K354N、K354P、K354Q、K354Y、K354R、K354S、M342L+K354N、G426A、G426C、G426D、G426E、G426F、G426H、G426I、G426K、G426L、G426M、G426N、G426P、G426R、G426S、G426T、G426W、G426Y、G426V、G426S+A578V、V431F、F432I、F432K、F432L、F432M、F432Q、F432R、F432T、及びF432Vから成る群から選択される少なくとも1つのアミノ酸残基における置換を含み(但し、上記アミノ酸配列が配列番号1でない場合には、F432I及びF432Vは除く)、且つ、配列番号1で示される野生型GLDと比較して阻害剤である1,10-フェナントロリンに対する感受性が低下した改変型GLD。
  2. フラビン結合型グルコース脱水素酵素(GLD)のアミノ酸配列が配列番号1で示される、請求項1記載の改変型GLD。
  3. 阻害剤が終濃度1mMの条件で共存した測定系において、阻害剤が共存しない場合と比べ85.4%以上の相対活性を示す、請求項1又は2記載の改変型GLD。
  4. 阻害剤が終濃度1mMの条件で共存した測定系において、阻害剤が共存しない場合と比べ90%以上の相対活性を示す、請求項3記載の改変型GLD。
  5. 請求項1ないし4のいずれか一項に記載の改変型GLDをコードするポリヌクレオチド。
  6. 配列番号1で示される野生型のフラビン結合型グルコース脱水素酵素(GLD)アミノ酸配列をコードするポリヌクレオチドが配列番号2に示される塩基配列を有する、請求項5記載のポリヌクレオチド。
  7. 請求項5又は6記載のポリヌクレオチドを保有する組換えベクター。
  8. 請求項7記載の組換えベクターを用いることによって作製された形質転換細胞。
  9. 大腸菌、酵母、又は糸状菌である、請求項8記載の形質転換細胞。
  10. 請求項8又は9の形質転換細胞を培養し、得られた培養物から改変型GLDを採取することを特徴とする、改変型GLDの製造方法。
  11. 請求項1ないし4のいずれか一項に記載の改変型GLD又は請求項10記載の製造方法で得られた改変型GLDを使用することを特徴とする、グルコースの測定方法。
  12. 請求項1ないし4のいずれか一項に記載の改変型GLD又は請求項10記載の製造方法で得られた改変型GLDを含有することを特徴とする、グルコース測定試薬組成物。
  13. 請求項1ないし4のいずれか一項に記載の変型GLD又は請求項10記載の製造方法で得られた改変型GLDを使用することを特徴とする、グルコース測定用のバイオセンサ。
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