JP5895371B2 - 発泡体の成形方法 - Google Patents
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(1)金型加熱工程、(2)一方加熱工程、(3)逆一方加熱工程、(4)両面加熱工程
各工程の機能について述べると、
(1)金型加熱工程は、原料である予備発泡ビーズを金型に充填する前に、金型を予熱する工程である。
(2)一方加熱工程は、製品の一方の面からのみ蒸気を供給し、ビーズ間に蒸気を通過させ、加熱する工程であり、加熱によりビーズが発泡する。ビーズが発泡すると蒸気の通過を妨げるので、蒸気を供給している側の蒸気チャンバーの圧力が上昇する。蒸気チャンバー内の圧力を圧力計で検知し、工程を終了させる。
(3)逆一方加熱工程は、(2)一方加熱工程と反対の面から同様に蒸気を通過させ発泡させる工程である。
(4)両面加熱工程は、両方の面から同時に蒸気を供給し、製品表面の温度を上げ、製品表面層を形成する工程である。温度を上げることにより、製品表面近傍の発泡した基材樹脂を軟化させ、製品内部からの発泡圧により金型平面に押し付けることにより表面層を形成する。
これに対して、(2)一方加熱工程、(3)逆一方加熱工程は、原理的には、先に説明したように、圧力をフィードバックさせる、すなわち、蒸気圧力が設定値に達することにより、工程を終了させるのであるが、実用上は、タイマーを用いる場合が多い。なぜならば、圧力の変化が少ない状況で、工程の終点を精度よく検知することは、実用上難しい場合が多いためである。
この昇圧過程では、金型熱容量の大小により、蒸気圧力の上昇速度が異なる。すなわち、金型の熱容量が大きければ、昇圧速度は遅く、昇圧に時間がかかる。
また、金型の熱容量が小さく、金型熱容量に対して蒸気供給能力が大きく過剰であれば、短時間で昇圧できることになる。しかしながら、定値制御に移行する時点でオーバーシュート(蒸気圧力が設定値を大きく超える)することになり、その後も大きくハンチング(設定値を中心に蒸気圧力が上下に震動する)する。
すなわち 金型が冷えている成形工程の初期は、多量の蒸気を必要とする一方、金型が温まってくる後半には、必要とする蒸気量は大きく減少する。これは、最も普及しているフィードバック手法であるPID制御の制御パラメーターが、刻々と変化して定まらないことを意味している。
ただし、この方法では、自動弁およびバイパスラインを追加するため、機械の構造が複雑になり、コストもかかる。一方、バイバスラインの開閉だけでは、きめ細かな操作が難しいとの問題点もあった。
ただし、該制御方法においては、蒸気供給能力と消費量の間に大きな乖離がない範囲であれば有効な方法であるが、その乖離が大きい場合、フィードバック制御であることには変わりない為、大きくハンチングすることは避けられないという問題があった。
しかしながら、該制御方法の問題点は、発泡圧力を測定するセンサーである面圧計を金型に取り付けることが必須の条件であることである。通常、金型は、頻繁に交換作業を実施するものであり、面圧計もその都度付け替え調整する必要がある。金型交換の度に面圧計を付け替えることは、手間がかかると共に、センサー部を破損する可能性が高いため、実用化は困難である。
先に種々の観点から述べた蒸気圧制御の課題は、金型の熱容量が大きく異なっても、蒸気供給設備は、成形機に装備された単一のものであることに起因する為、金型の熱容量にあわせて、蒸気供給能力を変化させることができれば、蒸気圧制御の精度は向上し、成形工程での予備発泡ビーズに対する熱履歴を一定にすることが可能であることを見出した。
熱可塑性樹脂を基材とする予備発泡ビーズを金型内に充填し、蒸気を吹き込むことにより、発泡融着させ、所望する製品形状に成形する熱可塑性樹脂発泡体の型内発泡成形方法であって、
成形時の蒸気供給量をフィードバック制御する加熱用蒸気弁の弁開度決定において、予め金型熱容量に基づいて求められる弁開度の上限値および下限値を設けることを特徴とする、熱可塑性樹脂発泡体の成形方法である。
(1)金型加熱工程では、ドレン弁より捨てられる蒸気量を削減することができる。
(2)一方加熱工程および(3)逆一方加熱工程では、ドレン弁より捨てられる蒸気量を削減することができ、融着性の制御等の品質の安定化に効果がある。
(4)両面加熱工程では、オーバーシュートやハンチングを防止することができ、発泡体の収縮等の不良品の発生を防ぐことができる。
例えば、(4)両面加熱工程において、蒸気圧力の設定値に対して、蒸気圧力が高い方へずれる場合、蒸気供給能力が過剰であると判断し、上限値を下げる、もしくは下限値を下げる。一方、低い方へずれる場合は、能力不足と判定して、上限値を上げる、もしくは下限値を上げる。
もちろん、これらの変動を見込んで、上限値および下限値を設定するのであるが、変動を見込むとは、上限値は高めに、下限値は低めに設定することを意味し、制御の精度を悪化させる方向ではある。したがって、冷却水の水温変化など、必要とする蒸気量がある傾向をもって変化する場合、それをモニターし自動的に変化させると、より精度の高い蒸気圧制御が実施できる。
蒸気弁8、9は、それぞれ固定側金型4、移動側金型5に配置されており、コントローラー1から発せられる弁開度信号により開閉されて、弁開度が調整される。ところで、これら蒸気弁8、9は、空気圧により弁が開く仕組みである。
蒸気弁8、9の弁開度は、まず、コントローラー1より電気信号(弁開度信号)として電空変換器6、7に送られ、該電空変換器6、7において、弁開度信号に比例した空気圧に変換されて、調整されて蒸気圧が制御される。
固定側金型4、移動側金型5には、それぞれドレンラインが設けられており、各工程において必要に応じてドレン弁10、11は開閉される。
ドレン弁の前には、導圧管が接続されており、圧力センサー2、3に導かれている。センサー2、3が検知した圧力は、電気信号としてコントローラー1へ送られる。
ここで、ドレン弁が閉であれば、圧力センサーが検知する圧力は、金型内部の圧力と考えてよい。
まず、式(1)により、制御の目標圧力であるSPと、測定時点での圧力センサーでの圧力測定値であるPV値との差、すなわち、偏差εが計算される。
式(2)で計算される弁開度MVCは、蒸気弁の弁開度0〜100%に対応する。
さらに、経験的に上限値OHを小さい方へ、下限値OLを大きい方へ修正すれば、それに従って制御の精度は向上する。また、上限値OH、下限値OLの修正をコントローラーに自動的に実行させることも有効な方法である。
すなわち、必要蒸気量に対し、蒸気供給能力が過剰であれば、先の(1)金型加熱工程と同様、ドレン弁から捨てる蒸気量が増加して、エネルギー効率を低下させる。また、蒸気の通過量が多いので、昇温時間が早くなる。
したがって、金型の熱容量に見合った蒸気供給の上限値を設けると、(2)一方加熱工程と(3)逆一方加熱工程においても、省エネと品質の安定化に効果がある。
このようにオーバーシュートやハンチングを生じると、一時的であっても蒸気圧設定値に対して、蒸気圧が過大、すなわち温度が上がりすぎることを意味する。(4)両面加熱工程では、温度を上げることにより、製品表面近傍の基材樹脂を軟化させて表面層を形成する。そのため、発泡体の基材樹脂の温度が上がりすぎると、溶融し、発泡体は収縮して不良品を生じる。
発泡スチレンのビーズ型内発泡成形法により、表1に示す製品寸法の2種の発泡製品(すなわち、製品1および製品2)を、表1に示す金型フレーム寸法の成形金型を用いて成形した。
製品1は、魚箱の蓋であり、表1に示すように、用いる金型のフレームも薄く、金型の熱容量は小さいものである。一方、製品2は、野菜箱であり、箱状であるため、表1に示すように、金型フレームが大きく、熱容量が大きいものである。
各金型に対して、発泡倍率60倍の発泡スチレン系予備発泡粒子[(株)カネカ製、NSG]を充填した後、金型加熱工程として、蒸気弁開度を表2に示すOH(%)として3秒間蒸気を付与し、一方加熱工程として、蒸気弁開度をOH(%)としてカット圧0.04MPaに達するまで蒸気を付与し、逆一方加熱工程として、蒸気弁開度をOH(%)として2秒間付与した。
そして、両面加熱工程として、最終的な金型内蒸気圧の設定値を0.065MPaとし、予め設定された弁開度OH(%)に固定された状態で、金型内蒸気圧がほぼゼロの状態から、蒸気を供給し、蒸気圧が設定値に到達した時点で、PID制御に切り替えて、弁開度を調整した。
なお、両面加熱工程は、タイマー制御により8.5秒後に冷却工程に移行される。
製品1(蓋体)、製品2(深箱)に対して、両面加熱工程での弁開度のPID制御演算において上限値OHおよび下限値OLの制限を設けなかった以外は、実施例と同様の操作を行って、型内発泡成形を行った。
ここで、金型の熱容量の小さい製品1(蓋体)に対しては蒸気供給能力が過剰であり、金型の熱容量の大きい製品2(深箱)に対しては能力不足ではないが若干低い状態にある。
両面加熱工程での固定側金型内での蒸気圧変化に関して、図4には、製品1(蓋体)における蒸気圧変化<比較例1>を示し、図5には、製品2(深箱)における蒸気圧変化<比較施例2>を示す。
2 圧力センサー(固定側)
3 圧力センサー(移動側)
4 金型(固定側)
5 金型(移動側)
6 電空変換器(固定側)
7 電空変換器(移動側)
8 蒸気バルブ(固定側)
9 蒸気バルブ(移動側)
10 ドレン弁(固定側)
11 ドレン弁(移動側)
12 蒸気減圧弁
Claims (2)
- 第1及び第2の金型からなる金型と、前記第1の金型へ蒸気を供給する第1の蒸気弁と、前記第1の金型に設けられた第1のドレン弁と、前記第2の金型へ蒸気を供給する第2の蒸気弁と、前記第2の金型に設けられた第2のドレン弁とを備えた発泡成形機を用いて、熱可塑性樹脂を基材とする予備発泡粒子を、前記第1の金型と前記第2の金型とを閉じた中央空間部に充填し、蒸気を吹き込むことにより、発泡融着させ、所望する製品形状に成形する熱可塑性樹脂発泡体の型内発泡成形方法であって、
金型熱容量に基づく前記第1の蒸気弁の弁開度の上限値と下限値とを設定する設定工程と、
コントローラーが前記第1の蒸気弁から前記第1の金型へ蒸気を供給し、前記第2のドレン弁を開放することにより前記予備発泡粒子の粒子間に蒸気を通過させて前記予備発泡粒子を発泡融着させる加熱工程とを含み、
前記コントローラーが、前記加熱工程において、
前記金型内の蒸気の圧力に基づくフィードバック制御により前記蒸気の圧力を目標圧力にするべく前記第1の蒸気弁の弁開度を決定し、
当該決定された弁開度が前記弁開度の上限値以上のとき前記第1の蒸気弁の弁開度を前記上限値に調整し、
当該決定された弁開度が前記弁開度の下限値以下のとき前記第1の蒸気弁の弁開度を前記下限値に調整し、
当該決定された弁開度が前記下限値を超え、前記上限値に満たないとき前記第1の蒸気弁の弁開度を当該決定された弁開度に調整し、
前記第1の金型の蒸気の所定の圧力上昇を検知して前記加熱工程を終了し、
前記設定工程は、
前記弁開度の上限値を増減させながら試験的に前記加熱工程を実行することにより前記圧力が維持できずに徐々に低下する前記弁開度の上限値を見出し、その見出された前記弁開度の上限値の+10%を前記加熱工程の前記上限値の初期値として設定し、その見出された前記弁開度の下限値の−10%を前記加熱工程の前記下限値の初期値として設定する工程である熱可塑性樹脂発泡体の成形方法。 - 前記弁開度の上限値は、前記金型熱容量が小さいほど小さく、
前記弁開度の下限値は、前記金型熱容量が大きいほど大きい請求項1記載の熱可塑性樹脂発泡体の成形方法。
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