JP2013000996A - 発泡体の成形方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】 熱可塑性樹脂を基材とする予備発泡ビーズを用いる型内発泡成形法において、加熱用蒸気の圧力制御の精度を向上することができる、すなわち、設定値に対する蒸気圧力のズレや振動を解消することができる、発泡体の成形方法を提供する。
【解決手段】 加熱用蒸気弁の弁開度の制御演算において、予め金型の熱容量に基づき求めた弁開度の上限値、下限値を設けることにより、予備発泡ビーズを用いる型内発泡成形法における加熱用蒸気の圧力制御の精度を向上することができる。
【選択図】図2

Description

本発明は、熱可塑性樹脂を基材とする樹脂ビーズに発泡剤を含浸させた後に予備発泡し、これを金型内に充填し、蒸気を吹き込むことにより、発泡融着させ、所望する製品形状に成形する、いわゆる、ビーズ法による型内発泡成形法、における成形時の蒸気供給量の自動制御に関する。
熱可塑性樹脂を基材とする樹脂ビーズに発泡剤を含浸させた後に予備発泡し、これを金型内に充填し、蒸気を吹き込むことにより、発泡融着させ、所望する製品形状に成形する、いわゆる、ビーズ法による型内発泡成形法においては、成形時の蒸気供給量に関して、自動制御が行われている。
蒸気供給量に関する自動制御の手法としては、タイマーとフィードバック制御による蒸気圧の定値制御により構成されており、基本的には、以下に示す4工程より成り立っている。
(1)金型加熱工程、(2)一方加熱工程、(3)逆一方加熱工程、(4)両面加熱工程
各工程の機能について述べると、
(1)金型加熱工程は、原料である予備発泡ビーズを金型に充填する前に、金型を予熱する工程である。
(2)一方加熱工程は、製品の一方の面からのみ蒸気を供給し、ビーズ間に蒸気を通過させ、加熱する工程であり、加熱によりビーズが発泡する。ビーズが発泡すると蒸気の通過を妨げるので、蒸気を供給している側の蒸気チャンバーの圧力が上昇する。蒸気チャンバー内の圧力を圧力計で検知し、工程を終了させる。
(3)逆一方加熱工程は、(2)一方加熱工程と反対の面から同様に蒸気を通過させ発泡させる工程である。
(4)両面加熱工程は、両方の面から同時に蒸気を供給し、製品表面の温度を上げ、製品表面層を形成する工程である。温度を上げることにより、製品表面近傍の発泡した基材樹脂を軟化させ、製品内部からの発泡圧により金型平面に押し付けることにより表面層を形成する。
ここで、(1)金型加熱工程、(4)両面加熱工程のいずれも、予め定められた時間に達したら、工程を終了させるタイマー制御である。
これに対して、(2)一方加熱工程、(3)逆一方加熱工程は、原理的には、先に説明したように、圧力をフィードバックさせる、すなわち、蒸気圧力が設定値に達することにより、工程を終了させるのであるが、実用上は、タイマーを用いる場合が多い。なぜならば、圧力の変化が少ない状況で、工程の終点を精度よく検知することは、実用上難しい場合が多いためである。
これら各工程のタイマー値は、金型により異なる。例えば、金型が大きくて熱容量が大きければ、タイマー値は長く、逆に、金型の熱容量が小さければタイマー値は短くなる。これは、成形工程では、金型の昇温を管理しているのであり、原料の予備発泡ビーズにとっては、金型の熱容量に依存して、成形工程の熱履歴が異なってしまうことを意味している。
(4)両面加熱工程では、金型の蒸気圧力を設定値一定に保つ定値制御が主体であるが、その前に、設定値まで昇圧させる過程がある。
この昇圧過程では、金型熱容量の大小により、蒸気圧力の上昇速度が異なる。すなわち、金型の熱容量が大きければ、昇圧速度は遅く、昇圧に時間がかかる。
また、金型の熱容量が小さく、金型熱容量に対して蒸気供給能力が大きく過剰であれば、短時間で昇圧できることになる。しかしながら、定値制御に移行する時点でオーバーシュート(蒸気圧力が設定値を大きく超える)することになり、その後も大きくハンチング(設定値を中心に蒸気圧力が上下に震動する)する。
また、もうひとつの大きな課題として、成形操作が数分のサイクルで加熱、冷却を繰り返す、いわゆるバッチ操作であり、定常状態を想定したフィードバック制御手法を適用しにくいことが挙げられる。
すなわち 金型が冷えている成形工程の初期は、多量の蒸気を必要とする一方、金型が温まってくる後半には、必要とする蒸気量は大きく減少する。これは、最も普及しているフィードバック手法であるPID制御の制御パラメーターが、刻々と変化して定まらないことを意味している。
以上まとめると、ビーズ法による型内発泡成形では、秒単位の短時間に異なる工程へ切り替わる非定常な操作が主体であり、かつ、製品毎に熱容量が大きく異なる金型を載せ換えて成形するため、しばしば蒸気の供給能力と消費量との間に大きな乖離を生じる点に問題がある。 そのため、先に述べたように、金型の熱容量に依存して、原料樹脂に対する熱履歴が異なり、品質の悪化を招いたり、制御の精度が悪く、しばしば蒸気圧が不安定になったりする課題が存在する。
これらの課題を解決するため、従来、金型の熱容量の変化に対しては、加熱用蒸気供給ラインにバイパスラインを設け、バイパスラインの開閉により、蒸気供給能力を変化させる方法を採る場合があった。
ただし、この方法では、自動弁およびバイパスラインを追加するため、機械の構造が複雑になり、コストもかかる。一方、バイバスラインの開閉だけでは、きめ細かな操作が難しいとの問題点もあった。
また、両面加熱工程のオーバーシュートを防止することを目的とした自動制御の手法に関して、両面加熱における蒸気圧設定値に到達させる場合の操作可能な圧力上昇の経路を予め求め、それに従うようにフィードバック制御する自動制御方法が開発されている(特許文献1参照)。
ただし、該制御方法においては、蒸気供給能力と消費量の間に大きな乖離がない範囲であれば有効な方法であるが、その乖離が大きい場合、フィードバック制御であることには変わりない為、大きくハンチングすることは避けられないという問題があった。
さらに、製品の品質維持を前提に、過剰な成形操作による成形サイクル、使用蒸気量の増加を防ぐことを目的とした、加熱工程の制御方法に関して、冷却工程で発泡圧力を目安に成形時間を測定し、それにより加熱時間の過不足を判断し、加熱工程の時間を自動的に調整する制御方法も開発されている(特許文献2参照)。
しかしながら、該制御方法の問題点は、発泡圧力を測定するセンサーである面圧計を金型に取り付けることが必須の条件であることである。通常、金型は、頻繁に交換作業を実施するものであり、面圧計もその都度付け替え調整する必要がある。金型交換の度に面圧計を付け替えることは、手間がかかると共に、センサー部を破損する可能性が高いため、実用化は困難である。
以上のように、ビーズ法による型内発泡成形法における蒸気圧制御の精度向上を目的とした制御方法の開発が待たれていた。
特許第3995334号 特許第2500125号
本発明は、ビーズ法による型内発泡成形法における蒸気圧制御の精度向上が可能となるフィードバック制御における蒸気弁の操作量、すなわち弁開度を求める方法を提供することを目的とする。
本発明者は、以上の課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、本発明に到った。
先に種々の観点から述べた蒸気圧制御の課題は、金型の熱容量が大きく異なっても、蒸気供給設備は、成形機に装備された単一のものであることに起因する為、金型の熱容量にあわせて、蒸気供給能力を変化させることができれば、蒸気圧制御の精度は向上し、成形工程での予備発泡ビーズに対する熱履歴を一定にすることが可能であることを見出した。
すなわち、本発明の発泡体の成形方法は、
熱可塑性樹脂を基材とする予備発泡ビーズを金型内に充填し、蒸気を吹き込むことにより、発泡融着させ、所望する製品形状に成形する熱可塑性樹脂発泡体の型内発泡成形方法であって、
成形時の蒸気供給量をフィードバック制御する加熱用蒸気弁の弁開度決定において、予め金型熱容量に基づいて求められる弁開度の上限値および下限値を設けることを特徴とする、熱可塑性樹脂発泡体の成形方法である。
本発明の発泡体の成形方法のように、金型の熱容量に見合った蒸気供給の上限値および下限値を設けることにより、(1)〜(4)の各工程において、以下のような効果が得られる。
(1)金型加熱工程では、ドレン弁より捨てられる蒸気量を削減することができる。
(2)一方加熱工程および(3)逆一方加熱工程では、ドレン弁より捨てられる蒸気量を削減することができ、融着性の制御等の品質の安定化に効果がある。
(4)両面加熱工程では、オーバーシュートやハンチングを防止することができ、発泡体の収縮等の不良品の発生を防ぐことができる。
本発明の実施例に係る発泡成形機における蒸気制御システムを示す図である。 本発明の実施例/製品1(蓋)に係る、両面加熱工程での蒸気圧力制御結果を示す図である。 本発明の実施例/製品2(深箱)に係る、両面加熱工程での蒸気圧力制御結果を示す図である。 本発明の比較例/製品1(蓋)に係る、両面加熱工程での蒸気圧力制御結果を示す図である。 本発明の比較例/製品2(深箱)に係る、両面加熱工程での蒸気圧力制御結果を示す図である。
本発明の成形方法においては、金型の熱容量に応じて、必要となる蒸気量に見合った蒸気供給能力を実現するために、成形時の蒸気供給量をフィードバック制御する加熱用蒸気弁の弁開度決定(開閉動作)において、金型の熱容量に応じて求められる弁開度の上限値および下限値を設けることを特徴とする。
本発明の発泡体の成形方法においては、弁開度決定において弁開度の上限値および下限値を設けることにより、蒸気弁の弁開度を本来の0〜100%の内の特定領域に限定することができ、蒸気弁の過剰な動作を防止し、その結果として、供給される蒸気圧を安定化させることができる。
例えば、(4)両面加熱工程における蒸気圧のオーバーシュートやハンチングは、蒸気供給能力が必要蒸気量に対して、大幅に過剰である場合に発生する現象である。そこで、成形に必要な蒸気量に対して、供給量が10%以上過剰でなければ、大幅なオーバーシュートは防げる。また、フィードバック制御において、過剰に蒸気を供給しないことと同時に、供給量を絞り過ぎなければ、大きくハンチングすることは防ぐことができる。
本発明における上限値および下限値は、前回までの操作での蒸気圧力の動きから、判断して決めることができる。
例えば、(4)両面加熱工程において、蒸気圧力の設定値に対して、蒸気圧力が高い方へずれる場合、蒸気供給能力が過剰であると判断し、上限値を下げる、もしくは下限値を下げる。一方、低い方へずれる場合は、能力不足と判定して、上限値を上げる、もしくは下限値を上げる。
上限値および下限値は、金型と成形機の組み合わせで決まる固有の値であり、金型交換の都度、成形条件の一つとして運転員が入力する。または、この入力操作を簡略化するため、成形機の制御装置に記憶させたり、外部記憶媒体に記憶させ入力することも有用である。
本発明における上限値および下限値は、先にのべた各加熱工程(1)〜(4)に共通の変数と考えるが、加熱工程毎に定義すると、より精度の高い制御が可能である。
また、蒸気圧力をモニターし、蒸気供給能力の過不足がある傾向をもって変化する場合、成形機の制御装置内部にて自動的に上限値および下限値を適切な値に変更することも、有効である。例えば、朝に成形機の運転を開始し、夕方に停止する場合、立ち上げ時には工場や成形機、冷却水の温度が低く、加熱に多くの蒸気が必要になるが、昼になり、成形機、冷却水が温まり、気温も上昇してくると、加熱に必要な蒸気は減少してくる。
もちろん、これらの変動を見込んで、上限値および下限値を設定するのであるが、変動を見込むとは、上限値は高めに、下限値は低めに設定することを意味し、制御の精度を悪化させる方向ではある。したがって、冷却水の水温変化など、必要とする蒸気量がある傾向をもって変化する場合、それをモニターし自動的に変化させると、より精度の高い蒸気圧制御が実施できる。
図1に、本発明の成形方法(蒸気圧の制御方法)を、ビーズ型内発泡成形法において実施するための形態について、記載する。
発泡成形機の金型は、固定型金型4と移動型金型5からなる金型で、両者を閉じた場合の中央空間部(斜線部分)に原料ビーズが供給され、その後、減圧弁12を通じて、例えば0.5MPa程度に調圧された蒸気が蒸気弁8、9から金型内に供給される。
蒸気弁8、9は、それぞれ固定側金型4、移動側金型5に配置されており、コントローラー1から発せられる弁開度信号により開閉されて、弁開度が調整される。ところで、これら蒸気弁8、9は、空気圧により弁が開く仕組みである。
蒸気弁8、9の弁開度は、まず、コントローラー1より電気信号(弁開度信号)として電空変換器6、7に送られ、該電空変換器6、7において、弁開度信号に比例した空気圧に変換されて、調整されて蒸気圧が制御される。
固定側金型4、移動側金型5には、それぞれドレンラインが設けられており、各工程において必要に応じてドレン弁10、11は開閉される。
ドレン弁の前には、導圧管が接続されており、圧力センサー2、3に導かれている。センサー2、3が検知した圧力は、電気信号としてコントローラー1へ送られる。
ここで、ドレン弁が閉であれば、圧力センサーが検知する圧力は、金型内部の圧力と考えてよい。
一般に、熱可塑性樹脂発泡体の型内発泡成形法においては、先に述べたように、製品の形状や大きさ、および製品の取り数に応じて、金型の熱容量は大幅に変わる。これに対して、金型を搭載する成形機においては、配管口径、蒸気弁の大きさはほぼ不変であるため、金型に対する蒸気供給能力に大幅な過不足を生じる。
本発明の発泡体の成形方法においては、電気信号としてコントローラー1に送られた圧力を用い、コントローラー1において、フィードバック制御として、下記式(1)〜式(3)により弁開度信号MVが計算、決定され、電気信号(弁開度信号)としてコントローラー1から電空変換器6、7に送られ、電空変換器にて、弁開度信号に比例した空気圧に変換される。変換された空気圧により、蒸気バルブ8、9の弁開度が調整されて蒸気圧が制御される。
すなわち、
まず、式(1)により、制御の目標圧力であるSPと、測定時点での圧力センサーでの圧力測定値であるPV値との差、すなわち、偏差εが計算される。
Figure 2013000996
次いで、偏差εを用いる式(2)により、弁開度MVCが決定される。
Figure 2013000996
式(2)は、いわゆるPID方式によるフィードバック制御の計算式であり、式(2)の第1項が比例要素P、第2項が積分要素I、第3項が微分要素Dである。各項の弁開度への影響を決める定数は、それぞれ比例帯P、積分時間T、微分時間Tである。
式(2)で計算される弁開度MVCは、蒸気弁の弁開度0〜100%に対応する。
続いて、蒸気弁を操作する弁開度信号MVは、本発明の成形方法においては、式(2)により求められるMVCに対して、上限値Oと下限値Oの制限を設けて、式(3)の条件分けにより、決定される。
Figure 2013000996
本発明の発泡体の成形方法においては、弁開度の上限値Oと下限値Oを設けることにより、蒸気弁の弁開度を本来の0〜100%の内の特定領域に限定することができ、蒸気弁の過剰な動作を抑制することができる。その結果、蒸気圧力のハンチング、すなわち設定圧力に対して大きく上下に変動することを防止し、蒸気圧を安定化できる。
したがって、本発明の成形方法においては、成形機としては、必要とされる最大能力の口径を有する蒸気弁と配管を設けて、金型の熱容量に応じた弁開度の上限値O、下限値Oを求め、成形機のコントローラーに入力し、式(3)の計算に反映させることにより、供給される蒸気圧を安定化することができる。
弁開度の上限値O、下限値Oは、金型と成形機の組み合わせにより決まる値であるが、それぞれ大きめ、小さめに設定しておけば、ハンチングはするものの、式(2)のフィードバック制御の機構を持っているので、目標値から大きくずれることはない。
さらに、経験的に上限値Oを小さい方へ、下限値Oを大きい方へ修正すれば、それに従って制御の精度は向上する。また、上限値O、下限値Oの修正をコントローラーに自動的に実行させることも有効な方法である。
手動操作による上下限値の設定方法は、定値制御時の平均のMV値を基準にして上限値Oを増減させ、圧力が維持できずに徐々に低下する弁開度を見出す。この弁開度が蒸気供給量と金型の熱容量とがバランスする値と考えられる。従い、上限値Oはバランスした弁開度の+10%、下限値Oは−10%を初期値として設定し、その後、上下限の弁開度を微調整する。ここで、上限値Oの設定は+10%を固定し、下限値OLを増加させて、上下限の幅を狭めていくことが好ましい。この理由は、上限値を下げていく調製方法では、蒸気の元圧力の変動、特に蒸気の圧力が低下した時に、蒸気供給が不足し、製品不良を発生させる可能性があるからである。
先にのべた熱可塑性樹脂の型内発泡成形法における4つの加熱工程での、本発明の効果に関して、改めて説明する。
(1)金型加熱工程では、ドレン弁を開放し、金型に蒸気を供給する。ここで、ドレン弁を開放するのは、金型を加熱すると同時に蒸気により金型内の空気をパージするためである。金型の熱容量に対し、蒸気供給能力が過大であれば、ドレン弁より捨てられる蒸気量が増え、蒸気の使用量が増加する。したがって、金型の熱容量に見合った、蒸気供給の上限値を設けることにより、省エネの観点から効果がある。
(2)一方加熱工程および(3)逆一方加熱工程では、予備発泡ビーズの粒子間に蒸気を通過させ、加熱することにより、予備発泡ビーズを発泡させ、ビーズ間の融着を促進する。加熱操作としては金型の一方のみから蒸気を供給し、他方の金型ドレン弁を開放する。この操作により、ビーズの粒子間を蒸気が流れ、発泡融着が促進されれば、粒子間の通路が閉塞されることとなり、蒸気の通過が妨げられる。そのため、融着が進んでない部分へ蒸気の流れが分配され、最終的には、製品全体が均一に発泡して融着する。同時に融着が進むと、蒸気供給側の圧力が上昇する。蒸気供給側の圧力上昇を検知して、工程の終了を自動的に判断する。
問題は、蒸気供給時に、金型蒸気圧力が設定値に達するまでは、蒸気供給弁が全開で操作されることである。
すなわち、必要蒸気量に対し、蒸気供給能力が過剰であれば、先の(1)金型加熱工程と同様、ドレン弁から捨てる蒸気量が増加して、エネルギー効率を低下させる。また、蒸気の通過量が多いので、昇温時間が早くなる。
一方、蒸気供給能力が少なければ、昇温に長時間要する。その間、ドレン弁から蒸気を捨てるため、かえってドレン弁から捨てられる蒸気量が増加する。また、これら(2)・(3)の加熱工程に要する時間がまちまちであることは、昇温して、発泡融着させる時間が、すなわち、樹脂に対する熱履歴が、金型の熱容量に依存して、大きく異なることになる。
したがって、金型の熱容量に見合った蒸気供給の上限値を設けると、(2)一方加熱工程と(3)逆一方加熱工程においても、省エネと品質の安定化に効果がある。
最後に、(4)両面加熱工程では、固定側、移動側の双方の金型(蒸気チャンバー)に、同時に蒸気を供給し、かつドレン弁は閉じる。この状態で10〜20秒前後、自動制御により蒸気圧を一定に保つ。この工程では、蒸気圧を一定に保つことにより、金型表面を加熱し、金型に接する発泡体の表面を平滑化する。
ところで、前工程(3)逆一方加熱では、固定側金型のドレン弁は開いているので、金型蒸気チャンバーの蒸気圧は、大気圧、すなわちゼロである。そのため、(4)両面加熱工程では、工程が始まると、まず蒸気圧ゼロから両面加熱の設定値の圧力まで、圧力を上昇させる。設定値に達するまでは、蒸気弁は全開で操作されるので、金型熱容量に対して蒸気供給能力が過大であると、蒸気圧は、設定値に対し大きく行き過ぎる、いわゆる、オーバーシュートすることになる。オーバーシュートすると、その後、蒸気圧は、設定値に収束せず、上下に大きく振動する、いわゆる、ハンチング状態になる。
このようにオーバーシュートやハンチングを生じると、一時的であっても蒸気圧設定値に対して、蒸気圧が過大、すなわち温度が上がりすぎることを意味する。(4)両面加熱工程では、温度を上げることにより、製品表面近傍の基材樹脂を軟化させて表面層を形成する。そのため、発泡体の基材樹脂の温度が上がりすぎると、溶融し、発泡体は収縮して不良品を生じる。
金型熱容量に見合った蒸気供給能力に調整することにより、オーバーシュートやハンチングを防止することになり、不良品の発生を防ぐことができる。このように、蒸気供給能力を必要量に近い範囲に制限することにより、PID定数の設定がラフであっても蒸気圧は安定するという効果もある。
本発明の発泡体の成形方法に用いられる熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン等があげられ、これらの内でも、成形時の温度に対する許容幅の狭い樹脂、例えばポリプロピレンの成形に適用することが好ましい。これらは、単独で使用しても良いし、複数を組み合わせて使用しても良い。
次に、本発明の実施例により、さらに詳しく説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
(実施例1〜2)
発泡スチレンのビーズ型内発泡成形法により、表1に示す製品寸法の2種の発泡製品(すなわち、製品1および製品2)を、表1に示す金型フレーム寸法の成形金型を用いて成形した。
製品1は、魚箱の蓋であり、表1に示すように、用いる金型のフレームも薄く、金型の熱容量は小さいものである。一方、製品2は、野菜箱であり、箱状であるため、表1に示すように、金型フレームが大きく、熱容量が大きいものである。
Figure 2013000996
成形機としては、東洋機械金属製PS−360の機械部分を活用し、図1に示すコントローラー部は、専用装置を製作した。該専用成形機に、それぞれの金型を搭載して、型内発泡成形を実施した。なお、成形機の蒸気弁は口径65Aであり、蒸気の元圧は0.3MPaである。
型内発泡成形の成形条件としては、
各金型に対して、発泡倍率60倍の発泡スチレン系予備発泡粒子[(株)カネカ製、NSG]を充填した後、金型加熱工程として、蒸気弁開度を表2に示すO(%)として3秒間蒸気を付与し、一方加熱工程として、蒸気弁開度をO(%)としてカット圧0.04MPaに達するまで蒸気を付与し、逆一方加熱工程として、蒸気弁開度をO(%)として2秒間付与した。
そして、両面加熱工程として、最終的な金型内蒸気圧の設定値を0.065MPaとし、予め設定された弁開度O(%)に固定された状態で、金型内蒸気圧がほぼゼロの状態から、蒸気を供給し、蒸気圧が設定値に到達した時点で、PID制御に切り替えて、弁開度を調整した。
なお、両面加熱工程は、タイマー制御により8.5秒後に冷却工程に移行される。
本実施例における効果としては、特に、両面加熱工程での固定側金型内での蒸気圧変化を用いて示す。なお、蒸気圧測定は、図1の圧力センサー2にて測定した。
コントローラー部でのPID制御における演算に用いた、PID定数であるP、TおよびTは、表2の通りであり、製品1(蓋体)、製品2(深箱)とも同じ定数を用いた。なお、微分時間Tは0(ゼロ)であるが、微分動作を作動させないことを意味しており、実質的にはPI制御である。
PID制御では、式(2)により弁開度MVCを計算し、さらに、式(3)において、弁開度の上限値O、下限値Oの制限を加えた。なお、上限値O、下限値Oは、製品に応じて、すなわち、金型の熱容量に応じて異なる値となっているが、これらの値は、予め試験運転により求めた値である。具体的には、製品1での弁開度の上限値Oと下限値Oは、それぞれ62%、53%とした。これは、前記の上下限値の設定手順に従い、先ず金型熱容量と弁開度がバランスする値を求め、この値の±10%を設定することにより、初期値とした。すなわち、この場合、弁開度のバランス点が56%となったため、Oを62%、Oを50%に設定した。さらに微調整を加え、最終的には、上限値はそのままのO62%とし、下限値Oを53%に設定した。同様の操作により製品2の最適なOとOを求めたところ、Oが67%、Oが58%となった。
Figure 2013000996
図2は、製品1(蓋体)における蒸気圧変化<実施例1>を示し、図3は、製品2(深箱)における蒸気圧変化<実施例2>を示す。
図2および図3から明らかなように、いずれの金型を用いた系においても、弁開度の制御演算において上限値O、下限値Oの制限を加えることにより、ほぼ設定値0.065に制御されている。
(比較例1〜2)
製品1(蓋体)、製品2(深箱)に対して、両面加熱工程での弁開度のPID制御演算において上限値Oおよび下限値Oの制限を設けなかった以外は、実施例と同様の操作を行って、型内発泡成形を行った。
ここで、金型の熱容量の小さい製品1(蓋体)に対しては蒸気供給能力が過剰であり、金型の熱容量の大きい製品2(深箱)に対しては能力不足ではないが若干低い状態にある。
両面加熱工程での固定側金型内での蒸気圧変化に関して、図4には、製品1(蓋体)における蒸気圧変化<比較例1>を示し、図5には、製品2(深箱)における蒸気圧変化<比較施例2>を示す。
図4および図5より明らかなように、いずれの金型を用いた系においても、蒸気圧は、上下に振動(ハンチング)しており、蒸気圧の平均値は、設定値に対して、製品1に対しては高めに、製品2に対しては低めにずれていた。
1 コントローラー
2 圧力センサー(固定側)
3 圧力センサー(移動側)
4 金型(固定側)
5 金型(移動側)
6 電空変換器(固定側)
7 電空変換器(移動側)
8 蒸気バルブ(固定側)
9 蒸気バルブ(移動側)
10 ドレン弁(固定側)
11 ドレン弁(移動側)
12 蒸気減圧弁

Claims (1)

  1. 熱可塑性樹脂を基材とする予備発泡粒子を金型内に充填し、蒸気を吹き込むことにより、発泡融着させ、所望する製品形状に成形する熱可塑性樹脂発泡体の型内発泡成形方法であって、
    成形時の蒸気供給量を自動制御する加熱用蒸気弁の弁開度決定において、予め金型熱容量に基づいて求められる弁開度の上限値および下限値を設けることを特徴とする、熱可塑性樹脂発泡体の成形方法。
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