JP5892974B2 - 導電性及び応力緩和特性に優れる銅合金板 - Google Patents

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Description

本発明は、銅合金板及び通電用又は放熱用電子部品に関し、特に、電機・電子機器、自動車等に搭載される端子、コネクタ、リレー、スイッチ、ソケット、バスバー、リードフレーム、放熱板等の電子部品の素材として使用される銅合金板、及び該銅合金板を用いた電子部品に関する。中でも、電気自動車、ハイブリッド自動車等で用いられる大電流用コネクタや端子等の大電流用電子部品の用途、又はスマートフォンやタブレットPCで用いられる液晶フレーム等の放熱用電子部品の用途に好適な銅合金板及び該銅合金板を用いた電子部品に関するものである。
自動車や電機・電子機器等には、端子、コネクタ、スイッチ、ソケット、リレー、バスバー、リードフレーム、放熱板等の電気又は熱を伝えるための部品が組み込まれており、これら部品には銅合金が用いられている。ここで、電気伝導性と熱伝導性は比例関係にある。
近年、電子部品の小型化に伴い、通電部における銅合金の断面積が小さくなる傾向にある。断面積が小さくなると、通電した際の銅合金からの発熱が増大する。また、伸長著しい電気自動車やハイブリッド電気自動車で用いられる電子部品には、バッテリー部のコネクタ等、著しく高い電流が流されるものがあり、通電時の銅合金の発熱が問題になっている。
コネクタ等の電子部品の電気接点では、銅合金板にたわみが与えられ、このたわみで発生する応力により、接点での接触力を得ている。たわみを与えた銅合金を高温下で長時間保持すると、応力緩和現象により、応力すなわち接触力が低下し、接触電気抵抗の増大を招く。
そこで、前記発熱の問題に対処するため、銅合金には、発熱量が減ずるよう導電性により優れることが求められ、さらに発熱しても接触力が低下しないよう応力緩和特性により優れることも求められている。
一方、例えばスマートフォンやタブレットPCの液晶には液晶フレームと呼ばれる放熱部品が用いられている。このような放熱用途の銅合金板においても、応力緩和特性を高めると、外力による放熱板のクリープ変形が抑制され、放熱板周りに配置される液晶部品、ICチップ等に対する保護性が改善される、等の効果を期待できる。このため、放熱用途の銅合金板においても、応力緩和特性に優れることが望まれている。
導電率が高く、比較的高い強度を有する材料として、Cu−Sn系合金が知られている。例えば、0.10〜0.15質量%のSnを含有する銅合金が、CDA(Copper Development Association)合金番号C14415として実用に供されている。また、Cu−Sn合金は以前より、銅合金箔として携帯電話のフレキシブルプリント基板やリチウムイオン二次電池等の二次電池の負極集電体材料にも使用されている。(特許文献1)。
特開2003−286528号公報 特開2011−142071号公報
銅の応力緩和特性は、合金元素を添加することにより改善できる。ただし、合金元素の添加は導電率を低下させるため、添加元素には導電率低下への影響が少ないこと、少量の添加で応力緩和改善効果が発現することが求められる。
応力緩和改善効果が顕著な元素として、例えばZrがあげられる。ところが、Zrは極めて活性であるため、インゴットの溶製時に添加したZrの一部が酸化する。このZr酸化物がインゴットに巻き込まれると、製品表面に傷が発生したり、圧延中の材料が切れたりする。また、Zrは固体銅中で析出物を形成し、その析出形態によって機械的特性や応力緩和特性が変化するため、熱間圧延や各熱処理の条件を厳密に調整する必要がある。このことから、Cu−Zr系合金の製造コストは極めて高価なものであった。
一方、前記Cu−Sn系合金の場合、SnはZr等と比較し溶銅中で酸化物を形成しにくいため、インゴットの溶製が容易であり、圧延材の品質も良好である。また、Snは固体銅中に安定して固溶するため、製品特性が安定して発現する。したがって、Cu−Sn系合金は安価に製造することができる。しかし、Cu−Sn系合金の応力緩和特性は純Cuと比べると優れるものの、近年市場から要求されるレベルに対し充分といえなかった。
そこで、本発明は、高強度、高導電性および優れた応力緩和特性を兼ね備えた銅合金を提供することを目的とし、具体的には、安価で導電性と強度に優れるCu−Sn系合金の応力緩和特性を改善することを課題とする。さらには、本発明は、該銅合金板の製造方法、及び大電流用途又は放熱用途に好適な電子部品を提供することをも目的とする。
本発明者らは、Cu−Sn系合金において、ばね限界値を指標に金属組織を調整すること、圧延面に配向する結晶粒の方位を制御すること、合金が含有する酸素濃度を調整することにより、応力緩和特性が向上することを見出した。
以上の知見を背景に、以下の発明を完成させた。
(1)Snを0.005〜0.25質量%含有し、残部が銅およびその不可避的不純物から成り、80%IACS以上の導電率、および330MPa以上の0.2%耐力を有し、かつ、0.2%耐力の80%の応力を付加し150℃で1000時間保持後の応力緩和率が50%以下であることを特徴とする、銅合金板。
(2)ばね限界値Kb(MPa)と、0.2%耐力σ(MPa)との関係が、Kb≧(σ−100)で与えられることを特徴とする、(1)に記載の銅合金板。
(3)X線回折法を用い圧延面において厚み方向に求めた(111)面および(311)面の回折積分強度をそれぞれI(111)およびI(311)としたときに、I(111)/I(311)が5.0以下であることを特徴とする(1)または(2)に記載の銅合金板。
(4)酸素が20質量ppm以下であることを特徴とする、(1)〜(3)の何れかに記載の銅合金板。
(5)Ag、Fe、Co、Ni、Cr、Mn、Zn、Mg、Si、PおよびBのなかの一種以上を0.2質量%以下含有することを特徴とする(1)〜(4)の何れかに記載の銅合金板。
(6)(1)〜(5)の何れかに記載の銅合金板を用いた高電流用電子部品。
(7)(1)〜(5)の何れかに記載の銅合金板を用いた放熱用電子部品。
(8)インゴットを、800〜1000℃で厚み3〜30mmまで熱間圧延した後、冷間圧延と再結晶焼鈍とを繰り返し、最終の冷間圧延の後、歪取焼鈍を施す銅合金板の製造工程であって、
(A)該最終冷間圧延前の再結晶焼鈍において、炉内温度を350〜800℃として、銅合金板の平均結晶粒径を2〜50μmに調整し、
(B)該最終冷間圧延において、総加工度を25〜99%、1パスあたりの圧延加工度を20%以下とし、
(C)該歪取焼鈍において、連続焼鈍炉を用い、炉内温度を300〜700℃、炉内で銅合金板に付加される張力を1〜5MPaとして、銅合金板を通板し、0.2%耐力を10〜50MPa低下させる、
ことを特徴とする、(1)〜(5)の何れかに記載の銅合金板の製造方法。
本発明によれば、高強度、高導電性および優れた応力緩和特性を兼ね備えた銅合金板及びその製造方法、並びに大電流用途又は放熱用途に好適な電子部品を提供することが可能である。この銅合金は、端子、コネクタ、スイッチ、ソケット、リレー、バスバー、リードフレーム、放熱板等の電子部品の素材として好適に使用することができ、特に大電流を通電する電子部品の素材又は大熱量を放散する電子部品の素材として有用である。
応力緩和率の測定原理を説明する図である。 応力緩和率の測定原理を説明する図である。
以下、本発明について説明する。
(特性)
本発明では、銅合金板の導電率および0.2%耐力を、それぞれ80%IACS以上および330MPa以上に調整することを目標とする。導電率が80%IACS以上であれば、通電時の発熱量が純銅と同等といえる。また、0.2%耐力が330MPa以上であれば、大電流を通電する部品の素材又は大熱量を放散する部品の素材として必要な強度を有しているといえる。
応力緩和特性については、0.2%耐力の80%の応力を付加し150℃で1000時間保持した時の応力緩和率を50%以下、より好ましくは40%以下、さらに好ましくは30%に低減することを目標とする。通常のCu−Sn系合金の該応力緩和率は70〜80%程度であり、これを50%以下にすることで、コネクタに加工した後に大電流を通電しても接触力低下に伴う接触電気抵抗の増加が生じ難くなり、また、放熱板に加工した後に熱と外力が同時に加わってもクリープ変形が生じ難くなる。
上記特性を兼ね備える本発明の銅合金板は、高電流用電子部品の用途に好適である。
(合金成分濃度)
Sn濃度は0.005〜0.25質量%、好ましくは0.05〜0.20質量%とする。Snが0.25質量%を超えると、80%IACS以上の導電率を得ることが難しくなり、Snが0.005%未満になると、330MPa以上の0.2%耐力を得ることが難しくなる。
本発明のCu−Sn系合金には、強度や耐熱性を改善するために、Ag、Fe、Co、Ni、Cr、Mn、Zn、Mg、Si、PおよびBのなかの一種以上を含有させることができる。ただし、添加量が多すぎると、導電率が低下して80%IACSを下回ったり、製造性が悪化したりするので、添加量は総量で0.2質量%以下、より好ましくは0.1質量%以下、さらに好ましくは0.05質量%以下に制限される。また、添加による効果を得るためには、添加量を総量で0.001質量%以上にすることが好ましい。
(ばね限界値)
製品のばね限界値をKb(MPa)、0.2%耐力をσ(MPa)としたときに、Kb≧(σ−100)の関係に、より好ましくは、Kb≧(σ−50)の関係に調整することで、応力緩和特性が向上する。Kb<(σ−100)の場合は、応力緩和率が50%を超える。Kbの上限値は特に規制されないが、通常はσを超える値になることは少ない。
(圧延面の結晶方位)
製品の圧延面において、I(111)/I(311)を5.0以下、好ましくは2.0以下に調整することにより、応力緩和特性が向上する。ここで、I(111)およびI(311)はそれぞれX線回折法を用い厚み方向に求めた(111)面および(311)面の回折積分強度である。I(111)/I(311)が5.0を超えると、応力緩和率が50%を超える。I(111)/I(311)の下限値は応力緩和特性改善の点からは制限されないものの、I(111)/I(311)は典型的には0.01以上の値をとり、さらに典型的には0.2以上の値をとる。
(酸素濃度)
製品の酸素濃度を20質量ppm以下、好ましくは10質量ppm以下に調整することにより、応力緩和特性が向上する。これは、酸素がSnを酸化物として析出させること等により、Snの応力緩和改善効果を阻害するためである。酸素濃度が20質量ppmを超える場合、応力緩和率が50%を超える。
(厚み)
製品の厚みは0.1〜2.0mmであることが好ましい。厚みが薄すぎると、通電部断面積が小さくなり通電時の発熱が増加するため、大電流を流すコネクタ等の素材として不適であり、また、わずかな外力で変形するようになるため放熱板等の素材としても不適である。一方で、厚みが厚すぎると、曲げ加工が困難になる。このような観点から、より好ましい厚みは0.2〜1.5mmである。厚みが上記範囲となることにより、通電時の発熱を抑えつつ、曲げ加工を良好なものとすることができる。
(用途)
本発明の実施の形態に係る銅合金板は、電機・電子機器、自動車等で用いられる端子、コネクタ、リレー、スイッチ、ソケット、バスバー、リードフレーム、放熱板等の電子部品の用途に好適に使用することができ、特に、電気自動車、ハイブリッド自動車等で用いられる大電流用コネクタや端子等の大電流用電子部品の用途、又はスマートフォンやタブレットPCで用いられる液晶フレーム等の放熱用電子部品の用途に有用である。
(製造方法)
純銅原料として電気銅等を溶解し、カーボン脱酸等により酸素濃度を調整した後、Snおよび必要に応じ他の合金元素を添加し、厚み30〜300mm程度のインゴットに鋳造する。このインゴットを例えば800〜1000℃の熱間圧延により厚み3〜30mm程度の板とした後、冷間圧延と再結晶焼鈍とを繰り返し、最終の冷間圧延で所定の製品厚みに仕上げ、最後に歪取り焼鈍を施す。最終冷間圧延後のばね限界値は、100MPaに満たないほど低いが、その後の歪取焼鈍により上昇する。
最終冷間圧延前の再結晶焼鈍において、銅合金板の平均結晶粒径を2〜50μmに調整する。平均結晶粒径が小さすぎると、I(111)/I(311)を5.0以下に調整することが難しくなる。一方で、平均結晶粒径が大きすぎると、0.2%耐力を330MPa以上に調整することが難しくなる。
最終冷間圧延前の再結晶焼鈍は、炉内温度を350〜800℃にして実施され、バッチ炉を用いてもよいし、連続焼鈍炉を用いてもよい。バッチ炉では350〜600℃の炉内温度において30分から30時間の範囲で加熱時間を適宜調整することにより、また、連続焼鈍炉では450〜800℃の炉内温度において5秒から10分の範囲で加熱時間を適宜調整することにより、平均結晶粒径を2〜50μmに調整できる。
最終冷間圧延では、一対の圧延ロール間に材料を繰り返し通過させ、目標の板厚に仕上げてゆく。最終冷間圧延の総加工度と1パスあたりの加工度を制御する。
総加工度R(%)は、R=(t0−t)/t0×100(t0:最終冷間圧延前の板厚、t:最終冷間圧延後の板厚)で与えられる。また、1パスあたりの加工度r(%)とは、圧延ロールを1回通過したときの板厚減少率であり、r=(T0−T)/T0×100(T0:圧延ロール通過前の厚み、T:圧延ロール通過後の厚み)で与えられる。
総加工度Rは25〜99%とする。Rが小さすぎると、0.2%耐力を330MPa以上に調整することが難しくなる。Rが大きすぎると、圧延材のエッジが割れることがある。
1パスあたりの加工度rは20%以下とする。rが大きすぎるとI(111)/I(311)が増加し、全パスの中にrが20%を超えるパスが一つでも含まれるとI(111)/I(311)を5.0以下に調整することが難しくなる。
本発明の歪取焼鈍は連続焼鈍炉を用いて行う。バッチ炉の場合、コイル状に巻き取った状態で材料を加熱するため、加熱中に材料が塑性変形を起こし材料に反りが生じる。したがって、バッチ炉は本発明の歪取焼鈍に不適である。
連続焼鈍炉において、炉内温度を300〜700℃とし、5秒から10分の範囲で加熱時間を適宜調整し、歪取焼鈍後の0.2%耐力(σ)を歪取焼鈍前の0.2%耐力(σ0)に対し10〜50MPa低い値、好ましくは15〜45MPa低い値に調整する。これにより、最終冷間圧延上がりにおいて低かったKbが充分に上昇する。(σ0−σ)が小さすぎても大きすぎても、Kbが充分に上昇せず、前記Kb≧(σ−100)の関係を得ることが難しくなる。
さらに、連続焼鈍炉内において材料に付加される張力を1〜5MPa、より好ましくは1〜4MPaに調整する。張力が大きすぎると、I(111)/I(311)を5.0以下に調整することが難しくなる。また、Kbの上昇が充分ではなくなる傾向にある。一方、張力が小さすぎると、焼鈍炉を通板中の材料が炉壁と接触し、材料の表面やエッジに傷が付くことがある。
本発明は、Kb≧(σ−100)なる特徴およびI(111)/I(311)≦5.0なる特徴をCu−Sn合金に付与することにより、応力緩和特性を改善することを一つの特徴としているが、そのための製造条件を整理して示すと、
(1)Kb≧σ−100のためには、
a.歪取焼鈍において、(σ0−σ)=10〜50MPaに調整する。
b.歪取焼鈍における炉内張力を5MPa以下に調整する。
(2)I(111)/I(311)≦5.0のためには、
a.最終冷間圧延前の再結晶焼鈍において、平均結晶粒径を2μm以上に調整する。
b.最終冷間圧延において、1パスあたりの加工度を20%以下に調整する。
c.歪取焼鈍における炉内張力を5MPa以下に調整する。
以下に本発明の実施例を比較例と共に示すが、これらの実施例は本発明及びその利点をよりよく理解するために提供するものであり、発明が限定されることを意図するものではない。
カーボン脱酸により酸素濃度を調整した溶銅に合金元素を添加した後、厚みが200mmのインゴットに鋳造した。インゴットを850℃で3時間加熱し、熱間圧延により厚み20mmの板にした。熱間圧延板表面の酸化スケールをグラインダーで研削、除去した後、焼鈍と冷間圧延を繰り返し、最終の冷間圧延で所定の製品厚みに仕上げた。最後に連続焼鈍炉を用い歪取り焼鈍を行った。
最終冷間圧延前の焼鈍(最終再結晶焼鈍)は、焼鈍時の厚みが2mmを超える場合はバッチ炉を、厚みが2mm以下の場合は連続焼鈍炉を用いて行った。バッチ炉の場合は加熱時間を5時間とし炉内温度を300〜700℃の範囲で調整し、焼鈍後の結晶粒径を変化させた。連続焼鈍炉の場合は炉内温度を700℃とし加熱時間を1秒から15分の間で適宜調整し、焼鈍後の結晶粒径を変化させた。焼鈍後の結晶粒径の測定においては、圧延方向に直角な断面を鏡面研磨後に化学腐食し、切断法(JIS H0501(1999年))により平均結晶粒径を求めた。
最終冷間圧延では、総加工度および1パスあたりの加工度を制御した。また、最終冷間圧延後の材料の0.2%耐力を求めた。
連続焼鈍炉を用いた歪取り焼鈍では、炉内温度を500℃とし加熱時間を1秒から15分の間で調整し、焼鈍後の0.2%耐力を種々変化させた。また、炉内において材料に付加する張力を種々変化させた。なお、一部の例では歪取り焼鈍を行わなかった。
製造途中の材料および歪取焼鈍後の材料につき、次の測定を行った。
(成分)
歪取焼鈍後の材料の酸素濃度を不活性ガス溶融−赤外線吸収法で、合金元素濃度をICP−質量分析法で分析した。
(0.2%耐力)
最終冷間圧延後および歪取焼鈍後の材料につき、JIS Z2241に規定する13B号試験片を引張方向が圧延方向と平行になるように採取し、JIS Z2241に準拠して圧延方向と平行に引張試験を行い、0.2%耐力を求めた。
(ばね限界値)
歪取焼鈍後の材料から、幅10mm、長さ100mmの短冊形状の試験片を、試験片の長手方向が圧延方向と平行になるように採取し、JIS H3130に規定されているモーメント式試験により圧延方向と平行な方向のばね限界値を測定した。
(導電率)
歪取焼鈍後の材料から、試験片の長手方向が圧延方向と平行になるように試験片を採取し、JIS H0505に準拠し四端子法により20℃での導電率を測定した。
(結晶方位)
歪取焼鈍後の材料の表面に対し、厚み方向に(111)面および(311)面のX線回折積分強度を測定した。X線回折装置には(株)リガク製RINT2500を使用し、Cu管球にて、管電圧25kV、管電流20mAで測定を行った。
(応力緩和率)
歪取焼鈍後の材料から、幅10mm、長さ100mmの短冊形状の試験片を、試験片の長手方向が圧延方向と平行になるように採取した。図1のように、l=50mmの位置を作用点として、試験片にy0のたわみを与え、圧延方向の0.2%耐力の80%に相当する応力(s)を負荷した。y0は次式により求めた。
0=(2/3)・l2・s / (E・t)
ここで、Eは圧延方向のヤング率であり、tは試料の厚みである。150℃にて1000時間加熱後に除荷し、図2のように永久変形量(高さ)yを測定し、応力緩和率{[y(mm)/y0(mm)]×100(%)}を算出した。
表1に評価結果を示す。ここで、最終冷間圧延では複数のパスを実施したが、これら各パスの加工度の中での最大値を示してある。
Sn濃度を0.005〜0.25%、O濃度を20質量ppm以下に調整し、最終冷間圧延前の再結晶焼鈍において、結晶粒径を2〜50μmに調整し、最終冷間圧延において、総加工度を25〜99%に、1パスあたりの加工度を20%以下に調整し、歪取焼鈍において、材料を連続焼鈍炉に張力1〜5MPaで通板して0.2%耐力を10〜50MPa低下させた、本発明の銅合金板では、Kb≧(σ−100)なる関係およびI(111)/I(311)≦5.0なる関係が得られ、80%IACS以上の導電率、330MPa以上の0.2%耐力、50%以下の応力緩和率を達成できた。
比較例3は歪取焼鈍を行わなかったものであり、応力緩和率が極めて大きい。
比較例1、2では、歪取焼鈍を行ったものの、炉内での材料張力が5MPaを超えたため、I(111)/I(311)が5.0を超え、特に張力が高かった比較例2では(σ−Kb)も100を超えた。比較例1、2の応力緩和率は50%を超えた。
比較例5、6では、歪取焼鈍における0.2%耐力の低下量がそれぞれ過小および過大であり、(σ0−σ)が10〜50MPaの範囲から外れた。このため(σ−Kb)が100を超え、応力緩和率が50%を超えた。
比較例4では、最終冷間圧延における1パス当たりの加工度が20%を超えたため、I(111)/I(311)が5.0を超え、応力緩和率が50%を超えた。
比較例10では、最終冷間圧延における総加工度が25%に満たなかったため、歪取焼鈍後の0.2%耐力が330MPaに満たなかった。
比較例7では、最終冷間圧延前の再結晶焼鈍上がりの結晶粒径が2μmに満たなかったため、I(111)/I(311)が5.0を超え、応力緩和率が50%を超えた。
比較例8では、最終冷間圧延前の再結晶焼鈍上がりの結晶粒径が50μmを超えたため、歪取焼鈍後の0.2%耐力が330MPaに満たなかった。
比較例9では、Sn濃度が0.005質量%未満だったため、歪取焼鈍後の0.2%耐力が330MPaに満たなかった。
比較例11では、Sn濃度が0.25質量%を超えたため、導電率が80%IACSに満たなかった。
比較例12では、酸素(O)濃度が20質量ppmを超えたため、応力緩和率が50%を超えた。
Figure 0005892974

Claims (8)

  1. Snを0.005〜0.25質量%含有し、残部が銅およびその不可避的不純物から成り、80%IACS以上の導電率、および330MPa以上の0.2%耐力を有し、かつ、0.2%耐力の80%の応力を付加し150℃で1000時間保持後の応力緩和率が50%以下であることを特徴とする、銅合金板。
  2. ばね限界値Kb(MPa)と、0.2%耐力σ(MPa)との関係が、Kb≧(σ−100)で与えられることを特徴とする、請求項1に記載の銅合金板。
  3. X線回折法を用い圧延面において厚み方向に求めた(111)面および(311)面の回折積分強度をそれぞれI(111)およびI(311)としたときに、I(111)/I(311)が5.0以下であることを特徴とする請求項1または2に記載の銅合金板。
  4. 酸素が20質量ppm以下であることを特徴とする、請求項1〜3の何れか1項に記載の銅合金板。
  5. Ag、Fe、Co、Ni、Cr、Mn、Zn、Mg、Si、PおよびBのなかの一種以上を0.2質量%以下含有することを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載の銅合金板。
  6. 請求項1〜5の何れか1項に記載の銅合金板を用いた高電流用電子部品。
  7. 請求項1〜5の何れか1項に記載の銅合金板を用いた放熱用電子部品。
  8. インゴットを、800〜1000℃で厚み3〜30mmまで熱間圧延した後、冷間圧延と再結晶焼鈍とを繰り返し、最終の冷間圧延の後、歪取焼鈍を施す銅合金板の製造工程であって、
    (A)該最終冷間圧延前の再結晶焼鈍において、炉内温度を350〜800℃として、銅合金板の平均結晶粒径を2〜50μmに調整し、
    (B)該最終冷間圧延において、総加工度を25〜99%、1パスあたりの圧延加工度を20%以下とし、
    (C)該歪取焼鈍において、連続焼鈍炉を用い、炉内温度を300〜700℃、炉内で銅合金板に付加される張力を1〜5MPaとして、銅合金板を通板し、0.2%耐力を10〜50MPa低下させる、
    ことを特徴とする、請求項1〜5の何れか1項に記載の銅合金板の製造方法。
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