JP5620025B2 - 導電性及び応力緩和特性に優れる銅合金板 - Google Patents

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Description

本発明は銅合金板及び通電用又は放熱用電子部品に関し、特に、電機・電子機器、自動車等に搭載される端子、コネクタ、リレー、スイッチ、ソケット、バスバー、リードフレーム、放熱板等の電子部品の素材として使用される銅合金板、及び該銅合金板を用いた電子部品に関する。中でも、電気自動車、ハイブリッド自動車等で用いられる大電流用コネクタや端子等の大電流用電子部品の用途、又はスマートフォンやタブレットPCで用いられる液晶フレーム等の放熱用電子部品の用途に好適な銅合金板及び該銅合金板を用いた電子部品に関するものである。
自動車や電機・電子機器等には、端子、コネクタ、スイッチ、ソケット、リレー、バスバー、リードフレーム、放熱板等の電気又は熱を伝えるための部品が組み込まれており、これら部品には銅合金が用いられている。ここで、電気伝導性と熱伝導性は比例関係にある。
近年、電子部品の小型化に伴い、通電部における銅合金の断面積が小さくなる傾向にある。断面積が小さくなると、通電した際の銅合金からの発熱が増大する。また、成長著しい電気自動車やハイブリッド電気自動車で用いられる電子部品には、バッテリー部のコネクタ等の著しく高い電流が流される部品があり、通電時の銅合金の発熱が問題になっている。発熱が過大になると、銅合金は高温環境に晒されることになる。
コネクタ等の電子部品の電気接点では、銅合金板にたわみが与えられ、このたわみで発生する応力により、接点での接触力を得ている。たわみを与えた銅合金を高温下で長時間保持すると、応力緩和現象により、応力すなわち接触力が低下し、接触電気抵抗の増大を招く。この問題に対処するため銅合金には、発熱量が減ずるよう導電性により優れることが求められ、また発熱しても接触力が低下しないよう応力緩和特性により優れることも求められている。
一方、例えばスマートフォンやタブレットPCの液晶には液晶フレームと呼ばれる放熱部品が用いられている。このような放熱用途の銅合金板においても、応力緩和特性を高めると、外力による放熱板のクリープ変形が抑制され、放熱板周りに配置される液晶部品、ICチップ等に対する保護性が改善される等の効果を期待できる。このため、放熱用途の銅合金板においても、応力緩和特性に優れることが望まれている。
CuにZrやTiを添加すると応力緩和特性が向上することが知られていている(例えば、特許文献1参照)。導電率が高く比較的高い強度と良好な応力緩和特性を有する材料としては、例えばC15100(0.1質量%Zr−残Cu)、C15150(0.02質量%Zr−残Cu)、C18140(0.1質量%Zr−0.3質量%Cr−0.02質量%Si−残Cu)、C18145(0.1質量%Zr−0.2質量%Cr−0.2質量%Zn−残Cu)、C18070(0.1質量%Ti−0.3質量%Cr−0.02質量%Si−残Cu)、C18080(0.06質量%Ti−0.5質量%Cr−0.1質量%Ag−0.08質量%Fe−0.06質量%Si−残Cu)等の合金が、CDA(Copper Development Association)に登録されている。
特開2011−117055号公報
しかしながら、CuにZrまたはTiを添加した銅合金(以下、Cu−Zr−Ti系合金とする)は、比較的良好な応力緩和特性を有するとはいうものの、その応力緩和特性のレベルは大電流を通電する部品又は大熱量を放散する部品の用途として必ずしも十分とはいえなかった。例えば、特許文献1が開示する銅合金板は、0.05〜0.3質量%のZrを添加するとともに、Mg、Ti、Zn、Ga、Y、Nb、Mo、Ag、In、Snの中の一種以上を0.01〜0.3質量%添加し、さらに中間焼鈍後の結晶粒径を20〜100μmに調整することにより、応力緩和特性を改善したものであるが、実施例における150℃で1000時間保持後の応力緩和率は最低でも17.2%である。
そこで、本発明は、高強度、高導電性および優れた応力緩和特性を兼ね備えた銅合金板を提供することを目的とし、具体的には、応力緩和特性が改善されたCu−Zr−Ti系合金を提供することを課題とする。さらには、本発明は、該銅合金の製造方法及び大電流用途又は放熱用途に好適な電子部品を提供することをも目的とする。
上記課題を解決するために鋭意検討した結果、本発明者は、応力緩和特性を向上させる元素を適量銅合金板中に含有させることにより、高強度、高導電性および優れた応力緩和特性を兼ね備えた銅合金板が得られることを見出した。
以上の知見を基礎として完成した本発明は一側面において、Zrを0.02〜0.50質量%含有し、残部が銅およびその不可避的不純物から成り、70%IACS以上の導電率、および330MPa以上の0.2%耐力を有し、ばね限界値Kb(MPa)と、0.2%耐力σ(MPa)との関係が、Kb≧(σ−100)で与えられ、X線回折法を用い圧延面において厚み方向に求めた(111)面および(311)面の回折積分強度をそれぞれI (111) およびI (311) としたときに、I (111) /I (311) が5.0以下である銅合金板である。
本発明に係る銅合金板は一実施態様において、Ag、Fe、Co、Ni、Cr、Mn、Zn、Mg、Si、P、SnおよびBのうちの一種以上を合計で1.0質量%以下含有する。
本発明によれば、高強度、高導電性および優れた応力緩和特性を兼ね備えた銅合金板及びその製造方法、並びに大電流用途又は放熱用途に好適な電子部品を提供することが可能である。この銅合金は、端子、コネクタ、スイッチ、ソケット、リレー、バスバー、リードフレーム等の電子部品の素材として好適に使用することができ、特に大電流を通電する電子部品の素材又は大熱量を放散する電子部品の素材として有用である。
応力緩和率の測定原理を説明する図である。 応力緩和率の測定原理を説明する図である。
(特性)
本発明の実施の形態に係る銅合金板は、70%IACS以上の導電率を有し、且つ330MPa以上の0.2%耐力を有する。導電率が70%IACS以上であれば、通電時の発熱量が純銅と同等といえる。また、0.2%耐力が330MPa以上であれば、大電流を通電する部品の素材又は大熱量を放散する部品の素材として必要な強度を有しているといえる。
本発明の実施の形態に係る銅合金板の応力緩和特性については、0.2%耐力の80%の応力を付加し、150℃で1000時間保持した時の銅合金板の応力緩和率が15%以下であり、より好ましくは10%以下である。通常のCu−Zr−Ti系合金の応力緩和率は25〜35%程度であるが、これを15%以下にすることで、コネクタに加工した後に大電流を通電しても接触力低下に伴う接触電気抵抗の増加が生じ難くなり、また、放熱板に加工した後に熱と外力が同時に加わってもクリープ変形が生じ難くなる。
(合金成分濃度)
本発明の実施の形態に係る銅合金板は、Zr及びTiのうちの一種又は二種を合計で0.01〜0.50質量%、より好ましくは0.02〜0.20質量%含有する。これにより、通常のCu−Zr−Ti系合金に比べて強度及び応力緩和特性が改善される。Zr及びTiのうちの一種又は二種の合計が0.01質量%未満になると、330MPa以上の0.2%耐力および15%以下の応力緩和率を得ることが難しくなる。Zr及びTiのうちの一種又は二種の合計が0.5質量%を超えると、熱間圧延割れ等により合金の製造が困難になる。Zrを添加する場合にはその添加量を0.01〜0.45質量%に調整することが好ましく、Tiを添加する場合にはその添加量を0.01〜0.20質量%に調整することが好ましい。添加量が下限値を下回ると応力緩和特性の改善効果が得られにくく、添加量が上限値を超えると導電率や製造性の悪化を招くことがある。
Cu−Zr−Ti系合金には、強度や耐熱性を改善するために、Ag、Fe、Co、Ni、Cr、Mn、Zn、Mg、Si、P、SnおよびBのうちの一種以上を含有させることができる。ただし、添加量が多すぎると、導電率が低下して70%IACSを下回ったり、合金の製造性が悪化したりする場合があるので、添加量は総量で1.0質量%以下、より好ましくは0.5質量%以下とする。また、添加による効果を得るためには、添加量を総量で0.001質量%以上にすることが好ましい。
(ばね限界値)
ばね限界値を指標に金属組織を調整することにより、銅合金板の応力緩和特性が改善される。本発明に係る銅合金板においては、製品のばね限界値をKb(MPa)、0.2%耐力をσ(MPa)としたときに、Kb≧(σ−100)の関係に、より好ましくは、Kb≧(σ−50)の関係に調整することで、応力緩和特性が向上する。Kb<(σ−100)の場合は、応力緩和率が15%を超える。Kbの上限値は特に規制されないが、通常はσを超える値になることはない。
(圧延面の結晶方位)
圧延面に配向する結晶粒の方位を制御することで、銅合金板の応力緩和特性がより改善される。本発明に係る銅合金板においては、製品の圧延面において、I(111)/I(311)を5.0以下、好ましくは2.0以下に調整することにより、応力緩和特性が向上する。ここで、I(111)およびI(311)はそれぞれX線回折法を用いて銅合金板の厚み方向に求めた(111)面および(311)面の回折積分強度である。I(111)/I(311)が5.0を超えると、応力緩和率が15%を超える。I(111)/I(311)の下限値は応力緩和特性改善の点からは制限されないものの、I(111)/I(311)は典型的には0.01以上の値をとる。
(厚み)
製品の厚みは0.1〜2.0mmであることが好ましい。厚みが薄すぎると、通電部断面積が小さくなり通電時の発熱が増加するため大電流を流すコネクタ等の素材として不適であり、また、わずかな外力で変形するようになるため放熱板等の素材としても不適である。一方で、厚みが厚すぎると、曲げ加工が困難になる。このような観点から、より好ましい厚みは0.2〜1.5mmである。厚みが上記範囲となることにより、通電時の発熱を抑えつつ、曲げ加工性を良好なものとすることができる。
(用途)
本発明の実施の形態に係る銅合金板は、端子、コネクタ、リレー、スイッチ、ソケット、バスバー、リードフレーム、放熱板等の電子部品の用途に好適に使用することができ、特に、電気自動車、ハイブリッド自動車等で用いられる大電流用コネクタや端子等の大電流用電子部品の用途、又はスマートフォンやタブレットPCで用いられる液晶フレーム等の放熱用電子部品の用途に有用である。
(製造方法)
純銅原料として電気銅等を溶解し、カーボン脱酸等により酸素濃度を低減した後、Zr及びTiのうちの一種又は二種と、必要に応じて他の合金元素を添加し、厚み30〜300mm程度のインゴットに鋳造する。このインゴットを例えば800〜1000℃の熱間圧延により厚み3〜30mm程度の板とした後、冷間圧延と再結晶焼鈍とを繰り返し、最終の冷間圧延で所定の製品厚みに仕上げ、最後に歪取り焼鈍を施す。最終冷間圧延後のばね限界値は、100MPaに満たないほど低いが、その後の歪取焼鈍により上昇する。
再結晶焼鈍では、圧延組織の一部または全てを再結晶化させる。また、適当な条件で焼鈍することにより、Zr、Ti等が析出し、合金の導電率が上昇する。最終冷間圧延前の再結晶焼鈍では、銅合金板の平均結晶粒径を50μm以下に調整する。平均結晶粒径が大きすぎると、製品の0.2%耐力を330MPa以上に調整することが難しくなる。
最終冷間圧延前の再結晶焼鈍の条件は、目標とする焼鈍後の結晶粒径および目標とする製品の導電率に基づき決定する。具体的には、バッチ炉または連続焼鈍炉を用い、炉内温度を350〜800℃として焼鈍を行えばよい。バッチ炉では350〜600℃の炉内温度において30分から30時間の範囲で加熱時間を適宜調整すればよい。連続焼鈍炉では450〜800℃の炉内温度において5秒から10分の範囲で加熱時間を適宜調整すればよい。一般的にはより低温でより長時間の条件で焼鈍を行うと、同じ結晶粒径でより高い導電率が得られる。
最終冷間圧延では、一対の圧延ロール間に材料を繰り返し通過させ、目標の板厚に仕上げてゆく。最終冷間圧延の総加工度と1パスあたりの加工度を制御する。
総加工度R(%)は、R=(t0−t)/t0×100(t0:最終冷間圧延前の板厚、t:最終冷間圧延後の板厚)で与えられる。また、1パスあたりの加工度r(%)とは、圧延ロールを1回通過したときの板厚減少率であり、r=(T0−T)/T0×100(T0:圧延ロール通過前の厚み、T:圧延ロール通過後の厚み)で与えられる。
総加工度Rは25〜99%とするのが好ましい。Rが小さすぎると、0.2%耐力を330MPa以上に調整することが難しくなる。Rが大きすぎると、圧延材のエッジが割れることがある。
1パスあたりの加工度rは20%以下とすることが好ましい。rが大きすぎるとI(111)/I(311)が増加し、全パスの中にrが20%を超えるパスが一つでも含まれるとI(111)/I(311)を5.0以下に調整することが難しくなる。
本発明の歪取焼鈍は連続焼鈍炉を用いて行う。バッチ炉の場合、コイル状に巻き取った状態で材料を加熱するため、加熱中に材料が変形を起こし材料に反りが生じる。したがって、バッチ炉は本発明の歪取焼鈍に不適である。
連続焼鈍炉において、炉内温度を300〜700℃とし、5秒から10分の範囲で加熱時間を適宜調整し、歪取焼鈍後の0.2%耐力(σ)を歪取焼鈍前の0.2%耐力(σ0)に対し10〜50MPa低い値、好ましくは15〜45MPa低い値に調整する。これにより、最終冷間圧延上がりにおいて低かったKbが充分に上昇する。(σ0−σ)が小さすぎても大きすぎても、Kbが充分に上昇せず、Kb≧(σ−100)の関係を得ることが難しくなる。
歪取焼鈍においては、連続焼鈍炉内において材料に付加される張力を1〜5MPa、より好ましくは1〜4MPaに調整する。張力が大きすぎると、I(111)/I(311)を5.0以下に調整することが難しくなる。また、Kbの上昇が充分ではなくなる傾向にある。一方、張力が小さすぎると、焼鈍炉を通板中の材料が炉壁と接触し、材料の表面やエッジに傷が付くことがある。
本発明に係る銅合金板によれば、Kb≧(σ−100)なる特徴およびI(111)/I(311)≦5.0なる特徴をCu−Zr−Ti系合金に付与することにより、応力緩和特性を改善することを一つの特徴としているが、そのための製造条件を整理して示すと、
(1)Kb≧σ−100のためには、
a.歪取焼鈍において、(σ0−σ)=10〜50MPaに調整する、
b.歪取焼鈍における炉内張力を5MPa以下に調整する、
(2)I(111)/I(311)≦5.0のためには、
a.最終冷間圧延において、1パスあたりの加工度を20%以下に調整する、
b.歪取焼鈍における炉内張力を5MPa以下に調整する、
ことが好ましい。
以下に本発明の実施例を比較例と共に示すが、これらの実施例は本発明及びその利点をよりよく理解するために提供するものであり、発明が限定されることを意図するものではない。
溶銅に合金元素を添加した後、厚みが200mmのインゴットに鋳造した。インゴットを950℃で3時間加熱し、熱間圧延により厚み15mmの板にした。熱間圧延板表面の酸化スケールをグラインダーで研削、除去した後、焼鈍と冷間圧延を繰り返し、最終の冷間圧延で所定の製品厚みに仕上げた。最後に連続焼鈍炉を用い歪取焼鈍を行った。
最終冷間圧延前の焼鈍(最終再結晶焼鈍)は、バッチ炉を用い、加熱時間を5時間とし炉内温度を350〜700℃の範囲で調整し、焼鈍後の結晶粒径と導電率を変化させた。焼鈍後の結晶粒径の測定においては、圧延方向に直角な断面を鏡面研磨後に化学腐食し、切断法(JIS H0501(1999年))により平均結晶粒径を求めた。
最終冷間圧延では、総加工度および1パスあたりの加工度を制御した。また、最終冷間圧延後の材料の0.2%耐力を求めた。連続焼鈍炉を用いた歪取り焼鈍では、炉内温度を500℃とし加熱時間を1秒から15分の間で調整し、焼鈍後の0.2%耐力を種々変化させた。また、炉内において材料に付加する張力を種々変化させた。なお、一部の例では歪取り焼鈍を行わなかった。
製造途中の材料および歪取焼鈍後の材料につき、次の測定を行った。
(成分)
歪取焼鈍後の材料の合金元素濃度をICP−質量分析法で分析した。
(0.2%耐力)
最終冷間圧延後および歪取焼鈍後の材料につき、JIS Z2241に規定する13B号試験片を引張方向が圧延方向と平行になるように採取し、JIS Z2241に準拠して圧延方向と平行に引張試験を行い、0.2%耐力を求めた。
(ばね限界値)
歪取焼鈍後の材料から、幅10mm、長さ100mmの短冊形状の試験片を、試験片の長手方向が圧延方向と平行になるように採取し、JIS H3130に規定されているモーメント式試験により圧延方向と平行な方向のばね限界値を測定した。
(導電率)
歪取焼鈍後の材料から、試験片の長手方向が圧延方向と平行になるように試験片を採取し、JIS H0505に準拠し四端子法により20℃での導電率を測定した。
(結晶方位)
歪取焼鈍後の材料の表面に対し、厚み方向に(111)面および(311)面のX線回折積分強度を測定した。X線回折装置には(株)リガク製RINT2500を使用し、Cu管球にて、管電圧25kV、管電流20mAで測定を行った。
(応力緩和率)
歪取焼鈍後の材料から、幅10mm、長さ100mmの短冊形状の試験片を、試験片の長手方向が圧延方向と平行になるように採取した。図1のように、l=50mmの位置を作用点として、試験片にy0のたわみを与え、圧延方向の0.2%耐力(JIS Z2241に準拠して測定)の80%に相当する応力(s)を負荷した。y0は次式により求めた。
0=(2/3)・l2・s / (E・t)
ここで、Eは圧延方向のヤング率であり、tは試料の厚みである。150℃にて1000時間加熱後に除荷し、図2のように永久変形量(高さ)yを測定し、応力緩和率{[y(mm)/y0(mm)]×100(%)}を算出した。
表1に評価結果を示す。最終冷間圧延では複数のパスを実施したが、これら各パスの加工度の中での最大値を示した。表1の最終再結晶焼鈍後の結晶粒径における「<10μm」の表記は、圧延組織の全てが再結晶化しその平均結晶粒径が10μm未満であった場合、および圧延組織の一部のみが再結晶化した場合の双方を含んでいる。
発明例1〜5、10、11、14〜19、22〜25の銅合金板では、Zrを0.01〜0.50質量%に調整し、最終冷間圧延前の再結晶焼鈍において、結晶粒径を50μm以下に調整し、最終冷間圧延において、総加工度を25〜99%に、1パスあたりの加工度を20%以下に調整し、歪取焼鈍において、材料を連続焼鈍炉に張力1〜5MPaで通板して0.2%耐力を10〜50MPa低下させた。
発明例1〜5、10、11、14〜19、22〜25の銅合金板では、いずれもZrの添加量が適正であり、70%IACS以上の導電率、330MPa以上の0.2%耐力、15%以下の応力緩和率を達成できている。また、発明例1〜5、10、11、14〜19、22〜25の銅合金板では、いずれもKb≧(σ−100)なる関係およびI(111)/I(311)≦5.0なる関係が得られていることが分かる。
比較例1は歪取焼鈍を行わなかったものであり、応力緩和率が30%を超えた。
比較例2〜4では、歪取焼鈍を行ったものの、炉内での材料張力が5MPaを超えたため、I(111)/I(311)が5.0を超え、特に張力が高かった比較例3では(σ−Kb)も100を超えた。比較例2〜4の応力緩和率は15%を超えた。
比較例5、6では、最終冷間圧延における1パス当たりの加工度が20%を超えたため、I(111)/I(311)が5.0を超え、応力緩和率が15%を超えた。
比較例7、8では歪取焼鈍における0.2%耐力の低下量が過小であり、比較例9、10では歪取焼鈍における0.2%耐力の低下量が過大であった。このため比較例7〜10での(σ0−σ)は、10〜50MPaの範囲から外れた。その結果、(σ−Kb)が100を超え、応力緩和率が15%を超えた。
比較例11では最終冷間圧延における総加工度が25%に満たなかったため、また比較例12では最終冷間圧延前の再結晶焼鈍上がりの結晶粒径が50μmを超えたため、歪取焼鈍後の0.2%耐力が330MPaに満たなかった。
比較例13では、ZrとTiの合計濃度が0.01質量%未満だったため、歪取焼鈍後の0.2%耐力が330MPa未満となり、応力緩和率が15%を超えた。
Figure 0005620025

Claims (3)

  1. Zrを0.02〜0.50質量%含有し、残部が銅およびその不可避的不純物から成り、70%IACS以上の導電率、および330MPa以上の0.2%耐力を有し、ばね限界値Kb(MPa)と、0.2%耐力σ(MPa)との関係が、Kb≧(σ−100)で与えられ、X線回折法を用い圧延面において厚み方向に求めた(111)面および(311)面の回折積分強度をそれぞれI (111) およびI (311) としたときに、I (111) /I (311) が5.0以下であることを特徴とする、銅合金板。
  2. 厚みが0.1〜2.0mmであり、150℃で1000時間保持後の応力緩和率が15%以下である請求項1に記載の銅合金板。
  3. Ag、Fe、Co、Ni、Cr、Mn、Zn、Mg、Si、P、SnおよびBのうちの一種以上を合計で1.0質量%以下含有する請求項1又は2に記載の銅合金板。
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