以下、本発明を適用した熱輸送装置及び熱輸送方法について、図面を参照して詳細に説明する。
本発明を適用した熱輸送装置及び熱輸送方法は、亜酸化窒素(N2O、一酸化二窒素とも言う。)の分解により発生するエネルギーを利用することによって、地球環境に優しいエネルギーとしての亜酸化窒素の利用を可能としたものである。
亜酸化窒素は、常温、大気圧下で安定したガスである。一方、その温度が約500℃以上になると、発熱しながら自己分解(熱分解)する。このように亜酸化窒素の分解は、発熱を伴ったもの(発熱反応)である。そして、この分解に伴う温度上昇(分解熱)によって高温化した亜酸化窒素の分解ガスは約1600℃にもなることから、亜酸化窒素は高いエネルギーを内蔵した物質と言える。
また、亜酸化窒素は、触媒を用いて分解したときに、その分解開始温度を例えば350〜400℃程度に引き下げることができる。そして、亜酸化窒素の分解後は、この亜酸化窒素の分解により発生する分解熱によって、その後に供給される亜酸化窒素の分解を継続的に行わせることが可能である。また、触媒を用いて分解された亜酸化窒素は、発熱しながら窒素(N2)と酸素(O2)との混合ガス(分解ガス)となる。
本発明者らは、このような知見に基づいて、亜酸化窒素の分解により発生するエネルギーを利用することで、上述した地球環境に優しいエネルギーとしての亜酸化窒素の利用が可能であることを見出し、更に鋭意研究を重ねた結果、本発明を完成するに至ったものである。
以下、本発明の実施形態として図1及び図2に示す熱輸送装置及びこれを用いた熱輸送方法について説明する。
図1は、本発明を適用した分解ガスボイラー1を備える熱輸送装置の構成を示す概略系統図である。この熱輸送装置は、亜酸化窒素(N2O)の分解により発生する分解熱を利用して熱輸送を行うものである。
具体的に、この図1に示す熱輸送装置は、亜酸化窒素の分解により発生した分解ガス(N2,O2)からの熱回収により蒸気を発生させる分解ガスボイラー1と、分解ガスボイラー1で発生した蒸気により回転駆動される蒸気タービン2と、蒸気タービン2の駆動により熱輸送を行う圧縮式のヒートポンプ80と、蒸気タービン2からの蒸気を冷却して復水する復水器4と、復水器4からの復水を分解ガスボイラー1に給水する給水ポンプ5とを概略備えている。
また、本発明を適用した分解ガスボイラー1は、亜酸化窒素を分解する分解反応部6と、亜酸化窒素を分解することで得られる分解ガスとの熱交換により蒸気を発生させる蒸気発生部7とを備えている。
一方、図2は、本発明を適用した分解ガスタービン11を備える熱輸送装置の構成を示す概略系統図である。この熱輸送装置は、亜酸化窒素(N2O)の分解により発生する分解ガス(N2,O2)を利用して熱輸送を行うものである。
具体的に、この図2に示す熱輸送装置は、亜酸化窒素の分解により発生した分解ガスにより回転駆動される分解ガスタービン11と、分解ガスタービン11の駆動により熱輸送を行う圧縮式のヒートポンプ80とを概略備えている。
また、本発明を適用した分解ガスタービン11は、亜酸化窒素を分解する分解反応部13と、亜酸化窒素を分解することで得られる分解ガスをノズル(静翼)からタービン翼(動翼)に吹き付けて、それによりタービン軸を回転させて動力を得るタービン部14とを備えている。
これら図1及び図2に示す分解ガスボイラー1及び分解ガスタービン11は、本発明の特徴部分として、上述した亜酸化窒素を分解する分解反応部6,13を備えている。すなわち、これらの分解反応部6,13は、従来の化石燃料等を燃焼させたときの燃焼熱を利用して蒸気を発生させる燃焼ガスボイラーや、従来の化石燃料等を燃焼させたときの燃焼ガスを利用して回転駆動される燃焼ガスタービンが備える燃焼器(燃焼反応部)と置き換わるものである。
具体的に、本発明の特徴部分は、例えば図3に示すように、亜酸化窒素を分解する亜酸化窒素分解用触媒(以下、単に触媒という。)21が配置された分解反応器(上記分解反応部6,13に対応する。)22と、分解反応器22に亜酸化窒素(N2O)を含む燃料ガスを供給する燃料ガス供給ライン(燃料ガス供給手段)23と、分解反応器22に窒素ガス(N2)を供給する窒素ガス供給ライン(窒素ガス供給手段)24と、分解反応器22に供給される燃料ガスの流量を調整する流量調整部(流量調整手段)25と、触媒21の温度を測定する温度測定器(温度測定手段)26と、各部の制御を行う制御部(制御手段)27とを備えている。
分解反応器22は、その内側に触媒21を収納した本体部(分解反応室)22aを備え、この本体部22aの一端側に燃料ガスが導入されるガス導入口22bと、この本体部22aの他端側に分解ガスが排出されるガス排出口22cとが設けられた構造を有している。
なお、分解反応器22の材質については、耐熱性及び耐酸化性に優れたものを使用することが好ましく、特に、分解ガスによって高温高圧に晒されるガス排出口22c側の部材等については、高温高圧下での熱疲労や酸化等に十分耐え得るものを使用することが好ましい。そのような材料としては、例えばステンレス鋼やNi基合金、Co基合金などを挙げることができる。また、セラミックスやシリコンカーバイト(SiC)などを遮熱材として用いることができる。さらに、これらの複合材料を用いてもよい。また、分解反応器22は、水冷や空冷などによって強制的に冷却する機構を備えたものであってもよい。
触媒21には、広い温度域(特に低温域)で亜酸化窒素を効率良く分解することができ、なお且つ、高温下での熱疲労や酸化等に十分耐え得るものを使用することが好ましい。このような亜酸化窒素の分解効率が高く、耐熱性及び耐酸化性に優れた触媒として、例えば後述する「特開2002−153734号公報」や「特開2002−253967号公報」に開示されたものなどを使用することができる。
具体的には、以下の〔1〕〜〔6〕に示す何れかの触媒を用いることができる。
〔1〕 アルミニウム(Al)、マグネシウム(Mg)及びロジウム(Rh)が担体に担持されている触媒。
〔2〕 マグネシウム(Mg)及びロジウム(Rh)がアルミナ(Al2O3)担体に担持されている触媒。
〔3〕 アルミニウム(Al)の少なくとも一部とマグネシウム(Mg)により、スピネル型結晶性複合酸化物が形成されている担体に、ロジウム(Rh)が担持されている触媒。
〔4〕 亜鉛(Zn)、鉄(Fe)、マンガン(Mn)及びニッケル(Ni)からなる群から選ばれる少なくとも1種の金属、アルミニウム(Al)及びロジウム(Rh)が担体に担持されている触媒。
〔5〕 亜鉛(Zn)、鉄(Fe)、マンガン(Mn)及びニッケル(Ni)からなる群から選ばれる少なくとも1種の金属及びロジウム(Rh)がアルミナ(Al2O3)担体に担持されている触媒。
〔6〕 アルミニウム(Al)の少なくとも一部と、亜鉛(Zn)、鉄(Fe)、マンガン(Mn)及びニッケル(Ni)からなる群から選ばれる少なくとも1種の金属により、スピネル型結晶性複合酸化物が形成されている担体にロジウム(Rh)が担持されている触媒。
また、本発明では、シリカ(SiO2)、シリカアルミナ(SiO2-Al2O3)から選ばれる担体に、ロジウム(Rh)、ルテニウム(Ru)、パラジウム(Pd)からなる群から選ばれる少なくとも1つの貴金属を担持してなる触媒などを好適に用いることができる。このような触媒21を用いることによって、亜酸化窒素を100%に近い分解効率で窒素と酸素に分解することが可能である。特に、シリカ(SiO2)又はシリカアルミナ(SiO2-Al2O3)からなる担体にロジウム(Rh)を担持した触媒を用いた場合には、一酸化窒素(NO)や二酸化窒素(NO2)などといったNOxガスの発生がほとんど無く、亜酸化窒素をほぼ完全に窒素と酸素に分解することが可能である。
さらに、触媒21には、アルミナをウォッシュコートしたコージェライト及びメタルハニカム又は多孔質セラミックスの担体に、窒素酸化物の分解に有効なロジウムを、質量分率で2〜3%含浸させたものや、アルミナやコージェライト又は炭化珪素のセラミックス製ハニカム構造体に、アルミナからなる担体層を形成させ、この担体層に窒素酸化物の分解に有効なロジウムなどが担持されたものなどを例示することができるが、これらに必ずしも限定されるものではない。
また、その他の触媒21としては、例えばアジピン酸の製造工程や硝酸の製造工程などで排出される排ガス中の亜酸化窒素を分解除去する際に使用される触媒なども用いることができる。このような触媒としては、例えば、MAl2O3(Mは、Pd、Cu,Cu/Mg,Cu/Zn,Cu/Zn/Mgの何れかである。)で表され、Mを10〜30質量%の割合で含むアルミナ担体に、貴金属を0.1〜2質量%の割合で担時させたものを挙げることができる。
触媒21の形状については、特に限定されるものではなく、例えば、粉末状、顆粒状、ペレット状、ハニカム状、多孔質状、粉砕状、メッシュ状、板状、シート状のものなど、任意の形状の中から最適な形状及びサイズのものを適宜選択して使用すればよい。
また、触媒21の本体部22aへの充填方法や、触媒21に合わせた本体部22aの形状等についても、上記分解ガスボイラー1及び分解ガスタービン11が備える分解反応部6,13の設計に合わせて、任意に実施することができる。
分解反応器22は、触媒21の経時的な劣化に合わせて、触媒21を(場合によっては本体部22aごと)交換可能な構成としてもよい。また、性能が低下した触媒21から貴金属成分を抽出精製して回収した後、この回収された貴金属を新しい担体に担時させたものを再生触媒として使用することも可能である。
分解反応器22には、上記触媒21を加熱するヒータ(予熱手段)28が設けられている。このヒータ28は、亜酸化窒素の分解を開始する前、すなわち分解反応器22に燃料ガスを供給する前に、亜酸化窒素が分解可能な温度(分解開始温度)まで触媒21を予め加熱(予熱)するためのものである。
例えば図3に示すヒータ28は、本体部22aの内側に触媒21の周囲に接触した状態で配置されている。また、ヒータ28は、電力供給ライン29を介して電源(図示せず。)と接続されており、この電源からの電力供給によって発熱することが可能となっている。また、ヒータ28としては、抵抗加熱方式や誘導加熱方式のものなどを使用することができる。
なお、触媒21の加熱方法については、このような本体部22aの内側に配置されたヒータ28によって触媒21を加熱する方法に限らず、本体部22aの外側に配置されたヒータ28によって触媒21を加熱する方法を用いることも可能である。この場合、ヒータ28によって本体部22aを加熱し、この本体部22aからの輻射や熱伝導等によって触媒21を加熱することが可能である。
また、触媒21の加熱方法としては、触媒21に電力を直接供給することによって当該触媒21を加熱する方法を用いることも可能である。それ以外にも、触媒21の加熱方法については、特に限定されるものではなく、触媒21を加熱する方法の中から適宜選択して用いることができる。
燃料ガス供給ライン23は、その一端側が流量調整部25を介して分解反応器22の入側(ガス導入口22b)に接続された配管(流路)であり、その他端側には、燃料ガス開閉弁30を介して燃料ガス供給源31が接続されている。
燃料ガス開閉弁30は、燃料ガス供給ライン23を開閉し、燃料ガス供給源31からの燃料ガスの供給/遮断を行うためのもの(開閉手段)である。また、燃料ガス開閉弁30には、燃料ガス供給ライン23を開閉するだけでなく、その開度(圧力等を含む。)が調整可能なものなどを用いることができる。
さらに、燃料ガス開閉弁30には、その流量制御が可能な流量調整付きのコントロールバルブ(流量調整弁)を用いることもできる。そして、この燃料ガス開閉弁30は、制御部27と電気的に接続されており、この制御部27によって燃料ガス開閉弁30を駆動制御することが可能となっている。
なお、この燃料ガス開閉弁30については、上述した流量調整付きのコントロールバルブ(流量調整弁)を用いた構成に限らず、燃料ガス供給ライン23を開閉するバルブ(開閉弁)とは別に、燃料ガス供給ライン23内を流れる燃料ガスの流量を調整するレギュレータ(流量調整器)等が設けられた構成とすることも可能である。
燃料ガス供給源31は、亜酸化窒素を含む燃料ガスを供給するため、燃料ガスが一旦貯留される燃料ガス貯留部を有し、この燃料ガス貯留部には、亜酸化窒素が充填された高圧ガス容器(例えば、ボンベ、タンク、カードルなど。)31aが配置されている。そして、この燃料ガス供給源31では、燃料ガス開閉弁30を開放することによって、高圧ガス容器31aから燃料ガス供給ライン23へと亜酸化窒素を含む燃料ガスを供給することが可能となっている。
窒素ガス供給ライン24は、その一端側が燃料ガス供給ライン23の流量調整部25よりも上流側に接続された配管(流路)であり、その他端側には、窒素ガス開閉弁32を介して窒素ガス供給源33が接続されている。また、窒素ガス供給ライン24は、燃料ガス供給ライン23に窒素ガスを導入することによって、燃料ガス中に含まれる亜酸化窒素の濃度を調整する濃度調整手段としての機能を有している。
窒素ガス開閉弁32は、窒素ガス供給ライン24を開閉し、窒素ガス供給源33からの窒素ガスの供給/遮断を行うためのもの(開閉手段)である。また、窒素ガス開閉弁32には、窒素ガス供給ライン24を開閉するだけでなく、その開度(圧力等を含む。)が調整可能なものなどを用いることができる。
さらに、窒素ガス開閉弁32には、燃料ガス供給ライン23に供給される窒素ガスの供給量を調整するため、その流量制御が可能な流量調整付きのコントロールバルブ(流量調整弁)を用いることが好ましい。そして、この窒素ガス開閉弁32は、制御部27と電気的に接続されており、この制御部27によって窒素ガス開閉弁32を駆動制御することが可能となっている。
なお、この窒素ガス開閉弁32については、上述した流量調整付きのコントロールバルブ(流量調整弁)を用いた構成に限らず、窒素ガス供給ライン24を開閉するバルブ(開閉弁)とは別に、窒素ガス供給ライン24内を流れる窒素ガスの流量を調整するレギュレータ(流量調整器)等が設けられた構成とすることも可能である。
窒素ガス供給源33は、窒素ガスが一旦貯留される窒素ガス貯留部を有し、この窒素ガス貯留部には、窒素が充填された高圧ガス容器(例えば、ボンベ、タンク、カードルなど。)33aが配置されている。そして、この窒素ガス供給源33では、窒素ガス開閉弁32を開放することによって、高圧ガス容器33aから窒素ガス供給ライン24へと窒素ガスを供給することが可能となっている。
流量調整部25は、燃料ガス供給ライン23から分解反応器22に導入される燃料ガスの流量(導入量)を調整可能なものであればよく、例えばレギュレータ(流量調整器)や流量調整付きのコントロールバルブ(流量調整弁)などを用いることができる。そして、この流量調整部25は、制御部27と電気的に接続されており、この制御部27によって流量調整部25を駆動制御することが可能となっている。
なお、流量調整部25では、この流量調整部25内を流れる燃料ガスの流量を計測する流量計(流量計測手段)を設けて、又は、このような流量計付きのレギュレータやコントロールバルブ等を用いて、分解反応器22に導入される燃料ガスの流量調整を精度良く行うことも可能である。
温度測定器26は、上記触媒21の温度を直接又は間接的に測定するものであり、制御部27と電気的に接続されて、この制御部27へと測定結果(測定データ)を出力する。
例えば図3に示す温度測定器26は、分解反応器22の本体部22aに取り付けられて、触媒21に接触しながら、この触媒21の下流側の温度を測定することが可能となっている。
触媒21を用いた亜酸化窒素の分解では、この触媒21中を亜酸化窒素が通過する間に亜酸化窒素が分解されるため、一般的に触媒21の上流(ガス導入口22b)側の温度よりも下流(ガス排出口22c)側の温度の方が高くなる。したがって、分解ガスによって高温高圧に晒される触媒21やガス排出口22c側の部材等の劣化(例えば熱疲労や酸化など。)、特に亜酸化窒素は分解ガス中に酸素を含むことから、この酸素との反応(酸化)を防ぐ上で、上述した触媒21の下流(ガス排出口22c)側の温度を測定することが好ましい。
一方、温度測定器26は、上述した図3に示す構成に限らず、触媒21の上流(ガス導入口22b)側の温度を測定する構成としてもよい。これは、亜酸化窒素の分解を開始する前に、上記ヒータ28によって加熱された触媒21が上記分解開始温度まで加熱されたか否かを検出する上で好ましい。そして、この温度測定器26による測定結果に基づいて、触媒21が上記分解開始温度まで加熱されたときに、上記ヒータ28による加熱を停止すればよい。これにより、上記ヒータ28による加熱を効率良く行うことが可能である。
なお、触媒21の温度を測定する箇所については、上記の箇所に必ずしも限定されるものではなく、例えば、触媒21の平均的な温度を測定するため、触媒21の中央部分の温度を測定したり、これら複数箇所の温度を別々に測定したりすることも可能である。
また、温度測定器26は、触媒21の温度を直接測定する構成に限らず、例えば触媒21を収納した本体部22aの温度を測定することによって、触媒21の温度を間接的に測定することも可能である。
また、温度測定器26は、上述した触媒21の温度を直接又は間接的に測定する構成に限らず、上記分解反応器22のガス排出口22cから排出される分解ガスの温度を直接又は間接的に測定する構成としてもよい。さらに、これら触媒21と分解ガスとの両方の温度を測定する構成としてもよい。
なお、温度測定器26については、例えば熱電対を使用した温度計や、放射温度計等の非接触式の温度計、データロガーなどを用いることができるが、これらのものに必ずしも限定されるものではなく、それ以外にも触媒21や分解ガスの温度が測定可能なものの中から適宜選択して使用することができる。
制御部27は、コンピュータ(CPU)等からなり、温度測定器26からの測定結果(測定データ)に基づいて、内部に記録された制御プログラムに従って、上述した流量調整部25や燃料ガス開閉弁30、窒素ガス開閉弁32に対する制御等を行う。
具体的に、上記分解反応器22において、上記触媒21を用いた亜酸化窒素の分解を継続的に行わせるためには、分解ガスの温度を制御することが重要となる。
すなわち、分解ガスの温度が高くなり過ぎると、上述したように分解ガスによって高温高圧に晒される触媒21やガス排出口22c側の部材等の劣化(例えば熱疲労や酸化など。)を招く可能性がある。一方、分解ガスの温度が低くなり過ぎると、亜酸化窒素の自己分解を継続させることが困難となる可能性がある。また、亜酸化窒素が分解されずに分解反応器22のガス排出口22cから排出されたり、場合によっては、上述したNOxガスが発生したりする。これらのガスは、上述した地球温暖化や大気汚染の原因ともなる。
したがって、制御部27は、このような問題が生じることがないよう、上記分解反応器22において触媒21を用いた亜酸化窒素の分解が継続される範囲で、分解ガスの温度制御を行うことが好ましい。
ここで、分解ガスの温度を制御する方法としては、(1)分解反応器22に供給される燃料ガスの流量を調整する方法と、(2)燃料ガス中に含まれる亜酸化窒素の濃度を調整する方法とを挙げることができる。
このうち、上記(1)を用いた方法では、上記温度測定器26からの測定結果に基づいて、上記制御部27が流量調整部25を制御し、燃料ガス供給ライン23から分解反応器22に供給される燃料ガスの流量調整を行う。
具体的に、分解ガスの温度を上げる場合には、燃料ガス供給ライン23から分解反応器22に供給される燃料ガスの流量を相対的に上げる制御を行う。これにより、分解反応器22に導入される燃料ガスの導入量を増やし、この分解反応器22で分解される亜酸化窒素の分解量(分解熱)の増加により分解ガスの温度を相対的に上げることが可能である。
一方、分解ガスの温度を下げる場合には、分解反応器22に供給される燃料ガスの流量を相対的に下げる制御を行う。これにより、分解反応器22に導入される燃料ガスの導入量を減らし、この分解反応器22で分解される亜酸化窒素の分解量(分解熱)の減少により分解ガスの温度を相対的に下げることが可能である。
以上のようにして、上記図3に示す本発明の特徴部分では、上記制御部27により分解ガスの温度を制御しながら、上記分解反応器22において触媒21を用いた亜酸化窒素の分解を継続的に行わせることが可能である。
一方、上記(2)を用いた方法では、上記温度測定器26からの測定結果に基づいて、上記制御部27が上記窒素ガス開閉弁32を制御し、窒素ガス供給ライン24から燃料ガス供給ライン23に供給される窒素ガスの流量調整を行う。
具体的に、分解ガスの温度を上げる場合には、燃料ガス中に含まれる亜酸化窒素の濃度を相対的に上げる制御を行う。すなわち、窒素ガス供給ライン24から燃料ガス供給ライン23に供給される窒素ガスの流量を相対的に下げる、又は、窒素ガス供給ライン24から燃料ガス供給ライン23への窒素ガスの供給を停止する制御を行う。これにより、燃料ガス供給ライン23内を流れる燃料ガスへの窒素ガスの添加を止める又はその添加量を少なくして、この燃料ガス中に含まれる亜酸化窒素の濃度を相対的に高くすることができる。そして、これに伴って分解反応器22で分解される亜酸化窒素の分解量(分解熱)が増加することにより分解ガスの温度を相対的に上げることが可能である。
一方、分解ガスの温度を下げる場合には、燃料ガス中に含まれる亜酸化窒素の濃度を相対的に下げる制御を行う。すなわち、窒素ガス供給ライン24から燃料ガス供給ライン23に供給される窒素ガスの流量を相対的に上げる、又は、窒素ガス供給ライン24から燃料ガス供給ライン23への窒素ガスの供給を開始する制御を行う。これにより、燃料ガス供給ライン23内を流れる燃料ガスに窒素ガスを添加する又はその添加量を増やして、この燃料ガス中に含まれる亜酸化窒素を窒素ガスで希釈しながら、亜酸化窒素の濃度を相対的に低くすることができる。そして、これに伴って分解反応器22で分解される亜酸化窒素の分解量(分解熱)が減少することにより分解ガスの温度を相対的に下げることが可能である。
なお、上記(2)を用いた方法では、上述した窒素ガス以外にも、例えばヘリウム(He)、ネオン(Ne)、アルゴン(Ar)、キセノン(Xe)、クリプトン(Kr)などの不活性ガスや、空気(乾燥空気を含む。)等を燃料ガス中に添加することによって、この燃料ガス中に含まれる亜酸化窒素の濃度を調整することも可能である。
以上のようにして、上記図3に示す本発明の特徴部分では、分解ガスの温度を制御しながら、上記分解反応器22において触媒21を用いた亜酸化窒素の分解を継続的に行わせることが可能である。
なお、上記図3に示す本発明の特徴部分では、上記(1),(2)を用いた方法を組み合わせて、上述した分解ガスの温度制御を行うことも可能である。そして、これら上記(1),(2)を用いた方法では、上述した分解ガスの温度制御を簡便な構成で、なお且つ、安定的に行うことが可能である。一方、本発明では、上記(1),(2)を用いた方法に必ずしも限定されるものではなく、それ以外の方法を用いて、分解ガスの温度制御を行ってもよい。
また、本発明では、上記分解ガス中のNOx濃度を計測するNOx計(NOx計測手段)を設けてもよい。この場合、上記分解ガス中に含まれる未分解の亜酸化窒素(N2O)や、一酸化窒素(NO)、二酸化窒素(NO2)などといったNOxガスの濃度を計測することで、上述した分解ガスの温度制御を精度良く行うことが可能である。
さらに、本発明では、分解ガス中に含まれるNOxを除去する手段(NOx除去手段)を設けることも可能である。NOx除去手段としては、例えば、NOxを含む分解ガス中にアンモニア(NH3)を添加し、脱硝用触媒によりアンモニアとNOxとを選択的に反応(還元)させて、水(H2O)と窒素(N2)とに分解する脱硝装置などを用いることができる。なお、脱硝用触媒については、従来公知のものの中から最適なものを選択して使用すればよい。また、NOx除去手段としては、分解ガス中に含まれるNOxを直接分解可能なNOx分解用触媒を用いてもよい。
また、上記分解反応器22において、上記触媒21を用いた亜酸化窒素の分解を停止する場合は、上記分解反応器22への燃料ガスの供給を停止した後に、上記分解反応器22に窒素ガスを供給することが好ましい。
これは、上記分解反応器22への燃料ガスの供給を停止した直後は、触媒21内に分解ガスが滞留しており、この分解ガスに含まれる酸素によって触媒21が劣化してしまう虞があるためである。
この場合、制御部27は、上記燃料ガス開閉弁30を閉塞する制御を行うことによって、上記分解反応器22への燃料ガスの供給を停止し、上記窒素ガス供給ライン24から供給される窒素ガスのみを上記分解反応器22に導入させる。
これにより、上記分解反応器22に導入された窒素ガスが、触媒21内に滞留した分解ガスを押し出し、この触媒21内に滞留した分解ガスを除去することができる。そして、制御部27は、上記分解反応器22に一定の時間、すなわち触媒21内に滞留した分解ガスを除去するのに十分な時間だけ窒素ガスを導入した後、上記窒素ガス開閉弁32を閉塞する制御を行い、上記分解反応器22への窒素ガスの供給を停止する。
これにより、触媒21の酸素による劣化を防ぐことができ、この触媒21の寿命を延ばすことができる。また、上述した触媒21を交換する頻度を減らす(交換サイクルを延長する)ことが可能である。さらに、この方法を用いた場合、亜酸化窒素の分解を一時停止させた後に、亜酸化窒素の分解を容易に再開することが可能である。
なお、上述した亜酸化窒素の分解を停止させる場合は、上記窒素ガス以外にも、例えばHe、Ne、Xe、Ar、Krなどの不活性ガスや、空気(乾燥空気を含む。)等を分解反応器22に導入することも可能である。
ここで、図4に示すフローチャートを参照しながら、本発明の特徴部分における具体的な動作(制御方法)の一例について説明する。
本発明の特徴部分では、先ず、ステップS101において、亜酸化窒素の分解を開始する前に、ヒータ28を駆動し、触媒21を加熱(予熱)する。
次に、ステップS102において、温度測定器26が測定した触媒21の温度に基づいて、制御部27が、分解開始温度まで触媒21が加熱されたか否かの判定を行う。そして、触媒21が分解開始温度まで加熱されたと判定された場合には、ステップS103へと進み、このステップS103において、ヒータ28の駆動を停止する。一方、触媒21が分解開始温度まで加熱されていないと判定された場合には、触媒21が分解開始温度となるまで、ヒータ28による触媒21の加熱を継続する。
次に、ステップS104において、分解反応器22に燃料ガスを供給し、この分解反応器22において触媒21を用いた亜酸化窒素の分解を行う。なお、分解反応器22に供給される燃料ガスの流量や、この燃料ガス中に含まれる亜酸化窒素の濃度等については、予め設定された値となっている。
次に、ステップS105において、温度測定器26が測定した触媒21(又は分解ガス)の温度に基づいて、制御部27が、触媒21(又は分解ガス)の温度が予め設定された値(範囲)を超えたか否かの判定を行う。そして、触媒21(又は分解ガス)の温度が設定値(範囲)を超えたと判定された場合には、ステップS106に進む。一方、触媒21(又は分解ガス)の温度が設定値(範囲)にあると判定された場合には、ステップS110に進む。
次に、ステップS106において、制御部27が、触媒21(又は分解ガス)の温度が設定値(範囲)よりも高いか低いかの判定(比較)を行う。
そして、触媒21(又は分解ガス)の温度が設定値(範囲)よりも高いと判定された場合には、ステップS107に進み、このステップS107において、制御部27が、分解反応器22に供給される燃料ガスの流量、若しくは、この燃料ガス中に含まれる亜酸化窒素の濃度を下げる方向に調整を行う。そして、調整後は、ステップS109に進む。
一方、触媒21(又は分解ガス)の温度が設定値(範囲)よりも低いと判定された場合には、ステップS108に進み、このステップS108において、制御部27が、分解反応器22に供給される燃料ガスの流量、若しくは、この燃料ガス中に含まれる亜酸化窒素の濃度を上げる方向に調整を行う。そして、調整後は、ステップS109に進む。
これらステップS107又はステップS108における調整では、例えば、分解反応器22に供給される燃料ガスの流量の設定値、若しくは、この燃料ガス中に含まれる亜酸化窒素の濃度の設定値を調整可能な範囲で所定の段階数に分けて、その設定値を現段階よりも1段階下げて又は上げて行う。
次に、ステップS109において、温度測定器26が測定した触媒21(又は分解ガス)の温度に基づいて、制御部27が、触媒21(又は分解ガス)の温度が設定値(範囲)に戻ったか否かの判定を行う。そして、触媒21(又は分解ガス)の温度が設定値(範囲)に戻ったと判定された場合には、ステップS110に進む。
一方、触媒21(又は分解ガス)の温度が設定値(範囲)に戻らない場合には、ステップS106に戻り、再び触媒21(又は分解ガス)の温度が設定値(範囲)よりも高いか低いかの判定(比較)を行った後、ステップS107又はS108に進み、上記分解反応器22に供給される燃料ガスの流量の設定値、若しくは、この燃料ガス中に含まれる亜酸化窒素の濃度の設定値を更に1段階下げる又は上げる方向に調整を行う。そして、ステップS109に進み、触媒21(又は分解ガス)の温度が設定値(範囲)に戻ったか否かの判定を行い、触媒21(又は分解ガス)の温度が設定値(範囲)に戻るまで、そのような調整を繰り返す。また、このような調整を繰り返した結果、調整可能な範囲を超えた場合には、制御部27が異常と判定して強制的にステップS110に進むものとする(図4において図示せず。)。
次に、ステップS110において、制御部27が、燃料ガスの供給を停止するか否かの判定を行う。燃料ガスの供給を停止する場合としては、例えば、外部から停止命令を受けたときや、上記ステップS109において異常と判定されたときなどを挙げることができる。そして、燃料ガスの供給を停止する場合は、ステップS111に進む。一方、燃料ガスの供給を停止しない場合は、ステップS105に戻り、温度測定器26による触媒21(又は分解ガス)の温度測定を継続する。
次に、ステップS111において、燃料ガスの供給を停止した後に、ステップS112に進み、このステップS112おいて、分解反応器22に窒素ガスを供給する。これにより、窒素ガスが触媒21内に滞留した分解ガスを押し出し、この触媒21内に滞留した分解ガスを除去することができる。
以上のようにして、上記図3に示す本発明の特徴部分では、分解ガスの温度を制御しながら、上記分解反応器22において触媒21を用いた亜酸化窒素の分解を継続的に行わせることが可能である。
なお、本発明では、上述した温度測定器26が測定した測定データ及びそれに基づく制御部27の判定結果を、例えば、図示を省略するモニタに表示したり、プリンタに出力したりしてもよい。また、上述した制御部27による自動制御に限らず、例えば、オペレータ等による手動制御を行ってもよい。
また、上記ステップS109において異常と判定された場合には、必要に応じてその旨を告知するようにしてもよい。告知方法については、特に限定されるものではなく、例えば、警報を発したり、表示を行ったりすることができる。
上記図1に示す分解ガスボイラー1及び上記図2に示す分解ガスタービン11では、以上のような本発明の特徴部分と同様の構成を備えることによって、上述した分解ガスの温度を制御しながら、亜酸化窒素の分解を継続的に行わせることが可能である。
すなわち、これら本発明の特徴部分を備える分解ガスボイラー1及び分解ガスタービン11では、上記分解反応部6,13に亜酸化窒素を含む燃料ガスを供給し、この分解反応部6,13において、燃料ガス中に含まれる亜酸化窒素を上記触媒21を用いて分解した後、この亜酸化窒素の分解により発生する分解熱によって、その後に供給される燃料ガス中の亜酸化窒素の分解を継続的に行わせることが可能である。
次に、上記図1及び図2に示す熱輸送装置が備える圧縮式のヒートポンプ80について説明する。
この圧縮式のヒートポンプ80は、冷媒Rが循環する冷媒循環系81と、冷媒循環系81中の冷媒Rを圧縮して送り出す圧縮部82と、圧縮部82で圧縮された冷媒Rを凝縮させながら、この冷媒Rから熱を放出させる凝縮部83と、凝縮部83で放熱された冷媒Rを膨張させる膨張部84と、膨張部84で膨張された冷媒Rを蒸発させながら、この冷媒Rに熱を吸収させる蒸発部85とを概略備えている。
冷媒循環系81は、圧縮部82と凝縮部83と膨張部84と蒸発部85との間を順に接続した配管(流路)からなる。冷媒Rは、熱の輸送を行う熱媒体として、圧力変化(圧縮・膨張)に伴う状態変化(気化・液化)により、吸熱と放熱とを繰り返しながら、冷媒循環系81内を循環することになる。なお、このような冷媒Rとしては、例えば、フルオロカーボン(フロン)類(ハイドロフルオロカーボン(HFC)、ハイドロクロロフルオロカーボン(HCFC)等)、二酸化炭素、アンモニア、炭化水素(プロパン、ブタン、イソブタン等)、水などを用いることができる。
圧縮部82は、圧縮機(コンプレッサ)からなり、上記蒸気タービン2又は分解ガスタービン11(タービン部14)と連結されることによって駆動される。冷媒Rは、この圧縮部82で圧縮されることによって昇温しながら、高温・高圧の気体となって凝縮部83へと送り出される。
凝縮部83は、凝縮器(コンデンサ)と呼ばれる熱交換器(放熱器)からなり、圧縮部82で圧縮された冷媒Rが内部を通過する間に、外部との熱交換により冷媒Rを凝縮させながら、この冷媒Rから熱を放出させる。これにより、冷媒Rは、常温・高圧の液体となって膨張部84へと送り出される。また、ヒートポンプ80では、この凝縮部83側にファン(送風手段)86を設けることによって、外部に熱気THを効率良く放出することが可能である。さらに、凝縮部83では、この熱気THを利用して加熱を行うことも可能であり、この放熱(高温)側の熱交換器を加熱器(加熱手段)として用いることが可能である。
膨張部84は、膨張弁(エクスパンションバルブ)又はキャピラリーチューブからなる。冷媒Rは、この膨張部84で膨張されることによって降温しながら、低温・低圧の液体となって蒸発部85へと送られる。
蒸発部85は、蒸発器(エバポレータ)と呼ばれる熱交換器(吸熱器)からなり、膨張部84で膨張された冷媒Rが内部を通過する間に、外部との熱交換により冷媒Rを蒸発させながら、この冷媒Rに熱を吸収させる。これにより、冷媒Rは、低温・低圧の気体となって圧縮部82へと送られる。また、ヒートポンプ80では、この蒸発部85側にファン(送風手段)87を設けることによって、外部に冷気TLを効率良く放出することが可能である。さらに、蒸発部85では、この冷気TLを利用して冷却を行うことも可能であり、この吸熱(低温)側の熱交換器を冷却器(冷却手段)として用いることが可能である。
以上のようにして、この圧縮式のヒートポンプ80では、上記蒸気タービン2又は分解ガスタービン11を動力源として、冷媒Rを冷媒循環系81内で循環させながら、熱輸送を行うことが可能である。
本発明を適用した熱輸送方法は、図5に示すように、亜酸化窒素の分解により発生した分解ガスからの熱回収により分解ガスボイラー1で蒸気を発生させるステップS1−1と、分解ガスボイラー1で発生した蒸気により蒸気タービン2を回転駆動するステップS1−2と、蒸気タービン2の駆動により圧縮式のヒートポンプ80で熱輸送を行うステップS1−3とを有する。
具体的に、上記図1に示す分解ガスボイラー1では、亜酸化窒素を分解することによって得られた高温高圧の分解ガスを上記分解反応部6から上記蒸気発生部7へと供給する。これにより、上記蒸気発生部7において、分解ガスとの熱交換により蒸気を発生させることが可能である。
さらに、上記分解ガスボイラー1を備える熱輸送装置では、上記分解ガスボイラー1(蒸気発生部7)で発生させた蒸気により蒸気タービン2を回転駆動する。そして、この蒸気タービン2の駆動により上記圧縮式のヒートポンプ80で熱輸送を行うことが可能である。
そして、蒸気タービン2から排出された蒸気は、復水器4で冷却して復水された後、給水ポンプ5で分解ガスボイラー1に給水されて、再び分解ガスボイラー1で分解ガスとの熱交換により蒸気となって循環することになる。
なお、上記分解ガスボイラー1において、上述した本発明の特徴部分については、上記図3に示す構成に必ずしも限定されるものではない。すなわち、上記図3に示す本発明の特徴部分を上記分解ガスボイラー1に適用する場合には、ボイラーの形式や大きさ等に合わせて適宜変更を加えることが可能である。
例えば、分解反応器22は、その形状や数、配置等を上記分解ガスボイラー1の設計に合わせて適宜変更することができる。また、この分解反応器22に接続される燃料ガス供給ライン23や窒素ガス供給ライン24、流量調整部25、温度測定器26、制御部27、ヒータ28、電力供給ライン29、燃料ガス開閉弁30、燃料ガス供給源31、窒素ガス開閉弁32、窒素ガス供給源33等についても、上記分解ガスボイラー1の設計に合わせて適宜変更を加えることが可能である。
一方、上記分解ガスボイラー1において、上述した本発明の特徴部分以外の構造については、既存の燃焼ガスボイラーなどと同様の構造を有することができる。例えば、本発明が適用される分解ガスボイラー1の本発明の特徴部分以外の構造については、従来の丸ボイラーや水管ボイラーなどと同様の形式のものを用いることができる。なお、丸ボイラーについては、例えば、炉筒ボイラー、煙管ボイラー、炉筒煙管ボイラー、立てボイラーなどを挙げることができる。一方、水管ボイラーについては、例えば、自然循環式、強制循環式、貫流式のものなどを挙げることができる。
また、上記分解ガスボイラー1では、上記分解反応部6から上記蒸気発生部7へと分解ガスを供給し、この蒸気発生部7において分解ガスとの熱交換により蒸気を発生させる構成となっているが、このような構成に必ずしも限定されるものではない。例えば、本発明では、上記分解反応部6と上記蒸気発生部7とを一体的に構成し、これら分解反応部6と蒸気発生部7との間で熱交換を行うことによって、蒸気を発生させることも可能である。
具体的には、上記分解反応部6(分解反応器22)の外側に上記蒸気発生部7を設けて、上記分解反応部6で発生する熱(分解熱)との熱交換により蒸気を発生させる構成とすることが可能である。この場合、上記分解反応部6(分解反応器22)の冷却を行うと同時に、上記分解反応部6で発生する熱によって蒸気を得ることが可能である。
また、上記分解ガスボイラー1は、上記図1に示す構成以外にも、例えば、上記蒸気発生部7で得られた蒸気を更に加熱して過熱蒸気とする過熱器や、上記分解反応部6で得られた高温の分解ガスによって燃料ガスや給水等を予熱する予熱器などの付属設備(機器/部品)、その他必要となる保安設備(機器/部品)等を備えた構成とすることが可能である。
また、上記図1に示す熱輸送装置では、上記分解ガスボイラー1以外の構成、すなわち、上述した蒸気タービン2や、復水器4、給水ポンプ5などについても、既存のものと同様のものを使用することが可能である。さらに、付属設備(機器/部品)や保安設備(機器/部品)等についても同様である。
以上のようにして、本発明を適用した分解ガスボイラー1を備える熱輸送装置及び熱輸送方法では、亜酸化窒素の分解により発生するエネルギーを利用した熱輸送が可能である。そして、本発明によれば、地球環境に優しいエネルギーとしての亜酸化窒素の利用を可能にした分解ガスボイラー1、このような分解ガスボイラー1を備えた熱輸送装置、並びにこのような熱輸送装置を用いた熱輸送方法を提供することが可能である。
本発明を適用した別の熱輸送方法は、図6に示すように、亜酸化窒素の分解により発生した分解ガスにより分解ガスタービン11を回転駆動するステップS2−1と、分解ガスタービン11の駆動により圧縮式のヒートポンプ80で熱輸送を行うステップS2−2とを有する。
具体的に、上記図2に示す分解ガスタービン11では、亜酸化窒素を分解することによって得られた高温高圧の分解ガスを上記分解反応部13から上記タービン部14へと供給する。これにより、上記タービン部14において、分解ガスをノズル(静翼)からタービン翼(動翼)に吹き付けて、それによりタービン軸を回転させて動力を得ることが可能である。
さらに、上記分解ガスタービン11を備える熱輸送装置では、上記分解ガスタービン11(タービン部14)の駆動により上記圧縮式のヒートポンプ80で熱輸送を行うことが可能である。
なお、上記分解ガスタービン11において、上述した本発明の特徴部分については、上記図3に示す構成に限定されるものではない。すなわち、上記図3に示す本発明の特徴部分を上記分解ガスタービン11に適用する場合には、タービンの形式や大きさ等に合わせて適宜変更を加えることが可能である。
例えば、分解反応器22は、その形状や数、配置等を分解ガスタービン11の設計に合わせて適宜変更することができる。また、この分解反応器22に接続される燃料ガス供給ライン23や窒素ガス供給ライン24、流量調整部25、温度測定器26、制御部27、ヒータ28、電力供給ライン29、燃料ガス開閉弁30、燃料ガス供給源31、窒素ガス開閉弁32、窒素ガス供給源33等についても、上記分解ガスタービン11の設計に合わせて適宜変更を加えることが可能である。
一方、上記分解ガスタービン11において、上述した本発明の特徴部分以外の構造については、既存の燃焼ガスタービンが燃焼用空気を圧縮して燃焼器へと送り込む圧縮機を備えた構成であるのに対して、そのような構成が不要となるといった特徴を有している。これにより、上記分解ガスタービン11を簡便な構成とし、その軽量化を図ることが可能である。
一方、上記分解ガスタービン11は、タービン軸に連結された圧縮機(過給機)を備えた構成としてもよい(図示せず。)。そして、この圧縮機(過給機)によって圧縮(過給)された亜酸化窒素を含む燃料ガスを分解反応部13に供給する構成とすることも可能である。なお、燃料ガスを圧縮(過給)して使用する場合は、亜酸化窒素が液化しない範囲で圧縮(過給)することが好ましい。
また、上記分解ガスタービン11は、上記図2に示す構成以外にも、例えば、上記分解反応部13で得られた高温の分解ガスによって燃料ガスを予熱する予熱器などの付属設備(機器/部品)、その他必要となる保安設備(機器/部品)等を備えた構成とすることが可能である。
以上のようにして、本発明を適用した熱輸送装置及び熱輸送方法では、亜酸化窒素の分解により発生するエネルギーを利用した熱輸送が可能である。そして、本発明によれば、地球環境に優しいエネルギーとしての亜酸化窒素の利用を可能にした熱輸送装置、並びにこのような熱輸送装置を用いた熱輸送方法を提供することが可能である。
なお、本発明は、上記図1及び図2に示す熱輸送装置の構成に必ずしも限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更等を加えることが可能である。
例えば、上記図1及び図2に示す熱輸送装置は、上記圧縮式のヒートポンプ80の代わりに、図7に示すような圧縮式のヒートポンプ80Aを備えることによって、冷房と暖房とを行う、いわゆるエアコンを構成することが可能である。
なお、図7(a)は、冷房時のヒートポンプ80Aの状態を示し、図7(b)は、暖房時のヒートポンプ80Aの状態を示す。また、図7(a),(b)に示すヒートポンプ80Aにおいて、上記ヒートポンプ80と同等の部位については、その説明を省略すると共に、図面において同じ符号を付すものする。
具体的に、この圧縮式のヒートポンプ80Aは、上記ヒートポンプ80の構成に加えて、上記冷媒循環系81内の冷媒Rが流れる方向を切り換える四方弁(切換手段)88と、屋内に設置される室内機89と、屋外に設置される室外機90とを概略備えている。
ここで、室内機89側の熱交換器と、室外機90側の熱交換器は、四方弁88により冷媒Rの流れる方向が切り換わることで、上記凝縮部83と上記蒸発部85の機能が入れ替わる。すなわち、図7(a)に示す冷房時には、室内機89側の熱交換器が上記蒸発部85として機能し、室外機90側の熱交換器が上記凝縮部83として機能することになる。一方、図7(b)に示す暖房時には、室内機89側の熱交換器が上記凝縮部83として機能し、室外機90側の熱交換器が上記蒸発部85として機能することになる。
以上のようなヒートポンプ80Aを備えるエアコンでは、上記蒸気タービン2又は分解ガスタービン11(図7において図示を省略する。)により圧縮部82を駆動する。これにより、ヒートポンプ80Aでは、冷媒Rが冷媒循環系81内で循環しながら熱輸送を行う。そして、図7(a)に示す冷房時には、室内機89側のファン87によって、室内に冷風(冷気)TLを放出し、図7(b)に示す暖房時には、室内機89側のファン87によって、室内に温風(熱気)THを放出することが可能となっている。
なお、図7(a)に示す冷房時には、室外機90側のファン86によって、室外に熱気THが放出される。一方、図7(b)に示す暖房時には、室外機90側のファン86によって、室外に冷気TLが放出される。
また、本発明を適用したエアコンでは、上述した冷房と暖房の他にも、室内を除湿を行う除湿機能を持たせることも可能である。この除湿については、例えば、風量を絞った冷房運転により、空気中の水分を室内機側の熱交換器で結露させ除湿した後、乾いた空気を室内に戻す弱冷房除湿(ドライ)方式や、空気中の水分を室内機側の熱交換器で結露させ除湿した後、乾いた冷たい空気を再熱器で暖め直してから室内に戻す再熱除湿(熱リサイクル)方式などを挙げることができる。
本発明を適用した熱輸送装置は、上述した冷気(低温)TLと、熱気(高温)THとを得ることができるため、冷凍空調分野への様々な応用が可能である。例えば、本発明を適用した熱輸送装置は、上述した冷房や暖房を行うエアコンといった空調設備や空調機器などへの応用が可能である。また、加熱分野については、暖房の他に、給湯、温水、乾燥等を行う加熱設備や加熱機器などへの応用が可能である。一方、冷却分野については、冷房の他に、冷蔵、冷凍、冷水、製氷等を行う冷却設備や冷却機器などへの応用が可能である。
また、本発明を適用した熱輸送装置は、大規模なものから小規模なものまで、その大きさを問わず、様々なサイズのものに適用可能である。さらに、その用途についても、工場(工業)用や住宅(家庭)用などに限らず、あらゆる分野で利用可能であり、設置(定置)型や可搬型、携帯型など、その用途に合わせて設計すればよい。
本発明で用いられる亜酸化窒素は、工業的に製造することが可能である。具体的に、亜酸化窒素を工業的に製造する方法については、例えば、以下の(1)〜(3)を用いた方法を挙げることができる。
(1)アンモニア直接酸化法
2NH3 + 2O2 → N2O + 3H2O
(2)硝酸アンモニウム熱分解法
NH4NO3 → N2O + 2H2O
(3)スルファミン酸法
NH2SO3H + HNO3→ N2O + H2SO4 + H2O
なお、工業的に製造された亜酸化窒素については、例えば、純度99.9(3N)〜99.999(5N)%の高純度亜酸化窒素、純度97.0%以上(日本薬局方)の医療用亜酸化窒素、純度98%以上の工業用亜酸化窒素などを挙げることができる。
その他にも、亜酸化窒素の製造方法については、以下の(4)〜(10)を用いた方法を挙げることができる。
(4)尿素分解法
2(NH2)2CO+2HNO3+H2SO4 → 2N2O+2CO2+(NH4)2SO4+2H2O
(5)ヒドロキシルアミンからの製法
4NO + 2NH2OH → 3N2O + 3H2O
2NH2OH + NO2 + NO → 2N2O + 3H2O
2NH2OH + O2 → N2O + 3H2O
(6)有機反応からの副生N2O
アジピン酸の製造工程からの副生N2Oの回収。
グリオキザールの製造からの副生N2Oの回収。
(7)亜硝酸又は亜硝酸塩の還元
亜硝酸又は亜硝酸塩の溶液を温亜硫酸、ナトリウム、アマルガム、塩化第一錫等を還元剤として還元する。
(8)硝酸の還元
硝酸を亜鉛又は錫で還元するか、亜硫酸ガスで還元する。
(9)硝酸塩の還元
2KNO3 + 6HCOOH → N2O + 4CO2 + 5H2O + 2HCOOK
(10)次亜硝酸の脱水
H2N2O2 + H2SO4 → H2SO4・H2O + N2O
そして、製造された亜酸化窒素は、ガスメーカにて上記高圧ガス容器31aに充填された後、上記燃料ガス供給源31へと送られて燃料ガス貯留部に一旦貯留される。一方、高圧ガス容器31aは、使用後にガスメーカに返却されて、再充填されることによって繰り返し使用することが可能である。
また、燃料ガスの供給方法については、上記高圧ガス容器31aを用いて供給する(高圧ガス容器31aを交換する)方法に限らず、例えばタンカーやタンクローリーなどの輸送手段を用いて、上記燃料ガス供給源31に設置された貯留タンク(高圧ガス容器31a)に供給する方法を用いることが可能である。さらに、亜酸化窒素を含む燃料ガスをパイプラインを通じて、上記燃料ガス供給源31に設置された貯留タンク(高圧ガス容器31a)に供給する方法を用いることも可能である。
なお、窒素ガスの供給方法についても、上記高圧ガス容器33aを用いて供給する(高圧ガス容器33aを交換する)方法に限らず、上述した燃料ガスの供給方法と同様の方法を用いて供給することが可能である。
本発明では、上記触媒21を用いることによって、亜酸化窒素の分解開始温度を引き下げることができる。そして、亜酸化窒素の分解後は、この亜酸化窒素の分解により発生する分解熱によって、その後に供給される亜酸化窒素の分解を継続的に行うことが可能である。
したがって、本発明では、亜酸化窒素の分解開始前に、上記触媒21を予熱しておくだけでよい。そして、亜酸化窒素の分解後は、この亜酸化窒素の分解により発生する分解熱によって、上記触媒21の温度を、亜酸化窒素を分解するのに必要な温度以上に保ちながら、亜酸化窒素の分解を継続的に行わせることが可能である。
具体的に、上記触媒21の温度は、触媒活性の観点から200〜600℃の範囲が好ましく、分解反応容易性の観点から350〜450℃の範囲がより好ましい。すなわち、本発明では、上記触媒21の温度がこのような範囲となるように、上記ヒータ28による予熱や、上記制御部27による分解ガスの温度制御を行うことが好ましい。
一方、亜酸化窒素自体は約500℃以上で自己分解することから、上記分解反応器22を自己分解温度以上に保つことで、上記触媒21を用いずに亜酸化窒素の分解を継続的に行わせることも可能である。しかしながら、上記触媒21を用いずに亜酸化窒素を自己分解させた場合には、分解副生物としてNOxガスが発生することがわかっている。したがって、本発明では、上記NOxガスの発生を防ぐため、上記触媒21を用いることが好ましい。なお、上記触媒21は、亜酸化窒素の自己分解温度以上であっても使用することが可能である。
燃料ガスの温度については、亜酸化窒素が液化しない温度であればよく、通常は常温以下で使用することが可能である。一方、燃料ガスは、常温よりも高い温度に予熱して使用することも可能である。例えば、燃料ガス中に含まれる亜酸化窒素の濃度が低い場合には、この燃料ガスを予熱することによって、亜酸化窒素の分解を促進させることが可能である。
燃料ガス中に含まれる亜酸化窒素の濃度については、特に限定されるものではなく、例えば1〜100%の範囲で調整されたもの、また、より多くのエネルギーを得る必要がある場合には、50%超〜100%の範囲で調整されたもの、さらに、70%超〜100%の範囲で調整されたものを使用することが可能である。また、上述した亜酸化窒素の濃度調整を行うことによって、亜酸化窒素の分解反応速度等を調整することが可能である。
また、本発明では、上述した亜酸化窒素の濃度調整を行うことによって、分解ガスを呼吸気ガスとして利用することが可能である。具体的に、空気は、その体積の約8割が窒素(N2)で、約2割が酸素(O2)であるため、例えば、上記燃料ガス中に含まれる亜酸化窒素(N2O)と窒素(N2)の割合を体積比(モル比)で、N2O:N2=1:1とする。すなわち、上記燃料ガス中に窒素ガスを添加し、この燃料ガス中に含まれる亜酸化窒素の濃度を50%とすれば、この燃料ガス中に含まれる亜酸化窒素が最終的に窒素と酸素に分解されたときに、亜酸化窒素1モルは窒素1モルと酸素0.5モルに分解されるため、この分解ガス中に含まれる窒素(N2)と酸素(O2)の割合は、体積比(モル比)で、N2:O2=4:1となる。これにより、分解ガス中に含まれる窒素(N2)と酸素(O2)の割合を空気組成に近づけることができるため、この分解ガスを呼吸気ガスとして利用することが可能となる。
具体的に、上記分解ガスを呼吸気ガスとして用いる場合には、その酸素濃度を18〜24%程度の範囲とすることが好ましく、その場合、燃料ガス中に含まれる亜酸化窒素の濃度を44〜63%程度の範囲とすることが好ましい。
また、本発明では、亜酸化窒素の濃度が44%未満のもの、すなわち燃料ガスとして亜酸化窒素の濃度が低いものを使用することが可能である。この場合、燃料ガスの分解によって発生するエネルギー(エネルギー密度)は低くなるものの、この燃料ガス中に含まれる亜酸化窒素の分解反応を緩やかなものとすることで、上述した分解ガスによって高温高圧に晒される触媒21や分解反応器22などの各部材の劣化(例えば熱疲労や酸化など。)を抑制することが可能である。すなわち、本発明では、上述した触媒21や分解反応器22等の各部材料の耐熱性及び耐酸化性を考慮して、燃料ガス中に含まれる亜酸化窒素の濃度を調整することが可能である。
一方、本発明では、亜酸化窒素の濃度が63%超のもの、すなわち燃料ガスとして亜酸化窒素の濃度が高いものを使用することが可能である。この場合、燃料ガスの分解によって発生するエネルギー(エネルギー密度)を高めることができ、上記分解ガスボイラー1及び分解ガスタービン11の出力向上を図ることが可能である。
特に、本発明では、亜酸化窒素の濃度が100%のものを使用した場合でも、上記触媒21を用いて亜酸化窒素の分解を継続的に行わせることが可能である。なお、本発明では、高純度(例えば純度99.9(3N)〜99.999(5N)%)の亜酸化窒素だけでなく、亜酸化窒素の製造コスト等を考慮して、それよりも純度の低い(例えば純度97%未満)亜酸化窒素を使用することも可能である。
上述した窒素ガスによる亜酸化窒素の濃度調整は、亜酸化窒素の分解前に燃料ガス中に窒素ガス等を添加する方法であっても、亜酸化窒素の分解後に分解ガス中に窒素ガス等を添加する方法であってもよい。さらに、予め亜酸化窒素の濃度調整が行われた燃料ガスを用いてもよい。
なお、上記燃料ガス中に含まれる亜酸化窒素以外の成分については、上述した亜酸化窒素の濃度調整のために添加された窒素等の他にも、後述する亜酸化窒素の製造時に混入した未反応物や、副生成物、空気、不可避不純物などを挙げることができる。
また、本発明では、上記分解ガス中の酸素濃度を計測する酸素濃度計(酸素計測手段)を設けてもよい。この場合、上記分解ガス中に含まれる酸素の濃度を計測し、この計測結果に基づいて、上述した分解ガスの温度制御を精度良く行うことが可能である。
なお、上記分解反応器22に導入される燃料ガスの空間速度(Space Velocity)は、その設計に合わせて最適な値に設定すればよく、例えば、10〜140,000hr−1の範囲、好ましくは100〜10,000hr−1の範囲で設定することが可能である。
また、本発明では、上記分解ガスを燃料の燃焼に利用することも可能である。なお、燃料については、上記分解ガス中に含まれる酸素を用いて燃焼可能なものであればよく、例えば石油や石炭、天然ガスなどの化石燃料の他にも、バイオマス燃料などの代替燃料を使用することができる。その他にも気体燃料、液体燃料、固体燃料の中から適宜選択して用いることが可能である。
以下、「特開2002−153734号公報」に記載の亜酸化窒素分解用触媒について説明する。
工場や焼却設備から排出される排ガス中に含まれる亜酸化窒素の濃度は10%以下であり、一方手術室から排出される余剰麻酔ガス中に含まれる亜酸化窒素の濃度は、余剰麻酔ガス排除装置で圧縮空気によって多少は希釈されているとはいえ70%以下であり、非常に高濃度である。本発明の亜酸化窒素の分解触媒は低濃度から高濃度の亜酸化窒素の分解に対応できる触媒である。
また、本発明の亜酸化窒素の分解触媒は、比較的低温での分解処理が可能であり、水分が共存する場合においても水分による活性劣化を受けにくく、しかもNOxの発生量を許容濃度以下に抑制することができ、従来の分解触媒に対し、約1/10〜1/100以下にまでNOxの発生量を低減することができる。
本発明の亜酸化窒素の分解触媒は、アルミニウム、マグネシウム及びロジウムの3種の金属を必須成分として含有する次の〔1〕〜〔3〕のいずれかの触媒、〔1〕アルミニウム、マグネシウム及びロジウムが担体に担持されている触媒、〔2〕マグネシウム及びロジウムがアルミナ担体に担持されている触媒、〔3〕アルミニウムの少なくとも一部とマグネシウムにより、スピネル型結晶性複合酸化物が形成されている担体に、ロジウムが担持されている触媒、及び、アルミニウム及びロジウムの2種の金属と、亜鉛、鉄、マンガン及びニッケルからなる群から選ばれる少なくとも1種の金属を必須成分として含有する次の〔4〕〜〔6〕のいずれかの触媒、〔4〕亜鉛、鉄、マンガン及びニッケルからなる群から選ばれる少なくとも1種の金属と、アルミニウム及びロジウムが担体に担持されている触媒、〔5〕亜鉛、鉄、マンガン及びニッケルからなる群から選ばれる少なくとも1種の金属と、ロジウムがアルミナ担体に担持されている触媒、〔6〕アルミニウムの少なくとも一部と、亜鉛、鉄、マンガン及びニッケルからなる群から選ばれる少なくとも1種の金属により、スピネル型結晶性複合酸化物が形成されている担体にロジウムが担持されている触媒、から選ばれる少なくとも1種の触媒を用いることができる。
〔1〕の触媒に用いられる担体としては、アルミナ、シリカ、ジルコニア、セリア、チタニア及び酸化スズからなる群から選ばれる担体を用いることができ、〔4〕の触媒に用いられる担体としては、アルミナ、ジルコニア、セリア、チタニア及び酸化スズから選ばれる担体を用いることができる。担体は、表面積がそれぞれ30〜300m2/g程度のものを用いることができ、形状については特に制限はないが、反応器あるいは反応方法によって、粒状、粉末状、ハニカム状など、それぞれに適した形状を選ぶことができる。
〔1〕の触媒において、担体に担持するアルミニウムとマグネシウムは、アルミニウムが、マグネシウムに対する原子比で少なくとも2以上含まれることが好ましい。また、マグネシウムは金属原子換算で、触媒全体の0.1〜20.0質量%含まれることが好ましい。
また、アルミニウムの少なくとも一部が、マグネシウムとスピネル型結晶性複合酸化物を形成することが好ましく、スピネル型結晶性複合酸化物は、例えばアルミニウムとマグネシウムを担持させた担体を焼成することによって生成することができる。スピネル構造とはXY2O4の化学式を持つ酸化物に見られる構造で立方晶系に属し、AlとMgはMgAl2O4のスピネル構造を形成することが知られている。本発明の亜酸化窒素の分解触媒は、その理由は定かではないが、アルミニウムの少なくとも一部が、マグネシウムとスピネル型結晶性複合酸化物を形成していることが、亜酸化窒素の分解能を向上させると共に、NOxの発生量を低減させる効果を発揮すると考えられる。
〔4〕の触媒において、担体に担持する、亜鉛、鉄、マンガン及びニッケルからなる群から選ばれる少なくとも1種の金属とアルミニウムは、アルミニウムが、亜鉛、鉄、マンガン及びニッケルからなる群から選ばれる少なくとも1種の金属に対する原子比で、少なくとも2以上含まれることが好ましい。また、亜鉛、鉄、マンガン及びニッケルからなる群から選ばれる少なくとも1種の金属は、金属原子換算で触媒全体の0.1〜40.0質量%含まれることが好ましい。
また、アルミニウムの少なくとも一部が、亜鉛、鉄、マンガン及びニッケルからなる群から選ばれる少なくとも1種の金属とスピネル型結晶性複合酸化物を形成することが好ましい。スピネル型結晶性複合酸化物は、アルミニウムと、亜鉛、鉄、マンガン及びニッケルからなる群から選ばれる少なくとも1種の金属を担持させた担体を焼成することによって生成することができる。アルミニウムと、亜鉛、鉄、マンガン及びニッケルはMAl2O4(M=Zn、Fe、Mn、Ni)のスピネル構造を形成することが知られている。本発明の亜酸化窒素の分解触媒は、その理由は定かではないが、アルミニウムの少なくとも一部が、亜鉛、鉄、マンガン及びニッケルからなる群から選ばれる少なくとも1種の金属とスピネル型結晶性複合酸化物を形成していることが、亜酸化窒素の分解能を向上させると共に、NOxの発生量を低減させる効果を発揮すると考えられる。
〔2〕の触媒に用いられる担体はアルミナであり、アルミナに特に制限はないが、表面積が50〜300m2/g程度のものを用いることができる。アルミナに担持するマグネシウムは、アルミニウムが、マグネシウムに対する原子比で少なくとも2以上含まれることが好ましい。マグネシウムは、金属原子換算で触媒全体の0.1〜20.0質量%含まれることが好ましい。また、アルミニウムの少なくとも一部が、マグネシウムとスピネル型結晶性複合酸化物を形成することが好ましい。
〔5〕の触媒に用いられる担体はアルミナであり、アルミナに特に制限はないが、表面積が50〜300m2/g程度のものを用いることができる。アルミナに担持する、亜鉛、鉄、マンガン及びニッケルからなる群から選ばれる少なくとも1種の金属は、アルミニウムが、亜鉛、鉄、マンガン及びニッケルからなる群から選ばれる少なくとも1種の金属に対する原子比で、少なくとも2以上含まれることが好ましい。亜鉛、鉄、マンガン及びニッケルからなる群から選ばれる少なくとも1種の金属は、金属原子換算で触媒全体の0.1〜40.0質量%含まれることが好ましい。また、アルミニウムの少なくとも一部が、亜鉛、鉄、マンガン及びニッケルからなる群から選ばれる少なくとも1種の金属とスピネル型結晶性複合酸化物を形成することが好ましい。
〔3〕の触媒は、アルミニウムの少なくとも一部とマグネシウムにより、スピネル型結晶性複合酸化物が形成されている担体を用いる。〔3〕の触媒におけるアルミニウムとマグネシウムの原子比は、アルミニウムが、マグネシウムに対する原子比で少なくとも2以上含まれることが好ましい。また、マグネシウムは金属原子換算で触媒全体の0.1〜20.0質量%含まれることが好ましい。
〔6〕の触媒は、アルミニウムの少なくとも一部と、亜鉛、鉄、マンガン及びニッケルからなる群から選ばれる少なくとも1種の金属により、スピネル型結晶性複合酸化物が形成されている担体を用いる。〔6〕の触媒におけるアルミニウムと、亜鉛、鉄、マンガン及びニッケルからなる群から選ばれる少なくとも1種の金属の原子比は、アルミニウムが、亜鉛、鉄、マンガン及びニッケルからなる群から選ばれる少なくとも1種の金属に対する原子比で、少なくとも2以上含まれることが好ましい。また、亜鉛、鉄、マンガン及びニッケルからなる群から選ばれる少なくとも1種の金属は、金属原子換算で触媒全体の0.1〜40.0質量%含まれることが好ましい。
本発明の亜酸化窒素の分解触媒に含まれるロジウムは、〔1〕〜〔6〕のいずれの触媒を用いる場合も、金属原子換算で触媒全体の0.05〜10質量%であることが好ましく、さらに好ましくは、0.1〜6.0質量%であることがよい。ロジウムの担持量を増加させることによって低温における触媒活性を向上させることは可能であるが、10質量%以上担持させることは触媒のコストを考えると好ましくなく、また0.05質量%以下であると十分な亜酸化窒素の分解活性が得られない。
次に本発明の亜酸化窒素の分解触媒の製造方法について説明する。
本発明の亜酸化窒素の分解触媒は各種の製造方法を用いることができ、例えば(1)含浸法、(2)共沈法、(3)混練法、等を用いることができる。以下に、この3つの製造方法を例に挙げて、本発明の亜酸化窒素の分解触媒の製造方法を説明する。
(1)含浸法を用いる触媒の製造方法
含浸法を用いると、前記の〔1〕〜〔6〕の触媒を製造することができる。〔1〕の触媒を製造する場合には、アルミナ、シリカ、ジルコニア、セリア、チタニア及び酸化スズからなる群から選ばれる担体に、先ずアルミニウム及びマグネシウムの無機酸塩(硝酸塩、塩酸塩、硫酸塩等)または有機酸塩(シュウ酸塩、酢酸塩等)を含浸させる。〔4〕の触媒を製造する場合には、アルミナ、ジルコニア、セリア、チタニア及び酸化スズからなる群から選ばれる担体に、先ずアルミニウム及び、亜鉛、鉄、マンガン及びニッケルからなる群から選ばれる少なくとも1種の金属の無機酸塩(硝酸塩、塩酸塩、硫酸塩等)または有機酸塩(シュウ酸塩、酢酸塩等)を含浸させる。〔2〕の触媒を製造する場合には、アルミナ担体にマグネシウムの無機酸塩(硝酸塩、塩酸塩、硫酸塩等)または有機酸塩(シュウ酸塩、酢酸塩等)を含浸させる。〔5〕の触媒を製造する場合には、アルミナ担体に、亜鉛、鉄、マンガン及びニッケルからなる群から選ばれる少なくとも1種の金属の無機酸塩(硝酸塩、塩酸塩、硫酸塩等)または有機酸塩(シュウ酸塩、酢酸塩等)を含浸させる。アルミニウム塩、マグネシウム塩及び、亜鉛、鉄、マンガン及びニッケルからなる群から選ばれる少なくとも1種の金属塩は、好ましくはいずれも硝酸塩を用いるのがよい。
〔1〕の触媒を製造する場合、アルミニウムとマグネシウムの担体に担持する量としては、アルミニウムがマグネシウム対する原子比で2以上となるように担持することが好ましく、またマグネシウムの担持量が、触媒全体の0.1〜20.0質量%となるようにすることが好ましい。〔4〕の触媒を製造する場合、アルミニウムと、亜鉛、鉄、マンガン及びニッケルからなる群から選ばれる少なくとも1種の金属の担体に担持する量としては、アルミニウムが、亜鉛、鉄、マンガン及びニッケルからなる群から選ばれる少なくとも1種の金属に対する原子比で2以上となるように担持することが好ましく、また、亜鉛、鉄、マンガン及びニッケルからなる群から選ばれる少なくとも1種の金属の担持量が、触媒全体の0.1〜40.0質量%となるようにすることが好ましい。〔2〕の触媒を製造する場合には、マグネシウムが、アルミニウムに対する原子比で1/2以下となるように担持することが好ましく、またマグネシウムの担持量が、触媒全体の0.1〜20.0質量%となるようにすることが好ましい。また、〔5〕の触媒を製造する場合には、亜鉛、鉄、マンガン及びニッケルからなる群から選ばれる少なくとも1種の金属が、アルミニウムに対する原子比で1/2以下となるように担持することが好ましく、また亜鉛、鉄、マンガン及びニッケルからなる群から選ばれる少なくとも1種の金属の担持量が、触媒全体の0.1〜40.0質量%となるようにすることが好ましい。
担体に目的とする金属塩を担持した後、担体を乾燥して焼成処理することによって、例えばアルミニウム及びマグネシウムを含有し、アルミニウムの少なくとも一部が、マグネシウムとスピネル型結晶性複合酸化物を形成した担体を得ることができ、この担体を〔1〕の触媒の担体として用いる。また、同様にして、アルミニウムと、亜鉛、鉄、マンガン及びニッケルからなる群から選ばれる少なくとも1種の金属を含有し、アルミニウムの少なくとも一部が、亜鉛、鉄、マンガン及びニッケルからなる群から選ばれる少なくとも1種の金属とスピネル型結晶性複合酸化物を形成した担体を得ることができ、この担体を〔4〕の触媒の担体として用いる。例えば〔1〕の触媒におけるアルミニウム塩及びマグネシウム塩を含浸させた後の乾燥温度、〔4〕の触媒におけるアルミニウム塩と、亜鉛、鉄、マンガン及びニッケルからなる群から選ばれる少なくとも1種の金属塩を含浸させた後の乾燥温度はそれぞれ特に制限はないが、好ましくは80〜150℃の温度範囲がよく、さらに好ましくは100〜130℃の温度範囲がよい。また、乾燥雰囲気は特に制限はなく、窒素や空気を用いることができる。乾燥時間は特に制限はないが、含浸法を用いた場合、通常2〜4時間程度でよい。
含浸して乾燥させた後の担体の焼成処理は、400〜900℃の温度範囲で行うことができ、好ましくは、500〜700℃である。焼成温度が400℃より低い場合は、結晶化が十分ではなく、900℃以上では担体の比表面積の減少を招き好ましくない。焼成時間は特に限定されないが、1〜10時間程度がよく、好ましくは2〜4時間程度であり、段階的に焼成温度を変化させてもよい。長時間の焼成は、その効果が飽和するので経済的に好ましくなく、短時間の焼成ではその効果が薄い場合がある。また、焼成は焼成炉やマッフル炉等を用いて行うことができ、この時の流通ガスとしては、窒素または空気のいずれを使用してもよい。
次に、前記の焼成して得られた担体にロジウム塩を担持する。ロジウム塩としては、無機酸塩(硝酸塩、塩酸塩、硫酸塩等)または有機酸塩(シュウ酸塩、酢酸塩等)を用いることができ、硝酸塩を用いることが好ましい。ロジウム塩を担持する工程は、例えばアルミニウム、マグネシウム及びロジウムの3種の金属を必須成分として含有する触媒を製造する場合には、前記の方法を用いて得られたアルミニウムの少なくとも一部がマグネシウムとスピネル型結晶性複合酸化物を形成する担体に対して行うことが好ましいが、担体にアルミニウムとマグネシウムを含浸担持する工程、あるいはアルミナ担体にマグネシウムを含浸担持する工程と同時に行ってもよい。また、ロジウムの担持量は、触媒全体の0.05〜10質量%となるようにすることが好ましい。
同様に、ロジウム塩を担持する工程は、アルミニウム及びロジウムの2種の金属と、亜鉛、鉄、マンガン及びニッケルからなる群から選ばれる少なくとも1種の金属を必須成分として含有する触媒を製造する場合には、前記の方法を用いて得られたアルミニウムの少なくとも一部が、亜鉛、鉄、マンガン及びニッケルからなる群から選ばれる少なくとも1種の金属とスピネル型結晶性複合酸化物を形成する担体に対して行うことが好ましいが、担体にアルミニウムと、亜鉛、鉄、マンガン及びニッケルからなる群から選ばれる少なくとも1種の金属を含浸担持する工程、あるいはアルミナ担体に、亜鉛、鉄、マンガン及びニッケルからなる群から選ばれる少なくとも1種の金属を含浸担持する工程と同時に行ってもよい。また、ロジウムの担持量は、触媒全体の0.05〜10質量%となるようにすることが好ましい。ここで、予めアルミニウムの少なくとも一部が、マグネシウムとスピネル型結晶性複合酸化物を形成する担体を用いれば、この担体に前記と同様にしてロジウム塩を担持することにより〔3〕の触媒を製造することができる。また、予めアルミニウムの少なくとも一部が、亜鉛、鉄、マンガン及びニッケルからなる群から選ばれる少なくとも1種の金属とスピネル型結晶性複合酸化物を形成する担体を用いれば、この担体にロジウム塩を担持することにより〔6〕の触媒を製造することができる。
次に、このロジウムを担持させた触媒前駆体を前記と同様の乾燥条件で乾燥し、乾燥した触媒前駆体を焼成する。この焼成温度は200〜500℃であることが好ましく、さらに好ましくは300〜400℃がよい。焼成して得られた触媒は亜酸化窒素分解触媒として使用することができるが、さらに還元処理をすることが好ましく、還元処理をすることで、より活性の高いロジウム含有触媒を得ることができる。還元処理は、例えば、(1)ヒドラジンで還元後に再乾燥し、焼成する方法、または(2)水素還元する方法、によって行うことができ、水素還元する方法を用いることが好ましい。水素還元する方法を用いる場合は、還元温度は200〜500℃であることが好ましく、より好ましくは300〜400℃がよい。還元時間は特に限定されないが、1〜10時間程度で処理することができ、好ましくは2〜4時間程度である。また、焼成処理をせずに還元処理を行ってもよく、この場合も活性の高いロジウム含有触媒を得ることができる。焼成処理をせずに還元処理を行って触媒を製造する方法としては、200〜500℃の温度で水素還元する方法が好ましい。
(2)共沈法を用いる触媒の製造方法
共沈法を用いると、前記の〔3〕及び〔6〕の触媒を製造することができる。共沈法を用いて〔3〕の触媒を製造する方法としては、例えばアルミニウムとマグネシウムの硝酸塩を含む水溶液にアンモニア水を滴下して中和沈殿させ、必要に応じて熟成放置し、ろ過水洗し、洗浄水の電導度などで十分に水洗したことを確認する。次に、含浸法と同様の条件で10〜12時間程度乾燥後、得られた乾燥体を粉砕し、粒度を揃えて成型する。さらに窒素または空気雰囲気において、含浸法と同様の条件で焼成処理することにより、アルミニウムの少なくとも一部が、マグネシウムとスピネル型結晶性複合酸化物を形成する担体を得る。
アルミニウムとマグネシウムの量としては、アルミニウムがマグネシウムに対する原子比で2以上となるようにすることが好ましく、マグネシウムは、金属原子換算で触媒全体の0.1〜20.0質量%含まれることが好ましい。こうして得られたアルミニウムの少なくとも一部が、マグネシウムとスピネル型結晶性複合酸化物を形成する担体にロジウム塩を担持するが、その方法、担持量及びその後の処理方法としては前記の含浸法と同様に行うことができる。
また、共沈法を用いて〔6〕の触媒を製造する方法としては、例えばアルミニウムの硝酸塩と、亜鉛、鉄、マンガン及びニッケルからなる群から選ばれる少なくとも1種の金属の硝酸塩を含む水溶液にアンモニア水を滴下して中和沈殿させ、必要に応じて熟成放置し、ろ過水洗し、洗浄水の電導度などで十分に水洗したことを確認する。次に、含浸法と同様の条件で10〜12時間程度乾燥後、得られた乾燥体を粉砕し、粒度を揃えて成型する。さらに窒素または空気雰囲気において、含浸法と同様の条件で焼成処理することにより、アルミニウムの少なくとも一部が、亜鉛、鉄、マンガン及びニッケルからなる群から選ばれる少なくとも1種の金属とスピネル型結晶性複合酸化物を形成する担体を得る。
アルミニウムと、亜鉛、鉄、マンガン及びニッケルからなる群から選ばれる少なくとも1種の金属の量としては、アルミニウムが、亜鉛、鉄、マンガン及びニッケルからなる群から選ばれる少なくとも1種の金属に対する原子比で2以上となるようにすることが好ましく、亜鉛、鉄、マンガン及びニッケルからなる群から選ばれる少なくとも1種の金属は、金属原子換算で触媒全体の0.1〜40.0質量%含まれることが好ましい。こうして得られた、アルミニウムの少なくとも一部が、亜鉛、鉄、マンガン及びニッケルからなる群から選ばれる少なくとも1種の金属とスピネル型結晶性複合酸化物を形成する担体にロジウム塩を担持するが、その方法、担持量及びその後の処理方法としては前記の含浸法と同様に行うことができる。
(3)混練法を用いる触媒の製造方法
混練法を用いると、〔3〕及び〔6〕の触媒を製造することができる。混練法を用いて〔3〕の触媒を製造する方法としては、例えば、アルミナ及び/または水酸化アルミニウムと、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム及び/またはマグネシウム塩に、例えば必要に応じて水を加え、機械的に混合して得られる混合物を乾燥し、さらに含浸法と同様の条件で焼成処理を行い、前記のスピネル型結晶性複合酸化物を得ることができる。アルミニウムとマグネシウムの量としては、アルミニウムがマグネシウムに対する原子比で2以上となるようにすることが好ましく、マグネシウムは、金属原子換算で触媒全体の0.1〜20.0質量%含まれることが好ましい。
こうして得られたアルミニウムの少なくとも一部がマグネシウムとスピネル型結晶性複合酸化物を形成する焼成体にロジウム塩を担持するが、その方法、担持量及びその後の処理方法としては前記の含浸法と同様の方法を用いることができる。また、ロジウム塩はアルミナ等を機械的に混合する際にあらかじめ加えてもよい。
混練法を用いて〔6〕の触媒を製造する方法としては、例えば、アルミナ及び/または水酸化アルミニウムと、亜鉛、鉄、マンガン及びニッケルからなる群から選ばれる少なくとも1種の酸化物、水酸化物及び/または金属塩に、例えば必要に応じて水を加え、機械的に混合して得られる混合物を乾燥し、さらに含浸法と同様の条件で焼成処理を行い、前記のスピネル型結晶性複合酸化物を得ることができる。また、アルミニウムと、亜鉛、鉄、マンガン及びニッケルからなる群から選ばれる少なくとも1種の金属の量としては、アルミニウムが、亜鉛、鉄、マンガン及びニッケルからなる群から選ばれる少なくとも1種の金属に対する原子比で2以上となるようにすることが好ましく、亜鉛、鉄、マンガン及びニッケルからなる群から選ばれる少なくとも1種の金属は、金属原子換算で触媒全体の0.1〜40.0質量%含まれることが好ましい。
こうして得られた、アルミニウムの少なくとも一部が、亜鉛、鉄、マンガン及びニッケルからなる群から選ばれる少なくとも1種の金属とスピネル型結晶性複合酸化物を形成する焼成体にロジウム塩を担持するが、その方法、担持量及びその後の処理方法としては前記の含浸法と同様の方法を用いることができる。また、ロジウム塩はアルミナ等を機械的に混合する際にあらかじめ加えてもよい。
次に本発明の分解触媒を用いた亜酸化窒素の分解方法について説明する。本発明の分解触媒を用いて亜酸化窒素の分解反応を行う場合、200〜600℃の温度範囲で行うことができる。好ましくは300〜500℃の温度範囲、さらに好ましくは350〜450℃の温度範囲で、本発明の分解触媒と亜酸化窒素を気相で接触させればよい。200℃より温度が低いと亜酸化窒素の分解が十分ではなく、また、600℃以上では触媒寿命が短くなる傾向があるので好ましくない。触媒床の方式としては、特に制限されるものはないが、固定床が一般的に好ましく用いられる。
また、従来のパラジウムを用いた触媒では水分の影響によって触媒の活性が低下し、水分を除いても元の活性に戻らないのに対し、本発明の分解触媒は、1〜3%の水分共存によって活性は僅かに低下する場合があるものの、水分を除くと再び元の活性に戻るという特徴を有する。
次に本発明の分解触媒を用いて分解することができるガスの組成について説明する。工場や焼却設備から排出される排ガス中に含まれる亜酸化窒素の濃度は、10%以下であり、本発明の分解触媒を用いることにより、排ガス中に含まれる1ppm〜10%の濃度の亜酸化窒素を分解することができる。一方、手術室から余剰麻酔ガス排除装置によって排出される亜酸化窒素の濃度は3〜70%と非常に高濃度の場合がある。また、麻酔ガス中に含まれる亜酸化窒素を分解する場合には、通常酸素が13〜20%存在する反応となり、分解触媒にとって過酷な条件下での反応となる。従って、除熱が可能であり、温度コントロールが十分にできれば、分解処理する亜酸化窒素の濃度に特に制限はないが、亜酸化窒素が窒素と酸素に分解する反応は発熱反応であるため、亜酸化窒素の濃度は3〜50%がよく、好ましくは3〜25%、さらに好ましくは3〜10%であることがよい。
単位触媒当たりの供給ガス量である空間速度(SV:Space Velocity)は、10hr−1〜20000hr−1の範囲であることがよく、好ましくは100hr−1〜10000hr−1の範囲である。
以下、「特開2002−253967号公報」に記載の亜酸化窒素分解用触媒について説明する。
本発明の亜酸化窒素の分解触媒は、低濃度から高濃度の亜酸化窒素を分解することができる触媒である。手術室から排出される余剰麻酔ガス中に含まれる亜酸化窒素の濃度は、圧縮空気によって多少は希釈されているとはいえ70%以下であり、非常に高濃度であるが、本発明の亜酸化窒素の分解触媒を用いれば対応することができる。
また、本発明の亜酸化窒素の分解触媒は、余剰麻酔ガス中に含まれる揮発性麻酔剤による劣化を受けた場合においても、賦活再生をすることによって活性を回復させることができる。しかも比較的低温で亜酸化窒素を分解することができ、水分が共存する場合においても水分による活性劣化を受けにくく、NOxの発生量を許容濃度以下に抑制することができ、従来の分解触媒に対し、約1/10〜1/100以下のレベルまでNOxの発生量を低減することができる。
本発明の亜酸化窒素の分解触媒は、ロジウム、ルテニウムおよびパラジウムからなる群から選ばれる少なくとも1つの貴金属を必須成分として含有することを特徴とし、次の(1)〜(3)のいずれかの触媒を用いることができる。
(1) シリカまたはシリカアルミナから選ばれる担体に、(a)ロジウム、ルテニウムおよびパラジウムからなる群から選ばれる少なくとも1つの貴金属を担持してなる触媒。
(2) シリカ担体に、(a)ロジウム、ルテニウムおよびパラジウムからなる群から選ばれる少なくとも1つの貴金属、(b)アルミニウム、および(c)亜鉛、鉄およびマンガンからなる群から選ばれる少なくとも1つの金属、を担持してなる触媒。
(3) シリカアルミナ担体に、(a)ロジウム、ルテニウムおよびパラジウムからなる群から選ばれる少なくとも1つの貴金属、および(d)マグネシウム、亜鉛、鉄およびマンガンからなる群から選ばれる少なくとも1つの金属、を担持してなる触媒。
(1)の触媒に用いられる担体は、シリカまたはシリカアルミナであり、これらの担体に特に制限はないが、表面積が50〜300m2/g程度のものを用いることができる。形状については特に制限はなく、反応器あるいは反応方法によって、粒状、粉末状、ハニカム状など、それぞれに適した形状を選ぶことができる。
(2)の触媒に用いられる担体は、シリカであり特に制限はないが、表面積が50〜300m2/g程度のものを用いることができる。形状については特に制限はないが、反応器あるいは反応方法によって、粒状、粉末状、ハニカム状など、それぞれに適した形状を選ぶことができる。
シリカ担体に担持する成分のうち、亜鉛、鉄およびマンガンからなる群(c)から選ばれる少なくとも1つの金属は、触媒質量全体の0.1〜5.0質量%含有することが好ましく、さらに好ましくは0.2〜1.0質量%含有することが望ましい。群(c)から選ばれる金属が触媒質量全体の5.0質量%以上含まれていても効果が飽和することがある。
シリカ担体に担持するアルミニウムは、亜鉛、鉄およびマンガンからなる群(c)から選ばれる少なくとも1つの金属に対する原子比で、少なくとも2以上含有することが好ましい。また、アルミニウムの少なくとも一部が、群(c)から選ばれる少なくとも1つの金属とスピネル型結晶性複合酸化物を形成することが好ましく、スピネル型結晶性複合酸化物は、例えばアルミニウムと亜鉛、鉄およびマンガンからなる群から選ばれる少なくとも1つの金属を担持させた担体を焼成することによって生成することができる。
スピネル構造とはXY2O4の化学式を持つ酸化物に見られる構造で、立方晶系に属し、AlとZn、Fe、Mnは、それぞれ、ZnAl2O4、FeAl2O4、MnAl2O4のスピネル構造を形成することが知られている。本発明の亜酸化窒素の分解触媒は、その理由は定かではないが、アルミニウムの少なくとも一部が、群(c)から選ばれる少なくとも1つの金属の一部もしくは全部とスピネル型結晶性複合酸化物を形成することによって、亜酸化窒素の分解能を向上させると共に、NOxの発生量を低減させる効果を発揮すると考えられる。
(3)の触媒に用いられる担体はシリカアルミナであり特に制限はないが、表面積が50〜300m2/g程度のものを用いることができる。シリカアルミナ担体に担持する、マグネシウム、亜鉛、鉄およびマンガンからなる群(d)から選ばれる少なくとも1つの金属は、触媒質量全体の0.1〜5.0質量%含有することが好ましく、さらに好ましくは0.2〜1.0質量%含有することが望ましい。群(d)から選ばれる金属が触媒質量全体の5.0質量%以上含まれていても効果が飽和することがある。
(3)の触媒に含まれるアルミニウムは、マグネシウム、亜鉛、鉄およびマンガンからなる群(d)から選ばれる少なくとも1つの金属に対する原子比で、少なくとも2以上含有することが好ましい。また、アルミニウムの少なくとも一部が、群(d)から選ばれる少なくとも1つの金属とスピネル型結晶性複合酸化物を形成することが好ましい。スピネル型結晶性複合酸化物は、シリカアルミナ担体に、群(d)から選ばれる少なくとも1つの金属を担持させ、担体を焼成することによって生成することができる。
本発明の亜酸化窒素の分解触媒に含まれる、ロジウム、ルテニウムおよびパラジウムからなる群(a)から選ばれる少なくとも1つの貴金属は、前記の(1)〜(3)のいずれの触媒を用いる場合も、触媒質量全体の0.05〜10質量%含有することが好ましく、さらに好ましくは、0.1〜6.0質量%含有することが望ましい。群(a)から選ばれる少なくとも1つの貴金属の担持量を増加させることによって低温における触媒活性を向上させることは可能であるが、10質量%以上担持させることは触媒のコストを考えると好ましくなく、また0.05質量%以下であると十分な亜酸化窒素の分解活性が得られない場合がある。
次に本発明の亜酸化窒素分解触媒の製造方法について説明する。
本発明の亜酸化窒素分解触媒は各種の製造方法を用いることができ、例えば(1)含浸法、(2)共沈法、(3)混練法、等の方法を用いることができる。以下に含浸法を用いて前記の(2)の触媒を製造する方法について説明するが、本発明はこれに限定されないことはいうまでもない。
含浸法を用いて(2)の触媒を製造する方法は以下の3工程を含むことができる。
〔1〕シリカ担体に、(b)アルミニウム、および(c)亜鉛、鉄およびマンガンからなる群から選ばれる少なくとも1つの金属を担持する工程。
〔2〕工程〔1〕から得られる担体を400〜900℃で焼成する工程。
〔3〕工程〔2〕から得られる焼成された担体に、(a)ロジウム、ルテニウムおよびパラジウムからなる群から選ばれる少なくとも1つの貴金属を担持する工程。
工程〔1〕では、シリカ担体に、アルミニウムの無機酸塩、および、亜鉛、鉄およびマンガンからなる群(c)から選ばれる少なくとも1つの金属の無機酸塩(硝酸塩、塩酸塩、硫酸塩等)または有機酸塩(シュウ酸塩、酢酸塩等)を含浸させる。好ましくは、アルミニウムと群(c)から選ばれる少なくとも1つの金属の塩は、どちらも硝酸塩を用いるのがよい。
アルミニウムと群(c)から選ばれる少なくとも1つの金属を担体に担持する量としては、アルミニウムを群(c)から選ばれる少なくとも1つの金属に対する原子比で2以上となるように担持することが好ましく、また群(c)から選ばれる少なくとも1つの金属の担持量が、触媒質量全体の0.1〜5.0質量%となるようにすることが好ましい。
工程〔1〕を行った後、好ましくは担体を乾燥し、さらに焼成工程〔2〕を行うことによって、アルミニウムおよび群(c)から選ばれる少なくとも1つの金属を含有し、担持したアルミニウムの少なくとも一部が、亜鉛、鉄およびマンガンからなる群(c)から選ばれる少なくとも1つの金属とスピネル型結晶性複合酸化物を形成した担体を得ることができる。工程〔1〕を行った後の乾燥温度は特に制限はないが、好ましくは80〜150℃の温度範囲がよく、さらに好ましくは100〜130℃の温度範囲がよい。また、乾燥雰囲気は特に制限はないが、空気を用いることが好ましい。乾燥時間は特に制限はないが、含浸法を用いた場合、通常2〜4時間程度でよい。
焼成工程〔2〕は、400〜900℃の温度範囲で行うことができ、好ましくは、500〜700℃が望ましい。焼成温度が400℃より低い場合は、結晶化が十分ではない場合があり、900℃以上では担体の比表面積が減少する傾向があり好ましくない。焼成時間は特に限定されないが、1〜10時間程度がよく、好ましくは2〜4時間程度がよく、段階的に焼成温度を変化させてもよい。長時間の焼成は、その効果が飽和する場合があり経済的に好ましくなく、短時間の焼成ではその効果が少ないことがある。また、焼成は焼成炉やマッフル炉等を用いて行うことができ、この時の流通ガスとしては、窒素または空気のいずれを使用してもよい。
次に、工程〔2〕で得られた、アルミニウムの少なくとも一部が、亜鉛、鉄およびマンガンからなる群(c)から選ばれる少なくとも1つの金属とスピネル型結晶性複合酸化物を形成する担体に、ロジウム、ルテニウムおよびパラジウムからなる群(a)から選ばれる少なくとも1つの貴金属の塩を担持する工程〔3〕を行う。群(a)から選ばれる少なくとも1つの貴金属の塩としては、無機酸塩(硝酸塩、塩酸塩、硫酸塩等)または有機酸塩(シュウ酸塩、酢酸塩等)を用いることができ、無機酸塩の硝酸塩を用いることが好ましい。
工程〔3〕は、アルミニウムの少なくとも一部が、群(c)から選ばれる少なくとも1つの金属とスピネル型結晶性複合酸化物を形成する工程〔2〕で得られた担体に対して行うことが好ましいが、工程〔1〕と同時に行ってもよい。その場合には、工程〔1〕と工程〔3〕を同時に行った後に工程〔2〕を行い、アルミニウムの少なくとも一部が、群(c)から選ばれる少なくとも1つの金属とスピネル型結晶性複合酸化物を形成することが好ましい。いずれの場合であっても、ロジウム、ルテニウムおよびパラジウムからなる群(a)から選ばれる少なくとも1つの貴金属の担持量は、触媒質量全体の0.05〜10質量%となるようにすることが好ましい。
次に、工程〔3〕を行った触媒前駆体を、前記と同様の乾燥条件で乾燥する。乾燥した触媒前駆体は還元処理をすることが好ましく、還元処理をすることにより、活性の高い、群(a)から選ばれる少なくとも1つの貴金属を含有する触媒を得ることができる。還元処理は、例えば、(1)ヒドラジンで還元後に再乾燥し、焼成する方法、または(2)水素還元する方法、によって行うことができ、水素還元する方法を用いることが好ましい。水素還元する方法を用いる場合は、還元温度は200〜500℃であることが好ましく、より好ましくは300〜400℃がよい。還元時間は特に限定されないが、1〜10時間程度で処理することができ、好ましくは2〜4時間程度がよい。また、前記の乾燥した触媒前駆体は(1)または(2)の還元処理をせず、窒素または空気中で焼成してもよい。この時の焼成温度としては、200〜500℃であることが好ましく、より好ましくは300〜400℃がよい。
次に前記の亜酸化窒素分解触媒を用いる亜酸化窒素の分解方法について説明する。
本発明の亜酸化窒素の分解方法は次の4つの方法がある。本発明の亜酸化窒素の分解方法(1)は、亜酸化窒素を含有するガスを、前記の触媒と、200〜600℃で接触させることを特徴とする。また、本発明の亜酸化窒素の分解方法(2)は、触媒が、シリカまたはシリカアルミナからなる担体に、ロジウム、ルテニウムおよびパラジウムからなる群から選ばれる少なくとも1つの貴金属を担持してなる触媒であり、亜酸化窒素を含有するガスと該触媒を200〜600℃で接触させ、分解過程で触媒の活性低下が認められた時点で、亜酸化窒素を含有するガスの供給を停止して500℃〜900℃に加熱し、触媒を賦活再生した後、亜酸化窒素を含有するガスの供給を再開することを特徴とする。
本発明の亜酸化窒素の分解方法(3)は、触媒が、担体がシリカであり、該担体に、(a)ロジウム、ルテニウムおよびパラジウムからなる群から選ばれる少なくとも1つの貴金属、(b)アルミニウム、および(c)亜鉛、鉄およびマンガンからなる群から選ばれる少なくとも1つの金属、を担持してなる触媒であり、亜酸化窒素を含有するガスと該触媒を200〜600℃で接触させ、分解過程で触媒の活性低下が認められた時点で、亜酸化窒素を含有するガスの供給を停止して500℃〜900℃に加熱し、触媒を賦活再生した後、亜酸化窒素を含有するガスの供給を再開することを特徴とする。
また、本発明の亜酸化窒素の分解方法(4)は、触媒が、担体がシリカアルミナであり、該担体に、(a)ロジウム、ルテニウムおよびパラジウムからなる群から選ばれる少なくとも1つの貴金属、および(d)マグネシウム、亜鉛、鉄およびマンガンからなる群から選ばれる少なくとも1つの金属、を担持してなる触媒であり、亜酸化窒素を含有するガスと該触媒を200〜600℃で接触させ、分解過程で触媒の活性低下が認められた時点で、亜酸化窒素を含有するガスの供給を停止して500℃〜900℃に加熱し、触媒を賦活再生した後、亜酸化窒素を含有するガスの供給を再開することを特徴とする。
本発明の亜酸化窒素の分解方法において、亜酸化窒素を含有するガスと分解触媒との接触温度は、200〜600℃、好ましくは、300〜500℃、さらに好ましくは、350℃〜450℃とすることが望ましい。接触温度が200℃より低い場合、亜酸化窒素の分解が十分ではない場合があり、また、600℃以上では触媒寿命が短くなる傾向がある。また触媒床の方式としては、特に制限されないが、固定床を採用することができる。
亜酸化窒素を含有するガスの組成としては、工場や焼却設備から排出される排ガス中に含まれる亜酸化窒素の濃度は通常1000ppm以下であるが、手術室の余剰麻酔ガス排除装置によって排出される亜酸化窒素の濃度は約8〜50%と非常に高濃度である。また、余剰麻酔ガス中には通常酸素が13〜20%存在するため、分解触媒にとっては過酷な条件となる。除熱が可能であり、また温度コントロールができれば、分解触媒と接触させる亜酸化窒素濃度に特に制限はないが、亜酸化窒素が窒素と酸素に分解する反応は発熱反応であるため、亜酸化窒素濃度は50%以下がよく、好ましくは25%以下であり、さらに好ましくは5%程度であることが望ましい。単位触媒当たりの供給ガス量である空間速度(Space Velocity)は、10hr−1〜20000hr−1の範囲が好ましく、より好ましくは100hr−1〜10000hr−1の範囲が望ましい。
また亜酸化窒素を含有するガスは、揮発性麻酔剤を含有することがあるが、本発明の亜酸化窒素分解触媒は揮発性麻酔剤による被毒を受けにくく、しかも揮発性麻酔剤による被毒を受けて触媒活性が低下した場合であっても、本発明の分解方法を用いることにより、触媒活性を回復させ、長期間にわたって亜酸化窒素の分解を行うことができる。従って、亜酸化窒素分解触媒の活性低下が認められた場合には、一旦亜酸化窒素を含有するガスの供給を停止し、焼成処理を行って触媒を賦活再生した後に、亜酸化窒素を含有するガスの供給を再開することができる。
触媒を賦活再生する焼成処理は、500〜900℃の温度で行うことができ、好ましくは600〜800℃、さらに好ましくは650〜750℃の温度で活性が低下した分解触媒を焼成処理すればよい。焼成処理を行う間は、ヘリウムや窒素などの不活性ガスや空気を触媒層に流通させることができ、不活性ガス中に酸素が含まれていてもよい。空気を用いることが簡便で好ましい。焼成処理時間としては10分〜12時間、好ましくは20分〜6時間、さらに好ましくは30分〜2時間程度が望ましい。前記の、ロジウム、ルテニウムおよびパラジウムからなる群(a)から選ばれる少なくとも1つの貴金属を担持した触媒のうち、揮発性麻酔剤による被毒を受けにくく、しかも触媒の活性が回復しやすいのは、ルテニウムを含有する触媒であり、以下ロジウム、パラジウムの順に活性が低下する傾向が見られる。従って、群(a)から選ばれる貴金属成分としては少なくともルテニウムを用いることが望ましい。また、焼成処理を行った後に、水素による還元処理を行ってもよい。
本発明の分解方法(3)に用いられる触媒は、シリカ担体に担持する成分のうち、亜鉛、鉄およびマンガンからなる群(c)から選ばれる少なくとも1つの金属を、触媒質量全体の0.1〜5.0質量%含有することが好ましく、さらに好ましくは0.2〜1.0質量%含有することが望ましい。群(c)から選ばれる金属が触媒質量全体の5.0質量%以上含まれていても効果が飽和することがある。
シリカ担体に担持するアルミニウムは、亜鉛、鉄およびマンガンからなる群(c)から選ばれる少なくとも1つの金属に対する原子比で、少なくとも2以上含有することが好ましい。また、アルミニウムの少なくとも一部が、群(c)から選ばれる少なくとも1つの金属とスピネル型結晶性複合酸化物を形成することが好ましく、スピネル型結晶性複合酸化物は、例えばアルミニウムと亜鉛、鉄およびマンガンからなる群から選ばれる少なくとも1つの金属を担持させた担体を焼成することによって生成することができる。
前記の分解方法(4)に用いられる触媒は、シリカアルミナ担体に担持する、マグネシウム、亜鉛、鉄およびマンガンからなる群(d)から選ばれる少なくとも1つの金属を、触媒質量全体の0.1〜5.0質量%含有することが好ましく、さらに好ましくは0.2〜1.0質量%含有することが望ましい。群(d)から選ばれる金属が触媒質量全体の5.0質量%以上含まれていても効果が飽和することがある。
また、アルミニウムは、マグネシウム、亜鉛、鉄およびマンガンからなる群(d)から選ばれる少なくとも1つの金属に対する原子比で、少なくとも2以上含有することが好ましい。また、アルミニウムの少なくとも一部が、群(d)から選ばれる少なくとも1つの金属とスピネル型結晶性複合酸化物を形成することが好ましい。スピネル型結晶性複合酸化物は、シリカアルミナ担体に、群(d)から選ばれる少なくとも1つの金属を担持させ、担体を焼成することによって生成することができる。
本発明の亜酸化窒素の分解方法において用いられる触媒に含まれる、ロジウム、ルテニウムおよびパラジウムからなる群(a)から選ばれる少なくとも1つの貴金属は、前記の(1)〜(4)のいずれの分解方法を用いる場合も、触媒質量全体の0.05〜10質量%含有することが好ましく、さらに好ましくは、0.1〜6.0質量%含有することが望ましい。群(a)から選ばれる少なくとも1つの貴金属の担持量を増加させることによって低温における触媒活性を向上させることは可能であるが、10質量%以上担持させることは触媒のコストを考えると好ましくなく、また0.05質量%以下であると十分な亜酸化窒素の分解活性が得られない場合がある。
以下、実施例により本発明の効果をより明らかなものとする。なお、本発明は、以下の実施例に限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲で適宜変更して実施することができる。
本実施例では、亜酸化窒素分解用触媒(昭和電工(株)製、アルミナ担体(日揮ユニバーサル(株)製)にロジウム5%及び亜鉛1%を担持させたもの、粒状、平均粒径:3.2mm)を2.12g(4ml)充填した分解反応器(ニッケル製反応管、1/2インチ径、触媒の層高57mm)を、ヒータ(セラミックス電気管状炉、100V、500W)で約350℃まで加熱し、この分解反応器に濃度100%の亜酸化窒素(N2O)ガスをダウンフローにより供給しながら、亜酸化窒素ガスの分解を行った。
また、亜酸化窒素ガスを分解反応器に供給する際は、流量調整弁により20〜2422cc/minの範囲で流量調整を行った。そして、そのとき分解反応器に供給される亜酸化窒素ガスの線速度(LV:Linear Velocity)[m/min]と、空間速度(SV:Space Velocity)[hr−1]を測定すると共に、亜酸化窒素ガスを分解した後の反応容器内の発熱温度(触媒の温度)の最大値max[℃]を温度測定器で測定した。また、亜酸化窒素ガスを分解した後のNOXの発生量[ppm]を測定し、その亜酸化窒素ガスの分解率[%]を求めた。その測定結果をまとめたものを表1に示す。また、表1の測定結果から、亜酸化窒素ガスの線速度(LV)と反応容器内の発熱温度及び亜酸化窒素ガスの分解率との関係をまとめたグラフを図8に示す。
表1及び図8に示すように、上述した分解反応器に供給される亜酸化窒素ガスの流量調整を行うことによって、濃度100%の亜酸化窒素ガスであっても高い分解率(99%以上)で亜酸化窒素ガスを分解できることがわかった。
また、上記表1中に示すLV=12.75m/min、SV=17190hr−1の条件下で、ヒータによる加熱を停止し、その1時間(hr)後の反応容器内の発熱温度及び亜酸化窒素ガスの分解率とを測定した。
その結果、ヒータの停止後も亜酸化窒素ガスの分解により発生する分解熱によって、反応容器内の発熱温度を維持しながら、加熱時と同レベルの分解率(98.7%)で亜酸化窒素ガスの分解を継続できることがわかった。このため、ヒータの停止後から約1時間(hr)経ったところで、亜酸化窒素ガスの供給を停止し、亜酸化窒素ガスの分解を強制終了した。このことからも、亜酸化窒素ガスの分解により発生する分解熱によって、その後に供給される亜酸化窒素ガスの分解をヒータによる加熱を行わずに継続できることがわかった。