WO2013125003A1 - エネルギー取出装置及びエネルギー取出方法 - Google Patents

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川口 淳一郎
宏人 羽生
理嗣 曽根
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明正 堤
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Abstract

 亜酸化窒素の分解により発生する分解熱からエネルギーを効率良く取り出すことを可能としたエネルギー取出装置及びエネルギー取出方法を提供する。亜酸化窒素を断熱膨張させることにより得られた亜酸化窒素ガス(NO)を用いて、変換手段(1)の低温側(1b)を冷却した後、亜酸化窒素ガスを触媒(4)を用いて分解し、この亜酸化窒素ガスを分解することにより得られた亜酸化窒素の分解ガス(N,O)を用いて、変換手段(1)の高温側(1a)を加熱する。これにより、変換手段(1)の高温側(1a)と低温側(1b)との間に大きな温度差を発生させることが可能である。そして、このような亜酸化窒素ガスの分解前と分解後の温度差を利用することで、電力や動力といったエネルギーを効率良く取り出すことが可能となる。

Description

エネルギー取出装置及びエネルギー取出方法
 本発明は、温度差から電力や動力といったエネルギーを取り出すエネルギー取出装置及びエネルギー取出方法に関する。
 近年、環境破壊や資源の枯渇などの地球環境に対する意識の高まりによって、石油や石炭、天然ガスなどの化石燃料に依存した社会から、自然エネルギーや再生可能な代替エネルギーを利用した社会への転換が求められている。
 一方、これまで環境問題やエネルギー安全保障の面から有利とされてきた原子力エネルギーの利用についても、放射性廃棄物の処理問題や原発事故の発生などによって、その安全面に対する見直しが迫られている。
 このような地球環境に優しいエネルギーへの関心が高まる中で、温度差(熱エネルギー)を電力(電気エネルギー)に変換する熱電変換素子を用いた発電装置が提案されている(例えば、特許文献1,2などを参照)。熱電変換素子は、2種類の異なる金属又は半導体を接合し、これらの間に温度差を与えたときに起電力が発生する現象(ゼーベック効果という。)を利用したものであり、温度差が大きいほど大きな起電力(発電量)を得ることが可能である。
 一方、温度差(熱エネルギー)を動力(運動エネルギー)に変換するスターリングエンジンを用いた発動装置が提案されている(例えば、特許文献3などを参照)。スターリングエンジンは、シリンダ内のガス(空気等)を外部から加熱又は冷却して仕事を得る外燃機関の一種であり、温度差が大きいほど大きな駆動力(仕事量)を得ることが可能である。
 また、温度差(熱エネルギー)を動力(運動エネルギー)に変換するヒートパイプタービンを用いた発動装置も提案されている(例えば、特許文献4などを参照)。ヒートパイプタービンは、ヒートパイプ内の温度差により作動する流体(蒸気等)の流れによってタービンを回転駆動するものであり、温度差が大きいほど大きな駆動力(仕事量)を得ることが可能である。
特開2011-114186号公報 特開2006-203186号公報 特開2009-87955号公報 特開平6-257417号公報 特開平5-4027号公報 特開2005-230795号公報 特開2006-181570号公報 特許第4232820号公報
 ところで、上述した温度差から電力や動力といったエネルギーを取り出すエネルギー取出装置では、あらゆる熱源が利用できる一方、大きな出力を得るためには大きな温度差が必要となる。
 かかる状況において、本発明者らは、亜酸化窒素(NO、一酸化二窒素とも言う。)の分解により発生する分解熱を熱源に利用することによって、地球環境に優しいエネルギーとしての亜酸化窒素の利用を提案する。
 亜酸化窒素は、化学的に安定で取り扱いも容易であり、食品添加物として認可(厚生労働省令第三十四号、平成17年3月22日)されている一方、医療用麻酔やロケットの助燃剤などにも利用されている。
 その一方で、亜酸化窒素は、二酸化炭素(CO)の約310倍の温暖化効果を持つ温室効果ガスとして、地球温暖化の原因の一つとされている。このため、近年では、亜酸化窒素の大気中への放出を防ぐため、例えば工場や焼却設備、自動車などから排出される排ガス中の亜酸化窒素を触媒を用いて分解除去する技術が多数開発されている(例えば、特許文献5~7を参照。)。
 また、上記特許文献5,6には、アジピン酸の製造工程で亜酸化窒素の分解時に発生した熱を亜酸化窒素の予熱に利用する技術が開示されている。一方、上記特許文献7には、余剰麻酔ガスに含まれる亜酸化窒素を分解処理する装置において、この分解装置に導入されるガスと分解装置から排出されるガスとの間で熱交換を行うことによって、加熱エネルギーと冷却エネルギーを減少させてエネルギー効率を高める技術が開示されている。
 しかしながら、これらの技術は、何れも大気中に放出される亜酸化窒素の分解除去を目的としたものである。また、亜酸化窒素の分解時に発生する熱の利用については、分解前の亜酸化窒素を加熱(予熱)することが開示されているものの、本発明者らが提案する代替エネルギーとしての亜酸化窒素の利用については開示も示唆も全くなされていない。
 一方、本発明者らは、亜酸化窒素を触媒分解することで得られる分解ガスを利用して、推力を発生させるスラスタ装置を既に開発している(特許文献8を参照)。この特許文献8に記載されているように、亜酸化窒素は、亜酸化窒素分解用触媒を用いて分解したときに、その分解熱によって追加の亜酸化窒素を自己分解(熱分解)させることが可能である。
 本発明者らは、このような知見に基づいて、亜酸化窒素の分解により発生する分解熱を利用することで、上述した地球環境に優しいエネルギーとしての亜酸化窒素の利用が可能であることを見出し、鋭意研究を重ねた結果、本発明を完成するに至った。
 すなわち、本発明の目的は、地球環境に優しいエネルギーとしての亜酸化窒素の利用を可能とすると共に、この亜酸化窒素の分解により発生する分解熱からエネルギーを効率良く取り出すことを可能としたエネルギー取出装置及びエネルギー取出方法を提供することにある。
 本発明は、以下の手段を提供する。
(1) 温度差からエネルギーを取り出すエネルギー取出装置であって、
 前記温度差を電力又は動力に変換する変換手段と、
 前記変換手段の高温側を加熱する加熱手段とを備え、
 前記加熱手段は、亜酸化窒素の分解により発生する分解熱によって加熱を行うことを特徴とするエネルギー取出装置。
(2) 前記変換手段の低温側を冷却する冷却手段を備え、
 前記冷却手段は、亜酸化窒素の断熱膨張に伴う冷却熱によって冷却を行うことを特徴とする前項(1)に記載のエネルギー取出装置。
(3) 前記亜酸化窒素を分解する亜酸化窒素分解用触媒が配置された分解反応部と、
 前記亜酸化窒素を断熱膨張させることにより得られた亜酸化窒素ガスを前記冷却手段に供給する第1の供給ラインと、
 前記冷却手段から排出された亜酸化窒素ガスを前記分解反応部に供給する第2の供給ラインと、
 前記分解反応部で前記亜酸化窒素ガスを分解することにより得られた亜酸化窒素の分解ガスを前記加熱手段に供給する第3の供給ラインとを備え、
 前記分解反応部において、前記亜酸化窒素ガスを前記亜酸化窒素分解用触媒を用いて分解した後、この亜酸化窒素ガスの分解により発生する分解熱によって、その後に供給される亜酸化窒素ガスの分解が継続されることを特徴とする前項(2)に記載のエネルギー取出装置。
(4) 前記分解反応部に供給される亜酸化窒素ガスの流量を調整する流量調整手段を備え、
 前記分解反応部に供給される亜酸化窒素ガスの流量を調整することによって、前記分解ガスの温度制御を行うことを特徴とする前項(3)に記載のエネルギー取出装置。
(5) 前記分解反応部に供給される亜酸化窒素ガスの濃度を調整する濃度調整手段を備え、
 前記分解反応部に供給される亜酸化窒素ガスの濃度を調整することによって、前記分解ガスの温度制御を行うことを特徴とする前項(3)又は(4)に記載のエネルギー取出装置。
(6) 前記濃度調整手段は、前記亜酸化窒素ガス中に窒素ガスを添加することによって、前記亜酸化窒素ガスの濃度調整を行うことを特徴とする前項(5)に記載のエネルギー取出装置。
(7) 前記亜酸化窒素分解用触媒又は分解ガスの温度を測定する温度測定手段を備え、
 前記温度測定手段による測定結果に基づいて、前記流量調整手段による流量調整、又は、前記濃度調整手段による濃度調整を行うことを特徴とする前項(4)~(6)の何れか一項に記載のエネルギー取出装置。
(8) 前記亜酸化窒素分解用触媒を予熱する予熱手段を備え、
 前記亜酸化窒素の分解を開始する前に、前記亜酸化窒素分解用触媒の予熱を行うことを特徴とする前項(3)~(7)の何れか一項に記載のエネルギー取出装置。
(9) 前記分解反応部に窒素ガスを供給する窒素ガス供給手段を備え、
 前記分解反応部への亜酸化窒素ガスの供給を停止した後に、前記分解反応部に窒素ガスを供給することを特徴とする前項(3)~(8)の何れか一項に記載のエネルギー取出装置。
(10) 前記亜酸化窒素が充填された高圧ガス容器を備え、この高圧ガス容器から放出されて断熱膨張した亜酸化窒素ガスを前記第1の供給ラインに供給することを特徴とする前項(3)~(9)の何れか一項に記載のエネルギー取出装置。
(11) 前記変換手段は、温度差を電力に変換する熱電変換素子であることを特徴とする前項(1)~(10)の何れか一項に記載のエネルギー取出装置。
(12) 前記変換手段は、温度差を動力に変換するスターリングエンジン又はヒートパイプタービンであることを特徴とする前項(1)~(10)の何れか一項に記載のエネルギー取出装置。
(13) 更に、前記スターリングエンジン又はヒートパイプタービンの駆動により発電する発電機を備えることを特徴とする前項(12)に記載のエネルギー取出装置。
(14) 温度差からエネルギーを取り出すエネルギー取出方法であって、
 前記温度差を電力又は動力に変換する変換手段を用いて、この変換手段の高温側を加熱する際に、亜酸化窒素の分解により発生する分解熱を用いることを特徴とするエネルギー取出方法。
(15) 前記変換手段の低温側を冷却する際に、亜酸化窒素の断熱膨張に伴う冷却熱を用いることを特徴とする前項(14)に記載のエネルギー取出方法。
(16) 前記亜酸化窒素を断熱膨張させることにより得られた亜酸化窒素ガスを用いて、前記変換手段の低温側を冷却した後、前記亜酸化窒素ガスを亜酸化窒素分解用触媒を用いて分解し、この亜酸化窒素ガスを分解することにより得られた亜酸化窒素の分解ガスを用いて、前記変換手段の高温側を加熱することを特徴とする前項(15)に記載のエネルギー取出方法。
(17) 前記亜酸化窒素分解用触媒が配置された分解反応部に、前記亜酸化窒素ガスを供給し、前記分解反応部において、前記亜酸化窒素ガスを前記亜酸化窒素分解用触媒を用いて分解した後、この亜酸化窒素ガスの分解により発生する分解熱によって、その後に供給される亜酸化窒素ガスの分解を継続することを特徴とする前項(16)に記載のエネルギー取出方法。
(18) 前記分解ガスの温度を制御することによって、前記亜酸化窒素ガスの分解を継続的に行わせることを特徴とする前項(17)に記載のエネルギー取出方法。
(19) 前記亜酸化窒素ガスの流量を調整することによって、前記分解ガスの温度制御を行うことを特徴とする前項(18)に記載のエネルギー取出方法。
(20) 前記亜酸化窒素ガスの濃度を調整することによって、前記分解ガスの温度制御を行うことを特徴とする前項(18)又は(19)に記載のエネルギー取出方法。
(21) 前記亜酸化窒素ガス中に窒素ガスを添加することによって、前記亜酸化窒素ガスの濃度調整を行うことを特徴とする前項(20)に記載のエネルギー取出方法。
(22) 前記亜酸化窒素分解用触媒又は分解ガスの温度を測定し、この測定結果に基づいて前記分解ガスの温度制御を行うことを特徴とする前項(18)~(21)に記載のエネルギー取出方法。
(23) 前記亜酸化窒素ガスの分解を開始する前に、前記亜酸化窒素分解用触媒を予熱することを特徴とする前項(16)~(22)の何れか一項に記載のエネルギー取出方法。
(24) 前記分解反応部への亜酸化窒素ガスの供給を停止した後に、前記分解反応部に窒素ガスを供給することを特徴とする前項(17)~(23)の何れか一項に記載のエネルギー取出方法。
(25) 前記変換手段の低温側を冷却する際に、前記亜酸化窒素が充填された高圧ガス容器から放出されて断熱膨張した亜酸化窒素ガスを用いることを特徴とする前項(15)~(24)の何れか一項に記載のエネルギー取出方法。
(26) 前記変換手段として、温度差を電力に変換する熱電変換素子を用いることを特徴とする前項(14)~(25)の何れか一項に記載のエネルギー取出方法。
(27) 前記変換手段として、温度差を動力に変換するスターリングエンジン又はヒートパイプタービンを用いることを特徴とする前項(14)~(25)の何れか一項に記載のエネルギー取出方法。
(28) 更に、前記スターリングエンジン又はヒートパイプタービンの駆動により発電機で発電するステップを有することを特徴とする前項(27)に記載のエネルギー取出方法。
 以上のように、本発明によれば、地球環境に優しいエネルギーとしての亜酸化窒素の利用を可能とすると共に、この亜酸化窒素の分解により発生する分解熱から電力や動力といったエネルギーを効率良く取り出すことが可能である。特に、本発明では、亜酸化窒素の分解前と分解後の温度差を利用することで、大きな出力を得ることが可能である。
本発明を適用したエネルギー取出装置及び取出方法を説明するための模式図である。 図1に示すエネルギー取出装置における具体的な動作(制御方法)の一例を示すフローチャートである。 本発明の第1の実施形態として、熱電変換素子を備えた発電装置の一例を示す断面模式図である。 本発明の第2の実施形態として、2ピストン型のスターリングエンジンを備えた発動装置の一例を示す断面模式図である。 本発明の第2の実施形態として、ディスプレーサ型のスターリングエンジンを備えた発動装置の一例を示す断面模式図である。 本発明の第3の実施形態として、ヒートパイプタービンを備えた発動装置(発電装置)の一例を示す断面模式図である。 第1の実施例において、亜酸化窒素ガスの線速度と反応容器内の発熱温度及びNOの分解率との関係を示すグラフである。 第2の実施例において使用したエネルギー取出装置の構成を示す断面模式図である。 各測定点A~Fの温度及び熱電変換素子の起電力について、経過時間による変化を測定したグラフである。
 以下、本発明を適用したエネルギー取出装置及びエネルギー取出方法について、図面を参照して詳細に説明する。
 本発明を適用したエネルギー取出装置及びエネルギー取出方法は、亜酸化窒素(NO、一酸化二窒素とも言う。)の分解により発生する分解熱から電力や動力といったエネルギーを取り出すものであり、地球環境に優しいエネルギーとしての亜酸化窒素の利用を可能としたものである。
 亜酸化窒素は、常温、大気圧下で安定したガスである。一方、その温度が約500℃以上になると、発熱しながら自己分解(熱分解)する。このように亜酸化窒素の分解は、発熱を伴ったもの(発熱反応)である。そして、この分解に伴う温度上昇(分解熱)によって高温化した亜酸化窒素の分解ガスは約1600℃にもなることから、亜酸化窒素は高いエネルギーを内蔵した物質と言える。
 また、亜酸化窒素は、触媒を用いて分解したときに、その分解開始温度を例えば350~400℃程度に引き下げることができる。そして、亜酸化窒素の分解後は、この亜酸化窒素の分解により発生する分解熱によって、その後に供給される亜酸化窒素の分解を継続的に行わせることが可能である。また、触媒を用いて分解された亜酸化窒素は、発熱しながら窒素(N)と酸素(O)との混合ガス(分解ガス)となる。
 本発明者らは、このような知見に基づいて、亜酸化窒素の分解により発生する分解熱を利用することで、上述した地球環境に優しいエネルギーとしての亜酸化窒素の利用が可能であることを見出し、更に鋭意研究を重ねた結果、本発明を完成するに至ったものである。
 以下、本発明の実施形態として図1に示すエネルギー取出装置及びこれを用いたエネルギー取出方法について説明する。なお、図1は、本発明を適用したエネルギー取出装置及びエネルギー取出方法を説明するための模式図である。
 本発明は、亜酸化窒素の分解により発生する分解熱からエネルギーを取り出すものであり、特に、亜酸化窒素の分解前と分解後の温度差を利用することで、電力や動力といったエネルギーを効率良く取り出すことを可能としたものである。
 具体的に、本発明を適用したエネルギー取出装置は、図1に示すように、温度差を電力又は動力に変換する変換部(変換手段)1と、変換部1の高温側1aを加熱する加熱部(加熱手段)2と、変換部1の低温側1bを冷却する冷却部(冷却手段)3と、亜酸化窒素を分解する亜酸化窒素分解用触媒(以下、単に触媒という。)4が配置された分解反応部5と、亜酸化窒素が充填された高圧ガス容器6と、高圧ガス容器6から放出されて断熱膨張した亜酸化窒素ガス(NO)を冷却部3に供給する第1の供給ライン7と、冷却部3から排出された亜酸化窒素ガスを分解反応部5に供給する第2の供給ライン8と、分解反応部5で亜酸化窒素ガスを分解することにより得られた亜酸化窒素の分解ガス(N,O)を加熱部2に供給する第3の供給ライン9と、加熱部2から分解ガスを排出する排出ライン10とを概略備えている。
 変換部1には、例えば、温度差(熱エネルギー)を電力(電気エネルギー)に変換する熱電変換素子や、温度差(熱エネルギー)を動力(運動エネルギー)に変換するスターリングエンジン、ヒートパイプタービンなどを用いることができる。
 この変換部1では、加熱部2に接する高温側1aの温度(t)と、冷却部3に接する低温側1bの温度(t)との温度差(t-t)が大きいほど、大きな出力(W)を得ることが可能である。
 そこで、本発明では、分解反応部5で亜酸化窒素ガスを分解する。そして、この分解に伴う温度上昇(分解熱)によって高温化した亜酸化窒素の分解ガスを第3の供給ライン9を介して加熱部2に供給する。このとき、加熱部2では、高温の分解ガスが内部を通過する間に、変換部1の高温側1aとの間で熱交換が行われる。これにより、亜酸化窒素の分解により発生する分解熱を利用して、上記変換部1の高温側1aを加熱することができる。
 また、本発明では、高圧ガス容器6から亜酸化窒素ガスが放出されて断熱膨張する。そして、この断熱膨張に伴う温度降下(冷却熱)によって低温化した亜酸化窒素ガスを第1の供給ライン7を介して冷却部3に供給する。このとき、冷却部3では、低温の亜酸化窒素ガスが内部を通過する間に、変換部1の低温側1bとの間で熱交換が行われる。これにより、亜酸化窒素の断熱膨張に伴う冷却熱を利用して、上記変換部1の低温側1bを冷却することができる。
 以上のようにして、本発明では、上記変換部1の高温側1aと低温側1bとの間に大きな温度差を発生させることが可能となっている。特に、本発明は、1種類のガスから2水準の温度域(温度域間の温度差)を得ることを特徴としており、このような亜酸化窒素ガスの分解前と分解後の温度差を利用することで、大きな出力を得ることが可能となっている。
 加熱部2は、入側に第3の供給ライン9と、出側に排出ライン10とが接続されて、その内部を分解ガスが通過する間に、変換部1の高温側1aとの間で熱交換を行う高温側の熱交換器である。また、この加熱部2には、その用途に応じて様々なタイプ・大きさの熱交換器を用いることが可能である。例えば、熱交換器の種類としては、チューブ式(二重管式、多管式(シェル&チューブ式)、スパイラル式等)や、プレート式、再生式などを挙げることができ、これらの中から、その用途に合わせて適宜選択して使用すればよい。
 冷却部3は、入側に第1の供給ライン7と、出側に第2の供給ライン8とが接続されて、その内部を亜酸化窒素ガスが通過する間に、変換部1の低温側1bとの間で熱交換を行う低温側の熱交換器である。また、この冷却部3には、その用途に応じて様々なタイプ・大きさの熱交換器を用いることが可能である。例えば、熱交換器の種類としては、チューブ式(二重管式、多管式(シェル&チューブ式)、スパイラル式等)や、プレート式、再生式などを挙げることができ、これらの中から、その用途に合わせて適宜選択して使用すればよい。
 分解反応部5は、その内側に触媒4を収納した本体部(分解反応室)5aを備え、この本体部5aの一端側に亜酸化窒素ガスが導入されるガス導入口5bと、この本体部5aの他端側に分解ガスが排出されるガス排出口5cとが設けられた構造を有している。
 なお、分解反応部5には、耐熱性及び耐酸化性に優れた材質のものを使用することが好ましく、特に、分解ガスによって高温高圧に晒されるガス排出口5c側の部材等については、高温高圧下での熱疲労や酸化等に十分耐え得るものを使用することが好ましい。そのような材料としては、例えばステンレス鋼やNi基合金、Co基合金などを挙げることができる。また、セラミックスやシリコンカーバイト(SiC)などを遮熱材として用いることができる。さらに、これらの複合材料を用いてもよい。また、分解反応部5は、水冷や空冷などによって強制的に冷却する機構を備えたものであってもよい。
 触媒4には、広い温度域(特に低温域)で亜酸化窒素を効率良く分解することができ、なお且つ、高温下での熱疲労や酸化等に十分耐え得るものを使用することが好ましい。このような亜酸化窒素の分解効率が高く、耐熱性及び耐酸化性に優れた触媒として、例えば後述する「特開2002-153734号公報」や「特開2002-253967号公報」に開示されたものなどを使用することができる。
 具体的には、以下の〔1〕~〔6〕に示す何れかの触媒を用いることができる。
〔1〕 アルミニウム(Al)、マグネシウム(Mg)及びロジウム(Rh)が担体に担持されている触媒。 
〔2〕 マグネシウム(Mg)及びロジウム(Rh)がアルミナ(Al)担体に担持されている触媒。 
〔3〕 アルミニウム(Al)の少なくとも一部とマグネシウム(Mg)により、スピネル型結晶性複合酸化物が形成されている担体に、ロジウム(Rh)が担持されている触媒。 
〔4〕 亜鉛(Zn)、鉄(Fe)、マンガン(Mn)及びニッケル(Ni)からなる群から選ばれる少なくとも1種の金属、アルミニウム(Al)及びロジウム(Rh)が担体に担持されている触媒。 
〔5〕 亜鉛(Zn)、鉄(Fe)、マンガン(Mn)及びニッケル(Ni)からなる群から選ばれる少なくとも1種の金属及びロジウム(Rh)がアルミナ(Al)担体に担持されている触媒。 
〔6〕 アルミニウム(Al)の少なくとも一部と、亜鉛(Zn)、鉄(Fe)、マンガン(Mn)及びニッケル(Ni)からなる群から選ばれる少なくとも1種の金属により、スピネル型結晶性複合酸化物が形成されている担体にロジウム(Rh)が担持されている触媒。
 また、本発明では、シリカ(SiO)、シリカアルミナ(SiO-Al)から選ばれる担体に、ロジウム(Rh)、ルテニウム(Ru)、パラジウム(Pd)からなる群から選ばれる少なくとも1つの貴金属を担持してなる触媒などを好適に用いることができる。
 このような触媒4を用いることによって、亜酸化窒素を100%に近い分解効率で窒素と酸素に分解することが可能である。特に、シリカ(SiO)又はシリカアルミナ(SiO-Al)からなる担体にロジウム(Rh)を担持した触媒を用いた場合には、一酸化窒素(NO)や二酸化窒素(NO)などといったNOガスの発生がほとんど無く、亜酸化窒素をほぼ完全に窒素と酸素に分解することが可能である。
 さらに、触媒4には、アルミナをウォッシュコートしたコージェライト及びメタルハニカム又は多孔質セラミックスの担体に、窒素酸化物の分解に有効なロジウムを、質量分率で2~3%含浸させたものや、アルミナやコージェライト又は炭化珪素のセラミックス製ハニカム構造体に、アルミナからなる担体層を形成させ、この担体層に窒素酸化物の分解に有効なロジウムなどが担持されたものなどを例示することができるが、これらに必ずしも限定されるものではない。
 また、その他の触媒4としては、例えばアジピン酸の製造工程や硝酸の製造工程などで排出される排ガス中の亜酸化窒素を分解除去する際に使用される触媒なども用いることができる。このような触媒としては、例えば、MAl(Mは、Pd、Cu,Cu/Mg,Cu/Zn,Cu/Zn/Mgの何れかである。)で表され、Mを10~30質量%の割合で含むアルミナ担体に、貴金属を0.1~2質量%の割合で担時させたものを挙げることができる。
 触媒4の形状については、特に限定されるものではなく、例えば、粉末状、顆粒状、ペレット状、ハニカム状、多孔質状、粉砕状、メッシュ状、板状、シート状のものなど、任意の形状の中から最適な形状及びサイズのものを適宜選択して使用すればよい。
 また、触媒4の本体部5aへの充填方法や、触媒4に合わせた本体部5aの形状等についても、上記分解反応部5の設計に合わせて、任意に実施することができる。
 分解反応部5は、触媒4の経時的な劣化に合わせて、触媒4を(場合によっては本体部5aごと)交換可能な構成としてもよい。また、性能が低下した触媒4から貴金属成分を抽出精製して回収した後、この回収された貴金属を新しい担体に担時させたものを再生触媒として使用することも可能である。
 分解反応部5には、上記触媒4を加熱するヒータ(予熱手段)11が設けられている。このヒータ11は、亜酸化窒素の分解を開始する前、すなわち分解反応部5に亜酸化窒素ガスを供給する前に、亜酸化窒素ガスが分解可能な温度(分解開始温度)まで触媒4を予め加熱(予熱)するためのものである。
 例えば図1に示すヒータ11は、本体部5aの内側に触媒4の周囲に接触した状態で配置されている。また、ヒータ11は、電力供給ライン12を介して電源(図示せず。)と接続されており、この電源からの電力供給によって発熱することが可能となっている。また、ヒータ11としては、抵抗加熱方式や誘導加熱方式のものなどを使用することができる。
 なお、触媒4の加熱方法については、このような本体部5aの内側に配置されたヒータ11によって触媒4を加熱する方法に限らず、本体部5aの外側に配置されたヒータ11によって触媒4を加熱する方法を用いることも可能である。この場合、ヒータ11によって本体部5aを加熱し、この本体部5aからの輻射や熱伝導等によって触媒4を加熱することが可能である。
 また、触媒4の加熱方法としては、触媒4に電力を直接供給することによって当該触媒4を加熱する方法を用いることも可能である。それ以外にも、触媒4の加熱方法については、特に限定されるものではなく、触媒4を加熱する方法の中から適宜選択して用いることができる。
 高圧ガス容器6は、亜酸化窒素ガスを供給する亜酸化窒素ガス供給源であり、この高圧ガス容器6には、例えば、ボンベ、タンク、カードルなどを用いることができる。そして、この高圧ガス容器6は、亜酸化窒素ガス開閉弁13を介して上記第1の供給ライン7と接続されている。
 亜酸化窒素ガス開閉弁13は、第1の供給ライン7を開閉し、高圧ガス容器6からの亜酸化窒素ガスの供給/遮断を行うためのもの(開閉手段)である。また、亜酸化窒素ガス開閉弁13には、第1の供給ライン7を開閉するだけでなく、その開度(圧力等を含む。)が調整可能なものなどを用いることができる。
 さらに、亜酸化窒素ガス開閉弁13には、その流量制御が可能な流量調整付きのコントロールバルブ(流量調整弁)を用いることもできる。そして、この亜酸化窒素ガス開閉弁13は、後述する制御部17と電気的に接続されており、この制御部17によって亜酸化窒素ガス開閉弁13を駆動制御することが可能となっている。
 なお、この亜酸化窒素ガス開閉弁13については、上述した流量調整付きのコントロールバルブ(流量調整弁)を用いた構成に限らず、第1の供給ライン7を開閉するバルブ(開閉弁)とは別に、第1の供給ライン7内を流れる亜酸化窒素ガスの流量を調整するレギュレータ(流量調整器)等が設けられた構成とすることも可能である。
 第1の供給ライン7は、その一端側が高圧ガス容器6に接続され、その他端側が冷却部3の入側に接続された配管(流路)である。第2の供給ライン8は、その一端側が冷却部3の出側に接続され、その他端側が分解反応部5の入側(ガス導入口5b)に接続された配管(流路)である。そして、これら第1及び第2の供給ライン7,8は、高圧ガス容器6から放出された亜酸化窒素ガス(NO)を分解反応部5に供給する亜酸化窒素ガス供給ライン(亜酸化窒素ガス供給手段)を構成している。
 第3の供給ライン9は、その一端側が分解反応部5の出側(ガス排出口5c)に接続され、その他端側が加熱部2の入側に接続された配管(流路)である。排出ライン10は、その一端側が加熱部2の出側に接続された配管(流路)である。
 本発明は、上記分解反応部5において、上記触媒4を用いた亜酸化窒素ガスの分解を継続的に行わせるために、上記分解反応部5に窒素ガス(N)を供給する窒素ガス供給ライン(窒素ガス供給手段)14と、上記分解反応部5に供給される亜酸化窒素ガスの流量を調整する流量調整部(流量調整手段)15と、上記触媒4の温度を測定する温度測定部(温度測定手段)16と、各部の制御を行う制御部(制御手段)17とを備えている。
 窒素ガス供給ライン14は、その一端側が上記第1の供給ライン7に接続された配管(流路)であり、その他端側には、窒素ガスが充填された高圧ガス容器18が接続されている。また、窒素ガス供給ライン14は、上記第1の供給ライン7内を流れる亜酸化窒素ガス中に窒素ガスを導入(添加)することによって、この亜酸化窒素ガスの濃度を調整する濃度調整手段としての機能を有している。
 高圧ガス容器18は、窒素ガスを供給する窒素ガス供給源であり、この高圧ガス容器18には、例えば、ボンベ、タンク、カードルなどを用いることができる。そして、この高圧ガス容器18は、窒素ガス開閉弁19を介して窒素ガス供給ライン14と接続されている。
 窒素ガス開閉弁19は、窒素ガス供給ライン14を開閉し、高圧ガス容器18からの窒素ガスの供給/遮断を行うためのもの(開閉手段)である。また、窒素ガス開閉弁19には、窒素ガス供給ライン14を開閉するだけでなく、その開度(圧力等を含む。)が調整可能なものなどを用いることができる。
 さらに、窒素ガス開閉弁19には、第1の供給ライン7に供給される窒素ガスの供給量を調整するため、その流量制御が可能な流量調整付きのコントロールバルブ(流量調整弁)を用いることが好ましい。そして、この窒素ガス開閉弁19は、制御部17と電気的に接続されており、この制御部17によって窒素ガス開閉弁19を駆動制御することが可能となっている。
 なお、この窒素ガス開閉弁19については、上述した流量調整付きのコントロールバルブ(流量調整弁)を用いた構成に限らず、窒素ガス供給ライン14を開閉するバルブ(開閉弁)とは別に、窒素ガス供給ライン14内を流れる窒素ガスの流量を調整するレギュレータ(流量調整器)等が設けられた構成とすることも可能である。
 流量調整部15は、上記分解反応部5のガス導入口5bと第2の供給ライン8との間に配置されている。この流量調整部15は、上記分解反応部5に導入される亜酸化窒素ガスの流量(導入量)を調整可能なものであればよく、例えばレギュレータ(流量調整器)や流量調整付きのコントロールバルブ(流量調整弁)などを用いることができる。そして、この流量調整部15は、制御部17と電気的に接続されており、この制御部17によって流量調整部15を駆動制御することが可能となっている。
 なお、流量調整部15では、この流量調整部15内を流れる亜酸化窒素ガスの流量を計測する流量計(流量計測手段)を設けて、又は、このような流量計付きのレギュレータやコントロールバルブ等を用いて、上記分解反応部5に導入される亜酸化窒素ガスの流量調整を精度良く行うことも可能である。
 温度測定部16は、上記触媒4の温度を直接又は間接的に測定するものであり、制御部17と電気的に接続されて、この制御部17へと測定結果(測定データ)を出力する。
 例えば図1に示す温度測定部16は、分解反応部5の本体部5aに取り付けられて、触媒4に接触しながら、この触媒4の下流側の温度を測定することが可能となっている。
 触媒4を用いた亜酸化窒素の分解では、この触媒4中を亜酸化窒素が通過する間に亜酸化窒素が分解されるため、一般的に触媒4の上流(ガス導入口5b)側の温度よりも下流(ガス排出口5c)側の温度の方が高くなる。したがって、分解ガスによって高温高圧に晒される触媒4やガス排出口5c側の部材等の劣化(例えば熱疲労や酸化など。)、特に亜酸化窒素は分解ガス中に酸素を含むことから、この酸素との反応(酸化)を防ぐ上で、上述した触媒4の下流(ガス排出口5c)側の温度を測定することが好ましい。
 一方、温度測定部16は、上述した図1に示す構成に限らず、触媒4の上流(ガス導入口5b)側の温度を測定する構成としてもよい。これは、亜酸化窒素ガスの分解を開始する前に、上記ヒータ11によって加熱された触媒4が上記分解開始温度まで加熱されたか否かを検出する上で好ましい。そして、この温度測定部16による測定結果に基づいて、触媒4が上記分解開始温度まで加熱されたときに、上記ヒータ11による加熱を停止すればよい。これにより、上記ヒータ11による加熱を効率良く行うことが可能である。
 なお、触媒4の温度を測定する箇所については、上記の箇所に必ずしも限定されるものではなく、例えば、触媒4の平均的な温度を測定するため、触媒4の中央部分の温度を測定したり、これら複数箇所の温度を別々に測定したりすることも可能である。
 また、温度測定部16は、触媒4の温度を直接測定する構成に限らず、例えば触媒4を収納した本体部5aの温度を測定することによって、触媒4の温度を間接的に測定することも可能である。
 また、温度測定部16は、上述した触媒4の温度を直接又は間接的に測定する構成に限らず、上記分解反応部5のガス排出口5cから排出される分解ガスの温度を直接又は間接的に測定する構成としてもよい。さらに、これら触媒4と分解ガスとの両方の温度を測定する構成としてもよい。
 なお、温度測定部16については、例えば熱電対を使用した温度計や、放射温度計等の非接触式の温度計、データロガーなどを用いることができるが、これらのものに必ずしも限定されるものではなく、それ以外にも触媒4や分解ガスの温度が測定可能なものの中から適宜選択して使用することができる。
 制御部17は、コンピュータ(CPU)等からなり、温度測定部16からの測定結果(測定データ)に基づいて、内部に記録された制御プログラムに従って、上述した亜酸化窒素ガス開閉弁13、窒素ガス開閉弁19及び流量調整部15の駆動を制御することが可能となっている。
 具体的に、上記分解反応部5において、上記触媒4を用いた亜酸化窒素ガスの分解を継続的に行わせるためには、分解ガスの温度を制御することが重要となる。
 すなわち、分解ガスの温度が高くなり過ぎると、上述したように分解ガスによって高温高圧に晒される触媒4やガス排出口5c側の部材等の劣化(例えば熱疲労や酸化など。)を招く可能性がある。一方、分解ガスの温度が低くなり過ぎると、亜酸化窒素の自己分解を継続させることが困難となる可能性がある。また、亜酸化窒素が分解されずに分解反応部5のガス排出口5cから排出されたり、場合によっては、上述したNOガスが発生したりする。これらのガスは、上述した地球温暖化や大気汚染の原因ともなる。
 したがって、制御部17は、このような問題が生じることがないよう、上記分解反応部5において触媒4を用いた亜酸化窒素の分解が継続される範囲で、分解ガスの温度制御を行うことが好ましい。
 ここで、分解ガスの温度を制御する方法としては、(1)分解反応部5に供給される亜酸化窒素ガスの流量を調整する方法と、(2)亜酸化窒素ガスの濃度を調整する方法とを挙げることができる。
 このうち、上記(1)を用いた方法では、上記温度測定部16からの測定結果に基づいて、上記制御部17が流量調整部15を制御し、分解反応部5に供給される亜酸化窒素ガスの流量調整を行う。
 具体的に、分解ガスの温度を上げる場合には、分解反応部5に供給される亜酸化窒素ガスの流量を相対的に上げる制御を行う。これにより、分解反応部5に導入される亜酸化窒素ガスの導入量を増やし、この分解反応部5で分解される亜酸化窒素ガスの分解量(分解熱)の増加により分解ガスの温度を相対的に上げることが可能である。
 一方、分解ガスの温度を下げる場合には、分解反応部5に供給される亜酸化窒素ガスの流量を相対的に下げる制御を行う。これにより、分解反応部5に導入される亜酸化窒素ガスの導入量を減らし、この分解反応部5で分解される亜酸化窒素ガスの分解量(分解熱)の減少により分解ガスの温度を相対的に下げることが可能である。
 以上のようにして、本発明では、上記制御部17により分解ガスの温度を制御しながら、上記分解反応部5において触媒4を用いた亜酸化窒素ガスの分解を継続的に行わせることが可能である。
 一方、上記(2)を用いた方法では、上記温度測定部16からの測定結果に基づいて、上記制御部17が上記窒素ガス開閉弁19を制御し、窒素ガス供給ライン14から第1の供給ライン7に供給される窒素ガスの流量調整を行う。
 具体的に、分解ガスの温度を上げる場合には、亜酸化窒素ガスの濃度を相対的に上げる制御を行う。すなわち、窒素ガス供給ライン14から第1の供給ライン7に供給される窒素ガスの流量を相対的に下げる、又は、窒素ガス供給ライン14から第1の供給ライン7への窒素ガスの供給を停止する制御を行う。これにより、第1の供給ライン7内を流れる亜酸化窒素ガスへの窒素ガスの添加を止める又はその添加量を少なくして、この亜酸化窒素ガスの濃度を相対的に高くすることができる。そして、これに伴って分解反応部5で分解される亜酸化窒素ガスの分解量(分解熱)が増加することにより分解ガスの温度を相対的に上げることが可能である。
 一方、分解ガスの温度を下げる場合には、亜酸化窒素ガスの濃度を相対的に下げる制御を行う。すなわち、窒素ガス供給ライン14から第1の供給ライン7に供給される窒素ガスの流量を相対的に上げる、又は、窒素ガス供給ライン14から第1の供給ライン7への窒素ガスの供給を開始する制御を行う。これにより、第1の供給ライン7内を流れる亜酸化窒素ガスに窒素ガスを添加する又はその添加量を増やして、この亜酸化窒素ガスを窒素ガスで希釈しながら、亜酸化窒素ガスの濃度を相対的に低くすることができる。そして、これに伴って分解反応部5で分解される亜酸化窒素ガスの分解量(分解熱)が減少することにより分解ガスの温度を相対的に下げることが可能である。
 なお、上記(2)を用いた方法では、上述した窒素ガス以外にも、例えばヘリウム(He)、ネオン(Ne)、アルゴン(Ar)、キセノン(Xe)、クリプトン(Kr)などの不活性ガスや、空気(乾燥空気を含む。)等を亜酸化窒素ガス中に添加することによって、この亜酸化窒素ガスの濃度を調整することも可能である。
 以上のようにして、本発明では、分解ガスの温度を制御しながら、上記分解反応部5において触媒4を用いた亜酸化窒素ガスの分解を継続的に行わせることが可能である。
 なお、本発明では、上記(1),(2)を用いた方法を組み合わせて、上述した分解ガスの温度制御を行うことも可能である。そして、これら上記(1),(2)を用いた方法では、上述した分解ガスの温度制御を簡便な構成で、なお且つ、安定的に行うことが可能である。一方、本発明では、上記(1),(2)を用いた方法に必ずしも限定されるものではなく、それ以外の方法を用いて、分解ガスの温度制御を行ってもよい。
 また、本発明では、上記分解ガス中のNO濃度を計測するNO計(NO計測手段)を設けてもよい。この場合、上記分解ガス中に含まれる未分解の亜酸化窒素(NO)や、一酸化窒素(NO)、二酸化窒素(NO)などといったNOガスの濃度を計測することで、上述した分解ガスの温度制御を精度良く行うことが可能である。
 さらに、本発明では、分解ガス中に含まれるNOを除去する手段(NO除去手段)を設けることも可能である。NO除去手段としては、例えば、NOを含む分解ガス中にアンモニア(NH)を添加し、脱硝用触媒によりアンモニアとNOとを選択的に反応(還元)させて、水(HO)と窒素(N)とに分解する脱硝装置などを用いることができる。なお、脱硝用触媒については、従来公知のものの中から最適なものを選択して使用すればよい。また、NO除去手段としては、分解ガス中に含まれるNOを直接分解可能なNO分解用触媒を用いてもよい。
 また、上記分解反応部5において、上記触媒4を用いた亜酸化窒素ガスの分解を停止する場合は、上記分解反応部5への亜酸化窒素ガスの供給を停止した後に、上記分解反応部5に窒素ガスを供給することが好ましい。
 これは、上記分解反応部5への亜酸化窒素ガスの供給を停止した直後は、触媒4内に分解ガスが滞留しており、この分解ガスに含まれる酸素によって触媒4が劣化してしまう虞があるためである。
 この場合、制御部17は、上記亜酸化窒素ガス開閉弁13を閉塞する制御を行うことによって、上記分解反応部5への亜酸化窒素ガスの供給を停止し、上記窒素ガス供給ライン14から供給される窒素ガスのみを上記分解反応部5に導入させる。
 これにより、上記分解反応部5に導入された窒素ガスが、触媒4内に滞留した分解ガスを押し出し、この触媒4内に滞留した分解ガスを除去することができる。そして、制御部17は、上記分解反応部5に一定の時間、すなわち触媒4内に滞留した分解ガスを除去するのに十分な時間だけ窒素ガスを導入した後、上記窒素ガス開閉弁19を閉塞する制御を行い、上記分解反応部5への窒素ガスの供給を停止する。
 これにより、触媒4の酸素による劣化を防ぐことができ、この触媒4の寿命を延ばすことができる。また、上述した触媒4を交換する頻度を減らす(交換サイクルを延長する)ことが可能である。さらに、この方法を用いた場合、亜酸化窒素ガスの分解を一時停止させた後に、亜酸化窒素ガスの分解を容易に再開することが可能である。
 なお、上述した亜酸化窒素ガスの分解を停止させる場合は、上記窒素ガス以外にも、例えばHe、Ne、Xe、Ar、Krなどの不活性ガスや、空気(乾燥空気を含む。)等を分解反応部5に導入することも可能である。
 ここで、図2に示すフローチャートを参照しながら、上記図1に示すエネルギー取出装置における具体的な動作(制御方法)の一例について説明する。
 上記図1に示すエネルギー取出装置では、先ず、ステップS101において、亜酸化窒素の分解を開始する前に、ヒータ11を駆動し、触媒4を加熱(予熱)する。
 次に、ステップS102において、温度測定部16が測定した触媒4の温度に基づいて、制御部17が、分解開始温度まで触媒4が加熱されたか否かの判定を行う。そして、触媒4が分解開始温度まで加熱されたと判定された場合には、ステップS103へと進み、このステップS103において、ヒータ11の駆動を停止する。一方、触媒4が分解開始温度まで加熱されていないと判定された場合には、触媒4が分解開始温度となるまで、ヒータ11による触媒4の加熱を継続する。
 次に、ステップS104において、分解反応部5に亜酸化窒素ガスを供給し、この分解反応部5において触媒4を用いた亜酸化窒素ガスの分解を行う。なお、分解反応部5に供給される亜酸化窒素ガスの流量や濃度等については、予め設定された値となっている。
 次に、ステップS105において、温度測定部16が測定した触媒4(又は分解ガス)の温度に基づいて、制御部17が、触媒4(又は分解ガス)の温度が予め設定された値(範囲)を超えたか否かの判定を行う。そして、触媒4(又は分解ガス)の温度が設定値(範囲)を超えたと判定された場合には、ステップS106に進む。一方、触媒4(又は分解ガス)の温度が設定値(範囲)にあると判定された場合には、ステップS110に進む。
 次に、ステップS106において、制御部17が、触媒4(又は分解ガス)の温度が設定値(範囲)よりも高いか低いかの判定(比較)を行う。
 そして、触媒4(又は分解ガス)の温度が設定値(範囲)よりも高いと判定された場合には、ステップS107に進み、このステップS107において、制御部17が、分解反応部5に供給される亜酸化窒素ガスの流量、若しくは、この亜酸化窒素ガスの濃度を下げる方向に調整を行う。そして、調整後は、ステップS109に進む。
 一方、触媒4(又は分解ガス)の温度が設定値(範囲)よりも低いと判定された場合には、ステップS108に進み、このステップS108において、制御部17が、分解反応部5に供給される亜酸化窒素ガスの流量、若しくは、この亜酸化窒素ガスの濃度を上げる方向に調整を行う。そして、調整後は、ステップS109に進む。
 これらステップS107又はステップS108における調整では、例えば、分解反応部5に供給される亜酸化窒素ガスの流量の設定値、若しくは、この亜酸化窒素ガスの濃度の設定値を調整可能な範囲で所定の段階数に分けて、その設定値を現段階よりも1段階下げて又は上げて行う。
 次に、ステップS109において、温度測定部16が測定した触媒4(又は分解ガス)の温度に基づいて、制御部17が、触媒4(又は分解ガス)の温度が設定値(範囲)に戻ったか否かの判定を行う。そして、触媒4(又は分解ガス)の温度が設定値(範囲)に戻ったと判定された場合には、ステップS110に進む。
 一方、触媒4(又は分解ガス)の温度が設定値(範囲)に戻らない場合には、ステップS106に戻り、再び触媒4(又は分解ガス)の温度が設定値(範囲)よりも高いか低いかの判定(比較)を行った後、ステップS107又はS108に進み、上記分解反応部5に供給される亜酸化窒素ガスの流量の設定値、若しくは、この亜酸化窒素ガスの濃度の設定値を更に1段階下げる又は上げる方向に調整を行う。そして、ステップS109に進み、触媒4(又は分解ガス)の温度が設定値(範囲)に戻ったか否かの判定を行い、触媒4(又は分解ガス)の温度が設定値(範囲)に戻るまで、そのような調整を繰り返す。また、このような調整を繰り返した結果、調整可能な範囲を超えた場合には、制御部17が異常と判定して強制的にステップS110に進むものとする(図2において図示せず。)。
 次に、ステップS110において、制御部17が、亜酸化窒素ガスの供給を停止するか否かの判定を行う。亜酸化窒素ガスの供給を停止する場合としては、例えば、外部から停止命令を受けたときや、上記ステップS109において異常と判定されたときなどを挙げることができる。そして、亜酸化窒素ガスの供給を停止する場合は、ステップS111に進む。一方、亜酸化窒素ガスの供給を停止しない場合は、ステップS105に戻り、温度測定部16による触媒4(又は分解ガス)の温度測定を継続する。
 次に、ステップS111において、亜酸化窒素ガスの供給を停止した後に、ステップS112に進み、このステップS112おいて、分解反応部5に窒素ガスを供給する。これにより、窒素ガスが触媒4内に滞留した分解ガスを押し出し、この触媒4内に滞留した分解ガスを除去することができる。
 以上のようにして、上記図1に示すエネルギー取出装置では、分解ガスの温度を制御しながら、上記分解反応部5において触媒4を用いた亜酸化窒素の分解を継続的に行わせることが可能である。
 なお、本発明では、上述した温度測定部16が測定した測定データ及びそれに基づく制御部17の判定結果を、例えば、図示を省略するモニタに表示したり、プリンタに出力したりしてもよい。また、上述した制御部17による自動制御に限らず、例えば、オペレータ等による手動制御を行ってもよい。
 また、上記ステップS109において異常と判定された場合には、必要に応じてその旨を告知するようにしてもよい。告知方法については、特に限定されるものではなく、例えば、警報を発したり、表示を行ったりすることができる。
 本発明で用いられる亜酸化窒素は、工業的に製造することが可能である。具体的に、亜酸化窒素を工業的に製造する方法については、例えば、以下の(1)~(3)を用いた方法を挙げることができる。
(1)アンモニア直接酸化法 
2NH3 + 2O → NO + 3H
(2)硝酸アンモニウム熱分解法 
NHNO → NO + 2H
(3)スルファミン酸法 
NHSO + HNO→ NO + HSO + H
 なお、工業的に製造された亜酸化窒素については、例えば、純度99.9(3N)~99.999(5N)%の高純度亜酸化窒素、純度97.0%以上(日本薬局方)の医療用亜酸化窒素、純度98%以上の工業用亜酸化窒素などを挙げることができる。
 その他にも、亜酸化窒素の製造方法については、以下の(4)~(10)を用いた方法を挙げることができる。
(4)尿素分解法 
2(NH)CO+2HNO+HSO → 2NO+2CO+(NH)SO+2H
(5)ヒドロキシルアミンからの製法 
4NO + 2NHOH → 3NO + 3HO 
2NHOH + NO + NO → 2NO + 3HO 
2NHOH + O → NO + 3H
(6)有機反応からの副生NO 
アジピン酸の製造工程からの副生NOの回収。 
グリオキザールの製造からの副生NOの回収。
(7)亜硝酸又は亜硝酸塩の還元 
亜硝酸又は亜硝酸塩の溶液を温亜硫酸、ナトリウム、アマルガム、塩化第一錫等を還元剤として還元する。
(8)硝酸の還元 
硝酸を亜鉛又は錫で還元するか、亜硫酸ガスで還元する。
(9)硝酸塩の還元 
2KNO + 6HCOOH → NO + 4CO + 5HO + 2HCOOK
(10)次亜硝酸の脱水 
 + HSO → HSO・HO + N
 そして、製造された亜酸化窒素は、ガスメーカにて上記高圧ガス容器6に充填された後、上記図1に示すエネルギー取出装置へと送られて使用される。一方、高圧ガス容器6は、使用後にガスメーカに返却されて、再充填されることによって繰り返し使用することが可能である。
 また、亜酸化窒素ガスの供給方法については、上記高圧ガス容器6を用いて供給する(高圧ガス容器6を交換する)方法に限らず、例えばタンカーやタンクローリーなどの輸送手段を用いて、上記高圧ガス容器6に供給する方法を用いることが可能である。さらに、亜酸化窒素ガスをパイプラインを通じて、上記高圧ガス容器6に供給する方法を用いることも可能である。
 なお、窒素ガスの供給方法についても、上記高圧ガス容器18を用いて供給する(高圧ガス容器18を交換する)方法に限らず、上述した亜酸化窒素ガスの供給方法と同様の方法を用いて供給することが可能である。
 本発明では、上記触媒4を用いることによって、亜酸化窒素ガスの分解開始温度を引き下げることができる。そして、亜酸化窒素ガスの分解後は、この亜酸化窒素ガスの分解により発生する分解熱によって、その後に供給される亜酸化窒素ガスの分解を継続的に行うことが可能である。
 したがって、本発明では、亜酸化窒素ガスの分解開始前に、上記触媒4を予熱しておくだけでよい。そして、亜酸化窒素ガスの分解後は、この亜酸化窒素ガスの分解により発生する分解熱によって、上記触媒4の温度を、亜酸化窒素ガスを分解するのに必要な温度以上に保ちながら、亜酸化窒素ガスの分解を継続的に行わせることが可能である。
 具体的に、上記触媒4の温度は、触媒活性の観点から200~600℃の範囲が好ましく、分解反応容易性の観点から350~450℃の範囲がより好ましい。すなわち、本発明では、上記触媒4の温度がこのような範囲となるように、上記ヒータ11による予熱や、上記制御部17による分解ガスの温度制御を行うことが好ましい。
 一方、亜酸化窒素自体は約500℃以上で自己分解することから、上記分解反応部5を自己分解温度以上に保つことで、上記触媒4を用いずに亜酸化窒素ガスの分解を継続的に行わせることも可能である。しかしながら、上記触媒4を用いずに亜酸化窒素ガスを自己分解させた場合には、分解副生物としてNOガスが発生することがわかっている。したがって、本発明では、上記NOガスの発生を防ぐため、上記触媒4を用いることが好ましい。なお、上記触媒4は、亜酸化窒素ガスの自己分解温度以上であっても使用することが可能である。
 亜酸化窒素ガスの温度については、亜酸化窒素ガスが液化しない温度であればよく、通常は常温以下で使用することが可能である。一方、亜酸化窒素ガスは、常温よりも高い温度に予熱して使用することも可能である。例えば、亜酸化窒素ガスの濃度が低い場合には、この亜酸化窒素ガスを予熱することによって、亜酸化窒素ガスの分解を促進させることが可能である。
 亜酸化窒素ガスの濃度については、特に限定されるものではなく、例えば1~100%の範囲で調整されたもの、また、より多くのエネルギーを得る必要がある場合には、50%超~100%の範囲で調整されたもの、さらに、70%超~100%の範囲で調整されたものを使用することが可能である。また、上述した亜酸化窒素ガスの濃度調整を行うことによって、亜酸化窒素ガスの分解反応速度等を調整することが可能である。
 また、本発明では、上述した亜酸化窒素の濃度調整を行うことによって、分解ガスを呼吸気ガスとして利用することが可能である。具体的に、空気は、その体積の約8割が窒素(N)で、約2割が酸素(O)であるため、例えば、上記燃料ガス中に含まれる亜酸化窒素(NO)と窒素(N)の割合を体積比(モル比)で、NO:N=1:1とする。すなわち、上記燃料ガス中に窒素ガスを添加し、この燃料ガス中に含まれる亜酸化窒素の濃度を50%とすれば、この燃料ガス中に含まれる亜酸化窒素が最終的に窒素と酸素に分解されたときに、亜酸化窒素1モルは窒素1モルと酸素0.5モルに分解されるため、この分解ガス中に含まれる窒素(N)と酸素(O)の割合は、体積比(モル比)で、N:O=4:1となる。これにより、分解ガス中に含まれる窒素(N)と酸素(O)の割合を空気組成に近づけることができるため、この分解ガスを呼吸気ガスとして利用することが可能となる。
 具体的に、上記分解ガスを呼吸気ガスとして用いる場合には、その酸素濃度を18~24%程度の範囲とすることが好ましく、その場合、亜酸化窒素ガスの濃度を44~63%程度の範囲とすることが好ましい。
 また、本発明では、亜酸化窒素ガスの濃度が44%未満のもの、すなわち亜酸化窒素ガスの濃度が低いものを使用することが可能である。この場合、亜酸化窒素ガスの分解によって発生するエネルギー(エネルギー密度)は低くなるものの、この亜酸化窒素ガスの分解反応を緩やかなものとすることで、上述した分解ガスによって高温高圧に晒される触媒4や分解反応部5などの各部材の劣化(例えば熱疲労や酸化など。)を抑制することが可能である。すなわち、本発明では、上述した触媒4や分解反応部5等の各部材料の耐熱性及び耐酸化性を考慮して、亜酸化窒素ガスの濃度を調整することが可能である。
 一方、本発明では、亜酸化窒素ガスの濃度が63%超のもの、すなわち亜酸化窒素ガスの濃度が高いものを使用することが可能である。この場合、亜酸化窒素ガスの分解によって発生するエネルギー(エネルギー密度)を高めることができ、上記変換部1での出力向上を図ることが可能である。
 特に、本発明では、亜酸化窒素ガスの濃度が100%のものを使用した場合でも、上記触媒4を用いて亜酸化窒素ガスの分解を継続的に行わせることが可能である。なお、本発明では、高純度(例えば純度99.9(3N)~99.999(5N)%)の亜酸化窒素ガスだけでなく、その製造コスト等を考慮して、それよりも純度の低い(例えば純度97%未満)亜酸化窒素ガスを使用することも可能である。
 上述した窒素ガスによる亜酸化窒素ガスの濃度調整は、亜酸化窒素ガスの分解前に亜酸化窒素ガス中に窒素ガス等を添加する方法であっても、亜酸化窒素ガスの分解後に分解ガス中に窒素ガス等を添加する方法であってもよい。さらに、予め濃度調整が行われた亜酸化窒素ガスを用いてもよい。
 すなわち、上記窒素ガス供給ライン14は、上述した第1の供給ライン7に接続されたものに限らず、上記第2の供給ライン8や第3の供給ライン9、排出ライン10などに接続されたものであってもよい。
 なお、上記亜酸化窒素ガス中に含まれる亜酸化窒素以外の成分については、上述した亜酸化窒素の濃度調整のために添加された窒素等の他にも、後述する亜酸化窒素の製造時に混入した未反応物や、副生成物、空気、不可避不純物などを挙げることができる。
 また、本発明では、上記分解ガス中の酸素濃度を計測する酸素濃度計(酸素計測手段)を設けてもよい。この場合、上記分解ガス中に含まれる酸素の濃度を計測し、この計測結果に基づいて、上述した分解ガスの温度制御を精度良く行うことが可能である。
 なお、上記分解反応部5に導入される亜酸化窒素ガスの空間速度(Space Velocity)は、その設計に合わせて最適な値に設定すればよく、例えば、10~140,000hr-1の範囲、好ましくは100~10,000hr-1の範囲で設定することが可能である。
 また、本発明では、上記排出ライン10から排出された分解ガスを燃料の燃焼に利用することも可能である。なお、燃料については、上記分解ガス中に含まれる酸素を用いて燃焼可能なものであればよく、例えば石油や石炭、天然ガスなどの化石燃料の他にも、バイオマス燃料などの代替燃料を使用することができる。その他にも気体燃料、液体燃料、固体燃料の中から適宜選択して用いることが可能である。
 以上のように、本発明では、地球環境に優しいエネルギーとしての亜酸化窒素の利用を可能とすると共に、この亜酸化窒素の分解により発生する分解熱から電力や動力といったエネルギーを効率良く取り出すことを可能としたエネルギー取出装置及びエネルギー取出方法を提供することが可能である。
 特に、本発明では、亜酸化窒素の断熱膨張に伴う冷却熱と、この亜酸化窒素の分解によって発生する分解熱とを利用することで、上記変換部1の高温側1aと低温側1bとの間に大きな温度差を発生させることが可能である。そして、本発明では、このような亜酸化窒素ガスの分解前と分解後の温度差を利用することで、大きな出力を得ることが可能である。
[第1の実施形態]
 次に、本発明の第1の実施形態として図3に示すエネルギー取出装置20について説明する。なお、図3は、このエネルギー取出装置20の構成を示す断面模式図である。
 図3に示すエネルギー取出装置20は、温度差を電力に変換する熱電変換素子(変換手段)21を備えた発電装置であり、亜酸化窒素の分解前と分解後の温度差を利用して電力を得るものである。
 熱電変換素子21は、ペルチェ素子又はゼーベック素子と呼ばれるものであり、例えば、2種類の異なる金属又は半導体を接合し、これらの間に温度差を与えたときに起電力が発生する現象(ゼーベック効果という。)を利用したものである。この熱電変換素子21は、平行平板状に形成されて、一方の面(図3では上面)が高温側伝熱面21aを形成し、他方の面(図3では下面)が低温側伝熱面21bを形成している。
 また、図3に示すエネルギー取出装置20は、熱電変換素子21の高温側伝熱面21aとの間で熱交換を行う高温側熱交換器(加熱手段)22と、熱電変換素子21の低温側伝熱面21bとの間で熱交換を行う低温側熱交換器(冷却手段)23とを備えている。
 そして、図3に示すエネルギー取出装置20のそれ以外の構成については、上記図1に示すエネルギー取出装置と同様の構成を概略備えている。したがって、この図3に示すエネルギー取出装置20において、上記図1に示すエネルギー取出装置と同等の部位については、その説明を省略すると共に、図面において同じ符号を付すものとする。若しくは、その図示を省略するものとする。
 このエネルギー取出装置20は、図3に示すように、低温側熱交換器23の上に熱電変換素子21と、この熱電変換素子21の上に高温側熱交換器22とが配置された構造を有している。また、熱電変換素子21は、これら高温側熱交換器22と低温側熱交換器23との間に挟み込まれることによって、上面の高温側伝熱面21aが高温側熱交換器22に接触し、且つ、下面の低温側伝熱面21bが低温側熱交換器23に接触した状態となっている。
 高温側熱交換器22は、入側に上記第3の供給ライン9と、出側に上記排出ライン10とが接続されて、その内部を分解ガスが通過する箱体を構成している。また、高温側熱交換器22の下面は、熱伝導率が高く、耐熱性及び耐酸化性に優れた例えば銅製の高温側伝熱板22aによって構成されている。さらに、高温側熱交換器22の内部には、例えば銅製のヒートシンク22bが高温側伝熱板22aに接触した状態で配置されている。
 低温側熱交換器23は、入側に上記第1の供給ライン7と、出側に上記第2の供給ライン8とが接続されて、その内部を亜酸化窒素ガスが通過する箱体を構成している。また、低温側熱交換器23の上面は、熱伝導率が高い例えばアルミニウム製の低温側伝熱板23aによって構成されている。さらに、低温側熱交換器23の内部には、例えばアルミニウム製のヒートシンク23bが低温側伝熱板23aに接触した状態で配置されている。
 高温側熱交換器22の上には、上記触媒4を収納した分解反応器(分解反応部)24が立設した状態で取り付けられている。この分解反応器24は、上記第3の供給ライン9と共に、継手やフランジ等を介して接続された例えばステンレス製の配管によって構成されている。
 また、分解反応器24の外周部には、上記ヒータ11が上記触媒4の周囲を囲むように配置されている。上記ヒータ11には、例えばニクロム線等の電熱線を用いたバンド型又はテープ型のヒータが用いられている。
 以上のような構造を有するエネルギー取出装置20の動作について説明する。
 なお、このエネルギー取出装置20では、上記図1に示すエネルギー取出装置と同様に、上述した亜酸化窒素ガスの流量調整や濃度調整については既に行われているものとして、それ以外の動作を説明するものとする。
 このエネルギー取出装置20では、先ず、上記高圧ガス容器6(図3において図示せず。)から放出されて断熱膨張した亜酸化窒素ガス(NO)が上記第1の供給ライン7を通して低温側熱交換器23に供給される。そして、この亜酸化窒素ガスが低温側熱交換器23の内部を通過する間に、上記熱電変換素子21の低温側伝熱面21bとの間で熱交換が行われる。すなわち、この低温側熱交換器23では、亜酸化窒素の断熱膨張に伴う冷却熱を利用して、上記熱電変換素子21の低温側伝熱面21bに対する冷却が行われる。
 次に、低温側熱交換器23から排出された亜酸化窒素ガスが第2の供給ライン8を通して分解反応器24に供給される。そして、この亜酸化窒素ガスが分解反応器24の内部を通過する間に、上記触媒4による分解が行われる。
 次に、分解反応器24で亜酸化窒素ガスを分解することにより得られた亜酸化窒素の分解ガス(N,O)が第3の供給ライン9を通して高温側熱交換器22に供給される。そして、この分解ガスが高温側熱交換器22の内部を通過する間に、上記熱電変換素子21の高温側伝熱面21aとの間で熱交換が行われる。すなわち、この高温側熱交換器22では、亜酸化窒素ガスの分解により発生する分解熱を利用して、上記熱電変換素子21の高温側伝熱面21aに対する加熱が行われる。そして、分解ガスは、排出ライン10から排出されることになる。
 以上のように、このエネルギー取出装置20では、上述した亜酸化窒素の断熱膨張に伴う冷却熱と、この亜酸化窒素ガスの分解より発生する分解熱とを利用することで、上記熱電変換素子21の高温側伝熱面21aと低温側伝熱面21bとの間に大きな温度差を発生させることが可能である。そして、このような亜酸化窒素ガスの分解前と分解後の温度差を利用することで、大きな起電力(発電量)を得ることが可能である。
 なお、本発明は、上記図3に示すエネルギー取出装置20の構成に必ずしも限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更等を加えることが可能である。
 例えば、上記エネルギー取出装置20では、高温側熱交換器22と低温側熱交換器23との間に、熱電変換素子21を複数並べて配置した構成とすることも可能である。また、高温側熱交換器22と低温側熱交換器23との間に熱電変換素子21が挟み込まれた発電モジュールを複数並べて配置し、これら発電モジュールの間で亜酸化窒素ガス及び分解ガスを流すようにしてもよい。
 また、上記高温側熱交換器22及び低温側熱交換器23の構成についても、上記熱電変換素子21との間で熱交換が行える構成であればよく、上記エネルギー取出装置20の設計に合わせて、適宜変更を加えることが可能である。同様に、上記分解反応器24の構成についても、上記エネルギー取出装置20の設計に合わせて、適宜変更を加えることが可能である。
[第2の実施形態]
 次に、本発明の第2の実施形態として図4及び図5に示すエネルギー取出装置30A,30Bについて説明する。なお、図4は、このエネルギー取出装置30Aの構成を示す断面模式図であり、図5は、このエネルギー取出装置30Bの構成を示す断面模式図である。
 図4及び図5に示すエネルギー取出装置30A,30Bは、温度差を動力に変換するスターリングエンジン(変換手段)31A,31Bを備えた発動装置であり、亜酸化窒素の分解前と分解後の温度差を利用して動力を得るものである。
 このうち、図4に示すエネルギー取出装置30Aは、2ピストン型のスターリングエンジン31Aを備えている。具体的に、このスターリングエンジン31Aは、回転自在に支持されたクランク軸32と、クランク軸32の一端に取り付けられたフライホイール33と、クランク軸32と高温側コンロッド34aを介して連結された高温側ピストン35aと、高温側ピストン35aが往復自在に配置された高温側シリンダ36aと、クランク軸32と低温側コンロッド34bを介して連結された低温側ピストン35bと、低温側ピストン35bが往復自在に配置された低温側シリンダ36bとを備え、高温側ピストン35aと低温側ピストン35bとは、90度の位相差を持ってクランク軸32に連結されている。
 また、スターリングエンジン31Aには、高温側シリンダ36aと低温側シリンダ36bとの間を連通させる連通管(流路)37が設けられている。これにより、高温側シリンダ36a内の高温空間(膨張空間)Sと、低温側シリンダ36b内の高温空間(圧縮空間)Sとの間を作動流体(例えば空気や水素、ヘリウムなど。)が移動することが可能となっている。
 さらに、スターリングエンジン31Aは、高温空間S側の作動流体を加熱する加熱器(加熱手段)38と、低温空間S側の作動流体を冷却する冷却器(冷却手段)39と、これら加熱器38と冷却器39との間の連通管37内に配置されて、作動流体に対する蓄熱/放熱を行う再生器(蓄熱器)40とを備えている。
 そして、このスターリングエンジン31Aでは、作動流体が高温空間Sと低温空間Sとの間を往復し、圧力変化を生じさせると同時に、膨張・圧縮を繰り返すことで、高温側ピストン35a及び低温側ピストン35bの往復運動をクランク軸32の回転運動に変換し、動力を得ることが可能となっている。
 一方、図5に示すエネルギー取出装置30Bは、ディスプレーサ型のスターリングエンジン31Bを備えている。具体的に、このスターリングエンジン31Bは、回転自在に支持されたクランク軸41と、クランク軸41の一端に取り付けられたフライホイール42と、クランク軸41と出力側コンロッド43aを介して連結された出力ピストン44と、出力ピストン44が往復自在に配置された出力側シリンダ45aと、クランク軸41と置換側コンロッド43bを介して連結されたディスプレーサ46と、ディスプレーサ46が往復自在に配置された置換側シリンダ45bとを備え、出力ピストン44とディスプレーサ46とは、90度の位相差を持ってクランク軸41に連結されている。
 置換側シリンダ45bの内部は、ディスプレーサ46を挟んだ一方側の高温空間(膨張空間)Sと、他方側の高温空間(圧縮空間)Sとに仕切られている。また、置換側シリンダ45bには、高温空間Sと低温空間Sとの間を連通させる連通管(流路)47aが設けられている。これにより、高温空間Sと低温空間Sとの間を作動流体(例えば空気や水素、ヘリウムなど。)が移動することが可能となっている。また、出力側シリンダ45aは、連通管(流路)47bを介して置換側シリンダ45bの一方の空間(例えば低温空間S)と連通されている。
 さらに、スターリングエンジン31Bは、高温空間S側の作動流体を加熱する加熱器(加熱手段)48と、低温空間S側の作動流体を冷却する冷却器(冷却手段)49と、これら加熱器48と冷却器49との間の連通管47内に配置されて、作動流体に対する蓄熱/放熱を行う再生器(蓄熱器)50とを備えている。
 そして、このスターリングエンジン31Bでは、作動流体が高温空間Sと低温空間Sとの間を往復し、圧力変化を生じさせると同時に、膨張・圧縮を繰り返すことで、出力ピストン44及びディスプレーサ46の往復運動をクランク軸41の回転運動に変換し、動力を得ることが可能となっている。
 図4及び図5に示すエネルギー取出装置30A,30Bのそれ以外の構成については、上記図1に示すエネルギー取出装置及び図3に示すエネルギー取出装置20と同様の構成を概略備えている。したがって、この図4及び図5に示すエネルギー取出装置30A,30Bにおいて、上記図1に示すエネルギー取出装置及び図3に示すエネルギー取出装置20と同等の部位については、その説明を省略すると共に、図面において同じ符号を付すものする。若しくは、その図示を省略するものとする。
 以上のような構造を有するエネルギー取出装置30A,30Bの動作について説明する。
 なお、このエネルギー取出装置30A,30Bでは、上記図1に示すエネルギー取出装置と同様に、上述した亜酸化窒素ガスの流量調整や濃度調整については既に行われているものとして、それ以外の動作を説明するものとする。
 図4及び図5に示すエネルギー取出装置30A,30Bでは、先ず、上記高圧ガス容器6(図4及び図5において図示せず。)から放出されて断熱膨張した亜酸化窒素ガス(NO)が上記第1の供給ライン7を通して冷却器39,49に供給される。そして、この亜酸化窒素ガスが冷却器39,49の内部を通過する間に、上記スターリングエンジン31A,31Bの低温空間S中を流れる作動流体との間で熱交換が行われる。すなわち、この冷却器39,49では、亜酸化窒素の断熱膨張に伴う冷却熱を利用して、上記スターリングエンジン31A,31Bの低温空間S中を流れる作動流体に対する冷却が行われる。
 次に、冷却器39,49から排出された亜酸化窒素ガスが第2の供給ライン8を通して分解反応器24に供給される。そして、この亜酸化窒素ガスが分解反応器24の内部を通過する間に、上記触媒4による分解が行われる。
 次に、分解反応器24で亜酸化窒素ガスを分解することにより得られた亜酸化窒素の分解ガス(N,O)が第3の供給ライン9を通して加熱器38,48に供給される。そして、この分解ガスが加熱器38,48の内部を通過する間に、上記スターリングエンジン31A,31Bの高温空間S中を流れる作動流体との間で熱交換が行われる。すなわち、この加熱器38,48では、亜酸化窒素の分解により発生する分解熱を利用して、上記スターリングエンジン31A,31Bの高温空間S中を流れる作動流体に対する加熱が行われる。そして、分解ガスは、排出ライン10から排出されることになる。
 以上のように、このエネルギー取出装置30A,30Bでは、上述した亜酸化窒素の断熱膨張に伴う冷却熱と、この亜酸化窒素の分解により発生する分解熱とを利用することで、上記スターリングエンジン31A,31Bの高温空間Sと低温空間Sとの間に大きな温度差を発生させることが可能である。そして、このような亜酸化窒素ガスの分解前と分解後の温度差を利用することで、大きな駆動力(仕事量)を得ることが可能である。
 なお、本発明は、上記図4及び図5に示すエネルギー取出装置30A,30Bの構成に必ずしも限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更等を加えることが可能である。
 例えば、上記図4及び図5に示すエネルギー取出装置30A,30Bは、更に、上記スターリングエンジン31A,31Bの駆動により発電する発電機51を備えた発電装置とすることも可能である。この場合、上記スターリングエンジン31A,31Bによって得られた動力を発電機51によって電力に変換することが可能である。
 また、上記図4及び図5に示すエネルギー取出装置30A,30Bは、上記図4に示す2ピストン型(α型)や、上記図5に示すディスプレーサ型(γ型:ディスプレーサと出力ピストンとが異なるシリンダに配置されたタイプ)に限らず、それ以外にも、ディスプレーサ型(β型:ディスプレーサと出力ピストンとが同一のシリンダに配置されたタイプ)、ダブルアクティング型など、様々な形式のものを使用することが可能である。
 また、上記加熱器38,48及び冷却器39,49の構成についても、上記スターリングエンジン31A,31Bの高温空間S及び低温空間Sとの間で熱交換が行える構成であればよく、上記スターリングエンジン31A,31Bの設計(形式)に合わせて、適宜変更を加えることが可能である。また、上記再生器40,50については、必ずしも必須な構成ではなく、場合によって省略することも可能である。
[第3の実施形態]
 次に、本発明の第3の実施形態として図6に示すエネルギー取出装置60について説明する。なお、図6は、このエネルギー取出装置60の構成を示す断面模式図である。
 図6に示すエネルギー取出装置60は、温度差を動力に変換するヒートパイプタービン(変換手段)61を備えた発動装置であり、更に、このヒートパイプタービン61の駆動により発電する発電機70を備えた発電装置であり、亜酸化窒素の分解前と分解後の温度差を利用して動力を得た後、この動力を電力に変換するものである。
 ヒートパイプタービン61は、例えば、内部を真空脱気した状態で凝縮性の作動流体(蒸気源)Lが封入された略円筒状のヒートパイプ(容器本体)62を備えている。このヒートパイプ62は、起立した状態で配置され、その下部側に貯留された作動流体Lを加熱して蒸発させる蒸発部63を有している。
 一方、ヒートパイプ62の上部側には、蒸発した作動流体L(蒸気)によってタービン翼64aがタービン軸64bと一体に回転駆動されるタービン部64が設けられている。発電機70は、このタービン部64のタービン軸64bと連結されている。
 また、ヒートパイプ62には、作動流体Lが貯留された部分と、タービン翼64よりも上方側の部分との間を連通させる連通管(流路)65が設けられている。そして、ヒートパイプ62は、この連通管65の中途部に作動流体Lを冷却して凝縮させる凝縮部66を有している。また、ヒートパイプ62の内面には、例えば金属網や炭素繊維等の極細線材からなる毛細管構造のウィック67が設けられている。
 さらに、ヒートパイプタービン61は、蒸発部63中の作動流体Lを加熱する加熱器(加熱手段)68と、凝縮部66中の作動流体Lを冷却する冷却器(冷却手段)69とを備えている。
 このヒートパイプタービン61では、ヒートパイプ62の内部に温度差が生じることにより、蒸発部63で蒸発した作動流体Lが凝縮部66に流動して凝縮することを繰り返しながら、作動流体Lが循環することになる。すなわち、作動流体Lの潜熱の吸収・放出によって熱輸送が行われる。そして、このヒートパイプタービン61では、蒸発した作動流体Lをタービン翼64aに吹き付けて、それによりタービン軸64bを回転させて動力を得ることが可能となっている。さらに、タービン軸64bと連結された発電機70を回転駆動することで電力を得ることが可能となっている。
 なお、作動流体Lとしては、水(水蒸気)を使用することができる。また、作動流体Lとしては、アンモニアや、ノルマルペンタン等の有機媒体など、水よりも沸点が低いものなどを使用することも可能である。
 図6に示すエネルギー取出装置60のそれ以外の構成については、上記図1に示すエネルギー取出装置及び上記図3に示すエネルギー取出装置20と同様の構成を概略備えている。したがって、この図6に示すエネルギー取出装置60において、上記図1に示すエネルギー取出装置及び上記図3に示すエネルギー取出装置20と同等の部位については、その説明を省略すると共に、図面において同じ符号を付すものする。若しくは、その図示を省略するものとする。
 以上のような構造を有するエネルギー取出装置60の動作について説明する。
 なお、このエネルギー取出装置60では、上記図1に示すエネルギー取出装置と同様に、上述した亜酸化窒素ガスの流量調整や濃度調整については既に行われているものとして、それ以外の動作を説明するものとする。
 図6に示すエネルギー取出装置60では、先ず、上記高圧ガス容器6(図6において図示せず。)から放出されて断熱膨張した亜酸化窒素ガス(NO)が上記第1の供給ライン7を通して冷却器69に供給される。そして、この亜酸化窒素ガスが冷却器69の内部を通過する間に、上記ヒートパイプタービン61の凝縮部66を冷却する。すなわち、この冷却器69では、亜酸化窒素の断熱膨張に伴う冷却熱を利用して、上記凝縮部66中を流れる作動流体Lに対する冷却が行われる。
 次に、冷却器69から排出された亜酸化窒素ガスが第2の供給ライン8を通して分解反応器24に供給される。そして、この亜酸化窒素ガスが分解反応器24の内部を通過する間に、上記触媒4による分解が行われる。
 次に、分解反応器24で亜酸化窒素ガスを分解することにより得られた亜酸化窒素の分解ガス(N,O)が第3の供給ライン9を通して加熱器68に供給される。そして、この分解ガスが加熱器68の内部を通過する間に、上記ヒートパイプタービン61の蒸発部63を加熱する。すなわち、この加熱器68では、亜酸化窒素の分解により発生する分解熱を利用して、上記蒸発部63中の作動流体Lに対する加熱が行われる。そして、分解ガスは、排出ライン10から排出されることになる。
 以上のように、このエネルギー取出装置60では、上述した亜酸化窒素の断熱膨張に伴う冷却熱と、この亜酸化窒素の分解により発生する分解熱とを利用することで、上記ヒートパイプタービン61の蒸発部63と凝縮部66との間に大きな温度差を発生させることが可能である。そして、このような亜酸化窒素ガスの分解前と分解後の温度差を利用することで、大きな出力(動力及び電力)を得ることが可能である。
 なお、本発明は、上記図6に示すエネルギー取出装置60の構成に必ずしも限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更等を加えることが可能である。
 例えば、上記図6に示すエネルギー取出装置60は、上記ヒートパイプタービン61を備えた構成に限定されるものではない。すなわち、ヒートパイプタービンについては、例えばサイフォン式やウィック式など、様々な形式のものを使用することが可能である。また、ヒートパイプの流路構成についても、単管型やループ型など、様々な形式のものを使用することが可能である。
 また、上記加熱器68及び冷却器69の構成についても、上記ヒートパイプタービン61の蒸発部63や凝縮部66との間で熱交換が行える構成であればよく、上記ヒートパイプタービン61の設計(形式)に合わせて、適宜変更を加えることが可能である。
 以下、「特開2002-153734号公報」に記載の亜酸化窒素分解用触媒について説明する。
 工場や焼却設備から排出される排ガス中に含まれる亜酸化窒素の濃度は10%以下であり、一方手術室から排出される余剰麻酔ガス中に含まれる亜酸化窒素の濃度は、余剰麻酔ガス排除装置で圧縮空気によって多少は希釈されているとはいえ70%以下であり、非常に高濃度である。本発明の亜酸化窒素の分解触媒は低濃度から高濃度の亜酸化窒素の分解に対応できる触媒である。
 また、本発明の亜酸化窒素の分解触媒は、比較的低温での分解処理が可能であり、水分が共存する場合においても水分による活性劣化を受けにくく、しかもNOの発生量を許容濃度以下に抑制することができ、従来の分解触媒に対し、約1/10~1/100以下にまでNOの発生量を低減することができる。
 本発明の亜酸化窒素の分解触媒は、アルミニウム、マグネシウム及びロジウムの3種の金属を必須成分として含有する次の〔1〕~〔3〕のいずれかの触媒、〔1〕アルミニウム、マグネシウム及びロジウムが担体に担持されている触媒、〔2〕マグネシウム及びロジウムがアルミナ担体に担持されている触媒、〔3〕アルミニウムの少なくとも一部とマグネシウムにより、スピネル型結晶性複合酸化物が形成されている担体に、ロジウムが担持されている触媒、及び、アルミニウム及びロジウムの2種の金属と、亜鉛、鉄、マンガン及びニッケルからなる群から選ばれる少なくとも1種の金属を必須成分として含有する次の〔4〕~〔6〕のいずれかの触媒、〔4〕亜鉛、鉄、マンガン及びニッケルからなる群から選ばれる少なくとも1種の金属と、アルミニウム及びロジウムが担体に担持されている触媒、〔5〕亜鉛、鉄、マンガン及びニッケルからなる群から選ばれる少なくとも1種の金属と、ロジウムがアルミナ担体に担持されている触媒、〔6〕アルミニウムの少なくとも一部と、亜鉛、鉄、マンガン及びニッケルからなる群から選ばれる少なくとも1種の金属により、スピネル型結晶性複合酸化物が形成されている担体にロジウムが担持されている触媒、から選ばれる少なくとも1種の触媒を用いることができる。
 〔1〕の触媒に用いられる担体としては、アルミナ、シリカ、ジルコニア、セリア、チタニア及び酸化スズからなる群から選ばれる担体を用いることができ、〔4〕の触媒に用いられる担体としては、アルミナ、ジルコニア、セリア、チタニア及び酸化スズから選ばれる担体を用いることができる。担体は、表面積がそれぞれ30~300m/g程度のものを用いることができ、形状については特に制限はないが、反応器あるいは反応方法によって、粒状、粉末状、ハニカム状など、それぞれに適した形状を選ぶことができる。
 〔1〕の触媒において、担体に担持するアルミニウムとマグネシウムは、アルミニウムが、マグネシウムに対する原子比で少なくとも2以上含まれることが好ましい。また、マグネシウムは金属原子換算で、触媒全体の0.1~20.0質量%含まれることが好ましい。
 また、アルミニウムの少なくとも一部が、マグネシウムとスピネル型結晶性複合酸化物を形成することが好ましく、スピネル型結晶性複合酸化物は、例えばアルミニウムとマグネシウムを担持させた担体を焼成することによって生成することができる。スピネル構造とはXYの化学式を持つ酸化物に見られる構造で立方晶系に属し、AlとMgはMgAlのスピネル構造を形成することが知られている。本発明の亜酸化窒素の分解触媒は、その理由は定かではないが、アルミニウムの少なくとも一部が、マグネシウムとスピネル型結晶性複合酸化物を形成していることが、亜酸化窒素の分解能を向上させると共に、NOの発生量を低減させる効果を発揮すると考えられる。
 〔4〕の触媒において、担体に担持する、亜鉛、鉄、マンガン及びニッケルからなる群から選ばれる少なくとも1種の金属とアルミニウムは、アルミニウムが、亜鉛、鉄、マンガン及びニッケルからなる群から選ばれる少なくとも1種の金属に対する原子比で、少なくとも2以上含まれることが好ましい。また、亜鉛、鉄、マンガン及びニッケルからなる群から選ばれる少なくとも1種の金属は、金属原子換算で触媒全体の0.1~40.0質量%含まれることが好ましい。
 また、アルミニウムの少なくとも一部が、亜鉛、鉄、マンガン及びニッケルからなる群から選ばれる少なくとも1種の金属とスピネル型結晶性複合酸化物を形成することが好ましい。スピネル型結晶性複合酸化物は、アルミニウムと、亜鉛、鉄、マンガン及びニッケルからなる群から選ばれる少なくとも1種の金属を担持させた担体を焼成することによって生成することができる。アルミニウムと、亜鉛、鉄、マンガン及びニッケルはMAl(M=Zn、Fe、Mn、Ni)のスピネル構造を形成することが知られている。本発明の亜酸化窒素の分解触媒は、その理由は定かではないが、アルミニウムの少なくとも一部が、亜鉛、鉄、マンガン及びニッケルからなる群から選ばれる少なくとも1種の金属とスピネル型結晶性複合酸化物を形成していることが、亜酸化窒素の分解能を向上させると共に、NOの発生量を低減させる効果を発揮すると考えられる。
 〔2〕の触媒に用いられる担体はアルミナであり、アルミナに特に制限はないが、表面積が50~300m/g程度のものを用いることができる。アルミナに担持するマグネシウムは、アルミニウムが、マグネシウムに対する原子比で少なくとも2以上含まれることが好ましい。マグネシウムは、金属原子換算で触媒全体の0.1~20.0質量%含まれることが好ましい。また、アルミニウムの少なくとも一部が、マグネシウムとスピネル型結晶性複合酸化物を形成することが好ましい。
 〔5〕の触媒に用いられる担体はアルミナであり、アルミナに特に制限はないが、表面積が50~300m/g程度のものを用いることができる。アルミナに担持する、亜鉛、鉄、マンガン及びニッケルからなる群から選ばれる少なくとも1種の金属は、アルミニウムが、亜鉛、鉄、マンガン及びニッケルからなる群から選ばれる少なくとも1種の金属に対する原子比で、少なくとも2以上含まれることが好ましい。亜鉛、鉄、マンガン及びニッケルからなる群から選ばれる少なくとも1種の金属は、金属原子換算で触媒全体の0.1~40.0質量%含まれることが好ましい。また、アルミニウムの少なくとも一部が、亜鉛、鉄、マンガン及びニッケルからなる群から選ばれる少なくとも1種の金属とスピネル型結晶性複合酸化物を形成することが好ましい。
 〔3〕の触媒は、アルミニウムの少なくとも一部とマグネシウムにより、スピネル型結晶性複合酸化物が形成されている担体を用いる。〔3〕の触媒におけるアルミニウムとマグネシウムの原子比は、アルミニウムが、マグネシウムに対する原子比で少なくとも2以上含まれることが好ましい。また、マグネシウムは金属原子換算で触媒全体の0.1~20.0質量%含まれることが好ましい。
 〔6〕の触媒は、アルミニウムの少なくとも一部と、亜鉛、鉄、マンガン及びニッケルからなる群から選ばれる少なくとも1種の金属により、スピネル型結晶性複合酸化物が形成されている担体を用いる。〔6〕の触媒におけるアルミニウムと、亜鉛、鉄、マンガン及びニッケルからなる群から選ばれる少なくとも1種の金属の原子比は、アルミニウムが、亜鉛、鉄、マンガン及びニッケルからなる群から選ばれる少なくとも1種の金属に対する原子比で、少なくとも2以上含まれることが好ましい。また、亜鉛、鉄、マンガン及びニッケルからなる群から選ばれる少なくとも1種の金属は、金属原子換算で触媒全体の0.1~40.0質量%含まれることが好ましい。
 本発明の亜酸化窒素の分解触媒に含まれるロジウムは、〔1〕~〔6〕のいずれの触媒を用いる場合も、金属原子換算で触媒全体の0.05~10質量%であることが好ましく、さらに好ましくは、0.1~6.0質量%であることがよい。ロジウムの担持量を増加させることによって低温における触媒活性を向上させることは可能であるが、10質量%以上担持させることは触媒のコストを考えると好ましくなく、また0.05質量%以下であると十分な亜酸化窒素の分解活性が得られない。
 次に本発明の亜酸化窒素の分解触媒の製造方法について説明する。
 本発明の亜酸化窒素の分解触媒は各種の製造方法を用いることができ、例えば(1)含浸法、(2)共沈法、(3)混練法、等を用いることができる。以下に、この3つの製造方法を例に挙げて、本発明の亜酸化窒素の分解触媒の製造方法を説明する。
 (1)含浸法を用いる触媒の製造方法
 含浸法を用いると、前記の〔1〕~〔6〕の触媒を製造することができる。〔1〕の触媒を製造する場合には、アルミナ、シリカ、ジルコニア、セリア、チタニア及び酸化スズからなる群から選ばれる担体に、先ずアルミニウム及びマグネシウムの無機酸塩(硝酸塩、塩酸塩、硫酸塩等)または有機酸塩(シュウ酸塩、酢酸塩等)を含浸させる。〔4〕の触媒を製造する場合には、アルミナ、ジルコニア、セリア、チタニア及び酸化スズからなる群から選ばれる担体に、先ずアルミニウム及び、亜鉛、鉄、マンガン及びニッケルからなる群から選ばれる少なくとも1種の金属の無機酸塩(硝酸塩、塩酸塩、硫酸塩等)または有機酸塩(シュウ酸塩、酢酸塩等)を含浸させる。〔2〕の触媒を製造する場合には、アルミナ担体にマグネシウムの無機酸塩(硝酸塩、塩酸塩、硫酸塩等)または有機酸塩(シュウ酸塩、酢酸塩等)を含浸させる。〔5〕の触媒を製造する場合には、アルミナ担体に、亜鉛、鉄、マンガン及びニッケルからなる群から選ばれる少なくとも1種の金属の無機酸塩(硝酸塩、塩酸塩、硫酸塩等)または有機酸塩(シュウ酸塩、酢酸塩等)を含浸させる。アルミニウム塩、マグネシウム塩及び、亜鉛、鉄、マンガン及びニッケルからなる群から選ばれる少なくとも1種の金属塩は、好ましくはいずれも硝酸塩を用いるのがよい。
 〔1〕の触媒を製造する場合、アルミニウムとマグネシウムの担体に担持する量としては、アルミニウムがマグネシウム対する原子比で2以上となるように担持することが好ましく、またマグネシウムの担持量が、触媒全体の0.1~20.0質量%となるようにすることが好ましい。〔4〕の触媒を製造する場合、アルミニウムと、亜鉛、鉄、マンガン及びニッケルからなる群から選ばれる少なくとも1種の金属の担体に担持する量としては、アルミニウムが、亜鉛、鉄、マンガン及びニッケルからなる群から選ばれる少なくとも1種の金属に対する原子比で2以上となるように担持することが好ましく、また、亜鉛、鉄、マンガン及びニッケルからなる群から選ばれる少なくとも1種の金属の担持量が、触媒全体の0.1~40.0質量%となるようにすることが好ましい。〔2〕の触媒を製造する場合には、マグネシウムが、アルミニウムに対する原子比で1/2以下となるように担持することが好ましく、またマグネシウムの担持量が、触媒全体の0.1~20.0質量%となるようにすることが好ましい。また、〔5〕の触媒を製造する場合には、亜鉛、鉄、マンガン及びニッケルからなる群から選ばれる少なくとも1種の金属が、アルミニウムに対する原子比で1/2以下となるように担持することが好ましく、また亜鉛、鉄、マンガン及びニッケルからなる群から選ばれる少なくとも1種の金属の担持量が、触媒全体の0.1~40.0質量%となるようにすることが好ましい。
 担体に目的とする金属塩を担持した後、担体を乾燥して焼成処理することによって、例えばアルミニウム及びマグネシウムを含有し、アルミニウムの少なくとも一部が、マグネシウムとスピネル型結晶性複合酸化物を形成した担体を得ることができ、この担体を〔1〕の触媒の担体として用いる。また、同様にして、アルミニウムと、亜鉛、鉄、マンガン及びニッケルからなる群から選ばれる少なくとも1種の金属を含有し、アルミニウムの少なくとも一部が、亜鉛、鉄、マンガン及びニッケルからなる群から選ばれる少なくとも1種の金属とスピネル型結晶性複合酸化物を形成した担体を得ることができ、この担体を〔4〕の触媒の担体として用いる。例えば〔1〕の触媒におけるアルミニウム塩及びマグネシウム塩を含浸させた後の乾燥温度、〔4〕の触媒におけるアルミニウム塩と、亜鉛、鉄、マンガン及びニッケルからなる群から選ばれる少なくとも1種の金属塩を含浸させた後の乾燥温度はそれぞれ特に制限はないが、好ましくは80~150℃の温度範囲がよく、さらに好ましくは100~130℃の温度範囲がよい。また、乾燥雰囲気は特に制限はなく、窒素や空気を用いることができる。乾燥時間は特に制限はないが、含浸法を用いた場合、通常2~4時間程度でよい。
 含浸して乾燥させた後の担体の焼成処理は、400~900℃の温度範囲で行うことができ、好ましくは、500~700℃である。焼成温度が400℃より低い場合は、結晶化が十分ではなく、900℃以上では担体の比表面積の減少を招き好ましくない。焼成時間は特に限定されないが、1~10時間程度がよく、好ましくは2~4時間程度であり、段階的に焼成温度を変化させてもよい。長時間の焼成は、その効果が飽和するので経済的に好ましくなく、短時間の焼成ではその効果が薄い場合がある。また、焼成は焼成炉やマッフル炉等を用いて行うことができ、この時の流通ガスとしては、窒素または空気のいずれを使用してもよい。
 次に、前記の焼成して得られた担体にロジウム塩を担持する。ロジウム塩としては、無機酸塩(硝酸塩、塩酸塩、硫酸塩等)または有機酸塩(シュウ酸塩、酢酸塩等)を用いることができ、硝酸塩を用いることが好ましい。ロジウム塩を担持する工程は、例えばアルミニウム、マグネシウム及びロジウムの3種の金属を必須成分として含有する触媒を製造する場合には、前記の方法を用いて得られたアルミニウムの少なくとも一部がマグネシウムとスピネル型結晶性複合酸化物を形成する担体に対して行うことが好ましいが、担体にアルミニウムとマグネシウムを含浸担持する工程、あるいはアルミナ担体にマグネシウムを含浸担持する工程と同時に行ってもよい。また、ロジウムの担持量は、触媒全体の0.05~10質量%となるようにすることが好ましい。
 同様に、ロジウム塩を担持する工程は、アルミニウム及びロジウムの2種の金属と、亜鉛、鉄、マンガン及びニッケルからなる群から選ばれる少なくとも1種の金属を必須成分として含有する触媒を製造する場合には、前記の方法を用いて得られたアルミニウムの少なくとも一部が、亜鉛、鉄、マンガン及びニッケルからなる群から選ばれる少なくとも1種の金属とスピネル型結晶性複合酸化物を形成する担体に対して行うことが好ましいが、担体にアルミニウムと、亜鉛、鉄、マンガン及びニッケルからなる群から選ばれる少なくとも1種の金属を含浸担持する工程、あるいはアルミナ担体に、亜鉛、鉄、マンガン及びニッケルからなる群から選ばれる少なくとも1種の金属を含浸担持する工程と同時に行ってもよい。また、ロジウムの担持量は、触媒全体の0.05~10質量%となるようにすることが好ましい。ここで、予めアルミニウムの少なくとも一部が、マグネシウムとスピネル型結晶性複合酸化物を形成する担体を用いれば、この担体に前記と同様にしてロジウム塩を担持することにより〔3〕の触媒を製造することができる。また、予めアルミニウムの少なくとも一部が、亜鉛、鉄、マンガン及びニッケルからなる群から選ばれる少なくとも1種の金属とスピネル型結晶性複合酸化物を形成する担体を用いれば、この担体にロジウム塩を担持することにより〔6〕の触媒を製造することができる。
 次に、このロジウムを担持させた触媒前駆体を前記と同様の乾燥条件で乾燥し、乾燥した触媒前駆体を焼成する。この焼成温度は200~500℃であることが好ましく、さらに好ましくは300~400℃がよい。焼成して得られた触媒は亜酸化窒素分解触媒として使用することができるが、さらに還元処理をすることが好ましく、還元処理をすることで、より活性の高いロジウム含有触媒を得ることができる。還元処理は、例えば、(1)ヒドラジンで還元後に再乾燥し、焼成する方法、または(2)水素還元する方法、によって行うことができ、水素還元する方法を用いることが好ましい。水素還元する方法を用いる場合は、還元温度は200~500℃であることが好ましく、より好ましくは300~400℃がよい。還元時間は特に限定されないが、1~10時間程度で処理することができ、好ましくは2~4時間程度である。また、焼成処理をせずに還元処理を行ってもよく、この場合も活性の高いロジウム含有触媒を得ることができる。焼成処理をせずに還元処理を行って触媒を製造する方法としては、200~500℃の温度で水素還元する方法が好ましい。
 (2)共沈法を用いる触媒の製造方法
 共沈法を用いると、前記の〔3〕及び〔6〕の触媒を製造することができる。共沈法を用いて〔3〕の触媒を製造する方法としては、例えばアルミニウムとマグネシウムの硝酸塩を含む水溶液にアンモニア水を滴下して中和沈殿させ、必要に応じて熟成放置し、ろ過水洗し、洗浄水の電導度などで十分に水洗したことを確認する。次に、含浸法と同様の条件で10~12時間程度乾燥後、得られた乾燥体を粉砕し、粒度を揃えて成型する。さらに窒素または空気雰囲気において、含浸法と同様の条件で焼成処理することにより、アルミニウムの少なくとも一部が、マグネシウムとスピネル型結晶性複合酸化物を形成する担体を得る。
 アルミニウムとマグネシウムの量としては、アルミニウムがマグネシウムに対する原子比で2以上となるようにすることが好ましく、マグネシウムは、金属原子換算で触媒全体の0.1~20.0質量%含まれることが好ましい。こうして得られたアルミニウムの少なくとも一部が、マグネシウムとスピネル型結晶性複合酸化物を形成する担体にロジウム塩を担持するが、その方法、担持量及びその後の処理方法としては前記の含浸法と同様に行うことができる。
 また、共沈法を用いて〔6〕の触媒を製造する方法としては、例えばアルミニウムの硝酸塩と、亜鉛、鉄、マンガン及びニッケルからなる群から選ばれる少なくとも1種の金属の硝酸塩を含む水溶液にアンモニア水を滴下して中和沈殿させ、必要に応じて熟成放置し、ろ過水洗し、洗浄水の電導度などで十分に水洗したことを確認する。次に、含浸法と同様の条件で10~12時間程度乾燥後、得られた乾燥体を粉砕し、粒度を揃えて成型する。さらに窒素または空気雰囲気において、含浸法と同様の条件で焼成処理することにより、アルミニウムの少なくとも一部が、亜鉛、鉄、マンガン及びニッケルからなる群から選ばれる少なくとも1種の金属とスピネル型結晶性複合酸化物を形成する担体を得る。
 アルミニウムと、亜鉛、鉄、マンガン及びニッケルからなる群から選ばれる少なくとも1種の金属の量としては、アルミニウムが、亜鉛、鉄、マンガン及びニッケルからなる群から選ばれる少なくとも1種の金属に対する原子比で2以上となるようにすることが好ましく、亜鉛、鉄、マンガン及びニッケルからなる群から選ばれる少なくとも1種の金属は、金属原子換算で触媒全体の0.1~40.0質量%含まれることが好ましい。こうして得られた、アルミニウムの少なくとも一部が、亜鉛、鉄、マンガン及びニッケルからなる群から選ばれる少なくとも1種の金属とスピネル型結晶性複合酸化物を形成する担体にロジウム塩を担持するが、その方法、担持量及びその後の処理方法としては前記の含浸法と同様に行うことができる。
 (3)混練法を用いる触媒の製造方法
 混練法を用いると、〔3〕及び〔6〕の触媒を製造することができる。混練法を用いて〔3〕の触媒を製造する方法としては、例えば、アルミナ及び/または水酸化アルミニウムと、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム及び/またはマグネシウム塩に、例えば必要に応じて水を加え、機械的に混合して得られる混合物を乾燥し、さらに含浸法と同様の条件で焼成処理を行い、前記のスピネル型結晶性複合酸化物を得ることができる。アルミニウムとマグネシウムの量としては、アルミニウムがマグネシウムに対する原子比で2以上となるようにすることが好ましく、マグネシウムは、金属原子換算で触媒全体の0.1~20.0質量%含まれることが好ましい。
 こうして得られたアルミニウムの少なくとも一部がマグネシウムとスピネル型結晶性複合酸化物を形成する焼成体にロジウム塩を担持するが、その方法、担持量及びその後の処理方法としては前記の含浸法と同様の方法を用いることができる。また、ロジウム塩はアルミナ等を機械的に混合する際にあらかじめ加えてもよい。
 混練法を用いて〔6〕の触媒を製造する方法としては、例えば、アルミナ及び/または水酸化アルミニウムと、亜鉛、鉄、マンガン及びニッケルからなる群から選ばれる少なくとも1種の酸化物、水酸化物及び/または金属塩に、例えば必要に応じて水を加え、機械的に混合して得られる混合物を乾燥し、さらに含浸法と同様の条件で焼成処理を行い、前記のスピネル型結晶性複合酸化物を得ることができる。また、アルミニウムと、亜鉛、鉄、マンガン及びニッケルからなる群から選ばれる少なくとも1種の金属の量としては、アルミニウムが、亜鉛、鉄、マンガン及びニッケルからなる群から選ばれる少なくとも1種の金属に対する原子比で2以上となるようにすることが好ましく、亜鉛、鉄、マンガン及びニッケルからなる群から選ばれる少なくとも1種の金属は、金属原子換算で触媒全体の0.1~40.0質量%含まれることが好ましい。
 こうして得られた、アルミニウムの少なくとも一部が、亜鉛、鉄、マンガン及びニッケルからなる群から選ばれる少なくとも1種の金属とスピネル型結晶性複合酸化物を形成する焼成体にロジウム塩を担持するが、その方法、担持量及びその後の処理方法としては前記の含浸法と同様の方法を用いることができる。また、ロジウム塩はアルミナ等を機械的に混合する際にあらかじめ加えてもよい。
 次に本発明の分解触媒を用いた亜酸化窒素の分解方法について説明する。本発明の分解触媒を用いて亜酸化窒素の分解反応を行う場合、200~600℃の温度範囲で行うことができる。好ましくは300~500℃の温度範囲、さらに好ましくは350~450℃の温度範囲で、本発明の分解触媒と亜酸化窒素を気相で接触させればよい。200℃より温度が低いと亜酸化窒素の分解が十分ではなく、また、600℃以上では触媒寿命が短くなる傾向があるので好ましくない。触媒床の方式としては、特に制限されるものはないが、固定床が一般的に好ましく用いられる。
 また、従来のパラジウムを用いた触媒では水分の影響によって触媒の活性が低下し、水分を除いても元の活性に戻らないのに対し、本発明の分解触媒は、1~3%の水分共存によって活性は僅かに低下する場合があるものの、水分を除くと再び元の活性に戻るという特徴を有する。
 次に本発明の分解触媒を用いて分解することができるガスの組成について説明する。工場や焼却設備から排出される排ガス中に含まれる亜酸化窒素の濃度は、10%以下であり、本発明の分解触媒を用いることにより、排ガス中に含まれる1ppm~10%の濃度の亜酸化窒素を分解することができる。一方、手術室から余剰麻酔ガス排除装置によって排出される亜酸化窒素の濃度は3~70%と非常に高濃度の場合がある。また、麻酔ガス中に含まれる亜酸化窒素を分解する場合には、通常酸素が13~20%存在する反応となり、分解触媒にとって過酷な条件下での反応となる。従って、除熱が可能であり、温度コントロールが十分にできれば、分解処理する亜酸化窒素の濃度に特に制限はないが、亜酸化窒素が窒素と酸素に分解する反応は発熱反応であるため、亜酸化窒素の濃度は3~50%がよく、好ましくは3~25%、さらに好ましくは3~10%であることがよい。
 単位触媒当たりの供給ガス量である空間速度(SV:Space Velocity)は、10hr-1~20000hr-1の範囲であることがよく、好ましくは100hr-1~10000hr-1の範囲である。
 以下、「特開2002-253967号公報」に記載の亜酸化窒素分解用触媒について説明する。
 本発明の亜酸化窒素の分解触媒は、低濃度から高濃度の亜酸化窒素を分解することができる触媒である。手術室から排出される余剰麻酔ガス中に含まれる亜酸化窒素の濃度は、圧縮空気によって多少は希釈されているとはいえ70%以下であり、非常に高濃度であるが、本発明の亜酸化窒素の分解触媒を用いれば対応することができる。
 また、本発明の亜酸化窒素の分解触媒は、余剰麻酔ガス中に含まれる揮発性麻酔剤による劣化を受けた場合においても、賦活再生をすることによって活性を回復させることができる。しかも比較的低温で亜酸化窒素を分解することができ、水分が共存する場合においても水分による活性劣化を受けにくく、NOの発生量を許容濃度以下に抑制することができ、従来の分解触媒に対し、約1/10~1/100以下のレベルまでNOの発生量を低減することができる。
 本発明の亜酸化窒素の分解触媒は、ロジウム、ルテニウムおよびパラジウムからなる群から選ばれる少なくとも1つの貴金属を必須成分として含有することを特徴とし、次の(1)~(3)のいずれかの触媒を用いることができる。
(1) シリカまたはシリカアルミナから選ばれる担体に、(a)ロジウム、ルテニウムおよびパラジウムからなる群から選ばれる少なくとも1つの貴金属を担持してなる触媒。
(2) シリカ担体に、(a)ロジウム、ルテニウムおよびパラジウムからなる群から選ばれる少なくとも1つの貴金属、(b)アルミニウム、および(c)亜鉛、鉄およびマンガンからなる群から選ばれる少なくとも1つの金属、を担持してなる触媒。
(3) シリカアルミナ担体に、(a)ロジウム、ルテニウムおよびパラジウムからなる群から選ばれる少なくとも1つの貴金属、および(d)マグネシウム、亜鉛、鉄およびマンガンからなる群から選ばれる少なくとも1つの金属、を担持してなる触媒。
 (1)の触媒に用いられる担体は、シリカまたはシリカアルミナであり、これらの担体に特に制限はないが、表面積が50~300m/g程度のものを用いることができる。形状については特に制限はなく、反応器あるいは反応方法によって、粒状、粉末状、ハニカム状など、それぞれに適した形状を選ぶことができる。
 (2)の触媒に用いられる担体は、シリカであり特に制限はないが、表面積が50~300m/g程度のものを用いることができる。形状については特に制限はないが、反応器あるいは反応方法によって、粒状、粉末状、ハニカム状など、それぞれに適した形状を選ぶことができる。
 シリカ担体に担持する成分のうち、亜鉛、鉄およびマンガンからなる群(c)から選ばれる少なくとも1つの金属は、触媒質量全体の0.1~5.0質量%含有することが好ましく、さらに好ましくは0.2~1.0質量%含有することが望ましい。群(c)から選ばれる金属が触媒質量全体の5.0質量%以上含まれていても効果が飽和することがある。
 シリカ担体に担持するアルミニウムは、亜鉛、鉄およびマンガンからなる群(c)から選ばれる少なくとも1つの金属に対する原子比で、少なくとも2以上含有することが好ましい。また、アルミニウムの少なくとも一部が、群(c)から選ばれる少なくとも1つの金属とスピネル型結晶性複合酸化物を形成することが好ましく、スピネル型結晶性複合酸化物は、例えばアルミニウムと亜鉛、鉄およびマンガンからなる群から選ばれる少なくとも1つの金属を担持させた担体を焼成することによって生成することができる。
 スピネル構造とはXYの化学式を持つ酸化物に見られる構造で、立方晶系に属し、AlとZn、Fe、Mnは、それぞれ、ZnAl、FeAl、MnAlのスピネル構造を形成することが知られている。本発明の亜酸化窒素の分解触媒は、その理由は定かではないが、アルミニウムの少なくとも一部が、群(c)から選ばれる少なくとも1つの金属の一部もしくは全部とスピネル型結晶性複合酸化物を形成することによって、亜酸化窒素の分解能を向上させると共に、NOの発生量を低減させる効果を発揮すると考えられる。
 (3)の触媒に用いられる担体はシリカアルミナであり特に制限はないが、表面積が50~300m/g程度のものを用いることができる。シリカアルミナ担体に担持する、マグネシウム、亜鉛、鉄およびマンガンからなる群(d)から選ばれる少なくとも1つの金属は、触媒質量全体の0.1~5.0質量%含有することが好ましく、さらに好ましくは0.2~1.0質量%含有することが望ましい。群(d)から選ばれる金属が触媒質量全体の5.0質量%以上含まれていても効果が飽和することがある。
 (3)の触媒に含まれるアルミニウムは、マグネシウム、亜鉛、鉄およびマンガンからなる群(d)から選ばれる少なくとも1つの金属に対する原子比で、少なくとも2以上含有することが好ましい。また、アルミニウムの少なくとも一部が、群(d)から選ばれる少なくとも1つの金属とスピネル型結晶性複合酸化物を形成することが好ましい。スピネル型結晶性複合酸化物は、シリカアルミナ担体に、群(d)から選ばれる少なくとも1つの金属を担持させ、担体を焼成することによって生成することができる。
 本発明の亜酸化窒素の分解触媒に含まれる、ロジウム、ルテニウムおよびパラジウムからなる群(a)から選ばれる少なくとも1つの貴金属は、前記の(1)~(3)のいずれの触媒を用いる場合も、触媒質量全体の0.05~10質量%含有することが好ましく、さらに好ましくは、0.1~6.0質量%含有することが望ましい。群(a)から選ばれる少なくとも1つの貴金属の担持量を増加させることによって低温における触媒活性を向上させることは可能であるが、10質量%以上担持させることは触媒のコストを考えると好ましくなく、また0.05質量%以下であると十分な亜酸化窒素の分解活性が得られない場合がある。
 次に本発明の亜酸化窒素分解触媒の製造方法について説明する。
 本発明の亜酸化窒素分解触媒は各種の製造方法を用いることができ、例えば(1)含浸法、(2)共沈法、(3)混練法、等の方法を用いることができる。以下に含浸法を用いて前記の(2)の触媒を製造する方法について説明するが、本発明はこれに限定されないことはいうまでもない。
 含浸法を用いて(2)の触媒を製造する方法は以下の3工程を含むことができる。
〔1〕シリカ担体に、(b)アルミニウム、および(c)亜鉛、鉄およびマンガンからなる群から選ばれる少なくとも1つの金属を担持する工程。
〔2〕工程〔1〕から得られる担体を400~900℃で焼成する工程。
〔3〕工程〔2〕から得られる焼成された担体に、(a)ロジウム、ルテニウムおよびパラジウムからなる群から選ばれる少なくとも1つの貴金属を担持する工程。
 工程〔1〕では、シリカ担体に、アルミニウムの無機酸塩、および、亜鉛、鉄およびマンガンからなる群(c)から選ばれる少なくとも1つの金属の無機酸塩(硝酸塩、塩酸塩、硫酸塩等)または有機酸塩(シュウ酸塩、酢酸塩等)を含浸させる。好ましくは、アルミニウムと群(c)から選ばれる少なくとも1つの金属の塩は、どちらも硝酸塩を用いるのがよい。
 アルミニウムと群(c)から選ばれる少なくとも1つの金属を担体に担持する量としては、アルミニウムを群(c)から選ばれる少なくとも1つの金属に対する原子比で2以上となるように担持することが好ましく、また群(c)から選ばれる少なくとも1つの金属の担持量が、触媒質量全体の0.1~5.0質量%となるようにすることが好ましい。
 工程〔1〕を行った後、好ましくは担体を乾燥し、さらに焼成工程〔2〕を行うことによって、アルミニウムおよび群(c)から選ばれる少なくとも1つの金属を含有し、担持したアルミニウムの少なくとも一部が、亜鉛、鉄およびマンガンからなる群(c)から選ばれる少なくとも1つの金属とスピネル型結晶性複合酸化物を形成した担体を得ることができる。工程〔1〕を行った後の乾燥温度は特に制限はないが、好ましくは80~150℃の温度範囲がよく、さらに好ましくは100~130℃の温度範囲がよい。また、乾燥雰囲気は特に制限はないが、空気を用いることが好ましい。乾燥時間は特に制限はないが、含浸法を用いた場合、通常2~4時間程度でよい。
 焼成工程〔2〕は、400~900℃の温度範囲で行うことができ、好ましくは、500~700℃が望ましい。焼成温度が400℃より低い場合は、結晶化が十分ではない場合があり、900℃以上では担体の比表面積が減少する傾向があり好ましくない。焼成時間は特に限定されないが、1~10時間程度がよく、好ましくは2~4時間程度がよく、段階的に焼成温度を変化させてもよい。長時間の焼成は、その効果が飽和する場合があり経済的に好ましくなく、短時間の焼成ではその効果が少ないことがある。また、焼成は焼成炉やマッフル炉等を用いて行うことができ、この時の流通ガスとしては、窒素または空気のいずれを使用してもよい。
 次に、工程〔2〕で得られた、アルミニウムの少なくとも一部が、亜鉛、鉄およびマンガンからなる群(c)から選ばれる少なくとも1つの金属とスピネル型結晶性複合酸化物を形成する担体に、ロジウム、ルテニウムおよびパラジウムからなる群(a)から選ばれる少なくとも1つの貴金属の塩を担持する工程〔3〕を行う。群(a)から選ばれる少なくとも1つの貴金属の塩としては、無機酸塩(硝酸塩、塩酸塩、硫酸塩等)または有機酸塩(シュウ酸塩、酢酸塩等)を用いることができ、無機酸塩の硝酸塩を用いることが好ましい。
 工程〔3〕は、アルミニウムの少なくとも一部が、群(c)から選ばれる少なくとも1つの金属とスピネル型結晶性複合酸化物を形成する工程〔2〕で得られた担体に対して行うことが好ましいが、工程〔1〕と同時に行ってもよい。その場合には、工程〔1〕と工程〔3〕を同時に行った後に工程〔2〕を行い、アルミニウムの少なくとも一部が、群(c)から選ばれる少なくとも1つの金属とスピネル型結晶性複合酸化物を形成することが好ましい。いずれの場合であっても、ロジウム、ルテニウムおよびパラジウムからなる群(a)から選ばれる少なくとも1つの貴金属の担持量は、触媒質量全体の0.05~10質量%となるようにすることが好ましい。
 次に、工程〔3〕を行った触媒前駆体を、前記と同様の乾燥条件で乾燥する。乾燥した触媒前駆体は還元処理をすることが好ましく、還元処理をすることにより、活性の高い、群(a)から選ばれる少なくとも1つの貴金属を含有する触媒を得ることができる。還元処理は、例えば、(1)ヒドラジンで還元後に再乾燥し、焼成する方法、または(2)水素還元する方法、によって行うことができ、水素還元する方法を用いることが好ましい。水素還元する方法を用いる場合は、還元温度は200~500℃であることが好ましく、より好ましくは300~400℃がよい。還元時間は特に限定されないが、1~10時間程度で処理することができ、好ましくは2~4時間程度がよい。また、前記の乾燥した触媒前駆体は(1)または(2)の還元処理をせず、窒素または空気中で焼成してもよい。この時の焼成温度としては、200~500℃であることが好ましく、より好ましくは300~400℃がよい。
 次に前記の亜酸化窒素分解触媒を用いる亜酸化窒素の分解方法について説明する。
 本発明の亜酸化窒素の分解方法は次の4つの方法がある。本発明の亜酸化窒素の分解方法(1)は、亜酸化窒素を含有するガスを、前記の触媒と、200~600℃で接触させることを特徴とする。また、本発明の亜酸化窒素の分解方法(2)は、触媒が、シリカまたはシリカアルミナからなる担体に、ロジウム、ルテニウムおよびパラジウムからなる群から選ばれる少なくとも1つの貴金属を担持してなる触媒であり、亜酸化窒素を含有するガスと該触媒を200~600℃で接触させ、分解過程で触媒の活性低下が認められた時点で、亜酸化窒素を含有するガスの供給を停止して500℃~900℃に加熱し、触媒を賦活再生した後、亜酸化窒素を含有するガスの供給を再開することを特徴とする。
 本発明の亜酸化窒素の分解方法(3)は、触媒が、担体がシリカであり、該担体に、(a)ロジウム、ルテニウムおよびパラジウムからなる群から選ばれる少なくとも1つの貴金属、(b)アルミニウム、および(c)亜鉛、鉄およびマンガンからなる群から選ばれる少なくとも1つの金属、を担持してなる触媒であり、亜酸化窒素を含有するガスと該触媒を200~600℃で接触させ、分解過程で触媒の活性低下が認められた時点で、亜酸化窒素を含有するガスの供給を停止して500℃~900℃に加熱し、触媒を賦活再生した後、亜酸化窒素を含有するガスの供給を再開することを特徴とする。
 また、本発明の亜酸化窒素の分解方法(4)は、触媒が、担体がシリカアルミナであり、該担体に、(a)ロジウム、ルテニウムおよびパラジウムからなる群から選ばれる少なくとも1つの貴金属、および(d)マグネシウム、亜鉛、鉄およびマンガンからなる群から選ばれる少なくとも1つの金属、を担持してなる触媒であり、亜酸化窒素を含有するガスと該触媒を200~600℃で接触させ、分解過程で触媒の活性低下が認められた時点で、亜酸化窒素を含有するガスの供給を停止して500℃~900℃に加熱し、触媒を賦活再生した後、亜酸化窒素を含有するガスの供給を再開することを特徴とする。
 本発明の亜酸化窒素の分解方法において、亜酸化窒素を含有するガスと分解触媒との接触温度は、200~600℃、好ましくは、300~500℃、さらに好ましくは、350℃~450℃とすることが望ましい。接触温度が200℃より低い場合、亜酸化窒素の分解が十分ではない場合があり、また、600℃以上では触媒寿命が短くなる傾向がある。また触媒床の方式としては、特に制限されないが、固定床を採用することができる。
 亜酸化窒素を含有するガスの組成としては、工場や焼却設備から排出される排ガス中に含まれる亜酸化窒素の濃度は通常1000ppm以下であるが、手術室の余剰麻酔ガス排除装置によって排出される亜酸化窒素の濃度は約8~50%と非常に高濃度である。また、余剰麻酔ガス中には通常酸素が13~20%存在するため、分解触媒にとっては過酷な条件となる。除熱が可能であり、また温度コントロールができれば、分解触媒と接触させる亜酸化窒素濃度に特に制限はないが、亜酸化窒素が窒素と酸素に分解する反応は発熱反応であるため、亜酸化窒素濃度は50%以下がよく、好ましくは25%以下であり、さらに好ましくは5%程度であることが望ましい。単位触媒当たりの供給ガス量である空間速度(Space Velocity)は、10hr-1~20000hr-1の範囲が好ましく、より好ましくは100hr-1~10000hr-1の範囲が望ましい。
 また亜酸化窒素を含有するガスは、揮発性麻酔剤を含有することがあるが、本発明の亜酸化窒素分解触媒は揮発性麻酔剤による被毒を受けにくく、しかも揮発性麻酔剤による被毒を受けて触媒活性が低下した場合であっても、本発明の分解方法を用いることにより、触媒活性を回復させ、長期間にわたって亜酸化窒素の分解を行うことができる。従って、亜酸化窒素分解触媒の活性低下が認められた場合には、一旦亜酸化窒素を含有するガスの供給を停止し、焼成処理を行って触媒を賦活再生した後に、亜酸化窒素を含有するガスの供給を再開することができる。
 触媒を賦活再生する焼成処理は、500~900℃の温度で行うことができ、好ましくは600~800℃、さらに好ましくは650~750℃の温度で活性が低下した分解触媒を焼成処理すればよい。焼成処理を行う間は、ヘリウムや窒素などの不活性ガスや空気を触媒層に流通させることができ、不活性ガス中に酸素が含まれていてもよい。空気を用いることが簡便で好ましい。焼成処理時間としては10分~12時間、好ましくは20分~6時間、さらに好ましくは30分~2時間程度が望ましい。前記の、ロジウム、ルテニウムおよびパラジウムからなる群(a)から選ばれる少なくとも1つの貴金属を担持した触媒のうち、揮発性麻酔剤による被毒を受けにくく、しかも触媒の活性が回復しやすいのは、ルテニウムを含有する触媒であり、以下ロジウム、パラジウムの順に活性が低下する傾向が見られる。従って、群(a)から選ばれる貴金属成分としては少なくともルテニウムを用いることが望ましい。また、焼成処理を行った後に、水素による還元処理を行ってもよい。
 本発明の分解方法(3)に用いられる触媒は、シリカ担体に担持する成分のうち、亜鉛、鉄およびマンガンからなる群(c)から選ばれる少なくとも1つの金属を、触媒質量全体の0.1~5.0質量%含有することが好ましく、さらに好ましくは0.2~1.0質量%含有することが望ましい。群(c)から選ばれる金属が触媒質量全体の5.0質量%以上含まれていても効果が飽和することがある。
 シリカ担体に担持するアルミニウムは、亜鉛、鉄およびマンガンからなる群(c)から選ばれる少なくとも1つの金属に対する原子比で、少なくとも2以上含有することが好ましい。また、アルミニウムの少なくとも一部が、群(c)から選ばれる少なくとも1つの金属とスピネル型結晶性複合酸化物を形成することが好ましく、スピネル型結晶性複合酸化物は、例えばアルミニウムと亜鉛、鉄およびマンガンからなる群から選ばれる少なくとも1つの金属を担持させた担体を焼成することによって生成することができる。
 前記の分解方法(4)に用いられる触媒は、シリカアルミナ担体に担持する、マグネシウム、亜鉛、鉄およびマンガンからなる群(d)から選ばれる少なくとも1つの金属を、触媒質量全体の0.1~5.0質量%含有することが好ましく、さらに好ましくは0.2~1.0質量%含有することが望ましい。群(d)から選ばれる金属が触媒質量全体の5.0質量%以上含まれていても効果が飽和することがある。
 また、アルミニウムは、マグネシウム、亜鉛、鉄およびマンガンからなる群(d)から選ばれる少なくとも1つの金属に対する原子比で、少なくとも2以上含有することが好ましい。また、アルミニウムの少なくとも一部が、群(d)から選ばれる少なくとも1つの金属とスピネル型結晶性複合酸化物を形成することが好ましい。スピネル型結晶性複合酸化物は、シリカアルミナ担体に、群(d)から選ばれる少なくとも1つの金属を担持させ、担体を焼成することによって生成することができる。
 本発明の亜酸化窒素の分解方法において用いられる触媒に含まれる、ロジウム、ルテニウムおよびパラジウムからなる群(a)から選ばれる少なくとも1つの貴金属は、前記の(1)~(4)のいずれの分解方法を用いる場合も、触媒質量全体の0.05~10質量%含有することが好ましく、さらに好ましくは、0.1~6.0質量%含有することが望ましい。群(a)から選ばれる少なくとも1つの貴金属の担持量を増加させることによって低温における触媒活性を向上させることは可能であるが、10質量%以上担持させることは触媒のコストを考えると好ましくなく、また0.05質量%以下であると十分な亜酸化窒素の分解活性が得られない場合がある。
 以下、実施例により本発明の効果をより明らかなものとする。なお、本発明は、以下の実施例に限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲で適宜変更して実施することができる。
[第1の実施例]
 第1の実施例では、亜酸化窒素分解用触媒(昭和電工(株)製、アルミナ担体(日揮ユニバーサル(株)製)にロジウム5%及び亜鉛1%を担持させたもの、粒状、平均粒径:3.2mm)を2.12g(4ml)充填した分解反応器(ニッケル製反応管、1/2インチ径、触媒の層高57mm)を、ヒータ(セラミックス電気管状炉、100V、500W)で約350℃まで加熱し、この分解反応器に濃度100%の亜酸化窒素(NO)ガスをダウンフローにより供給しながら、亜酸化窒素ガスの分解を行った。
 また、亜酸化窒素ガスを分解反応器に供給する際は、流量調整弁により20~2422cc/minの範囲で流量調整を行った。そして、そのとき分解反応器に供給される亜酸化窒素ガスの線速度(LV:Linear Velocity)[m/min]と、空間速度(SV:Space Velocity)[hr-1]を測定すると共に、亜酸化窒素ガスを分解した後の反応容器内の発熱温度(触媒の温度)の最大値max[℃]を温度測定器で測定した。また、亜酸化窒素ガスを分解した後のNOの発生量[ppm]を測定し、その亜酸化窒素ガスの分解率[%]を求めた。その測定結果をまとめたものを表1に示す。また、表1の測定結果から、亜酸化窒素ガスの線速度(LV)と反応容器内の発熱温度及び亜酸化窒素ガスの分解率との関係をまとめたグラフを図7に示す。
Figure JPOXMLDOC01-appb-T000001
 表1及び図7に示すように、上述した分解反応器に供給される亜酸化窒素ガスの流量調整を行うことによって、濃度100%の亜酸化窒素ガスであっても高い分解率(99%以上)で亜酸化窒素ガスを分解できることがわかった。
 また、上記表1中に示すLV=12.75m/min、SV=17190hr-1の条件下で、ヒータによる加熱を停止し、その1時間(hr)後の反応容器内の発熱温度及び亜酸化窒素ガスの分解率とを測定した。
 その結果、ヒータの停止後も亜酸化窒素ガスの分解により発生する分解熱によって、反応容器内の発熱温度を維持しながら、加熱時と同レベルの分解率(98.7%)で亜酸化窒素ガスの分解を継続できることがわかった。このため、ヒータの停止後から約1時間(hr)経ったところで、亜酸化窒素ガスの供給を停止し、亜酸化窒素ガスの分解を強制終了した。このことからも、亜酸化窒素ガスの分解により発生する分解熱によって、その後に供給される亜酸化窒素ガスの分解をヒータによる加熱を行わずに継続できることがわかった。
[第2の実施例]
 第2の実施例では、図8に示すようなエネルギー取出装置を用いて、実際に亜酸化窒素の分解前と分解後の温度差から電力を得るための試験を行った。
 具体的に、この図8に示すエネルギー取出装置は、分解反応器24Aの構成が異なる以外は、上記図3に示すエネルギー取出装置20と同様の構成を有している。すなわち、この図8に示すエネルギー取出装置は、上記触媒4を分解反応器24の内部に収納する代わりに、この分解反応器24(図8においては第3の供給ライン9を構成する。)の上部から立設した状態で接続された分解反応器24の内部に触媒4を収納し、この分解反応器24の周囲にヒータ11を配置した構成を有している。
 なお、この図8に示すエネルギー取出装置において、それ以外の上記図3に示すエネルギー取出装置と同等の部位については、その説明を省略すると共に、図面において同じ符号を付すものとする。
 そして、本実施例では、この図8に示すエネルギー取出装置のうち、低温側熱交換器23の内部(A)と、高温側熱交換器22の内部(B)と、低温側伝熱板23a(C)と、高温側伝熱板22a(D)と、分解反応器24A(触媒4)(E)と、第3の供給ライン9(分解反応器24)(F)の各測定点において、温度の計測を行うことにした。
 本実施例では、この図8に示すエネルギー取出装置を用いて、亜酸化窒素分解用触媒(昭和電工(株)製、アルミナ担体(日揮ユニバーサル(株)製)にロジウム5%及び亜鉛1%を担持させたもの、粒状、平均粒径:3.2mm)を10g(28ml)充填した分解反応器(ニッケル製反応管、21mm径、触媒の層高80mm)24Aを、ヒータ(バンドヒータ、210W)11で加熱し、この分解反応器24Aに亜酸化窒素ガス(濃度100%)をダウンフローにより供給しながら、亜酸化窒素ガスの分解を行った。また、亜酸化窒素ガスの供給開始から約30秒後に触媒4の温度(F)が350℃以上になったことで、ヒータ11による加熱を停止した。なお、熱電変換素子21には、2種類のペルチェ素子((株)ジーマックス製、商品名:ペルチェモジュールFPH1-12708AC、サイズ:40mm×40mm×3.45mm、及び、ペルチェモジュールFPK2-19808NC、サイズ:40mm×40mm×7mm)を、それぞれ2個ずつ計4つ平面的に並べて、互いを直列に接続したものを用いた。
 そして、各測定点A~Fの温度及び熱電変換素子21の起電力[V](G)について、ヒータ11の停止後の経過時間[min]による変化を測定した結果を図9に示す。なお、熱電変換素子21の温度差は、高温側伝熱板22a(D)と低温側伝熱板23a(C)との間の温度差である。
 図9に示すように、ヒータ11の停止後も亜酸化窒素ガスの分解により発生する分解熱によって、触媒4の温度(F)を維持しながら、亜酸化窒素ガスの分解が継続されていることがわかる。また、分解後の温度上昇に伴って、高温側伝熱板22a(D)と低温側伝熱板23a(C)との間の温度差が大きくなり、それに伴って熱電変換素子21の起電力(G)が上昇していることがわかる。
 本発明によれば、亜酸化窒素の分解により発生する分解熱を利用することによって、地球環境に優しいエネルギーとしての亜酸化窒素の利用が可能である。また、亜酸化窒素は、分解ガスとして最終的に窒素と酸素に分解されるため、この分解ガスを新たな資源として活用することも可能である。さらに、亜酸化窒素は、工業生産も可能なことから、本発明において、その産業上の利用価値は非常に高い。
 上述したように、亜酸化窒素は、常温、大気圧下で安定したガスであり、毒性が低いため安全性が高く取り扱いが容易である。また、高圧ガス容器に充填された液化高圧ガスとして、分解前に容易に輸送や貯蔵等を行うことが可能である。
 また、亜酸化窒素は、融点が低く(約-90℃)、宇宙空間でも凍結しないため、地球上での利用に止まらず、地球以外の天体(例えば月や火星等)や、宇宙空間(例えば宇宙ステーションや宇宙船等)での利用も可能である。
 さらに、本発明では、亜酸化窒素を窒素と酸素に分解できるため、例えば宇宙ステーションや宇宙船などの宇宙環境や、海中ステーションや潜水艦などの海中環境において、宇宙活動や海中活動に必要なエネルギーの供給源としてだけでなく、生命維持に必要な呼吸気ガスの供給源として、大いに活用することが可能である。
 また、本発明では、亜酸化窒素の分解によって得られた酸素を水素やメタノールなどの適当な燃料と合わせることによって、例えば燃料電池(一次電池)等に利用することも可能である。更に、バッテリ(二次電池)等と組み合わせることも可能である。
 本発明を適用したスターリングエンジンは自動車(ハイブリッド車を含む)を駆動する動力源として利用することが可能である。この場合の利点としては、燃料として安全な亜酸化窒素を使用できること、および排出ガスに二酸化炭素が含まれないことが挙げられる。
 1…変換部(変換手段) 1a…変換部の高温側 1b…変換部の低温側 2…加熱部(加熱手段) 3…冷却部(冷却手段) 4…亜酸化窒素分解用触媒 5…分解反応部 5a…本体部 5b…ガス導入口 5c…ガス排出口 6…高圧ガス容器 7…第1の供給ライン 8…第2の供給ライン 9…第3の供給ライン 10…排出ライン 11…ヒータ(加熱手段) 12…電力供給ライン 13…亜酸化窒素ガス開閉弁 14…窒素ガス供給ライン(窒素ガス供給手段、濃度調整手段) 15…流量調整部(流量調整手段) 16…温度測定部(温度測定手段) 17…制御部(制御手段) 18…高圧ガス容器 19…窒素ガス開閉弁
 20…エネルギー取出装置(第1の実施形態) 21…熱電変換素子(変換手段) 22…高温側熱交換器(加熱手段) 23…低温側熱交換器(冷却手段) 24,24A…分解反応器(分解反応部) 
 30A,30B…エネルギー取出装置(第2の実施形態) 31A,31B…スターリングエンジン(変換手段) 32…クランク軸 33…フライホイール 34a…高温側コンロッド 34b…低温側コンロッド 35a…高温側ピストン 35b…低温側ピストン 36a…高温側シリンダ 36b…低温側シリンダ 37…連通管(流路) 38…加熱器(加熱手段) 39…冷却器(冷却手段) 40…再生器(蓄熱器) 41…クランク軸 42…フライホイール 43a…出力側コンロッド 43b…置換側コンロッド 44…出力ピストン 45a…出力側シリンダ 45b…置換側シリンダ 46…ディスプレーサ 47a,47b…連通管(流路) 48…加熱器(加熱手段) 49…冷却器(冷却手段) 50…再生器(蓄熱器) S…高温空間(膨張空間) S…低温空間(圧縮空間) 51…発電機
 60…エネルギー取出装置(第3の実施形態) 61…ヒートパイプタービン(変換手段) 62…ヒートパイプ(容器本体) 63…蒸発部 64…タービン部 65…連通管(流路) 66…凝縮部 67…ウィック 68…加熱器(加熱手段) 69…冷却器(冷却手段) 70…発電機 L…作動流体

Claims (28)

  1.  温度差からエネルギーを取り出すエネルギー取出装置であって、
     前記温度差を電力又は動力に変換する変換手段と、
     前記変換手段の高温側を加熱する加熱手段とを備え、
     前記加熱手段は、亜酸化窒素の分解により発生する分解熱によって加熱を行うことを特徴とするエネルギー取出装置。
  2.  前記変換手段の低温側を冷却する冷却手段を備え、
     前記冷却手段は、亜酸化窒素の断熱膨張に伴う冷却熱によって冷却を行うことを特徴とする請求項1に記載のエネルギー取出装置。
  3.  前記亜酸化窒素を分解する亜酸化窒素分解用触媒が配置された分解反応部と、
     前記亜酸化窒素を断熱膨張させることにより得られた亜酸化窒素ガスを前記冷却手段に供給する第1の供給ラインと、
     前記冷却手段から排出された亜酸化窒素ガスを前記分解反応部に供給する第2の供給ラインと、
     前記分解反応部で前記亜酸化窒素ガスを分解することにより得られた亜酸化窒素の分解ガスを前記加熱手段に供給する第3の供給ラインとを備え、
     前記分解反応部において、前記亜酸化窒素ガスを前記亜酸化窒素分解用触媒を用いて分解した後、この亜酸化窒素ガスの分解により発生する分解熱によって、その後に供給される亜酸化窒素ガスの分解が継続されることを特徴とする請求項2に記載のエネルギー取出装置。
  4.  前記分解反応部に供給される亜酸化窒素ガスの流量を調整する流量調整手段を備え、
     前記分解反応部に供給される亜酸化窒素ガスの流量を調整することによって、前記分解ガスの温度制御を行うことを特徴とする請求項3に記載のエネルギー取出装置。
  5.  前記分解反応部に供給される亜酸化窒素ガスの濃度を調整する濃度調整手段を備え、
     前記分解反応部に供給される亜酸化窒素ガスの濃度を調整することによって、前記分解ガスの温度制御を行うことを特徴とする請求項3又は4に記載のエネルギー取出装置。
  6.  前記濃度調整手段は、前記亜酸化窒素ガス中に窒素ガスを添加することによって、前記亜酸化窒素ガスの濃度調整を行うことを特徴とする請求項5に記載のエネルギー取出装置。
  7.  前記亜酸化窒素分解用触媒又は分解ガスの温度を測定する温度測定手段を備え、
     前記温度測定手段による測定結果に基づいて、前記流量調整手段による流量調整、又は、前記濃度調整手段による濃度調整を行うことを特徴とする請求項4~6の何れか一項に記載のエネルギー取出装置。
  8.  前記亜酸化窒素分解用触媒を予熱する予熱手段を備え、
     前記亜酸化窒素の分解を開始する前に、前記亜酸化窒素分解用触媒の予熱を行うことを特徴とする請求項3~7の何れか一項に記載のエネルギー取出装置。
  9.  前記分解反応部に窒素ガスを供給する窒素ガス供給手段を備え、
     前記分解反応部への亜酸化窒素ガスの供給を停止した後に、前記分解反応部に窒素ガスを供給することを特徴とする請求項3~8の何れか一項に記載のエネルギー取出装置。
  10.  前記亜酸化窒素が充填された高圧ガス容器を備え、この高圧ガス容器から放出されて断熱膨張した亜酸化窒素ガスを前記第1の供給ラインに供給することを特徴とする請求項3~9の何れか一項に記載のエネルギー取出装置。
  11.  前記変換手段は、温度差を電力に変換する熱電変換素子であることを特徴とする請求項1~10の何れか一項に記載のエネルギー取出装置。
  12.  前記変換手段は、温度差を動力に変換するスターリングエンジン又はヒートパイプタービンであることを特徴とする請求項1~10の何れか一項に記載のエネルギー取出装置。
  13.  更に、前記スターリングエンジン又はヒートパイプタービンの駆動により発電する発電機を備えることを特徴とする請求項12に記載のエネルギー取出装置。
  14.  温度差からエネルギーを取り出すエネルギー取出方法であって、
     前記温度差を電力又は動力に変換する変換手段を用いて、この変換手段の高温側を加熱する際に、亜酸化窒素の分解により発生する分解熱を用いることを特徴とするエネルギー取出方法。
  15.  前記変換手段の低温側を冷却する際に、亜酸化窒素の断熱膨張に伴う冷却熱を用いることを特徴とする請求項14に記載のエネルギー取出方法。
  16.  前記亜酸化窒素を断熱膨張させることにより得られた亜酸化窒素ガスを用いて、前記変換手段の低温側を冷却した後、前記亜酸化窒素ガスを亜酸化窒素分解用触媒を用いて分解し、この亜酸化窒素ガスを分解することにより得られた亜酸化窒素の分解ガスを用いて、前記変換手段の高温側を加熱することを特徴とする請求項15に記載のエネルギー取出方法。
  17.  前記亜酸化窒素分解用触媒が配置された分解反応部に、前記亜酸化窒素ガスを供給し、前記分解反応部において、前記亜酸化窒素ガスを前記亜酸化窒素分解用触媒を用いて分解した後、この亜酸化窒素ガスの分解により発生する分解熱によって、その後に供給される亜酸化窒素ガスの分解を継続することを特徴とする請求項16に記載のエネルギー取出方法。
  18.  前記分解ガスの温度を制御することによって、前記亜酸化窒素ガスの分解を継続的に行わせることを特徴とする請求項17に記載のエネルギー取出方法。
  19.  前記亜酸化窒素ガスの流量を調整することによって、前記分解ガスの温度制御を行うことを特徴とする請求項18に記載のエネルギー取出方法。
  20.  前記亜酸化窒素ガスの濃度を調整することによって、前記分解ガスの温度制御を行うことを特徴とする請求項18又は19に記載のエネルギー取出方法。
  21.  前記亜酸化窒素ガス中に窒素ガスを添加することによって、前記亜酸化窒素ガスの濃度調整を行うことを特徴とする請求項20に記載のエネルギー取出方法。
  22.  前記亜酸化窒素分解用触媒又は分解ガスの温度を測定し、この測定結果に基づいて前記分解ガスの温度制御を行うことを特徴とする請求項18~21に記載のエネルギー取出方法。
  23.  前記亜酸化窒素ガスの分解を開始する前に、前記亜酸化窒素分解用触媒を予熱することを特徴とする請求項16~22の何れか一項に記載のエネルギー取出方法。
  24.  前記分解反応部への亜酸化窒素ガスの供給を停止した後に、前記分解反応部に窒素ガスを供給することを特徴とする請求項17~23の何れか一項に記載のエネルギー取出方法。
  25.  前記変換手段の低温側を冷却する際に、前記亜酸化窒素が充填された高圧ガス容器から放出されて断熱膨張した亜酸化窒素ガスを用いることを特徴とする請求項15~24の何れか一項に記載のエネルギー取出方法。
  26.  前記変換手段として、温度差を電力に変換する熱電変換素子を用いることを特徴とする請求項14~25の何れか一項に記載のエネルギー取出方法。
  27.  前記変換手段として、温度差を動力に変換するスターリングエンジン又はヒートパイプタービンを用いることを特徴とする請求項14~25の何れか一項に記載のエネルギー取出方法。
  28.  更に、前記スターリングエンジン又はヒートパイプタービンの駆動により発電機で発電するステップを有することを特徴とする請求項27に記載のエネルギー取出方法。
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