以下の各実施形態では、乗用車等の車両の車室内に設置され、車両用シート(とくに助手席)として用いられる着座式マッサージ装置を例として、着座式マッサージ装置の構成および機能を説明する。ただし、この着座式マッサージ装置は、助手席に限らず運転席や後部座席に用いられてもよく、車室内の全席に用いることも可能である。なお、運転席に関しては、シフトレンジがパーキング(P)レンジにあるときのみマッサージ機能を使用できる構成とし、走行中にはマッサージ機能を使用できない構成とすることも考えられる。
(実施形態1)
本実施形態の着座式マッサージ装置(以下、単に「マッサージ装置」という)1は、図1に示すように座部(シートクッション)11と背もたれ部(シートバック)12とを有しており、使用者2が着座した姿勢で使用する。このマッサージ装置1に使用者2が座った状態(着座姿勢)では、座部11は使用者2の臀部付近を支持し、背もたれ部12は使用者2の背中付近を支持する。
ここでは、背もたれ部12は、座部11に対する角度が調節可能(リクライニング動作可能)となるように、リクライニング機構(図示せず)により座部11と連結されている。また、図1の例では、マッサージ装置1は、背もたれ部12の上方に使用者2の頭部を後方から支持するためのヘッドレスト13を有している。
本実施形態においては、マッサージ装置1は、背もたれ部12内部に第1のエアバッグ3と、第1のエアバッグ3に積み重ねて配置された第2のエアバッグ4とを備えている。さらに、マッサージ装置1は、背もたれ部12外部に設置された給排気装置5を備え、第1のエアバッグ3と第2のエアバッグ4との各々に給排気装置5がエア配管6を介して連結されている。
以下では、第1のエアバッグ3と第2のエアバッグ4とを収納した背もたれ部12の構成について詳しく説明する。なお、座部11は一般的な車両用シートと同様の構成であるので、座部11について詳細な説明は省略する。
背もたれ部12は、図1(b)に示すように、車両用シートの形状を形成し使用者2の身体を支持するフレーム部材14と、フレーム部材14に支持されるパッド部材15と、表面を覆う表皮部材16とを基本構造として備えている。つまり、背もたれ部12は表皮部材16の内側に、フレーム部材14およびパッド部材15を備えている。さらに、背もたれ部12は、表皮部材16の内側において、パッド部材15と表皮部材16との間に、パッド部材15の厚み方向に重ねられた状態の第1のエアバッグ3および第2のエアバッグ4を備えている。なお、第1のエアバッグ3および第2のエアバッグ4は、表皮部材16の内側において、フレーム材14とパッド部材15との間に配置されていてもよい。
フレーム部材14は、パッド部材15の背面側(着座状態の使用者2と反対側)に配置されており、背もたれ部12の外形形状を形成しており、背面側からパッド部材15を支持している。ここでは、フレーム部材14は、図2に示すように剛性を有する枠状の骨格部141と、骨格部141の内側に装着されたバネ部材142とを有している。なお、図1(b)ではバネ部材142の図示を省略している。
パッド部材15は、フレーム部材14と表皮部材16との間で、使用者2の身体から作用する力を受けるための部材であって、使用者2の身体を支持するのに適度な弾性および厚みを有している。ここでは、パッド部材15は、着座状態の使用者2の身体の収まり具合がよくなるように、幅方向(左右方向)の中央部がやや窪んだ形状に形成されている。
さらに、パッド部材15は、図2に示すように前面(フレーム部材14と反対側の面)に、第1のエアバッグ3と第2のエアバッグ4とを配置するための収納凹部151が形成されている。この収納凹所151は、後述する第1のエアバッグ3および第2のエアバッグ4の形状並びに配置に対応して、その形状が決められている。第1のエアバッグ3および第2のエアバッグ4は、第2のエアバッグ4が表皮部材16側となるように重ねられ、収納凹所151内に収納される。つまり、第2のエアバッグ4は、第1のエアバッグ3に重ねて第1のエアバッグ3よりも着座状態の使用者2の身体に近い位置に配置されている。ただし、第1のエアバッグ3および第2のエアバッグ4の全体が収納凹所151内に収まることは必須ではなく、第1のエアバッグ3のみが収納凹所151内に収納される構成であってもよい。
なお、パッド部材15は、背面(フレーム部材14側の面)に凹所(図示せず)が形成され、この凹所によってフレーム部材14との間に隙間を確保できるように構成されていてもよい。この場合、フレーム部材14とパッド部材15との隙間に、第1のエアバッグ3と第2のエアバッグ4とエア配管6と給排気装置5との一部あるいは全部が配置されてもよい。
表皮部材16は、図1(b)に示すように、背もたれ部12の内部構成部品を被覆した状態で、着座状態の使用者2の身体に接する側(前面側)の背もたれ部12表面を形成する。なお、上述したフレーム部材14、パッド部材15、表皮部材16からなる背もたれ部12の基本構造は一例に過ぎず、上記構成に限らず適宜変更可能である。
次に、第1のエアバッグ3および第2のエアバッグ4の構成について説明する。本実施形態では、マッサージ装置1は、図1に示すように第1のエアバッグ3を複数個(ここでは8個)備え、第2のエアバッグ4も複数個(ここでは8個)備えている。以下、複数個の第1のエアバッグ31〜38の各々を特に区別しないときには単に「第1のエアバッグ3」といい、複数個の第2のエアバッグ41〜48の各々を特に区別しないときには単に「第2のエアバッグ4」という。
まず、第1のエアバッグ3について説明する。第1のエアバッグ3は、第2のエアバッグ4に対して表皮部材16と反対側(つまりフレーム部材14側)に配置されている。第1のエアバッグ3は、背もたれ部12の幅方向(使用者2の幅方向)に細長い形状に形成されており、ここでは平面視(正面視)で、背もたれ部12の幅方向に長尺な長方形状に形成されている。
複数個の第1のエアバッグ31〜38は、背もたれ部12の高さ方向(使用者2の身長方向)に比較的狭い間隔で並べて配置されている。本実施形態では、背もたれ部12の上から3個目の第1のエアバッグ33と、同4個目の第1のエアバッグ34との間の間隔が、他の第1のエアバッグ3間に比べて広く設定されている。第1のエアバッグ3は、パッド部材15のうち各々に対応する位置および形状に形成された収納凹所151に嵌め込まれることにより、パッド部材15に保持される。
第1のエアバッグ3は、給排気装置5にてエアの給気・排気が行われることにより、その形状が変化する。つまり、第1のエアバッグ3は、合成樹脂製であって収縮・膨張可能な程度の可撓性を有しており、エアの供給(給気)時には膨張し、エアの排出(排気)時には収縮するように、エアの給気・排気に応じて膨張・収縮する。ここで、第1のエアバッグ3は、その厚み方向(背もたれ部12の厚み方向と同じ)に膨張・収縮することで、厚み寸法が変化するように構成されており、平面視の形状は大きくは変わらない。第1のエアバッグ3は、膨張時に空気圧を利用して、マッサージ装置1に着座している使用者2の身体を押圧し、これにより使用者2の身体に刺激を与える。
第1のエアバッグ3は、膨張時に第2のエアバッグ4に比べて使用者2の身体の広範囲に押圧力が作用するように、パッド部材15の前面に沿う面内での占有面積が第2のエアバッグ4よりも大きくなる形状に形成されている。そのため、第1のエアバッグ3は、膨張時に使用者2の身体の広範囲に刺激を与えることができる。以下では、第1のエアバッグ3から使用者2の身体に与えられる広範囲に及ぶ刺激を「広範囲刺激」という。なお、第1のエアバッグ3の具体的な形状は、エアの給気・排気により使用者2の身体に広範囲刺激を与えるのに適した形状であればよく、長方形状に限らず、たとえば平面視で略円形状や楕円形状などでもよい。
つまり、第1のエアバッグ3は、膨張時に使用者2の身体と面接触することで、人の掌による掌圧と同様の押圧力(掌圧力)を生じ、膨張・収縮を繰り返すことにより、使用者2に広範囲刺激を与えることができる。
次に、第2のエアバッグ4について説明する。第2のエアバッグ4は、表皮部材16側(つまりフレーム部材14と反対側)から第1のエアバッグ3に重なるように配置されている。第2のエアバッグ4は、背もたれ部12の幅方向における寸法が第1のエアバッグ3に比べて十分に小さくなるように形成されており、ここでは平面視(正面視)で略正方形状に形成されている。
複数個(ここでは8個)の第2のエアバッグ41〜48は、背もたれ部12の幅方向に並ぶ2個を1組として、背もたれ部12の高さ方向に4組並ぶように配置されている。本実施形態では、背もたれ部12の上から1段目の第2のエアバッグ41,42は、着座姿勢にある使用者2の肩部に対応する位置に配置され、同2段目の第2のエアバッグ43,44は、使用者2の肩甲骨部に対応する位置に配置されている。また、同3段目の第2のエアバッグ45,46は、使用者2の脊髄近傍部に対応する位置に配置され、同4段目の第2のエアバッグ47,48は、使用者2の腰椎部に対応する位置に配置されている。ここでは、上から1段目の第2のエアバッグ41,42と、同2段目の第2のエアバッグ43,44との間の間隔が、同2〜4段目の第2のエアバッグ4間に比べて広く設定されている。第2のエアバッグ4は、パッド部材15のうち各々に対応する位置および形状に形成された収納凹所151に嵌め込まれることにより、パッド部材15に保持される。
第2のエアバッグ4は、第1のエアバッグ3と同様に、給排気装置5にてエアの給気・排気が行われることにより、その形状が変化する。つまり、第2のエアバッグ4は、合成樹脂製であって収縮・膨張可能な程度の可撓性を有しており、エアの供給(給気)時には膨張し、エアの排出(排気)時には収縮するように、エアの給気・排気に応じて膨張・収縮する。ここで、第2のエアバッグ4は、その厚み方向(背もたれ部12の厚み方向と同じ)に膨張・収縮することで、厚み寸法が変化するように構成されており、平面視の形状は大きくは変わらない。第2のエアバッグ4は、膨張時に空気圧を利用して、マッサージ装置1に着座している使用者2の身体を押圧し、これにより使用者2の身体に刺激を与える。
第2のエアバッグ4は、膨張時に第1のエアバッグ3に比べて使用者2の身体に局所的に押圧力が作用するように、上述の通り、パッド部材15の前面に沿う面内での占有面積が第1のエアバッグ3よりも小さくなる形状に形成されている。そのため、第2のエアバッグ4は、膨張時に使用者2の身体に局所的な刺激を与えることができる。以下では、第2のエアバッグ4から使用者2の身体に与えられる局所的な刺激を「局所刺激」という。なお、第2のエアバッグ4の具体的な形状は、エアの給気・排気により使用者2の身体に局所刺激を与えるのに適した形状であればよく、正方形状に限らず、たとえば平面視で多角形状や円形状や楕円形状などでもよい。
つまり、第2のエアバッグ4は、膨張時に使用者2の身体と点接触することで、人の指による指圧と同様の押圧力(指圧力)を生じ、膨張・収縮を繰り返すことにより、使用者2に指圧圧迫マッサージと同様の効果がある局所刺激を与えることができる。
なお、背もたれ部12の上から1段目の第2のエアバッグ41,42は、使用者2の肩部に対応するので、他の第2のエアバッグ43〜48よりも高さ方向と幅方向との少なくとも一方向に大きくなるように構成されていることが望ましい。これにより、最上段の第2のエアバッグ41,42は、体格差によって肩幅や座高などの異なる使用者2に対応可能となる。また、上から4段目の第2のエアバッグ47,48は、使用者2の腰部に対応するので、他の第2のエアバッグ41〜46よりも膨張量(膨張時における厚み方向の寸法)が大きくなるように構成されていることが望ましい。これにより、最下段の第2のエアバッグ47,48は、使用者2の着座姿勢によって腰部が表皮部材16から離れてしまうことがあっても、腰部に局所刺激を与えることが可能になる。
また、第1のエアバッグ3と第2のエアバッグ4とを比較すると、同じように給気された場合に、第1のエアバッグ3よりも第2のエアバッグの方が、使用者2の身体に与える刺激が強くなる。つまり、第1のエアバッグ3から与えられる広範囲刺激より、第2のエアバッグ4から与えられる局所刺激の方が強くなる。これは、第2のエアバッグ4の方が、第2のエアバッグ3よりも刺激を与える範囲が狭い、つまり局所的に刺激を与えていることだけでなく、第2のエアバッグ4が第1のエアバッグ3の前面側に重ねられていることにも起因する。すなわち、第2のエアバッグ4と使用者2との間には表皮部材16のみが介在するのに対し、第1のエアバッグ3においては、使用者2との間に第2のエアバッグ4および表皮部材16が介在するため、第2のエアバッグ4の緩衝効果により押圧力が低下する。
したがって、第2のエアバッグ4は、膨張・収縮を繰り返すことにより、第1のエアバッグ3に比べて局所的且つ強い刺激(局所刺激)を使用者2の身体に与えることになる。言い換えれば、第1のエアバッグ3は、膨張・収縮を繰り返すことにより、第2のエアバッグ4に比べて広範囲且つ弱い刺激(広範囲刺激)を使用者2の身体に与えることになる。
ところで、給排気装置5は、上述したように構成される第1のエアバッグ3と第2のエアバッグ4との各々に対して、エア配管6を介して個別に接続されている。ここでは、複数個(8個)の第1のエアバッグ31〜38は、各々独立して膨張・収縮が可能であって、給排気装置5は、これら第1のエアバッグ31〜38の各々に対して独立して給気・排気を行う。また、複数個(8個)の第2のエアバッグ41〜48は、各々独立して膨張・収縮が可能であって、給排気装置5は、これら第2のエアバッグ41〜48の各々に対して独立して給気・排気を行う。
ここで、給排気装置5は、基本的に第1のエアバッグ3と第2のエアバッグ4とに対して同時に給気・排気は行わず、第1のエアバッグ3を用いてマッサージを施す第1モードと、第2のエアバッグ4を用いてマッサージを施す第2モードとを切替可能である。つまり、第1モードにおいては、給排気装置5は、第1のエアバッグ3から使用者2の身体に局所刺激を与えるように、第1のエアバッグ3に対する給気・排気を繰り返し行う。第2モードにおいては、給排気装置5は、第1のエアバッグ3とは別に、第2のエアバッグ4から使用者2の身体に刺激を与えるように第2のエアバッグ4に対する給気・排気を繰り返し行う。なお、給排気装置5は、その動作を制御するためのコントローラ(図示せず)を有しており、コントローラは、使用者2からの操作入力に応じて、電源のオン・オフの切り替えに加え第1モード・第2モードの切り替えを行う。
上記構成により、マッサージ装置1は、第1モードが選択されていると、第1のエアバッグ3が給排気装置5からの給気・排気に応じて膨張・収縮し、使用者2の身体を押圧して刺激(局所刺激)を与える。また、第2モードが選択されていると、マッサージ装置1は、第2のエアバッグ4が給排気装置5からの給気・排気に応じて膨張・収縮し、使用者2の身体を押圧して刺激(広範囲刺激)を与える。
ここにおいて、第1のエアバッグ3と第2のエアバッグ4とでは使用者2の身体に与える刺激が異なっており、上述したように、第1のエアバッグ3は第2のエアバッグ4に比べて広範囲且つ弱い刺激(広範囲刺激)を使用者2の身体に与える。マッサージ装置1は、このような広範囲刺激を、使用者2の腰部から肩部へ、または肩部から腰部へと連続的に移動させながら付与することにより、身体の比較的広範囲に亘って人の掌で軽くさするのと同様のさすりマッサージを施すことができる。
さすりマッサージは軽擦とも呼ばれており、その1つの特徴として、使用者2に対して心地よい刺激を与えるので、心身のリラックス効果や鎮静、誘眠効果がある。さすりマッサージを再現するには、比較的ゆっくり且つ滑らかな動きで身体の末端から心臓に向かって直線的なストロークを描くように、第1のエアバッグ3からの刺激を与える位置を移動させることが望ましい。さらに、一般的に刺激が途切れると体性感覚を刺激し交感神経が亢進しやすいと考えられるので、さすりマッサージを再現するには刺激の連続性が必要となる。そこで、刺激の連続性を向上させるために、第1のエアバッグ3は可能な限り背もたれ部12の高さ方向に細分化され、個々の第1のエアバッグ3の間隔が狭いことが望ましい。
なお、給排気装置5は、たとえばフレーム部材14の側部に取り付けられることにより、背もたれ部12または座部11に内蔵されていてもよい。これにより、車室内のスペースを有効に活用することができる。給排気装置5およびエア配管6の基本構造は一般的な構造であるため、ここでは詳細な説明は省略する。
次に、給排気装置5による給気・排気の動作について説明する。給排気装置5は、エアを供給するためのエアポンプ51(図4参照)と、エアポンプ51と第1のエアバッグ3および第2のエアバッグ4との間に設けられた制御弁52(図4参照)とを備えている。給排気装置5は、制御弁52による弁の開閉により、第1のエアバッグ3および第2のエアバッグ4の各々について給気・排気を個別に制御する。
ここで、第1モードにおいては、給排気装置5は、複数個の第1のエアバッグ31〜38について、背もたれ部12の高さ方向に沿って順に膨張し収縮するように、複数個の第1のエアバッグ31〜38の給気・排気を所定の順番で行う。これにより、複数個の第1のエアバッグ31〜38は、使用者2の腰部から肩部へ、またはその逆方向に順次刺激(広範囲刺激)を与えることができ、第1のエアバッグ3を用いてさすりマッサージを再現できる。
図3は、刺激を与える位置を腰部から肩部へかけて移動させる場合の第1のエアバッグ3の給気パターンを示している。図3では、横軸を時間軸とし、背もたれ部12の高さ方向に並ぶ複数個(8個)の第1のエアバッグ31〜38の各々について給気を行う給気期間t1〜t8を表している。
図3の給気パターンでは、まず背もたれ部12の最下段に位置する第1のエアバッグ38にエアが「t1」の期間給気される。さらに、第1のエアバッグ38への給気開始時点から遅延時間T0が経過すると、第1のエアバッグ38の1段上方に位置する第1のエアバッグ37へのエアの給気が開始され、第1のエアバッグ37にはエアが「t2」の期間給気される。同様に、第1のエアバッグ37への給気開始時点から遅延時間T0が経過すると、第1のエアバッグ37の1段上方に位置する第1のエアバッグ36へのエアの給気が開始され、第1のエアバッグ36にはエアが「t3」の期間給気される。このように、給排気装置5は、最下段の第1のエアバッグ38から最上段の第1のエアバッグ31にかけて、T0ずつの時間遅れをもって順に給気を行う。
給排気装置5は、第1のエアバッグ31〜38の各々に対する給気期間が終了すると、制御弁52の弁を切り換えて、第1のエアバッグ31〜38の各々からエアの排気を行う。排気期間は給気期間後の一定期間に制限されていてもよいし、給気期間以外は常に排気期間とされていてもよい。
さらに、図3の給気パターンでは、各第1のエアバッグ3の給気期間が終了してから次の第1のエアバッグ3の給気が開始するのではなく、少なくとも隣接する複数個の第1のエアバッグ3の給気期間が重なるように給気期間が設定されている。これにより、マッサージ装置1は、第1のエアバッグ3から使用者2の身体に対して刺激(広範囲刺激)を連続的に与えることができる。なお、第1のエアバッグ31〜38の各々に対する給気期間t1〜t8の長さは異なっていてもよいし同じでもよい。また、遅延時間(T0)についても、第1のエアバッグ31〜38ごとに異なっていてもよいし、同じであってもよい。
上述したような給気パターンを実現するため、本実施形態の給排気装置5は、図4に示すように、第1のエアバッグ31〜38に接続される制御弁52として、エアポンプ51の接続先を複数のポート間で順次切り換える切換弁を用いている。つまり、制御弁52は、第1のエアバッグ3に接続されるポートを8つ有しており、ポートごとに異なる第1のエアバッグ31〜38を接続し、エアポンプ51の接続先のポートをこれら8つのポート間で順番に切り換える。ここでは、モータの回転に伴いポートが切り換わる電動回転式(ロータリー式)の切換弁を制御弁52として用いているが、これに限らず、直線移動式の電磁弁からなる切換弁を用いてもよい。
このように、複数のポートを切り換える切換弁を第1のエアバッグ3用の制御弁52として用いることにより、給排気装置5は、個々の第1のエアバッグ31〜38ごとに個別の制御弁を用いる場合に比べて、部品点数の削減、コンパクト化を図ることができる。したがって、マッサージ装置1において給排気装置5の省スペース化を図ることができる。
一方、第2モードにおいては、給排気装置5は、第2のエアバッグ41〜48に対して個別に給気・排気を繰り返し行う。たとえば、使用者2の腰部に刺激(局所刺激)を与える場合には、給排気装置5は、最下段の第2のエアバッグ47,48に対して給気・排気を繰り返し行う。これにより、第2のエアバッグ4は、使用者2の身体に対して刺激(局所刺激)を繰り返し与えることができ、指圧圧迫マッサージを再現できる。なお、給排気装置5は、複数個の第2のエアバッグ41〜48のうち、1個を対象にして給気・排気を行ってもよいし、同時に複数個を対象にして給気・排気を行ってもよい。
以上説明した本実施形態のマッサージ装置1によれば、第1のエアバッグ3と第2のエアバッグ4とを備えることにより、相反する刺激(広範囲刺激と局所刺激)を選択的に使用者2の身体に与えることができる。すなわち、給排気装置5は、使用者2の身体に局所刺激を与えるように第1のエアバッグ3に対する給気・排気を繰り返し行い、また、第2のエアバッグ4から使用者2の身体に刺激を与えるように第2のエアバッグ4に対する給気・排気を繰り返し行う。これにより、マッサージ装置1は、第1のエアバッグ3を用いて、第2のエアバッグ4に比べて広範囲且つ弱い刺激(広範囲刺激)を使用者2に与え、第2のエアバッグ4を用いて、第1のエアバッグ3に比べて局所的且つ強い刺激(局所刺激)を与える。
また、本実施形態では、第2のエアバッグ4が第1のエアバッグ3の前面側に重ねられているので、第1のエアバッグ3に対しては、第2のエアバッグ4が緩衝部材として機能し、第1のエアバッグ3からの押圧力を低下させている。そのため、単にエアの供給量で刺激の強さを調節する場合に比べて、違和感なく、比較的弱い刺激(広範囲刺激)を実現することができる。
ここで、マッサージ装置1は、第1のエアバッグ3からの広範囲刺激を、使用者2の身体に沿って移動させながら付与することにより、さすり系のマッサージと同様に、比較的弱い刺激で心身をリラックスさせたり、疲れを癒したりする効果を与えることができる。また、マッサージ装置1は、第2のエアバッグ4からの局所刺激により、指圧系のマッサージと同様に、比較的強い刺激で身体をほぐしたり、凝りを解消したりする効果を与えることができる。したがって、本実施形態のマッサージ装置1は、比較的簡単な構成で、指圧系のマッサージとさすり系のマッサージとを両立できる。結果的に、マッサージ装置1は、使用者2に使用する際の心身状態によってマッサージ機能(第1モード・第2モード)を選択させることで、使用者2の満足度を大幅に向上できる。
ところで、上述したように第1のエアバッグ3による刺激は比較的弱く且つ連続的であることが望ましく、反対に、第2のエアバッグ4による刺激は比較的強く且つ局所的であることが望ましい。そのため、第2のエアバッグ4と第1のエアバッグ3とでは、エアの給排気量または給排気速度を変える必要がある。このような給排気量または給排気速度の調節を、給排気装置5のエアポンプ51の吐出し量の調節により実現することも考えられるが、一般的なエアポンプ51は吐出し量の調節には対応していない。第1のエアバッグ3用と第2のエアバッグ4用とで、性能の異なる2台のエアポンプ51を用いることも考えられるが、この場合エアポンプ51の台数が増えることによるコストアップやエアポンプ51の設置場所が問題になる。
そこで、本実施形態では、一般的なエアポンプ51を1台のみ使用して、第2のエアバッグ4に比べて第1のエアバッグ3の方が、給気と排気との少なくとも一方の速度を遅くする構成を採用している。なお、ここで用いられるエアポンプ51は、強刺激(局所刺激)を与える第2のエアバッグ4の給排気量、給排気速度に対応した性能を持つ。
具体的には、本実施形態のマッサージ装置1は、以下に説明する第1〜3の構成の少なくとも1つを採用する。
第1の構成としては、図5に示すように、第1のエアバッグ3と第2のエアバッグ4とで、各々に形成されている給気用と排気用との少なくとも一方の通気口301,401の開口面積を異ならせる。図5の例では、第1のエアバッグ3の1つの通気口301が給気用と排気用とで兼用され、第2のエアバッグ4の1つの通気口401が給気用と排気用とで兼用されている。これら通気口301,401の開口面積は、第1のエアバッグ3の通気口301の方が第2のエアバッグ4の通気孔401よりも小さく設定されている。なお、ここでいう通気口とは、エアバッグ3,4自体に設けられる給排気用の孔、またはエアバッグ3,4自体の孔に取り付けられてエア配管6を接続するノズルの給排気用の経路口を示している。
第2の構成としては、図6に示すように、第1のエアバッグ3と第2のエアバッグ4とで、給排気装置5における給気用と排気用との少なくとも一方の流路口の開口面積を異ならせる。図6の例では、給排気装置5の制御弁としての電磁弁531,532のポート(流路口)の開口面積が、第1のエアバッグ3に接続された電磁弁531において、第2のエアバッグ4に接続された電磁弁532より小さく設定されている。つまり、電磁弁531の給気用のポート541は電磁弁532の給気用のポート542に比べて開口面積が小さく、電磁弁531の排気用のポート551は電磁弁532の排気用のポート552に比べて開口面積が小さくされている。
さらに、この場合、電磁弁531の排気用のポート551を給気用のポート541に比べてより絞り、第1のエアバッグ3について給気に比べて排気の速度を遅くすることが望ましい。使用者2の負荷(体重)がかかると排気速度が加速されるので、給気流路口と排気流路口とで開口面積が同じであると、給気による第1のエアバッグ3の膨張速度より排気による収縮速度の方が速くなることがある。これにより、体感的に第1のエアバッグ3からの広範囲刺激の連続性が損なわれることがある。これに対して、第1のエアバッグ3の排気速度が給気速度より遅ければ、第1のエアバッグ3からの広範囲刺激の連続性が向上する。
第3の構成としては、図7に示すように、第1のエアバッグ3と第2のエアバッグ4とで給排気装置5との間をつなぐエア配管6の流路断面積を異ならせる。図7の例では、第1のエアバッグ3につながる1つのエア配管61が給気用と排気用とで兼用され、第2のエアバッグ4につながる1つのエア配管62が給気用と排気用とで兼用されている。これらエア配管61,62の断面積は、第1のエアバッグ3側のエア配管61の方が第2のエアバッグ4側のエア配管62よりも小さく設定されている。図7では、内径の異なる配管を用いることによりエア配管6の全長に亘って断面積を異ならせているが、これに限らずエア配管6内の一部にスポンジ等の抵抗部材を挿入して、流路断面積を異ならせてもよい。
これら第1〜3の構成を採用することにより、第1のエアバッグ3の膨張・圧縮速度を第2のエアバッグ4に比べて遅くすることができ、結果的に、第1のエアバッグ3にて違和感の無いさすりマッサージを再現することができる。なお、第1〜3の構成はいずれか1つのみ採用してもよいし、複数を組み合わせて採用してもよい。
より詳しく説明すると、第1のエアバッグ3の給気速度が第2のエアバッグ4に比べて遅い場合、第1のエアバッグ3からの押圧力がゆっくりと使用者2の身体に伝わり、違和感のない連続的な刺激(広範囲刺激)を与えることができる。反対に、第2のエアバッグ4からの押圧力は給気に対する応答性がよくなるので、小気味よく刺激(局所刺激)を与えることができる。
また、第1のエアバッグ3の排気速度が第2のエアバッグ4に比べて遅い場合、第1のエアバッグ3からの押圧力がゆっくりと低下し、違和感のない連続的な刺激(広範囲刺激)を与えることができる。とくに、使用者2の負荷(体重)がかかると第1のエアバッグ3の収縮(排気)速度が加速されるので、リクライニング機能を持つマッサージ装置1においては、第1のエアバッグ3の排気速度を遅くすることは有用である。
このように、給気速度と排気速度との一方についてのみ第2のエアバッグ4に比べて第1のエアバッグ3の方が遅くなるだけでも利点があるので、第1のエアバッグ3における給気速度と排気速度とのいずれか一方のみが遅くなるように構成されていてもよい。
さらに、第1のエアバッグ3における給気速度と排気速度との両方を遅くした場合には、相乗効果によって、第1のエアバッグ3からの刺激と第2のエアバッグ4からの刺激との差異を明確化することができる。したがって、マッサージ装置1は、第1のエアバッグ3を用いたさすりマッサージと、第2のエアバッグ4を用いた指圧圧迫マッサージとを明確に使い分けることによって、より効果的なマッサージを行うことができる。
上記実施形態の構成は一例に過ぎず、各部の構成は適宜変更可能である。たとえば、第1のエアバッグ3は、さすりマッサージの効果を向上させるため、背もたれ部12の高さ方向に対して8個に限らず9個以上設けられ、刺激の連続性を高めてもよく、背もたれ部12の全面に亘って設けられてもよい。また、第2のエアバッグ4の個数は、背もたれ部12の形状等に応じてマッサージ効果を得るのに適切な個数であればよく、8個に限らず9個以上または7個以下であってもよい。特に人体のツボに対応する位置並びに個数の第2のエアバッグ4を設けることにより、マッサージ効果が向上する。
また、マッサージ装置1は、車両の車室内に設置された車両用シートに限らず、住宅等で用いられる一般的なマッサージ椅子であってもよい。さらに、第1のエアバッグ3と第2のエアバッグ4との少なくとも一方は、座部11に設けられていてもよい。これにより、臀部、大腿部へのマッサージが可能となる。あるいは、第1のエアバッグ3と第2のエアバッグ4との少なくとも一方はヘッドレスト13に設けられ、頭部へのマッサージを行うことで眠気防止等に利用されてもよい。さらに、第1のエアバッグ3と第2のエアバッグ4との少なくとも一方は、フットレストに設けられ、足裏のマッサージを行うことで、疲労回復、眠気防止等に利用されてもよい。
(実施形態2)
本実施形態のマッサージ装置1は、図8(a)に示すように、第1のエアバッグ3と第2のエアバッグ4との間に緩衝材17が設けられている点で実施形態1のマッサージ装置1と相違する。以下、実施形態1と同様の構成については、共通の符号を付して適宜説明を省略する。
緩衝材17は、1枚の板状に形成され第1のエアバッグ3の前面に配置されており、第2のエアバッグ3は、緩衝材17と表皮部材16との間に配置されている。つまり、第2のエアバッグ4は、第1のエアバッグ3に対して緩衝材17を介して重ねられている。なお、緩衝材17は、座り心地を考慮して、ウレタン樹脂やフェルト材等からなることが望ましい。
また、図8(b)に示すように、緩衝材17は、第1のエアバッグ3側よりも第2のエアバッグ4側の層が硬質な材料で形成された2層構造であることが望ましい。図8(b)の構成では、緩衝材17は、軟質な材料からなる軟質層171と硬質な材料からなる硬質層172との2層構造であって、硬質層172を第2のエアバッグ4に向けて配置されている。緩衝材17がウレタン樹脂からなる場合、軟質層171は軟質ウレタン樹脂製とし、硬質層172は硬質ウレタン樹脂製とすればよい。
上記構成によれば、第1のエアバッグ3に対して、第2のエアバッグ4だけでなく緩衝材17も緩衝部材として機能するため、緩衝効果によって、第1のエアバッグ3から使用者2の身体に対する刺激が弱くなり、より違和感のないさすりマッサージを再現できる。また、このマッサージ装置1は、複数個の第1のエアバッグ3に対して1枚の緩衝材17が緩衝部材として機能するため、隣接する第1のエアバッグ3間での刺激の連続性が向上し、さらに着座時の座り心地もよくなる。しかも、第2のエアバッグ4においては、膨張時に緩衝材17からの反力が背面側から作用することになるので、使用者2の身体に与える刺激(局所刺激)をより強くすることができる。
さらにまた、緩衝材17は、軟質層171と硬質層172との2層構造であるので、第2のエアバッグ4の膨張時に硬質層172から第2のエアバッグ4に作用する反力が比較的大きくなる。そのため、第2のエアバッグ4は、膨張時において押圧力が背面側に逃げることによる押圧力のロスを低減でき、強刺激(局所刺激)を維持できる。
その他の構成および機能は実施形態1と同様である。