JP5887888B2 - 有機ガラス用積層体 - Google Patents
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Description
しかしながら、上記特許文献1に記載の強化ガラスは、基材として無機ガラスを使用しているため、重量が重く、また、熱伝導率が高くエアコン効率に劣るため、総じて近年の省燃費化の観点から好ましくない。また、特にサンルーフ用途に用いた場合、車体の高い位置に重量物が設けられることで運動性能に悪影響を及ぼす可能性があった。
[1]透明樹脂基板上に保護層を積層してなる有機ガラス用積層体であって、該保護層が電離放射線硬化性樹脂組成物の硬化物であり、該保護層の引張弾性率が2100MPa以下であることを特徴とする有機ガラス用積層体、
[2]前記電離放射線硬化性樹脂組成物が、多官能(メタ)アクリレートを含む[1]に記載の有機ガラス用積層体、
[3]前記電離放射線硬化性樹脂組成物が、さらにポリカーボネート(メタ)アクリレート又はアクリルシリコーン(メタ)アクリレートを含有する[2]に記載の有機ガラス用積層体、
[4]前記電離放射線硬化性樹脂組成物が、さらに熱可塑性樹脂を含む[2]又は[3]に記載の有機ガラス用積層体、
[5]前記透明樹脂基板が、ポリカーボネート樹脂からなる[1]〜[4]のいずれかに記載の有機ガラス用積層体、
[6]窓材用又は樹脂製カバー用である[1]〜[5]のいずれかに記載の有機ガラス積層体、及び
[7]前記透明樹脂基板と前記保護層との間にプライマー層を有し、該プライマー層がポリウレタン系2液硬化型樹脂を用いたものである[1]〜[6]のいずれかに記載の有機ガラス積層体、
を提供するものである。
本発明の有機ガラス用積層体は、透明樹脂基板上に保護層を積層してなる有機ガラス用積層体であって、該保護層が電離放射線硬化性樹脂組成物の硬化物であり、該保護層の引張弾性率が2100MPa以下であることを特徴とする。以下、本発明を、図面を参照しながら説明する。図1は、本発明の有機ガラス用積層体の好ましい態様の一例の断面を示す模式図である。
図1に示される本発明の有機ガラス用積層体10は、基板11上に、プライマー層12及び保護層13を有する。
ここで、有機ガラスとは、透明なプラスチックでできた部材を指し、所謂、一般的に主成分として二酸化ケイ素を含有するケイ酸ガラスや、石英ガラスなどの無機ガラスの代替用部材として用いられるものである。
基板11としては、透明性のものであれば特に限定されないが、高透明性のものが好ましく、シクロオレフィン系樹脂、シリコーン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂等の熱可塑性樹脂、並びにエポキシ系樹脂、アクリル系樹脂(ポリメタクリル酸メチル等)、フェノール系樹脂、ポリイミド系樹脂、ベンゾオキサジン系樹脂、オキセタン系樹脂等の硬化性樹脂が挙げられ、これらのうち、透明性の観点からポリカーボネート系樹脂及びアクリル系樹脂が好ましく、さらに耐衝撃性の観点から、ポリカーボネート系樹脂が特に好ましい。
基板11としては、引張弾性率が4,000MPa以下のものであればよく、300〜3500MPaのものが好ましく、500〜3000MPaのものがより好ましい。
また、基板11は、これら樹脂の単層シート、あるいは同種又は異種樹脂による複層シートを用いることができる。
上記酸化法としては、例えばコロナ放電処理、クロム酸化処理、火炎処理、熱風処理、オゾン・紫外線処理法などが挙げられ、凹凸化法としては、例えばサンドブラスト法、溶剤処理法などが挙げられる。これらの表面処理は、基板11の種類に応じて適宜選択されるが、一般にはコロナ放電処理法が効果及び操作性などの面から好ましく用いられる。
本発明の有機ガラス用積層体は、基材11と保護層13との間に、さらにプライマー層12を有することが好ましい。プライマー層12を設けることにより、基材11と保護層13との密着性をさらに向上させることができる。プライマー層12は透明又は半透明な層であることが好ましく、ポリウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル系共重合体樹脂、セルロース系樹脂、塩素化ポリエチレン、塩素化ポリプロピレンなどの樹脂の1種単独又は2種以上の混合物が用いられるが、特にポリウレタン系2液硬化型樹脂を用いたものが好ましい。
前記ポリマーポリオールとしては、アクリル系ポリマーポリオール、あるいはポリエステル系ポリマーポリオールが好ましく、アクリル系ポリマーポリオールがより好ましい。アクリル系ポリマーポリオールとしては、(メタ)アクリル酸エチルなどの(メタ)アクリル酸アルキルエステルに、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルアクリレート等のヒドロキシアクリレートを共重合させて複数の水酸基を導入したものが好ましく挙げられる。また、ポリエステル系ポリマーポリオールとしては、例えばポリ(エチレンアジペート)、ポリ(ブチレンアジペート)、ポリ(ネオペンチルアジペート)、ポリ(ヘキサメチレンアジペート)、ポリ(ブチレンアゼラエート)、ポリ(ブチレンセバケート)、ポリカプロラクトンなどが用いられる。
また、本発明においては、上記のアクリル系ポリマーポリオールとウレタン樹脂との混合物がより好ましい。
このバインダー樹脂としては、ガラス転移温度Tgが80℃以下の公知のバインダー樹脂が好ましく用いられ、水酸基を有する化合物であっても、有さない化合物であってもどちらでもよい。バインダー樹脂として具体的には、ポリウレタン系樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル系共重合体樹脂、ポリエステル樹脂などを用いることができる。バインダー樹脂として使用可能な樹脂の標準ポリスチレンで換算された重量平均分子量は、好ましくは、1万〜30万であり、より好ましくは、5〜20万である。
バインダー樹脂の含有量は、ポリマーポリオールとバインダー樹脂との合計に対して10〜60質量%であることが好ましい。
保護層13は、電離放射線硬化性樹脂組成物の硬化物であり、硬化後の引張弾性率が2100MPa以下のものであればよく、3〜1800MPaのものが好ましく、5〜1500MPaのものがより好ましい。
この電離放射線硬化性樹脂組成物に用いられる電離放射線硬化性樹脂は、電磁波又は荷電粒子線の中で分子を架橋、重合させ得るエネルギー量子を有するもの、すなわち、紫外線又は電子線などを照射することにより、架橋、硬化する樹脂を指す。具体的には、従来電離放射線硬化性樹脂として慣用されている重合性オリゴマーや重合性モノマーの中から適宜選択して用いることができる。
本発明に用いられるポリカーボネート(メタ)アクリレートは、特に限定されず、ポリマー主鎖にカーボネート結合を有し、且つ末端あるいは側鎖に(メタ)アクリレートを有するものであれば良い。このポリカーボネート(メタ)アクリレートは、架橋、硬化する観点から、2官能以上有することが好ましく、2〜5官能有することがより好ましい。2官能以上であると、架橋密度が十分となるため、硬化後の保護層13に傷がつきにくくなり、また、5官能以下であると、架橋密度が高すぎないため、成形性が良好となる。
ポリカーボネート(メタ)アクリレートは、GPC分析によって測定され、かつ標準ポリスチレンで換算された重量平均分子量が、500以上であることが好ましく、1,000以上であることがより好ましく、2,000以上であることがさらに好ましく、5,000以上であることが特に好ましい。ポリカーボネート(メタ)アクリレートの重量平均分子量の上限は特に制限されないが、粘度が高くなり過ぎないように制御する観点から100,000以下が好ましく、50,000以下がより好ましく、20,000以下がさらに好ましい。耐傷付き性と三次元成形性とを両立させる観点から、1,000〜20,000が好ましく、2,000〜20,000がより好ましい。
本発明に用いられるアクリルシリコーン(メタ)アクリレートは、特に限定されず、1分子中に、アクリル樹脂の構造の一部がシロキサン結合(Si−O)に置換しており、かつ官能基としてアクリル樹脂の側鎖及び/又は主鎖末端に(メタ)アクリロイルオキシ基(アクリロイルオキシ基又はメタアクリロイルオキシ基)を2個以上有しているものであれば良い。
アクリルシリコーン(メタ)アクリレートは、GPC分析によって測定され、かつ標準ポリスチレンで換算された重量平均分子量が、1,000以上であることが好ましく、2,000以上であることがより好ましい。アクリルシリコーン(メタ)アクリレートの重量平均分子量の上限は特に制限されないが、粘度が高くなり過ぎないように制御する観点から150,000以下が好ましく、100,000以下がより好ましい。成形性と耐傷付き性とを両立させる観点から、2,000〜100,000であることが特に好ましい。
また、多官能(メタ)アクリレートは、オリゴマー及びモノマーのいずれでも良いが、成形性向上の観点から多官能(メタ)アクリレートオリゴマーが好ましい。
多官能(メタ)アクリレートは、GPC分析によって測定され、かつ標準ポリスチレンで換算された重量平均分子量が、500以上であることが好ましく、1,000以上であることがより好ましく、2,000以上であることがさらに好ましく、5,000以上が特に好ましい。多官能(メタ)アクリレートの重量平均分子量の上限は特に制限されないが、粘度が高くなり過ぎないように制御する観点から100,000以下が好ましく、50,000以下がより好ましく、20,000以下が特に好ましい。耐傷付き性と成形性とを両立させる観点から、さらに好ましくは、2,000〜50,000であり、特に好ましくは、5,000〜20,000である。
光増感剤として、例えばp−ジメチル安息香酸エステル、第三級アミン類、チオール系増感剤などを用いることもできる。
熱可塑性樹脂としては、(メタ)アクリル酸エステル等の(メタ)アクリル系樹脂、ポリビニルブチラール等のポリビニルアセタール(ブチラール樹脂)、ポリエチレンテレフタレート,ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂、塩化ビニル樹脂、ウレタン樹脂、ポリエチレン,ポリプロピレン等のポリオレフィン、ポリスチレン,α−メチルスチレン等のスチレン系樹脂、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリオキシメチレン等のアセタール樹脂、エチレン−4フッ化エチレン共重合体等のフッ素樹脂、ポリイミド、ポリ乳酸、ポリビニルアセタール樹脂、液晶性ポリエステル樹脂等が挙げられ、これらは1種単独でも又は2種以上を組み合わせて用いても良い。2種以上組み合わせる場合は、これらの樹脂を構成するモノマーの共重合体でも良いし、それぞれの樹脂を混合して用いても良い。
より具体的には、(メタ)アクリル酸エステルの単独重合体、2種以上の異なる(メタ)アクリル酸エステルモノマーの共重合体、又は(メタ)アクリル酸エステルと他のモノマーとの共重合体が好ましい。
なお、ここで重量平均分子量とは、ゲルパーミエションクロマトグラフィー(GPC)により測定したポリスチレン換算のものである。ここで用いる溶媒としては通常用いられるものを適宜選択して行うことができ、例えば、テトラヒドロフラン(THF)又はN−メチル−2−ピロリジノン(NMP)等が挙げられる。
本発明の有機ガラス用積層体は、例えば、以下の[1]〜[4]の工程により製造することができる。
[1]所望により、基板11の表面にコロナ放電処理又はプラズマ処理を施す工程
[2]所望により、該基板11上に、プライマー層12を積層する工程、
[3]電離放射線硬化性樹脂組成物層を積層する工程、及び
[4]該電離放射線硬化性樹脂組成物層に電離放射線を照射し該電離放射線硬化性樹脂組成物層を硬化又は半硬化して保護層13を形成する工程、
基板11上に積層されるプライマー層12及び保護層13の積層方法は、グラビア印刷、ロールコートなどの公知の印刷又は塗布手段が用いられる。
なお、電子線の照射においては、加速電圧が高いほど透過能力が増加するため、基板11として電子線により劣化する基材を使用する場合には、電子線の透過深さと樹脂層の厚みが実質的に等しくなるように、加速電圧を選定することにより、基板11への余分の電子線の照射を抑制することができ、過剰電子線による基材の劣化を最小限にとどめることができる。
また、照射線量は、樹脂組成物層の架橋密度が飽和する量が好ましく、通常5〜300kGy(0.5〜30Mrad)、好ましくは10〜60kGy(1〜6Mrad)の範囲で選定される。
さらに、電子線源としては、特に制限はなく、例えばコックロフトワルトン型、バンデグラフト型、共振変圧器型、絶縁コア変圧器型、あるいは直線型、ダイナミトロン型、高周波型などの各種電子線加速器を用いることができる。
(1)引張弾性率
保護層を形成するために用いた電子線硬化性樹脂組成物を、2軸延伸ポリエステルフィルム上にバーコーターで塗布して、加速電圧165kV、照射線量50kGy(5Mrad)の電子線を照射して架橋硬化させて、保護層(厚み:20μm)を形成した。当該保護層をポリエステルフィルムから剥離して得たサンプルを用いて、JIS K7127に準拠した短冊型試験片(幅25mm)に打ち抜いたシートを用意し、25℃の温度環境下にて、引張圧縮試験機(オリエンテック(株)製 テンシロン RTC−1250A)を用い、引張速度50mm/分、チャック間距離80mmの条件で測定して得られた引張応力−ひずみ曲線の初めの直線部分から、次の式によって計算した。
E=Δρ/Δε
E:引張弾性率
Δρ:直線上の2点間の元平均断面積による応力差
Δε:同じ2点間のひずみ差
(2)耐擦傷性
各実施例及び比較例で得られた有機ガラス用積層体について、スチールウール(日本スチールウール株式会社製、ボンスター#0000)を用いて、1.5kgの荷重をかけて5往復擦り、外観を目視で評価した。評価基準は以下のとおりである。
◎: 表面に変化が確認されなかった。
○ :表面に微細な傷が認められたが、塗膜の削れや白化がなかった。
△ :若干の塗膜の削れや白化が認められた。
× :表面に著しい傷があった。
(3)耐衝撃性
デュポン衝撃試験により行った。突端直径2/8インチの撃芯とその直径と合致した凹みを持つ受け台との間に有機ガラス用積層体を置き、50cmの高さから500gの重鎮を落下させ、試験片の表面を観察した。評価は以下の基準で行った。
◎: 表面に変化が確認されなかった。
○: 表面に実用上問題無い程度のわずかな白化が確認された。
△: 表面に実用上問題無い程度の微細なクラックが確認された。
×: 表面に実用上問題が生じる程度のクラックが確認された。
(4)耐スクラッチ性
親指の爪により保護層側より表面を引っ掻き、試験片の外観を評価した。
◎:表面に変化が確認されなかった。
○: 表面に実用上問題無い程度のわずかな傷が確認された。
△: 表面に実用上問題無い程度の凹み傷が確認された。
×: 表面に実用上問題が生じる程度の深い凹み傷が確認された。
基板(ポリカーボネート板、厚み:2mm、引張弾性率:2380MPa)上に、ポリウレタン系2液硬化型樹脂(アクリル系ポリマーポリオールと硬化剤としてキシリレンジイソシアネートとを、NCO当量とOH当量とが同量になるように含む組成物,ガラス転移温度Tg(ポリオールの未硬化時):100℃)80質量部並びにウレタン樹脂(ガラス転移点:−30〜−40℃)20質量部からなるプライマー組成物の溶液をグラビア印刷により塗布して、プライマー層(厚み1.5μm)を形成した。
さらに、2官能ポリカーボネート系ウレタンアクリレート(重量平均分子量:8,000)94質量部、及び6官能ウレタンアクリレート(重量平均分子量:6,000)6質量部からなる樹脂成分、紫外線吸収剤1.1質量部、光安定剤0.6質量部、並びにレベリング剤0.2質量部を含む電離放射線硬化性樹脂組成物を、上記プライマー層上にバーコーターで塗布して、加速電圧165kV、照射線量50kGy(5Mrad)の電子線を照射して架橋硬化させて、保護層(厚み:10μm)を形成し、図1に示す構成の有機ガラス用積層体を作製した。
該有機ガラス用積層体について上記方法にて評価した。その評価結果を第1表に示す。
実施例1において、基材や電離放射線硬化性樹脂を第1表に示すものとした以外は実施例1と同様にして有機ガラス用積層体を作製し、それぞれについて上記方法にて評価した。評価結果を第1表に示す。
電離放射線硬化性樹脂組成物B(樹脂成分):アクリルポリマー(重量平均分子量:120,000)60質量部、及び3官能アクリレートモノマー(分子量:298)40質量部
電離放射線硬化性樹脂組成物C(樹脂成分):3.9官能ウレタンアクリレートオリゴマー 30質量部、及び2官能アクリレートモノマー 70質量部
11 基板
12 プライマー層
13 保護層
Claims (7)
- 透明樹脂基板上に保護層を積層してなる有機ガラス用積層体であって、該保護層が電離放射線硬化性樹脂組成物の硬化物であり、該保護層の引張弾性率が2100MPa以下であることを特徴とする有機ガラス用積層体。
- 前記電離放射線硬化性樹脂組成物が、多官能(メタ)アクリレートを含む請求項1に記載の有機ガラス用積層体。
- 前記電離放射線硬化性樹脂組成物が、さらにポリカーボネート(メタ)アクリレート又はアクリルシリコーン(メタ)アクリレートを含有する請求項2に記載の有機ガラス用積層体。
- 前記電離放射線硬化性樹脂組成物が、さらに熱可塑性樹脂を含む請求項2又は3に記載の有機ガラス用積層体。
- 前記透明樹脂基板が、ポリカーボネート樹脂からなる請求項1〜4のいずれかに記載の有機ガラス用積層体。
- 窓材用又は樹脂製カバー用である請求項1〜5のいずれかに記載の有機ガラス積層体。
- 前記透明樹脂基板と前記保護層との間にプライマー層を有し、該プライマー層がポリウレタン系2液硬化型樹脂を用いたものである請求項1〜6のいずれかに記載の有機ガラス積層体。
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