JP5887888B2 - 有機ガラス用積層体 - Google Patents

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Description

本発明は、有機ガラス用積層体に関するものである。
従来、自動車の窓やサンルーフ等には無機ガラスが使用されてきたが、割れ易いという欠点があった。これを改善するため、例えば、特許文献1には、ガラス板表面に有機樹脂からなる透明接着剤層、有機ポリマーからなるフィルムが積層され、これらを圧着してなるフィルム強化ガラスが開示されている。
しかしながら、上記特許文献1に記載の強化ガラスは、基材として無機ガラスを使用しているため、重量が重く、また、熱伝導率が高くエアコン効率に劣るため、総じて近年の省燃費化の観点から好ましくない。また、特にサンルーフ用途に用いた場合、車体の高い位置に重量物が設けられることで運動性能に悪影響を及ぼす可能性があった。
上述の無機ガラスの問題点を克服するため、重量が軽く、熱伝導率が低く、割れにくい合成樹脂を用いた有機ガラスにおいて、その表面にハードコート層を設ける手法が検討されている。例えば、特許文献2には、透明樹脂層の両面に、樹脂及び繊維状フィラーを含む複合基材層が形成されている透明樹脂積層シートが記載されている。しかしながら、繊維状フィラーと透明樹脂との界面において散乱が生じ、透明性が低下する虞があり、また、表面の耐擦傷性は十分ではなかった。
特開2002−79610号公報 特開2007−203475号公報
そこで、本発明者らは、表面の耐擦傷性を改善する観点から、有機ガラスの表面に電離放射線硬化性樹脂を用いて保護層を形成する手法について検討を進めた。すると、有機ガラス表面に、電離放射線硬化性樹脂組成物の硬化物を保護層として設けた場合、樹脂組成物の種類によっては、耐衝撃性試験において当該硬化物自体にクラックが生じたり、保護層の表面を引っ掻くなどした場合に深い凹みが生じる場合があることを見出した。
本発明は、このような状況下で、耐擦傷性、耐衝撃性及び耐スクラッチ性を鼎立する有機ガラス用積層体を提供することを課題とする。
本発明者らは、前記課題を達成するために鋭意研究を重ねた結果、保護層として特定の引張弾性率を有する電離放射線硬化性樹脂組成物の硬化物を選択することにより、前記課題を解決し得ることを見出した。本発明は、かかる知見に基づいて完成したものである。
すなわち、本発明は、
[1]透明樹脂基板上に保護層を積層してなる有機ガラス用積層体であって、該保護層が電離放射線硬化性樹脂組成物の硬化物であり、該保護層の引張弾性率が2100MPa以下であることを特徴とする有機ガラス用積層体、
[2]前記電離放射線硬化性樹脂組成物が、多官能(メタ)アクリレートを含む[1]に記載の有機ガラス用積層体、
[3]前記電離放射線硬化性樹脂組成物が、さらにポリカーボネート(メタ)アクリレート又はアクリルシリコーン(メタ)アクリレートを含有する[2]に記載の有機ガラス用積層体、
[4]前記電離放射線硬化性樹脂組成物が、さらに熱可塑性樹脂を含む[2]又は[3]に記載の有機ガラス用積層体、
[5]前記透明樹脂基板が、ポリカーボネート樹脂からなる[1]〜[4]のいずれかに記載の有機ガラス用積層体、
[6]窓材用又は樹脂製カバー用である[1]〜[5]のいずれかに記載の有機ガラス積層体、及び
[7]前記透明樹脂基板と前記保護層との間にプライマー層を有し、該プライマー層がポリウレタン系2液硬化型樹脂を用いたものである[1]〜[6]のいずれかに記載の有機ガラス積層体、
を提供するものである。
本発明によれば、耐擦傷性、耐衝撃性及び耐スクラッチ性を鼎立する有機ガラス用積層体を提供することができる。
本発明の有機ガラス用積層体の一例の断面を示す模式図である。
[有機ガラス用積層体]
本発明の有機ガラス用積層体は、透明樹脂基板上に保護層を積層してなる有機ガラス用積層体であって、該保護層が電離放射線硬化性樹脂組成物の硬化物であり、該保護層の引張弾性率が2100MPa以下であることを特徴とする。以下、本発明を、図面を参照しながら説明する。図1は、本発明の有機ガラス用積層体の好ましい態様の一例の断面を示す模式図である。
図1に示される本発明の有機ガラス用積層体10は、基板11上に、プライマー層12及び保護層13を有する。
ここで、有機ガラスとは、透明なプラスチックでできた部材を指し、所謂、一般的に主成分として二酸化ケイ素を含有するケイ酸ガラスや、石英ガラスなどの無機ガラスの代替用部材として用いられるものである。
≪基板≫
基板11としては、透明性のものであれば特に限定されないが、高透明性のものが好ましく、シクロオレフィン系樹脂、シリコーン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂等の熱可塑性樹脂、並びにエポキシ系樹脂、アクリル系樹脂(ポリメタクリル酸メチル等)、フェノール系樹脂、ポリイミド系樹脂、ベンゾオキサジン系樹脂、オキセタン系樹脂等の硬化性樹脂が挙げられ、これらのうち、透明性の観点からポリカーボネート系樹脂及びアクリル系樹脂が好ましく、さらに耐衝撃性の観点から、ポリカーボネート系樹脂が特に好ましい。
基板11の厚さとしては、通常1〜20mmが好ましく、2〜10mmがより好ましい。基板11の厚さが1mm以上であると面剛性などの実用的な強度が十分となり、20mm以下であると加工性が向上する。
基板11としては、引張弾性率が4,000MPa以下のものであればよく、300〜3500MPaのものが好ましく、500〜3000MPaのものがより好ましい。
また、基板11は、これら樹脂の単層シート、あるいは同種又は異種樹脂による複層シートを用いることができる。
基板11は、後述するプライマー層12との密着性を向上させる目的で、所望により、片面又は両面に酸化法や凹凸化法などによる物理的又は化学的表面処理を施すことができる。
上記酸化法としては、例えばコロナ放電処理、クロム酸化処理、火炎処理、熱風処理、オゾン・紫外線処理法などが挙げられ、凹凸化法としては、例えばサンドブラスト法、溶剤処理法などが挙げられる。これらの表面処理は、基板11の種類に応じて適宜選択されるが、一般にはコロナ放電処理法が効果及び操作性などの面から好ましく用いられる。
基板11は、該基板11とその上に設けられる層との層間密着性の強化などを目的として、易接着層を形成するなどの処理を施しても良く、予め上記のような表面処理が施された市販品や、易接着剤層が設けられたものを用いることもできる。
≪プライマー層≫
本発明の有機ガラス用積層体は、基材11と保護層13との間に、さらにプライマー層12を有することが好ましい。プライマー層12を設けることにより、基材11と保護層13との密着性をさらに向上させることができる。プライマー層12は透明又は半透明な層であることが好ましく、ポリウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル系共重合体樹脂、セルロース系樹脂、塩素化ポリエチレン、塩素化ポリプロピレンなどの樹脂の1種単独又は2種以上の混合物が用いられるが、特にポリウレタン系2液硬化型樹脂を用いたものが好ましい。
ポリウレタン系2液硬化型樹脂としては、例えば塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体系、ポリエステル系、ウレタン系、アクリル系、ポリエーテル系、ポリカーボネート系などのポリマーポリオール単独、又はそれらの混合物に対して、使用直前に硬化剤を添加したものが用いられる。
前記ポリマーポリオールとしては、アクリル系ポリマーポリオール、あるいはポリエステル系ポリマーポリオールが好ましく、アクリル系ポリマーポリオールがより好ましい。アクリル系ポリマーポリオールとしては、(メタ)アクリル酸エチルなどの(メタ)アクリル酸アルキルエステルに、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルアクリレート等のヒドロキシアクリレートを共重合させて複数の水酸基を導入したものが好ましく挙げられる。また、ポリエステル系ポリマーポリオールとしては、例えばポリ(エチレンアジペート)、ポリ(ブチレンアジペート)、ポリ(ネオペンチルアジペート)、ポリ(ヘキサメチレンアジペート)、ポリ(ブチレンアゼラエート)、ポリ(ブチレンセバケート)、ポリカプロラクトンなどが用いられる。
また、本発明においては、上記のアクリル系ポリマーポリオールとウレタン樹脂との混合物がより好ましい。
硬化剤としては、多価イソシアネートが好ましく、例えば、2,4−トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネートなどの芳香族イソシアネート;1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、水素添加トリレンジイソシアネート、水素添加ジフェニルメタンジイソシアネートなどの脂肪族(乃至は脂環式)イソシアネート;を用いることができ、あるいは、上記各種イソシアネートの付加体又は多量体、例えば、トリレンジイソシアネートの付加体、トリレンジイソシアネート3量体なども用いることができる。
また、本発明において、ポリウレタン系2液硬化型樹脂は、ポリマーポリオールの未硬化時のガラス転移温度Tgが65℃以上であることが好ましく、該ガラス転移温度Tgの上限に特に制限はないが、通常110℃程度であり、好ましいTgは70〜100℃の範囲である。ガラス転移温度Tgが上記範囲内であると、優れた密着性が得られる。
プライマー層は、上述のポリウレタン系2液硬化型樹脂と、さらにバインダー樹脂とを含むプライマー層形成用樹脂組成物を用いて形成することもできる。
このバインダー樹脂としては、ガラス転移温度Tgが80℃以下の公知のバインダー樹脂が好ましく用いられ、水酸基を有する化合物であっても、有さない化合物であってもどちらでもよい。バインダー樹脂として具体的には、ポリウレタン系樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル系共重合体樹脂、ポリエステル樹脂などを用いることができる。バインダー樹脂として使用可能な樹脂の標準ポリスチレンで換算された重量平均分子量は、好ましくは、1万〜30万であり、より好ましくは、5〜20万である。
バインダー樹脂の含有量は、ポリマーポリオールとバインダー樹脂との合計に対して10〜60質量%であることが好ましい。
プライマー層12は、上記樹脂を溶媒に溶解した塗布液を、公知の方法で塗布、乾燥して得ることができる。プライマー層12の厚みについては、通常、0.5〜20μm程度であり、好ましくは、1〜5μmの範囲である。
≪保護層≫
保護層13は、電離放射線硬化性樹脂組成物の硬化物であり、硬化後の引張弾性率が2100MPa以下のものであればよく、3〜1800MPaのものが好ましく、5〜1500MPaのものがより好ましい。
この電離放射線硬化性樹脂組成物に用いられる電離放射線硬化性樹脂は、電磁波又は荷電粒子線の中で分子を架橋、重合させ得るエネルギー量子を有するもの、すなわち、紫外線又は電子線などを照射することにより、架橋、硬化する樹脂を指す。具体的には、従来電離放射線硬化性樹脂として慣用されている重合性オリゴマーや重合性モノマーの中から適宜選択して用いることができる。
重合性オリゴマーとしては、分子中にラジカル重合性不飽和基を持つオリゴマー、例えば、アクリル(メタ)アクリレート系、エポキシ(メタ)アクリレート系、ウレタン(メタ)アクリレート系、ポリエステル(メタ)アクリレート系、ポリエーテル(メタ)アクリレート系、ポリカーボネート(メタ)アクリレート系、アクリルシリコーン(メタ)アクリレート系のオリゴマーなどが好ましく挙げられる。これらのオリゴマーのうち、多官能性の重合性オリゴマーが好ましく、官能基数としては、2〜16が好ましく、2〜8がより好ましく、2〜6がさらに好ましい。
さらに、重合性オリゴマーとしては、他にポリブタジエンオリゴマーの側鎖に(メタ)アクリレート基をもつ疎水性の高いポリブタジエン(メタ)アクリレート系オリゴマー、主鎖にポリシロキサン結合をもつシリコーン(メタ)アクリレート系オリゴマー、小さな分子内に多くの反応性基をもつアミノプラスト樹脂を変性したアミノプラスト樹脂(メタ)アクリレート系オリゴマー、あるいはノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノール型エポキシ樹脂、脂肪族ビニルエーテル、芳香族ビニルエーテルなどの分子中にカチオン重合性官能基を有するオリゴマーなどがある。これらの重合性オリゴマーは、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
重合性モノマーとしては、分子中にラジカル重合性不飽和基を持つ(メタ)アクリレート単量体が好適であり、なかでも分子内にエチレン性不飽和結合を2個以上有するような多官能性(メタ)アクリレートが好ましく、1種を単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いて用いればよい。官能基数としては、2〜8が好ましく、2〜6がより好ましく、2〜4がさらに好ましい。
本発明においては、前記多官能性(メタ)アクリレートとともに、その粘度を調整するなどの目的で、メチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレートなどの単官能性(メタ)アクリレートを、本発明の目的を損なわない範囲で適宜併用することができる。単官能性(メタ)アクリレートは1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
本発明における電離放射線硬化性樹脂組成物としては、上記各種電離放射線硬化性樹脂のうち、少なくとも、ポリカーボネート(メタ)アクリレート又はアクリルシリコーン(メタ)アクリレートと、多官能(メタ)アクリレートとを含有するものを用いると、優れた耐傷付き性と良好な三次元成形性とを同時に満足するので、保護層にクラック等が入らない有機ガラス用積層体を得ることができる点で好ましい。
電離放射線硬化性樹脂組成物として、ポリカーボネート(メタ)アクリレート及び多官能(メタ)アクリレートを含有するものを用いる場合、ポリカーボネート(メタ)アクリレートと多官能(メタ)アクリレートとの質量比は好ましくは98:2〜70:30であり、さらに好ましくは95:5〜80:20である。ポリカーボネート(メタ)アクリレートと多官能(メタ)アクリレートの質量比が98:2より大きくなると(即ち、ポリカーボネート(メタ)アクリレートの量が98質量%を超えると)、耐傷付き性が低下する。一方、ポリカーボネート(メタ)アクリレートと多官能(メタ)アクリレートの質量比が70:30より小さくなると(即ち、ポリカーボネート(メタ)アクリレートの量が70質量%未満となると)、成形性が低下してしまう。
本発明に用いられるポリカーボネート(メタ)アクリレートは、特に限定されず、ポリマー主鎖にカーボネート結合を有し、且つ末端あるいは側鎖に(メタ)アクリレートを有するものであれば良い。このポリカーボネート(メタ)アクリレートは、架橋、硬化する観点から、2官能以上有することが好ましく、2〜5官能有することがより好ましい。2官能以上であると、架橋密度が十分となるため、硬化後の保護層13に傷がつきにくくなり、また、5官能以下であると、架橋密度が高すぎないため、成形性が良好となる。
ポリカーボネート(メタ)アクリレートは、GPC分析によって測定され、かつ標準ポリスチレンで換算された重量平均分子量が、500以上であることが好ましく、1,000以上であることがより好ましく、2,000以上であることがさらに好ましく、5,000以上であることが特に好ましい。ポリカーボネート(メタ)アクリレートの重量平均分子量の上限は特に制限されないが、粘度が高くなり過ぎないように制御する観点から100,000以下が好ましく、50,000以下がより好ましく、20,000以下がさらに好ましい。耐傷付き性と三次元成形性とを両立させる観点から、1,000〜20,000が好ましく、2,000〜20,000がより好ましい。
電離放射線硬化性樹脂組成物として、アクリルシリコーン(メタ)アクリレート及び多官能(メタ)アクリレートを含有するものを用いる場合、アクリルシリコーン(メタ)アクリレートと多官能(メタ)アクリレートとの質量比は好ましくは50:50〜95:5であり、さらに好ましくは80:20〜95:5である。
本発明に用いられるアクリルシリコーン(メタ)アクリレートは、特に限定されず、1分子中に、アクリル樹脂の構造の一部がシロキサン結合(Si−O)に置換しており、かつ官能基としてアクリル樹脂の側鎖及び/又は主鎖末端に(メタ)アクリロイルオキシ基(アクリロイルオキシ基又はメタアクリロイルオキシ基)を2個以上有しているものであれば良い。
アクリルシリコーン(メタ)アクリレートは、GPC分析によって測定され、かつ標準ポリスチレンで換算された重量平均分子量が、1,000以上であることが好ましく、2,000以上であることがより好ましい。アクリルシリコーン(メタ)アクリレートの重量平均分子量の上限は特に制限されないが、粘度が高くなり過ぎないように制御する観点から150,000以下が好ましく、100,000以下がより好ましい。成形性と耐傷付き性とを両立させる観点から、2,000〜100,000であることが特に好ましい。
本発明に用いられる多官能(メタ)アクリレートは、2官能以上の(メタ)アクリレートであれば良く、特に制限はない。ただし、硬化性の観点から3官能以上の(メタ)アクリレートが好ましい。ここで、2官能とは、分子内にエチレン性不飽和結合{(メタ)アクリロイル基}を2個有することをいう。
また、多官能(メタ)アクリレートは、オリゴマー及びモノマーのいずれでも良いが、成形性向上の観点から多官能(メタ)アクリレートオリゴマーが好ましい。
多官能(メタ)アクリレートは、GPC分析によって測定され、かつ標準ポリスチレンで換算された重量平均分子量が、500以上であることが好ましく、1,000以上であることがより好ましく、2,000以上であることがさらに好ましく、5,000以上が特に好ましい。多官能(メタ)アクリレートの重量平均分子量の上限は特に制限されないが、粘度が高くなり過ぎないように制御する観点から100,000以下が好ましく、50,000以下がより好ましく、20,000以下が特に好ましい。耐傷付き性と成形性とを両立させる観点から、さらに好ましくは、2,000〜50,000であり、特に好ましくは、5,000〜20,000である。
上記の多官能(メタ)アクリレートオリゴマーとしては、例えばウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマー、エポキシ(メタ)アクリレート系オリゴマー、ポリエステル(メタ)アクリレート系オリゴマー、ポリエーテル(メタ)アクリレート系オリゴマーなどが挙げられる。ここで、ウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマーは、例えば、ポリエーテルポリオールやポリエステルポリオールとポリイソシアネートの反応によって得られるポリウレタンオリゴマーを、(メタ)アクリル酸でエステル化することにより得ることができる。エポキシ(メタ)アクリレート系オリゴマーは、例えば、比較的低分子量のビスフェノール型エポキシ樹脂やノボラック型エポキシ樹脂のオキシラン環に、(メタ)アクリル酸を反応しエステル化することにより得ることができる。また、このエポキシ(メタ)アクリレート系オリゴマーを部分的に二塩基性カルボン酸無水物で変性したカルボキシル変性型のエポキシ(メタ)アクリレートオリゴマーも用いることができる。ポリエステル(メタ)アクリレート系オリゴマーとしては、例えば多価カルボン酸と多価アルコールの縮合によって得られる両末端に水酸基を有するポリエステルオリゴマーの水酸基を(メタ)アクリル酸でエステル化することにより、あるいは、多価カルボン酸にアルキレンオキシドを付加して得られるオリゴマーの末端の水酸基を(メタ)アクリル酸でエステル化することにより得ることができる。ポリエーテル(メタ)アクリレート系オリゴマーは、ポリエーテルポリオールの水酸基を(メタ)アクリル酸でエステル化することにより得ることができる。
さらに、他の多官能(メタ)アクリレートオリゴマーとしては、ポリブタジエンオリゴマーの側鎖に(メタ)アクリレート基をもつ疎水性の高いポリブタジエン(メタ)アクリレート系オリゴマー、主鎖にポリシロキサン結合をもつシリコーン(メタ)アクリレート系オリゴマー、小さな分子内に多くの反応性基をもつアミノプラスト樹脂を変性したアミノプラスト樹脂(メタ)アクリレート系オリゴマーなどが挙げられる。
また、電離放射線硬化性樹脂として紫外線硬化性樹脂を用いる場合には、光重合用開始剤を紫外線硬化性樹脂100質量部に対して、0.1〜5質量部程度添加することが望ましい。光重合用開始剤としては、従来慣用されているものから適宜選択することができ、例えばベンゾインメチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテルなどのベンゾインエーテル類;アセトフェノン、2,2'−ジエトキシアセトフェノン、p−ジメチルアセトフェノン、p−tert−ブチルアセトフェノンなどのアセトフェノン類;ベンゾフェノン、2−クロロベンゾフェノン、p,p'−ビスジメチルアミノベンゾフェノンなどのベンゾフェノン類;2−メチル−1−〔4−(メチルチオ)フェニル〕−2−モンフォリノプロパノン−1,2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリオフェニル)−ブタノン−1などのα−アミノアルキルフェノン類;ベンジルジメチルケタール、チオキサンソン、2−クロロチオキサンソン、2,4−ジエチルチオキサンソンなどのイオウ化合物などが好ましく挙げられる。
光増感剤として、例えばp−ジメチル安息香酸エステル、第三級アミン類、チオール系増感剤などを用いることもできる。
本発明においては、電離放射線硬化性樹脂として電子線硬化性樹脂を用いることが好ましい。電子線硬化性樹脂は無溶剤化が可能であって、環境や健康の観点からより好ましく、かつ、光重合用開始剤を必要とせず、安定な硬化特性が得られるからである。
上記電離放射線硬化性樹脂組成物中には、本発明の効果を奏する範囲で他の樹脂を含有させることができ、例えば、熱可塑性樹脂を添加することができる。但し、溶剤への耐性が必要な場合には、熱可塑性樹脂を含有しないことが好ましい。
熱可塑性樹脂としては、(メタ)アクリル酸エステル等の(メタ)アクリル系樹脂、ポリビニルブチラール等のポリビニルアセタール(ブチラール樹脂)、ポリエチレンテレフタレート,ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂、塩化ビニル樹脂、ウレタン樹脂、ポリエチレン,ポリプロピレン等のポリオレフィン、ポリスチレン,α−メチルスチレン等のスチレン系樹脂、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリオキシメチレン等のアセタール樹脂、エチレン−4フッ化エチレン共重合体等のフッ素樹脂、ポリイミド、ポリ乳酸、ポリビニルアセタール樹脂、液晶性ポリエステル樹脂等が挙げられ、これらは1種単独でも又は2種以上を組み合わせて用いても良い。2種以上組み合わせる場合は、これらの樹脂を構成するモノマーの共重合体でも良いし、それぞれの樹脂を混合して用いても良い。
上記熱可塑性樹脂のうち、本発明では(メタ)アクリル系樹脂を主成分とするものが好ましく、なかでもモノマー成分として少なくとも(メタ)アクリル酸エステルを含有する単量体を重合してなるものが好ましい。
より具体的には、(メタ)アクリル酸エステルの単独重合体、2種以上の異なる(メタ)アクリル酸エステルモノマーの共重合体、又は(メタ)アクリル酸エステルと他のモノマーとの共重合体が好ましい。
前記熱可塑性樹脂としては、例えば、重量平均分子量が9万〜15万の範囲が用いられる。重量平均分子量がこの範囲であると、架橋硬化して保護層を形成した後の成形性及び表面の耐摩耗性、耐擦傷性のいずれも高いレベルで得ることができる。
なお、ここで重量平均分子量とは、ゲルパーミエションクロマトグラフィー(GPC)により測定したポリスチレン換算のものである。ここで用いる溶媒としては通常用いられるものを適宜選択して行うことができ、例えば、テトラヒドロフラン(THF)又はN−メチル−2−ピロリジノン(NMP)等が挙げられる。
また、前記熱可塑性樹脂の多分散度(重量平均分子量Mw/数平均分子量Mn)が1.1〜3.0の範囲であることが好ましい。多分散度がこの範囲内であると、やはり架橋硬化して保護層を形成した後の成形性及び表面の耐摩耗性、耐擦傷性のいずれも高いレベルで得ることができる。以上の点から、該(メタ)アクリル系樹脂の多分散度は、さらに1.5〜2.5の範囲であることが好ましい。
このようにして形成された保護層13には、各種の添加剤を添加して各種の機能、例えば、高硬度で耐擦傷性を有する、いわゆるハードコート機能、防曇機能、防汚機能、防眩機能、反射防止機能、紫外線遮蔽機能、赤外線遮蔽機能等を付与することもできる。
添加剤としては、例えば耐候性改善剤、重合禁止剤、架橋剤、赤外線吸収剤、帯電防止剤、接着性向上剤、レベリング剤、チクソ性付与剤、カップリング剤、可塑剤、消泡剤、充填剤、溶剤、着色剤、耐摩耗性向上剤等が挙げられる。
本発明においては、保護層13の硬化後の厚さが20μm以下であることが好ましく、1〜20μmであることがより好ましい。保護層13の硬化後の厚さが1μm以上であると透明感、光沢感等、優れた意匠性が得られ、更に耐汚染性、耐擦傷性、耐候性等の保護層としての十分な物性が得られる。一方、20μm以下であると、塗膜の厚みの制御が容易となり、また、成形の際に保護層の割れ、白化等がなく、さらに、層内に溶剤が残留して硬化不良を来たすことがない。この観点から、保護層13の硬化後の厚さは2〜20μmの範囲が好ましく、5〜15μmの範囲がさらに好ましい。
≪有機ガラス用積層体の製造方法≫
本発明の有機ガラス用積層体は、例えば、以下の[1]〜[4]の工程により製造することができる。
[1]所望により、基板11の表面にコロナ放電処理又はプラズマ処理を施す工程
[2]所望により、該基板11上に、プライマー層12を積層する工程、
[3]電離放射線硬化性樹脂組成物層を積層する工程、及び
[4]該電離放射線硬化性樹脂組成物層に電離放射線を照射し該電離放射線硬化性樹脂組成物層を硬化又は半硬化して保護層13を形成する工程、
基板11上に積層されるプライマー層12及び保護層13の積層方法は、グラビア印刷、ロールコートなどの公知の印刷又は塗布手段が用いられる。
本発明における保護層13を形成する工程において、基板11、もしくはプライマー層12上に積層された電離放射線硬化性樹脂組成物層を半硬化させてもよいし、硬化させてもよいが、硬化物であると表面性能が良好となり、該樹脂組成物を上述の所定のものとすることで、硬化物であっても成形性が良好となるため、硬化させることが好ましい。該電離放射線硬化性樹脂組成物層を硬化させる場合には、該樹脂組成物層に電子線、紫外線などの電離放射線を照射して硬化させることができる。ここで、電離放射線として電子線を用いる場合、その加速電圧については、用いる樹脂や層の厚みに応じて適宜選定し得るが、通常加速電圧70〜300kV程度で電離放射線硬化性樹脂組成物層を硬化させることが好ましい。
なお、電子線の照射においては、加速電圧が高いほど透過能力が増加するため、基板11として電子線により劣化する基材を使用する場合には、電子線の透過深さと樹脂層の厚みが実質的に等しくなるように、加速電圧を選定することにより、基板11への余分の電子線の照射を抑制することができ、過剰電子線による基材の劣化を最小限にとどめることができる。
また、照射線量は、樹脂組成物層の架橋密度が飽和する量が好ましく、通常5〜300kGy(0.5〜30Mrad)、好ましくは10〜60kGy(1〜6Mrad)の範囲で選定される。
さらに、電子線源としては、特に制限はなく、例えばコックロフトワルトン型、バンデグラフト型、共振変圧器型、絶縁コア変圧器型、あるいは直線型、ダイナミトロン型、高周波型などの各種電子線加速器を用いることができる。
電離放射線として紫外線を用いる場合には、波長190〜380nmの紫外線を含むものを放射する。紫外線源としては特に制限はなく、例えば高圧水銀燈、低圧水銀燈、メタルハライドランプ、カーボンアーク燈などが用いられる。
次に、本発明を実施例により、さらに詳細に説明するが、本発明は、これらの例によってなんら限定されるものではない。
<評価方法>
(1)引張弾性率
保護層を形成するために用いた電子線硬化性樹脂組成物を、2軸延伸ポリエステルフィルム上にバーコーターで塗布して、加速電圧165kV、照射線量50kGy(5Mrad)の電子線を照射して架橋硬化させて、保護層(厚み:20μm)を形成した。当該保護層をポリエステルフィルムから剥離して得たサンプルを用いて、JIS K7127に準拠した短冊型試験片(幅25mm)に打ち抜いたシートを用意し、25℃の温度環境下にて、引張圧縮試験機(オリエンテック(株)製 テンシロン RTC−1250A)を用い、引張速度50mm/分、チャック間距離80mmの条件で測定して得られた引張応力−ひずみ曲線の初めの直線部分から、次の式によって計算した。
E=Δρ/Δε
E:引張弾性率
Δρ:直線上の2点間の元平均断面積による応力差
Δε:同じ2点間のひずみ差
(2)耐擦傷性
各実施例及び比較例で得られた有機ガラス用積層体について、スチールウール(日本スチールウール株式会社製、ボンスター#0000)を用いて、1.5kgの荷重をかけて5往復擦り、外観を目視で評価した。評価基準は以下のとおりである。
◎: 表面に変化が確認されなかった。
○ :表面に微細な傷が認められたが、塗膜の削れや白化がなかった。
△ :若干の塗膜の削れや白化が認められた。
× :表面に著しい傷があった。
(3)耐衝撃性
デュポン衝撃試験により行った。突端直径2/8インチの撃芯とその直径と合致した凹みを持つ受け台との間に有機ガラス用積層体を置き、50cmの高さから500gの重鎮を落下させ、試験片の表面を観察した。評価は以下の基準で行った。
◎: 表面に変化が確認されなかった。
○: 表面に実用上問題無い程度のわずかな白化が確認された。
△: 表面に実用上問題無い程度の微細なクラックが確認された。
×: 表面に実用上問題が生じる程度のクラックが確認された。
(4)耐スクラッチ性
親指の爪により保護層側より表面を引っ掻き、試験片の外観を評価した。
◎:表面に変化が確認されなかった。
○: 表面に実用上問題無い程度のわずかな傷が確認された。
△: 表面に実用上問題無い程度の凹み傷が確認された。
×: 表面に実用上問題が生じる程度の深い凹み傷が確認された。
実施例1(有機ガラス用積層体の製造)
基板(ポリカーボネート板、厚み:2mm、引張弾性率:2380MPa)上に、ポリウレタン系2液硬化型樹脂(アクリル系ポリマーポリオールと硬化剤としてキシリレンジイソシアネートとを、NCO当量とOH当量とが同量になるように含む組成物,ガラス転移温度Tg(ポリオールの未硬化時):100℃)80質量部並びにウレタン樹脂(ガラス転移点:−30〜−40℃)20質量部からなるプライマー組成物の溶液をグラビア印刷により塗布して、プライマー層(厚み1.5μm)を形成した。
さらに、2官能ポリカーボネート系ウレタンアクリレート(重量平均分子量:8,000)94質量部、及び6官能ウレタンアクリレート(重量平均分子量:6,000)6質量部からなる樹脂成分、紫外線吸収剤1.1質量部、光安定剤0.6質量部、並びにレベリング剤0.2質量部を含む電離放射線硬化性樹脂組成物を、上記プライマー層上にバーコーターで塗布して、加速電圧165kV、照射線量50kGy(5Mrad)の電子線を照射して架橋硬化させて、保護層(厚み:10μm)を形成し、図1に示す構成の有機ガラス用積層体を作製した。
該有機ガラス用積層体について上記方法にて評価した。その評価結果を第1表に示す。
実施例2及び比較例1〜2
実施例1において、基材や電離放射線硬化性樹脂を第1表に示すものとした以外は実施例1と同様にして有機ガラス用積層体を作製し、それぞれについて上記方法にて評価した。評価結果を第1表に示す。
Figure 0005887888
電離放射線硬化性樹脂組成物A(樹脂成分):2官能ポリカーボネート系ウレタンアクリレート(重量平均分子量:8,000)94質量部、及び6官能ウレタンアクリレート(重量平均分子量:6,000)6質量部
電離放射線硬化性樹脂組成物B(樹脂成分):アクリルポリマー(重量平均分子量:120,000)60質量部、及び3官能アクリレートモノマー(分子量:298)40質量部
電離放射線硬化性樹脂組成物C(樹脂成分):3.9官能ウレタンアクリレートオリゴマー 30質量部、及び2官能アクリレートモノマー 70質量部
本発明の有機ガラス用積層体は、例えば、自動車、列車、船舶や航空機などの窓材やサンルーフ材、建造物などの開口部、窓材等の無機ガラス代替材料の分野、及び自動車、列車、船舶や航空機などのヘッドランプ等の透明有機ガラスなどとして好適に使用することができる。また、本発明の有機ガラス用積層体は、特に衝撃などにより発生する破片などの飛散防止が求められる、自動車、列車、船舶、航空機等の車輌用に用いられる車輌用窓材や樹脂製カバーなどの用途にも好適に用いられる。
10 有機ガラス用積層体
11 基板
12 プライマー層
13 保護層

Claims (7)

  1. 透明樹脂基板上に保護層を積層してなる有機ガラス用積層体であって、該保護層が電離放射線硬化性樹脂組成物の硬化物であり、該保護層の引張弾性率が2100MPa以下であることを特徴とする有機ガラス用積層体。
  2. 前記電離放射線硬化性樹脂組成物が、多官能(メタ)アクリレートを含む請求項1に記載の有機ガラス用積層体。
  3. 前記電離放射線硬化性樹脂組成物が、さらにポリカーボネート(メタ)アクリレート又はアクリルシリコーン(メタ)アクリレートを含有する請求項2に記載の有機ガラス用積層体。
  4. 前記電離放射線硬化性樹脂組成物が、さらに熱可塑性樹脂を含む請求項2又は3に記載の有機ガラス用積層体。
  5. 前記透明樹脂基板が、ポリカーボネート樹脂からなる請求項1〜4のいずれかに記載の有機ガラス用積層体。
  6. 窓材用又は樹脂製カバー用である請求項1〜のいずれかに記載の有機ガラス積層体。
  7. 前記透明樹脂基板と前記保護層との間にプライマー層を有し、該プライマー層がポリウレタン系2液硬化型樹脂を用いたものである請求項1〜6のいずれかに記載の有機ガラス積層体。
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