以下、本発明を実施するための最良の形態を説明する。
図1(a)(b)は光電複合基板の実施の形態の一例を示すものであり、プリント配線基板など回路5を設けた基板4の表面にポリマ導波路3を積層して形成してある。基板4の種類としては、厚みがあって硬質なリジッド基板であってもよく、またフィルム状などのフレキシブル基板であってもよく、さらにリジッドとフレキシブルの混合体であってもよいものであり、その種類は問わない。
ポリマ導波路3はコア1と、コア1を囲むクラッド2によって形成されるものであり、コア1はコア用ポリマ材料で、クラッド2はクラッド用ポリマ材料でそれぞれ形成してある。コア用ポリマ材料はクラッド用ポリマ材料より屈折率の高い材料で形成されるものである。また図1(a)(b)の実施の形態では、クラッド2は、基板4の表面に積層される下部クラッド2aと、下部クラッド2aの上に設けたコア1を覆う上部クラッド2bとから形成してあり、下部クラッド2aと上部クラッド2bの間にコア1を挟んでポリマ導波路3を形成するようにしてある。ポリマ導波路3は主としてマルチモード導波路として形成されるものであり、コア1は信号配線のパターンで形成されている。コア1の断面形状は矩形であることが望ましいが、これに限られるものではない。またコア1のサイズは特に制限されるものではないが、矩形の各辺の幅寸法が20〜200μmの範囲であることが好ましく、矩形以外の形状の場合には断面積が400〜40000μm2の範囲であることが望ましい。
上記のように形成されるポリマ導波路3にあって、図1(a)の矢印のように、コア1の一方の端面から光を入射させると共に、コア1の他方の端面から光を出射させ、そして出射される光をCCD撮像素子に結像させて強度分布を測定した際に、コア1の端面において中央部から出射される光の強度が高く、コア1内においてクラッド2との界面付近から出射される光の強度が低くなるように、コア1が形成されたものを用いるものである。つまり、コア1は中央部での光の減衰が小さく、クラッド2との界面付近での光の減衰が大きくなるように形成されているものである。従って、コア1内を伝搬される光は、コア1の中央を通過する光の量が多く、コア1のクラッド2との界面付近を通過する光の量が少なくなり、クラッド2との界面に到達する光の量は少ない。このため、コア1の表面に荒れがあっても、この荒れの凹凸で散乱される光の量は少なく、コア1とクラッド2の界面で散乱してクラッド2へと逃げる光の量が少なくなるものであり、光損失を低減することができるものである。
尚、図1(a)の実施の形態では、コア1の端面をむき出しにして、コア1に直接光を入射・出射させるようにしたが、マイクロミラーや回折格子などの光結合素子を設けて、光を入射・出射させるようにしてもよい。またコア1に入射させる光は、その強度分布の変動がコア1の断面内で10%以内のものを用いるのが好ましく、光の波長は単一波長であることが望ましいが、波長に広がりを持つ場合には、CCDの感度が10%以上変動しない波長領域に90%以上の光強度が入っているスペクトルを有する光源を用いるのが好ましい。
ここで、図1(c)は、コア1の端面から出射される光をCCD撮像素子に結像させて得た像Pを示すものであり、コア1の断面(端面)と対応した形状になっている。そして図1(c)の場合には、光の強度が低い領域P1は、基板4と垂直な面であるコア1の両側面の付近に形成されている。コア1をフォトリソグラフィの工法で作製する場合、コア1はこの両側面に荒れが生じ易いので、この両側面の付近での光の減衰が大きくなるようにコア1を形成して、光の強度が低い領域P1が像Pの両側端付近に形成されるようにしてある。この光の強度が低い領域P1の間の中央部を含む部分が光の強度が高い領域P2となるものであり、光の強度が低い領域P1と光の強度が高い領域P2との境界は明確に形成されるものではないが、像Pの側端から像Pの幅寸法Wの10%の幅W1の範囲の領域での光の強度が、像Pの中央部の光の強度の半分以下になるように、つまり3dB以上減衰されるように設定するのが好ましい。像Pの光の強度の分布が、このような光の強度が低い領域P1と光の強度が高い領域P2を形成する分布として形成されるようにするためには、コア1内の光の強度が低い領域P1に対応する部分の屈折率をn1、コア1内の光の強度が高い領域P2に対応する部分の屈折率をn2としたときに、n1<n2となるようにコア1を形成するものである。コア1内の3dB以上光が減衰する領域P1に対応する部分の領域は、コア1の幅が40μm以上の場合は、側面から5〜10μmの範囲に、コア1の幅が40μm未満の場合は、(コア幅/40)×5μm〜(コア幅/40)×10μmの範囲に設定するのが好ましい。
図1(d)の像Pでは、光の強度が低い領域P1はP11とP12の2層で形成されるものであり、外側の領域P11の光の強度は内側のP12の光の強度よりも小さくなるものである。この場合、コア1内の光の強度が低い領域P11に対応する部分の屈折率をn11、コア1内の光の強度が低い領域P12に対応する部分の屈折率をn12、コア1内の光の強度が高い領域P2に対応する部分の屈折率をn2としたときに、n11<n12<n2となるようにコア1を形成するものである。
図1(e)の像Pでは、光の強度が低い領域P1は、コア1の一方の側面の付近にのみ形成されるようにしてある。コア1の両側面だけでなく、一方の側面だけでも効果を得ることができるものである。図1(f)の像Pでは、光の強度が低い領域P1は、コア1の両側面及び上面に形成されるようにしてある。このように、光の強度が低い領域P1はコア1の表面のどの部分であってもよく、また側面や上面の一部に形成されるようにしてもよい。
次に、上記のようなコア1を備えたポリマ導波路3を有する光電複合基板の製造について説明する。
コア1を形成するコア用ポリマ材料はクラッド2を形成するクラッド用ポリマ材料より屈折率が大きいものを用いるものである。屈折率の差は、特に限定されるものではないが、ポリマ導波路3としての性能や、後述のようにコア1にクラッド用ポリマ材料の成分を浸み込ませて屈折率が低い層を形成するうえで、0.01〜0.1程度が好ましい。屈折率がこの関係を満たすものであれば、コア用ポリマ材料やクラッド用ポリマ材料としては任意のものを用いることができるが、エポキシ系同士や、アクリル系同士など、同じ系統の樹脂であることが望ましい。
エポキシ系の材料の具体例としては、室温で液状のエポキシ樹脂、もしくは室温で固体のエポキシ樹脂と室温で液状のエポキシ樹脂の混合物に対して、光カチオン又は熱カチオンの硬化開始剤を混合することによって調製される、光硬化型や熱硬化型のエポキシ樹脂材料を挙げることができる。これに限定されるものでないのはいうまでもない。
室温で液状のエポキシ樹脂を主成分とする場合、コア用ポリマ材料やクラッド用ポリマ材料は液状であるので、液状のまま用いて、スピンコートなどコート法でコア1やクラッド2を作製するための層を形成することができる。
また室温で固体のエポキシ樹脂が含まれる場合には、エポキシ樹脂材料をフィルム状にして、コア用ポリマ材料やクラッド用ポリマ材料として用いることができる。例えばエポキシ樹脂材料を、アノン(シクロヘキサン)、トルエン、ブタノン、MEK等の溶剤に溶解してワニスを調製し、このワニスをPETフィルム等のベースフィルムの表面に塗工し、これを乾燥することによって、フィルム状のコア用ポリマ材料やクラッド用ポリマ材料を得ることができる。このようにコア用ポリマ材料やクラッド用ポリマ材料をフィルムとして用いることによって、ラミネート法でコア1やクラッド2を形成することができ、ポリマ導波路3の製造が容易になるので、好ましい。
図2は製造方法の一例を示すものであり、まず、プリント配線基板など回路5が形成された基板4の表面にクラッド用ポリマ材料12をコートあるいはラミネートし、紫外線照射などしてクラッド用ポリマ材料12を硬化させることによって、図2(a)のように、基板4の表面に下部クラッド2aを積層して形成する。
次にこの下部クラッド2aの表面にコア用ポリマ材料11をコートあるいはラミネートし、図2(b)のように、コアパターンのスリット20が形成されたマスク21をコア用ポリマ材料11に重ね、スリット20を通して紫外線を照射することによって、コア用ポリマ材料11にコアパターンで露光を施す。このように露光した後、コア用ポリマ材料11を現像処理することによって、露光されていない部分のコア用ポリマ材料11を除去し、コア用ポリマ材料11が硬化した部分でパターン状のコア1を図2(c)のように下部クラッド2aの表面に形成する。
このように下部クラッド2aの表面にコア1を形成した後、図2(d)のように、コア1を覆うように下部クラッド2aの上にクラッド用ポリマ材料12をコートあるいはラミネートする。次に、このクラッド用ポリマ材料12を加熱して、軟化乃至溶融させる。このようにクラッド用ポリマ材料12を加熱して軟化乃至溶融させると、コア1のクラッド用ポリマ材料12と接触している表層部の屈折率が、コア1本来の屈折率より小さくなる。このようにコア1の表層部の屈折率が低下するのは、クラッド用ポリマ材料12を加熱して軟化乃至溶融させることによって、屈折率がコア1より小さいクラッド用ポリマ材料12中のモノマー成分やオリゴマー成分がコア1の表層部に浸み込み、このクラッド用ポリマ材料12の成分が浸み込んだコア1の表層部の屈折率が、クラッド用ポリマ材料12に近づくように小さくなったものであると考えられる。
クラッド用ポリマ材料12を加熱処理する際の加熱温度は、クラッド用ポリマ材料12の軟化温度や溶融温度に応じて設定されるものであり、クラッド用ポリマ材料12を溶融させる場合には、特に限定されるものではないが、溶融粘度が500〜2000cpsになるようにするのが好ましい。またクラッド用ポリマ材料12を加熱処理する時間も、クラッド用ポリマ材料12に応じて任意に設定されるものであるが、通常、10〜60分程度の範囲が好ましい。
上記のようにクラッド用ポリマ材料12を加熱してコア1の表層部の屈折率を低下させた後、クラッド用ポリマ材料12に紫外線を照射して硬化させ、上部クラッド2bを形成する。尚、下部クラッド2aと上部クラッド2bを形成するクラッド用ポリマ材料12は、同じ材料であってもよく、また異なる材料であってもよい。
このようにして図2(e)のように、下部クラッド2aと上部クラッド2bからなるクラッド2内にコア1が埋入されたポリマ導波路3を形成することができるものである。このポリマ導波路3にあって、クラッド用ポリマ材料12を加熱する際に、コア1は両側面と上面がクラッド用ポリマ材料12と接触しているので、コア1の両側面と上面の表層部に低屈折部が形成されている。従って、コア1の端面から出射される光をCCD撮像素子に結像させて得られる像Pの光の強度分布は図1(f)のようになり、コア1内の両側面付近と上面付近は、コア1の中央部よりも光の減衰が大きくなる。コア用ポリマ材料11を現像処理してコア1を図2(c)のように形成する場合、コア1の両側面は現像液の作用で荒れて凹凸が生じているが、コア1のこの両側面の近傍は低屈折率になっていて光の減衰が大きいので、コア1内を伝搬される光のうち、コア1の両側面の近傍を通過する量が少なくなり、コア1の荒れた両側面で散乱される光の量は少ない。このため、コア1とクラッド2の界面で散乱してクラッド2へと逃げる光の量が少なくなるものであり、光損失を低減することができるものである。コア1の表層部に形成される低屈折部の厚みは特に限定されないが、コア1の表面から5μm以上であれば、光損失を低減する効果を高く得ることができる。
図3は製造方法の他の一例を示すものであり、まず図2(a)と同様にして基板4の表面に下部クラッド2aを形成し、図2(b)と同様にして下部クラッド2aの表面にコア用ポリマ材料11をコートあるいはラミネートした後、露光・現像処理してパターニングすることによって、図2(c)のようにコア1を下部クラッド2aの表面に形成する。
次に、コア1より屈折率が小さい低屈折ポリマ材料13を、図3(a)のように、コア1を覆うようにコートあるいはラミネートする。次にこの低屈折ポリマ材料13を加熱して、軟化乃至溶融させる。このように低屈折ポリマ材料13を加熱して軟化乃至溶融させると、コア1の低屈折ポリマ材料13と接触している表層部の屈折率が、コア1本来の屈折率より小さくなる。このようにコア1の表層部の屈折率が低下するのは、低屈折ポリマ材料13を加熱して軟化乃至溶融させることによって、屈折率がコア1より小さい低屈折ポリマ材料13中のモノマー成分やオリゴマー成分がコア1の表層部に浸み込み、この低屈折ポリマ材料13が浸み込んだコア1の表層部の屈折率が、低屈折ポリマ材料13に近づくように小さくなったものであると考えられる。低屈折ポリマ材料13を加熱処理する際の加熱温度は、低屈折ポリマ材料13の軟化温度や溶融温度に応じて設定されるものであり、低屈折ポリマ材料13を溶融させる場合には、特に限定されるものではないが、溶融粘度が500〜2000cpsになるようにするのが好ましい。また低屈折ポリマ材料13を加熱処理する時間も、低屈折ポリマ材料13に応じて任意に設定されるものであるが、通常、10〜60分程度の範囲が好ましい。
このように低屈折ポリマ材料13を加熱してコア1の表層部の屈折率を低下させた後、低屈折ポリマ材料13を図3(b)のように除去する。低屈折ポリマ材料13の除去は、アセトン等のケトン類や、エタノール等のアルコールなど、溶剤で洗浄して低屈折ポリマ材料13を溶解することによって行なうことができる。勿論、この方法に限られるものではなく、低屈折ポリマ材料13の特性に応じた適切な方法を採用すればよい。
この後、図3(c)のように、コア1を覆うように下部クラッド2aの上にクラッド用ポリマ材料12をコートあるいはラミネートし、クラッド用ポリマ材料12に紫外線を照射して硬化させ、上部クラッド2bを形成する。
このようにして、下部クラッド2aと上部クラッド2bからなるクラッド2内にコア1が埋入されたポリマ導波路3を形成することができるものである。このポリマ導波路3にあって、低屈折ポリマ材料13を加熱する際に、コア1は両側面と上面が低屈折ポリマ材料13と接触しているので、コア1の両側面と上面の表層部に低屈折部が形成されている。従って、コア1の端面から出射される光をCCD撮像素子に結像させて得られる像Pの光の強度分布は図1(f)のようになり、コア1内の両側面付近と上面付近は、コア1の中央部よりも光の減衰が大きくなる。コア1を図2(c)のように形成する場合、コア1の両側面は現像液の作用で荒れて凹凸が生じているが、コア1のこの両側面の近傍は低屈折率になっていて光の減衰が大きいので、コア1内を伝搬される光のうち、コア1の両側面の近傍を通過する量が少なくなり、コア1の荒れた両側面で散乱される光の量は少ない。このため、コア1とクラッド2の界面で散乱してクラッド2へと逃げる光の量が少なくなるものであり、光損失を低減することができるものである。
尚、図3(a)(b)の工程を繰り返して行なうことによって、コア1の表層部に低屈折部を複数層で形成することができるものであり、複数層の低屈折部は表層側ほど屈折率が低くなるようにすることができるものである。また、コア1の表層部に形成されるこの低屈折部の屈折率は、クラッド2の屈折率より大きいのはいうまでもない。
ここで、上記の低屈折ポリマ材料13としては、コア1より屈折率が小さいポリマ材料であればよく、エポキシ樹脂材料など任意の材料を用いることができる。従って、上記のクラッド用ポリマ材料12を低屈折ポリマ材料13として用いる他に、透明性を有しない材料を低屈折ポリマ材料13として用いることもでき、材料の選択の範囲を広げることができるものである。また上記の図2の実施の形態のように、クラッド用ポリマ材料12を加熱してコア1の表層部の屈折率を下げる処理をした後、このクラッド用ポリマ材料12をさらに紫外線硬化させて上部クラッド2bを形成する場合には、加熱処理によって上部クラッド2bの表面にうねりなどの凹凸が発生することがあるが、本実施の形態の場合には、低屈折ポリマ材料13を加熱してコア1の表層部の屈折率を下げる処理をした後、この低屈折ポリマ材料13を除去して、別のクラッド用ポリマ材料12で上部クラッド2bを形成するようにしているため、上部クラッド2bに熱履歴が残ることはないので、上部クラッド2bの表面を平滑に形成することができるものである。
図4(a)は光電複合基板の他の実施の形態の一例を示すものであり、このものでは、コア1のクラッド2との界面の少なくとも一部に、コア1の屈折率とクラッド2の屈折率の間の屈折率を有するコア表層部6を設けるようにしてある。その他の構成は図1のものと同じである。
このようにコア表層部6を設けたコア1によって形成されるポリマ導波路3にあって、上記のようにコア1の端面から出射される光をCCD撮像素子に結像させた像の光の強度分布は、コア1よりも低屈折率のコア表層部6に対応する部分で強度が低く、コア表層部6以外の部分で強度が高くなる。従って、コア表層部6はコア1の中央部よりも光の減衰が大きくなるものであり、コア1内を伝搬される光のうち、コア表層部6を通過する量が少なくなり、コア1とクラッド2の界面で散乱してクラッド2へと逃げる光の量が少なくなるものであり、光損失を低減することができるものである。
図4(b)〜(e)はコア1の光導波方向と垂直な断面を図示するものであり、図4(b)の実施の形態では、基板4と垂直な面であるコア1の両側面においてコア表層部6を設けるようにしてあるが、図4(c)のようにコア1の一方の側面のみにコア表層部6を設けるようにしてもよい。コア1の両側面だけでなく、一方の側面だけでも効果を得ることができるものである。また図4(d)のようにコア1の両側面及び上面にコア表層部6を設けるようにしてもよい。このように、屈折率が低いコア表層部6はコア1の表面のどの部分に形成されていてもよく、またコア1の側面や上面の一部に形成されるようにしてもよい。さらに図4(e)のようにコア表層部6は複数層で形成されるようにしてもよい。コア表層部6を複数層に形成する場合、外側のコア表層部6aの屈折率が、内側のコア表層部6bの屈折率よりも低くなるように形成するものであり、層の数は多いほど好ましい。コア表層部6の屈折率は必ずしも一定の屈折率である必要はなく、内側から外側へと小さくなるように段階的にあるいは連続的に変化していてもよい。コア表層部6はコア1の中央部よりも屈折率が低い領域が一部であればよく、逆にコア1より屈折率が大きい部分が一部にあっても構わない。
コア表層部6の厚みは、コア表層部6を含むコア1全体の幅よりも小さければよく、特に制限されるものではないが、コア1全体の幅が40μm以上の場合は5〜10μmの範囲に、コア1全体の幅が40μm未満の場合は、(コア幅/40)×5μm〜(コア幅/40)×10μmの範囲に設定するのが好ましい。またコア表層部6の屈折率は、特に限定されるものではないが、
(コア1の屈折率とクラッド2の屈折率の平均値)±(コア1の屈折率−クラッド2の屈折率)×0.1
の範囲に設定するのが好ましい。
次に、上記のようなコア表層部6を設けたコア1によって形成されるポリマ導波路3を有する光電複合基板の製造について説明する。コア1を形成するコア用ポリマ材料やクラッド2を形成するクラッド用ポリマ材料は、上記したものを用いることができる。
そしてまず、図2(a)と同様にして基板4の表面に下部クラッド2aを形成し、図2(b)と同様にして下部クラッド2aの表面にコア用ポリマ材料11をコートあるいはラミネートした後、露光・現像処理してパターニングすることによって、図2(c)のようにコア1を下部クラッド2aの表面に形成する。
次に、図5(a)のように、コア1の屈折率とクラッド2の屈折率の間の屈折率を有する表層用ポリマ材料14をコア1の上からコートあるいはラミネートする。この表層用ポリマ材料14としては、コア1の屈折率とクラッド2の屈折率の間の屈折率を有するポリマ材料であればよく、エポキシ樹脂材料など任意の材料を用いることができる。
この後、図5(a)に示すように、コア1より幅が広いスリット22が形成されたマスク23を表層用ポリマ材料14の表面に重ね、スリット22を通して紫外線を照射することによって、表層用ポリマ材料14のコア1に沿った部分を露光する。このように露光した後、表層用ポリマ材料14を現像処理することによって、露光されていない部分の表層用ポリマ材料14を除去する。表層用ポリマ材料14の露光された部分は硬化し、図5(b)のようにコア1の表面に密着した状態で残り、コア1にコア表層部6が形成される。ここで、上記の図2(c)のようにコア1をパターニングするマスク21として、スリット20の幅を通常より狭く形成したものを用い、また図5(a)のようにコア表層部6をパターニングするマスク23として、通常のコア1の幅にスリット22を形成したものを用いることによって、コア1とコア表層部6を合計した幅を、通常のコア1と同じ幅に形成することができるものである。
この後、図5(c)のように、コア表層部6が形成されたコア1を覆うように下部クラッド2aの上にクラッド用ポリマ材料12をコートあるいはラミネートし、さらにクラッド用ポリマ材料12に紫外線を照射して硬化させ、上部クラッド2bを形成する。
このようにして、図5(d)のような、下部クラッド2aと上部クラッド2bからなるクラッド2内に、コア表層部6を設けたコア1が埋入されたポリマ導波路3を形成することができるものである。このポリマ導波路3にあって、コア1の両側面と上面に、コア1より低屈折率のコア表層部6が形成されている。従って、コア1内を伝搬される光のうち、コア1の両側面や上面の近傍を通過する量が少なくなり、コア1の荒れた両側面で散乱される光の量は少ない。このため、コア1とクラッド2の界面で散乱してクラッド2へと逃げる光の量が少なくなるものであり、光損失を低減することができるものである。
尚、図5(a)(b)の工程を繰り返して行なうことによって、コア表層部6を複数層で形成することができるものである。
次に、本発明を実施例によって具体的に説明する。
(透明エポキシフィルムの作製)
・透明エポキシフィルムAの作製
ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル(東都化成(株)製「PG207])7質量部、液状の水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン(株)製「YX8000」)25質量部、固形の水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン(株)製「YL7170」)20質量部、2,2−ビス(ヒドロキシメチル)−1−ブタノールの1,2−エポキシ−4−(2−オキシラニル)シクロヘキサン付加物(ダイセル化学工業(株)製「EHPE3150」)8質量部、固形ビスフェノールA型エポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン(株)製「エピコート1006FS」)20質量部、フェノキシ樹脂(東都化成(株)製「YP50」)20質量部、光カチオン硬化開始剤((株)アデカ製「SP170」)0.5質量部、熱カチオン硬化開始剤(三新化学工業(株)製「SI−150L」)0.5質量部、表面調整剤(大日本インキ化学工業(株)製「F470」)0.1質量部の各配合成分を、トルエン30質量部、MEK70質量部の溶剤に溶解し、孔径1μmのメンブランフィルタで濾過した後、減圧脱泡することによって、エポキシ樹脂ワニスを調製した。
このエポキシ樹脂ワニスを厚み250μmのPETフィルムの上にバーコーターで塗工し、80℃で10分間、一次乾燥をした後、120℃で10分間、二次乾燥をすることによって、膜厚を15μmに形成した透明エポキシフィルムAを作製した。この透明エポキシフィルムAの屈折率は1.54(@579nm)である。
・透明エポキシフィルムBの作製
液状ビスフェノールA型エポキシ樹脂(大日本インキ化学工業(株)製「エピクロン850S」)42質量部、固形ビスフェノールA型エポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン(株)製「エピコート1006FS」)55質量部、フェノキシ樹脂(東都化成(株)製「YP50」)3質量部、光カチオン硬化開始剤((株)アデカ製「SP170」)1質量部、表面調整剤(大日本インキ化学工業(株)製「F470」)0.1質量部の各配合成分を、トルエン24質量部、MEK56質量部の溶剤に溶解し、孔径1μmのメンブランフィルタで濾過した後、減圧脱泡することによって、エポキシ樹脂ワニスを調製した。
このエポキシ樹脂ワニスを上記と同様にしてフィルム化することによって、膜厚を40μmに形成した透明エポキシフィルムBを作製した。この透明エポキシフィルムBの屈折率は1.59(@579nm)である。
・透明エポキシフィルムCの作製
上記の透明エポキシフィルムAの作製に使用したエポキシ樹脂ワニスを用い、上記と同様にしてフィルム化することによって、膜厚を55μmに形成した透明エポキシフィルムCを作製した。この透明エポキシフィルムCの屈折率は1.54(@579nm)である。
・透明エポキシフィルムDの作製
ビスフェノールF型エポキシ樹脂(東都化成(株)製「YDF175S])20質量部、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン(株)製「エピコート1006」)20質量部、固形の水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン(株)製「YL7170」)20質量部、フェノキシ樹脂(東都化成(株)製「YP50」)20質量部、ブチラール樹脂(電気化学工業(株)製「デンカブチラール3000−1」)5質量部、光カチオン硬化開始剤((株)アデカ製「SP170」)1質量部、熱カチオン硬化開始剤(三新化学工業(株)製「SI−150L」)1質量部の各配合成分を、トルエン30質量部、MEK70質量部の溶剤に溶解し、孔径1μmのメンブランフィルタで濾過した後、減圧脱泡することによって、エポキシ樹脂ワニスを調製した。
このエポキシ樹脂ワニスを上記と同様にしてフィルム化することによって、膜厚を40μmに形成した透明エポキシフィルムDを作製した。この透明エポキシフィルムDの屈折率は1.56(@579nm)である。
(実施例1)
両面銅張フレキシブル材料(松下電工(株)製「FELIOS」)を用い、片面の銅箔にパターニングを施して回路5を形成すると共に、他の片面の銅箔をエッチングして除去することによって、プリント配線基板4を作製した。そして図6(a)に示すように、この回路5付の基板4を接着用材料25(PETGシート:理研テクノス社製「リベスター」)を介して保持板26と重ね、ステンレス板27の間に挟んで160℃、0.4MPa、30分間の条件でプレスすることによって、図6(b)のように基板4を保持板26に仮接着して接合した。
次に、クラッド用ポリマ材料12として透明エポキシフィルムAを用い、この透明エポキシフィルムAを基板4の表面に重ね、60℃、0.2MPa、120秒の条件で加圧することによってラミネートし、超高圧水銀ランプにて2000mJ(@365nm)の紫外線を照射することによって、図6(c)のように基板4の表面に下部クラッド2aを積層して形成した。
次にコア用ポリマ材料11として透明エポキシフィルムBを用い、下部クラッド2aの表面に透明エポキシフィルムBを重ね、60℃、0.2MPa、120秒の条件で加圧することによって、図6(d)のようにラミネートした。
次に、幅40μm、長さ110mmのスリット20を250μm間隔で20本設けたフォトマスク21を用い、基板4とフォトマスク21の双方に形成された位置決めマークを反射型顕微鏡で位置合せしながら、透明エポキシフィルムBの表面にフォトマスク21を密着させ、図6(e)及び図8(a)のように、平行光に調整された超高圧水銀ランプにて2000mJ(@365nm)の紫外線を照射することによって、透明エポキシフィルムBのスリット20に対応する部分を紫外線硬化させた。
そして現像液としてトルエンとフレオン代替の水系洗浄剤(花王(株)製「クリーンスルー」)を用いて現像することによって、透明エポキシフィルムBの未露光部分を溶解除去し、さらに乾燥することによって、図6(f)及び図8(b)のようにコア1を形成した。このように形成したコア1の側面を顕微鏡観察したところ、多数の荒れが発生していることが確認された。
次に上記のように形成した各コア1の長手方向の両端部にV溝加工をした。すなわち、図6(g)のように、切削刃の頂角が90°の回転ブレード29(ディスコ社製「#5000」ブレード)を用い、回転数10000rpm、加工速度0.1mm/秒で、コア1の両端からそれぞれ5mmの位置に深さ90μmのV溝30を形成した。さらにV溝30の部分のみが開口されたメタルマスクを被せて金を真空蒸着することによって、図6(h)に示すように、V溝30の表面に金薄膜でマイクロミラー31を形成した。
次にクラッド用ポリマ材料12として透明エポキシフィルムCを用い、コア1の上から透明エポキシフィルムCを被せて重ね、60℃、0.2MPa、120秒の条件で加圧することによって、図7(a)のようにラミネートした。
この後、これをオーブンに入れて140℃で30分間、透明エポキシフィルムCを加熱処理した(加熱処理をしている状態を図7(b)に示す)。この加熱処理の際に透明エポキシフィルムCは溶融状態になった。
次にオーブンから取り出して室温まで冷却した後、図7(c)のように超高圧水銀ランプにて2000mJ(@365nm)の紫外線を照射することによって、透明エポキシフィルムCを紫外線硬化させて上部クラッド2bを形成した。
そして、保持板26から基板4を剥離し、140℃のオーブンで1時間の熱処理を施した後に取り出すことによって、図7(d)に示すような、下部クラッド2aと上部クラッド2bからなるクラッド2内にコア1が埋入されて形成されるポリマ導波路3が、回路5付の基板4の表面に設けられた光電複合基板を得た。
(比較例1)
上記の図6(a)〜図7(a)の工程を実施例1と同様に実施して、コア1の上から透明エポキシフィルムCをラミネートするまでを行なった。
次に、図7(b)の加熱処理を行なわないで、後は図7(c)、図7(d)と同様にして、光電複合基板を得た。
上記のようにして実施例1及び比較例1で得た光電複合基板について、マイクロミラー31より端部側を切除して、コア1の両端面を露出させ、このコア1の両端面を鏡面仕上げした。そして図11に示すように、LED発光装置32から波長850nmの光をコア1の一方の端面から入射させ、コア1の他方の端面から出射される光の強度をパワーメーター33で測定し、導波損失の評価を行なった。その結果、実施例1のものは導波損失が0.4dB/cm、比較例1のものは導波損失が1.0dB/cmであり、実施例1のように図7(b)の工程で透明エポキシフィルムCを加熱処理することによって、光損失を低減できる効果が得られることが確認された。
また、実施例1のものについて、コア1の一方の端面から入射させ、コア1の他方の端面から出射される光をCCDカメラで撮影したところ、コア1の両側面及び上面の近傍において、光の強度が低くなる層が形成されていることが確認された。
(実施例2)
実施例1における上記の図7(a)の工程で、クラッド用ポリマ材料12として透明エポキシフィルムCの代わりに透明エポキシフィルムDを用いるようにした他は、実施例1と同様にして、光電複合基板を得た。
(実施例3)
上記の図6(a)〜図7(b)の工程を実施例1と同様に実施して、コア1の上にラミネートした透明エポキシフィルムCを加熱処理するまでを行なった。
次に、図9(a)のようにイソプロピルアルコールを満たした超音波洗浄槽35に入れて超音波洗浄することによって、未硬化の透明エポキシフィルムCを図9(b)のように溶解除去した。
次に、クラッド用ポリマ材料12として透明エポキシフィルムDを用い、コア1の上から透明エポキシフィルムDを被せて重ね、60℃、0.2MPa、120秒の条件で加圧することによって、図9(c)のようにラミネートした。
この後、図9(d)のように超高圧水銀ランプにて2000mJ(@365nm)の紫外線を照射することによって、透明エポキシフィルムDを紫外線硬化させて上部クラッド2bを形成した。
そして、あとは実施例1と同様に保持板26から基板4を剥離して熱処理を施し、光電複合基板を得た。
このようにして実施例2及び実施例3で得た光電複合基板について、上記の図11と同様にして、コア1の導波損失の評価を行なったところ、実施例2のものは0.5dB/cm、実施例3のものは0.4dB/cmであり、両者ともに良好な結果が得られた。
また、実施例2及び実施例3の光電複合基板について、上部クラッド2bの表面の平坦性を測定したところ、実施例2のものはRa=10μm、実施例3のものはRa=3μmであった。これは、実施例2では上部クラッド2bを形成する透明エポキシフィルムDに加熱処理を行なっているために、加熱処理の際に表面にうねり等が発生しているのに対して、実施例3では、加熱処理した透明エポキシフィルムCを剥した後に、透明エポキシフィルムDをラミネートして上部クラッド2bを形成しているため、上部クラッド2bには加熱処理の影響がなく、平坦性が高いものである。
(実施例4)
上記の図6(a)〜図6(d)の工程を実施例1と同様に実施して、透明エポキシフィルムBをラミネートするまでを行なった。
次に、幅25μm、長さ110mmのスリット20を250μm間隔で20本設けたフォトマスク21を用い、基板4とフォトマスク21の双方に形成された位置決めマークを反射型顕微鏡で位置合せしながら、透明エポキシフィルムBの表面にフォトマスク21を密着させ、図10(a)のように、平行光に調整された超高圧水銀ランプにて2000mJ(@365nm)の紫外線を照射することによって、透明エポキシフィルムBのスリット20に対応する部分を紫外線硬化させた。
そして現像液としてトルエンとフレオン代替の水系洗浄剤(花王(株)製「クリーンスルー」)を用いて現像することによって、透明エポキシフィルムBの未露光部分を溶解除去し、さらに乾燥することによって、図10(b)のようにコア1を形成した。このように形成したコア1の側面を顕微鏡観察したところ、多数の荒れが発生していることが確認された。
次に、表層用ポリマ材料14として透明エポキシフィルムDを用い、コア1の上から透明エポキシフィルムDを被せて重ね、60℃、0.2MPa、120秒の条件で加圧することによって、図10(c)のようにラミネートした。
次に、幅40μm、長さ110mmのスリット22を250μm間隔で20本設けたフォトマスク23を用い、上記のフォトマスク21と同じ位置に位置合せして、透明エポキシフィルムDの表面にフォトマスク23を密着させ、図10(d)のように、平行光に調整された超高圧水銀ランプにて2000mJ(@365nm)の紫外線を照射することによって、透明エポキシフィルムDのスリット22に対応する部分を紫外線硬化させた。
そして現像液としてトルエンとフレオン代替の水系洗浄剤(花王(株)製「クリーンスルー」)を用いて現像することによって、透明エポキシフィルムDの未露光部分を溶解除去し、さらに乾燥することによって、図10(e)のようにコア表層部6を形成した。コア表層部6はコア1の両側面と上面に密着するように形成されているものであり、このように形成したコア表層部6の側面を顕微鏡観察したところ、多数の荒れが発生していることが確認された。
この後、上記の図6(g)、図6(h)、図7(a)、図7(c)、図7(d)の工程を実施例1と同様に実施して(図7(b)の工程は実施しない)、光電複合基板を得た。
このようにして実施例4で得た光電複合基板について、上記の図11と同様にして、コア1の導波損失の評価を行なったところ、0.5dB/cmであって良好な結果が得られた。また、コア1の一方の端面から入射させ、コア1の他方の端面から出射される光をCCDカメラで撮影したところ、コア1の両側面及び上面の近傍において、光の強度が低くなる層が形成されていることが確認された。