JP5887179B2 - 張り出し加工性に優れる2相ステンレス鋼およびその製造方法 - Google Patents

張り出し加工性に優れる2相ステンレス鋼およびその製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、張り出し加工性に優れた2相ステンレス鋼およびその製造方法に関し、特に高延性で張り出し成形性が良好な省合金2相ステンレス鋼(鋼帯、鋼板)およびその製造方法に関するものである。
2相ステンレス鋼板は、優れた耐食性と高い強度を有することから、各種の化学工業用の装置や、機器などとして用いられている。ところが、かかる2相ステンレス鋼は、伸びがSUS304に代表されるオーステナイト系ステンレス鋼に比べると低く、そのために、プレス加工特に張り出し加工が制限されるという問題点があった。
この点に関し、特許文献1では2相ステンレス鋼の加工性を向上させるために、焼鈍温度(T−100)℃以上(T:フェライト単相となる温度)で熱延板焼鈍を行い、冷延後、焼鈍温度1000〜(T−150)℃の領域で冷延板焼鈍を行うことにより、加工性に優れる2相ステンレス鋼を製造する方法を提案している。また、特許文献2では、熱間圧延での圧延開始温度、終了温度、パス間時間、パス数および圧下率を規定し、さらに熱延板焼鈍温度、冷延板焼鈍温度を規定することにより、加工性に優れる2相ステンレス鋼を製造する方法を提案している。さらに特許文献3では主相がフェライト相でありオーステナイト相と2相組織を有するステンレス鋼を用いて、オーステナイト相のTRIP現象によって引張破断伸びを高めた技術が記載されている。特許文献4ではオーステナイト相の安定性を規定し、引張伸びを高める方法が述べられている。特許文献5においてはオーステナイト相の分率ならびにオーステナイト相中のC、N量を規定し、引張試験における全伸びを高める技術が示されている。また、フェライト・オーステナイト系ステンレス鋼の中には、近年の省資源化を反映しNi量を低減し比較的安価なNやMnでそのオーステナイト相のバランスをとり、延性と省資源化の両立を図った鋼(省合金)が特許文献6に記載されている。
しかし、特許文献1の場合、熱延板焼鈍を(T−100)℃以上(T:フェライト単相となる温度)と高温で行うため熱延板が加熱炉内で軟化し、破断、そして操業がストップするといった危険性を持っているという問題点がある。一方、特許文献2では、加熱時、熱延開始時のフェライト、オーステナイト相比について言及なされておらず、またこの方法によって製造された2相ステンレス鋼板の伸び特性は、原因は定かではないが、ばらつきが大きいという問題点があった。
また、特許文献3では、実施例に示されるように引張破断伸びが34〜42%、特許文献4においては引張破断伸びが最大46%、特許文献5では実施例で最大71%までの破断伸び、特許文献6では引張破断伸び〜46%が記載されているが、これら何れの文献においてもオーステナイト相およびフェライト相それぞれの粒径に関する記載はない。また、一部エリクセン試験を用いた張り出し成形性に関する記載は見受けられるものの液圧バルジ成形のような広範囲に均一な変形をうける成形に関する記述は一切見あたらない。また、成形後の表面性状として凹凸が大きい場合は、その後の研磨工程における製造性を大きく低下させるため、凹凸の小さい表面性状が求められている。
特開昭60−59017号 特開平8−41594号 特開平10−219407号公報 特開平11−71643号公報 特開2006−169622号公報 WO2002/27056
2相ステンレス鋼の加工性を向上させるための従来技術は、熱間圧延条件やその後の焼鈍条件に着目した技術とオーステナイト相の加工誘起変態の活用である。これら従来技術では、引張試験における伸びが高くても実際のプレス加工では、2相を形成するγ/α各相の加工特性の違いから張り出し加工性が低く、特に広範囲の加工においては加工品表面の凹凸が大きいため研磨性の低下が顕著となる問題があった。したがって、一般的なプレス成形に対して、2相ステンレス鋼を広く活用していくためには、このような課題を克服する必要がある。
そこで本発明者らは、特に2相ステンレス鋼のプレス成形時に求められる材料の変形挙動を詳細に解析し、各相の粒径を制御することにより応力集中を緩和する方法を明確化することが重要と考え、高延性で張り出し成形性に優れ、かつ、成形後の表面性状に優れる安価な2相ステンレス鋼およびそれを製造する技術を提供することを課題とする。
本発明者らは、従来技術における上記課題を解決するために、プレス成形時に求められる材料の変形挙動と各相の変形差に着目し、鋭意研究した結果、各相の粒径をコントロールすることにより、常温での延性が高く張り出し成形性に優れ、かつ、成形性後の表面性状に優れる2相ステンレス鋼が得られるとの知見を得た。
そして、2相ステンレス鋼板の張り出し成形性を向上させるため、2相ステンレス鋼の成分組成に基づき、ミクロ組織、引張特性、液圧バルジ試験および液圧バルジ試験後の表面性状の影響をラボ試験により鋭意検討を重ねた結果、優れた張り出し成形性と加工後の表面性状が良好な2相ステンレス鋼として、各相の粒径とそのサイズ比の組み合わせがあることを見出し、本発明を完成した。
本発明の要旨は、次の通りである。
(1) 質量%で、
C:0.001〜0.03%、
Si:0.01〜2.0%、
Mn:0.1〜3.0%、
P:0.045%以下、
S:0.005%以下、
Cr:19.0〜25.0%、
Ni:1.0〜5.0%、
Mo:0.05〜0.5%、
Cu:0.05〜2.0%、
B:0.0001〜0.01%、
N:0.06〜0.25%
を含み、かつ
Sn:0.02〜0.3%、
Nb:0.05〜0.2%、
Ti:0.05〜0.2%のいずれか少なくとも1種を含有し、残部はFeおよび不可避的不純物からなり、フェライト相の粒径が10μm以上25μm以下、かつ、オーステナイト相の粒径が6μm以上15μm以下であることを特徴とする張り出し加工性に優れる2相ステンレス鋼。
(2) 質量%で、
Ca:0.003%以下、
Mg:0.003%以下、
Zr:0.5%以下、
Co:0.2%以下、
REM:0.01%以下
のいずれか少なくとも1種を含有することを特徴とする上記(1)に記載の2相ステンレス鋼。
(3) JIS−Z2201の機械試験で、破断伸びが33%以上であることを特徴とする張り出し加工性に優れることを特徴とする上記(1)または(2)に記載の2相ステンレス鋼。
(4) φ100mmの液圧バルジ試験において、破断限界成形高さが35mm以上である上記(1)乃至(3)のいずれかに記載の張り出し加工性に優れる2相ステンレス鋼。
(5) 上記(1)または(2)に記載の成分組成からなる2相ステンレス鋼板の冷間圧延の工程において、冷間圧延を実施する際の板温度が100〜200℃の範囲内、総冷間圧延率が80%未満であることを特徴とする(1)乃至(4)のいずれかに記載の張り出し加工性に優れる2相ステンレス鋼の製造方法。
(6) 上記(1)または(2)に記載の成分組成からなるスラブに熱間圧延を行ない、得られた熱延板を焼鈍し、その後、上記(5)に記載の冷間圧延を行い、さらに冷延板焼鈍を行うことを特徴とする上記(1)乃至(4)のいずれかに記載の張り出し加工性に優れた2相ステンレス鋼の製造方法。
本発明によれば、張り出し加工性に優れた2相ステンレス鋼を安価に製造することができる。しかも、本発明方法に従って製造した2相ステンレス鋼板については、これまで不可能であった形状の加工を行うことができるようになり、加工工程が簡易にできるため大幅なコストダウンを図ることができる。
各相の結晶粒径と破断伸びの関係を示した図である 各冷延率における冷延温度と破断伸びの関係を示した図である
以下本発明を詳細に説明する。
本発明の目的とした効果を得るには、ミクロ組織を構成するフェライト相およびオーステナイト相のそれぞれの粒径を一定の大きさ以上に制御する必要がある。2相ステンレス鋼は、熱処理温度により安定な相分率が異なる。さらに、再結晶開始温度も異なることから熱処理温度の変更のみによる組織制御は困難である。したがって、冷間圧延により加工歪みを導入した加工熱処理による組織制御が重要な方法であるが、フェライト相とオーステナイト相それぞれの硬度に差が大きく、省合金の組成を有する本発明の組成では軟質なフェライト相へ加工歪みが過度に導入されることから、冷延圧延率が高くなるほどフェライト相は微細化傾向を示す。
フェライト相とオーステナイト相からなる2相ステンレス鋼では、加工にともなう変形過程において各相の変形を補間しつつボイドの生成を抑制するか、もしくは、生成したボイドを成長させないことが重要である。ここで、フェライト相とオーステナイト相それぞれの延性を比較すると一般的にフェライト相の方が低延性であることから、フェライト相の変形能を向上させることが重要となる。さらに、フェライト相のみを粗大化させるとフェライト相とオーステナイト相の硬度差を拡大することとなるため、オーステナイト相の粗大軟質化も必要となる。図1は、各相の結晶粒径と破断伸びの関係を示した図である。横軸はEBSD法によって測定した鋼中のフェライト相(○印)とオーステナイト相(△印)の結晶粒径を示しており、縦軸は各結晶粒径に対応した破断伸びの値を示している。したがって、1つの伸び値に対して、フェライト相の粒径とオーステナイト相の粒径がそれぞれ存在している。図1から明らかなようにフェライト相の粒径が10μm以上(●印)であり、かつ、オーステナイト相の粒径が6μm以上(▲印)となった場合に、安定して破断伸び33%を達成することが可能となる。一方、フェライト相とオーステナイト相は板厚方向に層状の組織形態を呈している。ここで、各相の粒径測定はEBSD法により測定した。粒径の測定条件は、測定倍率2000倍で0.2μmステップの条件とし、得られたデータをTSL社OIM解析ソフトにより方位差15°以上を結晶粒界として1つの粒径を設定し円相当径を算出した。得られた円相当径を算術平均によって求めた値を結晶粒径とした。したがって、結晶粒径を粗大化するためには、それぞれの相が分断し散在する形態が必要となる。しかし、加工熱処理を実施する際に層状に形成された組織を分断し成長するには、多大なエネルギーが必要であり、製造コスト等を考慮するとフェライト相は25μm、オーステナイト相は15μm程度が上限となる。なお、図1の試験方法は、実施例に記載した。図1で破断伸び33%以上となるのは、実施例表1のNo.1〜15の鋼である。
破断伸びの影響が顕著となる成型方法として、液圧バルジ試験がある。φ160mmの円形ブランクシートに高さ2mmのロックビード付き金型を用い、クッション圧37tonの条件で張り出し加工性の評価を実施した。その結果、破断伸びが33%を超えるとφ100mmの液圧バルジ試験においても、成形限界高さが35mmを超えることが分かったので、一般的な2相ステンレス鋼のみならず高純フェライト系ステンレス鋼よりも高位な値を示すと理解される。したがって、破断伸び33%以上および成形限界高さ35mm以上とした。ここで、結晶粒径の粗大化には組織形態および製造条件による上限が存在するため、その影響は破断伸びや液圧バルジの成型限界高さにも反映され、破断伸び50%以下、成型限界高さ40mmが上限となる。
フェライト相およびオーステナイト相それぞれの粒径を制御するためには、冷間加工を開始する前の板温度を上昇させ、フェライト相とオーステナイト相がともに軟質化し硬度の差を低下させることが有効であることが分かった。冷間圧延温度を上昇させると加工歪みの導入が軽減され、再結晶核の軽減につながるため、粗粒化を達成することが可能となることを見出した。図2は、各冷延率における冷延温度(冷間圧延開始温度/℃)と破断伸びの関係を示した図である。図1と同様に試験方法および試験材の組成は実施例に記載した。試験材は実施例の鋼No.1である。冷間圧延温度の上昇および冷間圧延率の減少にともない破断伸びが増加している。尚、冷延に用いた素材はラボ溶解により作製した鋳塊を1200℃に加熱し、熱間圧延により5mmtとした後1050℃で溶体化処理を実施した。また、冷延板の板厚は1.0mmtとし、最終熱処理温度は1050℃とした。冷間圧延温度が100℃未満の場合、加工歪みの導入が著しい。また、総冷間圧延率が80%を超えると冷間圧延温度を100℃以上としても、加工歪みの導入が抑制されず破断伸びが低下する。一方、冷間圧延温度が200℃を超えると冷間圧延に必要な潤滑剤の効果が低減し、ロール焼き付き等の表面性状に課題が生じる。なお、前記冷間圧延温度は140〜180℃の範囲が好ましい。
以下に、本発明において好ましい2相ステンレス鋼の成分組成について詳しく説明する。なお、ここで、成分についての「%」は質量%を意味する。
C:0.001〜0.03%
Cは、ステンレス鋼の耐食性を低下させる元素であるばかりでなく、冷間圧延に際し硬化を招いて、その後の加工等を困難にする。従って、Cは、0.03%以下、好ましくは0.02%以下とする。但し、過度の低減は精錬コストの増加に繋がるため、下限を0.001%とした。
Si:0.01〜2.0%
Siは、耐食性の向上を図る上で非常に有効な元素として知られているが、σ相の析出を促進し、脆化の原因ともなる。従って、Siは、2.0%以下、好ましくは0.5〜1.0%の範囲内とする。但し、過度の低減は精錬コストの増加に繋がるため、下限を0.01%とした。
Mn:0.1〜3.0%
Mnは、溶解、精錬時に脱酸元素として作用するが、あまり多量に含有させると耐食性の劣化を招くため、Mnは、3.0%以下、好ましくは、0.5〜2.0%とする。但し、過度の低減は精錬コストの増加に繋がるため、下限を0.1%とした。
P:0.045%以下
Pは、耐食性に有害な元素であるため少ないほど良い。しかし、過度に含有量を低減するには特殊な製錬技術を要し製造コストアップにつながるため、Pは、0.045%以下に制御する必要がある。
S:0.005%以下
Sは、フェライト−オーステナイトの粒界に析出して熱間加工性を劣化させ、また、耐食性にも悪影響を及ぼす元素であるので、低いほど良い。とくに、このS量が0.005%を超えるとその影響が顕著になるので、Sは、0.005%以下とする。好ましくは、0.002%以下とする。
Cr:19.0〜25.0%
Crは、耐食性向上に寄与するフェライト形成元素の1つであり、かつσ相構成元素でもある。Cr含有量が19.0%未満では、耐食性が不足し、一方、Cr含有量が25.0%を超えると、硬化により伸びを減少させるとともに靭性を劣化させる。従って、Crは、19.0〜25.0%、好ましくは、20.0〜22.0%とする。
Ni:1.0〜5.0%
Niは、オーステナイト形成元素であり、1.0%未満になると、他のフェライト形成元素やオーステナイト形成元素によってγ相比率を調整すると多量のN含有が必要となり、気泡や硬化を招く。一方、5.0%を超えると、逆に必要以上のγ相比率となるばかりでなく、大幅なコストの上昇を招く。従って、Niは、1.0〜5.0%、好ましくは1.5〜2.5%とする。
Mo:0.05〜0.5%
Moは、耐孔食性や耐隙間腐食性などの耐食性の向上に、また固溶強化にも寄与する元素である。このMo含有量が0.05%未満では、添加の効果がなく、一方、0.5%を超えると硬化にともなう延性の低下および靭性を劣化させ、製造コストの上昇を招く。従って、Moは、0.05〜0.5%、好ましくは、0.08〜 0.2%とする。
Cu:0.05〜2.0%
Cuは、耐食性の向上に寄与する元素であるが、Cu含有量が0.05%未満では、添加の効果がなく、2.0%を超えて添加すると熱間加工性を劣化が著しい。従って、Cu含有量は0.05〜2.0%、好ましくは0.05〜1.0%とする。
B:0.0001〜0.01%
Bは、微量の添加で合金の粒界に存在し、熱間加工性を向上させる元素である。しかし同時に、粒界腐食などの耐食性も劣化させる元素でもある。従って、Bの含有量は、0.0001〜0.01%、好ましくは0.001〜0.005%以下とする。
N:0.06〜0.25%
Nは、Cと同様にオーステナイト形成元素であり、そのためN含有量は、他のフェライト形成元素との兼ね合いのもとでの組成から定める必要がある。またこのNは、耐孔食性を向上させる効果もあり、Nの含有量は少なくとも、0.06%は必要である。しかし、0.25%を超えると熱間加工性を悪化させるため、0.06〜0.25%、好ましくは0.08〜0.18%とする。
Nb:0.05〜0.2%、Ti:0.05〜0.2%
Nb、Tiはともにフェライト相における安定化元素であり、耐局部腐食性の向上に有効な元素である。しかし、0.05%以下の添加では効果はなく、一方0.2%超えると多量の析出物が析出するため靭性の劣化により、熱間加工性を劣化させるほか、製造コストの面で不利となる。従って、NbとTiの添加量は、いずれも0.05〜0.2%、好ましくは0.08〜015%とする。
Sn:0.02〜0.3%
Snはフェライト相における固溶強化元素であり、微量の添加によりフェライト相を硬化させ、オーステナイト相との強度差を減少させることに有効な元素である。この効果を得るためには0.02%の含有が必要である。一方、オーステナイト相の熱間加工性を著しく低下させる元素でもあり、0.3%を超えて含有すると製造性が著しく低下する。好ましくは、0.05〜0.15%である。
Ca:0.003%以下、Mg:0.003%以下
Caは脱硫、脱酸のために若干含有されることがある。但し、0.003%超の含有によって熱間加工割れが生じやすくなり、また耐食性が低下するため、これを上限とした。安定して効果を得るためには、0.0005%以上が望ましい。Mgは、脱酸だけでなく、凝固組織を微細化する効果を持つ。これらの効果を安定して発揮するためには、0.0005%以上の含有が望ましい。また、0.003%超の含有は製鋼工程でのコスト増加をもたらすため、これを上限とした。
Zr:0.5%以下
Zrは、耐食性を向上させる上で、必要に応じて0.5%以下含有させることができる。安定した効果が得られるには、Zrを0.05%以上含有させることが好ましい。
Co:0.2%以下
Coは、二次加工性と靭性を向上させる上で、必要に応じて0.2%以下含有させることができる。安定した効果が得られるには、Coを0.02%以上含有させることが好ましい。
REM:0.01%以下
REMは、脱酸効果等を有するので精練上有用な元素であり、必要に応じて0.01%以下含有させることができる。安定した効果が得られるには、REMを0.001%以上含有させることが好ましい。
なお、ここに記載の成分以外の残部はFeおよび不可避的不純物である。
次に、本発明の製造方法について説明する。
本発明の張り出し加工性に優れる2相ステンレス鋼の製造方法では、冷間圧延を実施する際の板温度が100〜200℃の範囲内、総冷間圧延率が80%未満とすることが重要である。
すなわち、冷間圧延温度が100℃未満の場合、加工歪みの導入が著しい。また、総冷間圧延率が80%を超えると冷間圧延温度を100℃以上としても、加工歪みの導入が抑制されず破断伸びが低下するので、総冷間圧延率が80%未満とした。一方、冷間圧延温度が200℃を超えると冷間圧延に必要な潤滑剤の効果が低減し、ロール焼き付き等の表面性状に課題が生じるので、冷間圧延を実施する際の板温度を100〜200℃の範囲内
とした。
また、本発明の張り出し加工性に優れる2相ステンレス鋼は、本発明の成分組成を有する2相ステンレス鋼のスラブを熱間圧延し、得られた熱延板を焼鈍し、その後、上記に記載の冷間圧延を行い、さらに冷延板焼鈍を行って製造する。
具体的には、本発明の成分組成を有する2相ステンレス鋼のスラブを1150〜1250℃(1200℃は実施例)に加熱後熱間圧延し、得られた熱延板を1050〜1100℃で焼鈍し、その後、上記に記載の冷間圧延を行い、さらに1000〜1100℃(1050℃は実施例)で冷延板焼鈍を実施する。
スラブ加熱温度は熱間圧延時の変形抵抗に影響するため、高温で実施することが望ましいが、高温化に伴いフェライト相の比率が上昇し著しい軟化が生じると疵等の課題が生じる。同様に熱延板焼鈍の高温化は疵の発生原因となるため、再結晶が進み軟化が生じる限界温度での熱処理が必要となる。対して、冷延板焼鈍温度は、板厚が薄く剛性が低下するため温度上昇を抑制する必要がある。これらの条件を適正化することも、本発明の張り出し加工性に優れる2相ステンレス鋼を製造する上で必要である。
以下実施例に基づいて本発明の効果を説明する。
表1に示す成分組成を有する2相ステンレス鋼のラボ鋳塊を、1200℃に加熱した後、熱間圧延を行い5mmtとし、その後1050℃で熱延板焼鈍、引き続き冷間圧延を行い1050℃で冷延板焼鈍により板厚1.0mmの冷延板を得た。冷間圧延時の温度条件は表2に示している。冷間圧延時の温度制御は冷延機入り側近傍に恒温炉を設置し、板温が所定の温度になることを接触式温度計により確認することとした。板温が狙い温度に対し±5℃の範囲であれば、冷間圧延を実施した。伸び(%)の測定値は、JIS−Z2201に規定された13号B試験片を用いて圧延方向と直角方向に機械試験を行った数値である。液圧バルジ試験は、φ100mmで2mm高さのロックビードを有する金型を用いクッション圧を37tonとして、破断する高さを測定している。また、各相の粒径測定はEBSD法により測定した。粒径の測定条件は、測定倍率2000倍で0.2μmステップの条件とし、得られたデータをTSL社OIM解析ソフトにより解析し、算出した。方位差15°以上を結晶粒界として1つの粒界を設定し円相当径を算出した。得られた円相当径を算術平均によって求めた値を結晶粒径とした。それぞれ得られた結果を表2にあわせて示す。この表2に示す結果から明らかなように、本発明によって製造された2相ステンレス鋼(鋼No.1〜5、7〜18)は、試験No.1〜5、7〜18に示すように、本発明の要件を満たしていない比較例(試験No.19〜43)に比べ、伸びおよび張り出し加工性が改善されていることがわかった。つまり、本発明方法の適用により、張り出し加工性に優れる2相ステンレス鋼の製造が可能である。
すなわち、試験No.19〜22は、本発明の鋼成分の要件は満たしているが、フェライト相の粒径、オーステナイト相の粒径、および、冷間圧延を実施する際の板温度(冷間圧延温度)、総冷間圧延率のいずれかの要件が本発明範囲外であり、伸び(%)及びバルジ破断高さが劣っていた。また、試験No.19〜22は、本発明の鋼成分の要件は満たしておらず、冷間圧延温度)、総冷間圧延率及びフェライト相の粒径、オーステナイト相の粒径のいずれかが本発明外であり、伸び(%)及びバルジ破断高さが劣っていた。
Figure 0005887179
Figure 0005887179

Claims (6)

  1. 質量%で、
    C:0.001〜0.03%、
    Si:0.01〜2.0%、
    Mn:0.1〜3.0%、
    P:0.045%以下、
    S:0.005%以下、
    Cr:19.0〜25.0%、
    Ni:1.0〜5.0%、
    Mo:0.05〜0.5%、
    Cu:0.05〜2.0%、
    B:0.0001〜0.01%、
    N:0.06〜0.25%
    を含み、かつ
    Sn:0.02〜0.3%、
    Nb:0.05〜0.2%、
    Ti:0.05〜0.2%
    のいずれか少なくとも1種を含有し、残部はFeおよび不可避的不純物からなり、フェライト相の粒径が10μm以上25μm以下、かつ、オーステナイト相の粒径が6μm以上15μm以下であることを特徴とする張り出し加工性に優れる2相ステンレス鋼。
  2. 質量%で、
    Ca:0.003%以下、
    Mg:0.003%以下、
    Zr:0.5%以下、
    Co:0.2%以下、
    REM:0.01%以下
    のいずれか少なくとも1種を含有することを特徴とする請求項1に記載の2相ステンレス鋼。
  3. JIS−Z2201の機械試験で、破断伸びが33%以上であることを特徴とする張り出し加工性に優れることを特徴とする請求項1または2に記載の2相ステンレス鋼。
  4. φ100mmの液圧バルジ試験において、破断限界成形高さが35mm以上である請求項1乃至3のいずれかに記載の張り出し加工性に優れる2相ステンレス鋼。
  5. 請求項1または2に記載の成分組成からなる2相ステンレス鋼板の冷間圧延の工程において、冷間圧延を実施する際の板温度が100〜200℃の範囲内、総冷間圧延率が80%未満であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の張り出し加工性に優れる2相ステンレス鋼の製造方法。
  6. 請求項1または2に記載の成分組成からなるスラブに熱間圧延を行ない、得られた熱延板を焼鈍し、その後、請求項5に記載の冷間圧延を行い、さらに冷延板焼鈍を行うことを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の張り出し加工性に優れた2相ステンレス鋼の製造方法。
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