JP5884190B2 - 加工性に優れた高強度マルテンサイト−フェライト系ステンレス厚鋼板およびその製造方法 - Google Patents

加工性に優れた高強度マルテンサイト−フェライト系ステンレス厚鋼板およびその製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、加工性に優れた高強度マルテンサイト系ステンレス厚鋼板およびその製造方法に関する。
ステンレス鋼は、その金属組織から、SUS410に代表されるマルテンサイト系ステンレス鋼、SUS430に代表されるフェライト系ステンレス鋼、SUS304に代表されるオーステナイト系ステンレス鋼、SUS329に代表される2相ステンレス鋼、SUS630に代表される析出硬化型ステンレス鋼などに大別される。
このような各種ステンレス鋼のなかで、一般的な腐食環境での耐食性に優れることから、オーステナイト系ステンレス鋼のSUS304(18Cr−8Ni)やSUS316(18Cr−10Ni−2Mo)が多く使用されている。
一方、マルテンサイト系ステンレス鋼であるSUS410は、オーステナイト系ステンレス鋼に比べてCr含有量が少なく、しかもNiを含有しないため格段に安価で、耐食性も、オーステナイト系ステンレス鋼に比べて劣るものの、約13%程度のCr含有量であることから、通常の大気環境や没水環境であれば全く問題とならない。
また、高強度という特性も持ち合わせていることから、高強度を必要とする構造部材(例えば、バルブ、シャフト、蒸気タービン翼、ジェットエンジン部品等)には適した材料である。ただし、マルテンサイト系ステンレス鋼は、高硬度であるマルテンサイト組織を主組織とするため、材料全体として高硬度で、加工性に劣ることが問題視されていた。
特許文献1には、主成分としてCが0.025重量%以下、Crが11〜17重量%、Niが4.5〜7.0重量%を含み、さらに、Ceq=C+N+0.017Ni+0.015Mo≦0.13の成分組成の鋼を焼入れした、低硬度マルテンサイト系ステンレス鋼が開示されている。
特許文献2には、主成分としてCが0.005〜0.035重量%、Crが10.0〜13.5重量%、Moが1.0〜2.5重量%、Cuが1.0〜3.5重量%を含む鋼を、熱間圧延終了後、オフライン熱処理によって、Ac3以上〜1000℃で焼入れ処理した後、600℃〜Ac1以下の温度で最終焼鈍する技術が開示されている。
一方、非特許文献1〜3には、Cが約0.33重量%と高C量で、Crが約13重量%、Niが約0.2重量%を含んでいるマルテンサイト系ステンレス鋼を対象に、熱間圧延・加工ならびに圧延・加工後のオンライン熱処理による軟化傾向が検討されている。
これら非特許文献には、低温高圧下率圧延および冷却速度が遅いほど、オーステナイトがフェライト変態する促進効果が大きく、軟化に寄与し、さらに、冷却停止温度をMs点より高くして、冷却停止後、800℃まで昇温すると、軟化することが報告されている。
特開平9−291344 特開平8−100236
鉄と鋼、Vol.69(1983)、No.5、p.306 鉄と鋼、Vol.69(1983)、No.13、p.320 鉄と鋼、Vol.70(1984)、No.5、p.268
特許文献1は、Ceqを低く抑えて、焼入れマルテンサイト組織の硬度を低下させるが、得られる硬度はHV275程度で、加工性を向上させるためには不十分である。特許文献2は、オフラインで熱処理を行うため、製造負荷が大きく、さらに生産性も低下する。
非特許文献1〜3記載の鋼はC含有量が高いため、スラブ加熱段階や圧延段階での温度域での組織はオーステナイト単相で、加工性を向上させるため当該温度域での組織を変えた場合の製造条件を示唆するものではない。
本発明は、加工性に優れた高強度マルテンサイト系ステンレス厚鋼板を製造負荷が小さく、さらに生産性が高く製造する製造方法および高強度マルテンサイト系ステンレス厚鋼板を提供することを目的とする。
発明者等は、上記課題を解決するため、鋭意検討し、以下の知見を得た。
1.鋼板の組織をマルテンサイト相とフェライト相の2相組織とすることで、良好な加工性が達成される。
2.そのため、スラブ加熱温度や熱間圧延の開始時点からマルテンサイト相とフェライト相の2相組織が得られるように、成分系におけるC含有量やその他の成分を適宜調整するとともに、Cr含有量を、耐食性を劣化させないように11.50〜13.50%とする。
3.上記2による成分組成の鋼で熱間圧延を800℃以上で行い、熱間圧延後の加速冷却の停止温度をMs点以下とすると、焼戻し処理により著しく軟化して加工性が良好となる。
図1は、富士電波工業(株)製サーメックマスターZを用いた高温一軸圧縮試験によって、上記2による成分組成の鋼の冷却過程時の変態挙動を示し、図1(a)は850℃で熱間加工後の変態挙動、図1(b)は熱間加工後の冷却停止温度をMs点以上、Ms点以下とした鋼のそれぞれを焼戻し温度である680℃に再加熱後、冷却した場合の変態挙動を示す。
図1(a)より、冷却停止温度が400℃の場合は、冷却停止温度はMs点以上となり、冷却停止温度が300℃の場合は、冷却停止温度がMs点以下となる。図1(b)より熱間加工後の冷却停止温度を400℃(Ms点以上)とした鋼を680℃に再加熱し、室温まで空冷した場合、マルテンサイト変態が生じている。再加熱時には、熱間加工後における未変態オーステナイトへのCの分配が生じ、その後の冷却時にマルテンサイト変態して(図2(b)にミクロ組織を示す)、硬さは高くなる。
一方、熱間加工後の冷却停止温度を300℃(Ms点以下)とした鋼では、再加熱後の冷却過程でマルテンサイト変態せず、熱間加工後に生成したマルテンサイトが、再加熱で焼戻され、フェライトとセメンタイトに分解され(図2(a)にミクロ組織を示す)、硬さは低くなる。
図3に、熱間加工後の冷却停止温度を400℃(Ms点以上)とし、その後、680℃に再加熱し、空冷した場合と、熱間加工後の冷却停止温度を300℃(Ms点以下)とし、その後、680℃に再加熱し、空冷した場合について、硬さに及ぼす熱間加工温度の影響を調べた結果を示す。
図において、実線は、熱間加工後の冷却停止温度を300℃(Ms点以下)として、熱間加工温度を変化させた場合の硬さの変化を示し、点線は、熱間加工後の冷却停止温度を400℃(Ms点以上)として、熱間加工温度を変化させた場合の硬さの変化を示す。
図より、熱間加工後の冷却停止温度を300℃(Ms点以下)とし、その後、680℃に再加熱し、空冷した場合の硬さは、いずれの熱間加工温度でも、冷却停止温度を400℃とした場合より低いこと、および熱間加工後の冷却停止温度を300℃(Ms点以下)とした場合は、熱間加工温度が800℃未満になると、硬さが上昇するようになることが認められる。800℃未満の低温で加工する場合、フェライト組織が加工硬化するためと考えられる。
本発明は上記知見に加え、種々の検討を重ねて完成されたもので、すなわち、本発明は、
1.成分組成が、質量%で、C:0.030〜0.050%、Si:0.15〜0.50%、Mn:0.20〜0.50%、P:0.030%以下、S:0.012%以下、Cr:11.50〜13.50%、O:0.0080%以下、N:0.010〜0.045%、残部がFeおよび不可避的不純物で、鋼板の表裏面表層から板厚深さ方向1mmの範囲の硬度の平均値がHV≦200、板厚の1/4位置と1/2位置の硬度の平均値がHV≦210で、マルテンサイト組織の硬度がHV≦400であることを特徴とする加工性に優れた高強度マルテンサイト系ステンレス厚鋼板。
2.成分組成が、更に、質量%で、Ni:0.60%以下、Cu:0.50%以下、Nb:0.050%以下、V:0.050%以下、B:0.0010%以下、Al:0.010%以下の中から選ばれる1種または2種以上を含有することを特徴とする1に記載の加工性に優れた高強度マルテンサイト系ステンレス厚鋼板。
3.1または2に記載の成分組成を有する鋼を、1050〜1250℃に加熱し、850℃以上の圧延終了温度で熱間圧延した後、5℃/s以上の冷却速度でMs点以下まで加速冷却を行い、冷却停止後、直ちに1.0℃/s以上の昇温速度でAc1変態点以下まで急速加熱後、空冷することを特徴とする1または2記載の加工性に優れた高強度マルテンサイト系ステンレス厚鋼板の製造方法。
4.3に記載の製造方法で製造された1または2に記載の加工性に優れた高強度マルテンサイト系ステンレス厚鋼板。
本発明によれば、優れた加工性を有した高強度マルテンサイト系ステンレス厚鋼板およびその製造方法を得ることができ、産業上極めて有用である。
高温一軸圧縮試験による変態挙動結果を示し、(a)は熱間加工後の冷却過程における変態挙動、(b)は、熱間加工−冷却−再加熱後の冷却過程における変態挙動を示す図。 熱間加工−冷却−再加熱後のミクロ組織を示し、(a)は熱間加工後、300℃で冷却停止し、再加熱後、室温まで空冷した場合のミクロ組織、(b)は熱間加工後、400℃で冷却停止し、再加熱後、室温まで空冷した場合のミクロ組織を示す図。 熱間加工−冷却後の硬度と熱間加工温度の関係を示す図
本発明では、成分組成、鋼板の板厚方向の硬さ分布、およびマルテンサイト組織の硬さを規定する。
1.成分組成
各元素の%は質量%を意味する。
C:0.030〜0.050%
Cは、マルテンサイト相の硬さを増加させる元素で、高強度とするため、0.030%以上とする。0.050%を超える過剰な添加は加工性を低下させ、溶接熱影響部の割れ感受性を増大し、溶接熱影響部の延性や靭性を劣化させる。このため、本発明では0.030〜0.050%の範囲に限定した。
Si:0.15〜0.50%
Siは製鋼時の脱酸のために添加される有効な元素であり、また、強度確保に必要な成分であるため、0.15%以上の含有が必要である。一方、過剰のSiの添加は、靭性、加工性の低下を引き起こすため、上限は0.50%とした。なお、好ましくは、0.15〜0.35%である。
Mn:0.20〜0.50%
Mnは、鋼の強度を高めるが、同時に加工性を低下させ、更にMnSを形成することで耐食性を低下させる元素である。このため、本発明では0.20〜0.50%の範囲に限定した。好ましくは、0.25〜0.45%である。
P:0.030%以下
Pは熱間加工性、加工性、靭性を劣化させるともに、耐食性に対し有害な元素であり、本発明ではできるだけ低減するのが望ましい。特に含有量が0.030%を超えると、その影響が顕著となるため、Pは0.030%以下に限定した。
S:0.012%以下
SはMnと結合しMnSを形成する。MnSは初期発銹の起点となる。また、Sは結晶粒界に偏析して粒界を脆化させる有害な元素であり、本発明ではできるだけ低減するのが望ましい。特に、含有量が0.012%を超えると、その影響が顕著となるため、Sは0.012%以下に限定した。
Cr:11.50〜13.50%
Crは、耐食性を向上させる有効な元素であるが、11.50%未満の含有では十分な耐食性が確保できない。一方、Crはフェライト相安定元素であり、13.50%を超える含有は、オーステナイト相の安定性が低下し、焼入れ時に所定量のマルテンサイト相を確保できなくなり、強度が低下する。このため、本発明では11.50〜13.50%の範囲に限定した。なお、耐食性と加工性の両立という観点からは、12.50〜13.50%の範囲が望ましい。
O:0.0080%以下
Oは、不可避的不純物であり、その量の上限を規定する。Oは粗大で靭性に悪影響を及ぼす介在物の生成の原因となるため、0.0080%以下とする。0.0070%以下とすることが望ましい。
N:0.010〜0.045%
Nは、Cと同様で、マルテンサイト相の硬さを増加させ、強度を向上させるため、0.010%以上とする。一方、0.045%を超える過剰な添加は加工性を低下させる原因となる。また、過剰添加は、溶接熱影響部の割れ感受性を増大し、溶接熱影響部の延性や靭性を劣化させる原因となる。このため、本発明では0.010〜0.045%の範囲に限定した。
以上が本発明の基本成分組成で、残部Feおよび不可避的不純物である。更に、特性を向上させる場合、上記成分に加えて、Ni、Cu、Nb、V、B、Alの1種または2種以上を含有する。
Ni:0.60%以下
Niは、延性、靭性を向上させる場合に含有できる。しかし、0.60%を超える含有は、曲げ加工性を劣化させる。このため、含有させる場合は、0.60%以下とする。
Cu:0.50%以下
Cuは、耐食性を向上させる場合に含有できる。しかし、0.50%を超える含有は、鋼材の脆化、とくに熱間割れ感受性を増大し、また、溶接性を阻害することがある。このため、含有させる場合は、0.50%以下とする。
Nb:0.050%以下
Nbは、炭窒化物を形成し、組織を微細化する作用を有し、鋼材の加工性を向上させる場合に含有できる。しかし、0.050%を超える過剰な含有は、溶接部の靭性や加工性を低下させる。このため、含有させる場合は、0.050%以下とする。
V:0.050%以下
Vは、Nbと同様で、炭窒化物を形成し、組織を微細化する作用を有し、また鋼材の加工性を向上させる場合に含有させることができる。しかし、0.050%を超える過剰な含有は、溶接部の靭性や加工性を低下させる。このため、含有させる場合は、0.050%以下とする。
B:0.0010%以下
Bは、焼入れ性向上に有効に作用するが、0.0010%を超える含有は鋼材の硬さを過剰に増加させ、加工性、靭性を劣化させる。このため、含有させる場合は、0.0010%以下とする。
Al:0.010%以下
Alは、脱酸剤として有効な元素であり、鋼中酸素の低減のために0.010%以下含有することができる。0.010%を超える含有は、酸化物量が増大し加工性を劣化させ、また靭性を劣化させる。このため、含有させる場合は、0.0010%以下、より好ましくは、0.005%以下とする。
2.鋼板の板厚方向の硬さ分布
本発明では、加工性を向上させるため、鋼板の表裏面表層から板厚深さ方向1mmの範囲の硬度の平均値をHV≦200、板厚の1/4位置、1/2位置の硬度の平均値を平均硬度とし、HV≦210とする。
表面硬度がHV200以下であれば、全般の加工において問題とならない。一方、硬度が低すぎると構造物等の強度自体が低下してしまうため、平均硬度をHV210以下とする。HVは荷重10kgfでのヴィッカース硬度とする。
3.マルテンサイト組織の硬度
本発明鋼のミクロ組織はマルテンサイト組織とフェライト組織の2相組織である。板厚方向の平均硬度は、マルテンサイト組織の硬度に左右される。そのため、優れた加工性とするため、マルテンサイト組織の硬度をHV≦400とする。HVは荷重5gfでのヴィッカース硬度とする。
本発明鋼は以下の製造条件にて製造可能である。説明において、加熱温度、圧延終了温度、冷却終了温度および再加熱温度等の温度は鋼板の平均温度とする。平均温度は、スラブもしくは鋼板の表面温度より、板厚、熱伝導率等のパラメータを考慮して、計算により求めたものとする。また、冷却速度は、熱間圧延終了後、冷却終了温度(300℃以下)まで冷却に必要な温度差をその冷却を行うのに要した時間で割った平均冷却速度とする。
また、昇温速度は、冷却後、再加熱温度(650〜820℃)までの加熱に必要な温度差を再加熱に要した時間で割った平均昇温速度とする。
上述した成分組成を有する鋼を、転炉、電気炉等の溶製手段で常法により溶製し、連続鋳造法または造塊〜分塊法等で常法によりスラブ等の鋼素材とする。溶製方法、鋳造法については上記した方法に限定されるものではない。スラブ加熱後、所望の形状に圧延し、冷却後、オンラインでの誘導加熱によって再加熱を行う。以下、各製造条件について詳しく説明する。
スラブ加熱温度:1050〜1250℃
本発明の成分系では、スラブ加熱の通常の温度範囲ではオーステナイトとフェライトの2相状態となり、加熱温度によりフェライトとオーステナイトの分率が変化する。加熱温度1000℃の時が最もフェライト分率が少ない。軟化を達成するためには、フェライト分率を高めたいために加熱温度の下限値は1050℃とした。加熱温度を高めすぎると、スラブたれの問題があるため、上限温度は1250℃とした。
圧延終了温度:850℃以上
圧延終了温度が850℃未満では、圧延終了時にフェライト組織が加工硬化し、鋼板となった場合の硬度が増加して加工性を妨げる要因となる。そのため、圧延終了温度の下限を850℃以上とした。より好ましくは900℃以上である。
熱間圧延後の加速冷却
熱間圧延終了後、直ちに加速冷却を実施する。冷却停止温度をMs点以下とすると、マルテンサイト組織となり、その後の再加熱後で焼戻され、軟化する。本発明鋼の場合、Ms点以下とは350℃以下である。未変態オーステナイトを完全に消滅させるため、Mf点以下の200℃以下とすることが好ましい。Ms点は、予備試験により求めておく。冷却速度は、生産性を確保するため、5℃/s以上とする。なお、Ms点はオーステナイトからマルテンサイト変態が始まる温度、Mf点は残留しているオーステナイトが全てマルテンサイトに変態完了する温度を意味する。
加速冷却後の再加熱処理
Ms点以下まで加速冷却した後、焼戻しのため再加熱処理を行う。オンラインでの誘導加熱によって直ちに再加熱を行うことが望ましい。再加熱温度は650℃以上、Ac1点未満とすることで、マルテンサイト組織が十分に焼戻され、軟化する。Ac1点以上とすると、逆変態が起こり、新たにオーステナイトが生成するため、上限温度は、820℃以下とする。生産性も考え、再加熱温度の範囲は好ましくは650〜750℃とする。昇温速度は1.0℃未満では、目的の再加熱温度に達するまでに長時間を要し製造効率が悪化するため、1.0℃/s以上とする。
表1に示す成分組成の鋼を連続鋳造法によりスラブとし、板厚20mm、30mmの厚鋼板を製造した。加熱したスラブを熱間圧延により圧延した後、直ちに水冷型の加速冷却設備を用いて冷却を行い、直ちに、誘導加熱炉を用いて再加熱を行った。誘導加熱炉は加速冷却設備と同一ライン上に設置した。表2に製造条件を示す。
製造した鋼板の機械的性質を測定した。引張強度、耐力、一様伸びは、圧延方向に直角方向の全厚引張試験片を2本採取し、その平均値で評価した。本発明範囲は、引張強度:440MPa以上、耐力:205MPa以上、一様伸び:20%以上とした。一様伸びが20%以上の鋼板の場合、加工性に優れる。製造した鋼板の硬度は荷重10kgfでのHV硬度で評価した。板厚断面に対して試験を行い、板厚表裏面表層から板厚深さ方向1mmの範囲の硬度の平均値を表面硬度、板厚の1/4位置、1/2位置の硬度の平均値を平均硬度として評価した。マルテンサイト組織の硬度はマイクロビッカース硬度計で荷重5gfで測定した。
表3に、表1の発明例のA1鋼種の鋼を表2の種々の製造条件で製造した鋼板の機械的性質結果を示す。表4に、表2の発明例のa1条件で、表1の各鋼種から製造した鋼板の機械的性質結果を示す。実施例No.1〜5(表3)と実施例No.11〜17(表4)は本発明の目標を十分に満足する機械的性質を有していた。
比較例No.6〜10(表3)は、製造条件のb1〜b5が本発明の範囲外のため(表2)、目標の機械的性質が得られなかった。比較例No.18〜20(表4)は、B1〜B3の鋼種成分が本発明の範囲外のため(表1)、目標の機械的性質が得られなかった。

Claims (2)

  1. 量%で、C:0.030〜0.050%、Si:0.15〜0.50%、Mn:0.20〜0.50%、P:0.030%以下、S:0.012%以下、Cr:11.50〜13.50%、O:0.0080%以下、N:0.010〜0.045%を含有し、更に、Ni:0.08〜0.60%、Cu:0.01〜0.50%、Nb:0.004〜0.050%、V:0.021〜0.050%、B:0.0001〜0.0010%、Al:0.001〜0.010%の中から選ばれる1種または2種以上を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる成分組成を有し、鋼板の表裏面表層から板厚深さ方向1mmの範囲の硬度の平均値がHV≦200、板厚の1/4位置と1/2位置の硬度の平均値がHV≦210で、マルテンサイト組織の硬度がHV≦400であることを特徴とする加工性に優れた高強度マルテンサイト−フェライト系ステンレス厚鋼板。
  2. 請求項に記載の成分組成を有する鋼を、1050〜1250℃に加熱し、850℃以上の圧延終了温度で熱間圧延した後、5℃/s以上の冷却速度でMs点以下まで加速冷却を行い、冷却停止後、直ちに1.0℃/s以上の昇温速度で650℃以上820℃以下まで急速加熱後、空冷することを特徴とする請求項1に記載の加工性に優れた高強度マルテンサイト−フェライト系ステンレス厚鋼板の製造方法。
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