JP5881886B1 - 電炉ダストからの鉄および亜鉛の回収方法およびその装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】本発明は、酸化鉄と酸化亜鉛を含有する電炉ダストから還元鉄を製造する際に発生する金属亜鉛蒸気を含有する還元処理ガスに着目し、プロセス上の観点からもエネルギー効率の観点からも効率的に亜鉛を回収可能な還元鉄の製造方法およびその装置を提案することを課題とする。【解決手段】本発明は、酸化鉄と酸化亜鉛を含む電炉ダストと炭材とバインダーを混合し成型して含炭成型体を製造する含炭成型体製造ステップと、前記含炭成型体を内熱式ロータリーキルンで加熱する予熱ステップと、前記予熱ステップで加熱した含炭成型体を、密閉された外熱式ロータリーキルンでさらに加熱して還元鉄を製造する還元処理ステップと、前記還元処理ステップにて発生した還元処理ガスから亜鉛を回収する亜鉛回収ステップを有することを特徴とする。【選択図】図1

Description

本発明は、酸化鉄と酸化亜鉛を含有する電炉ダスト(電気炉製鋼プロセスにおいて発生する粉塵)から鉄(還元鉄)を製造し、かつその還元処理にて発生するガス(還元処理ガス)中に含まれている金属亜鉛を回収する、電炉ダストからの鉄および亜鉛の回収方法およびその装置に関するものである。
近年亜鉛価格の高騰により、亜鉛の有効利用が求められており、亜鉛を多量に含有する製鉄ダストからの回収が注目されている。製鉄ダスト、特に電気炉製鋼プロセスで発生する粉塵(電炉ダスト)の発生原単位は電気炉での粗鋼生産量の1.8%程度であり、日本国内の電炉ダストの発生量は1999年で約52万トン、2013年では約44万トン程度と推定されている。
通常、電気炉(電炉)製鋼プロセスは、鉄スクラップを原料とし、亜鉛めっき鋼板のスクラップが大量に投入される。そのため、電炉ダスト中には平均して25%程度の亜鉛が含有されている。この亜鉛を回収するための各種の取り組みがなされている。2013年には発生量の約80%が亜鉛回収業で中間処理されており、残りの約20%は薬注処理等の無害化処理後に管理型処分場や遮断型処分場で埋め立て処分されている。
電炉ダストから金属亜鉛を回収する方法は、ウエルツ法とISP(Imperial Smelting Process)法を組合せた方法が提案されている(非特許文献1および2)。例えば、非特許文献1には、ウエルツ法により製鋼煙灰から亜鉛の原料である粗酸化亜鉛(ZnO)を製造する方法が記載されている。また、非特許文献2には、ウエルツ法で回収された粗酸化亜鉛(ZnO)をISP法で最終処理して金属亜鉛として回収する方法が記載されている。非特許文献1に開示されている工程(ウエルツ法)を簡単に説明すると、電炉ダストに粉コークスを混合し、ロータリーキルン(非特許文献1では内熱式ロータリーキルン)に装入し、ロータリーキルン内で1200℃に加熱する。この結果、装入物はロータリーキルン内を転動しながら移動し、この移動中に電炉ダスト中の酸化亜鉛と酸化鉄が炭素により還元される。亜鉛は金属亜鉛として揮発したのち排ガス中の酸素により再酸化され粗酸化亜鉛(ZnO)粉となる。粗酸化亜鉛粉は、ダストチャンバー・電気集塵機などで捕集され、回収される。一方、酸化鉄は金属鉄を含むクリンカー(塊)としてロータリーキルン下流側から排出され、回収される。
ウエルツ法で回収された粗酸化亜鉛は亜鉛品位が60%程度である。電炉ダストからの脱亜鉛率(亜鉛回収率)は60%〜70%程度しかなく、残りの30〜40%の亜鉛はクリンカーに含まれている。
また、最近は回転炉床法(RHF法)により電炉ダストの還元処理を行う例が出てきた。RHFはブリケットにより処理するため、ウエルツ法よりは、若干回収率が高くなる。
得られた粗酸化亜鉛(ZnO)は、ISP法で亜鉛として回収される。ISP法による亜鉛精錬は大別して焼結工程、溶鉱工程、精錬工程から成っている。
焼結工程では、主原料の亜鉛・鉛精鉱(硫化鉱)とウエルツ法で回収した粗酸化亜鉛を溶剤とともに所定割合で混合・造粒し、焼結機で脱硫・焼結して焼結鉱とする。
得られた焼結鉱を800℃に予熱された塊コークスと共に溶鉱炉に層状に装入し、羽口より950℃の熱風を送風する。焼結鉱中の亜鉛は炉内で還元され蒸発し、約8%の亜鉛濃度でCO、COガスと共に溶鉱炉炉頂から排出される。亜鉛を含む排出ガスは、鉛スプラッシュ・コンデンサーに入る。当該コンデンサーでは鉛浴中に浸漬されたローターにより撹拌・飛散された鉛滴で、溶鉱炉排ガスが550℃まで急冷され、亜鉛蒸気は凝縮し鉛滴中に溶解する。
亜鉛が溶解した鉛を冷却樋で440℃に冷却し、温度による溶解度差を利用して亜鉛を浮上析出させ分離する。これがいわゆる溶鉱炉亜鉛で、亜鉛が分離された鉛は再び前記コンデンサーに戻される。
精製工程では、前記溶鉱炉亜鉛は連続樋にて鋳造炉に送られ、ここで温度精錬による脱鉛と脱鉄を行い、亜鉛純度が98.5%以上の蒸留亜鉛として製品化される。
杉本裕史、滝澤寛、上田浩「曹鉄メタル(株)における製鋼煙灰処理」Journalof MMIJ Vol.123(2007)No.12 第205・206回西山記念技術講座「スラグ・ダストの利材化と新しい展開」平成23年6月 160頁
電炉ダストから還元鉄を製造しつつ、金属亜鉛を回収する方法としてウエルツ法とISP法の組合せには次の欠点がある。すなわち、ウエルツ法では大量(300kg/電炉ダスト1t当たり)の炭材を投入して酸化鉄と酸化亜鉛を還元する。この際、金属亜鉛蒸気として蒸発させたにも拘わらず、内熱キルン内に存在する燃焼排ガス中の酸素により金属亜鉛は再酸化され粗酸化亜鉛になってしまう。結果的に電炉ダスト中の亜鉛換算で25%程度の粗酸化亜鉛を60%程度に単純濃縮しているだけのことになってしまっている。
ISP法については、溶鉱炉に加えて焼結機と熱風炉などの大型設備が必要であるだけでなく、高価な塊コークスを使わざるを得ないといった経済的な問題もある。また、現在のウエルツ法とISP法の組合せでは、酸化亜鉛を二度にわたって還元しているためプロセスが複雑化しているため、エネルギーの無駄が生じており、さらに設備も複雑化する。このため、これらの方法に代わり、電炉ダストから還元鉄を製造する際に、省プロセス、省エネルギー、高効率に、亜鉛を回収することができる方法が求められている。
そこで、本発明は、酸化鉄と酸化亜鉛を含有する電炉ダストから還元鉄を製造する際に発生する金属亜鉛蒸気を含有する還元処理ガスに着目し、プロセス上の観点からもエネルギー効率の観点からも効率的に亜鉛を回収可能な、還元鉄の製造と亜鉛の回収方法およびその装置を提案することを課題とする。
本発明者らは、前記課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、以下の事項を見出した。
(a)大気を遮断した閉空間内で還元処理を行うことにより、無酸素雰囲気で還元処理ができ、還元鉄と亜鉛が再酸化されずに金属亜鉛蒸気を含んだ還元処理ガス(主にCO,COと金属亜鉛蒸気で構成されている)と固形の還元鉄を得ることができることを見出した。酸化鉄を炭素で還元するためには950℃以上の温度が必要であり、1000℃以上であれば安定した還元処理ができる。一方、大気圧下での亜鉛の沸点は907℃であるので、950℃以上であれば、酸化鉄も酸化亜鉛も還元することができる。このような高温処理のできる閉空間を有する装置として、例えば外熱式ロータリーキルンがある。
(b)電炉ダストは水分や塩素を含んでおり、事前にこれらを除去する必要がある。そのため、電炉ダストを還元処理する前に予熱・乾燥をするとよいことを見出した。予熱・乾燥時に発生する塩化物や水分が還元処理ガスに混入しないように、予熱・乾燥と還元処理を別個のプロセスで行うとよい。予熱・乾燥は、還元反応が発生する温度(907℃)より低温であることが望ましい。
例えば、現在ウエルツ法で使用している内熱式ロータリーキルンを、電炉ダストの予熱・乾燥に使用することができる。
内熱式ロータリーキルンで加熱する場合、高々900℃程度までにしか加熱しないため、ダムリング(原料中の脈石成分によるキルン内面の付着物)が形成されない。このため、従来のウェルツ法で問題となっていたダムリングに起因する問題を解消することができる。
(c)還元処理ガス中には金属亜鉛蒸気が含まれているため、還元処理ガスから直接亜鉛を回収する方法を検討した。その結果、亜鉛の回収方法は、既存の鉛スプラッシュ・コンデンサーでもよいが、前述したように設備が大がかりとなり、効率が悪く、取扱い性も悪い。そこで、還元処理ガスを直接冷却し、亜鉛を凝縮させ、溶融亜鉛として回収するとよいことを見出した。
還元処理ガスの直接冷却には、水冷したチューブ(パイプ)などの冷却チューブが適しているが、金属製(例えばCu、Al、Fe、など)だと亜鉛と反応するため使用できない。そこで、セラミックス製チューブ(パイプ)、例えば熱伝導性の良好なセラミックス製(例えばSiC製)チューブを適用することにより、亜鉛が反応することなく回収できることを見出した。また、溶融亜鉛とぬれにくいことからもSiCが好ましいことを知見した。
本発明者らは、さらに亜鉛回収率を上げるために検討を重ねた。その結果、冷却チューブ間を通り抜けチューブ表面に接触しなかったガスは、亜鉛蒸気や溶融亜鉛微粒子を含んだままになっている。そこで、冷却チューブの下流側にセラミックス製ペレットを配置して亜鉛を凝縮・凝集し、回収することができることを見出した。
即ち、亜鉛蒸気や溶融亜鉛微粒子を含んだガスが、セラミックス製ペレットの間隙を通過する際に、ペレット表面に接触し、亜鉛が凝縮・凝集され分離されるからである。この時、凝縮・凝集し溶融亜鉛となったものは、液滴となって下方へ滴下し回収される。
セラミックス・ペレットの材質は、冷却チューブと同様で、炭化珪素(SiC)が好ましい。
(d)還元処理におけるエネルギー効率向上の観点から、亜鉛回収後の還元処理ガスを外熱式ロータリーキルンの燃焼バーナーの燃料に再利用できることを見出した。還元処理ガスは主にCO(一酸化炭素)とCO(二酸化炭素)で構成されており、燃料としてCOを使用することができる。
さらに、外熱式ロータリーキルンの外燃バーナーの燃焼ガス(主にCO)は約1000℃のガス温であるため、その燃焼ガスを予熱・乾燥のための内熱式ロータリーキルンの内部ガスに導入することにより、燃焼ガスの持つ顕熱を有効利用することができる。
もちろん、還元処理ガスを、外熱式ロータリーキルンの燃焼バーナーではなく、予熱・乾燥ステップの内熱式ロータリーキルンの燃焼用ガスとして導入することもできる。
一方、金属亜鉛蒸気を含む還元処理ガスを冷却する過程で、還元処理ガス中にCO2が存在すると、金属亜鉛蒸気がCO2で酸化され、粗酸化亜鉛(ZnO)になり、金属亜鉛の回収ができないという問題があることが分かった。これは、CO/CO2比が低いほど、亜鉛が金属蒸気として存在できる平衡温度が高くなるからである。
平均的な電炉ダストによる含炭成型体の還元処理ガス中には約20%のCO2が含まれている。発明者らが鋭意検討したところ、還元処理ガス中のCO2濃度を3%以下に下げれば、金属亜鉛蒸気の酸化が抑制され、金属亜鉛が効率よく回収できることを見出した。本発明者らの研究結果では、還元処理ガス中のCO2濃度が3%以下であれば、金属亜鉛回収率(電炉ダスト中に含有される亜鉛量に対する回収亜鉛量)は90%以上確保できることが分かった。
そこで、本発明者らは、CO2をCOに変換する改質(以下、本明細書でCO2改質といい、その処理を行うことをCO2改質処理という。)を行い、還元処理ガス中のCO2濃度を低減させることに取り組んだ。例えば、外熱ロータリーキルン内に粉状炭材を装入し、ロータリーキルン内で撹拌させCO2ガスと接触させることによりCO2をCOに改質(CO2+C→2CO)できることを見出した。
本発明は、上記知見を基に成されたものであり、その要旨とするところは以下のとおりである。
(1)
酸化鉄と酸化亜鉛を含む電炉ダスト、炭材、バインダーおよび水を混合し成型して含炭成型体を製造する含炭成型体製造ステップと、
前記含炭成型体を加熱し、乾燥させる予熱ステップと、
前記予熱ステップで加熱し乾燥した含炭成型体を、閉空間内でさらに加熱して酸化鉄を還元し還元鉄にする還元処理ステップと、
前記還元処理ステップにて発生した還元処理ガスから亜鉛を回収する亜鉛回収ステップを有し、
前記亜鉛回収ステップが、内部を冷却した炭化珪素製チューブと還元処理ガスを接触させ、還元処理ガスを冷却して亜鉛を凝縮分離することにより回収することを特徴とする電炉ダストからの鉄および亜鉛の回収方法。
(2)
前記予熱ステップでの含炭成型体の加熱温度が740℃以上907℃以下であることを特徴とする(1)に記載の電炉ダストからの鉄および亜鉛の回収方法。
(3)
前記還元処理ステップでの含炭成型体の加熱温度が980℃以上1150℃以下であることを特徴とする(1)または(2)に記載の電炉ダストからの鉄および亜鉛の回収方法。
(4)
前記予熱ステップを内熱式ロータリーキルンで処理し、前記還元処理ステップを外熱式ロータリーキルンで処理することを特徴とする(1)〜(3)のいずれか1つに記載の電炉ダストからの鉄および亜鉛の回収方法。
(5)
前記還元処理ステップにおいて、CO2改質処理を行い、還元処理ガス中のCO2濃度を3%以下にすることを特徴とする(1)〜(4)のいずれか1つに記載の電炉ダストからの鉄および亜鉛の回収方法。
(6)前記CO2改質処理が、前記還元処理ステップにおいて粉状炭材を前記閉空間内に装入することを特徴とする(5)に記載の電炉ダストからの鉄および亜鉛の回収方法。
(7)
前記亜鉛回収ステップにて亜鉛を回収した後の還元処理ガスを、前記還元処理ステップの加熱用燃料にすることを特徴とする(1)〜(6)のいずれか1つに記載の電炉ダストからの鉄および亜鉛の回収方法
(8
前記亜鉛回収ステップにおいて、炭化珪素製チューブと還元処理ガスを接触させた後、さらに炭化珪素製ペレットと還元処理ガスを接触させることを特徴とする(1)〜(7)のいずれか1つに記載の電炉ダストからの鉄および亜鉛の回収方法。

酸化鉄と酸化亜鉛を含む電炉ダストから鉄および亜鉛を回収する装置において、
酸化鉄と酸化亜鉛を含む電炉ダスト、炭材、バインダーおよび水を混合し成型して含炭成型体を製造する含炭成型体製造手段と、
前記含炭成型体を加熱し乾燥させる予熱手段と、
前記予熱設備で加熱した含炭成型体をさらに加熱して還元鉄を製造する還元処理手段と、
前記還元処理手段で発生した還元処理ガスから亜鉛を回収する亜鉛回収手段を有し、
前記亜鉛回収手段が内部を冷却した炭化珪素製チューブにより還元処理ガスを冷却し、亜鉛を凝縮させて分離回収する亜鉛凝縮器を有することを特徴とする電炉ダストからの鉄および亜鉛の回収装置。
(1
前記予熱手段が内熱式ロータリーキルンであり、前記還元処理手段が外熱式ロータリーキルンであることを特徴とする()に記載の電炉ダストからの鉄および亜鉛の回収装置。
(1
前記外熱式ロータリーキルンに、粉状炭材装入装置を設置したことを特徴とする(1)に記載の電炉ダストからの鉄および亜鉛の回収装置。
(1
前記亜鉛回収手段において亜鉛を回収した後の還元処理ガスを前記還元処理手段の加熱用燃料にするための還元処理ガス再利用手段を有することを特徴とする()〜(1)のいずれか1つに記載の電炉ダストからの鉄および亜鉛の回収装置
(13
前記亜鉛凝縮器中に、1本または2本以上の前記炭化珪素製チューブが還元処理ガスの流れ方向に直交していることを特徴とする(9)〜(12)のいずれか1つに記載の電炉ダストからの鉄および亜鉛の回収装置。
(1
前記炭化珪素製チューブが水平に配置されていることを特徴とする(1)に記載の電炉ダストからの鉄および亜鉛の回収装置。
15
前記亜鉛凝縮器において、炭化珪素製チューブの下流側に炭化珪素製ペレットを配置して、さらに亜鉛を凝縮させて分離回収することを特徴とする()〜(1)のいずれか1つに記載の電炉ダストからの鉄および亜鉛の回収装置。
本発明によれば、酸化鉄と酸化亜鉛を有する電炉ダストから高品位の還元鉄を製造するだけでなく、高品位の金属亜鉛を効率よく、またコンパクトな設備により回収することができる。さらに、排出されるガスの再利用により、エネルギー効率を高めることができる。すなわち、以下の効果が得られる。
(a)電炉ダストから金属亜鉛を回収する技術の現在の主流であるウエルツ法とISP法という2工程の組合せが、本発明により1工程で済むことになるため、大幅な省プロセス、省エネルギーが可能となる。
(b)前述のとおり2工程を1工程で済ますことができること、および重装備のISP法の投資を回避できることから、本発明により設備投資も大幅に圧縮することが可能となる。
(c)本発明で製造される還元鉄(DRI)の金属化率は、従来のRHFよりも高く、条件を調整すれば95%と高いため、電炉メーカーでは鉄スクラップ代替として使用可能であり、電炉メーカーへの完全リサイクルが可能となる。
(d)ウエルツ法の問題点の一つであるダムリングの生成を回避できることから安定操業が可能となる。
(e)本発明によると、電炉ダストから還元鉄を製造する方法と金属亜鉛を回収する方法とを一貫システムとして提供できる。
(f)さらに還元処理ガスをCO2改質処理を行うことにより、効率よく金属亜鉛を回収することができる。
本発明に係る電炉ダストからの鉄および亜鉛の回収方法・設備の概念図である。 本発明に係る含炭成型体製造ステップの概念図である。 本発明に係る試験装置の概念図である。 本発明に係る亜鉛回収装置の概念図である。図4(a)は、冷却チューブを配置した例である。図4(b)は冷却チューブにさらにセラミック・ペレット充填層を配置した例である。 含炭成型体の還元処理温度と滞留時間(還元処理時間)の関係を示す図である。
以下に、本発明の詳細について図1に示す概念図を例にして説明する。なお、以下に示す実施態様は一例であり、本発明の実施態様はこれに限定されることはない。
[含炭成型体製造ステップ]
含炭成型体製造ステップにおいては、酸化鉄と酸化亜鉛を含む電炉ダスト10に、還元剤となる炭素材(炭材)、粒子間をつなぐ役目をもつバインダー材、そして水を混合し、成型して、含炭成型体を製造する(図2)。
本発明における還元鉄の原料として、製鉄所等の電気炉式製鋼プロセスで発生するダストである電炉ダストを利用している。電炉ダストは、酸化鉄の含有量も多く再利用のニーズが強い。
また、電気炉においてはスクラップを使用するため、電炉ダストには酸化鉄だけでなく酸化亜鉛も多く含まれている。本発明はこうした酸化鉄だけでなく酸化亜鉛を含有する電炉ダストであれば、その種類は問わない。
これらの電炉ダストは微粉であるため、その扱いが難しい。しかし、微粉であるがためその比表面積(単位重量あたりの表面積)が広くなり、還元反応が進みやすく、脱亜鉛性もよくなる。
そこで、本発明者らは、電炉ダスト粒子の比表面積が大きいまま還元反応性をよくするため、電炉ダストを微粉のまま使用することに着想し、その使用方法について鋭意検討した。その結果、電炉ダストの平均粒径(D50:累積粒径分布において細粒からの累積頻度が50%に相当する粒径)が3.0μm以下であれば、実用上十分な還元反応性を得ることができることを見出した。
既存の電炉ダストの捕集はバグフィルターで行われている。回収された電炉ダストは発塵防止のため疑似粒子(ペレット)化される場合がある。ペレット径は約8mmあるため、ペレットをボールミル等で粉砕し、粒径3.0μm以下にしてから、含炭成型体にするとよい。
電炉ダスト以外にも、製鉄所の転炉で発生する転炉ダストも酸化鉄と酸化亜鉛を含むことから、本発明の対象原料となる。その場合は、転炉ダストの水分が25%程度と高いため、生石灰を配合するなどして水分調整をしてから含炭成型体とすればよい。
炭材は、酸化鉄を金属鉄に還元するための還元剤であり、C当量で0.7〜1.3の範囲となるように添加する。ここで、C当量とは、下記式1、式2に基づく理論炭素量に対する比率である。電炉ダストの酸化鉄が全量Fe2O3であり、酸化亜鉛が全量ZnOとすれば、Fe2O3の1モルを還元して2モルの金属鉄を得るためには3モルのC(炭素)が必要で、ZnOの1モルを還元して1モルの亜鉛を得るためには1モルのCが必要である。これが理論炭素量である。理論炭素量の0.7〜1.3倍のCを添加するという意味である。
Fe2O3 + 3C + ΔH(1) → 2Fe + 3CO ・・・(式1)
ZnO + C + ΔH(2) → Zn + CO ・・・(式2)
上記式1、式2の化学反応はいずれも吸熱反応であり、吸熱量は、それぞれ
ΔH(1)=966×103kcal/t(Fe)、
ΔH(2)=882×103kcal/t(Zn) である。
これらの反応を起こすためには、上記吸熱量に相当する熱量を、外部から加える必要がある。
バインダーは、例えばコーンスターチである。含炭成型体の乾燥後圧潰強度が20kg/cm以上となるように添加する。成型体の乾燥後圧潰強度が20kg/cm未満では、ハンドリングおよびロータリーキルン内での転動により成型体が一部破壊されるからである。
成型体の水分は10%前後となるよう、必要に応じて水を添加して調整することができる。
これらの原料を混合機に投入し、原料を混合する。混合機は、回転式のバッチタイプが通常使用されるが、原料を均一に混合できれば、その方式は特に限定しない。混合後の配合原料は中継槽を経て、押し出し成型機やロール成形機などで成型処理される。成型処理された混合原料体を含炭成型体20と称する。
例えば、電炉ダストと炭材とバインダーに水分を加えて混練し、造粒する。この時、孔の開いたダイスに混練した材料を押し込み、圧力をかけて成型すると、高強度の含炭成型体を得ることができる。電炉ダストや炭材の性状と、添加する水分量、さらにはダイスの孔径、深さ、押し込み圧力などを調整することにより、原料粉に適合した含炭成型体の製造条件が得られる。
含炭成型体の形は、球状または円柱状とすることが一般的であるが、立方体や直方体、もしくは三角柱、およびブリケットなど、その形は限定されない。含炭成型体の大きさは、後の還元処理を考慮して直径10〜30mm程度の球状もしくは直径10〜30mmで長さ10〜30mmの円柱状とするとよい。直径や長さが10mmより小さいと還元処理後の還元鉄が小さくなる。また、10mmより小さいと、表面積の増大に伴いロータリーキルン内での転動に伴う粉化率が上昇し、加えて、還元に伴い約40%も収縮することから還元鉄(DRI)のサイズが小さくなり過ぎ、リサイクル時のハンドリング上の問題が生ずる。また、30mmより大きくすると、粉化率は減少するものの、還元所要時間が増加してしまうため、還元炉内の滞留時間が一定であれば金属化率、脱亜鉛率が低下してしまうという問題が生じるためである。好ましくは直径や長さが10〜30mmにするとよく、さらには15〜25mmにすることが好ましい。
成型体とすることにより、成品としての還元鉄も若干収縮するものの成型体で得られ、そのまま電気炉原料とすることができる。原料の切り出しから、所定の大きさの含炭成形体を選別するまでの一連の工程に要する装置を含炭成型体製造装置11と呼ぶ。含炭成型体製造装置11を形成する各個別の装置は、前述した機能を達成できるものであれば、その態様は特に問わない。
[含炭成型体製造手段]
前述したように、電炉ダスト10を始めとして、炭材、バインダー、水の各原料を混合機に投入し、原料を混合し成型する(図2)。各原料の切り出しから、混合、成型し、成形処理された含炭成型体20を払い出す一連の装置が含炭成型体製造手段(含炭成型単製造装置)11である。
各原料の切り出しは、計量切り出しができるものであれば、その態様は問わない。例えば、振動フィーダなどが適用される。
混合機は、回転式のバッチタイプが通常使用されるが、原料を均一に混合できれば、その方式は特に限定しない。混合後の配合原料は中継槽を経て、押し出し成型機やロール成形機などで成型処理される。
成形機も、所定の形状に成型できればその態様は問わない。前述したように、含炭成型体の形は、球状または円柱状とすることが一般的であるが、立方体や直方体、もしくは三角柱、およびブリケットなど、その形は限定されない。例えば、孔の開いたダイスに混練した材料を押し込み、圧力をかけて成型すると、高強度の含炭成型体を得ることができる。電炉ダストや炭材の性状と、添加する水分量、さらにはダイスの孔径、深さ、押し込み圧力などを調整することにより、原料粉に適合した含炭成型体の製造条件が得られる。
含炭成型体の払い出し装置も、特にその態様は問わない。ただし、含炭成型体を破壊するようなものは避けたほうがよい。
[予熱ステップ]
本発明における予熱ステップとは、含炭成型体製造ステップ11で製造された含炭成型体20を加熱することにより、含炭成型体中に含まれる水分を蒸発させ、塩素(Cl)などの揮発性不純物を除去した含炭成型体を排出するまでの一連の工程を指す。含炭成型体は、電炉ダストを原料としているため、塩素などのいろいろな不純物が混入している。特に塩素などの揮発性不純物は、還元処理後の還元処理ガス中に混入し、設備腐食などの原因となるため、還元処理前に取り除く。また、水分も還元処理ガス中に混入すると、気化した亜鉛の再酸化を助長するため、これを取り除く。
亜鉛の沸点は907℃である。このことから、予熱ステップにおける含炭成型体の加熱温度は907℃以下にするとよい。907℃以上にすると亜鉛が蒸発する可能性が高くなる。亜鉛が蒸発すると、排ガス中に混入し、再酸化されて酸化亜鉛(粗酸化亜鉛)としてダストとして回収され、再利用される。これは、処理の効率性の観点から適当ではない。含炭成型体の加熱温度は、できれば890℃以下にするとよい。実操業における温度のばらつきを考慮すると880℃以下にするとさらによい。
加熱温度の下限は低すぎると、揮発性不純物(特に塩素)を取り除くことができない。通常の電炉ダスト中には、亜鉛の10%は塩化亜鉛(ZnCl2)として存在している。塩化亜鉛の沸点が732℃であるので、予熱温度は740℃以上とするとよい。740℃より低い温度であると、塩化亜鉛が次の還元処理ステップに持ち込まれる可能性が高くなるからである。含炭成型体内の温度バラツキなどを考慮すると、予熱ステップでの含炭成型体の加熱温度は750℃以上が好ましく、780℃以上であればより好ましく、できれば800℃以上とするとよい。
こうして、揮発性不純物除去し、加熱され、乾燥された含炭成型体30は、次の還元処理ステップへ移送される。
[予熱手段]
予熱ステップでは、揮発性不純物や水分除去のための含炭成型体20の予熱・乾燥が目的であるため、特に雰囲気は問わない。したがって、含炭成型体20を加熱できる手段であれば、その態様は問わない。しかし、揮発した塩化亜鉛を冷却し凝集させて回収し、再度原料として使用するため、発生するガスを大気放散させない構造が望ましい。さらに、次工程の還元処理工程へ移送に際し、酸素(大気)の混入を避ける必要があることから、閉空間での処理が好ましい。この観点から、予熱手段22としては内熱式ロータリーキルンを適用することが好ましい。内熱式ロータリーキルンは、ウエルツ法でも適用されているため、含炭成型体のようなペレット状の電炉ダストを加熱することについて実績がある。本発明においては、内熱式ロータリーキルンを用いて含炭成型体を予熱することを例として説明する。
ウエルツ式に代表される内熱式ロータリーキルンでの還元処理の場合、原料中の脈石成分(SiO2やCaO)が、酸化鉄であるFe2O3、およびその還元中間物であるFeOとの間で、以下に示すような低融点物質を形成しやすい。
Fe2O3・CaO:溶融点1206℃
FeO・SiO2 :溶融点1180℃
FeO・CaO :溶融点1105℃
脈石成分の含有量が多い場合や、焼成帯の原料温度が高すぎる場合、燃焼炎(バーナーフレーム)の温度が高すぎる場合、燃焼炎(バーナーフレーム)の形状が広角すぎてロータリーキルン内壁面をなめている場合などに、ロータリーキルン内壁面上に付着物の生成をもたらす。この付着物は、リング状に形成されるのでダムリングと呼ばれる。ダムリングは、ロータリーキルン内における被処理物(原料)の移動を妨げる上に、ダムリングが多量に連続して脱落する場合があり、安定操業の面から好ましくない。しかし、予熱ステップで用いる内熱式ロータリーキルンは、前述したように、高々900℃程度までしか加熱しないため、ダムリングは形成されない。
また、内熱式ロータリーキルンは、その上流側からキルン内のガスを吸引排出するので、揮発性不純物や水分を含む排ガスを速やかにキルン外に排出することができる。
内熱式ロータリーキルン22で予熱・乾燥された含炭成型体30は、キルンから排出され、次工程の還元処理装置へ移送される。内熱式ロータリーキルンからの排出装置23は、還元処理設備への装入装置31と一体として考えることが好ましい。後述するが、還元処理ステップにおいては、その雰囲気中に酸素の混入を極力避ける必要があるため、予熱手段(予熱装置)からの排出装置23、還元処理への装入装置31とも大気を遮断する機能を有することが好ましい。
[還元処理ステップ]
本発明における還元処理ステップとは、予熱ステップで予熱・乾燥された含炭成型体30を、閉空間内に装入し、加熱することにより含炭成型体中の酸化鉄および酸化亜鉛を還元し、鉄および亜鉛(蒸気)にする一連の工程である。還元処理中に大気(特に酸素)が混入すると、せっかく還元した鉄や亜鉛が再酸化するため、大気の混入を遮断した密閉された閉空間で処理することが重要である。
含炭成型体は、電炉ダストを微粉のまま炭材と混合するため、電炉ダストの比表面積が広く、還元剤となる炭材との反応性を高めることができ、還元処理温度を下げることができる。
本発明者らは、本発明に係る含炭成型体を980℃〜1150℃程度に加熱すれば実用上問題ない程度に還元反応が進むことを確認した。実験の結果(表3)から、酸化鉄をC(炭素)自体で還元するためには実用上980℃以上の温度が必要である。したがって、還元処理温度の下限は理想的には980℃である。しかし、含炭成型体内で微粉酸化鉄と炭素との接触状態などの因子も影響するので、還元処理温度は好ましくは1000℃以上であればよい。
還元処理の上限温度は、設備的耐熱性による。例えば、外熱式ロータリーキルンの場合、耐熱鋳鋼製が一般的であるので、その使用上限温度は1200℃である。設備の耐用を考慮して、使用上限温度を1150℃とするとよい。好ましくは1130℃、さらに好ましくは1100℃を上限とするとよい。1100℃程度で還元処理が進むため、従来の回転炉床式還元法(RHF)での1250℃や、ウエルツ法の1200℃に比べて低温化が達成できる。設備的耐熱性が上がれば、当然還元処理温度を上げることができる。
還元処理の処理時間は温度との関係で決まる。本発明者らは、外熱式ロータリーキルンでの実験により、以下の式3で規定される還元処理温度(T℃)と還元処理時間(滞留時間)(H分)の関係であれば、従来のウエルツ法やRHF法と同等またはそれ以上の品質の還元鉄を得ることができることを確認した。
H≧120−0.1T ・・・(式3)
ただし980≦T≦1150
T:含炭成型体の還元処理温度(℃)、
H:含炭成型体の滞留時間(還元処理時間)(分)
言い換えれば、Tは外熱式ロータリーキルン内部での含炭成型体温度(到達温度)であり、Hは外熱式ロータリーキルン内の最少滞留時間(到達温度での滞留時間)ということになる。還元反応は処理温度が高いほど反応が早く進むため短時間で処理できる。しかしながら、含炭成型体の性状が一様であるとは限らない。しかし、設備的耐熱性が向上し1150℃以上の高温処理ができるようになったとしても、ある程度の反応時間を確保する必要があることから、Hは最短でも10分とするとよい。なお、Hの上限は特に限定しないが、あまり長く滞留しても還元率の改善はあまりないので、40分または式3の右辺に10分ほど余裕を持たせればよい。すなわちH=130−0.1Tまたは40のどちらか少ない方とするとよい。
還元鉄の品質指標として、GROSS金属化率を採用し、RHF法のGROSS金属化率60%以上を合格の基準とした。詳細については、後述の実施例にて説明する。
また、酸化鉄の還元処理により発生するガスは、式1、式2からもわかるようにCO(一酸化炭素)ガスである。また、酸化亜鉛の還元処理により発生するガスは、亜鉛蒸気(便宜上Zn(gas)と表記する。)とCOである(式4)。一部のCOガスはCO(二酸化炭素)にもなる。
ZnO + C → Zn(gas) + CO ・・・(式4)
以上のことから、本発明における還元処理ステップで発生するガス(還元処理ガス50)は、COを主体とし、亜鉛蒸気とCOを含む。本発明は、この還元処理ガス50から亜鉛を回収する亜鉛回収ステップを有することが特徴の一つである。
このようにして、含炭成型体から亜鉛を分離し、高金属化率の還元鉄40を固形のまま回収する。その一方で、亜鉛蒸気を含む還元処理ガス50から、次工程の亜鉛回収工程で金属亜鉛60を回収する。
[還元処理手段]
還元処理ステップでは、大気(特に酸素)を遮断した閉空間で加熱し、還元処理を行わなければならない。この制約を具現化できる手段であれば、その態様は特に限定しない。現在、この制約を具現化できる手段として外熱式ロータリーキルン32を適用することができる。
前述したように、発明者らは、含炭成型体にすることにより、980℃〜1150℃程度に加熱すれば実用上問題ない程度に還元反応が進むことを確認した。これは、既存の還元鉄製造装置であるウエルツ法の1200℃や回転炉床式還元法(RHF法)の1250℃に比べて、かなりの低温化が達成できる。この低温化により、従来は使用できなかった外熱式ロータリーキルンを使用することが可能となった。外熱式ロータリーキルンの胴体は遠心鋳造で製造する耐熱鋳鋼製が一般的であり、1200℃程度が使用上の上限である。温度のバラつき等を考慮すると設備保全性の観点から、上限温度は1150℃にするとよく、好ましくは1130℃に、さらに好ましくは1100℃とするとよいとするとよい。当然のことであるが、設備的耐熱性が上がれば、当然還元処理温度を上げることができる。
以下、外熱式ロータリーキルン32を例として、還元処理手段(還元処理装置)の説明を行う。
予熱・乾燥した含炭成型体30を、内熱式ロータリーキルン22から外熱式ロータリーキルン32へ移送・装入する際にも、大気(厳密には酸素)が混入しないようにすることが望ましい。同様に、外熱式ロータリーキルン32から還元鉄を排出するときも、キルン内に大気が入らないよう気密性を維持する必要がある。このように移送・装入装置31(以下、単に装入装置)も排出装置35も、気密性を確保できるものであれば、その態様は限定しない。例えば、2重ダンパーを用いて具現化することができる。
内熱式ロータリーキルン22から排出された含炭成型体30を、ロータリーバルブにより切り出し量を制御し、2重ダンパー(例えば、2つホッパーが上下直列に設置され、各ホッパー下部に開閉式ダンパーが設置されているもの)の上部ホッパーに移送する。2重ダンパーのダンパーを交互に開閉し、移送された含炭成型体を上部ホッパーから下部ホッパーに移送(落下)させる。そして、下部ホッパーを開いて含炭成型体を外熱式ロータリーキルン32内に装入する。この方法で含炭成型体を装入すれば、大気の混入を極力抑制することができる。
外熱式ロータリーキルン32から、還元鉄を排出する際も、同様に、2重ダンパーを適用することにより、キルン内に大気が混入することを抑制することができる。こうして、亜鉛を分離し、高金属化率の還元鉄40を固体のまま回収することができる。
外熱式ロータリーキルン32内の還元処理ガス50は、キルンに接続された配管を経由して、大気に触れることなく次工程の亜鉛回収装置51に導かれる。こうすることにより、気化した亜鉛を再酸化させることなく、亜鉛回収することが可能となる。
[CO2改質処理]
金属亜鉛蒸気を含む還元処理ガスを冷却する過程で、還元処理ガス中にCO2が存在すると、金属亜鉛蒸気がCO2で酸化され粗酸化亜鉛(ZnO)になり、金属亜鉛の回収ができない。これは、CO/CO2比が低いほど(CO2濃度が高いほど)、亜鉛が金属蒸気として存在できる平衡温度が高くなるからである。
例えば、CO/CO2比=4のとき、ZnOの還元(ZnO+CO→Zn+CO2)方向の平衡温度は1200℃程度であり、この温度以上になると酸化亜鉛の還元が進む。酸化物のエネルギー・温度図(エリンガムダイアグラム)によれば、CO/CO2比=10のときの平衡温度は1100℃、CO/CO2比=15のときの平衡温度は1050℃、CO/CO2比=20のときの平衡温度は1010℃、CO/CO2比=100のときの平衡温度は910℃である。
本発明に係る含炭成型体の処理温度は980℃〜1150℃程度であるので、酸化亜鉛(ZnO)の還元を促進するには、CO/CO2比が約30以下であればよい。即ち、CO2濃度で約3%以下であればよい。本発明者らの検討では、還元処理ガス中のCO2濃度が3%以下であれば、金属亜鉛回収率(電炉ダスト中に含有される亜鉛量に対する回収亜鉛量)は90%以上確保できることが分かった。
次に、CO2改質処理の具体的な方法について検討した。CO2改質処理は、還元処理ガス中のCO2をCOに改質するものである。例えば、還元処理ガスを何らかの方法で炭素(C)に接触させ、CO2をCOに改質(CO2+C→2CO)できる。
炭素(C)によるCO2改質処理の具体的方法として、例えば、外熱式ロータリーキルン33に粉状炭材装入装置(粉状炭材を装入する装置)36を設置し、外熱式ロータリーキルン33内に粉状炭材を装入し、それを還元処理ガスに接触させる方法がある。一例として、外熱式ロータリーキルンの内面に突起を付けておき、キルンの回転により、粉状炭材をこの突起に乗せて上部へ持ち上げ、落下させればよい。
その他の例として、例えば、外熱式ロータリーキルンの内部に天然ガス(CH4)を吹き込んでもよい。この時、天然ガス(CH4)と還元処理ガス中のCO2が反応し、COに改質される(CH4+CO2→2CO+2H2)。
CO2改質処理の方法は、上記方法に限定されることはなく、還元処理ガス中のCO2をCOに改質できれば、どのような方法でも構わない。
[亜鉛回収ステップ]
本発明における亜鉛回収ステップとは、還元処理ステップで発生した還元処理ガス50から亜鉛を回収する一連の工程である。ガス中の亜鉛の再酸化を抑止するため、還元処理ガスは大気が混入しないように導くことが必要である。
亜鉛を含むガスから亜鉛を回収する方法については、特に限定しない。還元処理ガスから亜鉛を分離回収する方法は、例えば、鉛スプラッシュ・コンデンサーを適用する方法がある。しかし、設備が大型化し、また回収効率もよくない。そこで発明者らは検討を重ね、還元処理ガスを直接冷却し、亜鉛を凝縮させて溶融亜鉛として回収できることを見出した。これによれば、鉛スプラッッシュ・コンデンサーに比べ設備構成をコンパクトにすることができ、且つ高効率に亜鉛を分離回収することができる。例えば、冷却チューブによりガスを直接冷却すればよい。冷却チューブが金属製(例えば、鋼や銅製)の場合、亜鉛と反応して合金を生成する。したがって、冷却チューブ材質は金属以外がよい。例えば、セラミックスがよい。そこで、発明者らは、熱伝導のよい炭化珪素(SiC)製の冷却チューブにより、還元処理ガスを冷却し、亜鉛を凝縮し回収できることを確認した。
凝縮した亜鉛は、液滴として回収される。亜鉛回収装置下部に溶融亜鉛として貯蔵してもよいし、液滴で滴下している間に冷却して、亜鉛粒として回収してもよい。回収方法は、特に限定しない。
[亜鉛回収手段]
亜鉛回収手段(亜鉛回収装置)は、還元処理ガス中に含まれる亜鉛を分離・回収できる手段であれば、その態様は特に限定されない。例えば、前述したように亜鉛スプラッシュ・コンデンサーを適用してもよい。
しかし、前述したようなガスの直接冷却により亜鉛を凝縮して回収することが、効率性や亜鉛品質の観点から好ましい。この機能を有する手段であれば、その態様は特に限定しない。また、発明者らが見出したように、亜鉛を含む還元処理ガス50を直接冷却し、亜鉛を凝縮させ回収する装置であってもよい。特に、発明者らは、冷却チューブ56を直接ガスに接触させることによりガス中の亜鉛を凝縮する亜鉛凝縮器(亜鉛コンデンサー)が効率的であることを見出した。図4(a)にその概念図を示す。この冷却チューブ56により凝縮した亜鉛は溶融状態のまま落下し、亜鉛凝縮器の下部にたまる。もちろん、凝縮後に落下中に冷却し、亜鉛粒として回収することもできる。
冷却チューブ56は1本または複数本設置し、ガス流れに対し直交するように配置することが好ましい。ガス流れ方向に設置すると、配管上で凝固し固着してしまうからである。また、冷却チューブ56は、水平に配置することが好ましい。水平にしないと、冷却チューブ上で凝縮した溶融亜鉛が、重力により冷却チューブ上を移動し、凝固して固着する可能性があるからである。水平に配置することにより、溶融亜鉛が凝固する前に滴下させることができる。冷却チューブ56を複数本設置する場合、チューブの配置は特に限定されない。冷却効率の観点から設定すればよい。
冷却チューブ間を通り抜け、チューブ表面に接触しないガスは、亜鉛蒸気や溶融亜鉛微粒子を含んだままになっている。このため、亜鉛回収率を上げるため、亜鉛蒸気含有ガスの流れ方向で冷却チューブの下流側に、セラミックス製またはセラミックス・コーティングを施したペレットを複数個配置するとよい(図4(b))。亜鉛蒸気や溶融亜鉛微粒子を含んだガスが、セラミックス製ペレットの間隙を通過する際に、ペレット表面に接触し、亜鉛が凝縮・凝集され分離されるからである。この時、凝縮・凝集し溶融亜鉛となったものは、液滴となって下方へ滴下し回収される。
ペレットの大きさは特に限定しないが、直径5〜10mm程度、高さ5〜10mm程度の円柱形や、直径5〜10mm程度の球形であると扱い易く、適度な空隙を確保することができる。
セラミックスの材質は特に問わないが、冷却チューブと同様に、熱伝導性の良い炭化珪素(SiC)が好ましい。SiCであれば、溶融亜鉛にぬれることもなく、容易に分離回収することができる。
配置するペレットの数は複数(2個以上)であれば特に限定されないが、ガスが万遍なくペレット表面に接触することが望ましいので、ガスが通過する断面を埋めるように充填するとよい。また、ペレットを多重に重ねることにより、よりガスとペレット表面が接触するようになり、亜鉛の回収率が向上する。
還元処理ガス中の亜鉛が再酸化しないように、外熱式ロータリーキルン32から亜鉛回収装置51までのガス導入管は、大気を遮断した気密性の良いものである必要がある。還元処理ガスを吸引するブロワー54は、亜鉛回収装置の下流に設置することが好ましい。亜鉛が分離されているため、ブロワーの羽根(翼)に亜鉛が凝着することがないからである。ブロワーの設備保護の観点から、ブロワー前に集塵機53を配置するとよい。
さらに、 亜鉛含有ガスを冷却する際に、亜鉛含有ガスが金属鉄に接触するとカーボン・デポジション反応(2CO→CO2+C)によってCO2(二酸化炭素)が発生し、このCO2により蒸気亜鉛が再酸化し、粗酸化亜鉛(ZnO)になる。前述したように、一旦粗酸化亜鉛(ZnO)になると金属亜鉛が回収できないため、このカーボン・デポジション反応を抑制することが望ましい。
亜鉛回収装置が鋼で製造されている場合、その内面を被覆し、亜鉛含有ガスが直接鋼と接触させないようにするとよい。被覆は特に限定しないが、例えば塗装をすればよい。塗料は限定しないが、例えば耐熱塗料などがある。また、例えばライニングしてもよい。例えばセラミックス塗料やキャスタブルなどでのライニングなどがある。
以上、電炉ダストから鉄(還元鉄)、亜鉛(還元された亜鉛)を取り出す方法および設備について説明したが、さらに排出されるガスなどの有効利用のために付加することができる方法および設備について説明する。
[還元処理ガス再利用ステップ及び手段]
亜鉛回収後の還元処理ガスは、亜鉛が分離されているので、主にCO(一部CO)で構成されている。もちろん、大気放散しても構わないが、燃料としてのCOを有効活用するとよい。例えば、還元処理手段の加熱手段(例えば、外熱式ロータリーキルン32の燃焼バーナー34)の燃料として利用してもよい。また、例えば、予熱装置22の加熱手段の燃料(例えば、内熱式ロータリーキルンの燃焼ガス)として再利用してもよい。もちろん、他の設備での再利用をしてもよい。
そのためには、還元処理ガス50を精製する必要がある。例えば、ガスの顕熱を回収しガス温度を下げるレキュペレーター52や、ガス中のダスト除去する集塵機53、送風機54、さらにはガス圧力を安定化させるガスホルダー55などを設置するとよい。これらの設備を通したガスを外熱式ロータリーキルンの燃焼バーナー34の燃料として使用することができる。還元処理ガスの精製方法・設備は、特にこの態様に限定されることはなく、ガスの用途に応じて精製方法および設備を適宜選択すればよい。
[その他付帯装置]
予熱ステップにおいて、含炭成型体を加熱・乾燥したのちに発生する排気ガス80中には、前述したように塩化亜鉛や酸化鉄・酸化亜鉛を含んだダストが含まれている。したがって、予熱ステップで発生した排ガス中からこれら成分を分離回収することが望ましい。そのため、例えば、予熱装置(例えば内熱式ロータリーキルン)22から発生した排ガス80を集塵機(バグフィルター)81に通し、塩化亜鉛やダスト84を回収したのち、大気放散するとよい。もちろん排ガスを吸引する送風機82は集塵機の下流に設置するとよい。予熱ステップでの排ガスの用途に応じて、ガス処理方法・設備を適宜選択すればよい。
[実施例1]
以下、本発明について試験プラントでの実施例を説明する。
表1に、試験操業で使用した電炉ダストおよび炭材としての粉コークスの化学成分を示した。数値は質量%を示す。この電炉ダストの粒度分布は、レーザー回折散乱式粒度分布測定装置(マイクロトラック)にて測定し、D50=1.5μm、同じく粉コークスのD50=36.2μmであった。D50とは、累積粒度分布において細粒からの累積頻度が50%に相当する粒径いう。
Figure 0005881886
表2に、試験操業で使用した含炭成型体の原料配合割合と配合原料水分を(含炭成型体水分にほぼ同じ)示す。炭材としての粉コークスをC当量が1.0となるように添加し、水分調整用の水とバインダーとしてのコーンスターチを加え、双腕ニーダーでよく混合した後、半乾式押し出し成型機で底面直径20mmφ×長さ25mmの含炭成型品20を製造した。含炭成型品の生強度(成型直後の強度)は8.7kg/cm,150℃で2時間乾燥した後の乾燥後強度は37.0kg/cmであった。
Figure 0005881886
<試験プラントの設備仕様>
試験プラント全体概念図を図3に示した。処理能力は含炭成型体50dkg(ドライ状態での重量(Kg)を示す。以下同じ。)/hである。基本的構成は図1の実機設備に近いが、外熱式ロータリーキルンの外熱炉は簡便のため電気加熱式としている。内熱式ロータリーキルンの加熱には熱風発生装置(予熱装置用バーナー)を使用した。また、外熱式ロータリーキルンの排ガスは亜鉛回収装置で冷却した後、排ガス燃焼装置でCOガスを燃焼し無害化してから屋外放出する構造とした。
主な設備仕様を以下に示す。
[内熱式ロータリーキルン]
・ステンレス鋼製:内径500mm×長さ4m
・加熱方式:熱風発生装置
[外熱式ロータリーキルン]
・耐熱鋳鋼製:内径300mm×長さ4m、最高使用温度1150℃
・外熱炉:電気加熱式、全長2m
[含炭成型体供給・排出装置]
・内熱式ロータリーキルンへの供給装置:常温型2重ダンパー
・内熱式ロータリーキルンから外熱式ロータリーキルンへの移送装置:高温型水冷ロータリーバルブ直列2台
・外熱式ロータリーキルンからの排出装置:常温型2重ダンパー
[亜鉛回収装置]
・亜鉛回収装置は、正方形断面をもつ縦長の筒状容器であって、鋼板製の外壁と内壁の2重構造になっている。内壁の内側には、20mm厚の断熱材と80mm厚のキャスタブルがこの順に配置されている。また、外壁と内壁とは50mm離れており、それらの間には窒素を流し、還元処理ガス中に空気が混入しないようにした。還元処理ガスが流れる部分は、一辺250mmの正方形断面にした。
・亜鉛回収装置の上部に、冷却チューブとして、内部を水冷した外径30mm、内径20mmのSiCパイプ(SiC:99%)を千鳥状に25本配置した。パイプ上部にパイプと密着するように底辺を切削したSiCの三角柱(長さ25cm)を乗せることで、パイプ上への金属亜鉛の堆積を防止した。
・SiCパイプの加熱冷却に伴う膨張収縮を吸収し、外気を遮断するため、SiCパイプの取り付け部にOリング設置した。
・さらに、外熱式ロータリーキルンから亜鉛回収装置までの配管の内面には、カーボン・デポジション対策として、耐熱塗料を塗布した。また、亜鉛回収装置の内壁の内側面はキャスタブルでライニングしているが、念のため、内壁の内側面にも耐熱塗料を塗布した。
<試験方法>
以下の手順により試験を行った。
(1)内熱式ロータリーキルン22の熱風発生装置24を作動させたのち、内熱式ロータリーキルン22内に装入装置(2重ダンパー)21を経由して、前述した方法により製造した含炭成型体20を50dkg/hの速度で装入した。含炭成型体が予熱・乾燥されて内熱式ロータリーキルン22から排出される時の温度が900℃となるように熱風発生装置24の燃料燃焼量と内熱式ロータリーキルンの回転数を制御した。
(2)外熱式ロータリーキルン32は、外面温度を1050℃になるまで昇温させた。900℃まで加熱された含炭成型体が、装入装置(2台直列水冷ロータリーバルブ)31を経由して外熱式ロータリーキルン32に装入開始されたのちは、外熱炉長2mの間の滞留時間が30分となるように外熱式ロータリーキルンの回転数を調整すると同時に、外熱式ロータリーキルン外面温度が1050℃を維持するよう外熱炉の電力投入量を制御した。
(3)含炭成型体は還元が終了すると還元鉄(DRI)40となる。1050℃の還元鉄は外熱式ロータリーキルン32の排出口に設置された水冷ボックス内で200℃以下まで冷却したのち、排出装置(2重ダンパー)35を経由して外部に排出し回収した。
(4)以上、還元処理温度が1050℃で還元処理時間が30分の場合について説明したが、還元処理温度については950℃から1150℃の間で、還元処理時間については10分から40分の間で種々変更して9水準の試験を実施し、回収したDRIの分析結果を表3に示した。
Figure 0005881886
(5)NET金属化率は還元によって増加した金属化率である。GROSS金属化率は電炉ダスト中にもともとあったM・Fe(金属鉄(メタリックFe))を加えた還元後サンプルの全金属化率である。GROSSとNETの金属化率の定義を式5、式6で示す。以下、T・FeはトータルFe(全鉄分)を示し、M・FeやT・Feの重量%は、含炭成型体に対する重量%を示す。
GROSS金属化率=(還元後のM・Fe(重量%))/(還元後のT・Fe(重量%)) ・・・(式5)
NET金属化率 ={[(還元後のM・Fe(重量%)×還元後の含炭成形体の全重量)−(還元前のM・Fe(重量%)×還元前の含炭成形体の全重量)]/(還元後の全重量)}/(還元後のT・Fe(重量%)) ・・・(式6)
(6)表3には比較のために、電炉ダストをウエルツ法およびRHF法で処理した場合の成績を併記した。含炭成型体を使用するRHF法の方がウエルツ法よりも成績は良好である。RHFで還元処理されたDRIの金属化率は60〜70%で、DRIは全量、鉄源として電気炉でリサイクルされており、また、脱亜鉛率も70〜90%と高い。そこで、RHF並みのGROSS金属化率と脱亜鉛率が得られた試験結果を○で、GROSS金属化率はRHF並みでも脱亜鉛率がRHF以下の試験結果を△で示した。
(7)試験結果から外熱式ロータリーキルン内の還元処理温度T℃と滞留時間(還元処理時間)H分との関係を図5に示した。図5から分かるように還元処理温度T℃と還元処理時間H分との関係が、前記の式3を満足すれば、RHF並みの金属化率が得られることが確認された。また、1050℃で30分間還元処理すれば、95%以上の金属化率と脱亜鉛率が得られることも確認できた。
(8)外熱式ロータリーキルン32内部では、含炭成型体が還元されて、亜鉛蒸気とCOガスおよびCOガスが発生する。この排ガス50を排気ブロア54で吸引し、SiC製水冷パイプを並べた熱交換器(亜鉛回収装置)51に通して500℃に急冷した。この急冷により排ガス中の亜鉛蒸気は500℃の溶融亜鉛として滴下し、亜鉛回収装置下に設置した溶融亜鉛溜に貯留した。貯留した溶融亜鉛60は1時間置きに鋳型に流し込んで回収した。試験No.6で回収した金属亜鉛の分析値を表4に示した。この時の金属亜鉛の回収量は、平均4.8Kg/h(時間)であった。
Figure 0005881886
(9)外熱式ロータリーキルン32の排ガス50を亜鉛回収装置51で急冷した後の500℃の排ガスは排ガス燃焼装置57で過剰空気の元で燃焼され、次いで大量の空気で希釈することで200℃以下に冷却し、更に集塵機(バグフィルター)53で徐塵した後大気に放散した。
以上、一連の試験により、酸化鉄と酸化亜鉛を含む電炉ダストから鉄(還元鉄)と亜鉛(還元亜鉛)を分離回収できることが確認された。
[実施例2]
実施例1と同様の試験装置において、還元処理ガス中のCO2をCOに改質するため、外熱式ロータリーキルン33に粉状炭材装入装置36を設置した。さらに、外熱式ロータリーキルンの内面に突起を設置し、キルンの回転により粉状炭材が内面突起によって上部へ持ち上げられ、そしてキルン内に落下する構造にした。
まず、亜鉛を含まない含炭成型体を準備した。これは微粉鉄鉱石と粉コークスとバインダーを成形して製造した。この亜鉛を含まない含炭成型体を、前記の改造した試験装置に装入した。その後、CO2改質用に粒径1mm以下の粉コークスを粉状炭材装入装置36から装入した。この時の粉コークス装入量は、含炭成型体50d−Kg/h当たり、5d−Kg/hを装入した。
この結果、還元処理ガス中のCO2を比較したところ、粉コークス装入前は20%あったCO2が、粉コークス装入後は3%に低下した。
次に、試験装置の亜鉛回収装置51の冷却チューブ56の下流側(下部)に、SiCセラミックス・ボールを充填した。SiCセラミックス・ボールは直径8mmであり、亜鉛回収装置の断面(250mm四方の断面)に厚さ400mm程度になるよう、SiCセラミックス・ボールを充填した。充填したSiCセラミックス・ボールは、約49000個であった。
前記した還元処理ガス中のCO2のCOへの改質のための改造、および亜鉛回収装置へのSiCセラミックス・ボールの充填を行い、実施例1と同様に、電炉ダストによる含炭成型体を対象とした還元試験を実施した。
その結果、金属亜鉛の回収量は、平均11.1Kg/h(時間)であった。これは電炉ダスト中に含まれる亜鉛の約90%を金属亜鉛として回収できたことを示している。
本発明は、電気炉による製鉄プラントで発生する電炉ダストから還元鉄と亜鉛を分離回収することができることから、電気炉による製鉄業において利用することができる。
10 電炉ダスト
11 含炭成型体製造装置(手段)
20 含炭成型体
21 装入装置
22 予熱装置(内熱式ロータリーキルン)
23 排出装置
24 予熱装置用バーナー(熱風発生装置)
30 予熱・乾燥した含炭成型体
31 装入装置
32 還元処理装置(外熱式ロータリーキルン)
33 還元処理装置の加熱装置
34 燃焼バーナー
35 排出装置
36 粉状炭材装入装置
40 還元鉄
50 還元処理ガス
51 亜鉛回収装置
52 レキュペレーター
53 集塵機
54 送風機
55 ガスホルダー
56 冷却チューブ
57 排ガス燃焼装置
59 セラミック・ペレット充填層
60 亜鉛
70 加熱装置排ガス
80 予熱装置排ガス
81 集塵機
82 送風機
83 煙突
84 ダスト(リサイクル)

Claims (15)

  1. 酸化鉄と酸化亜鉛を含む電炉ダスト、炭材、バインダーおよび水を混合し成型して含炭成型体を製造する含炭成型体製造ステップと、
    前記含炭成型体を加熱し、乾燥させる予熱ステップと、
    前記予熱ステップで加熱し乾燥した含炭成型体を、閉空間内でさらに加熱して酸化鉄を還元し還元鉄にする還元処理ステップと、
    前記還元処理ステップにて発生した還元処理ガスから亜鉛を回収する亜鉛回収ステップを有し、
    前記亜鉛回収ステップが、内部を冷却した炭化珪素製チューブと還元処理ガスを接触させ、還元処理ガスを冷却して亜鉛を凝縮分離することにより回収することを特徴とする電炉ダストからの鉄および亜鉛の回収方法。
  2. 前記予熱ステップでの含炭成型体の加熱温度が740℃以上907℃以下であることを特徴とする請求項1に記載の電炉ダストからの鉄および亜鉛の回収方法。
  3. 前記還元処理ステップでの含炭成型体の加熱温度が980℃以上1150℃以下であることを特徴とする請求項1または2に記載の電炉ダストからの鉄および亜鉛の回収方法。
  4. 前記予熱ステップを内熱式ロータリーキルンで処理し、前記還元処理ステップを外熱式ロータリーキルンで処理することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の電炉ダストからの鉄および亜鉛の回収方法。
  5. 前記還元処理ステップにおいて、CO2改質処理を行い、還元処理ガス中のCO2濃度を3%以下にすることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の電炉ダストからの鉄および亜鉛の回収方法。
  6. 前記CO2改質処理が、前記還元処理ステップにおいて粉状炭材を前記閉空間内に装入することを特徴とする請求項5に記載の電炉ダストからの鉄および亜鉛の回収方法。
  7. 前記亜鉛回収ステップにて亜鉛を回収した後の還元処理ガスを、前記還元処理ステップの加熱用燃料にすることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の電炉ダストからの鉄および亜鉛の回収方法。
  8. 前記亜鉛回収ステップにおいて、炭化珪素製チューブと還元処理ガスを接触させた後、さらに炭化珪素製ペレットと還元処理ガスを接触させることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の電炉ダストからの鉄および亜鉛の回収方法。
  9. 酸化鉄と酸化亜鉛を含む電炉ダストから鉄および亜鉛を回収する装置において、
    酸化鉄と酸化亜鉛を含む電炉ダスト、炭材、バインダーおよび水を混合し成型して含炭成型体を製造する含炭成型体製造手段と、
    前記含炭成型体を加熱し乾燥させる予熱手段と、
    前記予熱設備で加熱した含炭成型体をさらに加熱して還元鉄を製造する還元処理手段と、
    前記還元処理手段で発生した還元処理ガスから亜鉛を回収する亜鉛回収手段を有し、
    前記亜鉛回収手段が内部を冷却した炭化珪素製チューブにより還元処理ガスを冷却し、亜鉛を凝縮させて分離回収する亜鉛凝縮器を有することを特徴とする電炉ダストからの鉄および亜鉛の回収装置。
  10. 前記予熱手段が内熱式ロータリーキルンであり、前記還元処理手段が外熱式ロータリーキルンであることを特徴とする請求項に記載の電炉ダストからの鉄および亜鉛の回収装置。
  11. 前記外熱式ロータリーキルンに、粉状炭材装入装置を設置したことを特徴とする請求項1に記載の電炉ダストからの鉄および亜鉛の回収装置。
  12. 前記亜鉛回収手段において亜鉛を回収した後の還元処理ガスを前記還元処理手段の加熱用燃料にするための還元処理ガス再利用手段を有することを特徴とする請求項〜1のいずれか1項に記載の電炉ダストからの鉄および亜鉛の回収装置。
  13. 前記亜鉛凝縮器中に、1本または2本以上の前記炭化珪素製チューブが還元処理ガスの流れ方向に直交していることを特徴とする請求項9〜12のいずれか1項に記載の電炉ダストからの鉄および亜鉛の回収装置。
  14. 前記炭化珪素製チューブが水平に配置されていることを特徴とする請求項1に記載の電炉ダストからの鉄および亜鉛の回収装置。
  15. 前記亜鉛凝縮器において、炭化珪素製チューブの下流側に炭化珪素製ペレットを配置して、さらに亜鉛を凝縮させて分離回収することを特徴とする請求項〜1のいずれか1項に記載の電炉ダストからの鉄および亜鉛の回収装置。
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