JP7207153B2 - 塊成物 - Google Patents

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Description

本発明は塊成物に関する。
製鉄プロセスで発生するダストまたはスラッジ等の鉄分を含有する鉄含有物は、ペレットまたはブリケット等の塊成物に加工され、製鉄プロセスで再利用することが行われている。
鉄含有物を含む塊成物を作製する方法として、特許文献1では、鉄含有物が配合された原料のpHが10.5未満の場合では、バインダーとしてα澱粉およびデキストリンのうちの少なくともいずれかを用いる。また、当該原料のpHが10.5以上の場合では、バインダーとしてデキストリンを用いる。そして、塊成物の乾燥状態における圧潰強度について評価する方法が提案されている。
特開2018-119178号公報
上述のような従来技術では、塊成物の乾燥状態における圧潰強度については評価しているが、塊成物の湿潤状態における圧潰強度については評価していなかった。そのため、塊成物の湿潤状態における圧潰強度が低い場合では、湿潤状態における塊成物の搬送時等に、塊成物の少なくとも一部が粉化してしまう虞がある。
本発明の一態様は、このような現状に鑑み、塊成物の湿潤状態および乾燥状態いずれの場合においても、取扱い時に粉化しにくい塊成物を実現することを目的とする。
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る塊成物は、バインダーおよび鉄含有物を含む塊成物であって、前記バインダーは有機系バインダーを含み、前記塊成物に含まれる含有水分量が、造粒時に添加する造粒水分量に対して90質量%以上である湿潤状態における圧潰強度が0.15kN以上であり、前記含有水分量が、前記造粒水分量に対して50質量%未満である乾燥状態における圧潰強度が0.50kN以上であり、前記乾燥状態における圧潰強度に対する前記湿潤状態における圧潰強度の比率が0.1以上である。
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る塊成物は、前記鉄含有物の、ブレーン法により求められる比表面積が0.10m/g未満の場合、前記バインダーの、ブレーン法により求められる比表面積が0.10m/gより大きい。
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る塊成物は、前記バインダーが、α澱粉、デキストリンとベントナイトとの混合物および糖蜜とベントナイトとの混合物からなる群から選ばれる少なくとも1つである。
本発明の一態様によれば、湿潤状態および乾燥状態いずれの場合であっても、取扱い時等に粉化しにくい圧潰強度を備えた塊成物が得られる。
本発明の一実施形態に係る塊成物の、湿潤状態における圧潰強度と、鉄含有物のブレーン法により求められる比表面積との関係を示す図である。 本発明の一実施形態に係る塊成物の造粒方法の一例を示す図である。 本発明の一実施例に係る塊成物の圧潰強度を示す図である。 本発明の一実施例に係る塊成物の圧潰強度を示す図である。
以下、本発明の一実施形態に係る塊成物について、図面等を参照して詳細に説明する。なお、以下の記載は発明の趣旨をよりよく理解させるものであり、特に指定のない限り、本発明を限定するものではない。なお、本明細書において特記しない限り、数値範囲を表す「A~B」は、「A以上B以下」を意味する。
<塊成物の概要>
本発明の一実施形態に係る塊成物は、製鉄プロセスで発生する鉄含有物およびバインダーを含み、混練時に水を添加する。
〔鉄含有物〕
鉄含有物は、特に限定されないが、資源の有効活用および環境問題等の観点から、製鉄プロセスで発生する、例えば、ダスト、スラッジ、スケールおよび地金等であってよい。これらの鉄含有物は、単独または複数種を組み合わせて、塊成物の原料として用いることができる。そのため、鉄含有物に含まれる化学組成等は、特に限定されない。
なお、本明細書において地金は、製鋼工程で発生するスラグを磁着物と非磁着物に分別した際の磁着物であることを意図する。また、本明細書においてダスト、スラッジおよびスケールは、集塵機、圧延ラインまたは酸洗ラインで回収される鉄含有物であることを意図する。
ここで、ブレーン法は、JIS R 5201に準拠して測定および算出した。ブレーン法では、当該粒子の細孔および微細な凹凸はほとんど測定されない。そのため、ブレーン法により求められる比表面積によれば、水と、鉄含有物との接触のしやすさを適切に評価できる。
本明細書において、塊成物の湿潤状態とは、塊成物に含まれる含有水分量が、造粒時に添加する造粒水分量に対して90質量%以上である状態を意図する。また、本明細書において、塊成物の乾燥状態とは、塊成物に含まれる含有水分量が、造粒時に添加する造粒水分量に対して50質量%未満である塊成物を意図する。
塊成物の湿潤状態における圧潰強度と、当該塊成物の原料として用いた鉄含有物のブレーン法により求められる比表面積との関係を図1に示す。図1に示すように、塊成物の湿潤状態における圧潰強度は、鉄含有物のブレーン法により求められる比表面積に依存し、鉄含有物のブレーン比表面積が大きくなるにしたがって塊成物の湿潤状態における圧潰強度も大きくなる。
鉄含有物のブレーン比表面積が0.1m/g未満の場合では、塊成物の湿潤状態の圧潰強度が低くなることにより、湿潤状態における塊成物の少なくとも一部が粉化してしまう虞があった。一方、本発明に係る塊成物は後述する有機系のバインダーを含むことで、圧潰強度の改善を図っている。
〔バインダー〕
本発明の一実施形態に係る塊成物は、バインダーを含む。バインダーは、鉄含有物をペレットまたはブリケット等の塊成物に成形しやすくし、また当該塊成物の圧潰強度を増加させるための成分である。バインダーは、一般に無機系のバインダー(以降、「無機系バインダー」と称する)と、有機系のバインダー(以降、「有機系バインダー」と称する)とに大別される。
本発明の一実施形態に係る塊成物は、バインダーとして有機系バインダーを含む。塊成物の製造に有機系バインダーを含むバインダーを用いることにより、比表面積が比較的小さい鉄含有物を用いて塊成物を製造する場合であっても、湿潤状態および乾燥状態のいずれにおいても、十分な圧潰強度を有する塊成物が得られる。
本発明の一実施形態に係る塊成物は、有機系バインダーに加え、無機系バインダーを含んでいてもよい。無機系バインダーを含むことにより、湿潤状態および乾燥状態における塊成物の圧潰強度を一層向上させることができる。なお、バインダーは、塊成物の製造時に粉末状態で加えてもよく、水等の液体に溶解または懸濁した状態で加えてもよい。
鉄含有物のブレーン法により求められる比表面積が0.10m/g未満の場合、バインダーは、ブレーン法により求められる比表面積が0.10m/gより大きいことが好ましく、0.15m/g以上であることがより好ましい。バインダーの、ブレーン法により求められる比表面積が0.10m/gより大きいことにより、鉄含有物と水とが接触できる面積が大きくなるため、鉄含有物と水との結合が強固となる。したがって、湿潤状態で十分な圧潰強度を有する塊成物が得られる。
(有機系バインダー)
有機系バインダーは、少量を添加することにより高強度の塊成物が得られやすく、特別な養生処理等も不要である。有機系バインダーは、特に限定されないが、澱粉、デキストリンまたは糖蜜等であってよい。また、有機系バインダーは、単独で用いてよく、複数の有機系バインダーを組み合わせて用いてもよく、または無機系バインダーと組み合わせて用いてもよい。
澱粉は、入手の容易性等の観点から有機系バインダーとして一般に使用されている。澱粉は、エーテル化澱粉等のような、熱または酵素等により変性した化工澱粉であってもよく、α化された澱粉(以降、「α澱粉」と称する)であってもよい。α澱粉をバインダーとして用いることにより、バインダーが水等に溶けやすく、鉄含有物とバインダーとを均一に接触させることができる。
デキストリンは、澱粉を100~200℃に加熱して製造される焙焼デキストリンであってよく、澱粉を酸または/および酵素により処理することによりデキストリン化したものであってよい。
糖蜜は、砂糖を製造する際に発生し、糖分(還元糖または蔗糖)、各種窒素有機体、灰分および水等を含む、水溶液または懸濁液である。
(無機系バインダー)
無機系バインダーは、特に限定されないが、例えばベントナイトであってよい。無機系バインダーとしてベントナイトを用いることにより、バインダーの流動性を向上させることができる。また、製造する塊成物の強度を一層上昇させることができる。さらに、ベントナイトは安価であるため、より高価なバインダーの使用量を低減できる。
<塊成物の圧潰強度>
塊成物の圧潰強度は、JIS M 8718:2008に準拠して測定した。湿潤状態における塊成物の圧潰強度は、0.15kN以上であることが好ましく、0.20kN以上であることがより好ましい。湿潤状態における塊成物の圧潰強度が0.15kN以上であることにより、湿潤状態の塊成物が運搬等の取り扱い時に粉化することを抑制できる。
また、乾燥状態における塊成物の圧潰強度は、0.50kN以上であることが好ましく、0.60kN以上であることがより好ましい。乾燥状態における塊成物の圧潰強度が0.50kN以上であることにより、乾燥状態の塊成物が、貯蔵時または炉への投入時等の取扱い時に粉化することを抑制できる。
乾燥状態における塊成物の圧潰強度に対する、湿潤状態における塊成物の圧潰強度の比率は、0.1以上であることが好ましく、0.15以上であることがより好ましい。乾燥状態における塊成物の圧潰強度に対する、湿潤状態における塊成物の圧潰強度の比率が0.1以上であることにより、自然養生での乾燥過程における強度上昇量が高く、高い乾燥強度が得られる。
<塊成物の製造方法>
本発明の一実施形態に係る塊成物の製造方法について、図2を参照して説明する。図2では、本発明の一実施形態に係る造粒方法の一例を示す。
本発明の一実施形態に係る塊成物の製造方法は、図2に示すように、まず原料である鉄含有物と、当該原料に加えるバインダーおよび水等を準備する(S1)。次に、これらの原料等を混練する工程により混合物を作製する(S2)。次に、得られた混合物をペレットまたはブリケット等に成形することにより、湿潤状態の塊成物を造粒する(S3)。そして、得られた塊成物をベルトコンベア等で移動し(S4)、当該塊成物を養生して乾燥することにより、乾燥状態の塊成物を製造する(S5)。
原料の混合方法は、鉄含有物とバインダーを混練できれば特に限定されず、例えばヘンシェルミキサー、アイリッヒミキサーまたはミックスマラー等を用いることができる。
混合物のペレットまたはブリケットへの成形は、混合物を所望の形状に成形できれば特に限定されず、例えばブリケットマシンまたはパンペレタイザー等を用いることができる。
製造した塊成物は、成形時または移動時に粉化した塊成物等を除去するために、さらに分級を行なってもよい。製造した塊成物を分級することにより、粉化した塊成物を除去できるため、塊成物の取り扱い時の作業性を向上させることができる。また、分級により除去された粉化した塊成物は、再度塊成物の製造等に利用できる。
塊成物の養生方法は、特に限定されず、自然乾燥であってよく、用いたバインダーに合わせた養生方法であってもよい。さらに養生期間も特に限定されず、例えば有機系バインダーを用いて形成した塊成物に対して自然乾燥を行う場合であれば、2日または3日風乾してもよい。
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
本発明の一実施例に係る塊成物について以下に説明する。
<原料の比表面積の評価>
塊成物の原料として用いた鉄含有物およびバインダーは、ブレーン法により比表面積を評価した。表1に鉄含有物の比表面積を示し、表2にバインダーの比表面積を示す。なお、原料Aおよび原料Bはいずれも製鉄プロセスにおいて発生した鉄含有物である。また、α澱粉Aおよびα澱粉Bは、それぞれ異なる製造会社から調達したα澱粉である。
Figure 0007207153000001
Figure 0007207153000002
表1に示すように原料Aの比表面積は、0.10m/g以下であり、原料Bの比表面積は、0.26m/gであった。
表2に示すように、デキストリンおよびα澱粉Aの比表面積は、0.10m/g以下であった。また、α澱粉Bの比表面積は、0.15m/gであり、ベントナイトの比表面積は、0.60m/gであった。また、「デキストリン+ベントナイト」の比表面積は、0.21m/gであり、「糖蜜+ベントナイト」の比表面積は、0.28m/gであった。
<塊成物の製造方法>
本発明の一実施例に係る塊成物は、表3のNo.1~14に示す鉄含有物およびバインダーを用いて製造した。No.1~6は、鉄含有物の組成は同じでバインダーの種類をそれぞれ変更した条件により製造した塊成物である。また、No.7~12は、No1~6の条件から鉄含有物の組成を変更することにより製造した塊成物である。さらに、No.13およびNo.14は、No.2および3の条件から鉄含有物の組成を変更することにより製造した塊成物である。
なお、表3におけるバインダーの量(質量%)は、鉄含有物100質量%に対する割合で示し、造粒時に添加する造粒水分は、鉄含有物およびバインダーの合計100質量%に対する割合で示す。そして、「デキストリン+ベントナイト」は、デキストリンおよびベントナイトを7:3の比率で混合したバインダーであり、「糖蜜+ベントナイト」は、糖蜜およびベントナイトを等量ずつ加えたバインダーである。
本発明の一実施例に係る塊成物は、まず、ミックスマラーを用いて表3に示す鉄含有物およびバインダーを混練した。そして、ブリケットマシンを用いて、得られた混合物に水を加えながらポケットサイズが28×26×6.5mmとなるように製団した。そして、製団した塊成物を105℃で12時間以上乾燥した。なお、塊成物の含有水分量の測定は適宜行ない、塊成物の乾燥状態を確認した。
表4に、各実施例に係る塊成物の、湿潤状態および乾燥状態における圧潰強度を示した。なお、湿潤状態および乾燥状態における圧潰強度は、それぞれ湿潤状態および乾燥状態における塊成物10個の圧潰強度を測定し、その平均の値として示す。また、表4に示す乾燥状態における圧潰強度に対する湿潤状態における圧潰強度の比率(以降、「湿潤/乾燥」と称する)は、上述の湿潤状態および乾燥状態における塊成物10個の圧潰強度の平均の値を用いて算出した。
Figure 0007207153000003
Figure 0007207153000004
(結果)
図3にNo.1~6の組成の塊成物における、湿潤状態および乾燥状態における圧潰強度を示す。また、図4にNo.7~12の組成の塊成物における、湿潤状態および乾燥状態における圧潰強度を示す。さらに、図3および図4には、圧潰強度が0.15kNおよび0.50kNである場合を破線で示す。
図3、表3および表4に示すように、バインダーとしてブレーン法により求められる比表面積が0.10m/g以下であるデキストリンおよびα澱粉Aを用いた塊成物(No.1および2)では、湿潤状態における塊成物の圧潰強度が0.15kN未満であった。また、バインダーとして無機系バインダー(ベントナイト)のみを用いた塊成物(No.6)では、乾燥状態における圧潰強度が0.50kN未満であった。さらに、湿潤/乾燥は、表4に示すようにブレーン法により求められる比表面積が0.10m/g以下であるデキストリンまたはα澱粉Aをバインダーとして用いた塊成物(No.1、2および13)のみ0.1未満となった。
一方、図3および図4ならびに表3および表4に示すように、ブレーン法により求められる比表面積が0.10m/gより大きい有機系バインダーを含む塊成物(No.3~5および7~11)では、乾燥状態における圧潰強度が0.50kN以上であり、湿潤状態における圧潰強度が0.10kN以上であり、さらに、湿潤/乾燥は0.1を超えた。以上より、ブレーン法により求められる比表面積が0.10m/gより大きい有機系バインダーを用いることで、粉化しにくい圧潰強度を有する塊成物が得られることが示された。
一方、バインダーとして無機系バインダー(ベントナイト)のみを用いた塊成物(No.6および12)では、乾燥状態における圧潰強度が0.50kN未満であった。
さらに、表4に示すように、原料Aおよび原料Bを添加する量を変更した場合における圧潰強度の変化(No.2、8、13およびNo.3、9、14)から、比表面積の小さな鉄含有物(原料A)の含有量が増加することにしたがい、塊成物の湿潤状態における圧潰強度が低下していたが、本発明に係る塊成物であれば、比表面積が0.10m/g以下の鉄含有物のみを原料として含む場合でも、粉化を低減するために十分な圧潰強度を有することが示された。

Claims (2)

  1. バインダーおよび鉄含有物を含む塊成物であって、
    前記バインダーは、有機系バインダーを含み、
    前記塊成物に含まれる含有水分量が、造粒時に添加する造粒水分量に対して90質量%以上である湿潤状態における圧潰強度が0.15kN以上であり、
    前記含有水分量が、前記造粒水分量に対して50質量%未満である乾燥状態における圧潰強度が0.50kN以上であり、
    前記乾燥状態における圧潰強度に対する前記湿潤状態における圧潰強度の比率が0.1以上であり、
    前記鉄含有物の、ブレーン法により求められる比表面積が0.10m /g未満であり、前記バインダーの、ブレーン法により求められる比表面積が0.10m /gより大きい、塊成物。
  2. 前記バインダーが、α澱粉およびデキストリンとベントナイトとの混合物からなる群から選ばれる少なくとも1つである、請求項1に記載の塊成物。
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