以下、本発明を実施するための形態(以下、実施の形態という)について説明する。なお、説明は以下の順序で行う。
1.第1の実施の形態
2.第2の実施の形態
3.変形例
<1.第1の実施の形態>
図1乃至図11を参照して、本発明の第1の実施の形態について説明する。
[電力監視システムの構成例]
図1は、本発明を適用した電力監視システムの第1の実施の形態である電力監視システム101の構成例を示すブロック図であり、図2は、電力監視システム101の変流器111p,111cの設置位置の例を示している。
なお、以下、図2の点線より左側を、電力監視システム101および太陽光発電システム151が設けられている家庭の宅内とする。また、以下、太陽光発電システム151から接続点Cまでの電力系統を発電電力系統と称し、商用電源152から接続点Cまでの電力系統を商用電力系統と称し、接続点Cから負荷153までの電力系統を負荷電力系統と称する。なお、以下、宅内において各電力系統とも単相2線式により構成されるものとする。
さらに、以下、発電電力系統の電圧(=太陽光発電システム151の出力電圧)(以下、発電電圧と称する)および電流(以下、発電電流と称する)を、それぞれvpおよびipで表し、矢印Ap1の方向を正の方向とする。また、以下、発電電圧vpの実効値(以下、発電電圧実効値と称する)および発電電流ipの実効値(以下、発電電流実効値と称する)を、それぞれVpおよびIpで表す。さらに、以下、発電電圧vpの位相をφpv、発電電流ipの位相をφpi、発電電圧vpと発電電流ipの位相差をΔφpで表す。また、以下、発電電力系統の電力(以下、発電電力と称する)および力率(以下、発電力率と称する)を、それぞれPpおよびPFp(=cosΔφp)で表す。
さらに、以下、商用電力系統の電圧(=商用電源152の出力電圧)(以下、商用電圧と称する)および電流(以下、商用電流と称する)を、それぞれvcおよびicで表し、矢印Ac1の方向を正の方向とする。また、以下、商用電圧vcの実効値(以下、商用電圧実効値と称する)および商用電流icの実効値(以下、商用電流実効値と称する)を、それぞれVcおよびIcで表す。さらに、以下、商用電圧vcの位相をφcv、商用電流icの位相をφci、商用電圧vcと商用電流icの位相差をΔφcで表す。また、以下、商用電力系統の電力(以下、商用電力と称する)および力率(以下、商用力率と称する)を、それぞれPcおよびPFc(=cosΔφc)で表す。
さらに、以下、負荷電力系統の電圧(以下、負荷電圧と称する)および電流(以下、負荷電流と称する)を、それぞれvdおよびidで表し、矢印Adの方向を正の方向とする。また、以下、負荷電圧vdの実効値(以下、負荷電圧実効値と称する)および負荷電流idの実効値(以下、負荷電流実効値と称する)を、それぞれVdおよびIdで表す。さらに、以下、負荷電圧vdの位相をφdv、負荷電流idの位相をφdi、負荷電圧vdと負荷電流idの位相差をΔφdで表す。また、以下、負荷電力系統の電力(以下、負荷電力と称する)および力率(以下、負荷力率と称する)を、それぞれPdおよびPFd(=cosΔφd)で表す。
なお、発電電力系統、商用電力系統および負荷電力系統は、接続点Cを介して相互に接続されており、同電位となる。従って、発電電圧vp=商用電圧vc=負荷電圧vd、発電電圧実効値Vp=商用電圧実効値Vc=負荷電圧実効値Vd、位相φpv=位相φcv=位相φdvとなる。なお、接続点Cは、例えば、家庭内の分電盤に相当する。
電力監視システム101は、宅内の電力の状態を検出し、監視するシステムである。電力監視システム101は、後述するように、発電電流ipおよび商用電流icに基づいて、商用電力Pcの潮流方向(以下、商用電力潮流方向と称する)を検出し、買電状態または売電状態のいずれであるかを判定する。また、電力監視システム101は、太陽光発電システム151の発電電力Pp、および、太陽光発電システム151の余剰電力であって、太陽光発電システム151から商用電力系統に供給される販売電力Pcsを測定する。さらに、電力監視システム101は、商用電源152から商用電力系統に供給される購入電力Pcb、および、太陽光発電システム151および商用電源152から負荷電力系統に供給され、負荷153で消費される負荷電力Pdを測定する。
太陽光発電システム151は、太陽電池モジュール161およびPV(Photo Voltatic)コントローラ162を含むように構成される。
太陽電池モジュール161は、太陽光発電により直流の電力を発生させ、発生させた直流電力をPVコントローラ162に供給する。
PVコントローラ162は、太陽電池モジュール161からの直流電力を、商用電源152とほぼ同じ電圧および周波数の交流電力に変換するとともに、変換した交流電力の電圧の位相を商用電源152の電圧の位相と同期させる。そして、PVコントローラ162は、その交流電力(発電電力Pp)を出力する。
負荷153は、冷蔵庫等の電化製品などの各種の電気機器により構成される。
ここで、電力監視システム101の構成について、さらに詳細に説明する。
電力監視システム101は、変流器111p、変流器111c、および、検出装置112を含むように構成される。また、検出装置112は、測定部121p、測定部121c、演算部122、表示部123、および、通信部124を含むように構成される。
変流器111pは、太陽光発電システム151と接続点Cの間の配線に設置され、発電電流ipを測定する。より正確には、変流器111pは、発電電流ip(一次電流)を電流isp(二次電流)に変換し、測定部121pに供給する。なお、以下、発電電流ipが矢印Ap1の方向に流れた場合に、電流ispが矢印Ap2の方向に流れる向きに、変流器111pが設置されるものとする。
測定部121pは、内蔵する抵抗Rpにより電流ispを電圧vspに変換する。なお、電圧vspは、発電電流ipが矢印Ap1の方向に流れ、電流ispが矢印Ap2の方向に流れるとき正の値となり、発電電流ipが矢印Ap1と逆方向に流れ、電流ispが矢印Ap2と逆方向に流れるとき負の値となる。すなわち、矢印Ap1の方向を正としたときの発電電流ipの位相と、電圧vspの位相とが一致する。
また、測定部121pは、電圧vspを示す信号(以下、信号vspと称する)を演算部122に供給する。
変流器111cは、商用電源152と接続点Cの間の宅内の配線に設置され、商用電流icを測定する。より正確には、変流器111cは、商用電流ic(一次電流)を電流isc(二次電流)に変換し、測定部121cに供給する。なお、以下、商用電流icが矢印Ac1の方向に流れた場合に、電流iscが矢印Ac2の方向に流れる向きに、変流器111cが設置されるものとする。
測定部121cは、内蔵する抵抗Rcにより電流iscを電圧vscに変換する。なお、電圧vscは、商用電流icが矢印Ac1の方向に流れ、電流iscが矢印Ac2の方向に流れるとき正の値となり、商用電流icが矢印Ac1と逆方向に流れ、電流iscが矢印Ac2と逆方向に流れるとき負の値となる。すなわち、矢印Ac1の方向を正としたときの商用電流icの位相と、電圧vscの位相とが一致する。
また、商用電力Pcが矢印Ac1の方向に供給される買電状態のとき、商用電圧vcの位相と電圧vscの位相(=商用電流icの位相)との差(=位相差Δφc)は、負荷153の力率およびPVコントローラ162の位相同期誤差を考慮しても、±π/2以内となる。逆に、商用電力Pcが矢印Ac1と逆方向に供給される売電状態のとき、商用電圧vcの位相と電圧vscの位相(=商用電流icの位相)との差(=位相差Δφc)は、−πから−π/2までの範囲内、あるいは、π/2からπまでの範囲内となる。なお、後述するように、家庭用の一般的な負荷の力率は、cos(π/6)以上になることが経験的に分かっている。
また、測定部121cは、電圧vscを示す信号(以下、信号vscと称する)を演算部122に供給する。
演算部122は、例えば、マイクロコンピュータにより構成され、変換部131、判定値算出部132、潮流方向検出部133、および、電力算出部134を含むように構成される。
変換部131は、既知の変流器111pの変流比および抵抗Rpの抵抗値に基づいて、信号vspにより示される電圧vspの値を発電電流ipの値に変換し、変換した値を判定値算出部132および電力算出部134に通知する。また、変換部131は、既知の変流器111cの変流比および抵抗Rcの抵抗値に基づいて、信号vscにより示される電圧vscの値を商用電流icの値に変換し、変換した値を判定値算出部132および電力算出部134に通知する。
判定値算出部132は、後述するように、発電電流ipの測定値および商用電流icの測定値に基づいて、商用電力潮流方向の検出に用いる判定値を算出する。判定値算出部132は、算出した判定値を潮流方向検出部133に通知する。
潮流方向検出部133は、後述するように、判定値算出部132により算出された判定値に基づいて、商用電力潮流方向を検出し、検出した結果を電力算出部134に通知する。
電力算出部134は、後述するように、発電電流ipの測定値、商用電流icの測定値、および、商用電力潮流方向の検出結果に基づいて、発電電力Pp、販売電力Pcs、購入電力Pcb、および、負荷電力Pdを算出する。電力算出部134は、算出した結果を表示部123および通信部124に通知する。
表示部123は、例えば、LCD(Liquid Crystal Display)等の表示装置、LED(Light Emitting Diode)等の発光装置などにより構成され、各部の電力の状態を表示する。
通信部124は、各種の通信装置により構成され、各部の電力の状態を示す電力状態情報を外部の装置に送信する。なお、通信部124の通信方法には、有線または無線を問わず、任意の方法を採用することができる。
[電力監視処理]
次に、図3のフローチャートを参照して、電力監視システム101により実行される電力監視処理について説明する。なお、この処理は、例えば、電力監視システム101の電源がオンされたときに開始され、オフされたときに終了する。
ステップS1において、電力監視システム101は、電流を測定する。具体的には、変流器111pは、発電電流ipを電流ispに変換し、測定部121pに供給する。測定部121pは、電流ispを電圧vspに変換し、電圧vspを示す信号vspを変換部131に供給する。また、変流器111cは、商用電流icを電流iscに変換し、測定部121cに供給する。測定部121cは、電流iscを電圧vscに変換し、電圧vscを示す信号vscを変換部131に供給する。
変換部131は、信号vspにより示される電圧vspの値を発電電流ipの値に変換し、変換した値を判定値算出部132および電力算出部134に通知する。また、変換部131は、信号vscにより示される電圧vscの値を商用電流icの値に変換し、変換した値を判定値算出部132および電力算出部134に通知する。
ステップS2において、判定値算出部132は、判定値を算出し、算出した判定値を潮流方向検出部133に通知する。
ステップS3において、潮流方向検出部133は、判定値に基づいて、商用側の電力の潮流方向を検出し、検出した潮流方向を電力算出部134に通知する。
ここで、図4乃至図9を参照して、ステップS2およびS3の処理における判定値の算出方法と商用電力潮流方向の検出方法の具体例について説明する。
例えば、アナログ回路等により、発電電流ipおよび商用電流icの測定が連続して行われる場合、例えば、次式(1)により求められる判定値D1が用いられる。
なお、時間Tは、商用電源152の電力の1周期の時間(=1/商用電源152の周波数)を示している。
判定値D1は、ほぼ同時刻における発電電流ipの瞬時値と商用電流icの瞬時値の乗算値を、1周期の間積算した値である。従って、発電電流ipと商用電流icの位相差φpi−φciが、|φpi−φci|≦π/2を満たす場合、判定値D1≧0となり、π/2<|φpi−φci|≦πを満たす場合、判定値D1<0となる。
上述したように、家庭用の一般的な負荷の力率は、cos(π/6)以上になることが経験的に分かっている。従って、電圧波形と電流波形の位相差はπ/6以下となる。
例えば、図4は、蛍光灯に100Vの交流電圧を印加し、変流器により電流を測定した結果を示すグラフである。なお、図4の横軸は時間を示し、縦軸は電圧および電流を示している。波形201は電圧の波形を示し、波形202は、電圧と電流が同位相の場合に電流値が正になる方向に変流器を取付けた場合の電流の波形を示し、波形203は、電圧と電流が逆位相の場合に電流値が正になる方向に変流器を取付けた場合の電流の波形を示している。この場合、蛍光灯に印加される電圧と蛍光灯を流れる電流の位相差は、約11.5度(<π/6)となる。
また、図5は、他の負荷に100Vの交流電圧を印加し、電圧と電流が同位相の場合に電流値が正になる方向に取付けた変流器により電流を測定した結果を示すグラフである。なお、図5の横軸は時間を示し、縦軸は電圧および電流を示している。波形211は電圧の波形を示し、波形212は負荷が電子レンジの場合の電流の波形を示し、波形213は負荷がパーソナルコンピュータとディスプレイの場合の電流の波形を示している。この例でも、電圧と電流の位相差は、π/6より小さくなっている。
従って、発電電圧vpと発電電流ipとの位相差は、±π/6以内になると仮定することができる。また、商用電圧vcと商用電流icとの位相差は、買電状態の場合、±π/6以内となり、売電状態の場合、π±π/6の範囲内になると仮定することができる。これに伴い、買電状態の場合、|φpi−φci|≦π/3となり、判定値D1≧0になると仮定することができる。一方、売電状態の場合、2π/3≦|φpi−φci|≦πとなり、判定値D1<0になると仮定することができる。
従って、判定値D1に基づいて、商用電力潮流方向を検出することができる。すなわち、判定値D1≧0の場合、商用電力Pcが矢印Ac1の方向に供給される買電状態であると判定し、判定値D1<0の場合、商用電力Pcが矢印Ac1の方向に供給される売電状態であると判定することができる。
また、例えば、デジタルの演算回路等により、図6に示されるように、発電電流ipおよび商用電流icの測定が離散的に行われる場合、次式(2)により求められる判定値D2が用いられる。
なお、図6は、売電状態のときの発電電流ipと商用電流icの波形の例を示し、横軸は時間を示し、縦軸は電流値を示している。また、図6の丸印および四角印はサンプリング点を示している。なお、図を分かりやすくするために、図6では、サンプリング点の一部のみを示している。
また、式(2)のkは、発電電流ipおよび商用電流icのサンプリング点の番号を示し、mは1周期あたりのサンプリング数を示している。さらに、ip[k]はk番目のサンプリング点の発電電流ipのサンプリング値を示し、ic[k]はk番目のサンプリング点の商用電流icのサンプリング値を示している。
判定値D2は、ほぼ同時刻における発電電流ipと商用電流icのサンプリング値の乗算値を、1周期の間積算した値である。従って、判定値D1と同様に、|φpi−φci|≦π/2のとき、判定値D2≧0となり、π/2<|φpi−φci|≦πのとき、判定値D2<0となる。
従って、判定値D1を用いる場合と同様に、判定値D2≧0の場合、買電状態であると判定し、判定値D2<0の場合、売電状態であると判定することができる。
また、例えば、図7に示されるように、発電電流ipが正のピークに達する時間tmaxにおける発電電流ipの値をip(tmax)、商用電流icの値をic(tmax)とした場合、次式(3)により求められる判定値D3を用いるようにしてもよい。
D3=ip(tmax)×ic(tmax) ・・・(3)
この場合も、判定値D1を用いる場合と同様に、判定値D3≧0の場合、買電状態であると判定し、判定値D3<0の場合、売電状態であると判定することができる。
同様に、発電電流ipが負のピークに達する時間tminにおける発電電流ipの値ip(tmin)、商用電流icの値ic(tmin)を用いて、次式(4)により求められる判定値D4を用いるようにしてもよい。
D4=ip(tmin)×ic(tmin) ・・・(4)
この場合も、判定値D3を用いる場合と同様に、判定値D4≧0の場合、買電状態であると判定し、判定値D4<0の場合、売電状態であると判定することができる。
図8は、負荷153が、容量性負荷(コンデンサ負荷)が主体である場合の売電状態時の発電電流ipおよび商用電流icの波形の例を示している。なお、横軸は時間を示し、縦軸は電流を示している。
この図に示されるように、負荷153が容量性負荷主体である場合、発電電流ipは短時間の鋭いピークが現れるパルス状の波形となる。この場合、発電電流ipと商用電流icの乗算値を1周期の間積算した判定値D1または判定値D2よりも、発電電流ipがピークとなる時間の発電電流ipと商用電流icの積算値である判定値D3または判定値D4を用いるようにした方が、商用電力潮流方向の検出精度が高くなる場合がある。
また、サンプリング間隔が短いなどの理由により、発電電流ipおよび商用電流icを同時に測定できない場合、例えば、異なる周期において測定された発電電流ipおよび商用電流icを用いて判定値を算出するようにしてもよい。
例えば、発電電流ipおよび商用電流icの測定が連続して行われる場合、次式(5)により求められる判定値D5が用いられる。
なお、式(5)のnは自然数とされる。
判定値D5は、発電電流ipの瞬時値とn周期遅れの商用電流icの瞬時値の乗算値を、1周期の間積算した値である。従って、判定値D1を用いる場合と同様に、判定値D5≧0の場合、買電状態であると判定し、判定値D5<0の場合、売電状態であると判定することができる。
また、例えば、発電電流ipおよび商用電流icの測定が離散的に行われる場合、次式(6)により求められる判定値D6が用いられる。
判定値D6は、図9に示されるように、発電電流ipのサンプリング値とn周期遅れの商用電流icのサンプリング値の乗算値を、1周期の間積算した値である。従って、判定値D1を用いる場合と同様に、判定値D6≧0の場合、買電状態であると判定し、判定値D6<0の場合、売電状態であると判定することができる。
図3に戻り、ステップS4において、電力算出部134は、各部の電力、すなわち、発電電力Pp、購入電力Pcb、販売電力Pcs、および、負荷電力Pdを算出する。
ここで、各部の電力の算出方法の一例について説明する。
買電状態の場合、発電電力Pp、購入電力Pcb、販売電力Pcs、および、負荷電力Pdは、次式(7)乃至(10)により表される。
Pp=Vp×Ip×PFp ・・・(7)
Pcb=Vc×Ic×PFc ・・・(8)
Pcs=0 ・・・(9)
Pd=Vd×Id×PFd ・・・(10)
一方、売電状態の場合、購入電力Pcbおよび販売電力Pcsの算出式が逆になり、次式(11)および(12)となる。
Pcb=0 ・・・(11)
Pcs=Vc×Ic×PFc ・・・(12)
ここで、発電電流実効値Ipおよび商用電流実効値Icは、それぞれ発電電流ipの測定値および商用電流icの測定値に基づいて算出することができる。
また、太陽光発電システム151の出力電圧は、所定の変動範囲内に収まるように制御される。従って、発電電圧実効値Vpを定数としても、誤差は小さいと予測される。そこで、発電電圧実効値Vpを、例えば、太陽光発電システム151の出力電圧の公称値等に基づいて、所定の定数に設定することができる。
さらに、商用電圧実効値Vcおよび負荷電圧実効値Vdは、発電電圧実効値Vpと等しいため、発電電圧実効値Vpと同じ値の定数に設定することができる。
また、太陽光発電システム151の力率は、例えば、JET(Japan Electrical Safety & Environment Technology Laboratories)等の認証を受けるために、所定の変動範囲内(例えば、定格負荷の12.5%〜100%の範囲内で95%以上)に収まるように制御される。従って、発電力率PFpおよび位相差Δφpを定数としても、誤差は小さいと予測される。そこで、発電力率PFpおよび位相差Δφpを、例えば、実験結果、実際の測定結果、または、理論式等に基づいて、所定の定数に設定することができる。
さらに、家庭用の一般的な負荷の力率も、上述したように、経験的に所定の値以上になることが分かっている。従って、負荷力率PFdおよび位相差Δφdも、発電力率PFpおよび位相差Δφpと同様に、定数としても、誤差は小さいと予測される。そこで、負荷力率PFdおよび位相差Δφdを、例えば、実験結果、実際の測定結果、または、理論式等に基づいて、所定の定数に設定することができる。
一方、商用力率PFcは変動が大きく、定数にすることはできない。また、負荷電流実効値Idも、負荷電流idが測定されないため、未知である。
以上により、上述した式(7)の右辺の値は全て既知となり、発電電力Ppを算出することができる。
一方、式(8)および式(12)の右辺では、商用力率PFcが未知となり、式(10)の右辺では、負荷電流実効値Idが未知となる。
ここで、商用力率PFcの代わりに、商用電力系統の有効電流の実効値Irc(以下、商用有効電流実効値Ircと称する)を用いて、次式(13)および(14)により、購入電力Pcbまたは販売電力Pcsを求めることも可能である。
Pcb=Vc×Irc ・・・(13)
Pcs=Vc×Irc ・・・(14)
従って、商用有効電流実効値Ircが分かれば、購入電力Pcbまたは販売電力Pcsを求めることができ、負荷電流実効値Idが分かれば、負荷電力Pdを求めることができる。
ここで、図10を参照して、商用有効電流実効値Irc、および、負荷電流実効値Idの算出方法について説明する。
なお、以下、商用電力系統の無効電流の実効値を商用無効電流実効値Imcと称する。また、以下、発電電力系統の皮相電力を皮相発電電力Papと称し、商用電力系統の皮相電力を皮相商用電力Pacと称し、負荷電力系統の皮相電力を皮相負荷電力Padと称する。
図10は、発電電流実効値Ip、商用電流実効値Ic、および、負荷電流実効値Idの関係を示す図である。なお、図10の横軸は有効電流を示し、縦軸は無効電流を示している。
また、ベクトルIp、ベクトルIc、および、ベクトルIdは、それぞれ発電電流実効値Ip、商用電流実効値Ic、および、負荷電流実効値Idを表すベクトルである。なお、負荷電流実効値Idおよび商用電力系統の位相差Δφc以外は既知なので、ベクトルIpの大きさおよび傾き、ベクトルIcの大きさ、および、ベクトルIdの傾きは固定となる。
また、図10の点線の円は、図内の座標系の原点をベクトルIcの始点または終点とした場合に、商用電力系統の位相差Δφcを変化させることによりベクトルIcの終点または始点が描く軌跡を示している。
買電状態の場合、皮相負荷電力Pad=皮相発電電力Pap+皮相商用電力Pacとなる。ここで、発電電圧vp、商用電圧vc、および、負荷電圧vdの値および位相が等しいため、発電電流実効値Ip、商用電流実効値Ic、および、負荷電流実効値Idを表すベクトルの関係は、図10内の点線で示されるように、ベクトルId=ベクトルIp+ベクトルIcとなる。
一方、売電状態の場合、皮相発電電力Pap=皮相商用電力Pac+皮相負荷電力Padとなるため、発電電流実効値Ip、商用電流実効値Ic、および、負荷電流実効値Idを表すベクトルの関係は、図10内の実線で示されるように、ベクトルIp=ベクトルIc+ベクトルIdとなる。
従って、商用無効電流実効値Imcおよび商用有効電流実効値Ircは、発電電流実効値Ip、負荷電流実効値Id、発電電力系統の位相差Δφp、および、負荷電力系統の位相差Δφdを用いて、次式(15)および(16)で表される。
Imc=Id・sinΔφd+Ip・sinΔφp ・・・(15)
Irc=Id・cosΔφd−Ip・cosΔφp ・・・(16)
また、商用無効電流実効値Imcおよび商用有効電流実効値Ircの2乗和と、商用電流実効値Icの2乗が等しくなるため、次式(17)が成り立つ。
Ic2=Imc2+Irc2 ・・・(17)
そして、式(15)乃至(17)から、負荷電流実効値Idに関する2次方程式である式(18)が導出される。
Id2−2Ip・cos(Δφd+Δφp)×Id+(Ip2−Ic2)=0
・・・(18)
ここで、b=−Ip・cos(Δφd+Δφp)、c=(Ip2−Ic2)とすると、負荷電流実効値Idが、式(18)から次式(19)のとおり求まる。
買電状態の場合、式(18)を解くことにより、図10において、発電電力系統の位相差Δφpおよび負荷電力系統の位相差Δφdを固定し、商用電力系統の位相差Δφcを可変させながら、ベクトルIc=ベクトルId−ベクトルIpとなるベクトルIdの大きさ(=負荷電流実効値Id)が求められる。すなわち、発電電力系統の位相差Δφpの設定値および負荷電力系統の位相差Δφdの設定値を用いて、負荷電流実効値Idから発電電流実効値Ipの測定値を減算した値が商用電流実効値Icの測定値となるように、負荷電流実効値Idが算出される。
一方、売電状態の場合、式(18)を解くことにより、図10において、発電電力系統の位相差Δφpおよび負荷電力系統の位相差Δφdを固定し、商用電力系統の位相差Δφcを可変させながら、ベクトルIc=ベクトルIp−ベクトルIdとなるベクトルIdの大きさ(=負荷電流実効値Id)が求められる。すなわち、発電電力系統の位相差Δφpの設定値および負荷電力系統の位相差Δφdの設定値を用いて、発電電流実効値Ipの測定値から負荷電流実効値Idを減算した値が商用電流実効値Icの測定値となるように、負荷電流実効値Idが算出される。
このように、発電電流実効値Ip、商用電流実効値Ic、発電電力系統の位相差Δφp、商用電力系統の位相差Δφc、および、商用電力潮流方向に基づいて、負荷電流実効値Idを求めることができる。なお、発電電流実効値Ipおよび商用電流実効値Icは、それぞれ発電電流ipの測定値および商用電流icの測定値から求まる測定値であり、発電電力系統の位相差Δφpおよび商用電力系統の位相差Δφcは設定値(定数)である。
そして、算出した負荷電流実効値Idを用いて、上述した式(10)により、負荷電力Pdが算出される。
また、算出した負荷電流実効値Idを、発電電流実効値Ipの測定値、発電電力系統の位相差Δφpの設定値、および、負荷電力系統の位相差Δφdの設定値とともに、上述した式(16)に代入することにより、商用有効電流実効値Ircが算出される。
そして、算出した商用有効電流実効値Ircを用いて、買電状態の場合、式(13)により、購入電力Pcbが算出され、売電状態の場合、式(14)により、販売電力Pcsが算出される。
そして、電力算出部134は、各部の電力の算出値を表示部123および通信部124に通知する。
なお、式(18)の方程式の解が虚数解となる場合がある。これは、発電電力系統の位相差Δφpおよび負荷電力系統の位相差Δφdのうち少なくとも一方について、設定値より実際の値の方が小さい場合に発生する可能性がある。
具体的には、図10の条件で作図できる発電電流実効値Ipの最大値は、図11に示されるように、ベクトルIpが点線の円と接するときである。
従って、図11内の点線で示されるように、発電電力系統の実際の位相差Δφp’が設定値Δφpより小さい場合、実際の発電電流実効値Ip’が、作図できる範囲を超える可能性がある。そして、実際の発電電流実効値Ip’が、作図できる範囲を超える場合、式(18)の方程式の解が虚数解となる。
これを解消するためには、図11において、実際の発電電流実効値Ip’を作図できるように、発電電力系統の位相差Δφpの設定値および負荷電力系統の位相差Δφdの設定値のうち少なくとも一方を小さくすればよい。
例えば、位相差Δφp=11.5度(発電力率PFp=98%)、位相差Δφd=20.0度(負荷力率PFd=94%)に設定されている場合、位相差Δφp=0度(発電力率PFp=100%)、位相差Δφd=8.1度(負荷力率PFd=99%)に変更し、式(18)の解を再計算するようにすればよい。
なお、式(18)の方程式が虚数解となる状態が発生する頻度は小さいと予想される。従って、例えば、虚数解を避けるために生じる誤差が、各部の電力の所定の時間単位(例えば、1日単位)の積算値に与える影響は小さいと考えられる。
図3に戻り、ステップS5において、表示部123は、各部の電力の状態を表示する。例えば、表示部123は、算出された発電電力Pp、販売電力Pcs、購入電力Pcb、および、負荷電力Pdを、数値または時系列のグラフなどを用いて表示する。また、例えば、表示部123は、買電状態または売電状態のいずれの状態であるかを文字、記号、アイコン等により画面に表示したり、LEDなどによる光の点灯、点滅、色の変化等により示したりする。
これにより、ユーザは家庭内の各部の電力の状態を把握することができる。
ステップS6において、通信部124は、各部の電力の状態を通知する。具体的には、通信部124は、算出された発電電力Pp、販売電力Pcs、購入電力Pcb、および、負荷電力Pd、並びに、買電状態または売電状態のいずれの状態であるかを含む電力状態情報を外部の装置に送信する。
送信先の外部の装置は、例えば、受信した情報を蓄積したり、受信した情報に基づいて電力の使用状況等の解析を行ったりする。
なお、さらに発電電流ipおよび商用電流icの測定値を電力状態情報に含めるようにしてもよい。また、必ずしも以上に述べた全ての情報を送信する必要はなく、例えば、送信先の装置の必要性に応じて、送信する情報を選択するようにしてもよい。
さらに、電力状態情報の送信は、必ずしも電力監視処理のループ処理で毎回行う必要はなく、例えば、所定の期間毎、あるいは、情報の蓄積量が所定量を超えたときなど、所定のタイミングで行うようにすればよい。あるいは、外部の装置からの要求に応じて、電力状態情報を送信するようにしてもよい。
その後、処理はステップS1に戻り、ステップS1以降の処理が実行される。
以上のようにして、電圧の測定器を電力系統に設置することなく、変流器111p,111cのみを電力系統に設置し、発電電流ipおよび商用電流icを測定するだけで、商用電力潮流方向を検出することができる。また、商用力率PFc(位相差Δφc)の変動に関わらず、発電電力Pp、販売電力Pcs、購入電力Pcb、負荷電力Pdをほぼ正確に測定することができる。
従って、安全かつ無停電で電力監視システム101を設置することができ、電力監視システム101の設置が容易になるとともに、必要なコストを削減することができる。その結果、簡単かつ低コストで電力の状態を検出することが可能になる。さらに、安全性および信頼性の要求が高い電圧の測定器を省くことにより、電力監視システム101全体の安全性および信頼性が向上する。
<2.第2の実施の形態>
次に、図12乃至図16を参照して、本発明の第2の実施の形態について説明する。
なお、この第2の実施の形態では、第1の実施の形態と比較して、発電電流ipと商用電流icの位相差を検出し、その位相差に基づいて、商用電力潮流方向を検出したり、各部の電力等の算出を行ったりする点が異なる。
[電力監視システムの構成例]
図12は、本発明を適用した電力監視システムの第2の実施の形態である電力監視システム301の構成例を示すブロック図である。なお、図中、図1と対応する部分には同じ符号を付してあり、処理が同じ部分については、その説明は繰り返しになるので省略する。
電力監視システム301は、電力監視システム101と比較して、検出装置112の代わりに検出装置311が設けられている点が異なる。また、検出装置311は、検出装置112と比較して、演算部122の代わりに演算部321が設けられている点が異なる。さらに、演算部321は、演算部122と比較して、判定値算出部132、潮流方向検出部133、および、電力算出部134の代わりに、判定値算出部331、商用電力状態検出部332、および、電力算出部333が設けられている点が異なる。
判定値算出部331は、発電電流ipの測定値および商用電流icの測定値を変換部131から取得する。判定値算出部331は、後述するように、発電電流ipの測定値および商用電流icの測定値に基づいて、発電電流ipと商用電流icの位相差の検出に用いる判定値を算出する。判定値算出部331は、算出した判定値を商用電力状態検出部332に供給する。
商用電力状態検出部332は、後述するように、判定値算出部331により算出された判定値に基づいて、発電電流ipと商用電流icの位相差、商用電力系統の位相差Δφc、商用力率PFc、および、商用電力潮流方向を検出する。商用電力状態検出部332は、検出結果を電力算出部333に通知する。
電力算出部333は、発電電流ipの測定値および商用電流icの測定値を変換部131から取得する。電力算出部333は、後述するように、発電電流ipの測定値、商用電流icの測定値、商用力率PFcの検出結果、および、商用電力潮流方向の検出結果に基づいて、発電電力Pp、販売電力Pcs、購入電力Pcb、および、負荷電力Pdを算出する。電力算出部333は、算出した結果を表示部123および通信部124に通知する。
[電力監視処理の第2の実施の形態]
次に、図13のフローチャートを参照して、電力監視システム301により実行される電力監視処理について説明する。
ステップS101において、図3のステップS1の処理と同様に、発電電流ipおよび商用電流icの測定が行われる。
ステップS102において、判定値算出部331は、判定値を算出し、算出した判定値を商用電力状態検出部332に通知する。
ステップS103において、商用電力状態検出部332は、判定値に基づいて、商用側の電力の状態を検出し、検出した状態を電力算出部333に通知する。
ここで、ステップS102およびS103の処理における判定値の算出方法と商用側の電力の状態の検出方法の具体例について説明する。
例えば、アナログ回路等により、発電電流ipおよび商用電流icの測定が連続して行われる場合、判定値算出部331は、式(20)の角度θを0≦θ<2πの範囲内で所定の間隔でずらしながら、各角度θにおける判定値D7(θ)を算出する。
判定値D7(θ)は、上述した式(1)の判定値D1を、商用電流icの測定値の位相φciを角度θだけずらして算出した値と等しくなる。そして、角度θをずらしながら判定値D7(θ)を算出することにより、商用電流icの測定値の位相φciを移動させながら、各位相における判定値D7(θ)が算出される。
従って、角度θが発電電流ipと商用電流icの位相差φpi−φciと一致するときに、判定値D7(θ)が最大になると推定される。
そこで、商用電力状態検出部332は、判定値D7(θ)が最大となる角度θ(=判定値D7(θ)が最大となる発電電流ipの測定値の位相φciの移動量)を、発電電流ipと商用電流icの位相差φpi−φciとして検出する。
なお、サンプリング間隔が短いなどの理由により、発電電流ipおよび商用電流icを同時に測定できない場合、例えば、判定値D7(θ)の代わりに、次式(21)の判定値D8(θ)を用いて、発電電流ipと商用電流icの位相差φpi−φciを求めるようにしてもよい。
判定値D8(θ)は、上述した式(5)の判定値D5を、商用電流icの測定値の位相φciを角度θだけずらして算出した値と等しくなる。
また、例えば、デジタルの演算回路等により、発電電流ipおよび商用電流icの測定が離散的に行われる場合、判定値算出部331は、式(22)の変数jを0≦j≦mの範囲内で1つずつインクリメントながら判定値D9(j)を算出する。
判定値D9(j)は、上述した式(2)の判定値D2を、商用電流icのサンプリング値の位相φciを角度θ=2πj/mだけずらして算出した値と等しくなる。そして、変数jを1つずつインクリメントしながら判定値D9(j)を算出することにより、商用電流icのサンプリング値の位相φciを移動させながら、各位相における判定値D9(j)が算出される。
従って、角度θ=2πj/mが、発電電流ipと商用電流icの位相差φpi−φciと一致するときに、判定値D9(j)が最大になると推定される。
そこで、商用電力状態検出部332は、判定値D9(j)が最大となる変数jに対応する角度θ(=2πj/m)を、発電電流ipと商用電流icの位相差φpi−φciとして検出する。
図16は、図14および図15に示される条件の下で、式(22)の判定値D9(j)を算出した結果の例を示している。なお、図14および図16では、角度の単位をラジアンではなく度数で示している。
図14は、発電電力系統、商用電力系統、および、負荷電力系統の皮相電力の関係の例を示している。図14の横軸は無効電力を示し、縦軸は有効電力を示している。
図15は、発電電流ip、商用電流ic、負荷電流id、および、発電電圧vp(=商用電圧vc=負荷電圧vd)の時系列の推移の例を示している。図15の横軸は時間を示し、縦軸は電圧または電流を示している。発電電流ip、商用電流ic、負荷電流id、および、発電電圧vpの各波形は、ほぼ正弦波となっている。
そして、図14および図15では、発電電圧vpの位相φpvに対して発電電流ipの位相φpiが8度進み、発電力率PFpが99%となり、商用電圧vcの位相φcvに対して商用電流icの位相φciが40度遅れ、商用力率PFcが77%となる例が示されている。
従って、図14に示されるように、発電電力系統の皮相電力を表すベクトルと商用電力系統の皮相電力を表すベクトルの間の角度は48度となる。また、発電電圧vpと商用電圧vcの位相が等しいので、発電電流ipと商用電流icの位相差も48度となる。
そして、図16に示されるように、角度θ(=2πj/m)が48度になるとき、D9(j)は最大となる。
このように、判定値D9(j)を用いて、発電電流ipと商用電流icの位相差φpi−φciを正確に検出することができる。
なお、サンプリング間隔が短いなどの理由により、発電電流ipおよび商用電流icを同時に測定できない場合、例えば、判定値D9(j)の代わりに、次式(23)の判定値D10(j)を用いて、発電電流ipと商用電流icの位相差φpi−φciを求めるようにしてもよい。
判定値D10(j)は、上述した式(6)の判定値D6を、商用電流icのサンプリング値の位相φciを角度θ=2πj/mだけずらして算出した値と等しくなる。
また、商用電力状態検出部332は、商用電力系統の位相差Δφcおよび商用力率PFcを検出する。具体的には、上述したように、発電力率PFpおよび位相差Δφpは、所定の定数に設定することが可能である。また、発電電圧vpと商用電圧vcの値および位相は等しい。従って、商用電力状態検出部332は、次式(24)により、商用電力系統の位相差Δφcを算出することができる。
Δφc=Δφp+(φpi−φci) ・・・(24)
そして、商用電力状態検出部332は、算出した位相差Δφcに基づいて、商用力率PFc(=cosΔφc)を算出する。
さらに、商用電力状態検出部332は、算出した位相差Δφcに基づいて、商用電力潮流方向を検出する。具体的には、商用電力状態検出部332は、算出した位相差Δφcが、|Δφc|≦π/2を満たす場合、買電状態であると判定し、π/2<|Δφc|≦πを満たす場合、売電状態であると判定する。
そして、商用電力状態検出部332は、商用力率PFcおよび潮流方向の検出結果を電力算出部333に通知する。
ステップS104において、電力算出部333は、各部の電力を算出する。
具体的には、電力算出部333は、買電状態の場合、次式(25)乃至(27)により、発電電力Pp、購入電力Pcbおよび販売電力Pcsを算出する。
Pp=Vp×Ip×PFp ・・・(25)
Pcb=Vc×Ic×PFc ・・・(26)
Pcs=0 ・・・(27)
なお、発電電圧実効値Vp、商用電圧実効値Vc、発電電流実効値Ip、商用電流実効値Ic、および、発電力率PFpには、電力監視システム101の場合と同様の値が用いられる。また、商用力率PFcには、商用電力状態検出部332による算出値が用いられる。
また、電力算出部333は、次式(28)により、負荷電力Pdを算出する。
Pd=Pp+Pcb ・・・(28)
一方、電力算出部333は、売電状態の場合、次式(29)乃至(31)により、発電電力Pp、購入電力Pcbおよび販売電力Pcsを算出する。
Pp=Vp×Ip×PFp ・・・(29)
Pcb=0 ・・・(30)
Pcs=Vc×Ic×PFc ・・・(31)
なお、式(29)は、式(25)と同じ式であり、式(31)の右辺は、式(26)の右辺と同じである。
また、電力算出部333は、次式(32)により、負荷電力Pdを算出する。
Pd=Pp−Pcs ・・・(32)
そして、電力算出部134は、各部の電力の算出値を表示部123および通信部124に通知する。
ステップS105およびS106の処理は、図3のステップS5およびS6の処理と同様であり、その説明は繰り返しになるので省略する。
その後、処理はステップS101に戻り、ステップS101以降の処理が実行される。
以上のようにして、電力監視システム101と同様に、電圧の測定器を電力系統に設置することなく、変流器111p,111cのみを電力系統に設置し、発電電流ipおよび商用電流icを測定するだけで、商用電力潮流方向を検出することができる。また、商用力率PFc(位相差Δφc)の変動に関わらず、発電電力Pp、販売電力Pcs、購入電力Pcb、負荷電力Pdをほぼ正確に測定することができる。
<3.変形例>
以上の説明では、単相2線式の電力系統に本発明を適用する例を示したが、本発明は、単相3線式の電力系統にも適用することが可能である。
図17は、単相3線式の場合の変流器の設置方法の例を示している。この図に示されるように、変流器351と変流器352の2つの変流器を、電圧線L1と中性線Nとの間(以下、L1相と称する)、および、電圧線L2と中性線Nとの間(以下、L2相と称する)にそれぞれ設けるようにすればよい。
なお、単相3線式の場合、発電電流ipおよび商用電流icの測定が離散的にかつシリアルに行われるときには、例えば、L1相の発電電流ip、L1相の商用電流ic、L2相の発電電流ip、L2相の商用電流ic、・・・の順のように、同じ相の電流を連続して測定するようにした方がよい。
また、以上の説明では、判定値D1、D2、D5、D6、D7(θ)、D8(θ)、D9(j)、および、D10(j)を算出する際に、発電電流ipおよび商用電流icの乗算値を1周期の間積算する例を示したが、n周期(ただし、nは2以上の自然数)の間積算するようにしてもよい。
また、以上の説明では、商用電流icの測定値の位相φciを移動させながら、判定値D7(θ)、D8(θ)、D9(j)、および、D10(j)を算出する例を示したが、発電電流ipの測定値の位相φpiを移動させながら算出するようにしてもよい。
さらに、変流器111pおよび変流器111cの設置方向は、上述した例に限定されるものではなく、任意の方向に設定することができる。なお、変流器111pおよび変流器111cの一方のみを上述した例と逆方向に設置した場合、商用電力潮流方向の判定結果は、上述した例と逆になる。
また、以上の説明では、電圧vspおよび電圧vscの値を発電電流ipおよび商用電流icの値に変換してから、判定値を算出するようにしたが、電圧vspおよび電圧vscをそのまま用いて判定値を算出するようにしてもよい。この場合、基本的に、上述した式(1)乃至式(6)および(20)乃至(23)の発電電流ipおよび商用電流icを、電圧vspおよび電圧vscに置き換えるだけでよい。
さらに、第1の実施の形態の商用電力潮流方向の検出方法を、第2の実施の形態で用いたり、第2の実施の形態の商用電力潮流方向の検出方法を、第1の実施の形態で用いたりするようにしてもよい。
また、例えば、発電電流ipの測定値および時間帯等に基づいて、商用電力潮流方向を判定するようにしてもよい。
例えば、発電電流ipの測定値が所定の閾値以上の場合、すなわち、太陽光発電システム151の発電量が多い場合、売電状態であると判定し、所定の閾値未満の場合、すなわち、太陽光発電システム151の発電量が少ない場合、買電状態であると判定するようにしてもよい。なお、この閾値を時間帯等により変動させてもよい。例えば、在宅率が低く、負荷電力Pdが小さいと想定される平日の昼間には、閾値を低く設定し、在宅率が高く、負荷電力Pdが大きいと想定される休日の昼間には、閾値を高く設定するようにしてもよい。
また、例えば、太陽光発電システム151が発電を行わない日没から日の出までの時間帯や、曇天または雨天の場合に、無条件で買電状態であると判定するようにしてもよい。
さらに、以上の説明では、発電電圧vpを定数とする例を示したが、例えば、太陽光発電システム151から発電電圧vpの測定値を取得して、各種の演算に用いるようにしてもよい。
また、本発明の実施の形態では、太陽光発電以外にも、例えば、風力発電、ディーゼル発電、燃料電池等、任意の方式の自家発電装置を採用することができる。
さらに、本発明は、一般の家庭以外にも、例えば、ビル、工場、商業施設、公共施設等の自家発電装置を備えた各種の施設の電力系統に適用することが可能である。
[コンピュータの構成例]
上述した検出装置112および検出装置311の一連の処理は、ハードウエアにより実行することもできるし、ソフトウエアにより実行することもできる。一連の処理をソフトウエアにより実行する場合には、そのソフトウエアを構成するプログラムが、コンピュータにインストールされる。ここで、コンピュータには、専用のハードウエアに組み込まれているコンピュータや、各種のプログラムをインストールすることで、各種の機能を実行することが可能な、例えば汎用のパーソナルコンピュータなどが含まれる。
図18は、上述した一連の処理をプログラムにより実行するコンピュータのハードウエアの構成例を示すブロック図である。
コンピュータにおいて、CPU(Central Processing Unit)401,ROM(Read Only Memory)402,RAM(Random Access Memory)403は、バス404により相互に接続されている。
バス404には、さらに、入出力インタフェース405が接続されている。入出力インタフェース405には、入力部406、出力部407、記憶部408、通信部409、及びドライブ410が接続されている。
入力部406は、キーボード、マウス、マイクロフォンなどよりなる。出力部407は、ディスプレイ、スピーカなどよりなる。記憶部408は、ハードディスクや不揮発性のメモリなどよりなる。通信部409は、ネットワークインタフェースなどよりなる。ドライブ410は、磁気ディスク、光ディスク、光磁気ディスク、又は半導体メモリなどのリムーバブルメディア411を駆動する。
以上のように構成されるコンピュータでは、CPU401が、例えば、記憶部408に記憶されているプログラムを、入出力インタフェース405及びバス404を介して、RAM403にロードして実行することにより、上述した一連の処理が行われる。
コンピュータ(CPU401)が実行するプログラムは、例えば、パッケージメディア等としてのリムーバブルメディア411に記録して提供することができる。また、プログラムは、ローカルエリアネットワーク、インターネット、デジタル衛星放送といった、有線または無線の伝送媒体を介して提供することができる。
コンピュータでは、プログラムは、リムーバブルメディア411をドライブ410に装着することにより、入出力インタフェース405を介して、記憶部408にインストールすることができる。また、プログラムは、有線または無線の伝送媒体を介して、通信部409で受信し、記憶部408にインストールすることができる。その他、プログラムは、ROM402や記憶部408に、あらかじめインストールしておくことができる。
なお、コンピュータが実行するプログラムは、本明細書で説明する順序に沿って時系列に処理が行われるプログラムであっても良いし、並列に、あるいは呼び出しが行われたとき等の必要なタイミングで処理が行われるプログラムであっても良い。
また、本明細書において、システムの用語は、複数の装置、手段などより構成される全体的な装置を意味するものとする。
さらに、本発明の実施の形態は、上述した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能である。