JP5880029B2 - 2またはそれ以上の種類の形態で存在する物質の測定方法 - Google Patents
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速度と比較して低い。よって、等モルのfPSAとPSA−ACTを測定する際に、免疫反応が平衡に達する前に免疫反応を打ち切ると、fPSAの存在量が見掛け上大きくなってしまう。このように、fPSAとPSA−ACTでは抗体との反応性が顕著に異なるため、等モル反応性を成立させるには長い反応時間が必要となる。測定開始後一刻も早く測定結果を得たいという臨床検査分野における要望に従い、等モル反応性が成立する前に免疫反応を終了させようとすると、存在形態の異なる測定対象物質が異なる値(存在量)として測定される危険性がある。
[1]
2またはそれ以上の種類の形態で試料中に存在し得る測定対象物質の全量を測定する方法であって、
前記2またはそれ以上の種類の形態が、(A)遊離した形態および他の物質が結合した1またはそれ以上の種類の複合体の形態、または、(B)他の物質が結合した2またはそれ以上の種類の複合体の形態であり、
(ア)検出可能な標識物質が結合した、測定対象物質の全形態と特異的に結合する物質(標識特異物質)、(イ)水不溶性担体に結合した、測定対象物質の全形態と特異的に結合する物質(固相特異物質)、及び(ウ)測定対象物質の全形態と固相特異物質との結合を阻害する物質(阻害特異物質)を使用し、前記標識特異物質と前記固相特異物質は、各
々別の部位で測定対象物質に同時に結合し得るものであり、以下の(1)から(5)の各工程を含むこと、を特徴とする、測定対象物質の全量を測定する方法:
(1)試料中の測定対象物質に標識特異物質を接触させる工程、
(2)前記工程(1)の前、工程(1)と同時、又は工程(1)の後のいずれかに、試料中の測定対象物質に阻害特異物質を接触させる工程、
(3)前記工程(2)の前、工程(2)と同時、又は工程(2)の後のいずれかに、試料中の測定対象物質に固相特異物質を接触させる工程、
(4)前記工程(3)の後に、固相特異物質に結合していない成分と結合した成分とを分離する工程、
(5)前記工程(4)の後に、固相特異物質に結合していない成分又は結合した成分のいずれかの成分に含まれる標識を検出する工程。
[2]
前記他の物質が複合体1分子あたり1分子結合している、[1]に記載の方法。
[3]
阻害特異物質と固相特異物質は、測定対象物質の同一の部位に結合する物質であることを特徴とする、[1]または[2]に記載の方法。
[4]
測定対象物質がタンパク質であり、標識特異物質、固相特異物質、及び阻害特異物質が測定対象物質に結合する抗体である、[1]〜[3]のいずれかに記載の方法。
[5]
前記工程(3)が、前記工程(1)及び工程(2)の後に行われる、[1]〜[4]のいずれかに記載の方法。
[6]
測定対象物質が前立腺特異抗原であり、
2またはそれ以上の種類の形態が、遊離の前立腺特異抗原及び前立腺特異抗原とα1−アンチキモトリプシンとの複合体であり、
標識特異物質が、標識物質が結合した第一の抗前立腺特異抗原抗体であり、
固相特異物質が、固相に結合した、第一の抗前立腺特異抗原抗体とは抗原結合部位が異なる第二の抗前立腺特異抗原抗体であり、
阻害特異物質が、第二の抗前立腺特異抗原抗体と競合する抗体であることを特徴とする、[1]〜[5]のいずれかに記載の方法。
[7]
阻害特異物質が第二の抗前立腺特異抗原抗体と同じ抗体である、[6]に記載の方法。
以上であってもよい。また、遊離した形態の測定対象物質に結合する他の物質の分子数は、形成される複合体1分子当たり1分子であってもよく、2分子またはそれ以上であってもよい。上記(A)において、形成される複合体の種類は、1種類であってもよく、2種類またはそれ以上であってもよい。上記(B)において、形成される複合体の種類は、2種類であってもよく、3種類またはそれ以上であってもよい。
品等が挙げられる。本発明は液相系での反応を利用するものであることから、本来液体ではない試料を測定する場合は、当該試料自体を液体に懸濁等したもの、又は、当該試料から測定対象物質を抽出して得られる液体を試料とすることができる。測定対象物質の抽出は、例えば、当業者によく知られた手法により行えばよい。試料は、特段の前処理なく測定に用いてもよく、前処理を行ってから測定に用いてもよい。例えば、特異物質と測定対象物質との反応を阻害し得る妨害物質が試料中に存在する場合には、当該妨害物質を事前に除去等することが好ましい。
物質を構成する「測定対象物質に特異的に結合する物質」は単一の物質である必要はなく、二種類以上の物質の混合物であっても良い。具体的には、例えば、当該物質として抗体を利用する場合、抗体はモノクローナル抗体であってもよく、二種類以上の抗体の混合物であるポリクローナル抗体であってもよい。
ば、当該物質として抗体を利用する場合、抗体はモノクローナル抗体であってもよく、二種類以上の抗体の混合物であるポリクローナル抗体であってもよい。
タを、単に「測定値」あるいは「測定値(シグナル強度)」のように記載する場合がある。
物質を決定後、各形態の測定対象物質を既知濃度含む試料を作製し、この試料について、固相特異物質を構成する、測定対象物質に特異的に結合する物質の量、反応時間、使用する阻害特異物質の量について検討を行い、工程(2)の詳細を決定することが好ましい。より具体的には、阻害特異物質を共存させることによって見かけ上の等モル反応性を成立させるには、共存させる阻害特異物質の量(濃度)を、測定値(シグナル強度)が、2またはそれ以上の形態で存在する測定対象物質の存在比に依存しないように、言い換えれば、試料中に存在する測定対象物質が取り得る2またはそれ以上の形態の存在比によらず、測定対象物質の全量が変わらなければ同一の測定結果が得られるように調整する。このためには、種々の濃度の阻害特異物質を使用してある形態の測定対象物質のみを測定する場合の、阻害特異物質の濃度と測定値(シグナル強度)との関係を示す曲線と、他の形態の測定対象物質のみを測定する場合の同様の曲線の両者が一点で交わる、すなわち、種々の形態で存在する同モル数の測定対象物質に対し、同一濃度の阻害特異物質を使用した場合に、同一の測定値(シグナル強度)を与える点がただひとつ存在すれば良く、工程(2)においては当該濃度の阻害特異物質を使用すれば良い。
させることが可能な場合とそうではない場合が存在する。具体的には、固相としてマイクロタイタープレートや容器の内壁を利用する場合、阻害特異物質と測定対象物質との反応は、固相特異物質と測定対象物質との反応に対して著しく優位であるため、少ない阻害特異物質の使用により容易に等モル反応性を成立させることができる。それに対し、微粒子、例えば粒径1μmから10μm程度の微粒子を固相として使用する場合、前記で見られた阻害特異物質と測定対象物質との反応の優位性は低下するため、比較的大量の阻害特異物質を使用する必要性が生じ、またこれによって測定値(シグナル強度)が低下するために、等モル反応の成立は比較的困難である。
(1)試料中の測定対象物質に標識特異物質を接触させる工程、
(2)前記工程(1)の前、工程(1)と同時、又は工程(1)の後のいずれかに、試料中の測定対象物質に阻害特異物質を接触させる工程、
(3)前記工程(1)及び工程(2)の後に、試料中の測定対象物質に固相特異物質を接触させる工程、
(4)前記工程(3)の後に、固相特異物質に結合していない成分と結合した成分とを分離する工程、
(5)前記工程(4)の後に、固相特異物質に結合していない成分又は結合した成分のいずれかの成分に含まれる標識を検出する工程。
知の測定対象物質を含む標準試料を用いて本発明の方法を実施し、測定対象物質の全量と得られる測定値(シグナル強度)との間の相関データを取得し、当該相関データに基づき被験試料に存在する測定対象物質の全量を算出すればよい。相関データとは、例えば検量線である。
液相反応であることから境膜拡散などの過程を経るために反応が遅く、fPSAとPSA−ACTとでは反応性が顕著に相違する。これは、例えば粒径がμmオーダーの微粒子等を固相として使用し、高密度かつ均一に分散させることによってfPSA及びPSA−ACTの固相表面との拡散距離を短くすることで反応性を高くしたとしても、固相抗体とfPSA又はPSA−ACTとの反応性の違いを完全に解消することは困難である。このため、従来、反応平衡に達するまでの十分な時間、反応を行うことなしにfPSAとPSA−ACTの固相抗体に対する反応性を等価にすることは、極めて困難であった。
体)とを接触させて反応させることが好ましい。具体的には、fPSA及びPSA−ACTを含む試料と、阻害抗体及び標識抗体を先に接触させて反応させ、一定時間経過後に、固相抗体を遅らせて試料に接触させ反応させることを例示できる。阻害抗体と試料とを接触させてから、固相抗体と試料とを接触させるまでの遅らせる時間は、固相抗体とfPSA及びPSA−ACTとの反応速度と阻害抗体とfPSA及びPSA−ACTとの反応速度のバランス等によって決定すれば良いが、本発明者の知見によれば、好ましくは15秒から20分、より好ましくは1分から10分である。
磁性微粒子(粒子径2.8μm;ダイナル社製)10mgに、PSA−ACTのACTによって被覆されないPSA部分を認識する第一の抗体(東ソー製;Eテスト「TOSOH」II(PSA II)に含まれる)0.1mgを常法に従って結合させ固相抗体とした。第一の抗体と互いに結合部位を競合せずにACTによって被覆されないPSA部分に結合する第二の抗体(東ソー製;Eテスト「TOSOH」II(PSA II)に含まれる)にウシ小腸アルカリフォスファターゼを結合させたものを酵素標識抗体とした。この固相抗体400ngと酵素標識抗体25ngに加え、種々の濃度の、固相用抗体と同一の第一の抗体(以下、添加抗体と称する)を添加した溶液0.05mLを免疫反応用のカップに入れ、ここに抗原として2ng/mL又は30ng/mLのfPSAを20μL添加した(1ステップサンドイッチ法)。37℃にて9分間免疫反応を行なわせ、その後洗浄して固相の磁性微粒子上の抗体に結合していない成分を除去し、そこにジオキセタン系の化学発光基質を添加し、その発光強度変化を測定した。つぎに、抗原としてfPSAの代わりにPSA−ACTをfPSAと等モル(fPSA量換算で2ng/mL又は30ng/mLを20μL)添加し、同様に測定した。それらの結果を図5に合わせてプロットした。
免疫反応用カップにあらかじめ標識抗体は入れず、抗原と固相抗体および添加抗体との第1反応を5分、中間B/F(Bound/Free)洗浄を1分、標識抗体との第2反応を3分実施する2ステップサンドイッチ法を行い、添加抗体の効果を検討した。抗原としては、10ng/mL又は30ng/mLのfPSAを20μL、または、fPSAの代わりにPSA−ACTをfPSAと等モル(fPSA量換算で10ng/mL又は30ng/mLを20μL)添加して測定した。他の条件は実施例1と同じである。結果を図6に示す。2ステップサンドイッチ法においても1ステップサンドイッチ法の図5と同様に、添加抗体濃度を増すことによって、同じモル濃度におけるfPSAとPSA−ACTのシグナル強度が接近し、等モル反応性を達成できることが明らかになった。しかし、実施例1と同様に、両者のシグナル強度を完全に一致させるためには比較的高い濃度の添加抗体を必要とする。
実施例1及び2においては、添加抗体の利用により等モル反応性を達成することができたが、等モル反応性の達成には比較的高濃度の添加抗体が必要であった。そこで、その点を改良するために、固相抗体と抗原との固−液反応が開始される前に添加抗体による抗原との液−液反応を開始することを検討した。
Claims (7)
- 2またはそれ以上の種類の形態で試料中に存在し得る測定対象物質の全量を測定する方法であって、
前記2またはそれ以上の種類の形態が、(A)遊離した形態および他の物質が結合した1またはそれ以上の種類の複合体の形態、または、(B)他の物質が結合した2またはそれ以上の種類の複合体の形態であり、
(ア)検出可能な標識物質が結合した、測定対象物質の全形態と特異的に結合する物質(標識特異物質)、(イ)水不溶性担体に結合した、測定対象物質の全形態と特異的に結合する物質(固相特異物質)、及び(ウ)測定対象物質の全形態と固相特異物質との結合を阻害する物質(阻害特異物質)を使用し、前記標識特異物質と前記固相特異物質は、各々別の部位で測定対象物質に同時に結合し得るものであり、以下の(1)から(5)の各工程を含むこと、を特徴とする、測定対象物質の全量を測定する方法:
(1)試料中の測定対象物質に標識特異物質を接触させる工程、
(2)前記工程(1)の前、工程(1)と同時、又は工程(1)の後のいずれかに、試料中の測定対象物質に阻害特異物質を接触させる工程、
(3)前記工程(2)の前、工程(2)と同時、又は工程(2)の後のいずれかに、試料中の測定対象物質に固相特異物質を接触させる工程、
(4)前記工程(1)、(2)、及び(3)の後に、固相特異物質に結合していない成分と結合した成分とを分離する工程、
(5)前記工程(4)の後に、固相特異物質に結合していない成分又は結合した成分のいずれかの成分に含まれる標識を検出する工程。 - 前記他の物質が複合体1分子あたり1分子結合している、請求項1に記載の方法。
- 阻害特異物質と固相特異物質は、測定対象物質の同一の部位に結合する物質であることを特徴とする、請求項1または2に記載の方法。
- 測定対象物質がタンパク質であり、標識特異物質、固相特異物質、及び阻害特異物質が測定対象物質に結合する抗体である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
- 前記工程(3)が、前記工程(1)及び工程(2)の後に行われる、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
- 測定対象物質が前立腺特異抗原であり、
2またはそれ以上の種類の形態が、遊離の前立腺特異抗原及び前立腺特異抗原とα1−アンチキモトリプシンとの複合体であり、
標識特異物質が、標識物質が結合した第一の抗前立腺特異抗原抗体であり、
固相特異物質が、固相に結合した、第一の抗前立腺特異抗原抗体とは抗原結合部位が異なる第二の抗前立腺特異抗原抗体であり、
阻害特異物質が、第二の抗前立腺特異抗原抗体と競合する抗体であることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。 - 阻害特異物質が第二の抗前立腺特異抗原抗体と同じ抗体である、請求項6に記載の方法。
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