JP5878871B2 - 新規アミノ基転移酵素、およびこれをコードする遺伝子、ならびにこれらの利用法 - Google Patents

新規アミノ基転移酵素、およびこれをコードする遺伝子、ならびにこれらの利用法 Download PDF

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Description

本発明は、アミノ基転移反応により、ケトン化合物を効率よく光学活性アミノ化合物に変換しうる酵素および該酵素を用いた光学活性アミノ化合物の製造方法に関する。得られる光学活性アミノ化合物は、医薬品や農薬等の中間体として利用しうる。
アミノ基転移酵素を用いた光学活性アミノ化合物の製法に関して、これまでにα−アミノ酸の製法については多くの報告があるが、α−アミノ酸以外の光学活性アミノ化合物の製法については報告例が少ない。近年、α−アミノ酸以外の光学活性アミノ化合物を生成するアミノ基転移酵素が見出され、一般的な光学活性アミノ化合物の効率的な製法としての利用が期待されている。
しかし、これまでに知られているα−アミノ酸以外の光学活性アミノ化合物を生成するアミノ基転移酵素には課題が多い(非特許文献1)。
例えば、水溶性有機溶媒に対する耐性が低く、メタノール、THF、DMFを10%v/v添加することで、酵素活性の半減期が約5時間から3.5時間以下へと低下する。
また、α−アミノ酸以外の光学活性アミノ化合物の中でも、特に医薬中間体として有用な(S)−1−ベンジル−3−アミノピロリジンを、93%e.e.以上の高光学純度で生成するアミノ基転移酵素は見出されていない(特許文献1,2、非特許文献2)。
特開2007−185133 WO2006/126498
Org. Biomol. Chem., 8, 1280−1283(2010) Adv. Synth. Catal. 350, 807−812(2008)
本発明の課題は、医薬品や農薬等の中間体として有用な光学活性アミノ化合物を、ケトン化合物から効率よく製造するための方法を提供することにある。
本発明者らは、様々な土壌分離菌を対象としたスクリーニングを行なった結果、水溶性有機溶媒に高い耐性を持ち、かつ、(S)−1−ベンジル−3−アミノピロリジンを93%以上の高い光学純度で生成する微生物を見出した。また、その微生物から該活性を有するポリペプチドの単離精製に成功した。また、このポリペプチドの反応特性について詳細な検討を行った結果、広範なケトン化合物に対して高い活性を示し、光学活性アミノ化合物を高い光学純度で生成し、水溶性有機溶媒中でも高い安定性を有することを見出した。さらに、該ポリペプチドをコードする遺伝子を後述の遺伝子工学的手法で取得し、その塩基配列を明らかにするとともに、該遺伝子を用いて当該ポリペプチドを高生産する形質転換体を取得した。さらに、育種条件を検討することにより、より高活性な光学活性アミノ化合物を工業的に製造し得る方法を確立した。
即ち、本発明は、下記(1)から(6)の理化学的性質を有するポリペプチドである:
(1)作用:アミノ基供与体と1−ベンジル−3−ピロリジノンとに作用して光学純度93%e.e.以上の(S)−1−ベンジル−3−アミノピロリジンを生成するアミノ基転移反応を触媒する。
(2)基質特異性:
(a)アミノ基供与体:(S)−1−フェネチルアミン、ベンジルアミンおよび±2−ブチルアミンに対し活性を示し、β−アラニン、および4−アミノ酪酸に対し実質的に活性を示さない。
(b)アミノ基受容体:ピルビン酸およびグリオキシル酸のそれぞれに対し活性を示す。
(3)水溶性有機溶媒耐性:終濃度80%v/vの1−プロパノール、2−プロパノール、アセトンのいずれかで2時間処理後の残存活性が、処理前の全活性の10%以上を保持する。
(4)至適pH:6.0〜8.5、
(5)作用至適温度:60℃、
(6)熱安定性:30〜60℃で30分間熱処理したときの残存活性が、処理前の全活性の90%以上を保持する。
また、本発明は、配列表の配列番号1に示すアミノ酸配列と60%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなり、アミノ基供与体の存在下で1−ベンジル−3−ピロリジノンに作用して光学純度93%e.e.以上の(S)−1−ベンジル−3−アミノピロリジンを生成する活性を有するポリペプチドである。
または、配列表の配列番号1に示すアミノ酸配列において、1若しくは複数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入もしくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつ、アミノ基供与体の存在下で1−ベンジル−3−ピロリジノンに作用して光学純度93%e.e.以上の(S)−1−ベンジル−3−アミノピロリジンを生成する活性を有するポリペプチドである。
また、本発明は、前記ポリペプチドをコードするDNA、該DNAを含むベクター、および、このベクターにより形質転換された形質転換体でもある。
また、本発明は、ケトン化合物に、アミノ基供与体の存在下、前記ポリペプチド、あるいは前記形質転換体の培養物を作用させることを特徴とする光学活性アミノ化合物の製造方法である。
また、アミノ化合物のエナンチオマー混合物にアミノ基受容体の存在下、前記ポリペプチド、または前記形質転換体の培養物を作用させることを特徴とする光学活性アミノ化合物の製造方法である。
本明細書は本願の優先権の基礎である日本国特許出願2010−216547号に記載された全ての内容を包含する。
広範なケトン化合物に対して高い活性を示し、光学活性アミノ化合物を高い光学純度で生成し、水溶性有機溶媒中でも高い活性を維持するポリペプチドの単離、および、該ポリペプチド産生能の高い形質転換体の取得により、目的の光学活性アミノ化合物を効率良く製造することが可能となった。
以下、本発明を詳細に説明する。なお、本明細書において記述されている、DNAの単離、ベクターの調製、形質転換等の遺伝子操作は、特に明記しない限り、「Molecular Cloning 2nd Edition(Cold Spring Harbor Laboratory Press, 1989)、Current Protocols in Molecular Biology(Greene Publishing Associates and Wiley−Interscience)」等の成書に記載されている方法により行なうことができる。また、酵素活性の単位は特に明記しない限り、1分間に1μmolの生成物を与える酵素量を1Uとする。
1.本発明のポリペプチドの理化学的諸性質
本発明において後述の方法により単離されたポリペプチドは、以下の理化学的性質を有するポリペプチドである。
(1)作用:アミノ基供与体の存在下で1−ベンジル−3−ピロリジノンに作用して光学純度93%e.e.以上の(S)−1−ベンジル−3−アミノピロリジンを生成するアミノ基転移反応を触媒する。
(2)基質特異性:
(a)アミノ基供与体:(S)−1−フェネチルアミン、ベンジルアミンおよび±2−ブチルアミンに対して活性を示し、β−アラニン、および、4−アミノ酪酸に対して実質的に活性を示さない。
(b)アミノ基受容体:ピルビン酸およびグリオキシル酸のそれぞれに対し活性を示す。
(3)水溶性有機溶媒耐性:終濃度80%v/vの1−プロパノール、2−プロパノール、アセトンのいずれかで2時間処理後の残存活性が処理前の全活性の10%以上を保持する。
(4)至適pH:6.0〜8.5、
(5)作用至適温度:60℃、
(6)熱安定性:30〜60℃で30分間熱処理したときの残存活性が、処理前の全活性の90%以上を保持する。
(1−ベンジル−3−ピロリジノンへの立体選択性の測定方法)
本発明のポリペプチドは、アミノ基供与体の存在下で1−ベンジル−3−ピロリジノンに作用して光学純度93%e.e.以上、好ましくは95%e.e.以上、さらに好ましくは97%e.e.以上、最も好ましくは98%e.e.以上の(S)−1−ベンジル−3−アミノピロリジンを生成するアミノ基転移反応を触媒する。
上記の性質は、以下の方法により測定することができる。すなわち、精製ポリペプチドを終濃度0.1mg/mL〜1mg/mLとなるように下記組成を有する基質溶液に添加し、30℃で反応させる。さらに、下記定量分析により、0.6mM以上の1−ベンジル−3−アミノピロリジンが生成するまで反応を継続させ、反応終了後、反応液中に生成した1−ベンジルー3−アミノピロリジンの光学純度を下記条件のHPLCで分析することにより測定しうる。酵素使用量や反応時間によって、生成(S)−1−ベンジル−3−アミノピロリジンの光学純度が変化する場合には、最も高い光学純度の値を採用する。
[基質溶液組成]
(S)−1−フェネチルアミン 85.6mM
1−ベンジル−3−ピロリジノン 57.1mM
ピリドキサルリン酸 0.5mM
リン酸カリウム緩衝液(pH7.0) 0.1M
[高速液体クロマトグラフィーによる測定条件]
<定量分析>
カラム:Finepak SIL C18−T (日本分光社製)
溶離液:蒸留水 1260mL/アセトニトリル 740mL/KHPO 10g/SDS 2.88g(pH3.6)
流速:1mL/分
検出:254nm
カラム温度:40℃
<光学純度分析>
反応液を適量の炭酸ナトリウムで塩基性にした後、ジニトロベンゾイルクロリドで誘導体化する。その後、必要に応じてシリカゲルクロマトグラフィー等により精製して、以下の条件で分析する。
カラム:Chiralpak IA(ダイセル化学工業社製)
溶離液:ヘキサン/エタノール/ジエチルアミン/アセトニトリル=800/200/1/5(体積比)
流速:0.8mL/分
検出:254nm
カラム温度:30℃
(基質特異性1:各種アミンに対する活性)
本発明のポリペプチドは、(S)−1−フェネチルアミン、ベンジルアミンおよび±2−ブチルアミンに対して活性を示し、β−アラニン、および4−アミノ酪酸に対して実質的に活性を示さない。ここで、(S)−1−フェネチルアミンに活性を示すとは、以下の方法でアミノ基転移活性を測定した場合において、1分間に生成するアセトフェノンの量が精製ポリペプチド1mgに対し0.1μmol以上、好ましくは1μmol以上、より好ましくは10μmol以上であることを意味する。
上記アミノ基転移活性は、以下の方法で測定することができる。すなわち、まず、精製ポリペプチドを下記組成の基質溶液に添加して総容量を1mLとし、30℃で5分間反応後、6規定の塩酸0.05mLを添加して反応を停止させる。その後、下記条件のHPLCで分析し、生成したアセトフェノンを定量する(以下、活性測定法Aとする)。
活性測定法A
[基質溶液組成]
(S)−1−フェネチルアミン 25mM
ピルビン酸ナトリウム 25mM
ピリドキサルリン酸 2.5mM
トリス塩酸緩衝液(pH8.0) 0.1M
[高速液体クロマトグラフィーによる測定条件]
カラム:Wakosil−II 5C18 RS(和光純薬社製)
溶離液:10mM りん酸カリウム緩衝液 (pH5.3):アセトニトリル=3:2
流速:1mL/分
検出:241nm
また、ベンジルアミンおよび±2−ブチルアミンに対して活性を示すとは、以下の方法でアミノ基転移活性を測定した場合において、上記アミノ化合物をアミノ基供与体として用いた場合の活性が、(S)−1−フェネチルアミンを用いた場合の1/10以上、好ましくは1/5以上、更に好ましくは1/2以上であることを意味する。また、β−アラニン、および4−アミノ酪酸に対して実質的に活性を示さないとは、以下の方法でアミノ基転移活性を測定した場合において、上記アミノ化合物をアミノ基供与体として用いた場合の活性が(S)−1−フェネチルアミンを用いた場合の1/50以下、好ましくは1/100以下、更に好ましくは1/1000以下であることを意味する。
上記のアミノ基供与体を用いた際のアミノ基転移活性は、以下の方法で測定することができる。すなわち、まず、精製ポリペプチドを下記組成の基質溶液に添加して400uLとし、30℃、1時間反応後、3規定の塩酸20μLを加えて反応を停止させる。次に、得られた反応液20μLに0.2M炭酸ナトリウム水溶液80μL、3.3mg/mLダブシルクロリドのアセトン溶液200μLをそれぞれ加え、70℃で10分間反応させる。これに酢酸20μLを加えて攪拌し、この反応液を下記条件のHPLCで分析し、ダブシル化したアラニンを定量する。なお、使用する精製ポリペプチドの濃度は、本測定方法において、生成アラニン量が2.8mM以下となるように調整する(以下、活性測定法Bとする)。
活性測定法B
[基質溶液組成]
各種アミノ化合物 14mM
ピルビン酸 14mM
ピリドキサルリン酸 0.02mM
リン酸カリウム緩衝液(pH7.5) 0.1M
[高速液体クロマトグラフィーによる測定条件]
カラム:Deverosil ODS−HG−3(NOMURA CHEMICAL製)
溶離液:アセトニトリル/0.045M酢酸緩衝液(pH4.1)=35/65(体積比)
流速:0.9mL/分
検出:254nm
(基質特異性2:グリオキシル酸に対する活性)
本発明のポリペプチドは、ピルビン酸に代えて、グリオキシル酸をアミノ基受容体としても活性を示す。すなわち、前記活性測定法Aにおいて、ピルビン酸に代えてグリオキシル酸をアミノ基受容体として測定したアミノ基転移活性が、ピルビン酸をアミノ基受容体として測定した活性を100%とした相対活性で10%以上、好ましくは20%以上、より好ましくは30%以上の活性を示す。
(水溶性有機溶媒に対する耐性)
本発明のポリペプチドは、水溶性有機溶媒に高い耐性を示す。すなわち、終濃度80%v/vの1−プロパノール、2−プロパノール、アセトンのいずれかで2時間処理後の残存活性が、処理前の全活性の10%以上を保持する。
使用する水溶性有機溶媒の濃度は、10%v/v、好ましくは30%v/v、より好ましくは50%v/v、最も好ましくは80%v/vである。水溶性溶媒処理後の残存活性は、10%以上、好ましくは20%以上、より好ましくは30%以上、さらに好ましくは50%、最も好ましくは80%以上を保持する。
ここで、水溶性有機溶媒とは、水と任意の比率で混合する溶媒を指す。例えば、酢酸、アセトン、アセトニトリル、DMF、DMSO、エタノール、メタノール、2−プロパノール、1−プロパノール、THFなどが挙げられる。好ましくは、1−プロパノール、2−プロパノール、アセトンである。
水溶性有機溶媒耐性が高いことにより、例えば、水溶性の低い基質に対しても反応性の向上が期待できる。
水溶性有機溶媒耐性は、以下の方法により測定することができる。すなわち、まず、精製ポリペプチドを含む0.5mMのPLPを添加した0.1Mリン酸カリウム水溶液(pH7.5)200uLに、各水溶性有機溶媒800uLを添加し、30℃で2hr接触させる。その後、0.5mMのPLPを添加した0.1Mリン酸カリウム水溶液で希釈する。この希釈液と、溶媒添加前の精製ポリペプチド溶液の活性を前述の活性測定法Aを用いて比較する。
(至適pH)
アミノ基転移反応の至適pHは、前述の活性測定法Aを用いて、以下に記載の緩衝液とpHの組み合わせで測定する。至適pHとは、本測定にて最も高い活性値を100としたきに、80以上の活性を示すpHとする。同一pHであっても緩衝液の種類によって活性値が異なる場合には、より高い活性値を採用する。
pH4.0、4.5、5.0、5.5の場合:0.1M酢酸ナトリウム緩衝液
pH6.0、6.5、7.0、7.5、8.0の場合:0.1Mリン酸カリウム緩衝液
pH7.5、8.0、8.5、9.0の場合:0.1Mトリス塩酸緩衝液
(至適温度)
アミノ基転移反応の至適温度は、前述の活性測定法Aを用いた測定において、反応温度が10℃、20℃、30℃、40℃、50℃、60℃、70℃の中で最大の活性値を示した温度とする。
(熱安定性)
ポリペプチドの熱安定性は、精製ポリペプチドを、0.5mMのピリドキサルリン酸を含む、0.1Mリン酸カリウム緩衝液(pH7.5)中、30℃、40℃、50℃、60℃、70℃、80℃で30分間熱処理した後、前述の活性測定法Aを用いた測定において、熱処理前の活性を100%としたとき、熱処理後90%以上の残存活性を有する範囲とする。
(分子量)
本発明のポリペプチドの分子量はおよそ50,000であり、10% SDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動により、標準蛋白質に対する相対移動度から決定しうる。
2.本発明のポリペプチドの単離
本発明のポリペプチドは、上記性質を示すポリペプチドであれば、いかなるポリペプチドであっても含まれるが、例えば、シュードモナス(Pseudomonas)属の微生物から取得できる。本発明の実施形態のポリペプチドの起源となる微生物としては、好ましくは当業者が公的保存機関(例えばNBRC等)より容易に入手可能なシュードモナス・エスピー(Pseudomonas sp.)が挙げられ、さらに好ましくは、シュードモナス・エスピー(Pseudomonas sp.)MV37が挙げられる。この、シュードモナス・エスピー(Pseudomonas sp.)MV37は、2010年6月11日付けで、受託番号NITE P−953として、独立行政法人製品評価技術基盤機構、特許微生物寄託センター(〒292−0818千葉県木更津市かずさ鎌足2−5−8)に寄託されている。
(培地成分)
本発明のポリペプチドを有する微生物のための培養培地としては、その微生物が増殖する限り、通常の炭素源、窒素源、無機塩類、有機栄養素などを含む液体栄養培地が用いられ得る。
なお、前記微生物を培養する際に、本発明のポリペプチドの誘導物質として、プロピルアミン、1−ブチルアミン、2−ブチルアミン、2−ペンチルアミン、イソプロピルアミン、イソブチルアミン、7−メトキシ−2−アミノテトラリン、1−フェネチルアミン、1−ベンジル−3−アミノピロリジンなどのアミノ化合物を培地に添加し、培養することもできる。前記誘導物質は、単独でまたは2種類以上を混合して用いてもよい。前記誘導物質の添加量は、特に制限されるものではないが、菌の生育阻害などの観点から、通常培地組成中1重量%以下が好ましい。また、前記誘導物質の添加時期は、特に制限されるものではなく、培養開始時、または、培養途中のいずれでもよい。また、前記誘導物質の効果を高めるために、前記誘導物質以外の通常の炭素源、窒素源、無機塩類、有機栄養素を少なくすることが有効な場合がある。
(ポリペプチドの精製)
本発明のポリペプチドを生産する微生物から該ポリペプチドを精製するには、当業者に周知の蛋白質精製法が利用できる。例えば、当該微生物の培養液から遠心分離、あるいは、濾過により菌体を集め、得られた菌体を、超音波破砕機あるいはグラスビーズ等を用いた物理的手法で破砕した後、遠心分離にて菌体残さを除いて無細胞抽出液を調製し、この無細胞抽出液を、分別沈殿、イオン交換クロマトグラフィー、疎水性クロマトグラフィー、ゲル濾過クロマトグラフィー、逆相クロマトグラフィー、限外濾過等に供することにより、目的のポリペプチドを単離できる。
3.本発明のポリペプチドのアミノ酸配列
本発明のポリペプチドとしては以下の(a)〜(c)のポリペプチドを挙げることができる。
(a)配列表の配列番号1に示すアミノ酸配列からなるポリペプチド、
(b)配列表の配列番号1に示すアミノ酸配列において、1もしくは複数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加されたアミノ酸配列からなり、かつ、アミノ基供与体の存在下で1−ベンジル−3−ピロリジノンに作用して光学純度93%e.e.以上の(S)−1−ベンジル−3−アミノピロリジンを生成する活性を有するポリペプチド、
(c)配列表の配列番号1に示すアミノ酸配列と60%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなり、アミノ基供与体の存在下で1−ベンジル−3−ピロリジノンに作用して光学純度93%e.e.以上の(S)−1−ベンジル−3−アミノピロリジンを生成する活性を有するポリペプチド。
配列表の配列番号1に示したアミノ酸配列において、1若しくは複数個のアミノ酸が置換、挿入、欠失および/または付加されたアミノ酸配列からなるポリペプチドは、「Current Protocols in Molecular Biology(John Wiley and Sons, Inc., 1989)」等に記載の公知の方法に準じて調製することができ、アミノ基供与体の存在下で1−ベンジル−3−ピロリジノンに作用して光学純度93%e.e.以上の(S)−1−ベンジル−3−アミノピロリジンを生成する活性を有する限り上記ポリペプチドに包含される。
配列表の配列番号1に示したアミノ酸配列において、アミノ酸が置換、挿入、欠失および/または付加される場所は特に制限されないが、高度保存領域を避けるのが好ましい。ここで、高度保存領域とは、由来の異なる複数の酵素(ポリペプチド)ついて、アミノ酸配列を最適に整列させて比較した場合に、複数の配列間でアミノ酸が一致している位置を表す。高度保存領域は、配列番号1に示したアミノ酸配列と、前述した他の微生物由来のアミノ基転移酵素(ポリペプチド)のアミノ酸配列とを、GENETYX等のツールを用いて比較することにより確認することができる。
置換、挿入、欠失および/または付加により改変されたアミノ酸配列としては、1種類のタイプ(例えば置換)の改変のみを含むものであっても良いし、2種以上の改変(例えば、置換と挿入)を含んでいても良い。また、置換の場合には、置換するアミノ酸は、置換前のアミノ酸と類似の性質を有するアミノ酸(同族アミノ酸)であることが好ましい。ここでは、以下に挙げる各群の同一群内のアミノ酸を同族アミノ酸とする。
(第1群:中性非極性アミノ酸)Gly,Ala,Val,Leu,Ile,Met,Cys,Pro,Phe
(第2群:中性極性アミノ酸)Ser,Thr,Gln,Asn,Trp,Tyr
(第3群:酸性アミノ酸)Glu,Asp
(第4群:塩基性アミノ酸)His,Lys,Arg。
上記の記載で複数個のアミノ酸とは、例えば、60個、好ましくは20個、より好ましくは15個、さらに好ましくは10個、さらに好ましくは5個、4個、3個、または2個以下のアミノ酸を意味する。
配列表の配列番号1に示したアミノ酸配列との配列同一性は、60%以上が好ましいが、70%以上がより好ましく、80%以上がさらに好ましく、85%以上がさらに好ましく、90%以上がさらに好ましく、95%以上が最も好ましい。
アミノ酸配列の配列同一性は、配列表の配列番号1に示したアミノ酸配列と評価したいアミノ酸配列とを比較し、両方の配列でアミノ酸が一致した位置の数を比較総アミノ酸数で除して、さらに100を乗じた値で表される。
アミノ基供与体の存在下で1−ベンジル−3−ピロリジノンに作用して光学純度93%e.e.以上の(S)−1−ベンジル−3−アミノピロリジンを生成する活性を有する限り、配列番号1に記載のアミノ酸配列に、付加的なアミノ酸配列を結合することができる。たとえば、ヒスチジンタグやHAタグのような、タグ配列を付加することができる。あるいは、他のタンパク質との融合タンパク質とすることもできる。また、アミノ基転移の上記活性を有する限り、ペプチド断片であってもよい。
4.本発明のポリペプチドをコードするDNAのクローニング
本発明のDNAは、上記ポリペプチドをコードするDNAであり、後述する方法に従って導入された宿主細胞内で上記ポリペプチドを発現し得るものであればいかなるものでもよく、任意の非翻訳領域を含んでいてもよい。本発明のDNAは配列表の配列番号2に従い、当業者であれば化学的に合成することにより容易に入手できる。他の方法としては、精製された上記ポリペプチドが取得できれば、当業者であれば公知の方法により、該ポリペプチドの起源となる微生物より上記DNAを取得することができる。
以下に、本発明のDNAを取得する方法として、上記シュードモナス・エスピー(Pseudomonas sp.)MV37を用いた例を記載するが、本発明はこれに限定されない。
まず、該微生物の無細胞抽出液より精製した上記ポリペプチドを、適当なエンドペプチダーゼにより消化し、逆相HPLCにより切断された断片を精製後、例えば、ABI492型プロテインシークエンサー(Applied Biosystems社製)によりアミノ酸配列の一部または全部を決定する。このようにして得られたアミノ酸配列情報をもとにして、該ポリペプチドをコードするDNAの一部を増幅するためのPCR(Polymerase Chain Reaction)プライマーを合成する。次に、通常のDNA単離法、例えば、Visser等の方法(Appl. Microbiol. Biotechnol., 53, 415 (2000))により、該ポリペプチドの起源となる微生物の染色体DNAを調製する。この染色体DNAを鋳型として、先述のPCRプライマーを用いてPCRを行い、該ポリペプチドをコードするDNAの一部を増幅し、その塩基配列を決定する。塩基配列の決定は、例えば、ABI373A型 DNA Sequencer(Applied Biosystems社製)等を用いて行うことができる。該ポリペプチドをコードするDNAの一部の塩基配列が明らかになれば、例えば、インバースPCR法(Nucl.Acids Res.,16,8186(1988))によりその全体の配列を決定することができる。
このようにして得られるポリペプチドのDNAとして、例えば、配列表の配列番号2に示す塩基配列を含むDNAを挙げることができる。
以下に、配列表の配列番号2に示す塩基配列について説明する。
5.本発明のポリペプチドをコードするDNAの塩基配列
本発明のポリペプチドをコードするDNAとしては、例えば、以下の(A)〜(C)のDNAを挙げることができる。
(A)配列表の配列番号2に記載の塩基配列からなるDNA、
(B)配列表の配列番号2に記載の塩基配列と相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNA、
(C)配列表の配列番号2に記載の塩基配列において、1もしくは複数個の塩基が置換、欠失、挿入および/または付加されたDNA。
ここで、配列表の配列番号2に示した塩基配列と相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAとは、配列表の配列番号2に示した塩基配列と相補的な塩基配列からなるDNAをプローブとして、ストリンジェントな条件下にコロニー・ハイブリダイゼーション法、プラーク・ハイブリダイゼーション法、あるいはサザンハイブリダイゼーション法等を用いることにより得られるDNAを意味する。
ハイブリダイゼーションは、「Molecular Cloning, A laboratory manual, second edition (Cold Spring Harbor Laboratory Press, 1989)」等に記載されている方法に準じて行うことができる。ここで、ストリンジェントな条件でハイブリダイズするDNAとは、例えば、コロニーあるいはプラーク由来のDNAを固定化したフィルターを用いて、0.7〜1.0MのNaCl存在下、65℃でハイブリダイゼーションを行った後、2倍濃度のSSC溶液(1倍濃度のSSC溶液の組成は、150mM塩化ナトリウム、15mMクエン酸ナトリウムよりなる)を用い、65℃の条件下でフィルターを洗浄することにより取得できるDNAをあげることができる。好ましくは65℃で1倍濃度のSSC溶液で洗浄、より好ましくは65℃で0.5倍濃度のSSC溶液で洗浄、さらに好ましくは65℃で0.2倍濃度のSSC溶液で洗浄、最も好ましくは65℃で0.1倍濃度のSSC溶液で洗浄することにより取得できるDNAである。
以上のようにハイブリダイゼーション条件を記載したが、これらの条件に特に制限されない。ハイブリダイゼーションのストリンジェンシーに影響する要素としては温度や塩濃度など複数の要素が考えられ、当業者であればこれら要素を適宜選択することで最適なストリンジェンシーを実現することが可能である。
上記の条件にてハイブリダイズ可能なDNAとしては、配列番号2に示されるDNAとの配列同一性が70%以上、好ましくは74%以上、より好ましくは79%以上、さらにより好ましくは85%以上、最も好ましくは90%以上のDNAをあげることができ、コードされるポリペプチドが、上記のアミノ基転移活性を有する限り、上記DNAに包含される。
ここで、DNAの配列同一性(%)とは、対比される2つのDNAを最適に整列させ、核酸塩基(例えば、A、T、C、G、U、またはI)が両方の配列で一致した位置の数を比較塩基総数で除し、そして、この結果に100を乗じた数値で表される。
DNAの配列同一性は、例えば、以下の配列分析用ツールを用いて算出し得る:GCG Wisconsin Package(Program Manual for The Wisconsin Package, Version8, 1994年9月, Genetics Computer Group, 575 Science Drive Medison, Wisconsin, USA 53711; Rice, P. (1996) Program Manual for EGCG Package, Peter Rice, The Sanger Centre, Hinxton Hall, Cambridge, CB10 1RQ, England)、および、the.e.xPASy World Wide Web分子生物学用サーバー(Geneva University Hospital and University of Geneva, Geneva, Switzerland)。
ここで、配列表の配列番号2に記載の塩基配列において、1もしくは複数個の塩基が置換、欠失、挿入および/または付加されたDNAとは、「Current Protocols in Molecular Biology(John Wiley and Sons, Inc., 1989)」等に記載の公知の方法に準じて調製することができる。
配列表の配列番号2に示した塩基配列において、塩基が置換、挿入、欠失および/または付加される場所は特に制限されないが、高度保存領域を避け、フレームシフトが生じないようにするのが好ましい。ここで、高度保存領域とは、由来の異なる複数の酵素について、塩基配列を最適に整列させて比較した場合に、複数の配列間で塩基が一致している位置を表す。高度保存領域は、配列番号2に示した塩基配列と、公知の微生物由来のアミノ基転移酵素遺伝子の塩基配列とをGENETYX等のツールを用いて比較することで確認することができる。
置換、挿入、欠失および/または付加により改変された塩基配列としては、1種類のタイプ(例えば置換)の改変のみを含むものであっても良いし、2種類以上の改変(例えば、置換と挿入)を含んでいても良い。
上記の記載の複数個の塩基とは例えば150個、好ましくは100個、より好ましくは50個、さらに好ましくは20個、10個、5個、4個、3個、または2個以下の塩基、を意味する。
6.ベクター
本発明の実施形態のDNAを宿主微生物内に導入して発現させるために用いるベクターDNAとしては、適切な宿主微生物内で該DNAがコードする遺伝子を発現できるものであればいずれでもよい。このようなベクターDNAとしては、例えば、プラスミドベクター、ファージベクター、コスミドベクターなどが挙げられる。また、他の宿主株との間での遺伝子交換が可能なシャトルベクターも使用され得る。
このようなベクターは、作動可能に連結されたプロモーター(lacUV5プロモーター、trpプロモーター、trcプロモーター、tacプロモーター、lppプロモーター、tufBプロモーター、recAプロモーター、pLプロモーター等)の制御因子を含み、本発明のDNAと作動可能に連結された発現単位を含むベクターとして好適に用いられ得る。例えば、pUC18(東洋紡社製)、pUC19(東洋紡社製)、pUCNT(国際公開第WO94/03613号公報)などが挙げられる。
制御因子とは、機能的プロモーターおよび、任意の関連する転写要素(例えばエンハンサー、CCAATボックス、TATAボックス、SPI部位など)を有する塩基配列をいう。
また、作動可能に連結とは、遺伝子の発現を調節するプロモーター、エンハンサー等の種々の調節エレメントと遺伝子が、宿主細胞中で作動し得る状態で連結されることをいう。制御因子のタイプおよび種類が、宿主に応じて変わり得ることは、当業者に周知の事項である。
各種生物において利用可能なベクター、プロモーター等に関しては、「微生物学基礎講座8遺伝子工学(共立出版、1987)」などに詳細に記述されている。
7.宿主および形質転換体
本発明の実施形態のDNAを発現させるために用いる宿主生物は、各ポリペプチドをコードするDNAを含む発現ベクターにより形質転換され、DNAを導入したポリペプチドを発現することができる生物であれば、特に制限はされない。利用可能な微生物としては、例えば、エシェリヒア(Escherichia)属、バチルス(Bacillus)属、シュードモナス(Pseudomonas)属、セラチア(Serratia)属、ブレビバクテリウム(Brevibacterium)属、コリネバクテリウム(Corynebacterium)属、ストレプトコッカス(Streptococcus)属、およびラクトバチルス(Lactobacillus)属など宿主ベクター系の開発されている細菌、ロドコッカス(Rhodococcus)属およびストレプトマイセス(Streptomyces)属など宿主ベクター系の開発されている放線菌、サッカロマイセス(Saccharomyces)属、クライベロマイセス(Kluyveromyces)属、シゾサッカロマイセス(Schizosaccharomyces)属、チゴサッカロマイセス(Zygosaccharomyces)属、ヤロウイア(Yarrowia)属、トリコスポロン(Trichosporon)属、ロドスポリジウム(Rhodosporidium)属、ピキア(Pichia)属、およびキャンディダ(Candida)属などの宿主ベクター系の開発されている酵母、ノイロスポラ(Neurospora)属、アスペルギルス(Aspergillus)属、セファロスポリウム(Cephalosporium)属、およびトリコデルマ(Trichoderma)属などの宿主ベクター系の開発されているカビ、などが挙げられる。また、微生物以外でも、植物、動物において様々な宿主・ベクター系が開発されており、特に蚕を用いた昆虫(Nature315,592−594(1985))や菜種、トウモロコシ、ジャガイモなどの植物中に大量に異種タンパク質を発現させる系が開発されており、好適に利用できる。これらのうち、導入および発現効率から細菌が好ましく、大腸菌が特に好ましい。
本発明のDNAを含む発現ベクターは、公知の方法により宿主微生物に導入できる。例えば、宿主微生物として大腸菌を用いる場合は、市販のE. coli HB101コンピテントセル(タカラバイオ社製)を用いることにより、当該ベクターを宿主細胞に導入できる。
8.光学活性アミノ化合物の製造方法
次に、本発明の実施形態のポリペプチドまたは当該ポリペプチドの生産能を持つ微生物を用いて光学活性アミノ化合物を製造する方法について説明する。
本発明の実施形態のポリペプチドの生産能を持つ微生物としては、例えば、前記シュードモナス・エスピー(Pseudomonas sp.)MV37、および、実施形態のDNAを含むベクターを導入された形質転換体が挙げられる。
本発明の光学活性アミノ化合物の製造方法としては、目的とするアミノ化合物と同じ骨格のケトン化合物に、アミノ基供与体からアミノ基を転移させ、生成する光学活性アミノ化合物を採取する方法(以下、製造方法Iとする)と、アミノ化合物のエナンチオマー混合物のうち、一方のエナンチオマーのアミノ基を選択的にアミノ基受容体に転移させ、残存するエナンチオマー(光学活性アミノ化合物)を採取する方法(以下、製造方法IIという)が挙げられる。
まず、製造方法Iについて説明する。
(製造方法I)
製造方法Iは、ケトン化合物に、アミノ基供与体の存在下、本発明のポリペプチド、あるいは該ポリペプチド生産能を持つ形質転換体の培養物を作用させ、光学活性アミノ化合物を製造する方法である。
本製造方法は、例えば、一般式(1):
Figure 0005878871
で表されるケトン化合物に、アミノ基供与体の存在下、本発明のポリペプチドあるいは該ポリペプチド生産能を持つ微生物の培養物を作用させることにより、一般式(2):
Figure 0005878871
で表される光学活性アミノ化合物の製造方法である。
前記式(1)および(2)において、RおよびRは置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアラルキル基もしくは置換されていてもよいアリール基を示し、RとRの両者が互いに結合して環を形成していてもよい。但し、RとRは構造が異なる。
とRは、好ましくは炭素数1から20の置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアラルキル基もしくは置換されていてもよいアリール基であり、より好ましくは、炭素数1から10の置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアラルキル基もしくは置換されていてもよいアリール基である。
アリール基としては、フェニル基、ナフチル基、ピリジル基、チエニル基、オキサジアゾリル基、イミダゾリル基、チアゾリル基、フリル基、ピロリル基、フェノキシ基、ナフトキシ基、ピリジルオキシ基、チエニルオキシ基、オキサジアゾリルオキシ基、イミダゾリルオキシ基、チアゾリルオキシ基、フリルオキシ基、ピロリルオキシ基等が挙げられる。
アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、イソプロピル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、メトキシ基、エトキシ基、tert−ブトキシ基、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、tert−ブトキシカルボニル基、ビニル基、アリル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基等が挙げられる。アラルキル基としては、ベンジル基等が挙げられる。
これらの基は、更に置換されていてもよく、その置換基としては、ハロゲン原子、窒素原子、硫黄原子、水酸基、ニトロ基、シアノ基、メトキシ基、エトキシ基、カルボキシル基、カルボキシメチル基、カルボキシエチル基やメチレンジオキシ等が挙げられる。また、環の形成は置換基を介してもよい。
上記ケトン化合物の具体的な化合物としては、例えば、1−テトラロン、2−テトラロン、5−メトキシ−2−テトラロン、6−メトキシ−2−テトラロン、7−メトキシ−2−テトラロン、8−メトキシ−2−テトラロン、1−ベンジル−3−ピロリジノン、1−Boc−3−ピロリジノン、1−Cbz−3−ピロリジノン、1−ベンジル−3−ピペリジノン、1−Boc−3−ピペリジノン、1−Cbz−3−ピペリジノン、アセトフェノン、3,4−ジメトキシフェニルアセトンなどが挙げられる。
(アミノ基供与体)
アミノ基供与体としては、本発明のポリペプチドが作用するアミノ化合物であればいかなるものでも使用できる。具体例としては、1−フェネチルアミン、2−ブチルアミン、2−ペンチルアミン、2−ヘプチルアミン、3−ヘプチルアミン、n−エチルアミン、n−プロピルアミン、n−ブチルアミン、n−アミルアミン、イソプロピルアミン、イソブチルアミン、グリシン、アラニン、3−アミノ−1−フェニルブタン、ベンジルアミン、β−フェネチルアミン、シクロヘキシルアミンおよびそれらの光学活性体が挙げられる。なかでも、1−フェネチルアミン、アラニンが好ましい。
(ポリペプチドの形態)
製造方法Iにおいては、前記ケトン化合物に、アミノ基供与体の存在下、前記本発明のポリペプチドまたは当該ポリペプチドの生産能を有する微生物の培養物を作用させる。
ここで、培養物とは、菌体を含む培養液、培養菌体、またはその処理物を意味する。ここでその処理物とは、例えば、無細胞抽出液、凍結乾燥菌体、アセトン乾燥菌体、またはそれら菌体の磨砕物等を意味する。さらに、これらポリペプチドおよび培養物は、固定化酵素あるいは固定化菌体として用いることもできる。なお、固定化は、当業者に周知の方法(例えば架橋法、物理的吸着法、包括法等)で行なうことができる。
(反応平衡、生成物阻害の解消による反応性の改善)
アミノ基転移反応を用いたアミノ化反応は一般的に可逆反応であるため、一般的に平衡点で見かけ上反応が停止する。これらの反応平衡を解消する公知の方法を組み合わせることで、本発明のポリペプチドを用いた反応を改善することができる。例えば、WO2007/139055公報に記載のように、アミノ基供与体としてアラニンを用いて、副生成するピルビン酸を乳酸脱水素酵素と補酵素再生用のグルコース脱水素酵素を共役させることで乳酸へ変換し、反応平衡を解消する方法が有効である。同様に、アミノ基供与体としてアラニンを用いて、副生成するピルビン酸を、ピルビン酸デカルボキシラーゼで除く方法(WO2007/093372A1公報)、アラニン脱水素酵素を用いる方法(US2009/0117627A1公報、 Evonik Degussa GmbH)、過酸化水素で除く方法(US2008/0213845A1公報)、アセト酪酸合成酵素を用いる方法(Biosci.Biotechnol.Biochem.72(11),3030−3033(2008))なども有効である。
(基質濃度)
反応に用いる基質の濃度としては、ケトン化合物は、反応液組成中、0.1〜80重量%、好ましくは1〜50重量%であり、また、アミノ基供与体は、キラルアミンの場合は、ケトン化合物に対し、80〜1200モル%、好ましくは100〜600モル%の濃度になるように用いることが好ましい。なお、前記アミノ基供与体としてラセミ体のアミノ化合物の場合は、一方の立体が上記の濃度となるように使用することもできる。
(反応pH)
本発明のポリペプチドの至適pHは、下限は、好ましくはpH5.0以上であり、より好ましくはpH6.0以上である。上限は、好ましくはpH10.0以下であり、より好ましくはpH9.0以下であることが望ましい。
複数のポリペプチドを共役させる場合には、使用する全てのポリペプチドが安定的かつ高活性に作用するpHを選択することが好ましい。
(反応温度)
本発明のポリペプチドの反応温度は、至適温度および熱安定性の観点から、好ましくは25℃以上であり、より好ましくは30℃以上であり、好ましくは60℃以下であり、より好ましくは50℃以下である。
複数のポリペプチドを共役させる場合には、使用する全てのポリペプチドが安定的かつ高活性に作用する反応温度を選択することが好ましい
(溶媒)
反応溶媒は、通常、イオン交換水、緩衝液等の水性媒体を使用するが、有機溶媒を含んだ系でも反応を行なうことができる。有機溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2―プロパノール、1−ブタノール等のアルコール系溶媒、ペンタン、ヘキサン等の脂肪族炭化水素系溶媒、ベンゼン、トルエン等の芳香族炭化水素系溶媒、塩化メチレン、クロロホルム等のハロゲン化炭化水素系溶媒、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル等のエーテル系溶媒、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン系溶媒、その他、アセトニトリル等を適宜使用できる。
(2相系)
必要に応じて、上記の有機溶媒を水への溶解度以上に加えて2相系で反応を行なうこともできる。有機溶媒を反応系に共存させることで、選択率、変換率、収率などが向上する場合も多い。
(反応時間)
反応は、通常、1時間〜1週間、好ましくは1〜72時間であり、そのような時間で反応が終了する反応条件を選択することが好ましい。
(抽出精製)
上記の反応により、光学活性アミノ化合物が生成する。生成した光学活性アミノ化合物は、反応混合液から抽出、蒸留、再結晶、カラム分離など公知の方法によって単離することができる。
例えば、pHを酸性に調整後、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル等のエーテル類;酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類;ヘキサン、オクタン、ベンゼン等の炭化水素類;塩化メチレン等のハロゲン化炭化水素等一般的な溶媒により、生成した光学活性アミノ化合物を水相に残したまま、未反応の基質およびアミノ基転移反応により生じたアミノ基供与体に対応するケトン化合物を選択的に除くことができる。
生成した光学活性アミノ化合物および未反応のアミノ基供与体は、例えば、pHを塩基性に調節し、同様に一般的な有機溶媒で抽出することができる。生成した光学活性アミノ化合物と未反応のアミノ基供与体は、例えば、蒸留により分離することができる。
(製造方法II)
次に本発明の製造方法IIについて説明する。
本製造方法は、アミノ化合物のエナンチオマー混合物に、アミノ基受容体の存在下、本発明のポリペプチドあるいは該ポリペプチド生産能を持つ形質転換体の培養物を作用させる光学活性アミノ化合物の製造方法である。
本製造方法は、例えば、一般式(3):
Figure 0005878871
で表わされるアミノ化合物のエナンチオマー混合物に、アミノ基受容体の存在下、本発明のポリペプチドあるいは該ポリペプチド生産能を持つ微生物の培養物を作用させることにより、一般式(4):
Figure 0005878871
で表わされる光学活性アミノ化合物を得ることができる。
前記式(3)および(4)におけるR、Rは、前記式(1)および(2)におけるR、Rと同じである。
上記光学活性アミノ化合物の具体的な化合物としては、例えば、1−アミノテトラリン、2−アミノテトラリン、5−メトキシ−2−アミノテトラリン、6−メトキシ−2−アミノテトラリン、7−メトキシ−2−アミノテトラリン、8−メトキシ−2−アミノテトラリン、1−ベンジル−3−アミノピロリジン、1−Boc−3−アミノピロリジン、1−Cbz−3−アミノピロリジン、1−ベンジル−3−アミノピペリジン、1−Boc−3−アミノピペリジン、1−Cbz−3−アミノピペリジン、1−フェネチルアミン、3,4−ジメトキシアンフェタミン、などが挙げられる。
(アミノ基受容体)
本方法においては、ケトン化合物をアミノ基受容体として用いる。
ケトン化合物としては、アミノ基受容体としての活性があればいかなるものでもよいが、好ましくは、ピルビン酸あるいはグリオキシル酸である。
製造方法IIにおいては、アミノ化合物のエナンチオマー混合物に、上記アミノ基受容体の存在下、本発明のポリペプチドあるいは該ポリペプチドの生産能を有する形質転換体の培養物を作用させる。
ここで、アミノ化合物のエナンチオマー混合物とは、エナンチオマーとその鏡像体の混合物をいう。通常は、ラセミ体が安価で入手しやすいため、ラセミ体を用いることが好ましい。ただし、ラセミ体に限定されず、例えば、エナンチオマーが鏡像体よりも若干過剰に含まれる混合物を用いて、製造方法IIにより、その光学純度を高めることも好ましく行ない得る。
なお、培養物の意味するところは、前述の製造方法Iの場合と同様である。
また、アミノ化合物の濃度は、反応液組成中、0.1〜80重量%、好ましくは1〜50重量%である。アミノ基受容体の濃度は、アミノ化合物に対し、30〜100モル%、好ましくは50〜60モル%で用いることが好ましい。反応pH、反応温度、反応溶媒は製造方法Iと同様の条件が用いられ得る。
上記の反応により、光学活性アミノ化合物が生成する。生成した光学活性アミノ化合物は、製造方法Iと同様の方法で反応混合液から単離することができる。
以下、実施例により本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例になんら限定されるものではない。
(実施例1)土壌分離菌の取得、解析
土壌より分離したMV37株、MV38株、MV45株、MV48株のそれぞれを、N培地(組成:50g/L ポリペプトン(日本製薬社製)、30g/L D−グルコース、20g/L NaCl、2g/L イーストエキス(Difco社製)、1g/L(RS)−1−フェネチルアミン(pH7.0))を用いて28℃で62時間通気培養した。その後、培養液2mLを遠心分離して得られた菌体に下記基質溶液400uLを添加し、30℃で2時間攪拌して反応させた。生成したベンジルアミノピロリジンは、下記条件にて定量分析、および光学純度分析を行なった。
その結果、MV37株は変換率2.0%、光学純度98.0%e.e.(S体)、MV38株は変換率1.3%、光学純度97.4%e.e.(S体)、MV45株は変換率1.8%、光学純度97.9%e.e.(S体)、MV48株は変換率2.5%、光学純度97.6%e.e.(S体)であった。
また、MV38株、MV45株、MV48株の16SrDNAの部分配列(約500bp)を解析したところ、いずれもPseudomonas属であると推定された。MV37株については、16SrDNA1492bpを解析したところ、Pseudomonas monteilii、Pseudomonas fluva、Pseudomonas oryzihabitans、Pseudomonas putidaに近縁なPseudomonas sp.であると推定された。
[基質溶液組成]
L−アラニン 100mM
1−ベンジル−3−ピロリジノン 7.5mM
ピリドキサルリン酸 0.5mM
リン酸カリウム緩衝液(pH7.0) 0.05M
[高速液体クロマトグラフィー(HPLC)による定量条件]
<定量分析>
カラム:Finepak SIL C18−T (日本分光社製)
溶離液:蒸留水 1260mL/アセトニトリル 740mL/KHPO 10g/SDS 2.88g(pH3.6)
流速:1mL/分
検出:254nm
カラム温度:40℃
[高速液体クロマトグラフィー(HPLC)による光学純度分析条件]
反応液を適量の炭酸ナトリウムで塩基性にした後、ジニトロベンゾイルクロリドで誘導体化し、以下の条件で分析した。
カラム:Chiralpak IA(ダイセル化学工業社製)
溶離液:ヘキサン/エタノール/ジエチルアミン/アセトニトリル=800/200/1/5(体積比)
流速:0.8mL/分
検出:254nm
(実施例2)精製TPMの調製1
実施例1で解析したシュードモナス・エスピー MV37(NITE P−953)を5mLのNpre培地(組成:50g/L ポリペプトン(日本製薬社製)、30g/L D−グルコース、20g/L NaCl、2g/L イーストエキス(Difco社製)(pH7.0))を用いて30℃で1日培養し、第一種母培養液を得た。
次に、500mL容の坂口フラスコ中で、N培地(組成:50g/L ポリペプトン(日本製薬社製)、30g/L D−グルコース、20g/L NaCl、2g/L イーストエキス(Difco社製)、1g/L(RS)−1−フェネチルアミン(pH7.0))60mLに、第一種母培養液を500μL植菌し、28℃で7時間培養し、第二種母培養液を得た。
次に、5リットル容のミニジャー中でN培地3.0Lに、第二種母培養液を30mL植菌し、0.3vvm、450rpm、28℃で14時間培養した。
その後、遠心分離により培養液から菌体を集め、N緩衝液(0.01%2−メルカプトエタノール、0.1mMフェニルメチルスルホニルフルオリド(PMSF)、0.5mMピリドキサルリン酸、0.01Mリン酸カリウム(pH8.0))に懸濁して、超音波破砕を行った。さらに、該破砕物中の固形物を遠心分離により除去し、無細胞抽出液を調製した。
得られた無細胞抽出液は、50℃で30分間攪拌後、遠心分離により上清を回収し、30%飽和となるように硫酸アンモニウムを添加して溶解させ、生じた沈殿を遠心分離により除去した。さらに、この上清に75%飽和となるように硫酸アンモニウムを添加して溶解させ生じた沈殿を遠心分離により回収した。
この沈殿をN緩衝液に溶解させ、さらに同緩衝液に対して透析を行なった。これを、同じ緩衝液で平衡化させたDEAE−TOYOPEARL 650M(東ソー株式会社製)カラム(300mL)に供し、活性画分を吸着させた。同一緩衝液でカラムを洗浄した後、塩化ナトリウムのリニアグラジエント(0Mから0.45Mまで)により活性画分を溶出させた。
溶出させた活性画分を集めて、これに、終濃度0.8Mとなるように硫酸ナトリウムを溶解し、0.8Mの硫酸ナトリウムを含むN緩衝液をあらかじめ平衡化したButyl−TOYOPEARL 650S(東ソー株式会社製)カラム(120mL)に供し、活性画分を吸着させた。同一緩衝液でカラムを洗浄した後、硫酸ナトリウムのリニアグラジエント(0.8Mから0.24Mまで)により活性画分を溶出させた。活性画分を集め、限外ろ過(Centriplus YM−10)にて濃縮した。
濃縮した粗ポリペプチド溶液を、0.15M塩化ナトリウムを添加したN緩衝液であらかじめ平衡化させたHi LOAD 16/60 Superdex200p/gカラム(アマシャムバイオサイエンス株式会社製)に供し、電気泳動的に単一な精製ポリペプチド標品を得た。また、得られた精製ポリペプチドの分子量をSDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動により測定したところ、約50,000であった。以下、本ポリペプチドをTPMと記載する。
(実施例3)TPM遺伝子のクローニング
(PCRプライマーの作成)
実施例2で得られた精製TPMのN末端アミノ酸配列を、PPSQ−33A型プロテインシーケンサー(島津製作所製)により決定した。また、精製TPMを8M尿素存在下で変性させた後、アクロモバクター由来のリジルエンドペプチダーゼ(和光純薬工業株式会社製)で消化し、得られたペプチド断片のN末端アミノ酸配列も同様に決定した。このアミノ酸配列から塩基配列を予測し、TPM遺伝子の一部をPCRにより増幅するためのプライマー1(配列表の配列番号3)、および、プライマー2(配列表の配列番号4)を合成した。
(PCRによるTPM遺伝子の増幅)
シュードモナス・エスピーMV37の培養液から、Murray等の方法(Nucl. Acids Res., 8, 4321, 1980)に従って染色体DNAを抽出した。得られた染色体DNAを鋳型に、上記で合成したプライマーを用いてPCRを行った。その結果、TPM遺伝子の一部と考えられる約830bpのDNA断片を取得した。PCRは、DNAポリメラ−ゼとしてPrimeStar(タカラバイオ株式会社製)を用いて行い、反応条件はその取扱説明書に従った。このDNA断片をダイレクトシーケンスにより塩基配列を決定した。その塩基配列を配列表の配列番号5に示した。
(inverse−PCR法によるTPM遺伝子の全長配列の決定)
シュードモナス・エスピーMV37の染色体DNAを制限酵素FbaI、PstI、XhoIまたはSphIを用いて完全消化し、得られた消化物をT4DNAリガーゼ(宝酒造株式会社製)を用いて各々分子内環化させた。これを鋳型として用い、上記で判明したTPM遺伝子の部分塩基配列情報をもとに、inverse−PCR法(Nucl. Acids Res., 16, 8186 (1988))により、染色体DNA上のTPM遺伝子の全塩基配列を決定した。PCRは、TaKaRa LA Taq with GC buffer(宝酒造株式会社製)を用いて行い、反応条件はその取扱説明書に従った。決定した塩基配列を配列表の配列番号2に示した。また、該塩基配列がコードするアミノ酸配列を配列表の配列番号1に示した。
(実施例4)TPM遺伝子を含む組換えプラスミドの作製
実施例3で決定した塩基配列に基づき、TPM遺伝子の開始コドン部分にNdeI部位を付加したプライマー3(配列表の配列番号6)と、TPM遺伝子の終始コドンの直後にSacI部位を付加したプライマー4(配列表の配列番号7)とを合成した。実施例3で得たシュードモナス・エスピーMV37の染色体DNAを鋳型とし、これらのプライマーを用いてPCRを行い、TPM遺伝子の開始コドン部分にNdeI部位を付加し、かつ終始コドンの直後にSacI部位を付加した二本鎖DNAを取得した。PCRは、PrimeStar(タカラバイオ株式会社製)を用いて行い、反応条件はその取扱説明書に従った。このDNAをNdeIおよびSacIで消化し、プラスミドpUCNT(WO94/03613)のlacプロモーターの下流のNdeI認識部位とSacI認識部位の間に挿入し、組換えベクターpNTTPMを得た。
(実施例5)組換え大腸菌の作製
実施例4で得た組換えベクターpNTTPMを用いて大腸菌E. coli HB101(タカラバイオ株式会社製)を形質転換し、組換え大腸菌E. coli HB101(pNTTPM)を得た。
(実施例6)組換え大腸菌を用いたTPM遺伝子の発現
実施例5で得たE. coli HB101(pNTTPM)を200μg/mlのアンピシリンを含む2×YT培地(トリプトン1.6%、イーストエキス1.0%、NaCl 0.5%、pH7.0)で培養し、集菌後、N緩衝液に懸濁し、超音波破砕により無細胞抽出液を得た。この無細胞抽出液を下記組成の基質溶液に添加し、30℃で1時間反応後、反応液1mLに対し50μLの6規定塩酸を添加し、遠心分離したのち、その上清のアセトフェノン濃度をHPLCで定量することにより、アミノ基転移活性を測定した。その結果、E. coli HB101(pNTTPM)の無細胞抽出液では、ブロス1mLあたり1分間に9μmolのアセトフェノンを生成する活性が見られた。
[基質溶液組成]
(S)−1−フェネチルアミン 25mM
ピルビン酸ナトリウム 25mM
ピリドキサルリン酸 2.5mM
トリス塩酸緩衝液(pH8.0) 0.1M
[高速液体クロマトグラフィー(HPLC)による測定条件]
カラム:Cosmosil 5C8−MS(ナカライテスク社製)
溶離液:30mMリン酸カリウム緩衝液(pH2.5)/アセトニトリル/メタノール=4/1/1(体積比)
流速:1mL/分
検出:254nm
(実施例7)精製TPMの調製2
実施例6と同様の方法で得られた組換え大腸菌の培養液から遠心分離により菌体を集め、標準緩衝液(0.5mMピリドキサルリン酸、0.1Mリン酸カリウム(pH7.5))に懸濁し超音波破砕を行った。次に、破砕物中の固形物を遠心分離により除去し、無細胞抽出液を調製した。得られた無細胞抽出液を30分間攪拌しながら50℃で処理し、遠心分離により上清を回収した。
これを、標準緩衝液で平衡化させたDEAE−Sephacelカラム(GEヘルスケアバイオサイエンス社製)に供し、活性画分を吸着させた。塩化ナトリウム0.1Mを含む標準緩衝液でカラムを洗浄した後、塩化ナトリウム0.2Mを含むN緩衝液で活性画分を溶出させた。
溶出させた活性画分を集めて、これに、終濃度1.0Mとなるように硫酸ナトリウムを溶解し、1.0Mの硫酸ナトリウムを含む標準緩衝液であらかじめ平衡化したButyl−TOYOPEARL 650M(東ソー株式会社製)カラムに供し、活性画分を吸着させた。0.8Mの硫酸ナトリウムを含む標準緩衝液でカラムを洗浄した後、0.5Mの硫酸ナトリウムを含む同一緩衝液で活性画分を溶出させた。活性画分を集め、標準緩衝液で透析し、電気泳動的に単一な精製TPMを得た。本精製TPMを用いてポリペプチドの理化学的性質を調べた。
(実施例8)精製TPMの理化学的性質1
実施例7で得られた精製TPMについて、1−ベンジル−3−ピロリジノンに対する活性と生成(S)−1−ベンジル−3−アミノピロリジンの光学純度を調べた。
実施例7で得られた精製TPMを、下記組成の基質溶液に添加し、30℃で2時間反応後、下記条件のHPLCで分析した。その結果、(S)−1−ベンジル−3−アミノピロリジンが変換率90%で生成し、その光学純度は98.0%e.e.であった。
[基質溶液組成]
(S)−1−フェネチルアミン 85.6mM
1−ベンジル−3−ピロリジノン 57.1mM
ピリドキサルリン酸 0.5mM
リン酸カリウム緩衝液(pH7.0) 0.1M
[高速液体クロマトグラフィー(HPLC)による測定条件]
<定量分析>
カラム:Finepak SIL C18−T (日本分光社製)
溶離液:蒸留水 1260mL/アセトニトリル 740mL/KHPO 10g/SDS 2.88g(pH3.6)
流速:1mL/分
検出:254nm
カラム温度:40℃
[高速液体クロマトグラフィー(HPLC)による光学純度分析条件]
反応液を適量の炭酸ナトリウムで塩基性にした後、ジニトロベンゾイルクロリドで誘導体化し、以下の条件で分析した。
カラム:Chiralpak IA(ダイセル化学工業社製)
溶離液:ヘキサン/エタノール/ジエチルアミン/アセトニトリル=800/200/1/5(体積比)
流速:0.8mL/分
検出:254nm
(実施例9)精製TPMの理化学的性質2
実施例7で得られた精製TPMについて、その(S)−1−フェネチルアミンに対する活性、至適pH、至適温度、熱安定性、水溶性有機溶媒耐性について調べた。
以下に示す活性測定条件にて、精製TPMのアミノ基転移活性を調べた。すなわち、精製TPMを下記組成の基質溶液に添加して総量を1mLとし、30℃で5分間反応後、6規定の塩酸を0.05mL添加して反応を停止させ、下記条件のHPLCで分析した。
[基質溶液組成]
(S)−1−フェネチルアミン 25mM
ピルビン酸ナトリウム 25mM
ピリドキサルリン酸 2.5mM
トリス塩酸緩衝液(pH8.0) 0.1M
[高速液体クロマトグラフィー(HPLC)による測定条件]
カラム:Wakosil−II 5C18 RS(和光純薬社製)
溶離液:10mM りん酸カリウム緩衝液(pH5.3):アセトニトリル=3:2
流速:1mL/分
検出:241nm
(1)(S)−1−フェネチルアミンに対する活性:
上記の方法でアミノ基転移活性を測定したところ、精製TPMの活性は11.8U/mgであった。
(2)至適pH:
pH4.0〜9.0の範囲で、上記と同様にしてアミノ基転移活性を測定し、TPMの至適pHを調べた。
測定するpHの応じて緩衝液は下記のものを用いた結果、0.1Mリン酸カリウム緩衝液でpH7.0が最も活性が高く、至適pHは6.0〜8.5と考えられた(pH7を100としたときの相対活性を表1に示す)。
Figure 0005878871
[緩衝液]
pH4.0、4.5、5.0、5.5の場合:0.1M酢酸ナトリウム緩衝液
pH6.0、6.5、7.0、7.5、8.0の場合:0.1Mリン酸カリウム緩衝液
pH7.5、8.0、8.5、9.0の場合:0.1Mトリス塩酸緩衝液
(3)至適温度:
上記と同じ条件で、10℃、20℃、30℃、40℃、50℃、60℃、70℃のアミノ基転移活性を測定した結果、60℃がTPMの至適温度と考えられた(最も高活性であった60℃の活性を100としたときの相対活性を表2に示す)。
Figure 0005878871
(4)熱安定性:
精製TPMを、0.5mMピリドキサルリン酸を含む、0.1Mリン酸カリウム緩衝液(pH7.5)中で、30℃、40℃、50℃、60℃、70℃、80℃にて30分間反応した後、同様に活性測定を行なった。その結果、熱処理前に比べて、30℃〜60℃処理では90%以上の活性が残存していた(熱処理前の活性を100としたときの残存活性を表3に示す)。
Figure 0005878871
(5)水溶性有機溶媒耐性:精製TPMを添加した0.5mMピリドキサルリン酸を含む0.1Mリン酸カリウム緩衝液(pH7.5)200μLに1−プロパノール、2−プロパノール、アセトンを800μL添加し、30℃で2時間処理した。処理後、0.5mMピリドキサルリン酸を含む0.1Mリン酸カリウム緩衝液(pH7.5)で20倍に希釈し、希釈液の活性を上記と同様の条件で活性測定した。その結果、TPMは1−プロパノール、2−プロパノール、アセトンに対して極めて安定であった(表4)。
Figure 0005878871
(比較例1)市販アミノ基転移酵素の水溶性有機溶媒耐性
実施例9(5)水溶性有機溶媒耐性と同様の方法で、市販のVibrio fluvialis由来のω−Transaminase VF(Julich−Chemicals社)の水溶性有機溶媒耐性を調べた結果、1−プロパノール、2−プロパノール、アセトンを80%v/v添加すると2時間で完全に活性を失った(表5)。
Figure 0005878871
(実施例10)精製TPMの理化学的性質3:アミノ基供与体特異性
実施例7で得た精製TPMについて、アミノ基供与体の特異性について調べた。まず、精製TPM溶液20μLを下記組成の基質溶液380μLに添加し、30℃で1時間反応後、3規定の塩酸20μLを加えて反応を停止させた。次に、得られた反応液20μLに0.2M炭酸ナトリウム水溶液80μL、3.3mg/mLダブシルクロリドのアセトン溶液200μLをそれぞれ加え、70℃で10分間反応させた。これに酢酸20μLを加えて攪拌し、この反応液を下記条件のHPLCで分析し、ダブシル化したアラニンを定量した。その結果TPMは、n−ブチルアミン、ベンジルアミン、±2−ブチルアミンにも活性を示すことが判明した(n−ブチルアミンをアミノ基供与体として用いたときの活性を100%とした相対活性として表6に示す)。
[基質溶液組成]
各種アミノ化合物 14mM (ラセミ体の場合28mM)
ピルビン酸 14mM
ピリドキサルリン酸 0.5mM
リン酸カリウム緩衝液(pH7.5) 0.1M
[高速液体クロマトグラフィー(HPLC)による測定条件]
カラム:Deverosil ODS−HG−3(NOMURA CHEMICAL)
溶離液:アセトニトリル/0.045M酢酸緩衝液(pH4.1)=35/65(体積比)
流速:0.9mL/分
検出:254nm
Figure 0005878871
(実施例11)精製TPMの理化学的性質4:アミノ基供与体特異性2
実施例7で得られた精製TPMについて、代表的なω―アミノ酸トランスアミナーゼの基質に対する反応性について調べた。まず、精製TPM溶液20μLを下記組成の基質溶液380μLに添加し、30℃で1時間反応後、3規定の塩酸20μLを加えて反応を停止させた。次に、得られた反応液20μLに0.2M炭酸ナトリウム水溶液80μL、3.3mg/mLダブシルクロリドのアセトン溶液200μLをそれぞれ加え、70℃で10分間反応させた。これに酢酸20μLを加えて攪拌し、この反応液を下記条件のHPLCで分析し、ダブシル化したアラニンを定量した。その結果、TPMはω―アミノ酸トランスアミナーゼの代表的な基質であるβ―アラニン、4−アミノ酪酸、L−オルニチン、L−リジン、プトレッシン、タウリンに対しては活性を示さないことが判明した((S)−1−フェネチルアミンをアミノ基供与体として用いたときの活性を100とした相対活性として表7に示す)。
[基質溶液組成]
各種アミノ化合物 14mM
ピルビン酸 14mM
ピリドキサルリン酸 0.02mM
リン酸カリウム緩衝液(pH7.5) 0.1M
[高速液体クロマトグラフィー(HPLC)による測定条件]
カラム:Deverosil ODS−HG−3(NOMURA CHEMICAL)
溶離液:アセトニトリル/0.045M酢酸緩衝液(pH4.1)=35/65(体積比)
流速:0.9mL/分
検出:254nm
Figure 0005878871
(実施例12)精製TPMの理化学的性質5:アミノ基受容体特異性
実施例7で得られた精製TPMについて、アミノ基受容体に対する基質特異性について調べた。精製TPM溶液に終濃度が下記組成となるような基質溶液を添加し、30℃で5分間反応させた後、6規定の塩酸を反応液1mLあたり50μL添加し、反応を停止させた。この反応液を下記条件のHPLCで分析した結果、TPMは広範な基質に対して活性を示すことが判明した(表8)。
[基質溶液組成]
(S)−1−フェネチルアミン 25mM
各アミノ基受容体 25mM あるいは 2.5mM
ピリドキサルリン酸 2.5mM
トリス塩酸緩衝液(pH7.0) 0.1M
ポリペプチド溶液
[高速液体クロマトグラフィー(HPLC)による測定条件]
カラム:Wakosil−II 5C18 RS(和光純薬社製)
溶離液:10mM りん酸カリウム緩衝液(pH5.3):アセトニトリル=3:2
流速:1mL/分
検出:241nm
Figure 0005878871
(実施例13)製造方法Iによる光学活性1−ベンジル−3−アミノピロリジンの製造
実施例6と同様の方法で得られた組換え大腸菌の培養液を遠心分離により集菌した。また、WO2007/139055公報の実施例13に記載のペディオコッカス・アシディラクティシ(Pediococcus acidilactici) JCM8797株由来のL−乳酸脱水素酵素PALDHとバシラス・メガテリウム(Bacillus megaterium)IAM1030由来グルコース脱水素酵素GDHを共発現する組換え大腸菌を、200μg/mlのアンピシリンを含む2×YT培地(トリプトン1.6%、イーストエキス1.0%、NaCl 0.5%、pH7.0)で培養し、遠心分離により集菌した。
TPM15.8U/mL、PALDH380U/mL、GDH41U/mLとなるように上記培養液を混合し、あらかじめ基質である1−ベンジル−3−ピロリジノン900mg、および、Lアラニン3730mg、D−グルコース1390mg、NAD+ 4mg、を入れたフラスコに上記菌体懸濁液3ml、ピリドキサルリン酸4mg、1Mリン酸カリウム緩衝液(pH6.8)3mLを入れて、脱イオン水を加えて全体積を30mLとした。これを、30℃で、水酸化ナトリウムでpH6.8に調整しながら5時間攪拌しながら反応させた。反応終了後、この反応液を下記条件のHPLCで分析した。その結果、1−ベンジル−3−アミノピロリジンが変換率100%で生成しており、立体配置は(S)体で光学純度は98.3%e.e.であった。
[高速液体クロマトグラフィー(HPLC)による定量分析条件]
<定量分析>
カラム:Finepak SIL C18−T (日本分光社製)
溶離液:蒸留水 1260mL/アセトニトリル 740mL/KHPO 10g/SDS 2.88g(pH3.6)
流速:1mL/分
検出:254nm
カラム温度:40℃
[高速液体クロマトグラフィー(HPLC)による光学純度測定条件]
反応液を適量の炭酸ナトリウムで塩基性にしたのち、ジニトロベンゾイルクロライドで誘導体化した後、以下の条件で分析した。
カラム:Chiralcel IA(ダイセル化学工業社製)
溶離液:ヘキサン/エタノール/ジエチルアミン/アセトニトリル=800/200/1/5(体積比)
流速:0.8mL/分
検出:254nm
カラム温度:30℃
(実施例14)製造方法Iによる光学活性2−アミノヘプタンの製造
実施例13と同様の方法で得られたTPM、PALDHおよびGDHをそれぞれTPM16.7U/mL、PALDH297U/mL、GDH30U/mLとなるように上記培養液を混合し、あらかじめ基質である2−ヘプタノン300mg、および、Lアラニン15900mg、D−グルコース710mg、NAD+ 4mg、を入れたフラスコに上記菌体懸濁液3ml、ピリドキサルリン酸1.3mg、1Mリン酸カリウム緩衝液(pH6.8)1mLを入れて、脱イオン水を加えて全体積を10mLとした。これを、30℃で、水酸化ナトリウムでpH6.8に調整しながら30時間攪拌しながら反応させた。反応終了後、この反応液を下記条件のHPLCで分析した。その結果、2−アミノヘプタンが変換率99%で生成しており、立体配置は(S)体で光学純度は99.2%e.e.であった。
[ガスクロマトグラフィー(GC)による定量分析条件]
カラム:Rtx−5 Amine(30m,0.25mmID)(RESTEK社製)
カラム温度:50℃
注入口温度:250℃
検出器温度:220℃
検出:FID
キャリアーガス:He、150kPa
[高速液体クロマトグラフィー(HPLC)による光学純度測定条件]
反応液を適量の炭酸ナトリウムで塩基性にしたのち、ジニトロベンゾイルクロライドで誘導体化した後、以下の条件で分析した。
カラム:Chiralpak AD−H(ダイセル化学工業社製)
溶離液:n−ヘキサン/エタノール/ジエチルアミン=90/10/0.1(体積比)
流速:1.0mL/分
検出:240nm
カラム温度:35℃
本明細書で引用した全ての刊行物、特許、及び特許出願をそのまま参考として本明細書に取り入れるものとする。

Claims (13)

  1. 以下の(a)〜(d)のいずれかに記載のポリペプチド:
    (a)配列表の配列番号1に示すアミノ酸配列からなるポリペプチド、
    (b)配列表の配列番号1に示すアミノ酸配列において、1〜20個のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加されたアミノ酸配列からなり、かつ、アミノ基供与体の存在下で1−ベンジル−3−ピロリジノンに作用して光学純度93%e.e.以上の(S)−1−ベンジル−3−アミノピロリジンを生成する活性を有するポリペプチド、
    (c)配列表の配列番号1に示すアミノ酸配列と90%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなり、かつ、アミノ基供与体の存在下で1−ベンジル−3−ピロリジノンに作用して光学純度93%e.e.以上の(S)−1−ベンジル−3−アミノピロリジンを生成する活性を有するポリペプチド、
    (d)配列表の配列番号1に示すアミノ酸配列と90%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなり、かつ、アミノ基供与体の存在下で1−ベンジル−3−ピロリジノンに作用して光学純度93%e.e.以上の(S)−1−ベンジル−3−アミノピロリジンを生成する活性を有し、かつ、下記(1)および/または(2)の性質を有するポリペプチド:
    (1)基質特異性:
    (a)アミノ基供与体:(S)−1−フェネチルアミン、ベンジルアミンおよび±2−ブチルアミンに対して活性を示し、β−アラニン、および4−アミノ酪酸に対して実質的に活性を示さない、
    (b)アミノ基受容体:ピルビン酸およびグリオキシル酸のそれぞれに対し活性を示す、
    (2)水溶性有機溶媒耐性:終濃度80%v/vの1−プロパノール、2−プロパノール、アセトンのいずれかで2時間処理後の残存活性が処理前の全活性の10%以上を保持する。
  2. 請求項1に記載のポリペプチドをコードする塩基配列からなるDNA。
  3. 下記(A)〜(C)のいずれかに記載の請求項2に記載のDNA:
    (A)配列表の配列番号2に記載の塩基配列からなるDNA、
    (B)配列表の配列番号2に記載の塩基配列と相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNA、
    (C)配列表の配列番号2に記載の塩基配列において、1もしくは複数個の塩基が置換、欠失、挿入および/または付加された塩基配列からなるDNA。
  4. 請求項2または3に記載のDNAを含むベクター。
  5. 請求項4に記載のベクターにより宿主細胞を形質転換して得られる形質転換体。
  6. ケトン化合物に、アミノ基供与体の存在下、請求項1に記載のポリペプチド、あるいは請求項5に記載の形質転換体の培養物を作用させることを特徴とする、光学活性アミノ化合物の製造方法。
  7. 一般式(1):
    Figure 0005878871
    (式中、RおよびRは置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアラルキル基もしくは置換されていてもよいアリール基を示し、RとRの両者が互いに結合して環を形成していてもよい。但し、RとRは構造が異なる。)で表されるケトン化合物に、アミノ基供与体の存在下、請求項1に記載のポリペプチド、または請求項5に記載の形質転換体の培養物を作用させることを特徴とする、一般式(2):
    Figure 0005878871
    (式中、RおよびRは前記式(1)と同じ。*は不斉炭素原子を示す。)で表される光学活性アミノ化合物の製造方法。
  8. アミノ化合物のエナンチオマー混合物にアミノ基受容体の存在下、請求項1に記載のポリペプチド、または請求項5に記載の形質転換体の培養物を作用させることを特徴とする光学活性アミノ化合物の製造方法。
  9. 一般式(3):
    Figure 0005878871
    (式中、RおよびRは置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアラルキル基もしくは置換されていてもよいアリール基を示し、RとRの両者が互いに結合して環を形成していてもよい。但し、RとRは構造が異なる。)で表わされるアミノ化合物のエナンチオマー混合物に、アミノ基受容体の存在下、請求項1に記載のポリペプチド、または請求項5に記載の形質転換体の培養物を作用させることにより、一般式(4):
    Figure 0005878871
    (式中、RおよびRは前記式(3)と同じ。*は不斉炭素原子を示す)で表わされる光学活性アミノ化合物を得ることを特徴とする、光学活性アミノ化合物の製造方法。
  10. 前記式(1)で表されるケトン化合物が、1−テトラロン、2−テトラロン、5−メトキシ−2−テトラロン、6−メトキシ−2−テトラロン、7−メトキシ−2−テトラロン、8−メトキシ−2−テトラロン、1−ベンジル−3−ピロリジノン、1−Boc−3−ピロリジノン、1−Cbz−3−ピロリジノン、1−ベンジル−3−ピペリジノン、1−Boc−3−ピペリジノン、1−Cbz−3−ピペリジノン、アセトフェノン、3,4−ジメトキシフェニルアセトン、からなる群から選ばれる1以上のケトン化合物である請求項7に記載の製造方法。
  11. 前記式(3)で表されるアミノ化合物が、1−アミノテトラリン、2−アミノテトラリン、5−メトキシ−2−アミノテトラリン、6−メトキシ−2−アミノテトラリン、7−メトキシ−2−アミノテトラリン、8−メトキシ−2−アミノテトラリン、1−ベンジル−3−アミノピロリジン、1−Boc−3−アミノピロリジン、1−Cbz−3−アミノピロリジン、1−ベンジル−3−アミノピペリジン、1−Boc−3−アミノピペリジン、1−Cbz−3−アミノピペリジン、1−フェネチルアミン、3,4−ジメトキシアンフェタミン、からなる群から選ばれる1以上のアミノ化合物である請求項9に記載の製造方法。
  12. アミノ基供与体が、1−フェネチルアミン、2−ブチルアミン、2−ペンチルアミン、2−ヘプチルアミン、3−ヘプチルアミン、n−エチルアミン、n−プロピルアミン、n−ブチルアミン、n−アミルアミン、イソプロピルアミン、イソブチルアミン、グリシン、アラニン、3−アミノ−1−フェニルブタン、ベンジルアミン、β−フェネチルアミン、シクロヘキシルアミンおよびそれらの光学活性体からなる群より選ばれる1以上の化合物である請求項6または7に記載の製造方法。
  13. アミノ基受容体が、ピルビン酸またはグリオキシル酸である請求項8または9に記載の製造方法。
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