JP5878421B2 - 湿式コーティング用組成物 - Google Patents
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Description
1. 基材及びその表面上に最外層として固体潤滑層を含む摺動部材における当該固体潤滑層を形成するために用いる湿式コーティング用組成物であって、
(1)銀系微粒子、
(2)ポリアミド系分散剤及び
(3)溶媒
を含む湿式コーティング用組成物。
2. 分散剤が、銀系微粒子100重量部に対して6〜14重量部含まれる、前記項1に記載の湿式コーティング用組成物。
3. 摺動部材が、基材及び固体潤滑層の間にこれらに直接に接するように形成された樹脂系プライマー層をさらに含む、前記項1に記載の湿式コーティング用組成物。
4. 樹脂系プライマー層がエポキシ樹脂系プライマー層又はポリイミド樹脂系プライマー層である、前記項3に記載の湿式コーティング用組成物。
5. 基材がアルミニウム又はアルミニウム合金である、前記項1に記載の湿式コーティング用組成物。
6. 溶媒がアルコール系溶媒である、前記項1に記載の湿式コーティング用組成物。
7. 銀系微粒子の平均粒径が1〜100nmである、前記項1に記載の湿式コーティング用組成物。
8. 銀系微粒子が銀及び有機成分を含む、前記項1に記載の湿式コーティング用組成物。
9. 銀系微粒子の銀含有率が60〜99重量%である、前記項8に記載の湿式コーティング用組成物。
10. 銀系微粒子が、銀塩を含む出発材料をアミン化合物の存在下で熱処理する工程を含む製造方法により得られる、前記項8又は9に記載の湿式コーティング用組成物。
11. 摺動部材が、内燃機関におけるピストンである、前記項1に記載の湿式コーティング用組成物。
12. 前記ピストンのスカート部に固体潤滑層を形成するために用いる、前記項11に記載の湿式コーティング用組成物。
13. 1)前記項1に記載の湿式コーティング用組成物を用いて基材又はその表面層に対して湿式コーティングすることにより被覆層を形成する工程、2)前記被覆層を熱処理することにより固体潤滑層を得る工程を含む、固体潤滑層の形成方法。
(1)銀系微粒子、
(2)ポリアミド系分散剤及びポリエステル系分散剤の少なくとも1種の分散剤及び
(3)溶媒
を含むことを特徴とする。
(1)銀系微粒子とその製造方法
本発明組成物で使用する銀系微粒子は限定的でなく、公知又は市販のものも使用することができる。本発明では、例えば、金属成分として銀を含む金属ナノ粒子であって、さらにP、N及びOの少なくとも1種を含有し、平均粒子径が1〜100nmである銀系微粒子を好適に用いることができる。
銀系微粒子は、公知の製造方法によって製造することもできる。例えば、銀成分として金属塩(銀塩)を含む出発材料をアミン化合物の存在下で熱処理することによって製造することができる。
分散剤は、ポリアミド系分散剤及びポリエステル系分散剤の少なくとも1種を用いる。これらの分散剤を使用することによって優れた密着性等を得ることができる。ポリアミド系分散剤及びポリエステル系分散剤は、用いる溶媒との相溶性がある限りは特に限定されず、いずれも公知又は市販のものを使用することができる。ポリアミド系分散剤としては、例えば製品名「ソルスパース11200」、「ソルスパース28000」(いずれも日本ルーブリゾール社製)、製品名「オロナイト340R」、「オロナイトRB」(いずれもオロナイトジャパン社製)等が挙げられる。この中でも、前記「ソルパース28000」が好ましい。また、ポリエステル系分散剤としては、例えば製品名「テキサホール873」(サンノプコ社製)、製品名「ディスパロンKS−860」(楠本化成社製)等を用いることができる。この中でも、前記「テキサホール873」が好ましい。すなわち、本発明組成物では、前記「ソルパース28000」及び前記「テキサホール873」の少なくとも1種の製品を用いることが好ましい。これらの製品を使用することにより、よりいっそう優れた密着性と摺動特性とを得ることができる。
溶媒は、特に非水系溶媒を好適に使用することができる。非水系溶媒としては、特に制限されず、例えばアルコール系溶媒(メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ベンジルアルコール等)、ケトン系溶媒(アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等)、エーテル系溶媒(テトラヒドロフラン、ジイソプロピルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル等)、炭化水素系溶媒(ヘキサン、トルエン、キシレン等)等の公知又は市販の溶媒から適宜採用することができる。本発明組成物では、特に前記の好ましい分散剤との好適な組み合わせ(相溶性等)という見地より、非水系溶媒としてアルコール系溶媒(特にベンジルアルコール等の芳香族アルコール系溶媒)を用いることが好ましい。
本発明組成物では、本発明の効果を妨げない範囲内で、上記のような成分のほかにも、必要に応じて公知の添加剤を適宜配合することもできる。例えば、増粘剤、着色剤、滑剤、消泡剤、レベリング剤等を挙げることができる。
本発明組成物は、前記(1)〜(3)及び必要に応じて前記(4)の成分を均一に混合することによって調製することができる。混合に際しては、例えばミキサー、ニーダー、ボールミル等の公知の攪拌装置を使用することができる。
本発明組成物は、例えば1)基材又はその表面層に対して本発明組成物を湿式コーティングすることにより被覆層を形成する工程(塗布工程)、2)前記被覆層を熱処理することにより固体潤滑層を得る工程(熱処理工程)を含む方法によって好適に使用することができる。
塗布工程では、基材又はその表面層に対して本発明組成物を湿式コーティングすることにより被覆層を形成する。
熱処理工程では、前記被覆層を熱処理することにより固体潤滑層を得る。熱処理温度は、被覆層(ウェットな塗布層)を固体化(乾燥)できれば特に限定されないが、通常は100〜300℃、好ましくは150〜250℃の範囲内で適宜設定することができる。本発明では、特に、銀と有機成分を含む銀系微粒子を使用する場合は、その有機成分が分解し始める温度又はそれ以上の温度とするこが好ましい。また、熱処理雰囲気は特に限定されないが、通常は大気中とすれば良い。このようにして、所定の固体潤滑層を得ることができる。
本発明組成物を用いて固体潤滑層を形成する場合、その固体潤滑層を形成する領域は特に摺動特性が要求される部分(摺動面)に適用すれば良い。例えば、自動車、自動二輪等の内燃機関のピストンであれば、ピストンのスカート部(外周面)に固体潤滑層を形成するために好適に使用することができる。図1には、ピストン10の側面図を示す。ピストン10の下部の外周面がスカート部11であり、ここが摺動面となる。そこで、図2の拡大図に示すように、例えばスカート部11の摺動面11aの表面上にプライマー層13を形成し、当該プライマー層13の表面上に固体潤滑層14を形成すれば良い。この場合、プライマー層13の厚みは、通常1〜5μm程度とすることが好ましい。また、プライマー層の形成方法は、公知のプライマー層の形成方法と同様にすれば良い。また、固体潤滑層14の厚みは、所望の摺動特性等に応じて適宜設定することができるが、一般的には5〜20μm程度とすることが好ましい。
(1)銀ナノ粒子の調製
炭酸銀Ag2CO3100重量部とオクチルアミンn−C8H17NH2100重量部をパイレックス(登録商標)製の三つ口フラスコに入れ、大気中で徐々に100℃まで加熱し、その温度で4時間保持した。加熱した後、室温でメタノール1800重量部を加えて攪拌し、静置した後、上澄みを除去した。これを4回繰り返し、桐山ロートで濾過し、減圧下で乾燥させ、黒色の銀ナノ粒子を得た(収率98.7%)。得られた銀ナノ粒子の平均粒子径は30nmであった。銀成分の含有量は96重量%であった。
(2)湿式コーティング用組成物の調製
前記銀ナノ粒子100重量部に対し、ポリアミド系分散剤(製品名「ソルパース28000」日本ルーブリゾール社製)10重量部及び溶媒としてベンジルアルコール14.3重量部を均一に混合した。得られたペースト状混合物について、プラズモン吸収(黄色の発色)の有無について調べたところ、黄色の発色が認められた。これにより、上記銀ナノ粒子が前記分散剤及び溶媒との関係において相溶性があることが確認できた。
分散剤としてポリエステル系分散剤(製品名「テキサホール873」サンノプコ社製)を用いたほかは、実施例1と同様にして同様のペースト状混合物を調製した。
分散剤として市販の分散剤(製品名「Disperbyk−103」ビックケミー・ジャパン製)を用いたほかは、実施例1と同様にしてペースト状混合物を調製した。
実施例、参考例及び比較例で得られたペースト状混合物を用いて、アルミニウム合金上に固体潤滑層を形成した。まず、アルミニウム合金(AC8H)の表面にプライマー層を形成した。プライマー用塗料としてポリアミドイミド樹脂を用い、スクリーン印刷でプライマー層(厚み約3μm)を得た。次いで、前記プライマー層上に各ペースト状混合物をスクリーン印刷法により塗布し、乾燥させた後、大気中200℃で3時間の熱処理を行うことにより、厚み約10μmの固体潤滑層を形成し、サンプルを作製した。得られた各サンプルにおける固体潤滑層について、表面・界面物性解析装置(SAICAS:Surface And Interfacial Cutting Analysis System)として製品名「SAICAS DN」(ダイプラ・ウィンテス社製)を用いて剥離強度(kN/m)を測定した。その結果、実施例1では約0.65kN/m、参考例2では約0.61kN/m、比較例1では約0.05kN/mであった。この結果からも明らかなように、本発明による特定の分散剤を含む湿式コーティング用組成物は、特定の分散剤を含まないコーティング用組成物の場合に比して高い密着性を発揮できることがわかる。
分散剤の添加量を変えたほかは、実施例1と同様にしてペースト状混合物を調製し、試験例1と同様にしてサンプル作製した。得られた各サンプルについて試験例1と同様にして固体潤滑層の剥離強度を測定した。その結果を図3に示す。図3に示すように、実施例1の分散剤では、その含有量の増加に伴って剥離強度が高くなり、銀ナノ粒子100重量部に対して分散剤6重量部でほぼ最大値に近い剥離強度に達し、それより多い含有量では同様の剥離強度を維持していることがわかる。
Claims (13)
- 基材及びその表面上に最外層として固体潤滑層を含む摺動部材における当該固体潤滑層を形成するために用いる湿式コーティング用組成物であって、
(1)銀系微粒子、
(2)ポリアミド系分散剤及び
(3)溶媒
を含む湿式コーティング用組成物。 - 分散剤が、銀系微粒子100重量部に対して6〜14重量部含まれる、請求項1に記載の湿式コーティング用組成物。
- 摺動部材が、基材及び固体潤滑層の間にこれらに直接に接するように形成された樹脂系プライマー層をさらに含む、請求項1に記載の湿式コーティング用組成物。
- 樹脂系プライマー層がエポキシ樹脂系プライマー層又はポリイミド樹脂系プライマー層である、請求項3に記載の湿式コーティング用組成物。
- 基材がアルミニウム又はアルミニウム合金である、請求項1に記載の湿式コーティング用組成物。
- 溶媒がアルコール系溶媒である、請求項1に記載の湿式コーティング用組成物。
- 銀系微粒子の平均粒径が1〜100nmである、請求項1に記載の湿式コーティング用組成物。
- 銀系微粒子が銀及び有機成分を含む、請求項1に記載の湿式コーティング用組成物。
- 銀系微粒子の銀含有率が60〜99重量%である、請求項8に記載の湿式コーティング用組成物。
- 銀系微粒子が、銀塩を含む出発材料をアミン化合物の存在下で熱処理する工程を含む製造方法により得られる、請求項8又は9に記載の湿式コーティング用組成物。
- 摺動部材が、内燃機関におけるピストンである、請求項1に記載の湿式コーティング用組成物。
- 前記ピストンのスカート部に固体潤滑層を形成するために用いる、請求項11に記載の湿式コーティング用組成物。
- 1)請求項1に記載の湿式コーティング用組成物を用いて基材又はその表面層に対して湿式コーティングすることにより被覆層を形成する工程、2)前記被覆層を熱処理することにより固体潤滑層を得る工程を含む、固体潤滑層の形成方法。
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