JP5876701B2 - ボルト刻印工具の強化方法及びボルト刻印工具 - Google Patents

ボルト刻印工具の強化方法及びボルト刻印工具 Download PDF

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本発明は、ボルト頭部に文字や数字などのマークを刻印するボルト刻印工具の強化方法及びその強化方法により強化されたボルト刻印工具に関する。
従来より、冷間圧造によりボルトを製造する方法が知られている(例えば特許文献1参照)。冷間圧造によりボルトを製造する方法の一例を紹介すると、六角ボルトを製造する方法は、例えば、図8に示すように、固定されたダイスDと、該ダイスDに対して交互に進退移動する第1パンチP1及び第2パンチP2とを備えた二段式圧造成形機を用いて、棒状のボルト材料Mを第1パンチP1によりダイスDに打ち込むことにより、ボルト材料Mの一端部を予備成形し(同図(a))、次いで第2パンチP2にてボルト材料Mを叩くことにより、該ボルト材料Mに円盤状の頭部Hを形成する(同図(b))。その後、ボルト材料Mの頭部HをトリミングダイスTにより六角形に打ち抜き(同図(c))、転造盤を用いて軸部Aにネジ溝を刻設して六角ボルトを成形する。
ところで、所定の強度区分の六角ボルトや六角穴付きボルト等には、強度区分を頭部に刻印しなければならない旨がJIS B1051に規定されている。また、JIS B1051には、原則として強度区分を刻印したボルトに対し製造業者の識別記号を刻印表示する旨も規定されている。そのため、こうしたボルトを製造する際には、強度区分を示す数字や製造業者の識別記号を示す文字等のマークが刻まれた刻印部が底面に設けられた凹部を有するボルト刻印工具を第2パンチとし、該ボルト刻印工具でボルト材料を叩くことにより、円盤状の頭部を形成すると共に、該頭部の頂面にマークを刻印するようにしている。
一方で、従来より、キャビテーションにより対象物に圧縮残留応力を付与することができる技術が知られている(例えば特許文献2参照)。この技術は、キャビテーションショットレスピーニング(キャビテーションピーニング)と称されている。尚、キャビテーションとは、液体の流れの中で圧力が飽和蒸気圧よりも低くなったときに、液体中の微小な気泡や溶け込んでいる気体(キャビテーション核という)が成長してキャビテーション気泡となり、該キャビテーション気泡が崩壊する現象をいう。キャビテーションピーニングでは、キャビテーション気泡が崩壊するときの衝撃力により対象物に圧縮残留応力を付与することができる。
特開平10−211540号公報 特開2006−255865号公報
前記のように冷間圧造によりボルトを製造する場合には、ボルト刻印工具でボルト材料に頭部を形成したときに、頭部の形状に沿った金属組織の流れ(メタルフローという)が形成され、その結果、ボルト材料の頭部外周側の強度が中心部よりも高くなる。そのため、ボルト材料の頭部外周側に対応するボルト刻印工具の凹部外周側が中心部よりも早期に摩耗してしまう。ボルト刻印工具の凹部外周側が摩耗すると、ボルト頭部外周側に刻印されるマークが不明瞭となったり、摩耗が著しい場合には、ボルト頭部外周側にマークが刻印されなくなったりする。このように、ボルト刻印工具の凹部外周側が摩耗して、ボルト刻印工具の寿命が短くなってしまうという問題があった。
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、キャビテーションピーニングを利用して、ボルト刻印工具の寿命を延ばすことである。
上記課題を解決するために、本願発明者らは、円筒状の高圧ノズル部と、該高圧ノズル部の周囲に同心状に配設された円筒状の低圧ノズル部とを有する噴射ノズルを準備し、高圧ノズル部から噴射される高圧流体と、低圧ノズル部から噴射される低圧流体とによりキャビテーションを発生させることにした。
具体的には、本発明は、ボルト刻印工具の強化方法を対象とし、周方向にマークが刻まれた刻印部が底面外周側に設けられた平面視円形状の凹部を有し、冷間圧造により前記凹部を棒状のボルト材料に叩きつけて該ボルト材料に頭部を形成すると共に該頭部の外周側に前記マークを刻印するボルト刻印工具と、高圧流体を噴射する円筒状の高圧ノズル部と、該高圧ノズル部の周囲に同心状に配設され、低圧流体を噴射する円筒状の低圧ノズル部とを有し、前記高圧流体と低圧流体との圧力差によりキャビテーション気泡を成長させて低圧流体側で崩壊させるキャビテーション噴流噴射ノズルとを準備し、前記噴射ノズルの軸心と前記凹部の中心とを合致させて前記噴射ノズルから前記キャビテーション噴流を前記ボルト刻印工具に向けて噴射し、該キャビテーション噴流の低圧流体側を前記凹部外周側に吹き付け、前記キャビテーション気泡を前記凹部外周側で崩壊させることにより、キャビテーションにより前記刻印部に圧縮残留応力を付与することを特徴とする。
この構成によると、高圧ノズル部から噴射された高圧流体と低圧ノズル部から噴射された低圧流体との圧力差により、キャビテーション気泡が成長し、噴射ノズルから噴射されたキャビテーション噴流の低圧流体側でキャビテーション気泡が崩壊する。このキャビテーション噴流の低圧流体側がボルト刻印工具の凹部外周側に吹き付けられるため、キャビテーション気泡が崩壊するときの衝撃力によりボルト刻印工具の刻印部に圧縮残留応力が付与される。その結果、ボルト刻印工具の刻印部が摩耗し難くなり、ボルト刻印工具の寿命を延ばすことができる。
また、圧縮残留応力を付与する技術としてキャビテーションピーニングを採用しているため、ショットピーニング処理を採用した場合に比べて、ボルト刻印工具の表面粗さを劣化させることなく刻印部に圧縮残留応力を付与することができる。
さらに、噴射ノズルの軸心とボルト刻印工具の凹部中心とを合致させて、キャビテーション噴流の低圧流体側がボルト刻印工具の凹部外周側に吹き付けられるようにボルト刻印工具の凹部と噴射ノズルとの距離等を調整する操作を行うだけで、極めて容易にボルト刻印工具の寿命を延ばすことができる。
本発明のボルト刻印工具の強化方法は、前記刻印部の最外周部は、前記ボルト刻印工具の軸心を中心とする所定の円周上に位置しており、前記所定の円の直径に対する前記低圧ノズル部の内径の比率が百分率で60〜150%であり、且つ、前記低圧ノズル部の内径に対する前記噴射ノズルと前記ボルト刻印工具の凹部底面との距離の比率が百分率で80〜120%であることが好ましい。
その理由は、低圧ノズル部の内径が前記所定の円の直径の60%よりも小さかったり、150%よりも大きかったりすると、噴射ノズルから噴射されるキャビテーション噴流がボルト刻印工具の刻印部に吹き付けられにくく、該刻印部に対し効果的に圧縮残留応力を付与することができず、噴射ノズルとボルト刻印工具の凹部底面との距離が低圧ノズル部の内径の80%よりも小さいと、ボルト刻印工具の表面粗さが大きくなって疲労強度が劣化し、120%よりも大きいと、刻印部に対し効果的に圧縮残留応力を付与することができないからである。
また、本発明のボルト刻印工具の強化方法は、前記高圧流体に気泡を供給し、該気泡が供給された高圧流体を前記高圧ノズル部から噴射してもよい。
こうすることで、高圧流体に供給された気泡がキャビテーション核となって、キャビテーションを多発させることができる。その結果、ボルト刻印工具の刻印部に大きい圧縮残留応力を付与することができ、ボルト刻印工具の寿命をより延ばすことができる。
本発明は、前記ボルト刻印工具の強化方法により強化されたボルト刻印工具も対象とする。それは、周方向にマークが刻まれた刻印部が底面外周側に設けられた平面視円形状の凹部を有し、冷間圧造により前記凹部を棒状のボルト材料に叩きつけて該ボルト材料に頭部を形成すると共に該頭部の外周側に前記マークを刻印するボルト刻印工具であって、
前記凹部の外周側には前記凹部の内周側よりも大きな圧縮残留応力が付与されていることを特徴とする
こうすることで、刻印部が摩耗し難く、寿命の長いボルト刻印工具を提供することができる。
本発明によれば、噴射ノズルを用いてボルト刻印工具の刻印部に圧縮残留応力を付与するようにしたので、極めて容易にボルト刻印工具の寿命を延ばすことができる。
キャビテーションピーニング装置の概略構成図である。 噴射ノズルの端面を示す図である。 ボルト頭部の平面図である。 ボルト刻印工具の斜視図である。 ボルト刻印工具の平面図である。 キャビテーション噴流を噴射した後の試験片を示す図である。 残留応力の測定結果を示す図である。 冷間圧造により六角ボルトを製造する方法を説明するための図である。
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。尚、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎない。
図1は、本発明のボルト刻印工具の強化方法に用いられるキャビテーションピーニング装置1の概略構成図である。このキャビテーションピーニング装置1は、キャビテーションピーニングによりボルト刻印工具9に圧縮残留応力を付与する装置である。
−キャビテーションピーニング装置の構成−
キャビテーションピーニング装置1は、図1,2に示すように、高圧水を噴射する円筒状の高圧ノズル部21と、該高圧ノズル部21の周囲に同心状に配設され、低圧水を噴射する円筒状の低圧ノズル部22とを有する二重管構造の噴射ノズル2と、高圧ノズル部21に高圧水を供給する高圧ポンプ3と、低圧ノズル部22に低圧水を供給する低圧ポンプ4と、ボルト刻印工具9を載置するテーブル5と、噴射ノズル2をテーブル5に載置されたボルト刻印工具9に近接、離間させるノズル駆動機構6と、テーブル5を噴射ノズル2の径方向(図1の左右方向及び紙面に直交する方向)に移動させるテーブル駆動機構7と、高圧ポンプ3、低圧ポンプ4、ノズル駆動機構6及び、テーブル駆動機構7を制御する制御部8とを備えている。
噴射ノズル2は、キャビテーション噴流を噴射するノズルである。キャビテーション噴流では、高圧ノズル部21から噴射された高圧水と低圧ノズル部22から噴射された低圧水とによりキャビテーションが発生する。
ノズル駆動機構6及びテーブル駆動機構7は、例えばCNC制御により制御されるアクチュエータにより構成される。
ボルト刻印工具9は、冷間圧造により棒状のボルト材料Mに頭部Hを形成すると共に、該頭部Hの頂面外周側に図3に示すようなJIS B 1051で規定された強度区分H1や製造業者の識別記号H2のマークを刻印するための工具である。尚、マークは、これに限られず、例えばボルトの材質を示す文字を含んでいてもよい。このボルト刻印工具9は、例えば、SKH51、SKH55(JIS規格)やYXR3、YXR7(日立金属製)等の高速度工具鋼や超硬合金から成る。
また、ボルト刻印工具9は、図4,5に示すように、略円柱形状を有し、その両端面には、上記ボルト材料Mに円盤状の頭部Hを形成すべく該ボルト材料Mに叩きつけられる平面視円形状の凹部91が形成されている。
各凹部91の底面91a外周側には、周方向に上記マークが刻まれた刻印部91bが設けられている。
刻印部91bの最外周部は、ボルト刻印工具9の軸心を中心とする所定の円周上に位置している。
以上のように構成されたキャビテーションピーニング装置1においては、前記所定の円の直径Yに対する低圧ノズル部22の内径X3の比率が百分率で60〜150%であり、且つ、低圧ノズル部22の内径X3に対する噴射ノズル2とボルト刻印工具9の凹部91の底面91aとの距離L(以下、ノズル距離ともいう)の比率が百分率で80〜120%であることが好ましい。
その理由は、低圧ノズル部22の内径X3が前記所定の円の直径Yの60%よりも小さかったり、150%よりも大きかったりすると、以下で述べるようにしてボルト刻印工具9を強化する際に、噴射ノズル2から噴射されるキャビテーション噴流が刻印部91bに吹き付けられにくく、該刻印部91bに対し効果的に圧縮残留応力を付与することができず、ノズル距離Lが低圧ノズル部の内径X3の80%よりも小さいと、ボルト刻印工具9の表面粗さが大きくなり、疲労強度が劣化し、120%よりも大きいと、刻印部91bに対し効果的に圧縮残留応力を付与することができないからである。
−ボルト刻印工具の強化方法−
次にこのキャビテーションピーニング装置1を用いてボルト刻印工具9を強化する方法について説明する。
まず、ボルト刻印工具9をテーブル5に載置し、テーブル駆動機構7によりテーブル5を移動させて、噴射ノズル2の軸心とボルト刻印工具9の凹部91の中心とを合致させる。
次いで、高圧ポンプ3及び低圧ポンプ4を駆動させて、噴射ノズル2からキャビテーション噴流をボルト刻印工具9に向けて噴射させる。
そうして、噴射ノズル2から噴射されたキャビテーション噴流の低圧水側がボルト刻印工具9の凹部91外周側に吹き付けられるように、ノズル駆動機構6により噴射ノズル2を移動させてノズル距離Lを調整する。
−実施形態の作用効果−
本実施形態によれば、高圧ノズル部21から噴射された高圧水と低圧ノズル部22から噴射された低圧水との圧力差により、高圧水中のキャビテーション核が成長してキャビテーション気泡となり、キャビテーション噴流の低圧水側でキャビテーション気泡が崩壊する。そして、このキャビテーション噴流の低圧水側がボルト刻印工具9の凹部91外周側に吹き付けられるため、キャビテーション気泡が崩壊するときの衝撃力によりボルト刻印工具9の凹部91外周側に圧縮残留応力が付与される。これにより、キャビテーションピーニング処理を施さない場合には、摩耗し易いボルト刻印工具9の凹部91外周側が摩耗し難くなる。その結果、凹部91外周側に設けられた刻印部91bが摩耗し難くなり、ボルト刻印工具9の寿命を延ばすことができる。
また、ボルト刻印工具9の強化方法としてキャビテーションピーニングを採用しているため、ショットピーニング処理を採用した場合に比べて、ボルト刻印工具9の表面粗さを劣化させることなく刻印部91bに圧縮残留応力を付与することができる。
さらに、噴射ノズル2の軸心とボルト刻印工具9の凹部91中心とを合致させて、キャビテーション噴流の低圧水側がボルト刻印工具9の凹部91外周側に吹き付けられるようにノズル距離Lを調整する操作を行うだけで、極めて容易にボルト刻印工具9の寿命を延ばすことができる。
−その他の実施形態−
キャビテーションピーニング装置1は、図1に仮想線で示すように、高圧ノズル部21の高圧水に気泡を供給する気泡発生装置10を備えていてもよい。
こうすることで、高圧水に供給された気泡がキャビテーション核となって、キャビテーションを多発させることができる。これにより、ボルト刻印工具9の刻印部91bに大きい圧縮残留応力を付与することができ、その結果、ボルト刻印工具9の寿命をより延ばすことができる。
尚、このキャビテーションピーニング装置1では、大径のボルト刻印工具9を強化する場合には、大径の噴射ノズル2が必要になり、大掛かりなものとなってしまう。そこで、噴射ノズル2を周方向に移動可能に構成してもよい。こうすることで、噴射ノズル2を周方向に移動させながら、ボルト刻印工具9の凹部91外周側のみにキャビテーション噴流を噴射することができるから、小径の噴射ノズル2を用いて大径のボルト刻印工具9を強化することができる。また、キャビテーション噴流をボルト刻印工具9の凹部91外周側全体に吹き付ける必要はなく、刻印部91bにのみに吹き付けるようにしてもよい。
以下に実施例を挙げて本発明をより具体的に説明する。
−噴射ノズル−
本実施例では、内径X1が1mm、外径X2が13mmの高圧ノズル部21と、内径X3が20mm、外径X4が26mmの低圧ノズル部22とを備えた噴射ノズル2を使用した。
−キャビテーション噴流の噴射条件−
キャビテーション噴流の噴射条件は、高圧水圧力を20MPa、低圧水圧力を0.04MPaとした。
−気泡発生装置−
本実施例では、気泡発生装置10としてナノバブル生成装置「バヴィタス」(協和機設製)を採用した。この気泡発生装置10を用いて、高圧ノズル部21の高圧水に平均径0.665μmの気泡を1000cm当たり約51.8万個供給した。
《キャビテーションピーニングによる残留応力の改善効果の確認試験》
キャビテーションピーニングによる残留応力の改善効果を確認するために、強度区分10.9、クロムモリブデン鋼SCM435製で且つ、ねじの呼びM30の六角穴付きボルトを軸方向にスライスして図6に示すような試験片TPを作製し、上記噴射条件で噴射ノズル2から試験片TPに向けてキャビテーション噴流を噴射した。その結果、試験片TPには、キャビテーション噴流の高圧水側に対応する中心領域111と、該中心領域111の周囲に形成され、キャビテーション噴流の低圧水側に対応する環状の外周領域112とから成る壊食痕110が認められた。
−残留応力の測定−
キャビテーション噴流の噴射時間を5,10,30,60,120,180秒と変化させて、噴射時間毎に残留応力を微小部X線応力測定装置「Auto Mate」(リガク製)を用いて測定した。残留応力の測定位置は、壊食痕110の中心部111と、外周領域112の内周縁部112aと、外周領域112の略中央部112bとした。
また、気泡発生装置10を用いて高圧ノズル部21の高圧水に気泡を供給した場合の残留応力も測定した。この場合には、キャビテーション噴流の噴射時間を120,180秒とし、測定位置を外周領域112の略中央部112bとした。
残留応力の測定結果を図7に示す。図中、「○」「△」「□」は気泡発生装置10を用いていない場合の測定結果であり、「○」は中心部111の測定結果、「△」は外周領域112の内周縁部112aの測定結果、「□」は外周領域112の略中央部112bの測定結果をそれぞれ示している。また、図中、「×」は気泡発生装置10を用いた場合の外周領域112の略中央部112bの測定結果を示している。同図において、噴射時間0秒から残留応力が低下しているほど、大きい圧縮残留応力が試験片TPに付与されていることになる。尚、噴射時間0秒で残留応力が0MPaとなっていない(654MPaとなっている)が、これは試験片TPを作製する過程で発生した残留応力が原因である。
この測定結果によると、残留応力は、壊食痕110の中心部111では噴射時間5秒で650MPa、10秒で603MPa、30秒で544MPa、60秒で603MPa、120秒で380MPa、180秒で208MPa、外周領域112の内周縁部112aでは噴射時間5秒で521MPa、10秒で238MPa、30秒で177MPa、60秒で−138MPa、120秒で−258MPa、180秒で−298MPa、気泡発生装置10を用いていない場合の外周領域112の略中央部112bでは噴射時間5秒で268MPa、10秒で74MPa、30秒で−146MPa、60秒で−312MPa、120秒で−388MPa、180秒で−410MPaであり、壊食痕110の中心部111よりも外周領域112の内周縁部112a及び略中央部112bのほうが残留応力の低下が大きく、壊食痕110の中心部111よりも外周領域112のほうが大きい圧縮残留応力が付与されていることが分かる。このことから、噴射対象物(ここでは、試験片TP)におけるキャビテーション噴流の低圧水側が吹き付けられた箇所のほうが高圧水側が吹き付けられた箇所よりも大きい圧縮残留応力が付与されることが分かった。これは、キャビテーション噴流の低圧水側でキャビテーション気泡が崩壊するためである。
また、壊食痕110の外周領域112の内周縁部112aよりも略中央部112bのほうが残留応力の低下が大きく、壊食痕110の外周領域112の内周縁部112aよりも略中央部112bのほうが大きい圧縮残留応力が付与されていることが分かる。このことから、壊食痕110の外周領域112の周縁部よりも中央部付近に大きい圧縮残留応力が付与されることが分かった。
さらに、この測定結果によると、残留応力は、気泡発生装置10を用いていない場合の外周領域112の略中央部112bでは噴射時間120秒で−388MPa、180秒で−410MPa、気泡発生装置10を用いた場合の外周領域112の略中央部112bでは噴射時間120秒で−500MPa、180秒で−600MPaであり、気泡発生装置10を用いていない場合よりも気泡発生装置10を用いた場合のほうが残留応力の低下が大きく、気泡発生装置10により高圧ノズル部21の高圧水に気泡を供給することで、噴射対象物により大きい圧縮残留応力を付与することができることが分かった。
《ボルト刻印工具の強化》
以上のことを踏まえてボルト刻印工具9を強化すべく、ノズル距離Lを調整して噴射ノズル2から噴射されたキャビテーション噴流の低圧流体側をボルト刻印工具9の凹部91外周側に吹き付け、刻印部91bに圧縮残留応力を付与した。実施例で使用したボルト刻印工具9及びノズル距離Lを以下に示す。
−ボルト刻印工具−
本実施例では、強度区分10.9(JIS B1051)、クロムモリブデン鋼SCM435(JIS G4053)製で且つ、ねじの呼びM12の六角ボルトの頭部Hを形成すると共に、該頭部Hの頂面にマークを刻印するためのボルト刻印工具9を使用した。このボルト刻印工具9の上記所定の円の直径Yは、15mmであった。即ち、上記所定の円の直径Yに対する低圧ノズル部22の内径X3の比率は、百分率で約133%であった。
−ノズル距離−
ノズル距離Lは、20mmとした。即ち、低圧ノズル部22の内径X3に対するノズル距離Lの比率は、百分率で100%であった。
《ボルト刻印工具の寿命の評価試験》
上記のようにして強化したボルト刻印工具9の寿命を評価すべく、以下のボルト刻印工具9を作製した。
(発明例)
キャビテーション噴流を10秒間吹き付けたボルト刻印工具9を発明例1とし、キャビテーション噴流を30秒間吹き付けたボルト刻印工具9を発明例2とし、キャビテーション噴流を120秒間吹き付けたボルト刻印工具9を発明例3とした。尚、発明例1〜3の何れのボルト刻印工具9を作製する際にも、気泡発生装置10を使用していない。
(比較例)
キャビテーション噴流を吹き付けていないボルト刻印工具9を比較例とした。
−ボルト刻印工具の寿命の評価−
上記発明例1〜3及び比較例のボルト刻印工具9の凹部91を複数のボルト材料Mに順次叩きつけて上記M12の六角ボルトの頭部Hを形成し、ボルト刻印工具9の凹部91外周側が0.1mm摩耗したときをボルト刻印工具9の寿命とした。
試験結果を表1に示す。
Figure 0005876701
表1に示すように、寿命に達するまでに叩いたボルト材料Mの本数は、キャビテーション噴流を吹き付けていない比較例では8万本であるのに対し、キャビテーション噴流を吹き付けた発明例1〜3では約30万〜40万本であり、本発明に係るボルト刻印工具9の寿命が従来のボルト刻印工具9の寿命よりも約4〜5倍延びていることが分かる。
以上の評価により、本発明の有効性が実証された。
本発明は、ボルトの頭部にマークを刻印するためのボルト刻印工具の寿命を延ばすことができる点で有用である。
1 キャビテーションピーニング装置
2 噴射ノズル
21 高圧ノズル部
22 低圧ノズル部
9 ボルト刻印工具
91 凹部
91a 底面
91b 刻印部
10 気泡発生装置
H (ボルト)頭部
L ノズル距離
M ボルト材料
X3 (低圧ノズル部の)内径
Y (所定の円の)直径

Claims (4)

  1. 周方向にマークが刻まれた刻印部が底面外周側に設けられた平面視円形状の凹部を有し、冷間圧造により前記凹部を棒状のボルト材料に叩きつけて該ボルト材料に頭部を形成すると共に該頭部の外周側に前記マークを刻印するボルト刻印工具と、
    高圧流体を噴射する円筒状の高圧ノズル部と、該高圧ノズル部の周囲に同心状に配設され、低圧流体を噴射する円筒状の低圧ノズル部とを有し、前記高圧流体と低圧流体との圧力差によりキャビテーション気泡を成長させて低圧流体側で崩壊させるキャビテーション噴流噴射ノズルとを準備し、
    前記噴射ノズルの軸心と前記凹部の中心とを合致させて前記噴射ノズルから前記キャビテーション噴流を前記ボルト刻印工具に向けて噴射し、該キャビテーション噴流の低圧流体側を前記凹部外周側に吹き付け、前記キャビテーション気泡を前記凹部外周側で崩壊させることにより、キャビテーションにより前記刻印部に圧縮残留応力を付与することを特徴とするボルト刻印工具の強化方法。
  2. 請求項1に記載のボルト刻印工具の強化方法において、
    前記刻印部の最外周部は、前記ボルト刻印工具の軸心を中心とする所定の円周上に位置しており、
    前記所定の円の直径に対する前記低圧ノズル部の内径の比率が百分率で60〜150%であり、且つ、前記低圧ノズル部の内径に対する前記噴射ノズルと前記ボルト刻印工具の凹部底面との距離の比率が百分率で80〜120%であることを特徴とするボルト刻印工具の強化方法。
  3. 請求項1又は2に記載のボルト刻印工具の強化方法において、
    前記高圧流体に気泡を供給し、該気泡が供給された高圧流体を前記高圧ノズル部から噴射することを特徴とするボルト刻印工具の強化方法。
  4. 周方向にマークが刻まれた刻印部が底面外周側に設けられた平面視円形状の凹部を有し、冷間圧造により前記凹部を棒状のボルト材料に叩きつけて該ボルト材料に頭部を形成すると共に該頭部の外周側に前記マークを刻印するボルト刻印工具であって、
    前記凹部の外周側には前記凹部の内周側よりも大きな圧縮残留応力が付与されていることを特徴とするボルト刻印工具。
JP2011223170A 2011-10-07 2011-10-07 ボルト刻印工具の強化方法及びボルト刻印工具 Expired - Fee Related JP5876701B2 (ja)

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