以下に、本発明にかかる実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。
以下、図面を参照して本発明における実施形態を詳細に説明する前に、本発明の種々の態様について説明する。
本発明の第1態様によれば、蓄熱体を内部に収納して地中に埋設されるとともに、上部から供給されて底部に向かう熱媒体の流路を内部に形成する蓄熱構造体と、
前記蓄熱構造体と配管で接続されて前記熱媒体の循環を行い、かつ、前記蓄熱構造体の底部から吸い上げられた前記熱媒体を加熱する集熱部とを備えて、
前記集熱部で加熱されたのち前記蓄熱構造体に供給されて前記蓄熱構造体の前記流路に拡散した前記熱媒体から前記蓄熱体への熱交換によって前記熱媒体から前記蓄熱体に熱を伝導させ、前記熱を受け取った前記蓄熱体が、さらに前記蓄熱構造体の周囲の前記地中の土壌に熱を拡散させることによって前記地中に蓄熱槽を形成し、前記熱交換の後に前記蓄熱構造体の前記底部に溜まった前記熱媒体を吸い上げて前記集熱部に循環させて前記集熱部で加熱することにより、前記熱媒体を再利用する、地中蓄熱槽形成装置を提供する。
このような構成によれば、熱媒体と蓄熱構造体の接触面積を飛躍的に増大させることにより、熱媒体から蓄熱体への高速及びかつ効率的な熱伝導を実現することで、熱媒体を蓄熱体として利用することなく、地下に熱応答の速い蓄熱構造体を形成するものであり、また、蓄熱構造体が、周囲の土壌にゆっくりと熱を拡散させることで蓄熱構造体の周囲も含む大熱容量の蓄熱槽を形成するものである。
また、蓄熱構造体の底に貯留した熱交換後の熱媒体を集熱部に循環することで、蓄熱槽の稼動に必要な熱媒体の使用量を削減するものである。
本発明の第2態様によれば、前記熱媒体として水を用い、
前記蓄熱構造体の内壁及び前記蓄熱体の表面は撥水性を有する
ことを特徴とした第1の態様に記載の地中蓄熱槽形成装置を提供する。
このような構成によれば、熱媒体に安価な温水を利用し、且つ、温水を蓄熱体に直接滴下する高効率な熱交換を利用しながらも、撥水処理によって蓄熱体内を流下する温水を残さず効率的に回収することができる。また、蓄熱構造体内に残る残水量が撥水処理によって減少することで、蓄熱構造体内から熱を回収する際の残水の蒸発による気化熱の熱消費を抑さえることができ、これにより、加温対象空間の空気を蓄熱構造体内に通気する従来型の安価な熱回収システムをそのまま利用することができる。
本発明の第3態様によれば、前記熱媒体として、シリコンオイルを用いることを特徴とした第1の態様に記載の地中蓄熱槽形成装置を提供する。
このような構成によれば、熱媒体の比熱が低いことから、集熱部から得られる有限な熱量によって容易に温度を上昇させることが出来、また、熱伝導率が低いことから集熱部から蓄熱構造体までの移動中の熱拡散による漏熱を防ぐことが出来、また、蒸気圧が低いことから、熱媒体の蒸発による蓄熱体からの気化潜熱の吸収を抑制することが出来、粘性が安定であることから熱媒体を圧送及び熱媒体汲み上げ動作を行うためのポンプ能力が一定とすることが出来る。これらの効果から、蓄熱槽の蓄熱温度を容易に高温化し、熱媒体からの漏熱及び熱媒体の気化熱による蓄熱ロスを抑制し、ポンプ能力の変動の少ない蓄熱槽を構築することが出来る。
本発明の第4態様によれば、前記集熱部は、外部の熱量を集熱し、前記熱媒体を加温し、
前記蓄熱構造体は、その上部に、前記集熱部で加温された前記熱媒体を前記蓄熱体に滴下する複数の穴を有する熱媒体滴下部を備えて、
前記蓄熱構造体は、内部で、前記熱媒体滴下部から滴下した前記熱媒体が前記流路に沿って前記蓄熱体を通過するときの熱交換により前記蓄熱体に蓄熱し、前記蓄熱構造体の内壁は、前記熱媒体を通さず、前記熱媒体滴下部から滴下された前記熱媒体を前記蓄熱構造体の前記底部に貯留する一方、
前記蓄熱構造体の前記底部に溜まった前記熱媒体を汲み上げて、前記集熱部に循環させる熱媒体汲み上げ部と、
加温対象である加温対象空間の空気を吸気し、その空気を前記蓄熱構造体に通気し、通気によって前記蓄熱構造体の内部の前記蓄熱体との熱交換によって加温された空気を前記加温対象空間に供給する熱回収部と、
前記熱媒体汲み上げ部と前記熱回収部の動作を制御する制御部と、
をさらに備える、第2又は3の態様に記載の地中蓄熱槽形成装置を提供する。
このような構成によれば、第2又は3の態様で記載の効果を有する蓄熱槽を形成することができる。
本発明の第5態様によれば、前記集熱部は、外部の熱量を集熱し、前記熱媒体を加温し、
前記蓄熱構造体は、その上部に、前記集熱部で加温された前記熱媒体を前記蓄熱体に滴下する複数の穴を有する熱媒体滴下部を備えて、
前記蓄熱構造体は、内部で、前記熱媒体滴下部から滴下した前記熱媒体が前記流路に沿って前記蓄熱体を通過するときの熱交換により前記蓄熱体に蓄熱し、前記蓄熱構造体の内壁は、前記熱媒体を通さず、前記熱媒体滴下部から滴下された前記熱媒体を前記蓄熱構造体の前記底部に貯留する一方、
前記蓄熱構造体の前記底部に溜まった前記熱媒体を汲み上げて、前記集熱部に循環させる熱媒体汲み上げ部と、
前記蓄熱構造体に通気して循環させる熱回収部と
加温対象である加温対象空間の空気を吸気し、前記熱回収部にて前記蓄熱構造体を循環する空気と吸気した前記加温対象空間の空気を分離しながら両空気の間で熱交換を行い、加温された前記加温対象空間内の空気を前記加温対象空間に帰還させる熱交換部と、
前記熱媒体汲み上げ部と前記熱回収部とを制御する制御部と、
をさらに備える、第2又は3の態様に記載の地中蓄熱槽形成装置を提供する。
このような構成によれば、第2又は3の態様で記載の効果を有する蓄熱槽を形成することができるとともに、熱交換部によって蓄熱構造体内の空気と加温対象空間の空気を分離しながら、蓄熱構造体内の空気と加温対象空間内の空気の熱交換を行うことが出来る。このことから、第2の態様の温水を熱媒体とした蓄熱槽では、蓄熱体内の高湿度の空気が加温対象空間内に流入することが無く、また、蓄熱構造体内に残る温水が結露する時に発生する潜熱も加温対象空間内の空気に伝えることが出来る。また、第3の態様のシリコンオイルなど油類を熱媒体とした場合には、そもそも蒸気圧が低いため熱媒体の気化潜熱に夜蓄熱ロスの問題は小さいが、微小ではあるが揮発が無いわけではなく、経年のオイルの揮発成分の拡散などが、加温対象空間内に拡散、加温対象空間内の壁面等に付着することを防止することができるとともに、それらの飛散物が加温対象空間内で人体に取り込まれることを防ぐことが出来る。
本発明の第6態様によれば、前記蓄熱構造体が、前記地中に掘られた竪穴内に埋設されていることを特徴とする第1〜5のいずれか1つの態様に記載の地中蓄熱槽形成装置を提供する。
このような構成によれば、前記蓄熱構造体を地上部からのボーリング作業で安価及び容易に形成することができる。
本発明の第7態様によれば、前記蓄熱構造体より上方でかつ前記集熱部より下方に配置され、前記蓄熱構造体から汲み上げた前記熱媒体を前記集熱部に循環させる前に貯留するタンクをさらに設け、
前記集熱部への前記熱媒体の循環は、前記タンクに溜めた前記熱媒体を循環させることを特徴とした第4又は5の態様に記載の地中蓄熱槽形成装置を提供する。
このような構成によれば、循環する熱媒体内の不純物をタンクに沈殿回収することできる。
本発明の第8態様によれば、前記熱媒体汲み上げ部と前記熱回収部とはそれぞれポンプで構成され、
前記蓄熱構造体は複数個備えられ、
前記熱媒体汲み上げ部と前記蓄熱構造体のそれぞれとを接続する配管に配置され、かつ、前記制御部で開閉制御される開閉バルブをさらに備え、
前記制御部で前記それぞれの開閉バルブを開閉制御することにより、前記熱媒体汲み上げ部における熱媒体汲み上げ動作と前記熱回収部における通気動作のためのポンプ動力を、前記それぞれの開閉バルブの開閉に依って選択した前記蓄熱構造体に分配することを特徴とした第4又は5の態様に記載の地中蓄熱槽形成装置を提供する。
このような構成によれば、第1の態様に記載の少量の熱媒体の循環で蓄熱動作が可能な特徴から、蓄熱動作時に蓄熱構造体の底に溜まる熱媒体を常時汲み上げ動作しなくても蓄熱構造体の内部に熱媒体が溢れることがないことを利用することで、少量の汲み上げ動作を少数の蓄熱構造体の間で選択的に巡回実施すれば良く、よって、より小型の汲み上げ動作能力の低いポンプが利用可能になるとともに、熱回収のための通気ポンプの動力も少数の蓄熱構造体を選択的に利用することにより、熱回収によって一時的に温度が低下した特定の蓄熱構造体へ周囲土壌からの熱拡散による熱供給が行われる時間を蓄熱構造体毎に制御することや、たとえば、蓄熱槽周辺部に近い蓄熱構造体の蓄熱は低温、蓄熱槽全体の中心部に近い蓄熱構造体の蓄熱状態は高温というような状態に制御することができ、加温したい加温対象空間の温度設定との蓄熱槽内の温度の差によって定義される熱回収可能な温度差を積極的に蓄熱槽内に形成することも可能になる。
本発明の第9態様によれば、前記蓄熱構造体は複数個備えられ、
前記熱媒体汲み上げ部と前記熱回収部とは、各蓄熱構造体に連結された1つのポンプで構成され、前記ポンプの動力で前記熱媒体汲み上げ部における熱媒体の汲み上げ動作と前記熱回収部における通気動作とを選択的にかつ他の蓄熱構造体とは独立して行うように前記制御部で制御する、ことを特徴とした第4又は5の態様に記載の地中蓄熱槽形成装置を提供する。
このような構成によれば、第8の態様と同様の作用効果を実現できるとともに、前記蓄熱構造体間の配管によるパイプ抵抗を排除することができるため、各ポンプにさらに小型及び低能力のポンプを利用することができる。
本発明の第10態様によれば、前記集熱部と前記蓄熱構造体とを接続する熱媒体供給用配管に配置された第1開閉バルブと、
前記蓄熱構造体と前記加温対象空間とを接続する通気用配管に配置された第2開閉バルブと、
前記蓄熱構造体と前記熱回収部とを接続する熱媒体供給兼通気用配管に配置された第3開閉バルブと、
前記熱媒体汲み上げ部にも接続される前記熱媒体供給兼通気用配管に一端が接続されかつ他端が前記蓄熱構造体に接続された熱媒体汲み上げ用配管に配置された第4開閉バルブとを備えて、
前記第1〜第4開閉バルブは前記制御部により開閉制御され、
前記制御部による前記開閉バルブの開閉に依って、前記熱媒体汲み上げ部における熱媒体汲み上げ動作と前記熱回収部における通気動作のための配管構成を変更し、前記熱媒体汲み上げ動作と前記通気動作とで、前記熱媒体供給兼通気用配管を共用することを特徴とした第4の態様に記載の地中蓄熱槽形成装置を提供する。
このような構成によれば、蓄熱動作時の揚水と熱回収時の通気のための配管を減らすことができるとともに、また、配管部を長くすることによって生じる漏熱の発生を減らすことができる。
本発明の第11態様によれば、前記地中内でかつ前記蓄熱槽の上部に、撥水性の砂を敷き詰めた撥水砂層を有して、前記蓄熱構造体の上端部と配管とが前記撥水砂層内に埋設される第4又は5の態様に記載の地中蓄熱槽形成装置を提供する。
このような構成によれば、撥水砂層として敷き詰めた時の撥水砂の遮水性を利用し、遮水することで撥水砂層の内部に保持される空気の間隙による断熱効果から、撥水砂層を敷くことで断熱層を形成することができ、蓄熱槽の上部への熱の拡散を防止することができる。また、撥水砂層の遮水性から、蓄熱槽上部から蓄熱槽内の土壌への水の浸入を防ぐことができ、引いては、蓄熱槽内の土壌から蓄熱槽外への水の流出による熱拡散を防止することができる。また、撥水砂の蓄熱槽の断熱性と遮水性を利用することで、安価で簡単な断熱及び遮水層を形成することができる。
本発明の第12態様によれば、前記地中内でかつ前記蓄熱槽の周囲に、撥水性の砂の壁で構成される撥水砂壁を有して、前記撥水砂壁により前記蓄熱構造体を囲む第11の態様に記載の地中蓄熱槽形成装置を提供する。
このような構成によれば、撥水砂層の断熱性を利用し、蓄熱槽周囲の地表面から近い冬季に温度が低下する土壌から蓄熱槽の断熱することができる。また、蓄熱槽周囲からの水の浸入を防ぐことにより、蓄熱槽内の土壌から蓄熱槽外への水の流出による熱拡散を防止することができる。
本発明の第13態様によれば、第1〜12のいずれか1つの態様に記載の前記蓄熱構造体は、その外壁材と連結構造部で連結されるとともに、前記蓄熱構造体の上端から底部先端まで挿入されて前記底部に溜まる熱媒体を汲み上げる熱媒体汲み上げ配管の下端が連結される貯水構造部を有し、
前記蓄熱構造体を前記地中に形成するとき、
揚水配管及び前記貯水構造部を地表面から空けたボーリング穴に落とし込み、
前記揚水配管を操作して前記揚水配管に連結した前記貯水構造部を前記ボーリング穴の底で設置安定させ、
その後、前記蓄熱体を前記蓄熱構造体の内部へ順次埋設して前記蓄熱構造体を形成することにより、地中蓄熱槽を形成する、地中蓄熱槽形成方法を提供する。
このような構成によれば、蓄熱構造体を地上部からの工事で容易に形成することが可能になる。
本発明の第14態様によれば、前記熱媒体として水を用い、
前記蓄熱体を、撥水処理した砕石群で形成する第13の態様に記載の地中蓄熱槽形成方法を提供する。
本発明の第15態様によれば、前記蓄熱体を、水若しくは水を吸収させた吸水ポリマーを充填したコルゲートチューブを前記蓄熱構造体内に埋設することで形成する第13の態様に記載の地中蓄熱槽形成方法を提供する。
このような構成によれば、第13の態様に記載の蓄熱構造体内の蓄熱体の形成において、熱容量も大きく、施工も容易な蓄熱体を形成することが出来る。また、蓄熱槽内の熱分布制御が可能な蓄熱槽を形成することが出来る。
以下に、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
以下の各図の説明では、同じ機能及び動作をする構成部分に対しては、同じ符号を用いている。よって、同じ符号の構成部分については、各図面の説明において、前出の図面で同じ構成部分について既に説明している場合、当該図面の説明上必要がある場合以外は、その構成部分の説明を省略する。
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態にかかる地中蓄熱槽形成装置の全体構成を示す図である。
まず、図1を用いて第1実施形態の地中蓄熱槽形成装置の装置構成を示す。
本第1実施形態の実現のための装置構成は、蓄熱のための温水として熱量を収集する集熱部の一例として機能する集熱器5と、蓄熱槽8と、配管類90と、第1〜第4開閉バルブ26,27,28,29と、少なくとも1個の(図1では4個の)蓄熱構造体23と、揚水部又は熱媒体汲み上げ部の一例として機能する揚水ポンプ20と、熱回収部の一例として機能する加温ポンプ30と、制御器65と、センサ類(61,62,63,64)とで概略構成されている。
配管類90は、集熱器5の温水を蓄熱槽8との間で循環させるために配置され、出水配管14、配水配管21、揚水配管25、ポンプ配管44、帰還配管15、揚水タンク17とを備えている。具体的には、出水配管14は、熱器5と配水配管21とを連結している。配水配管21は、主として地中に配置され、出水配管14と4個の蓄熱構造体23の配水側連結管21aとをそれぞれ連結している。出水配管14と配水配管21とは、熱媒体供給用配管の一例として機能する。揚水配管25は、主として地中に配置され、4個の蓄熱構造体23の揚水側連結管25aとポンプ配管44と揚水タンク17と加温ポンプ30とを連結している。ポンプ配管44は、揚水配管25と揚水ポンプ20とを連結している。揚水側連結管25aは熱媒体汲み上げ用配管の一例として機能する。帰還配管15は、揚水ポンプ20と集熱器5とを連結している。
揚水タンク17は、熱媒体供給兼通気用配管の一例として機能する揚水配管25が連結されて、4個の蓄熱構造体23の揚水側連結管25aから揚水された水を揚水配管25を介して一時的にその内部に貯める。この揚水タンク17には、ポンプ配管44の下端が挿入されて、揚水タンク17内に溜まった水を揚水ポンプ20によりポンプ配管44を介して吸い上げ可能としている。
第1〜第4開閉バルブ26,27,28,29は、配管類90の流路構成を制御している。
第1開閉バルブ26は、出水配管14と配水配管21との連結部分に配置されて、開閉制御することにより、出水配管14から配水配管21への温水の流路を切り替えている。
第2開閉バルブ27は、配水配管21と加温対象空間9とを連結し、通気用配管の一例して機能する連結管91の中間部分に配置されて、開閉制御することにより、配水配管21から連結管91への加熱空気の流路を切り替えている。
第3開閉バルブ28は、揚水配管25と加温ポンプ30との連結部分に配置されて、開閉制御することにより、加温ポンプ30から揚水配管25への空気の流路を切り替えている。
第4開閉バルブ29は、4個の蓄熱構造体23の揚水側連結管25aのそれぞれと揚水配管25との連結部分に配置されて、それぞれ開閉制御することにより、4個の蓄熱構造体23の揚水側連結管25aから揚水配管25への熱媒体の流路をそれぞれ切り替えている。
集熱器5は、一例として、太陽熱温水器で構成されている。集熱器5は、例えば、加温対象空間9を形成する部屋9aの外部の屋根などに設置されて、供給される水を太陽熱で加熱して温水とするものである。
蓄熱構造体23は、長尺で地中に上下方向沿いに埋め込まれ、一例として、等間隔にかつ互いに平行に配置されているが、これに限らず、任意の間隔で配置してもよいし、平行に配置しなくてもよい。各蓄熱構造体23は、熱伝導性を阻害せずかつ細長い筒状容器23bの内部に蓄熱体24を保持している。筒状容器23bは、例えば、鋼板より構成されている。筒状容器23bの底部23aは先すぼまり形状の円錐底面を形成し、その中央部には、窪んだ温水溜まり34が形成されている。筒状容器23bの上部には、熱媒体滴下部22が配置されて密閉されている(図2参照)とともに、揚水配管25に連結されている揚水側連結管25aと配水配管21に連結されている配水側連結管21aとが挿入されている。揚水側連結管25aの下端は、筒状容器23bの底部23aまで延びている一方、配水側連結管21aの下端は、蓄熱構造体23の上端部に連結されて、熱媒体滴下部22内に温水が供給できるようにしている。蓄熱体24は、蓄熱構造体23内に供給される温水から熱を吸収し、蓄熱体24で吸収された熱を、さらに、蓄熱体24から蓄熱構造体23の外周にある土壌7に伝達している。また、この蓄熱体24は、蓄熱構造体23の揚水側連結管25aを介して蓄熱構造体23内に供給される空気を加熱して、蓄熱体24から熱を奪って加熱された空気が、蓄熱構造体23の配水側連結管21aから排出するようにしている。蓄熱構造体23の内部の蓄熱体24としては、一例として、表面が撥水処理された砕石群(以下、砕石蓄熱体24とも称する。)を利用する。蓄熱体24としては、砕石に限らず、単なる石でもよい。
揚水ポンプ20は、ポンプ配管44の上端が連結されて、ポンプ配管44の下端に連結された揚水タンク17内から温水を吸い上げて、帰還配管15側に排出するように揚水している。この揚水ポンプ20により、温水を、集熱器5と配管類90と蓄熱構造体23との間で循環させることができる。
加温ポンプ30は、揚水配管25の一端が連結されている。加温対象空間9内の空気を加温ダクト31から加温ポンプ30内に吸気し、吸気した空気を、配管類90の揚水配管25を介して、4個の蓄熱構造体23の揚水側連結管25aに供給する。この結果、供給され空気が各蓄熱構造体23内を通気して加温され、加温された空気を、配水配管21から連結管91を介して、連結管91の上端の加温ダクト32から加温対象空間9に放出する。このように空気を供給するための動力として加温ポンプ30が機能している。
制御器65は、第1〜第4開閉バルブ26,27,28,29と揚水ポンプ20と加温ポンプ30とのそれぞれの動作を制御するための制御部の一例として機能する。このため、制御器65は、第1〜第4開閉バルブ26,27,28,29をそれぞれ独立して開閉制御して、蓄熱動作のための配管構成と熱回収動作のための配管構成とをそれぞれ形成して、蓄熱動作と熱回収動作とを制御することができる。
具体的には、蓄熱動作のための配管構成を形成するときには、制御器65の制御により、第1開閉バルブ26を開き、第2,第3開閉バルブ27、28を閉じて、第4開閉バルブ29を適宜選択的に開閉して、集熱器5、出水配管14、配水配管21、蓄熱構造体23の配水側連結管21a、蓄熱構造体23、揚水配管25、揚水タンク17、ポンプ配管44、揚水ポンプ20、帰還配管15、集熱器5で循環する配管構成を形成する。熱回収動作のための配管構成を形成するときには、制御器65の制御により、第1開閉バルブ26を閉じかつ第2〜第4開閉バルブ27,28,29を全て開くことで、加温対象空間9、吸気ダクト31、加温ポンプ30、揚水配管25、連結管91、加温ダクト32、加温対象空間9とを循環する配管構成を形成する。
センサ類(61,62,63,64)は、制御器65へ制御情報を提供する。各センサの機能については、後述する。
次に、図1、図2、図3を用いて、蓄熱槽8の蓄熱動作の概要について説明する。
図2の(a)〜(c)は、下記の説明中の1つの蓄熱構造体23の蓄熱動作時の動作の流れを示す図であり、図3は、隣接する2つの蓄熱構造体23の間で第4開閉バルブ29をそれぞれ開閉することによる選択的な揚水動作の状態を表した図である。
集熱器5で集熱されて温水となった、熱媒体の一例としての水は、出水配管14と配水配管21とを通り、各蓄熱構造体23の配水側連結管21aに至る。配水側連結管21aから、各蓄熱構造体23内の上端に位置する熱媒体滴下部22内に到達する。熱媒体滴下部22内に到達した温水は、熱媒体滴下部22の内部を通過することで滴下状態になり、蓄熱構造体23の上部より、内部の砕石蓄熱体24に直接滴下されることになる(図2の(a)参照)。このように、温水を滴下するのは、熱交換面積を広げるためであり、熱交換面積がある程度の大きさを確保できる場合には、滴下ではなく、少量の温水を流入するようにしてもよい。
温水は、直接滴下によって砕石蓄熱体24である砕石の表面に広がり、大面積の即時熱交換によって、温水自体の持つ熱量を砕石蓄熱体24へと効率的に伝達することができ、その後、温水は蓄熱構造体23の底部23aに貯まる(図2の(b)参照)。よって、上部から供給されて底部に向かう熱媒体の一例としての温水が、多数の砕石蓄熱体24の表面を順に伝っていく経路が、温水の流路となる。蓄熱構造体23の内部に砕石蓄熱体24がランダムに多数積み重ねるように配置されることで、温水の流路が蓄熱構造体23の内部に形成されていることになる。砕石蓄熱体24の表面及び蓄熱構造体23の筒状容器23bの内壁は、それぞれ撥水処理されているため、温水が蓄熱構造体23内を落水する間に、砕石蓄熱体24の表面及び蓄熱構造体23の筒状容器23bの内壁に留まる残水の量は、極少量となる。蓄熱構造体23の筒状容器23bの底部23aに溜まった温水は、第4開閉バルブ29を随時又は温水が所定量溜まったときに開くことによって、蓄熱構造体23の上部より底部の温水溜まり34に達する揚水側連結管25aから揚水配管25及び揚水タンク17及びポンプ配管44を通り、揚水ポンプ20によって揚水される。そして、さらに、揚水ポンプ20で揚水された温水は、帰還配管15を通して、集熱器5に循環される(図2の(c)参照)。
蓄熱動作時の制御器65は、第1開閉バルブ26を開き、第2,第3開閉バルブ27、28を閉じるように制御して、蓄熱動作のための配管構成を形成する。すなわち、集熱器5、出水配管14、配水配管21、蓄熱構造体23の配水側連結管21a、蓄熱構造体23、揚水配管25、揚水タンク17、ポンプ配管44、揚水ポンプ20、帰還配管15、集熱器5で循環する配管構成を形成する。
一例として、複数の蓄熱構造体23の内から順に選択した蓄熱構造体23を順次巡回して揚水する。すなわち、複数の蓄熱構造体23のうち、最初に選択された蓄熱構造体23に温水を供給し、温水が所定量だけ蓄熱構造体23内に溜まると、次に選択された蓄熱構造体23に温水を供給する。次いで、温水が所定量だけ蓄熱構造体23内に溜まると、さらに次に選択された蓄熱構造体23に温水を供給する。このように順次、蓄熱構造体23が選択されて温水が供給されるため、各蓄熱構造体23の第4開閉バルブ29は制御器65により選択的に開閉するように制御される。複数の蓄熱構造体23の内から1つの蓄熱構造体23を選択する方法としては、例えば、所定の方向に順次選択する方法、外側に配置される蓄熱構造体23(図11Aの8×5=40個の蓄熱構造体23のうち、外側に配置される22個の蓄熱構造体23)から順に選択する方法などが考えられる。
図3では、揚水ポンプ20が動作を継続している状況で、制御器65により、図3中の右側の蓄熱構造体23の上部の第4開閉バルブ29が開かれ、左側の第4開閉バルブ29が閉じられる。このように制御することで、揚水ポンプ20の揚水圧力を右側の蓄熱構造体23に集中し、その底部23aからの揚水を選択的に実行する様子を示している。
全ての蓄熱構造体23より同時に揚水する必要はないため、第4開閉バルブ29を選択的に開閉し、揚水対象である蓄熱構造体23を限定的に選択する制御によって、揚水ポンプ20に要求される揚水圧力の負荷を軽減することができ、結果として、ポンプの性能及びコストを低く抑えることが出来る。
また、蓄熱構造体23から揚水した温水を、揚水配管25を通じて、一旦、揚水タンク17に集水するようにしている。このような構造とすることで、温水中に混入した不純物が揚水タンク17の底に沈殿して滞留し、揚水タンク17からの温水を集熱器5に揚水帰還する際に、揚水タンク17に溜まった温水の上部からポンプ配管44を通じて揚水ポンプ20に吸い上げるようにしている。この結果、温水中に含まれた不純物を取り除くことができる。この揚水タンク17での温水の浄化だけに頼ることなく、揚水ポンプ20の吸水部分等に濾過フィルターを追加しても良い。
蓄熱動作は、上述の動作を繰り返すことによって継続するが、蓄熱動作を終了する場合(例えば、停止ボタン66(図5A参照)が押された場合)には、配管90を通した蓄熱構造体23からの放熱を防止するために、全ての第4開閉バルブ29を閉じ、揚水ポンプ20を停止すればよい。仮に、蓄熱構造体23が1本の場合には、揚水対象の蓄熱構造体23を選択するための第4開閉バルブ29は必要ないが、その場合には、揚水ポンプ20を停止すれば、帰還配管15及びポンプ配管44内に残った温水が落水し、蓄熱構造体23に逆流しようとすることになるが、本第1実施形態のように揚水タンク17を設けておけば、この蓄熱構造体23への逆流を防ぐことが出来る。
次に、図1及び図4の(a)及び(b)に沿って、加温時の蓄熱槽8からの熱回収動作の概要について説明する。
図4の(a)及び(b)は加温時の蓄熱構造体23の周辺の熱回収動作の流れを示す図である。
熱回収時には、制御器65は、第1開閉バルブ26を閉じ、第2,第3開閉バルブ27、28及び全ての第4開閉バルブ29を開き、加温ポンプ30を駆動する。加温ポンプ30の駆動により、加温対象空間9内の空気は、吸気ダクト31から加温ポンプ30内に吸気される。吸気された空気は、駆動されている加温ポンプ30から、揚水配管25を介して、各蓄熱構造体23の揚水側連結管25aから各蓄熱構造体23の底部に入り、各蓄熱構造体23の最下部に排出される(図4の(a)参照)。蓄熱構造体23の最下部に排出された加温空気は、加温ポンプ30の排気圧力により砕石蓄熱体24の砕石の隙間を上昇する。この加温空気は、上昇時に、砕石蓄熱体24との間の熱交換によって、砕石蓄熱体24から熱量を受け取る。蓄熱構造体23の上部にまで到達した加温空気は、熱媒体滴下部22の温水の多数の滴下穴36を通り、配水側連結管21a及び配水配管21及び連結管91を介し(図4の(b)及び図1参照)、加温ダクト32に至り、加温対象空間9内に戻される。加温ダクト32から排出される暖気は、加温ダクト32にパイプ又はチューブを連結して、パイプ又はチューブを用いて、加温したい箇所に分配しても良いし、加温ダクト32自体を加温対象空間9の所望の位置に複数配置しても良い。また、蓄熱動作時と同様、第4開閉バルブ29を選択的に制御することで、熱回収の対象とする蓄熱構造体23を選択して利用しても良い。
次に、前記の蓄熱動作及び熱回収動作時の制御器65の制御動作について図5A、図6及び図7を用いて補足する。
図5Aは、制御器65に接続するセンサ及び制御対象の接続を示したブロック図である。
図6は、制御器65による蓄熱動作の制御フローを示した図であり、図7は、制御器65による熱回収動作の制御フローを示した図である。
図5Aに示すように、制御器65の入力には、停止ボタン66と、出口温度センサ61と、揚水温度センサ62と、加温対象空間温度センサ63と、排気温度センサ64との4つのセンサが接続されるとともに、制御出力には、第1〜第4開閉バルブ26,27,28,29と、揚水ポンプ20と、加温ポンプ30とが接続して、前記入力に基づいて、制御出力によりそれぞれの動作を制御する。
出口温度センサ61は、集熱器5の出口側の出水配管14に配置され、集熱器5内で集熱された温水の温度を計測するセンサである。
揚水温度センサ62は、いずれか1つの蓄熱構造体23、例えば、揚水タンク17に最も近い蓄熱構造体23の揚水側連結管25aに配置され、蓄熱構造体23から揚水ポンプ20によって揚水側連結管25a内に揚水される温水の温度を計測するセンサである。
加温対象空間温度センサ63は、加温対象空間9内に配置され、加温対象空間9内の室温を計測するセンサである。
排気温度センサ64は、加温ダクト32に配置され、蓄熱構造体23内で加温されかつ加温ダクト32から加温対象空間9内に排気される空気の温度を計測するセンサである。
次に、図6に沿って蓄熱動作時の制御フローを説明する。
制御器65は、図5Bに示すように、制御本体部65aと、蓄熱動作開始判定部65bと、加温フラグ判定部65cと、バルブ制御部65dとで構成されている。
制御本体部65aは、蓄熱動作と熱回収動作とを主体的に動作制御するものであり、停止ボタン66のON及びOFFに基づいて、蓄熱動作の開始条件の評価、蓄熱動作の停止条件の評価、各種ポンプ、例えば揚水ポンプ20及び加温ポンプ30の起動及び停止、加温フラグのON及びOFF、蓄熱制御プログラム及び熱回収制御プログラムの開始及び停止などの動作を行う。
蓄熱動作開始判定部65bは、出口温度センサ61の出力(検出値)と揚水温度センサ62の出力(検出値)とに基づいて、蓄熱動作を開始してよいか否かの判定を行う。
加温フラグ判定部65cは、加温フラグのON又はOFFに基づいて、熱回収動作が動作中か停止中かの判定を行う。
バルブ制御部65dは、第1〜第4開閉バルブ26,27,28,29の開閉制御を行う。
ステップS1にて起動した制御器65の蓄熱制御プログラムは、以下のように動作する。
まず、ステップS2とステップS3とステップS4で構成されるループに入り、蓄熱動作の開始条件を評価する。ステップS2では、制御プログラムの停止ボタン66(図5A参照)が押された際の蓄熱制御プログラムの停止を制御本体部65aで検知し、停止ボタン66がONであると制御本体部65aで判定すれば、ステップS15に進み、蓄熱制御プログラムを制御本体部65aで停止する。ここで、停止ボタン66は、本蓄熱制御プログラムと図7で示す熱回収制御プログラムとを1つのボタンで同時に停止させるものとする。
ステップS2において停止ボタン66がOFFであると制御本体部65aで判定する場合には、ステップS2はNoとなり、プログラムはステップS3に進む。
ステップS2がYesの場合には、蓄熱制御プログラムにおいて蓄熱槽8の蓄熱動作は開始条件を検知している状態で具体的な動作は開始しておらず、ステップS15にて制御本体部65aで蓄熱制御プログラムを停止するだけでよい。
ステップS3での蓄熱動作の開始条件は、制御器65の蓄熱動作開始判定部65bで、集熱器5での集熱が十分に行われているかどうかの判定である。この判定は、集熱器5の出口温度(出口温度センサ61で検出した値)が、予め設定した(例えば、制御本体部65aの内蔵メモリに予め設定した)蓄熱開始温度の設定値より高くなる条件で確認する。プログラムはステップS3の条件がYesとなる条件で、ステップS4に進み、ステップS3の条件がNoで、ステップS2に戻る。
ステップS4では、加温対象空間9を加温するための熱回収動作が動作中か停止中かを検知する。本第1実施形態では、熱回収動作と蓄熱動作とは並列で動作しないことを前提としており、蓄熱動作と熱回収動作との両方の動作開始条件が整っている場合には、加温対象空間9の加温のための熱回収動作を優先することとしている。このため、ステップS4では、熱回収動作中か停止中かの判定を加温フラグ判定部65cで実施する。この判定は、熱回収制御プログラムと蓄熱制御プログラムとで共有する変数である加温フラグのON/OFFを加温フラグ判定部65cで確認することにより行う。加温フラグは、図7に示す熱回収制御プログラム内で熱回収動作中に制御本体部65aにより加温フラグがONにセットされる一方、熱回収動作の停止中に制御本体部65aにより加温フラグがOFFにセットされる。このようにすることで、蓄熱制御プログラム中では、加温フラグのON/OFFによって、熱回収動作が動作中か停止中かを加温フラグ判定部65cで判定することが出来る。
ステップS4において、加温フラグがOFFであると加温フラグ判定部65cで判定すると、すなわち、熱回収動作が停止していると加温フラグ判定部65cで判定すると、ステップS3での蓄熱動作開始の条件は整っているので、ステップS5に進む。加温フラグがONであると加温フラグ判定部65cで判定する場合には、蓄熱制御プログラムはステップS2に戻り、ステップS2、ステップS3、ステップS4で構成されたループを繰り返すことで、次の蓄熱動作の開始条件の成立を繰り返し待ち続ける。
ステップS5では、開閉バルブを開閉制御して配管の接続を蓄熱動作に対応した配管構成に設定するため、バルブ制御部65dで、第1開閉バルブ26を開き、第2,第3開閉バルブ27,28を閉じる。第4開閉バルブ29は、最初はすべて閉じた状態のままとして、その後、後述するように適宜選択的に開閉する。このようにすることにより、揚水タンク17、ポンプ配管44、揚水ポンプ20、帰還配管15、集熱器5、出水配管14、第1開閉バルブ26、配水配管21を介して、蓄熱構造体23の内部までの経路がつながる。
次に、ステップS6で、揚水ポンプ20を制御本体部65aで起動する。
次に、ステップS7では、図3で前述した複数の蓄熱構造体23からの選択的な揚水を実現するため、バルブ制御部65dで、各各蓄熱構造体23の揚水配管25に取り付けられた第4開閉バルブ29を選択的に開閉する制御を行う。この制御では、たとえば1つの蓄熱構造体23の第4開閉バルブ29を順次開きながら、他の蓄熱構造体23の第4開閉バルブ29を閉じる制御を巡回させながら行うことで実現できる。このステップS7の制御には、たとえば、制御器65を構成するPC(パーソナルコンピュータ)の内部時刻を参照し、複数の第4開閉バルブ29の間で任意の第4開閉バルブ29を順に選択し、選択された第4開閉バルブ29を所定時間(例えば5分間)だけ開となるように制御する方法を用いても良いし、又は、予め定めた割り込みタイマなどを用いたイベント処理として処理しても良い。
ステップS8及びステップS9は、蓄熱動作の停止条件を制御本体部65aと蓄熱動作開始判定部65bとで検知するものである。
まず、ステップS8では、ステップS2と同様、停止ボタン66のON/OFFを制御本体部65aで検知する。ステップS2と異なる点は、蓄熱動作が動作状態に入っていることであり、停止ボタン66がONであると制御本体部65aで検知する場合には、制御本体部65aで蓄熱動作を停止させるために、ステップS12にて制御本体部65aで揚水ポンプ20を停止することである。次いで、ステップS13で、バルブ制御部65dで全ての第4開閉バルブ29を閉じ、次いで、ステップS15において、制御本体部65aで蓄熱制御プログラムを停止することになる。動作停止の処理には、蓄熱動作及び熱回収動作とも、蓄熱槽8からの配管を通した漏熱を防ぐため、第1〜第4開閉バルブ26,27,28,29の全てをステップS13においてバルブ制御部65dで閉じる。
一方、ステップS8で停止ボタン66がOFFであると制御本体部65aで検知する場合には、ステップS9に移る。ステップS9において、加温フラグのON/OFFの状態を加温フラグ判定部65cで判定する。
ステップS9にて、加温フラグがONであると加温フラグ判定部65cで判定するということは、蓄熱制御プログラムにおいて、蓄熱動作の動作中に、後述の熱回収制御プログラムにおいて熱回収動作開始の条件が整い、加温フラグがOFFからONに制御本体部65aで変更されたことを示す。本制御プログラムでは、蓄熱動作よりも熱回収動作を優先するため、蓄熱動作中であっても、加温対象空間9に加温の必要性が生じれば、制御本体部65aで蓄熱動作を終了し、熱回収動作を動作させなければならない。よって、ステップS9において加温フラグがONであると加温フラグ判定部65cで判定する場合には、第1〜第4開閉バルブ26〜29の状態は、後述の熱回収制御プログラムに基づきバルブ制御部65dによって熱回収用の配管構成に設定され、加温ポンプ30が動作している状態となっている。しかしながら、本プログラムにて制御本体部65aで揚水ポンプ20を停止し、揚水のための配管流路を閉じなければ熱回収用の配管構成が完成せず、加温ポンプ30からの加温空気が蓄熱構造体23に送気されない(後述の図7を用いた熱回収制御プログラムの説明を参照)。
このため、ステップS9にて加温フラグがONであるとで判定する場合には、直ちにステップS11に移り、制御本体部65aで揚水ポンプ20を停止する。ステップS9にて加温フラグがOFFであると判定する場合には、ステップS10に移る。
ステップS10で制御本体部65aにより判定する条件は、蓄熱動作終了条件である。この条件は、集熱器5の出口側での出口温度センサ61で検出した値が揚水温度センサ62で検出した値よりも低く、よって、集熱器5での集熱温度が蓄熱構造体23内の蓄熱体24と熱交換された温水の温度よりも低く、集熱器5から蓄熱構造体23に送湯しても、蓄熱構造体23への蓄熱に寄与しなくなる条件を、制御本体部65aにより、判定するためのものである。しかし、厳密には、揚水温度センサ62で検出した値は、揚水された蓄熱構造体23内の底部に溜まった温水の湯温を示すもので、蓄熱構造体23内の蓄熱体24の温度を正確に示す値ではない。また、出口温度センサ61で検出した値は、集熱器5の出口での温度を示すものであって、熱媒体滴下部22での滴下温度を正確に示すものではない。このため、センサの数を増やさず、熱媒体滴下部22での温水の温度を想定するため、集熱器5の出口から熱媒体滴下部22までの送湯時の漏熱に依る温度低下を見込んだ一定の閾値を予め定める(例えば、制御本体部65aの内蔵メモリに予め設定する)。そして、ステップS10では、出口温度センサ61で検出した値が、揚水温度+閾値よりも小さくなった(蓄熱動作終了条件がYesである)と制御本体部65aで判定する場合に、集熱器5での集熱が蓄熱に寄与するには低温であると制御本体部65aで判定することで、制御本体部65aにより蓄熱動作を停止する。よって、ステップS10の蓄熱動作終了条件がNoであると制御本体部65aにより判定する場合には、ステップS7に戻ることで、蓄熱動作自体は継続しながら蓄熱動作の終了条件を検知するループを繰り返す。蓄熱動作終了条件がYesであると制御本体部65aにより判定する場合には、ステップS11にて制御本体部65aにより揚水ポンプ20を停止し、バルブ制御部65dにより第1〜第4開閉バルブ26〜29を全て閉じて次の蓄熱動作の開始条件が整う迄、ステップS2〜ステップS4で構成した蓄熱動作開始条件を検知するループに戻る。
次に、図7の熱回収制御プログラムの制御について説明する。
ステップS21にて起動した熱回収制御プログラムは、まず、ステップS22とステップS23とで構成した蓄熱動作の開始条件の評価ループに入る。
ステップS22では、制御プログラムの停止ボタン66が押された際の熱回収制御プログラムの停止を制御本体部65aにより検知する。停止ボタン66がONであると制御本体部65aで判定すれば、ステップS41に進み、熱回収制御プログラムは制御本体部65aで停止する。停止ボタン66がOFFであると制御本体部65aで判定すれば、ステップS23に進む。
ステップS23では、加温対象空間9の加温開始条件である加温対象空間温度センサ63の検知温度である空間温度(以下、単に「空間温度」という)と予め設定した(例えば、制御本体部65aの内蔵メモリに予め設定した)加温開始温度を制御本体部65aで比較する。空間温度が加温開始温度よりも低くなったと制御本体部65aで判定する場合には、加温のための熱回収動作を開始するためステップS24に進む。空間温度が加温開始温度以上であると制御本体部65aで判定する場合には、加温の必要無しと制御本体部65aで判定し、ステップS22に戻る。
ステップS24では、前述の蓄熱制御プログラムに熱回収動作の開始を伝達する加温フラグを制御本体部65aによりONにする。
次いで、ステップS25では、第1開閉バルブ26を閉じ、第2〜第4開閉バルブ27,28,29を全て開くことで、熱回収動作のための配管構成を形成する。よって、加温対象空間9、吸気ダクト31、加温ポンプ30、揚水配管25、連結管91、加温ダクト32、加温対象空間9とを循環する配管構成が形成される。
次いで、ステップS26では、ステップS25で構成された配管内に加温対象空間9内の空気を循環させるため加温ポンプ30を制御本体部65aで起動する。ステップS24からステップS26が動作することで熱回収のための空気が循環し始めることになる。
ステップS26に続く、ステップS27、ステップS28、ステップS29では、熱回収の停止条件を検知するループを構成する。
まず、ステップS27では、停止ボタン66のON/OFFを制御本体部65aで検知する。停止ボタン66がONであると制御本体部65aで判定すれば、ステップS39に進む。
ステップS39では、制御本体部65aで加温フラグをOFFにし、蓄熱制御プログラムに熱回収動作の停止を制御本体部65aで伝達する。
次いで、ステップS40で加温ポンプを制御本体部65aで停止する。
次いで、ステップS41では、プログラム自体を制御本体部65aで停止する。停止ボタン66が押されたときには蓄熱制御プログラムも制御本体部65aで停止するため、図6のステップS12で揚水ポンプ20も制御本体部65aで停止するとともに、ステップS13にてバルブ制御部65dにより第1〜第4開閉バルブ26〜29も全て閉じられる。
一方、ステップS27で、停止ボタン66がOFFであると制御本体部65aで判定すれば、ステップS28に進む。
ステップS28では、加温対象空間9の行き過ぎた加温状態を制御本体部65aで検知する。すなわち、ステップS28で、空間温度と予め設定した(例えば、制御本体部65aの内蔵メモリに予め設定した)加温終了温度とを制御本体部65aで比較する。空間温度が加温終了温度よりも高いと制御本体部65aで判定すれば、ステップ30に進む。
ステップ30では、加温ポンプを制御本体部65aで停止する。
次いで、ステップS31では、バルブ制御部65dにより全ての第1〜第4開閉バルブ26〜29を閉じる。
次いで、ステップS32では、加温フラグを制御本体部65aでOFFにして、ステップS22に戻る。
一方、ステップS28で、空間温度より加温終了温度の方が高いか同じであると制御本体部65aで判定すれば、加温対象空間9の加温は十分でないため、制御本体部65aにより加温動作を継続し、次のステップS29に進む。
次いで、ステップS29では、空間温度と排気温度(排気温度センサ64で検出した値)との比較を制御本体部65aで行なう。このステップS29の条件が成立する状態、すなわち、空間温度よりも排気温度(排気温度センサ64で検出した値)の方が低い条件が成立すると制御本体部65aにより判定する場合においては、熱回収動作を継続することで加温対象空間9の温度が低下してしまうことになる。このような事態を避けるため、ステップS29がYesである(空間温度よりも排気温度の方が低い)と制御本体部65aで判定するときは、熱回収動作を、制御本体部65aで、一旦停止しなければならない。すなわち、ステップS29で、Yesが成立するような状態は、たとえば、加温対象空間9から外部への放熱が大きく、急速な加温要求に対する熱回収動作の過剰運転によって、蓄熱構造体23から一気に熱量が奪われた状態を示す。このような場合には、一旦、ステップS33にて、加温ポンプ30を制御本体部65aで停止する。
次いで、ステップS34にて、バルブ制御部65dで全ての第1〜第4開閉バルブ26〜29を閉じる。
次いで、ステップS35では、制御本体部65aにより加温フラグをOFFにする。
その後、周囲の土壌7から蓄熱構造体23へ熱量が供給されるのを、ステップS36、ステップS37,ステップS38で構成したループタイマーで待った後、ステップS22に戻り、次の熱回収動作開始条件の成立を待つ。
このループタイマーステップS36〜ステップS38では、まず、ステップS36でタイマー値をゼロリセットする。
次いで、ステップS37で予め定めた(例えば、制御本体部65aの内蔵メモリに予め設定した)終了値とタイマー値とを制御本体部65aで比較する。終了値よりもタイマー値の方が大きいと制御本体部65aで判定すれば、ステップS22に進む。、タイマー値が終了値以下であると制御本体部65aで判定すれば、ステップS38に進む。
ステップS38では、タイマーの値をインクリメントしたのち、ステップS38に戻り、ステップS37の条件の成立を待つ。ループによるPCのCPUの負荷が大きいようであれば、割り込みタイマなどを用いて時間待ちをしても良い。
以上に記載の熱回収制御プログラムによって、蓄熱槽8の蓄熱状態と加温対象空間9の加温要求とを制御器65で制御することが出来る。
ここで、ステップS29の条件が成立する場合のループタイマーステップS36〜ステップS38での時間待ち対処の意図について説明を補足する。
ステップS29の条件は、加温対象空間9から供給され、蓄熱構造体23内を通過して加温対象空間9へ戻される空気が、加温対象空間9内の温度よりも低下してしまうために生じる。この状態は、蓄熱槽8を形成した場所が短期的な大寒波に襲われた場合に、加温対象空間9内の空気が急速に冷えることで、蓄熱構造体23からの熱が急速に奪われることで成立してしまうと考えられる。このような場合には、急速に熱を奪われる事で一旦冷えてしまった蓄熱構造体23を加温するため、周囲土壌7から蓄熱構造体23への熱の拡散による温度上昇を、ステップS36〜ステップS38のループタイマーによって待つことで、再び熱回収が可能な条件の成立する状況を作ることが必要となる。加温に対する一時的な悪条件によってステップS29の条件が成立してしまう状態であっても、事前に、蓄熱槽8の形成場所の気候又は土壌等の条件を考慮した上で、規模及び蓄熱材及び集熱器仕様等を設計した蓄熱槽8であれば、蓄熱槽8を形成する土壌7内の蓄熱量が足りなくなるような状況は想定外であり、本プログラムのように対処することが可能である。
次に、蓄熱構造体23の構成について、図8を用いて説明する。
図8の(a)は、図1の図面正面から見た1つの蓄熱構造体23の周辺の構造を拡大して示した図であり、(b)はその側面図、(c)及び(d)は図8の(a)及び(b)の蓄熱構造体23の中間部及び底部でそれぞれ横に貫通する一点鎖線で示す面での断面図である。
図9A〜図9Dは、蓄熱構造体23の上部にある熱媒体滴下部22の周辺の拡大図を示す。図9Cは、図1の図面正面から見た熱媒体滴下部22の周辺を示した正面図であり、図9Aが熱媒体滴下部22の周辺の上面図、図9Dが熱媒体滴下部22の周辺の右側面図、図9Bが熱媒体滴下部22の下面図である。
図8の(a)〜(d)及び図1に示す通り、蓄熱構造体23全体は地中に埋設された円筒形の杭構造とし、蓄熱構造体23の最下部(底部23a)には、熱媒体滴下部22から滴下される温水を揚水配管25で効率良く揚水するための温水溜まり34を形成する。蓄熱構造体23の内部には、撥水処理した多数の砕石を敷き詰めて砕石蓄熱体24を形成する。筒状容器23bの材料、言い換えれば、蓄熱構造体23と周囲の土壌との境界(境界材)には、温水及び加温空気が漏れない通気性及び通水性の無い材料で構成し、かつ、筒状容器23bの内側が撥水性の材料を利用するか、又は、筒状容器23bの内側に撥水性が無い若しくは低い材料の場合には、筒状容器23bの内面に撥水処理を施す。蓄熱構造体23の形状は、ボーリングによって空いた周囲の土壌7中の穴と内部に充填する砕石蓄熱体24によって形成可能なため、筒状容器23bは固定形状の構造物である必要はなく、特に、筒状容器23bの側壁部分はシート状の材料で構成しても構わない。ただし、蓄熱構造体23の内部と周囲土壌7との熱交換を妨げないためには、熱伝導率の高い材料を選択することが好ましい。
揚水配管25の揚水側連結管25aは、蓄熱構造体23の上部より熱媒体滴下部22を貫き、砕石蓄熱体24を押しのけて底部23aまで延び、温水溜まり34に到達するように配管する。配水配管21の配水側連結管21aは、集熱器5からの温水を熱媒体滴下部22内へ供給するために、蓄熱構造体23の上部より熱媒体滴下部22の内部に接続する。熱媒体滴下部22と筒状容器23bとの隙間は、温水及び加温空気が漏れないように筒状容器23bと熱媒体滴下部22とで封止する。また、熱媒体滴下部22の配水側連結管21a及び揚水側連結管25aとの連結部分以外の部分は、封止されて密閉されていて、液体及び気体が通過できないようにしている。
本第1実施形態では、蓄熱構造体23は円筒形の杭構造としたが、角柱構造でも、扁平な構造であっても、あるいは、さらに異なる形状であっても良い。ただし、土木形成の作業効率上は、円筒形であれば、地表面からのボーリング施工で容易に形成することが出来、最も好ましい。
次に、図9A〜図9Dを用いて熱媒体滴下部22及びその周辺構造について説明する。熱媒体滴下部22は、蓄熱構造体23の内部の砕石蓄熱体24に集熱器5の温水を供給するものである。温水を砕石蓄熱体24に供給するとき、温水を砕石蓄熱体24の上面に均等に滴下又は散布する構造が必要であり、図9A〜図9Dには、熱媒体滴下部22の内部が空洞でかつ熱媒体滴下部22全体が円盤型である構造例を示す。揚水配管25の揚水側連結管25aは、熱媒体滴下部22の中央を貫くように配管し、配水配管21の排水側連結管21aは、熱媒体滴下部22の上面から熱媒体滴下部22に温水を供給するように接続する。排水側連結管21aから熱媒体滴下部22に供給された温水は、熱媒体滴下部22の底面円盤35に均等に多数空けられた滴下穴36から、砕石蓄熱体24の上面に滴下される。
図9A〜図9Dでは、構造が簡略な小穴36からの滴下構造を示したが、小穴36による滴下構造以外にも、変形例として、例えば、多数の噴射ノズル36aで均等噴霧が可能なスプレー部材36aを用いた構造(図10参照)などを用いても良い。滴下の方法については、適宜の条件(コスト、構造上の理由、又は、入手容易性など)によって最適なものを選択すればよい。
図11Aは、本第1実施形態の別の変形例における蓄熱槽の各種配管、蓄熱構造体23などの地上上面からの配置構成を表した模式図である。上面からの図示では接続等の理解が不明確になる構成部分については、平面的な接続で図示している。
熱媒体滴下部22及び蓄熱構造体23は、地上平面にて均等な間隔で地中に埋設する。集熱器5からの温水は、出水配管14から櫛状の配水配管21に分岐し、分岐した配水配管21から配水用連結管21aを介して各熱媒体滴下部22に接続する。
また、各熱媒体滴下部22及び蓄熱構造体23の揚水用連結管25aに接続する揚水配管25は、配水配管21に直交する櫛上の配置で配管し、揚水タンク17に集結する。揚水ポンプ20は、ポンプ配管44を介して揚水タンク17の貯水を揚水するように接続し、揚水した水が帰還配管15を通して集熱器5に戻るように帰還配管15に接続する。
なお、図11Aでは、熱媒体滴下部22及び蓄熱構造体23は、等間隔で均等に配置されているが、これに限られるものではなく、図11Bに示すように、異なる間隔で不均等に配置されていてもよい。
なお、図11A及び図11Bでは、図の煩雑化を避けるため、図11A及び図11Bでの説明意図と関連の無い、第1〜第4開閉バルブ26,27,28,29、制御器65を始めとする制御系などの構成部位については、図示を省略している。また、図11A及び図11Bでは、配水配管21と揚水配管25とを水平面上で直交する形態で示しているが、図11A及び図11Bとは異なり、図2のように配水配管21と揚水配管25を並行に配管したとしても、本第1実施形態の蓄熱槽8の機能に何の違いも生じない。
次に、蓄熱槽8の具体的な一例としての設計値について説明する。
蓄熱層8の設計値については、建築環境、予算、又は、土地面積などの条件を考慮することで、以下ように値を設定すれば良い。たとえば、加温のために必要な熱量を計算するにあたり、室内15℃を維持する植物栽培用の温室を建設するとする。このとき、温室からの放熱は熱貫流率が主体的であるとして、加温期間11月から4月の6ヶ月(180日)間の外気平均気温を8℃、熱貫流率を20kJ/[m2・h・℃]程度、100m2程度の蒲鉾型温室で温室表面積を200m2程度であるとする。このような仮定において、加温期間に、並べて1日12時間の加温が必要と換算したときに要求される温室の加温熱量は336MJ/日となる。これに対して、集熱量に関しては、冬期にも日中の日照が望める地域であるならば、集熱器5への冬期の日々日照から得られる熱量を2kWh/[m2・日]程度と想定すれば、温室の半分の面積(50m2)の集熱器(太陽熱温水器、集熱効率70%)と仮定した集熱器5からの集熱量は、252MJ/日となる。この設定において、冬期の日々に加温に対して1日の集熱量が不足する量は、約120MJ/日となる、このとき、加温が必要な日数が半年間(180日)であるとすれば、冬期1シーズンに不足する熱量は21.6GJ程度となる。完成した蓄熱槽8内の熱量の加温への利用効率をおよそ80%と見積るならば、この不足する熱量を夏期の蓄熱から賄う場合、蓄熱層8には、およそ27GJを蓄えるだけの蓄熱槽8の熱容積が必要となる。
27GJの蓄熱槽8を想定した温室の床面地下に形成するためには、土壌の種類にも依るが、土壌の体積比熱が0.8程度とし、温室内の加温要求温度を15℃とし、蓄熱槽内の蓄熱温度を40℃とし、25℃の温度差を顕熱として蓄熱する場合、土壌1m3の蓄熱容量は84MJ。27GJを蓄熱するとすれば、およそ320m3の土壌体積が必要となる。この場合、100m2の温室の床面積一杯を蓄熱槽8の天面として3.2m深さの蓄熱槽8を形成することになる。
ここでは、設計値の目安としての設計数値を示したが、加温対象空間9とした温室の熱貫流率は2重被覆、又は、加温対象空間9を形成する部屋の内部のカーテンによって大きく異なるし、地下土壌の性質についても地域の気温、土壌成分、又は、土中水分量などの要因により大きく異なるものとなる。このため、蓄熱層8の設計を最適化するためには、出来るだけ実測に基づいた条件値を利用することが好ましい。
また、蓄熱層8の建築の際の条件、たとえば冬期に日照の望めない東北地方などの地域的条件によっては、加温対象空間9の加温要求熱量を賄える大きさの蓄熱槽8を形成することが、実際の設計値として想定困難な状況も発生しうる。そのような場合には、蓄熱層8での供給熱量の不足分を補うためのヒートポンプ若しくは加温のための重油燃料を使用する重油ボイラなどの補助加温装置を準備することになる。しかしながら、本蓄熱槽8を併用すれば、ヒートポンプ又は重油ボイラを単体で加温する場合に比較して、加温のための燃料コストを大幅に削減することが出来る。
次に、本発明の第1実施形態の効果である蓄熱構造体23と砕石蓄熱体24への撥水処理の効果を確認するための実験について説明する。
この実験では、撥水処理による砕石蓄熱体24及び蓄熱構造体23の内側の側壁への残水量の減量の定量化とその効果の算定を行った。
砕石蓄熱体24内の残水量を定量化するため、砕石の代わりにガラス玉を用い、撥水処理したガラス玉(以下、撥水のガラス玉という)と撥水処理していないガラス玉(以下、親水のガラス玉という)の集合体に水を滴下した際にそれぞれのガラス玉群の中に残る残水量を評価する実験を行った。各ガラス玉には、もとよりその表面が撥水性を示す表面が鏡面のクリアなガラス玉ではなく、微小な傷により表面が曇りガラス状に仕上げられたフロスト球を用いた。実験では。撥水処理あり/無しの300gのガラス玉全体を、一旦水を張った桶に浸水し、ガラス玉を引き上げた後のそれぞれの重量の増分を計測することで、撥水処理あり/無しのそれぞれのガラス玉の残水量を定量化した。計測の結果、撥水のガラス玉での残水量は、およそ1.5g/kg(重量比0.15%)であったのに対し、親水のガラス玉での残水量は、およそ10g/kg(重量比1%)であった。
この撥水処理有り/無しの場合のガラス玉に残る水量を、ガラス玉単位重量に蓄えられる顕熱と、残水の気化熱量との対比で換算した場合、上述の設計値の算定と同様の条件である蓄熱のための顕熱の温度差を25℃と想定した場合、25℃の温度差では1kgのガラス玉(比熱0.17)に蓄えられる熱量は、およそ18kJであり、この熱量に比較して、残水量の気化に必要な熱量は、撥水のガラス玉に付着した1.5gの場合、およそ3.6kJ(2400kJ/kg at 40℃)となり、親水のガラス玉の場合は24kJとなる。蓄熱体8をこのガラス玉だけで構成すると仮定した場合、親水のガラス玉では、温度差25℃の全顕熱蓄熱量以上の熱量が気化熱に奪われてしまうことになるが、撥水のガラス玉の場合には、総蓄熱量の20%程度に留まることになる。
本発明の第1実施形態では、砕石蓄熱体24だけでなく周囲の土壌7での蓄熱量も加わるため、蓄熱槽全体の蓄熱量に対する気化熱の比率は、先に計算した比率より小さい値になるが、気化熱での蓄熱量のロスは出来るだけ削減することが望ましい。また、熱回収運転では、蓄熱構造体23から加温空気への直接熱交換が短期的に生じるため、加温空気の吸収する熱量の大部分は周囲土壌7からの熱伝導では間に合わず、蓄熱構造体23の蓄えた熱量が担うことになる。このため、砕石蓄熱体24の温度が急激に低下し、一時的に熱回収が不能になる可能性がある。このような状態を避けるためにも、砕石蓄熱体24及び蓄熱構造体23の内側の側壁の撥水処理は必要な技術となる。
蓄熱量が気化潜熱に消費されることによる、加温効率の低下を撥水処理が解消する一方で、撥水処理を行うことで熱媒体滴下部22からの滴下温水が砕石表面の撥水効果によって、砕石表面で広がることが出来ず、砕石表面を高速に流下してしまうことで砕石と温水の熱交換効率が低下することが懸念された。よって、撥水処理によって生じる熱交換の効率低下について評価するために行った第2の実験の結果について、以下に説明する。
この実験では、それぞれ9kgの撥水のガラス球群と親水のガラス玉群に対して、温水を滴下し、熱交換の状態を検証した。実験では、室温24℃の条件下、一辺24cmの箱状のアクリルケース内に直径21cmで高さ20cmの円筒形状のガラス玉群(初期温度19℃)を配置したものを、撥水及び親水のガラス玉群に対して、それぞれ用意し、それぞれのガラス玉群の上面から、40℃の温水を、上面の平面上で均等に120ml/分で滴下した。このとき、ガラス玉から流れ落ちた排水温度を時系列に計測した結果を図12に示す。
図12中、親水のガラス玉の排水温度は、「□」(四角形)のサンプルマークで示し、撥水のガラス玉の排水温度は「△」(三角形)のサンプルマークで示す。
図12において、親水のガラス玉と撥水のガラス玉の熱交換効率の違いが最も顕著な状況は、温水を滴下し始めた初期である。その違いは、撥水のガラス玉と親水のガラス玉との排水温の違いで確認できる。撥水のガラス玉からの排水温が22〜24℃程度であるのに対し、親水のガラス玉では20〜22℃程度となっている。このときの供給温水の温度は40℃であり、排水温との温度差は約18℃である。これに対し、同時期の両排水温の温度差は2℃程度ということから、親水のガラス玉から撥水のガラス玉での熱交換量の低下率はおよそ11%と算定できる。ここで、11%の違いが蓄熱に及ぼす影響を把握しなくてはならないが、閉空間内に定量で固定されているそれぞれのガラス玉群において、親水のガラス玉群では撥水のガラス玉群よりも先に温度が上昇するため、供給温水とガラス玉の温度差が撥水のガラス玉よりも早く縮まることになり、結果的として温水とガラス玉の熱交換の効率が先に低下することになる。このことから、供給温水との熱交換がそれ以上行われなくなって排水温度が平衡に達する以前に、撥水のガラス玉の熱交換の効率が親水のガラス玉のそれを上回ることになり、最終的にはどちらの排水温もおよそ50分で平衡状態(38.7℃近辺で安定)となる。
以上より、供給温水に上限温度があり、且つ、有限な堆積の蓄熱槽8への蓄熱を行い、蓄熱量が飽和するまでに時間的な余裕がある場合には、本実験で確認された11%の熱交換効率の低下は蓄熱機能に対して大きな障害となるものではないことが確認できた。よって、季節間蓄熱を目的とする本発明の第1実施形態では大きな支障となるものではない。
次に、砕石蓄熱体24等への撥水処理について具体的に説明する。
蓄熱構造体23及び砕石蓄熱体24への撥水処理のための撥水剤には、一般に市販の撥水処理剤を用いることもできる。シリコーン樹脂系の撥水塗膜を形成するタイプのものは、スプレー式のものが多いが、撥水処理したい砕石の表面及び蓄熱構造体23の内側の側壁に予めスプレーすればよい。とはいえ、撥水塗膜が大面積になることが考えられることから、撥水剤としては、たとえばCH3(CH2)nSiX3、又は、CF3(CF2)nSiX3(Xはメトキシ基、水酸基、又は、クロル基など)のシランカップリング剤を用いた液体の含浸処理を用いることが有用である。具体的には、乾燥させた状態の撥水処理対象に対して、これらのシランカップリング剤を非水系溶媒(たとえば石油類、又は、フッ化炭素系溶媒)などで希釈した液体を、噴霧、もしくは、液体に浸けて撥水処理した後に、撥水処理対象物を水洗及び乾燥することで、撥水処理した対象の表面に撥水性の単層様膜を形成することが出来る。
撥水処理を施す対象である砕石蓄熱体24の表面、蓄熱構造体23の内側の側壁、揚水管25及び配水配管21などの配管の内壁などへの撥水処理については、蓄熱槽8の施工事前に、前記撥水処理を施せばよい。施工後、撥水処理が低下した等の状況により再度、撥水処理をする場合には、熱回収動作を十分動作させて、内部を乾燥させた後、蓄熱動作時の温水の代わりに、希釈した撥水剤(主としてメトキシ系撥水剤)を配水配管21に流入し、蓄熱構造体23内に滴下、揚水ポンプ20で希釈溶液を揚水し、揚水タンク17で回収する。その後、熱回収動作によって通気することで、乾燥させることが可能である。
前記のようなシランカップリング剤では、単分子層膜で十分な撥水効果を発揮できるため、極少量の撥水剤によって大面積の撥水処理を行うことが可能であり、撥水処理が安価になる。これらの利点に加え、撥水を施したい対象表面のOH基とSiCl基もしくはSiOH基が反応し、HClもしくはH2Oが放出され、Si−Oの形成によって材料表面に堅固な結合膜を形成するため、大方の自然石への撥水加工も可能となる。さらに言えば、材料表面がSiが主体の材料であれば、材料表面と撥水膜はSi−O−Siのシロキサン結合を形成し、更に堅牢な撥水膜を形成することが出来る。このため、廃ガラスなどのガラス材料を砕石蓄熱体24に利用することは、極めて好適である。
以上のように、撥水処理の対象としては多くの材料の利用が可能である。
また、第1実施形態では、集熱器5として、最も一般的な太陽熱温水器を示したが、温水パネルでなくとも、熱源として温水を供給できるものであれば、利用可能である。たとえば、ゴミ等の焼却熱で加温した温水なども、本発明の第1実施形態の熱媒体としては好適である。
本発明の第1実施形態によれば、前記構成の蓄熱構造体23を用いることにより、集熱に用いられる温水の熱は、温水から砕石蓄熱体24に直ちに伝達される。このため、先行技術のように温水を貯水槽3に留めて砕石領域4への熱拡散のための熱源としての役割を担わせる必要が無く、蓄熱構造体23から直ちに揚水し、集熱器5に循環させることができるため、温水の循環使用量は大幅に減少する。よって、熱媒体の使用量を削減することができる。
また、蓄熱構造体23の内部表面の全体が撥水性であることによって、温水を砕石蓄熱体24に直接滴下又は噴霧することによる高効率な熱交換と、砕石蓄熱体24への通気による簡便な熱回収システムを両立させることができる。
また、前記構成の蓄熱槽8では、蓄熱動作は常時地上部から行われ、熱回収動作は蓄熱槽8の底部側から動作する。このことにより、蓄熱槽8内の温度は、上部が高温、底部が低温という温度分布で自然に制御される。この温度分布により、地下深部の恒温層は自然に蓄熱槽8の底部の低温層に近接することになり、地下の恒温層からの熱量は、蓄熱槽8の底部の温度が低下する状況において、適宜、効果的に蓄熱槽8に吸収され、蓄熱槽8の蓄熱量として利用することが可能になる。
前記したように、第1実施形態によれば、熱媒体(一例として温水)から蓄熱体24への熱交換を高速及び高効率化し、熱媒体(温水)の一次蓄熱体として役割を省略することで、熱媒体の使用量を削減し、かつ、地下構造物を簡略化することで安価な蓄熱槽を実現することができる。また、蓄熱槽8の建設工事を地上面からの作業に集中させることで、作業性を向上し簡単な工事による蓄熱槽の形成を可能にすることができる。
(第2実施形態)
本発明の第2実施形態では、図13及び図14を用い、第1実施形態で示す温水溜り34とは異なる構造を持つ温水溜り34−1を有する貯水構造部37を説明する。続いて、図15を用いて、この貯水構造部37を用いた蓄熱構造体23−1の簡易な形成方法について説明する。
図13には、本第2実施形態の貯水構造部37を含む蓄熱構造体23−1の構造を示す。図14の(a)〜(d)は、貯水構造部37の詳細図を示し、図14の(a)が貯水構造部37を図13の図面正面から見た正面図であり、図14の(b)は貯水構造部37の上面図、図14の(c)は貯水構造部37の下面図である。図14の(d)は、同一断面を示す図14の(b)及び(c)の各図を貫く1点鎖線の示す平面での貯水構造部37の断面図を示し、ハッチング部分は貯水構造部37の断面部を示す。
第1実施形態の蓄熱構造体23と異なり、図13に示す蓄熱構造体23−1では、蓄熱構造体23−1の最下部に貯水構造部37を形成する。貯水構造部37の内部には、第1実施形態の温水溜り34と同様の、温水溜り34−1を形成する。貯水構造部37は、土壌中に埋設されることになるので、耐腐食性を持ち、形状を保つ強度を持った、塩化ビニル、ポリエチレン、又は、ポリプロピレンなどの材質によって形成することが望ましい。
次に、貯水構造部37の詳細を図14の(a)〜(d)に示す。貯水構造部37の外形状は、蓄熱構造体23−1と同じ外径を持った円筒の下に、下向きの三角錐を重ねた構造とする。貯水構造部37の内部には、蓄熱構造体23−1の外壁を形成する筒状容器23bを構成するシート材(外壁材)との連結構造部58と、温水溜り34−1とを形成する。
温水溜り34−1に溜まる温水を極力少なくするためには、温水溜り34−1の内径を温水溜り34−1に挿入される揚水配管25の揚水側連結管25aの外径と同様にし、揚水側連結管25aの下端と温水溜り34−1の底部との間に少しの隙間が空くように、周囲に傾斜面57aを設けた底として形成すると良い。また、蓄熱構造体23−1の内壁面沿いに滴下した温水が、揚水側連結管25aの周囲及び傾斜面57aを通って温水溜り34−1の底部に溜まるように、温水溜り34−1の内周面には、上下方向沿いの多数の通水溝40を形成する。貯水構造部37の上部空間57には、砕石蓄熱体24を支えるとともに、その内壁面には砕石蓄熱体24から落ちる温水を温水溜り34−1に導くように、温水溜り34−1を中心とした円錐の傾斜面57aを持たせる。リング状の連結構造部58を、貯水構造部37の上部空間57内に蓄熱構造体23−1の外壁となるシート材23bを挟み込むようにして嵌合しかつ複数のボルト38で固定することによって、蓄熱構造体23−1の外壁となるシート材23bを貯水構造部37と連結構造部58との間で挟み込み、封止固定する。蓄熱構造体23−1の外壁となるシート材23bの封止、及び、固定の方法は、長期間の封止を保持可能な構造であれば、図示したような、複数のボルト38を用いた固定方法でも良いし、又は、樹脂系の接着によるもの、又は、ボルトと接着との併用でも構わない。
貯水構造部37の底の三角錐の外側には、図14の(c)に示すように、図14の(c)の縦及び横に位置した4枚のフィン55を十字形状に突出して設ける。フィン55は、土壌表面からのボーリング穴の底に貯水構造部37を配置する際に、蓄熱構造体23−1が4枚のフィン55により砂のような形状変化が容易な材料73(図15参照)中にねじ込まれて、4枚のフィン55がそれぞれ材料73に埋め込まれて支持されて、蓄熱構造体23−1が安定して起立するのを助ける。
次に、図15の(a)〜(d)を用いて、この貯水構造部37を利用した蓄熱構造体23−1の形成方法について説明する。
図15の(a)〜(d)では、図15の(a)から図15の(d)の順に蓄熱構造体23−1の形成手順を示している。蓄熱構造体23−1の形成には、まず、図15の(a)のように地表70からのボーリングによって、蓄熱構造体23−1を収める竪穴71を土壌72中に掘削して形成する。
次に、図15の(b)のように、掘削竪穴71の底部に砂のような形状変化が容易な材料73を堆積し、その竪穴71に、蓄熱構造体23−1の外壁を形成する円筒状の伸張性を有する外壁シート材23bと揚水配管25の揚水側連結管25aとを連結構造部58で連結した貯水構造部37を配置する。
次に、図15の(c)に示すように、貯水構造部37に連結した揚水側連結管25aを用いて竪穴71の底にある貯水構造部37を上下に動かす、もしくは、回転させ、貯水構造部37の底の円錐形状とフィン55を砂上の堆積物73にもぐり込ませることで、竪穴71の底に貯水構造部37を安定させる。このとき、貯水構造部37を安定させるための荷重として、少量の砕石蓄熱体24を利用することも可能である。
貯水構造部37が安定したら、図15の(d)のように、地表面70から外壁シート材23bに張力を掛けながら砕石蓄熱体24を竪穴71の容器23b内に充填することで、蓄熱構造体23−1を形成することができる。土壌72中の蓄熱構造体23−1が出来上がれば、その上部に熱媒体滴下部22及び配管21,25などその他の構成物を形成すればよい。
本発明の第2実施形態における蓄熱構造体23−1は、内部の砕石蓄熱体24も含めて事前に一体形成しておき、ボーリングによって掘削した竪穴71に挿入することで蓄熱構造体23−1を形成することも可能であるが、適宜の熱設計に依存するとはいえ、相応の熱容量が必要な蓄熱構造体23−1には少なくとも1000kgオーダの重量が想定され、一体形成した蓄熱構造体23−1を竪穴71に挿入するには重機を利用した作業が必要となる。
しかし、図15の(a)〜(d)に示すように、施工の初期の段階で、貯水構造部37を利用して掘削穴71の底の蓄熱構造体23−1の形状を安定させることで、地表面70からの軽量負荷な作業で蓄熱構造体23−1の形成が可能になる。よって、従来の課題であった、地下の構造形成に土木及び建築工事に手間が掛かり、資材量が多く、建築コストが嵩むという課題を解消することができる。
この工法において砕石蓄熱体24を外壁シート材23bの内部に充填することで、砕石蓄熱体24と周囲土壌72との圧力の均衡によってシート材23bが伸張し、砕石蓄熱体24と周囲土壌72の間の空隙が解消された高い密着性を得ることができ熱伝導率の高い形状を自ずと形成できることになる。
(第3実施形態)
図16に、本発明の第3実施形態の構成図を示す。
図16の4つの蓄熱構造体23−1の構造は、第2実施形態の蓄熱構造体23−1と同様の構造であり、図示の煩雑化を避けるため、同様の構造及び部位については、1つの蓄熱構造体23−1に関わるもののみ符合を詳しく付している。 本第3実施形態では、第1実施形態における加温ポンプ30の役割と揚水ポンプ20の一部役割とを担う1個の小型ポンプ41を、蓄熱構造体23−1毎に設ける例である。各小型ポンプ41は制御器65で駆動制御される。
図16では、図の煩雑化を避けるため、小型ポンプ41の周辺の構成については簡略な図示としたが、小型ポンプ41の周辺については、図17を以って後述する。
まず、図16を以って、本第3実施形態の主な装置構成について説明する。
本第3実施形態の実現のための主な装置構成は、集熱器5と、配管類(出水配管14、配水配管21、揚水配管42、集水配管43、ポンプ配管44、帰還配管15)と、第1,第5,第6開閉バルブ26,45,46と、蓄熱構造体23−1と、揚水ポンプ20と、小型揚水ポンプ41と、第1,第5,第6開閉バルブ26,45,46と、各種ポンプ20,41及び第1,第5,第6開閉バルブ26,45,46を制御する制御器65と、制御器65へ制御情報を提供するセンサ類(61,62,63,64)とで構成されている。
集熱器5は、蓄熱のための温水として熱量を収集する。配管類(出水配管14、配水配管21、揚水配管42、集水配管43、ポンプ配管44、帰還配管15)は、集熱器5の温水を蓄熱槽8との間で循環させる。第1,第5,第6開閉バルブ26,45,46は、配管類の流路構成を制御する。蓄熱構造体23−1は、温水からの熱を熱交換によって、土壌7に伝達する。揚水ポンプ20と小型揚水ポンプ41とにより、蓄熱動作のために温水を集熱器5と配管類と蓄熱構造体23−1との間で循環させる。揚水ポンプ20は、揚水タンク17の温排水を吸い上げて集熱器5に循環させる。小型揚水ポンプ41は、蓄熱動作のための蓄熱構造体23−1内の温水を揚水し、熱回収のための加温空気を蓄熱構造体23−1内に導入して循環させる。
集水配管43は、各蓄熱構造体23−1の熱媒体滴下部22の上方に配置され、各蓄熱構造体23−1の揚水管42と連結され、かつ、加温ダクト31を上端に有する連結管91との連結部分から揚水タンク17に向けて下向きに傾斜するように配置されている。
揚水管42は、揚水側連結管25aの代わりに配置され、上端が小型ポンプ41に連結されている。小型ポンプ41は、揚水管42と接続された口側とは反対側の他方の口を接続管48で集水配管43に接続している。
次に、本第3実施形態での蓄熱動作について説明する。
蓄熱時、集熱器5で暖められた温水は、第1実施形態と同様、出水配管14と配水配管21と配水側連結管21aと熱媒体滴下部22とを介して蓄熱構造体23−1に滴下する。貯水構造部37内の温水溜り34−1に溜まった温水は、揚水管42を通して小型ポンプ41によって、熱媒体滴下部22の上方の集水配管43に汲み上げられる。各蓄熱構造体23−1から集水配管43に汲み上げられた温水は、集水配管43の傾斜に沿って揚水タンク17に流れ込んで集水される。揚水タンク17に溜まった温水は、ポンプ配管44を通して揚水ポンプ20に吸い上げられ、帰還配管15を介して集熱器5に循環される。
このとき、制御器65は、蓄熱動作時に温水を流通させる配管を構成するために、第1開閉バルブ26を開き、第5,第6開閉バルブ45、46を閉じるように制御するとともに、小型ポンプ41を揚水方向に運転する。同時に、揚水ポンプ30を駆動して貯水タンク17に集められた温水を集熱器5へ循環する。
次に、本第3実施形態の熱回収動作について説明する。
熱回収動作時、制御器65は、第1開閉バルブ26を閉じ、第5,第6開閉バルブ45、46を開き、小型ポンプ41を蓄熱動作時と逆方向に運転することにより、加温対象空間9内の空気を蓄熱構造体23−1内に循環させる。逆方向に運転された小型ポンプ41は、吸気ダクト31より加温対象空間9内の空気を吸気し、連結管91と集水配管43と揚水配管42を介して蓄熱構造体23−1の底部の貯水構造部37に排気するように動作する。蓄熱構造体23−1の底部内に排気された加温空気は、温水溜り34−1の通水溝40(図14参照)を通り、砕石蓄熱体24の内部を上昇する。砕石蓄熱体24の熱量を吸収した加温空気は、蓄熱構造体23−1の上部空間49から熱媒体滴下部22を貫通して加温対象空間9に至る加温ダクト47を通り、加温対象空間9内に排出される。
次に、図17を以って、小型ポンプ41の周辺の詳細を説明する。
図17の(a)は、小型ポンプ41の周辺を図16の紙面正面から見た正面図であり、図17の(b)は小型ポンプ41の周辺の上面図、図17の(c)は小型ポンプ41の周辺の下面図、図17の(d)は小型ポンプ41の周辺の側面図を示す。
蓄熱時には、制御器65により、第4,第5開閉バルブ45,46は閉じ、第1開閉バルブ26が開かれている。このため、制御器65による小型ポンプの41の運転で、蓄熱構造体23−1の底部の温水溜り34−1に溜まった温水を揚水管42を通して揚水することが出来る。揚水された温水は、接続管48を通り、集水配管43内に排水され、集水配管43の傾斜によって揚水タンク17に集められる。熱回収時には、制御器65により、第4,第5開閉バルブ45,46は開き、第1開閉バルブ26が閉じられている。このため、制御器65により、小型ポンプ41を蓄熱時とは逆方向に運転することで、吸気ダクト31からの加温対象空間9内の加温空気を集水配管43から吸気し、貯水構造部37内の温水溜り34−1に排気する。排気された加温空気は、砕石蓄熱体24から熱量を吸収しながら、蓄熱構造体23−1内を上昇し、蓄熱体上部空間49に至る。蓄熱体上部空間49の上端は、熱媒体滴下部22によって封止されているため、加温空気は、小型ポンプ41の運転圧力及び暖気の上昇圧力によって、熱媒体滴下部22を貫通した加温ダクト47を介して加温対象空間9内に放出される。
蓄熱槽8の全体の蓄熱と熱回収との動作を、各1つのポンプで駆動する第1実施形態では、ポンプが揚水ポンプ20と加温ポンプ30の2つで足りる。その反面、2つのポンプ20,30は、温水及び加温空気を長い配管を介して配送する形態となり、各ポンプ20,30には配管の抵抗による大きな出力が要求されることになる。一方、本第3実施形態では、蓄熱構造体23毎に小型ポンプ41を設置することにより、各ポンプ41が流通を負担する配管長を短縮することが出来、使用するポンプ能力の軽減に役立つほか、各ポンプ41が小型化されることで、初期設置時、維持修理時、及び、一部ポンプの撤去等の地上部での対処作業が容易になる。
なお、本第3実施形態では、図示が複雑なため、小型ポンプ41に正逆ポンプを利用した例を図示したが、適切な配管と開閉バルブの制御を利用すれば、配管の接続を反転することは容易で有り、片方向の小型ポンプを用いても前記と同様の動作を実現することは容易である。
また、仮に、ポンプの能力又はコストに関し、温水用のポンプと加温空気用のポンプとをそれぞれ用意した方が好適な状況であれば、各蓄熱構造体23毎に温水用のポンプと加温空気用のポンプとを1つずつ装備することも可能である。
(第4実施形態)
次に、図18を用いて、本発明の第4実施形態を説明する。
第4実施形態と第3実施形態との違いは、土壌72中の蓄熱槽8の上部に敷設した撥水砂層50と、地中にて撥水砂層50の下方でかつ蓄熱槽8の水平方向の周囲を壁状に囲んで形成した撥水壁51とである。撥水砂層50には、各蓄熱構造体23−1の上端部と配水配管21と集水配管43と揚水タンク17と小型揚水ポンプ41となどが埋設されている。
撥水砂層50を構成する撥水砂の特性として、それが密集した層を成す場合、その層の表面では水が弾かれ、水を通さない特性を持つ。また、砂の層であることから、砂粒の間には空隙が存在し、さらに撥水性のため砂の層の中には水が浸入せず、層内の空隙が絶えず維持されることになり、撥水砂で高い断熱性の層を形成することになる。
本発明の第4実施形態では、蓄熱槽8の加温対象空間9を植物栽培温室と想定する。このように想定すると、図18のように、蓄熱槽8の上部構造を撥水砂層50で覆うことによって、撥水砂層50の持つ遮水特性の故に、加温対象空間9内で行われる灌水等による水が、加温対象空間9の地表側から蓄熱槽8へ浸入することを防ぎ、引いては、蓄熱槽8内の余剰な水分が蓄熱槽8から流出することによる蓄熱層8内の熱量の外部への拡散を防ぐことが出来る。また、撥水砂層50内の空気層の断熱特性から、蓄熱槽8から上部への漏熱を防ぐとともに、蓄熱槽8の上部の各種配管及び揚水タンク等の構成部分を撥水砂層50内に埋設することで、それらの断熱性も確保することが出来る。
本発明の全ての実施形態における蓄熱槽8の能力は、蓄熱槽8内への蓄熱と蓄熱槽8からの熱回収とにおける熱の利用効率を向上させることが大きく影響する。中でも蓄熱槽8を構成する各部からの熱の拡散による漏熱の影響が大きい。このため、全ての配管及び構造物での断熱性の向上は、蓄熱槽8の蓄熱効率向上に大きく寄与する要因である。このため、第1実施形態〜第3実施形態においては、地上配管を含め全ての配管及び構造物に対して断熱加工及び処理が施されているが望ましい。一方、本第4実施形態では、前記のように、蓄熱槽8の上部を撥水砂層50で覆うことにより、蓄熱槽8の上部の配管及び構造物に対する断熱性を確保することができることになり、非常に簡単な施工及び低コストな材料で実現することが出来る。
また、撥水砂壁51で蓄熱槽8の水平方向の周囲を囲うことで、外部の土壌72からの水の浸入を防ぐことにより、蓄熱槽8内への低温水の流入と蓄熱槽8からの水の流出による蓄積熱量の拡散とを防ぐことが出来るとともに、撥水砂の断熱性により、蓄熱槽8の周囲土壌72への熱の拡散も防ぐことが出来る。
撥水砂層50及び撥水砂壁51に加え、蓄熱槽8の底部の一面に撥水砂層をさらに敷き込むとすれば、蓄熱槽8の底部から外部の土壌72への熱の拡散を防ぐことができる。しかしながら、地中における熱の分布形態として、一般的に地表から3〜5mより深い領域では、季節を通して15℃程度で恒温であることが知られており、底部を断熱せず、むしろ開放することが、冬季においても地表の気温の影響を受けにくい恒温な土壌72を良質な蓄熱体として利用することが可能になる。また、蓄熱槽8の底部の土壌72の蓄熱状況によっては、地中の恒温領域の温度よりも低下する場合も想定され、そのような場合には、恒温の土壌領域からの熱回収を期待することもできる。さらに、蓄熱槽8の底部一面に撥水砂層を敷き込むことは、蓄熱槽形成のための土木工事を大きくすることになり、蓄熱槽8の形成に掛かるコストを増大させてしまう。このため、蓄熱槽8の底部に断熱性の層を形成することは、蓄熱槽8の性能を引き出す上で好ましくない。
地中への撥水砂壁51の施工については、まず、周囲を囲う予定の1つの地点にボーリングを行うことで最初の穴を開ける。
次に、空いた穴に撥水砂を充填した後、その直ぐ隣にボーリングを行う。撥水砂壁51の深さは、少なくとも蓄熱構造体23と同じ深さとする。
2つ目の穴を開けた後、ボーリングのポールを抜き取れば、1つ目の穴に充填した撥水砂は土壌72の壁がなくなることで形状を保てず、2つ目の穴に流れ込むことになる。このとき、1つ目と2つ目の穴は、撥水砂が崩れることで、その半分程度の深さが撥水砂で埋まることになるが、残りの半分に再度撥水砂を充填し、2つ目の穴の隣に再度穴を開ける。
この作業を繰り返してボーリング作業と撥水砂の充填作業とを繰り返すことで、第2実施形態で説明した蓄熱構造体23の形成と同様、地表面からのボーリング作業を主体とした作業によって、撥水砂壁51を形成することができる。
(第5実施形態)
次に、図19、図20の(a)〜(d)、及び図21A〜図21Cを用いて、本発明の第5実施形態を説明する。
図19は、第5実施形態の全体構成を示し、図20は、蓄熱構造体23の上部の詳細構造を示し、図21は蓄熱構造体23−2の構造図を示す。
尚、図面中で符号が密集してしまう箇所については、前述の実施形態と同様の機能を有する構成部分であって、既に説明済みの構成部分については、符号の付記を省略している。
また、センサ類及び制御器65については、前述の実施形態と同様の設備を用いることが可能なため、図示及び説明を省略する。
本第5実施形態では、一般家屋93のテラス温室94の地下及び家屋93の一部の地下を蓄熱槽8とした実施形態を示している。
図19で示す第5実施形態の主な構成において、加温の対象となる空間は、テラス温室94の空間9aと家屋93の室内空間9bである。テラス温室94は、床材95の上に家屋側の仕切り壁94aと、外壁94bと、屋根94cとで形成して、テラス温室94の空間9aを囲むようにしている。テラス温室94の屋根94cには、集熱器5aを埋め込む。家屋93は、床材92の上にテラス温室側の仕切り壁93aを形成して、テラス温室93の空間9aを形成するようにしている。
熱媒体の循環する地中蓄熱槽形成装置を構成する各部は、出水配管14と、配水配管21と、揚水配管42と、集水配管43と、送気配管86と、吸気配管87とで接続する。また、蓄熱槽8内の各部に熱媒体を循環させる動力として、制御器65の制御の基に駆動可能な、揚水ポンプ20と、小型揚水ポンプ84と、小型送風ポンプ85とを用いる。また、蓄熱構造体23−2内を循環する空気と加温対象空間9a,9b内の空気の間での熱交換のために、熱交換部の一例として機能する熱交換器80を用いる。
各蓄熱構造体23−2内には、先の実施形態と同様に配置された揚水配管42以外に、送気配管86と吸気配管87とが挿入されている。送気配管86は、その上端が熱交換器80に連結され、下端は傾斜面57aの近傍に配置されている。吸気配管87は、その上端に、小型送風ポンプ85が中間に配置された連結管80cを介して熱交換器80に連結され、下端は熱媒体滴下部22を貫通して熱媒体滴下部22の下方で、各蓄熱構造体23−2内の空間に開放されている。
小型揚水ポンプ84の入口側には揚水配管42の上端が連結され、出口側には接続配管48を介して集水配管43が連結され、揚水配管42を介して揚水した温水を、接続配管48を介して集水配管43に流し込むようにしている。複数の集水配管43が下向きに傾斜配置されて、複数の集水配管43の下端側が揚水タンク17に連結されて、複数の集水配管43に流し込まれた温水を揚水タンク17に集めるようにしている。
熱交換器80の吸気側入口には、加温ファン82を中間に配置した連結管80aを介して吸気ダクト81が連結されて、加温対象空間9a,9bの空気を吸気可能としている。熱交換器80の吐出側入口には、連結管80bを介して加温ダクト83が連結されて、加温対象空間9a,9bに加熱された空気を吐出可能としている。
次に、本第5実施形態における蓄熱動作について図10及び図11を用いて説明する。
揚水ポンプ20で揚水された温水は、集熱器5a内で太陽熱を集熱し、テラス温室94の軒先から、テラス温室94の外壁94bの近傍に配置された出水配管14内を通り、出水配管14に連結された配水配管21によって、各蓄熱構造体23-2の熱媒体滴下部22に送られる。熱媒体滴下部22から蓄熱構造体23−2内に滴下された温水は、蓄熱構造体23−2内の蓄熱体88を流れ落ち、底部の温水溜り34−1に溜まる。温水溜り34−1に溜まった温水は、揚水配管42を介して小型揚水ポンプ84によって揚水する。複数の蓄熱構造体23−2から揚水された温水は、接続配管48を通って、集水配管43に流し込まれ、集水配管43を介して揚水タンク17に集められる。揚水タンク17に集められた温水は、揚水タンク17からポンプ配管44を介して揚水ポンプ20で揚水されて、帰還配管15を介して集熱器5に帰還されることで、蓄熱槽全体を温水が循環する。
次に、本第5実施形態における熱回収動作について図19及び図20を用いて説明する。
熱回収時には、制御器65により、加温ファン82を動作させることで、加温対象空間9a,9bの空気(以下、室内空気という)を吸気ダクト81から吸気して熱交換器80に送気すると同時に、小型加温ポンプ85を動作させて蓄熱構造体23−2内の暖気(以下、暖気という)を吸気配管87から吸気して熱交換器80に送気する。熱交換器80内では、室内空気と暖気との間で熱交換が行われる。本蓄熱槽8では換気を目的としないため、加温された室内空気を、加温ダクト83から加温対象空間9a.9bに戻すことで加温が実現される。一方、熱量を奪われた暖気は、送気配管86を介して蓄熱構造体23−2の底部に送気される。熱交換器80には、気体−気体間での熱交換を気体分離式で実現するものを利用する。
本第5実施形態のような一般家屋の加温では、農業用温室などの加温を対象とした場合と異なり、日中の日照があり、蓄熱槽8での蓄熱動作が可能な状態においても家屋内の部屋を暖めたい状況が発生することが容易に想定されるが、本第5実施形態のように、配管と動力を供給するポンプを蓄熱動作と熱回収動作で別々に構成すれば、蓄熱動作と熱回収動作とを並列に同時に動作させることが可能になる。この蓄熱動作と熱回収動作とが同時に動作するこのような状況では、熱回収のための通気時の蓄熱構造体23−2内の蒸気と気化熱とが問題になる。蓄熱動作のための温水の滴下によって、蓄熱構造体23−2内の湿度は飽和することになるが、このとき、熱交換器80無しに、加温対象空間9a,9bの空気を蓄熱構造体23−2に通気し、そのまま、加温対象空間9a,9bに循環させてしまえば、加温対象空間9a,9bの湿度が急激に上昇してしまう。このような状態を避けるためには、本第5実施形態に示すように熱交換器80によって、加温対象空間9a,9bの空気と蓄熱構造体23−2内の空気を分離しながら、その熱だけを交換する熱交換器80の設置が必要になる。熱を奪われる側の蓄熱構造体23−2内の飽和蒸気圧の空気は熱交換器80内で結露するが、結露による潜熱の放出は熱交換器80にて加温対象空間9a,9bに熱伝導されるため加温熱量の損失は無い。このとき、熱交換器80内で結露した水は、排気配管86によって、蓄熱構造体23−2の底に戻す。残る問題は、蓄熱構造体23−2内での気化潜熱による蓄熱体88からの吸熱であるが、上述の通り、蓄熱構造体23−2は温水の滴下で飽和蒸気圧の状態となるため、蓄熱構造体23−2内の温水の気化は蓄熱構造体23−2内の空間容積での飽和水蒸気圧を上限として止まることになり、水分気化による蓄熱構造体23−2内の急速な温度低下は発生しない。
とはいえ、蓄熱動作が動作していない状態での通気による熱回収が動作した場合には、熱交換器80から戻された空気が乾燥状態のため、蓄熱構造体23−2内の湿度は低下し、残水の気化が始まることになり、蓄熱体88の温度を急速に低下させてしまう。この蓄熱体88の温度低下は、加温対象空間9a,9b内の空気との温度差を急激に失うことになるため、この状態を回避するためには、蓄熱構造体23−2内の撥水性の確保が必要となる。
また、本第5実施形態のような一般家庭用の小型の蓄熱槽の場合でも、蓄熱構造体23−2内の蓄熱体に撥水処理した砕石を用いることができるが、蓄熱槽8が小型であれば、蓄熱構造体23−2自体も小型のため、埋設前に整形済みの蓄熱構造体23−2を用いることも有用である。
図21A〜図21Cに、整形済みの蓄熱構造体23−2の一例を示す。図21Aは、埋設前の蓄熱構造体23−2の図10に示した図面正面からの詳細図を示す。図21Bは上面図を示し、図21Cは埋設後に蓄熱体88を充填した図を示す。
図21Aに示す円筒杭状の蓄熱構造体23−2は、蓄熱構造体23−2の筒状の外壁96と、蛇腹状の蓄熱体構造壁97と、貯水構造部37と、外壁96に所定間隔で突出形成した鍔状の多数の熱交換フィン98とが、地中埋設前に、あらかじめ構造形成されたものである。蓄熱構造体23−2内の、蓄熱体部分は蓄熱体88を封入する蓄熱体構造壁97のみを蛇腹状に形成した中空構造として形成しておく。この蓄熱体構造壁97の蓄熱構造体23−2の内面は、撥水処理を施しておく。蓄熱体88の上部から滴下される液滴との接触面積を拡大することが重要であり、本第5実施形態で示す蓄熱体88は、円錐を上下反転させたものを複数一体整形したような構造の第1蓄熱体88aと、第1蓄熱体88aの外表面との間に熱媒体が通過する一定の間隙を確保した円盤を重ねたような構造の第2蓄熱体88bとを組み合わせた構造を示している。図21A〜図21C上での動作及び構造の説明上、一例として、第1及び第2蓄熱体88aと88bの段数は9〜10段で示している。しかしながら、接触面積を増やすためには、より段数を多くして表面積を広げた構造が好ましい。また、周囲土壌72との熱伝導性を高く保つためには、蓄熱構造体23−2の外壁96と貯水構造部37と蓄熱体構造壁97とは、それらの構造を保てる範囲で薄く且つ熱伝導性の高い材質であることが好ましい。また、蓄熱構造体23−2から、周囲土壌72への熱交換を向上させるために、蓄熱構造体23−2の外壁96の周囲に多数の熱交換フィン98等を形成しておくことも有用である。
蓄熱構造体23−2の埋設前には、蓄熱体88を封入する空間を蓄熱体構造壁97のみの中空構造で形成しておくことで、一体整形した蓄熱構造体23−2を軽量化することができ、ボーリングした穴への埋設工事を容易に行うことができる。蓄熱の容量の実態を担う蓄熱体88(図上の点描部分)は、蓄熱構造体23−2を地中に埋設した後に、蓄熱体構造壁97の中空部にゲル状もしくは液状の蓄熱体88(88a,88b)を注入すれば良い。液状の蓄熱体88としては、安価でながら、比熱が大きく熱伝導率の高い水が好ましいが、経年の動作により蓄熱体88の封止が劣化することを考慮した場合、たとえば、吸水ポリマーなどと水を同時に注入することで、ゲル状の蓄熱体88を形成することができ、かつ、水と同様の比熱及び熱伝導性を保ちながら、微小な穴等の封止破れに対して耐久性の高い蓄熱構造体23−2を形成することができる。
上述のように、本発明の様々な実施形態における蓄熱構造体23,23−1,23−2は、基本的には、液体(熱媒体)と固体(蓄熱体24,88)の熱交換と、固体(蓄熱体24,88)と固体(蓄熱構造体23,23−1,23−2の周囲の土壌7,72)との熱交換を同時に担う熱交換手段であり、この熱交換手段内を通過する熱媒体に関連する蓄熱に不利益な効果を撥水処理にて解消するものであって、かつ、それを容易に設置及び構築できることを特徴としている。
このとき、設置及び構築が容易であるという点では、本第5実施形態のように小型の蓄熱構造体23−2であれば、蓄熱構造体の構築方法として図15にて説明した砕石の埋設以外にも図21A〜図21Cに示したような一体形成の蓄熱構造体23−2を用いることも有効である。また、安価で埋設形成済みの蓄熱構造体を利用することで工事を簡略化するという意味においては、以下に示す方法を用いることも有効である。
蓄熱構造体23−2が小型の場合には、軽量な材質として一般的な鋼板、ポリエチレン、又は、ポリプロピレン製などのコルゲートパイプなどを用いた固定形状の外壁と貯水構造部37を一体整形して埋設前に予め形成しておき、この蓄熱構造体23−2を土中に埋設後、水又は、吸水した吸水ポリマーを充填した複数のコルゲートチューブを蓄熱構造体23−2内に敷き詰めれば、図21Cに示すように、蓄熱構造体23−2を容易に形成できる。蓄熱体23−2を形成する水又は吸水ポリマーについては、コルゲートチューブを敷き詰めた後に充填することも可能である。
ポリスチレン又はポリプロピレン等のプラスチック材料は、そもそも撥水性の表面を持つが、シリコン系の樹脂等の表面皮膜の形成によって撥水性を強化することができ、蓄熱構造体内に残る残水量をさらに減らすことが可能になるとともに、表面への付着物等の汚濁による撥水性の低下を長期に防止することが可能になる。
また、蓄熱槽8に及ぼす熱媒体の効果を活かすという効果に着目すれば、熱媒体としてシリコンオイルを用いることが有効である。すなわち、熱媒体として、蓄熱槽の蓄熱温度域で、水よりも比熱、熱伝導率、蒸気圧が低く、且つ、粘度が安定で、且つ、可燃性の低い、シリコンオイル又はその同等物を用いることが好ましい。
蓄熱槽8に影響を及ぼす熱媒体の特性には、比熱、熱伝導率、揮発性が上げられるが、ここで、シリコンオイルの特性を説明する上で一般的なポリシロキサンの側鎖と両端をジメチル基としたジメチルシリコンオイルを例にとって蓄熱槽の動作温度域での各特性の効果を説明する。
水の比熱及び熱伝導率が4.2kJ/kg及び0.6W/m・℃に対し、ジメチルシリコンオイルの比熱及び熱伝導率では、1.5〜2kJ/kg及び0.1〜0.16W/m・℃である。
従来型の蓄熱槽では、熱媒体である水が、蓄熱体としての機能も担うため、限られた量の水に出来るだけ多くの熱量を蓄える必要があり、このため、比熱の大きな水が最も好都合ということになる。しかしながら、比熱が大きいということは一定量の熱量で比較すると温まりにくいという性質となる。一方、比熱が1.5〜2kg/kgのジメチルシリコンオイルでは、水の1/3〜半分の熱量の供給で同じ温度にまで暖めることが出来る。 本発明の前記した様々な実施形態では、熱媒体は蓄熱体24,88としての役割を担うことが無く、集熱器5,5a内での集熱媒体としての役割と、集熱した熱量を蓄熱構造体23,23−1,23−2内の蓄熱体24,88に移動するという移動媒体としての役割を担うものであるので、高温化した熱媒体が効率良く蓄熱構造体23,23−1,23−2まで熱量を運ぶことが出来れば良い。このとき、水と比較して1/6〜1/4程度のジメチルシリコンオイルの熱伝導率が、集熱器内、及び、移動中の配管からの熱伝導を抑制することになり、本発明の前記した様々な実施形態の熱媒体の役割としてより良い効果を齎すことになる。熱伝導率が低いことは、蓄熱構造体内の蓄熱体と熱媒体の間での熱交換を妨げることになるが、ジメチルシリコンオイルの低い比熱の故に高温化した熱媒体と蓄熱体の温度差は広がっているとともに、本発明の前記した様々な実施形態の特徴である液滴滴下による熱媒体と蓄熱体の接触面積を拡大した熱交換の特徴を活かすことで熱伝導率の低さによる副作用を補償することが出来る。
揮発性についてシリコンオイルは一般に揮発性の低いオイルとして認識されているが、具体的なジメチルシリコンオイルの蒸発量は、動粘度が(10〜30)程度の製品で150℃環境下で24時間経過した時点での蒸発量が全量に対して25〜10%程度であり、蓄熱槽の動作温度である15℃〜60℃程度における揮発量はきわめて小さい。このため、水を熱媒体として利用した際に課題であった気化潜熱による蓄熱量の利用ロスは殆どなくなると共に、蓄熱構造体内に残る熱媒体量についても、気化熱による蓄熱量の利用ロスという意味では悪影響は無くなり、水を熱媒体としたときに必要な蓄熱構造体内の撥水処理に該当するような撥油処理は不要となる。
ただし、高粘度のシリコンオイルを使用する場合には、蓄熱構造体内の蓄熱体表面にオイルの膜が張り付くことになり、シリコンオイルの熱伝導率の低さがシリコンオイルと蓄熱体の熱交換を阻害することになるので、そのような場合には、蓄熱構造体内部を前述のクロロシラン系の撥水剤等によりフッ素系の撥油コートすることが好ましい。
シリコンオイルの粘度については、適宜の蓄熱槽設計条件であるポンプの能力と蓄熱体表面を流れる熱媒体の流下速度、シリコンオイルの可燃性、及び、シリコンオイルの使用量を考慮した設計値となる。
ポンプの能力と蓄熱体表面を流れる熱媒体の流下速度という観点からは、発生圧力の低いポンプを採用でき、熱交換が早く効率的という意味で粘度は低いものが適しているが、分子量が小さく粘度の低いものでは可燃性が高くなる。本発明の前記した様々な実施形態の特徴から、熱媒体の使用量は従来型の蓄熱層より大幅に減少させることが出来るが、それでも、一定量のシリコンオイルを利用することは、消防法からも防火上の利用許可が必要になる場合がある。
これらの理由より適宜の設計条件に依存するが、熱媒体としてのシリコンオイル利用は、小型の蓄熱槽をチン馳駆する場合であって、その粘度は、20〜30mm2/s程度の、分子量が比較的大きいものから選択利用することが望ましい。
家屋に隣接するテラスを集熱器及び蓄熱槽の設置場所とした本前記した様々な実施形態のような場合には、熱媒体には水を利用することが好ましく、家屋等から離れた小型の蓄熱槽及び集熱器を建築する場合にはシリコンオイルを熱媒体として利用することが好適である。
シリコンオイルのほかにも、フッ素系オイルや鉱物油、その他、有機油等を利用することも可能であるが、フッ素系オイルは、蓄熱槽の動作温度帯での粘度変化が大きいことによる蓄熱構造体内での熱交換効率の変動やポンプ能力幅への要求が発生し、鉱物油又は有機油等を利用することも可能であるが、可燃性においてシリコンオイルに劣る。
また、前記した様々な実施形態では、蓄熱動作の配管系等と熱回収の配管系等が独立に装備されるため、前述のた様々な実施形態のような配管の構成を変更するための開閉バルブは不要となるが、配管からの漏熱が大きい状態であれば、蓄熱動作が停止している期間に蓄熱構造体23,23−1,23−2と連結する配水配管21又葉揚水管42を閉じるため、もしくは、熱回収動作が停止している期間に蓄熱構造体23,23−1,23−2と連結する吸気配管86又は排気配管87を閉じるための開閉バルブを設置しても良い。
また、図示はしていないが、本様々な実施形態の制御は、蓄熱と熱回収が並列に動作することが可能なため、前述の様々な実施形態の制御(図6、図7)から蓄熱動作と熱回収動作の同期を取る加温フラグの制御を除くことで実現でき、類推は容易であると判定する。
なお、前記様々な実施形態又は変形例のうちの任意の実施形態又は変形例を適宜組み合わせることにより、それぞれの有する効果を奏するようにすることができる。