JP5871460B2 - 土壌無害化工法 - Google Patents
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Description
また、製鉄所においてはコ−クス製造工程におけるコ−クス製造ガスや、石炭ガス製造工場の様に、意図せずにシアン化合物を発生している設備が存在する。
その様な設備の跡地等においては、土壌中にシアン化合物で汚染された土壌が存在する。
一般的に、シアン化合物は、シアン化カリウム(KCN)、シアン化ナトリウム(NaCN)等のシアン化物とフェロシアン化物等の金属シアノ錯体を含めてシアン化合物という。
シアン化物は、土壌中においてはフェロシアン化物やフェリシアン化物として安定に存在することが多い。
しかし、係る技術は、土壌が高濃度のシアン化合物で汚染されている場合や、シアン化合物の中でも、土壌中に多く存在するフェロシアン化物、フェリシアン化物を無害化するには、不適当であった。
ここで、pH11未満の環境下では、シアン化物(KCN、NaCN等)はシアン化水素(HCN)として一部が揮散する恐れがある。そして、シアン化水素として揮散しない条件であるpH11以上の安全な領域において、シアン化合物を無害化する技術は、未だに提供されてはいない。
しかし、係る従来技術(特許文献1)は地下水に包含されている汚染物質を除去することは出来ても、土壌そのものの汚染には対処することが出来ない。
しかし、この技術(特許文献2)は汚染された地下水の浄化には適用することが出来ても、土壌そのものが汚染されている場合には適用することが出来ない。
先ず、微生物による分解生成物について炭酸ガスと窒素に分解したという証明はなされていない。中間体であるチオシアン酸イオン(SCN−イオン)等のシアン化物イオンを発生する可能性は否定できない。
更に、係る従来技術(特許文献3)では、微生物については「分解細菌」としか特定されておらず、前記イオンを分解する細菌が具体化されていない。また、生物学的な分解による汚染土壌の浄化は浄化作用が一定しておらず、更に浄化完了まで年単位の長期間を必要としてしまう。
しかし、係る方法は地下水の浄化のみに有効であり、土壌自体がシアン化合物で汚染されている場合に、当該土壌に対して次亜塩素酸カルシウムを添加しても、シアン化合物を浄化することは出来ない。
さらに、生石灰を添加した後、水と処理するべき土壌との混合物(例えば、スラリ−)がpH11以上(好ましくはpH12以上)の高pHにするのに必要な量である。
本発明の実施に際して、生石灰は粒径100メッシュ以上の微粉状であるのが好ましい。ただし、生石灰の添加後、生石灰が粉状になる様な場合には、添加する生石灰が粒径100メッシュ以上の微粉状である必要はない。
土壌を微細化する機能を持つ混合機を使用すれば、生石灰と均一な混合が困難である場合でも、シアンにより汚染された土壌と生石灰とを均一に混合することが可能である。
土壌を微細化する機能を持つ混合機として、市販の混合機(例えば、コマツ製作所の商品名「リテラ」)を用いることが出来る。
ここで、フェロシアン化カルシウムカリウム(CaK2[Fe(CN)6])を生成する時間は、より詳細には、ケイ酸塩の一部を溶解して鉄(II又はIII)イオン及びカリウムイオンを生成する反応が進行する時間と、シアン化物イオン(CN−)は鉄(II又はIII)イオンと反応してフェロシアン化鉄イオン([Fe(CN)6]4−)及び/又はフェリシアン化鉄イオン([Fe(CN)6]3−)を生成し、土壌中に元々存在するフェロシアン化鉄イオン及び/又はフェリシアン化鉄イオンと併せて、更にフェロシアン化鉄イオン及び/又はフェリシアン化鉄イオンが土壌から溶解したカリウムイオン及び生石灰からのカルシウムイオンと反応して、フェロシアン化カルシウムカリウム(CaK2[Fe(CN)6])を生成するのに必要な時間である。
水と生石灰との反応による発熱と、生成した消石灰により高pH環境となることにより、シアン化物イオン(CN−)は鉄と反応してフェロシアン化物イオン([Fe(CN)6]4−)及び/又はフェリシアン化物イオン([Fe(CN)6]3−)を生成し、土壌中に元々フェロシアン化物イオン及び/又はフェリシアン化物イオンとして存在するものと併せて、更に土壌中のカリウム及び生石灰からのカルシウムイオンと反応し、不溶性のフェロシアン化カルシウムカリウム(CaK2[Fe(CN)6])を生成する(図5)。
土中にシアン化物イオン(CN−)単体が包含されている場合は、
土中のケイ酸塩から鉄イオン、カリウムイオンを生成する段階と、
シアン物イオンが鉄イオンと反応して、フェリシアン化鉄イオン、フェロシアン化鉄イオンを生成する段階と、
フェリシアン鉄イオン、フェロシアン化鉄イオンがカリウムイオン及び生石灰中のカルシウムと反応して、フェロシアン化カルシウムカリウムを生成する段階、
の3段階を含んでいる。
一方、土中に、フェロシアン化物イオン、フェリシアン化物イオンは含まれているが、シアン化物イオン(CN−)単体は含まれていない場合には、
土中のケイ酸塩から鉄イオン、カリウムイオンを生成する段階と、
フェリシアン鉄イオン、フェロシアン化鉄イオンがカリウムイオン及び石灰中のカルシウムと反応して、フェロシアン化カルシウムカリウムを生成する段階、
の2段階になる。
一般的には土壌中に、元々フェロシアン化物イオン及び/又はフェリシアン化物イオンとして存在するものが多い。ここで、フェロシアン化物イオン及び/又はフェリシアン化物イオンは、シアンと鉄の錯化合物であり、シアン化合物の中でも土壌中でかなり安定している。そのため従来技術では、フェロシアン化物イオン及び/又はフェリシアン化物イオンを無害化することはできなかった。
これに対して本発明によれば、上述した様に、従来技術では無害化することができなかったフェロシアン化物イオン及び/又はフェリシアン化物イオンが、土壌中のカリウム及び生石灰からのカルシウムイオンと反応し、不溶性のフェロシアン化カルシウムカリウム(CaK2[Fe(CN)6])を生成することにより、無害化することが出来る。
ここで、シアン化物イオンはpH11未満ではシアン化水素として揮散する恐れがあり、危険な状態となる。本発明では、pH11以上、好ましくはpH12以上の高pH状態で上述した反応を行なうので、シアン化物イオンがシアン化水素として揮散する恐れを防止することが出来る。
また、前記養生する工程において、処理するべき土壌に添加された水は、水と生石灰の反応熱により、一部は消石灰として消費され、残りは蒸発する。
上述した様に、本発明によれば、シアン化合物イオンが非常に安定した不溶性化合物(フェロシアン化カルシウムカリウム:CaK2[Fe(CN)6])を生成することにより、シアン化合物で汚染されていた土壌が無害化される。
換言すれば、シアン化合物イオンが安定化して、環境基本法で定める土壌環境基準(以下、「環境基準」と呼ぶ)未満になり、その結果、シアン化合物により汚染されていた土壌の無害化が達成される。
また、シアン化合物イオンが当該不溶性化合物(フェロシアン化カルシウムカリウム:CaK2[Fe(CN)6])になるため、シアン化物イオン(CN−)やフェロシアン化物イオン及び/又はフェリシアン化物イオンとして遊離せず、シアン化合物が無害化されるのである。
また、シアン化合物により汚染された土壌中にベンゼンが包含されていたとしても、本発明では、水と生石灰が反応した際の発熱により、当該ベンゼンを除去することが出来る。
本発明において、交差噴流(J32−1、J32−2:J34−1、J34−2)によりシアンにより汚染された土壌(CG)を切削し細分化しつつ攪拌して、切削流体(例えば水)と混合し、生石灰を噴射して(J34−3)、切削されて細分化されて切削流体(例えば水)と混合された汚染土壌と生石灰とを攪拌して混合すれば、交差噴流により汚染土壌を切削して、細分化して、切削流体(例えば水)と混合、攪拌し、その状態で生石灰を供給して、さらに攪拌するので、細分化されて掘削流体(掘削水)と混合した土壌と生石灰とが均一に混合される。
その結果、シアン化合物を無害化する反応が個々の土壌粒子表面で好適に進行し、不溶性化合物(フェロシアン化カルシウムカリウム:CaK2[Fe(CN)6])が生成して、無害化される。
最初に図1〜図5を参照して、本発明の第1実施形態について説明する。
図1において、第1実施形態に係る土壌無害化工法が施工される土壌Gには、シアン化合物で汚染された領域CGが存在する。
係る汚染領域CGまで掘削孔Hを掘削して、シアン化合物で汚染された土壌(汚染領域CGの土壌)を、矢印Dで示すように、地上側のシアン化合物不溶化処理設備10に移送する。換言すれば、矢印Dは、シアン化合物で汚染された土壌(汚染領域CGの土壌)をシアン化合物不溶化処理設備10に移送する移送経路である。
ここで、シアン化合物で汚染された土壌を移送する方法については、シアン化合物が揮発して大気中に拡散しない様にするのが好ましい。
図2において、シアン化合物不溶化処理設備10はハウジング10Hで包囲されている。シアン化合物が揮発しても、大気中に拡散することを防止するためである。
シアン化合物で汚染された土壌は、移送経路D(図2では矢印Dとして示されている)を介して、シアン化合物不溶化処理設備10のホッパ12に投入される。
シアン化合物で汚染された土壌の投入量を計測するため、ホッパ12の底部には重量センサ(例えば、ロ−ドセル)13が設けられており、重量センサ13の計測結果は、計測信号出力装置13S、信号伝達ラインCL−1を介して、コントロ−ルユニット(制御装置)100に伝達される。
混合攪拌槽14は攪拌装置16を有しており、攪拌装置16は駆動源である電動モ−タ16Mにより駆動する。そして、電動モ−タ16Mは、信号伝達ラインCL−2を介して、コントロ−ルユニット100から作動、停止に関する制御信号を受信する。
ここで、攪拌装置16を有する混合攪拌槽14に代えて、混合機を用いることが可能である。この場合、混合機としては、市販品(例えば、コマツ製作所の商品名「リテラ」)を適用可能である。
攪拌装置16を有する混合攪拌槽14或いは混合機としては、少なくとも、処理するべき土壌と生石灰を均一に混合する能力を有していることが必要である。
水供給ラインL1には流量調整弁V1が介装されており、流量調整弁V1は、信号伝達ラインCL−3を介して、コントロ−ルユニット100から開閉制御信号を受信する。以って、混合攪拌槽14に投入された汚染土壌に対応した量の水が、混合攪拌槽14に供給される(矢印WA)。
生石灰供給ラインL2は、図示しない公知の搬送装置(例えば、スクリュ−コンベア)を備えており、生石灰貯蔵装置18内の生石灰を混合攪拌槽14に投入可能としている。
ここで、生石灰供給ラインL2には供給量調整弁V2が介装されており、供給量調整弁V2は、信号伝達ラインCL−4を介して、コントロ−ルユニット100から開閉制御信号を受信する。以って、混合攪拌槽14に、汚染された土壌に対応した量の生石灰が供給される(矢印CA)。
係る含水率は、例えば、第1実施形態に係る土壌無害化工法が施工される以前の段階で、土壌Gの試掘等(図示せず)により求められる。そして、係る含水率を用いることにより、混合攪拌槽14に投入されたシアン化合物で汚染された土壌の乾燥重量(ドライ重量)を決定することが出来る。
そして、汚染土壌の乾燥重量に基き、水供給ラインL1を介して混合攪拌槽14に供給される水量が決定される。
図3において、コントロ−ルユニット100は、汚染土壌重量決定ブロック102、水供給量決定ブロック104、生石灰供給量決定ブロック106、デ−タ記憶ブロック112、制御信号出力ブロック114、各ブロック間でデ−タ信号の授受を行なうための信号伝達ラインCL−11〜CL−21、CL−20A〜CL−22Aを備えている。
そして、汚染土壌重量決定ブロック102において、混合攪拌槽14に投入されたシアン化合物で汚染された土壌の重量(水分を含んだ重量)が決定される。
当該汚染土壌の重量は、信号伝達ラインCL−11を介して水供給量決定ブロック104に送信され、信号伝達ラインCL−12を介して生石灰供給量決定ブロック106に送信される。
水供給量決定ブロック104では、含水率に基いて土壌の乾燥重量(ドライ重量)を演算する。そして、演算により得られた土壌の乾燥重量と、デ−タ記憶ブロック112から送信された好適な水の重量の比率(適正比率)により、水供給ラインL1を介して混合攪拌槽14に供給するべき水量を演算する。
水供給量決定ブロック104で演算された水量のデ−タは、信号伝達ラインCL−20を介して制御信号出力ブロック114に送られて、流量調整弁V1の制御信号に変換される。そして、当該制御信号は、信号伝達ラインCL−20A、CL−3を介して流量調整弁V1に送られる。
生石灰供給量決定ブロック106では、適正な生石灰の比率(適正比率)と、汚染土壌重量決定ブロック102から送信された当該汚染土壌の重量から、混合攪拌槽14に供給するべき生石灰の量、具体的には、処理するべき土壌の重量(含水状態の重量:湿重量)の少なくとも5%(好ましくは10%以上)に相当する生石灰量を演算する。
生石灰供給量決定ブロック106で演算された生石灰供給量のデ−タは、信号伝達ラインCL−21を介して制御信号出力ブロック114に送られて、供給量調整弁V2の制御信号に変換される。そして、当該制御信号は、信号伝達ラインCL−21A、CL−4を介して供給量調整弁V2に送られる。
信号伝達ラインCL−22Aを介して送信される電動モ−タ16Mの駆動信号は、図3では明示されていない遅延回路を経由して、生石灰が混合攪拌槽14に供給された後に、電動モ−タ16Mへ送信される。
ここで、図3で示す構成に代えて、コントロ−ルユニット100を制御盤で構成し、当該制御盤を作業者が操作することも可能である。
それと共に、水、生石灰の供給量についても説明する。
先ず、土壌Gの汚染された領域CGの汚染土壌(シアン化合物で汚染された土壌)を掘削して、シアン化合物不溶化処理設備10の混合攪拌槽14(のホッパ12)に投入する(ステップS1)。
ここで、汚染土壌の掘削(ステップS1)に先立って試掘を行い、領域CGの汚染土壌の含水率を計測して、含水率入力手段24により計測された含水率を入力する。或いは、汚染土壌を掘削する(ステップS1)際に、その一部をサンプリングして含水率を計測し、その計測結果を含水率入力手段24によりコントロ−ルユニット100に入力しても良い。
そしてステップS3で、水ラインL1を介して、混合攪拌槽14に水が供給される。
ここで、ステップS1において、ホッパ12に投入された汚染土壌は、水分を包含した状態である。ステップS3では、上述した含水率を用いて、当該汚染土壌の乾燥重量(ドライ重量)を演算する。そして、デ−タ記憶ブロック112から送信された水の重量の比率(適正比率)により、水供給ラインL1を介して混合攪拌槽14に供給するべき水量を演算する。
浄化するべきシアンとして、土中に、シアン化物イオン(CN−)が単体で存在する場合と、シアン化物イオン(CN−)は単体では土中に存在せず、フェロシアン化物イオン、フェリシアン化物イオンとして存在する場合の双方において、シアン化物イオンをフェロシアン化物イオン及び/又はフェリシアン化物イオンにする反応と、ケイ酸塩の一部が溶解する反応が進行するには、水が必要である。同様に、係る反応を進行するためには、100℃程度に加熱することも必要である。
第1実施形態では、水を添加した後、生石灰を添加することにより、水と生石灰の発熱反応によって、必要な発熱量を得ている。そして、後述の実験例から明らかなように、汚染土壌の乾燥重量の少なくとも50%であれば、水と生石灰の発熱反応に必要な水の量と、ケイ酸塩の一部が溶解して、シアン化物イオンをフェロシアン化物イオン及び/又はフェリシアン化物イオンにする反応に必要な量の水が確保出来るのである。
ここで、生石灰の供給量は、生石灰投入後、汚染土壌と水と生石灰との混合物がpH11以上になる量、例えば、処理するべき土壌の含水状態の重量(湿重量)の少なくとも5%(好ましくは10%以上)である。
土壌の含水状態の重量(湿重量)の少なくとも5%の生石灰を添加しないと、pH11以上とならず、シアン化水素(HCN)が揮散して危険である。
また、シアン化合物イオンが非常に安定した不溶性化合物を生成する反応が十分に進行せず、シアン化合物で汚染されていた土壌の無害化が不十分となる。
なお、pH11以上になる程度まで生石灰を投入すれば、例えば、汚染土壌にシアン化合物のみならず、芳香族炭化水素(ベンゼン)が含有されていたとしても、水と生石灰との反応で生じた発熱により、ベンゼンを除去することが出来る。
或いは、過去の施工実績から、確実にpH11(好ましくはpH12)以上となる様な生石灰供給量、或いは、汚染土壌に対する生石灰供給量の比率を、デ−タ記憶ブロック112に記憶させても良い。
ステップS5における「所定時間」としては、3時間以上で設定される。後述するように、特に24時間(1日)以上に亘って養生させることが好ましい。
少なくとも3時間以上に亘って養生させなければ、水と生石灰が反応して処理するべき土壌を100℃程度まで加熱する反応と、ケイ酸塩の一部を溶解して鉄イオン及びカリウムイオンを生成する反応、シアン化物イオンをフェロシアン化物イオン及び/又はフェリシアン化物イオンにする反応、フェロシアン化物イオン及び/又はフェリシアン化物イオンが溶解したカルシウムイオン及びカリウムイオンと反応して非常に安定した不溶性化合物(フェロシアン化カルシウムカリウム:CaK2[Fe(CN)6])を生成する反応、水と生石灰の反応に伴う発熱による水分の気化等の反応が十分に進行しないからである。
ステップS7における「無害化後の処理」としては、例えば、セメント材料としてセメント工場に搬出し、或いは、原位置(図1における汚染領域CG)に埋め戻すことが出来る。
実験例1では、シアン化合物を含有する試料50gに対して、フェリシアン化カリウム26mgを添加し、3時間後、生石灰5g(処理するべき土壌の湿重量の10%)と適宜量の水(処理するべき土壌の乾燥重量の50%の水)を添加して混合攪拌した後、2日間養生させた。
実験例1では、溶出試験方法は環境省告示第18号(平成15年3月6日)に基いて行なった。
実験例1における溶出試験(告示第18号の溶出試験)の結果を、環境基準値と比較して、下表1で示す。
表1
表1で示すように、実験例1では溶出量が0.03mg/Lであり、環境基準値である0.1mg/L未満の1/3の低い数値になっている。従って、実験例1に係る処理により、シアン化合物の不溶化が達成されたことが明らかである。
ここで、実験例1に係る処理では、試料と生石灰と水の混合物(スラリ−)はpH11であることが確認されている。そして、実験例1ではシアン化水素は揮散せず、処理に際して実験者や作業者に危険はないことが分った。
実験例1における処理では生石灰は生石灰5g(処理するべき土壌の湿重量の10%)が用いられた。これに対して、実験例2では、生石灰の量を2.5g(処理するべき土壌の湿重量の5%)、0.5g(処理するべき土壌の湿重量の1%)、0.25g(処理するべき土壌の湿重量の0.5%)にした。
実験例2における生石灰添加量以外の実験条件は、実験例1と同じである。
実験例2の結果を、下表2で示す。
表2
実験例2より、生石灰の添加量は、処理するべき土壌の湿重量の少なくとも5%以上であり、好ましくは10%以上であることが理解される。
実験例3では、実験例1と同一の試験条件で、実験試料と添加する水との重量比を変化して、処理後のシアン化合物の溶出量を計測した。
実験例3において、試料と添加する水との重量比は、処理するべき土壌(試料)の乾燥重量に対する水の重量比を30%〜100%の範囲で、10%ずつ変化させた。
実験例3の結果を、下表3で示す。
表3
表3から明らかなように、試料の乾燥重量に対する水の重量比が50%以上(50%〜100%)であれば、シアン化合物で汚染された土壌を無害化できる。これに対して、試料の乾燥重量に対する水の重量比が30%、40%では、無害化されていない。
水の量が試料の乾燥重量に対して30%、40%の場合には、ケイ酸塩の一部を溶解して鉄イオン及びカリウムイオンを生成する反応とシアン化物イオンをフェロシアン化物イオン及び/又はフェリシアン化物イオンにする反応、更には不溶性化合物(フェロシアン化カルシウムカリウム:CaK2[Fe(CN)6])を生成する反応が十分に進行せず、また、係る反応を進行するために必要な反応熱(生石灰と水との発熱反応により生じる熱)も不十分となるものと推定される。
実験例4では、水及び生石灰を添加した混合、攪拌した後における養生時間を変動し、その他の条件を実験例1と同様にして、処理後(実験例7の処理)のシアン化合物の溶出量を計測した。
養生時間は、1時間〜5日間(120時間)の範囲で、下表4で示すように変化させた。
実験例4の結果を、下表4で示す。
表4
表4から、養生時間が3時間であれば、溶出量は環境基準値0.1mg/Lを下回り、シアン化合物で汚染された土壌を無害化できる。
シアン化物が非常に安定した不溶性化合物になる反応は、瞬時に反応が終了するタイプの反応ではないと推定される。そのため、不溶性化合物を生成するには、少なくとも3時間が必要であり、本発明では、少なくとも3時間の養生期間が必要であることが理解される。
なお、実験例4では、常温、大気圧の下で行なわれているが、加圧下、加熱下では、養生期間が短縮することを付記する。
上述した様に、シアン化合物を無害化するために、図示の実施形態では、当該シアン化合物から不溶性のフェロシアン化カルシウムカリウム(CaK2[Fe(CN)6])を生成している。
出願人は、実験例5として、土中のシアンからフェロシアン化カルシウムカリウムが生成されるか否かを確認するための訂正実験を行なった。
そして、当該試料(フェロシアン化物イオンが存在する水に、生石灰を混合した試料)を、X線回析した。
X線回析した結果が、図5で示されている。
図5で示すX線回析結果から、前記試料(フェロシアン化物イオンが存在する水に、生石灰を混合した試料)中に、フェロシアン化カルシウムカリウム(CaK2[Fe(CN)6])が生成していることが、定性的に確認された。図5のX線回析結果において、所定の3つの位置において、X線強度(cps)のピークが存在するからである。
換言すれば、実験例5の結果から、本発明によれば、土中に存在するシアンから、不溶性のフェロシアン化カルシウムカリウム(CaK2[Fe(CN)6])が生成されることが確認された。
換言すれば、本発明によれば、土壌G中のシアン化合物で汚染された領域CGに水及び生石灰を供給することにより、シアン化合物汚染土壌(領域CGの土壌)を地上側に取り出さずに、原位置にて無害化することが出来る。
土壌G中のシアン化合物で汚染された領域CGに水及び生石灰を供給することにより、シアン化合物汚染土壌(領域CGの土壌)を地上側に取り出さずに、原位置にて無害化する実施形態が、図6、図7で示されている。
上述した通り、図6、図7の第2実施形態では、比較的低圧の粉体噴流と、高圧水の交差噴流とを用いて、シアン化合物で汚染された領域CGを無害化している。
図6において、土壌G中のシアン化合物で汚染された領域CGを無害化するための施行現場には、土壌無害化用機械(全体は図示せず)が設置されている。当該土壌無害化用機械は、2本の攪拌用ロッド32、34を有しており、攪拌用ロッド32、34の各々の先端(図6では下端部)には、土壌掘削用ビット36、38が取り付けられている。
ここで、垂直方向に隣接する攪拌翼同士は、その延在する方向が90°ずつずれている。
攪拌用ロッド32、34を回転することにより、攪拌翼40−1〜40−5、42−1〜42−5は、例えば時計方向(図7の矢印R方向)に回転して、土壌を攪拌する。
一方、攪拌用ロッド34の一番下側の攪拌翼42−5と同一の垂直方向位置には、高圧水噴流をJ34−1を噴射するノズルN34−1が設けられている。そして、ノズルN34−1よりも上方の位置であって、ノズルN32−1と同一の垂直方向位置には、高圧水噴流をJ34−2を噴射するノズルN34−2が設けられている。なお、図6の例では、ノズルN34−2の垂直方向位置と、攪拌翼42−4の垂直方向位置とが同一である。
高圧水噴流J32−1、J32−2は一対の交差噴流を構成し、高圧水噴流J34−1、J34−2も一対の交差噴流を構成する。
同様に、ノズルN34−1、ノズルN34−2も、攪拌用ロッド34を中心として点対称に配置されており、ノズルN34−1から噴射される高圧水噴流J34−1と、ノズルN34−2から噴射される高圧水噴流J34−2も、攪拌用ロッド34を中心として対称になっている。
同様に、攪拌用ロッド34の一番下側の攪拌翼42−5の地中側の側面に接触するように、粉体噴射用ノズルN34−3が設けられている。ここで、粉体噴射用ノズルN34−3は、ノズルN34−1、ノズルN34−2と同様に、攪拌用ロッド34の外周面に形成されている。
粉体噴射用ノズルN34−3から、粉末状生石灰の噴流(或いは、粉末状生石灰と低圧の水から成る噴流)J34−3(図7)が低圧で噴射される。同様に、粉体噴射用ノズルN32−3からも、粉末状生石灰の噴流が低圧で噴射される。ただし、粉体噴射用ノズルN32−3から噴射される生石灰の噴流は、図示されていない。
なお、粉体噴射用ノズルN32−3、N34−3も、各々2つずつ設けられており、攪拌用ロッド32、34を中心として対称に配置されている。
図示はしないが、高圧水噴流J32−1、J32−2の噴射方向も、攪拌翼40−1〜40−5が延在する方向に対して、45°ずれている。
一方、粉体噴射用ノズルN34−3から噴射される低圧の生石灰噴流J34−3は、最下方の攪拌翼42−5と平行に噴射される。図示はされていないが、粉体噴射用ノズルN32−3から噴射される低圧の生石灰噴流も、最下方の攪拌翼40−5と平行に噴射される。
そして、シアン化合物で汚染された領域CGに到達したならば、粉体噴射用ノズルN32−3、N32−3から粉末状生石灰の噴流(或いは、粉末状生石灰と低圧の水から成る噴流)が噴射される。攪拌用ロッド32、34を回転し、高圧水交差噴流J32−1、J32−2とJ34−1、J34−2により、シアン化合物で汚染された土壌CGを切削、細分化しつつ攪拌して、切削流体である水と混合する。そして、切削、細分化されて、水と混合した汚染土壌に、粉末状生石灰の噴流(或いは、粉末状生石灰と低圧の水から成る噴流)を噴射することにより、粉末状生石灰は、切削され、微細片に細分化されて、水と混合している汚染土壌CGと均一に混合される。
図6、図7で示す構成により、土壌と生石灰とが均一に混合されるか否かについて、実験例6により検証した。
図6、図7を参照して説明したのと同様に、高圧水の交差噴流を噴射して土壌を切削すると共に、低圧の粉末状生石灰の噴流を噴射しつつ、噴射ノズルを回転して、土壌と生石灰とを混合した場合と、土壌中に粉体のみを噴射して(土壌と)混合した場合と、水平方向に高圧水を噴射して土壌を切削すると共に、低圧の粉末状生石灰の噴流を噴射しつつ、噴射ノズルを回転して、土壌と生石灰とを混合した場合とで、生石灰と土壌との混合の程度を判定した。
また、生石灰と反応するフェノールフタレインが、採取された試料に対して反応する反応率を計測した。生石灰と土壌とが均一に混合していれば、試料には満遍なく生石灰が存在するので、フェノールフタレインの反応率が高くなるからである。
土壌が生石灰との反応により固化していなければ、ボーリングマシンにより試料として採取することが出来ないので、上述した様に、生石灰と土壌とが均一に混合しているほど、試料採取率は高くなる。
上述したフェノールフタレインの反応率は、施工して改良された範囲において、ボーリングマシンで試料採取を行い、採取された試料に対してフェノールフタレインを散布し、試料のアルカリによる変色を確認することにより行なう。採取された試料の長さに対して、変色した試料の長さを%で表している。例えば、採取された3mの試料が全て赤色に変色していればフェノールフタレインの反応率は100%であり、採取された3mの試料のうち、1.5mの長さの分だけ変色している場合には、フェノールフタレイン反応率は50%となる。
また、採取された試料の長さが1.5mであり、その全てがフェノールフタレインにより変色している場合には、試料採取率は50%であるが、フェノールフタレイン反応率は100%となる。
実験例6では、生石灰(CaO)の添加量(添加率)の添加率が4%のサンプル(No.1、No.2)、8%のサンプル(No.3、No.4)、10%のサンプル(No.5〜No.8)を用意した。
また、「ジェットクリート+DJM」と標記しているのは、水平方向に高圧水噴流を噴射すると共に、低圧の粉末状生石灰噴流を噴射しつつ、噴射ノズルを回転して、土壌と生石灰とを混合した場合のサンプルであり、試料No.9、No.11、No.13が該当する。
さらに、「DJM」と標記しているのは、低圧の粉末状生石灰噴流を水平方向に噴射しつつ、噴射ノズルを回転して、土壌と生石灰とを混合した場合のサンプルであり、試料No.10、No.12、No.14、No.15が該当する。
「羽切回数」=「攪拌翼のついているロッドの回転数(rpm)」÷「引上速度(m/min)」×「攪拌翼枚数」
試料採取率が100%で、且つ、フェノールフタレイン反応率も100%である場合に、評価が「○」である。
試料採取率が90%以上で、且つ、フェノールフタレイン反応率も90%以上である場合は、評価は「△」となる。この場合には、基本的に、本発明のシアンで汚染された土壌の無害化工法を実施するには不適当と判断される。
上述した以外の場合には、全て評価は「×」である。この場合は、本発明のシアンで汚染された土壌の無害化工法を実施するには、不適当である。
このことから、図6、図7を参照して説明された工法であれば、土壌と生石灰とが、良好に(或いは均一に)攪拌、混合されること明らかになった。
それに対して、生石灰(CaO)の添加量が4%のサンプル(サンプルNo.1、No.2)、8%のサンプル(サンプルNo.3、No.4)では、試料採取率は90%以上ではあるが100%には到達しておらず、フェノールフタレインの反応率も90%以上ではあるが100%には到達していない(評価「△」)。
ここで、サンプルNo.1〜No.4と、サンプルNo.5〜No.8では、生石灰(CaO)の添加量以外に、加水量、羽切回数が相違しているが、表5で示すように、有意な差異ではない。
表5の結果から、図6、図7で示す構成により土壌と生石灰を攪拌、混合するのであれば、生石灰(CaO)の添加量(添加率)は少なくとも10%とするべきことが判明した。
例えば、図6、図7では、2本の攪拌用ロッド32、34が配置されているが、1本の攪拌用ロッドから高圧水の交差噴流と低圧の生石灰噴流を噴射しても良い。或いは、3本以上の攪拌用ロッドの各々から、高圧水の交差噴流と低圧の生石灰噴流を噴射しても良い。
CG・・・シアン化合物で汚染された領域
H・・・掘削孔
D・・・シアン化合物で汚染された土壌の移送経路
10・・・シアン化合物不溶化処理設備
12・・・ホッパ
13・・・重量センサ
13S・・・計測信号出力装置
14・・・混合攪拌槽
16・・・攪拌装置
16M・・・電動モ−タ
18・・・生石灰貯蔵装置
24・・・入力手段
32、34・・・攪拌用ロッド
36、38・・・土壌掘削用ビット
40−1〜40−5、42−1〜42−5・・・攪拌翼
J32−1、J32−2、J34−1、J34−2・・・高圧水噴流
N32−1、N32−2、N34−1、N34−2・・・高圧水噴射用ノズル
N32−3・・・粉体噴射用ノズル
J34−3・・・生石灰噴流
100・・・コントロ−ルユニット
102・・・汚染土壌重量決定ブロック
104・・・水供給量決定ブロック
106・・・生石灰供給量決定ブロック
112・・・デ−タ記憶ブロック
114・・・制御信号出力ブロック
L1・・・水供給ライン
L2・・・生石灰供給ライン
V1・・・流量調整弁
V2・・・供給量調整弁
CL−1〜CL−21、CL−20A〜CL−22A・・・信号伝達ライン
Claims (1)
- シアン化合物で汚染された領域(CG)が存在する土壌(G)を掘削して前記領域(CG)の土壌に当該土壌の乾燥重量の少なくとも50%の水を添加し、処理するべき土壌の湿重量の少なくとも5%の生石灰を添加し、処理するべき土壌と水と生石灰を混合し、少なくとも3時間以上養生し、シアン化合物で汚染された汚染土壌を無害化する土壌無害化工法において、シアン化合物で汚染された土壌を撹拌槽(14)に投入し、前記撹拌槽(14)に投入された汚染土壌の重量を決定し、当該汚染土壌の重量と含水率から汚染土壌の乾燥重量を決定し、当該汚染土壌の乾燥重量と水の適正比率により前記撹拌槽(14)に供給するべき水量が汚染土壌の乾燥重量の50%以上となるように決定し、生石灰の適正比率と汚染土壌の重量から前記撹拌槽(14)に供給される生石灰量をpH11以上となるように決定し、決定した供給量の生石灰と水とを前記撹拌槽(14)に投入して撹拌し、生石灰の反応による発熱で撹拌後加熱養生して土壌中の鉄、カリウムと反応させ不溶性のフェロシアン化カルシウムカリウムを生成し、水分を気化させ、汚染土壌の無害化後の処理を行うことを特徴とする土壌無害化工法。
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