JP5871271B2 - 炭素原子から構成されるフィルム - Google Patents

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Description

本発明は、炭素原子から構成されるフィルムに関するものである。
炭素原子から構成される各種の物質のうち、炭素原子がsp2結合してできる炭素六角網面から構成される物質としては、グラフェン、グラファイト、カーボンナノチューブ等が知られており、構造材、補強材、摺動材、導電材などとして、エネルギー、宇宙、医療など幅広い分野で利用されている。そして、炭素六角網面には、図1に示すように、a1軸、a2軸およびc軸の方向が定義されているので、この軸を用いて前記物質の構造について説明する。
グラフェンは、図2(a)に示すように、a1軸とa2軸方向に広がりを持つ単層の炭素六角網面から構成される物質であり、炭素原子同士は強固な共有結合をしている。
グラファイトは、図2(b)に示すように、複数の炭素六角網面がc軸方向に三次元規則性をもって積層した物質であり、炭素六角網面の間は弱いファンデルワールス力で結合している。
カーボンナノチューブは、図2(c)に示すように,a1軸とa2軸方向に広がりを持つ炭素六角網面を丸めて両端を接合した円筒状の物質である。単一の円筒からなる単層カーボンナノチューブと、直径の異なる複数の円筒がイレコ状になった多層カーボンナノチューブがある。
また、炭素六角網面から構成される物質は、さまざまな巨視的形状に加工され利用されている。例えば、2次元形状の材料としてはフィルムや膜があり、高分子フィルムを熱処理する方法で作製したフィルムや、炭化水素のガスを加熱された基板上で熱分解し沈着する方法で作製した膜が知られている。
例えば、先行特許文献1、2および先行非特許文献1には、ポリイミド、ポリアミドやポリベンズイミダゾールのフィルムを1000〜2500℃で炭素化する方法で作製したフィルムが開示されている。これらの方法で作製されたフィルムは、黒鉛結晶のc軸がフィルム面に対して垂直になるように選択配向しており、化学的特性や物理的特性はグラファイトと本質的に変わらず、新しい材料とは言い難い。
一方、先行特許文献3〜5には、メタン、プロパン、アセチレン、ベンゼンなどの炭化水素のガスを1000〜2000℃で加熱された基板上で熱分解し、その基板上に沈着する方法で作製した膜が開示されている。この方法で作製された膜は、基板と一体化しており、膜単体で自立した構造体とはなり得ず、フィルムとは本質的に異なるものである。
特開2007-177024号公報 特開2008-24571号公報 特開平10-188951号公報 特開2000-169967号公報 特開平8-203503号公報
TANSO, No.245, p196-199 (2010)
従来の技術による、炭素六角網面を単位とする炭素原子から構成される物質について考えるに、グラファイトは工業材料として古くから使用されていることから、工業的応用の一層の拡大は困難である。また、カーボンナノチューブは、ナノチューブ構造に起因する特異な化学的・物理的特性を有しており、近年、工業材料としての利用が始まっているものの、その形状から人体への悪影響が懸念されている。一方、グラフェンは、近年単離され、極めて特異な物理的特性を有していることから注目を集めているが、いまだ研究段階にある。
以上のように、従来の技術による、炭素六角網面を単位とする炭素原子から構成される物質の工業的応用は広範囲に及んでいるものの、炭素原子から構成される材料の工業的応用の今後の一層の拡大を考えると、炭素原子から構成される新しい構造を有する材料の実現が望まれている。
本願発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、炭素六角網面を単位とする炭素原子から構成される、従来とは異なる構造を有する材料を提供することである。
本発明者らは、鋭意検討の結果、従来の、黒鉛結晶のc軸がフィルム面に対して垂直になるように選択配向したフィルムとは異なり、黒鉛結晶のc軸がフィルム面に対して平行になるように選択配向した新たなフィルムを作製することに成功し、上記課題を解決した。
具体的には、本発明者らは、以下の発明を提供するものである。
〈1〉炭素原子から構成されるフィルムであって、前記炭素原子が黒鉛結晶を形成しており、前記黒鉛結晶のc軸がフィルム面に対して平行になるように配向していることを特徴とする、フィルム。
〈2〉炭素原子が黒鉛結晶を形成しており、前記黒鉛結晶のc軸がフィルム面に対して平行になるように配向している炭素原子から構成されるフィルムを製造する方法であって、
耐熱性の縮合系芳香族高分子を溶媒に溶解してなる溶液を基板上に塗布後、前記縮合系芳香族高分子の貧溶媒に浸漬して前記縮合系芳香族高分子を基板上に膜状に凝固させた後、乾燥して高分子膜を形成する工程と、
ポリメタクリル酸メチルを溶媒に溶解してなる溶液を前記縮合系芳香族高分子の上に塗布、乾燥して縮合系芳香族高分子とポリメタクリル酸メチルの積層膜を基板上に形成する工程と、
前記積層膜を前記基板からはがした後、ポリメタクリル酸メチルを溶媒により溶解除去後、乾燥し、耐熱性の縮合系芳香族高分子のフィルムを作製する工程と、
前記縮合系芳香族高分子のフィルムを不活性雰囲気中800℃以上3100℃以下で熱処理し、黒鉛結晶を成長させる工程を少なくとも有し、
ここで、前記耐熱性の縮合系芳香族高分子のフィルムが、フィルムの幅÷フィルムの厚み≧5000、かつフィルムの長さ÷フィルムの厚み≧5000であることを特徴とする、方法。
〈3〉耐熱性の縮合系芳香族高分子が、ポリアミド、ポリアゾメチン、ポリイミド、ポリキノキサリン、ポリオキサジアゾール、ポリベンズイミダゾール、ポリベンズオキサゾール、ポリベンズチアゾール、ポリキナゾリンジオン、ポリベンゾオキサジノン、ポリキナゾロン、ベンズイミダゾベンゾフェナントロリンラダーポリマー、およびこれらの誘導体から選択される少なくとも一種であることを特徴とする、〈2〉記載の方法。
本願発明は、炭素原子から構成されるフィルムの構造に関するものであるところ、本願発明において、以下のように用語を定義し説明する。
「フィルム」とは、単体で平板状の構造を保持できる構造体であって、厚みが250μm以下のものを意味する。その形態を図3に示す直方体で表し、3辺の長さをそれぞれa,b,c(a>b>>c)とすると、長さaは「フィルムの長さ」、長さbは「フィルムの幅」、長さcは「フィルムの厚み」を、それぞれ意味する。
図3に示すように、「フィルム面」とは、長さaおよび長さbの両辺が含まれる2つの面を意味し、「エッジ面」とは、長さcの辺を含む4つの面を意味する。
一方、「膜」とは、基板の支持によってのみ平板状の構造を保持できる構造体、言い換えれば、単体では平板状の構造を保持できない、厚みが250μm以下のものを意味する。
従来の技術による炭素原子から構成されるフィルムは、図4に示すように、黒鉛結晶のc軸はフィルム面に対して垂直またはランダムに配向しており、フィルム面に対して平行に配向させることは不可能であった。
すなわち、高分子の熱分解によって生じる炭素六角網面は、高温の熱処理過程において互いに積層され、炭素六角網面積層体を形成する。この炭素六角網面積層体は積層間隔を縮めると同時に、隣り合う網面が互いに面方向にずれることによって、三次元規則性をもった黒鉛結晶へと成長する。炭素六角網面積層体が黒鉛結晶へ成長するとき、炭素六角網面積層体は面方向に伸長し、積層方向に収縮する。材料内部におけるこのような変形は、材料の外周によって拘束されるため、炭素六角網面積層体には面方向に2軸の圧縮応力が、積層方向に1軸の引張応力が、それぞれ生じる。炭素六角網面積層体の弾性率は積層方向に比べて面方向の値が圧倒的に大きいため、圧縮応力は引張応力に比べて圧倒的に大きな値となる。よって、炭素六角網面が積層して黒鉛結晶へ成長するとき、この圧縮応力が最小となる方向に炭素六角網面は配列する。
例えば高分子溶液を基板上に平面状に展開し、溶媒を蒸発・除去して作製した高分子フィルムなどのように、フィルム中において平面状の高分子鎖がフィルム面と平行に配列している場合には、熱分解によって生じる炭素六角網面もフィルム面に対して平行に配列する。フィルム面に対して平行に配向している炭素六角網面を回転し、フィルム面に対して垂直にするには大きな内部応力の発生をともなうため、通常はこのようなことは生じない。したがって、このフィルムをさらに高温で熱処理し黒鉛結晶を成長させたときも、黒鉛結晶中の炭素六角網面はフィルム面に対して平行のままであり、黒鉛結晶のc軸はフィルム面に対して垂直になるように配向する。
一方、例えば高分子溶液を基板上に平面状に展開し、貧溶媒により凝固させた場合などのように、高分子フィルム中において平面状の高分子鎖がランダムに配列している場合には、熱分解によって生じる炭素六角網面の配列もランダムとなる。このフィルムをさらに高温で熱処理し黒鉛結晶を成長させたとき、通常は、黒鉛結晶のc軸はフィルム面に対して特定の方向に配列せず、ランダムな配列のままである。
本発明者らは、この点につき検討した結果、平面状の高分子鎖がランダムに配列している高分子フィルムにおいて、フィルム面の大きさに比べてフィルム厚みが十分に薄い場合に、高温で加熱処理し黒鉛結晶を成長させると、黒鉛結晶のc軸がフィルム面に対して平行に配向することを見出した。その理由は明らかではないが、フィルム面の大きさに比べてフィルム厚みが十分に薄くなると、フィルムの厚み方向の変形を拘束する効果がフィルム面の方向に比べて小さくなり、言い換えると、発生する内部応力を低減する効果が大きくなるため、黒鉛結晶のc軸がフィルム面に対して平行に配向したものと考えられる(図5)。
そして、高分子フィルムにおいて、(フィルムの幅÷フィルムの厚み)の値、および(フィルムの長さ÷フィルムの厚み)の値が5000以上であると前記効果が発現し、10000以上であると前記効果が顕著になり好ましく、50000以上であるとより顕著になり、特に好ましい。
また、高分子フィルムの厚みが1000nm以下であると、前記効果は顕著になり、500nm以下であるとより顕著になり好ましく、150nm以下であるとさらに顕著となるので、特に好ましい。
本願発明によれば、従来の炭素六角網面から構成される物質とは異なる構造を有する物質を実現することができる。その特異な構造からして、従来の炭素六角網面から構成される物質に比較して、熱伝導性、電気伝導性、光学的特性等は大きく異なることが期待される。
炭素六角網面の説明図。 従来技術による炭素六角網面から構成される物質の構造の説明図。 フィルムのフィルム面、エッジ面、フィルムの幅、長さ、厚みの説明図。 従来技術による炭素原子から構成されるフィルムの模式図。 本願発明による炭素原子から構成されるフィルムの模式図。 本願発明の炭素原子から構成されるフィルムの走査型電子顕微鏡写真。 本願発明の炭素原子から構成されるフィルムの、エッジ面に対して垂直に電子線を入射して透過型電子顕微鏡観察を行ったときの格子像。 フィルムの広角X線回折における3つの光学系の説明図。 従来技術による炭素原子から構成されるフィルムの広角X線回折図。 本願発明のフィルム製造に用いられる耐熱性の縮合系芳香族高分子の例示。
以下に、本願発明を実施するための形態について、詳述する。
本願発明のフィルムの製造においては、耐熱性の縮合系芳香族高分子であればその種類を問わず公知の高分子を用いることができる。その中でも、図10に示されるようなポリアミド、ポリアゾメチン、ポリオキサジアゾール、ポリイミド、ポリベンズイミダゾール、ポリベンズオキサゾール、ポリベンズチアゾール、ポリキナゾリンジオン、ポリベンゾオキサジノン、ポリキナゾロン、ポリキノキサリン、ベンズイミダゾベンゾフェナントロリンラダーポリマー、およびこれらの誘導体を用いることが好ましい。ベンズイミダゾベンゾフェナントロリンラダーポリマーおよびその誘導体は、炭素含有率が高く、高い収率で炭素原子から構成されるフィルムが得られることから、特に好ましい。
本願発明において、耐熱性の縮合系芳香族高分子溶液を塗布する基板は、耐熱性の縮合系芳香族高分子溶液と反応しないものであれば、特に限定されるものではなく、PET基板、PBT基板、ガラス基板、石英基板、SiC基板、Si基板、サファイア基板、ガラス状炭素基板、ダイヤモンド基板など公知の基板を用いることができる。その中でも、PET基板、ガラス基板は、高分子フィルムを容易にはがし得ることから、特に好ましい。
本願発明において、耐熱性の縮合系芳香族高分子溶液を塗布する方法は、バーコート法、ドクターブレード法、スピンコート法、印刷法、インクジェット法、スプレーコート法、ディプコート法など公知の方法であれば特に限定されるものではない。
本願発明において、耐熱性の縮合系芳香族高分子を膜状に凝固するのに貧溶媒を用いるが、貧溶媒の種類は特に限定されるものではなく、蒸留水、メタノール、エタノールおよびこれらの混合溶媒などから、用いる高分子に応じて適宜選択し得るものである。
本願発明において、ポリメタクリル酸メチルを溶解・除去するのに有機溶媒を用いるが、用いられる有機溶媒は、ポリメタクリル酸メチルを溶解し、フィルムを溶解しない有機溶媒であれば、特に限定されるものではない。その中でも、アセトン、テトラヒドロフラン、N,N-ジメチルホルムアミドを用いることが好ましい。
本願発明において、ポリメタクリル酸メチルを溶解・除去した耐熱性の縮合系芳香族高分子フィルムを乾燥する方法は、耐熱性の縮合系芳香族高分子フィルムを化学的・物理的に変化させない方法であれば特に限定されるものではなく、公知の乾燥方法を用いることができる。その中でも、減圧乾燥、真空乾燥、凍結乾燥が特に好ましい。
本願発明において、耐熱性の縮合系芳香族高分子フィルムを熱処理する方法としては、管状電気炉、タンマン炉、マッフル炉、誘導加熱炉などを使用する公知の方法を用いることができ、特に限定されるものではない。
本願発明において、高分子フィルムをN2、Ar、He等の不活性雰囲気下で熱処理するが、特に限定されるものではない。
本願発明において、高分子フィルムを熱処理する温度は、黒鉛結晶が生成し得る温度であれば特に限定されるのではないが、800℃以上3100℃以下であることが好ましい。その中でも、1500℃以上3100℃以下であると黒鉛結晶が成長しやすいので特に好ましい。
本願発明において、耐熱性の縮合系芳香族高分子フィルムを板にはさんで熱処理するが、耐熱性の縮合系芳香族高分子フィルムと反応せず、不活性雰囲気中での熱処理に耐え得るものであれば、その材質は特に限定されるものではなく、公知の材質を採用することができる。
以下、本願発明を実施例および比較例によって詳細に説明するが、本願発明はこれらの実施例の記載に何ら制約されるものではない。
実施例1.
1モルの1,4,5,8-ナフタレンテトラカルボン酸と1モルの1,2,4,5-ベンゼンテトラアミン四塩酸塩とをポリリン酸中において重縮合することによって、ベンズイミダゾベンゾフェナントロリンラダーポリマー(以下、BBLポリマーと略する)を合成した。BBLポリマー0.25gをメタンスルホン酸(和光純薬工業、製造元コードNo.138-01576)25mlに溶解し、塗工液Aを調製した。同様に、ポリメタクリル酸メチル(以下、PMMAと略する)(アルドリッチ、製造元コードNo.19-3760)1.25gを酢酸エチル(和光純薬工業、製造元コードNo.051-00356)25mlに溶解し、塗工液Bを調製した。
塗工液Aをガラス基板上にスピンコートし、基板ごと蒸留水中に浸漬してBBLポリマーをガラス基板上に膜状に凝固させ、一晩減圧乾燥することによって、ガラス基板状にBBLポリマー膜を形成した。ガラス基板上に形成されたBBLポリマー膜上に塗工液Bをスピンコート後乾燥することにより、ガラス基板上にBBLポリマーとPMMAからなる2層積層膜を形成した。この2層積層膜をガラス基板から剥離してろ紙上に移し、アセトンを用いてPMMAを溶解・除去し、凍結乾燥することによって、BBLポリマーフィルムを得た。得られたBBLポリマーフィルムの寸法は幅20mm、長さ30mm、厚み120nmであった(幅÷厚み=200000、長さ÷厚み=300000)。
このBBLポリマーフィルムをグラファイト板にはさみ、窒素雰囲気下1500℃で1時間熱処理し、引き続き、アルゴン雰囲気下2800℃で1時間熱処理し、炭素原子から構成されるフィルムを得た。得られたフィルムは自立した構造体であり、光透過性を有していた。
得られたフィルムの断面を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察した写真を図6に示す。この写真像から求めたフィルムの厚みは100nmであった。
また、得られたフィルムのエッジ面に対して垂直に電子線を入射して透過型電子顕微鏡(TEM)で観察した格子像を図7に示す。図7において、エッジ面の厚み方向である上下方向に伸びる複数の細長い像がそれぞれ黒鉛結晶であり、当該黒鉛結晶の炭素網面は上下方向に平行に配列していることが見て取れる。このように、このフィルムにおける炭素網面は、若干の分布はあるものの、観察領域全体にわたってほぼ一様に、フィルム面に対して垂直に配列している。以上の結果から、黒鉛結晶のc軸はフィルム面に対して平行になるように配向していることがわかった。
比較例1.
実施例1と同様に合成したBBLポリマー5gを、メタンスルホン酸100mlに溶解し、BBLポリマー溶液を作製した。このBBLポリマー溶液をシャーレに展開し、減圧下で加熱し溶媒を蒸発・除去した。シャーレ底部に形成された膜を剥がし、トリエチルアミンのメタノール溶液、メタノールで順次を洗浄した後、室温で減圧乾燥することによって、BBLポリマーフィルムを得た。得られたBBLポリマーフィルムの寸法は、幅20mm、長さ30mm、厚み50μmであった(幅÷厚み=400、長さ÷厚み=600)。
得られたBBLポリマーフィルムを実施例1と同様にして熱処理し、炭素原子から構成されるフィルムを得た。
得られたフィルムについて、図8に示す3つの光学系を用いて広角X線回折プロファイルを測定した。結果を図9に示す。図9において、Normal Edge Viewにおいてはh及びkが0の00l回折のみが現れるのに対して、Through Viewにおいてはlが0のhk0回折だけが現れている。これらの回折プロファイルから、得られたフィルムにおいては、黒鉛結晶のc軸はフィルム面に対して垂直になるように配向していることが確認された。
比較例2.
ダイヤモンド粉(2〜4μm)で研磨したシリコン基板にECRプラズマCVD装置を用い、下記条件により炭素膜を作製した。

反応室内圧力 1〜2×10-3 Torr
マイクロ波出力 1.5kW(周波数:2.45GHz)
磁場コイル 46V,200Aを印加
基材バイアス 30V
原料ガス メタン:50ml min-1,酸素:20ml min-1
成膜時間 8hr

得られた炭素膜は基板と一体化した状態でのみ平板状の構造を保持しており、単体で平板状の構造を保持することは不可能であった。
すなわち、本願発明でいうところのフィルムとは本質的に異なるものであった。

Claims (1)

  1. 炭素原子が黒鉛結晶を形成しており、前記黒鉛結晶のc軸がフィルム面に対して平行に
    なるように配向している炭素原子から構成されるフィルムを製造する方法であって、
    耐熱性の縮合系芳香族高分子を溶媒に溶解してなる溶液を基板上に塗布後、前記縮合系
    芳香族高分子の貧溶媒に浸漬して前記縮合系芳香族高分子を基板上に膜状に凝固させた後、乾燥して高分子膜を形成する工程と、
    ポリメタクリル酸メチルを溶媒に溶解してなる溶液を前記縮合系芳香族高分子の上に塗
    布、乾燥して縮合系芳香族高分子とポリメタクリル酸メチルの積層膜を基板上に形成する
    工程と、
    前記積層膜を前記基板からはがした後、ポリメタクリル酸メチルを溶媒により溶解除去
    後、乾燥し、耐熱性の縮合系芳香族高分子のフィルムを作製する工程と、
    前記縮合系芳香族高分子のフィルムを不活性雰囲気中800℃以上3100℃以下で熱処理し、黒鉛結晶を成長させる工程を少なくとも有し、
    ここで、前記耐熱性の縮合系芳香族高分子が、ポリアミド、ポリアゾメチン、ポリイミド、ポリキノキサリン、ポリオキサジアゾール、ポリベンズイミダゾール、ポリベンズオキサゾール、ポリベンズチアゾール、ポリキナゾリンジオン、ポリベンゾオキサジノン、ポリキナゾロン、ベンズイミダゾベンゾフェナントロリンラダーポリマー、およびこれらの誘導体から選択される少なくとも一種であり、前記耐熱性の縮合系芳香族高分子のフィルムが、厚み500nm以下であり、かつ、フィルムの幅÷フィルムの厚み≧5000、フィルムの長さ÷フィルムの厚み≧5000である
    ことを特徴とする、方法。
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