JP5870860B2 - 耐表面割れ感受性に優れた高靭性鋼材用連続鋳造鋳片 - Google Patents
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しかし、非特許文献1に記載されているように、Niはγ安定化元素であるため、Niを添加するとA3変態温度が低下するが、それに伴い、高温脆化温度域の低温側への拡大と、鋳片表面へのスケール固着による冷却特性の変化が起こり、連続鋳造時に表面割れが発生する場合があることが知られている。
しかし、鋼材成分によっては、特許文献1に示された連続鋳造工程を用いても、鋳片表面に割れが生じる場合があり、その発生を低減し、鋳片手入れ作業の負荷を軽減することが必要となっていた。
4/47.9×Ti+3/50.9×V+2/52.0×Cr+3/92.9×Nb+
2/95.9×Mo>2/58.7/20×Ni ・・・(1)
但し、式(1)において、元素記号は各元素の含有質量(%)を意味するものとする。
[2]更に、Ti、V、Cr、Nb、Mo、Nの含有量が、下記の式(2)を満たすことを特徴とする上記[1]に記載の耐表面割れ感受性に優れた高靭性鋼材用連続鋳造鋳片。
1.0≦(Ti/47.9+V/50.9+Cr/52.0+Nb/92.9+Mo/
95.9)/(N/14.0)≦2.0 ・・・(2)
但し、式(2)において、元素記号は各元素の含有質量(%)を意味するものとする。
その結果、Niが粒界偏析したSの近傍に存在すると、NiはFeに比べて電子が2個多いために、その電子がSの非占有軌道を占有する。しかし、Sが粒界近傍に複数個存在すると、S原子間の反結合軌道が占有され、S原子間に反発力が働き、粒界脆化が促進されることが分かった。つまり、連続鋳造時の表面割れがNi添加によって促進される事象は、この機構によるものと考えられる。
Cは、鋼製品である厚鋼板やH型鋼の母材の強度を確保するために0.02%以上必要である。Cが多過ぎると鋼製品の母材の靭性や溶接性を損なうので0.2%が上限である。
Siは、脱酸のために鋼に含有されるが、多過ぎると鋼製品の溶接性および靭性を劣化させるので上限を0.6%とする。また、Siは強度を向上させる元素であり、そのためには0.01%以上含有させることが必要である。
Niは、鋼材の強度、靭性を向上させるために添加する元素である、強度、靭性を向上させるために必要な添加量は0.2%以上である。5.0%を超えて過剰に添加すると、Niは高価な元素であるので、合金コストの観点から経済的に好ましくないため、5.0%が上限である。なお、Niの下限は、特許請求の範囲では、実施例で確認されている0.7%とした。
Alは、脱酸に重要な元素で、酸素濃度を充分下げるためには、少なくとも0.005%含有させることが必要である。一方、0.03%を超えて過剰に添加しても、脱酸の効果が小さいだけでなく、鋼材の強度、靭性を低下させる原因となる粗大な酸化物が多量に生成するので、上限を0.03%とする。
Nは、0.006%超となると鋼材の靭性を劣化させるため、0.006%以下とする。Nは不可避的に混入するものであり、下限は0.0001%である。
Vは、鋼材の強度向上に寄与する。その効果は、0.005%以上の場合に発現する。しかしながら、0.1%を超えて含有させると、鋼製品の溶接性が劣化するため、0.1%が上限である。
Nbは、鋼製品の母材の組織を微細化して靭性を向上させることに有効である。その効果を発現する下限は0.005%である。しかし、0.05%を超えると、鋳片表面割れが著しく発生したり、鋼製品の溶接性が劣化するため、0.05%が上限である。
Moは、鋼製品の母材の強度を向上させることに有効である。その効果を発現する下限は0.05%である。しかし、1%を超えると鋼製品の溶接性が劣化するため、1%が上限である。
ここでは、鋼を1400℃で600s保持した後に連続鋳造の冷却過程を模擬して1000〜700℃で引張試験(歪速度:5×10−3/s、雰囲気:Ar)を行い、絞り値が60%を下回る延性の低い場合には鋳片表面割れ感受性が高いと判断した。一方、絞り値が60%を超える延性の高い場合は鋳片表面割れ感受性が低いと判断した。
この判断基準は過去に多くの試験を行う中で見出された一般的な関係であり、実際の鋳片表面割れの発生傾向と一致することを確認している。
(4/47.9)×Ti+(3/50.9)×V+(2/52.0)×Cr+
(3/92.9)×Nb+(2/95.9)×Mo>(2/58.7/20)×Ni
・・・(1)
但し、式(1)において、各元素記号は、各元素の含有質量(%で表す)を意味するものとする。
1.0≦(Ti/47.9+V/50.9+Cr/52.0+Nb/92.9+
Mo/95.9)/(N/14.0)≦2.0 ・・・(2)
但し、式(2)において、各元素記号は、各元素の含有質量(%で表す)を意味するものとする。
手入れが必要と判断された場合にはさらに手入れを行った後に、鋳片を1250℃に加熱して厚板圧延によって80mm厚みの鋼板を製造した。この時の圧延終了時の温度は860℃であり、その後空冷によって冷却され、冷却後の熱処理は施されなかった。全ての鋼板が同一条件で製造された。
冷却後の各鋼板の板厚中心部について、2mmVノッチシャルピー試験を―40℃で実施し、3本の平均吸収エネルギーで靭性を評価した。
鋼15〜22は比較例であり、鋳片表面割れが発生した。
実施例の中でも、Ti、V、Cr、Nb、Mo、Nが式(2)を満たす鋼2、4、8、9は靭性に優れていた。
Claims (2)
- 質量%で、
C:0.02〜0.20%、
Si:0.01〜0.6%、
Mn:0.3〜2.5%、
Ni:0.7〜5.0%、
P:0.030%以下、
S:0.020%以下、
Al:0.005〜0.03%、
O:0.001〜0.005%、
N:0.0001〜0.006%
を含有し、更に、
Ti:0.0075〜0.02%、
V:0.005〜0.1%、
Cr:0.05〜1.0%、
Nb:0.005〜0.05%、
Mo:0.05〜1.0%
の1種または2種以上を含有し、残部がFeおよび不可避不純物からなり、かつ、Ti、V、Cr、Nb、Mo、Niの含有量が下記の式(1)を満たすことを特徴とする耐表面割れ感受性に優れた高靭性鋼材用連続鋳造鋳片。
4/47.9×Ti+3/50.9×V+2/52.0×Cr+3/92.9×Nb+
2/95.9×Mo>2/58.7/20×Ni ・・・(1)
但し、式(1)において、元素記号は各元素の含有質量(%)を意味するものとする。 - 更に、Ti、V、Cr、Nb、Mo、Nの含有量が、式(2)を満たすことを特徴とする請求項1に記載の耐表面割れ感受性に優れた高靭性鋼材用連続鋳造鋳片。
1.0≦(Ti/47.9+V/50.9+Cr/52.0+Nb/92.9+Mo/
95.9)/(N/14.0)≦2.0 ・・・(2)
但し、式(2)において、元素記号は各元素の含有質量(%)を意味するものとする。
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JP2012140959A JP5870860B2 (ja) | 2012-06-22 | 2012-06-22 | 耐表面割れ感受性に優れた高靭性鋼材用連続鋳造鋳片 |
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JP2005232513A (ja) * | 2004-02-18 | 2005-09-02 | Sumitomo Metal Ind Ltd | 高強度鋼板とその製造方法 |
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