以下、本発明の一実施形態について図面を参照しながら説明する。以下の図面の記載において、同一または類似の部分には同一または類似の符号で表している。但し、図面は模式的なものである。したがって、具体的な寸法などは以下の説明を照らし合わせて判断するべきものである。また、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることは勿論である。なお、以下の説明において、図面の上側を「上」、下側を「下」、左側を「左」、右側を「右」、紙面の手前側を「前」、奥側を「後」、という。
[圧力センサー]
図1ないし図13は、本発明に係る圧力センサーの一実施形態を示すためのものである。図1は、本発明に係る圧力センサーの一例を説明する斜視図である。図1に示すように、圧力センサー100は、複数の第1アクチュエーター10と、複数の第2アクチュエーター20と、を備える。
各第1アクチュエーター10は、帯状(テープ状)の形状を有しており、平面視において、互いに平行に、第1方向(図1において横方向または左右方向)に延びるように、配置されている。また、各第2アクチュエーター20も、同様に、帯状(テープ状)の形状を有しており、平面視において、互いに平行に、第1方向に直角に交差する第2方向(図1において縦方向または上下方向)に延びるように、配置されている。なお、図1では、第1方向の各行に左端から順番に番号を付与して第m行(但し、mは正の整数)をXmと表記するとともに、第2方向の各列に上端から順番に番号を付与して第n列(但し、nは正の整数)をYnと表記している。また、第1方向の第m行の第1アクチュエーターを10(Xm)と表記するとともに、第2方向の第n列の第2アクチュエーターを20(Yn)と表記している。
図2は、図1に示した第1アクチュエーター10の一例を説明する斜視図である。図2に示すように、第1アクチュエーター10は、電解質膜15と、電極11と、電極12と、を備える。なお、第2アクチュエーター20は、第1アクチュエーター10と同様に、電解質膜25と、電極21と、電極22と、を備える。よって、以下の説明では、特に明示した場合を除き、第1アクチュエーター10のみを説明し、第2アクチュエーター20はその説明を省略する。
電極11は、電解質膜15の第1面(図2において前面)に設けられ、電極12は、電解質膜15の第1面に対向する第2面(図2において後面)に設けられている。
電解質膜15は、例えば、イオン導電性の高分子電解質膜を使用することができ、より詳細には、例えば、フッ素樹脂系イオン交換膜を使用することができる。イオン交換膜としては、陽イオン交換膜、陰イオン交換膜のいずれも使用可能である。例えば、陽イオン交換膜としては、パーフルオロスルホン酸膜、パーフルオロカルボン酸膜を挙げることができる。
本実施形態では、電解質膜15として、例えば、パーフルオロスルホン酸膜(商品名「ナフィオン」、デュポン社登録商標)を使用している。また、電解質膜15の形状は、短辺が2[cm]、長辺が5[cm」、厚さが200[μm]〜1[mm]程度の長方形に形成されている。
なお、電解質膜15としてパーフルオロスルホン酸膜の例を示したが、これに限定されず、他の材料、例えば、パーフルオロカルボン酸膜(商品名「フレミオン」、旭化成(株)登録商標)など、イオン液をゲル化したもの等を使用することが可能である。また、電解質膜15の形状および寸法も同様に、前述した例に限定されるものではない。
電極11および12は、金、白金、イリジウム、パラジウム、ルテニウム、カーボンナノチューブなどを使用することができる。電極11および12の電解質膜15への接合には、化学メッキ、電気メッキ、真空蒸着、スパッタリング、塗布、圧着、溶着などが適宜に使用される。
本実施形態では、電極11および12は、電解質膜15に金メッキを施すことによって形成している。電解質膜15への金メッキは、まず、塩化ジクロロフェナントロリン金(III)[Au(phen)Cl2]Cl水溶液に浸潤し、イオン交換反応で金錯イオンを吸着させる。次に、吸着させた膜を亜硫酸ナトリウム(Na2SO3)水溶液に浸漬させ、還元して膜の内部に取り込まれた金イオンが外側に析出する。これによって膜の両面に金メッキを施すことが可能となる。メッキされる金の量は、一回のメッキ工程でメッキできる金の量は片面1〜2[mg/cm2]である。これを繰り返して所要の電極膜厚とする。例えば、4回〜8回程度メッキを繰り返すと、片面10[mg/cm2]程度の金が析出する。この場合、金層(電極)の膜厚はおおよそ1〜5[μm]程度である。
なお、電極11および12の材料は、前述した例に限定されるものではなく、他の材料を使用してもよい。また、電極11および12の電解質膜15への接合も同様に、前述した例に限定されるものではない。
第1アクチュエーター10の電解質膜15は、電界が与えられると変形する。電圧の印加によって電解質膜15が変形する理由は正確に解明されているわけではないが、概略、次のように説明することができる。
図3は、図1および図2に示した第1アクチュエーター10に電圧を印加した場合の動作を説明する説明図である。図3の左図に示すように、直流電源から第1アクチュエーター10の電極11および12にそれぞれ正電圧と負電圧とが印加されると、電解質膜15中の陽イオンは電極12側に移動する。この陽イオンの移動に伴って水分子(溶媒)も移動するので、電極12側の水分が相対的に増大し、電極11側の水分が相対的に減少する。このため、電解質膜15の正電極側と負電極側とでは、電解質膜15中の水分(溶媒)量に差が生じる。電解質膜15中の水分量が増えた側では電解質膜が膨らみ(膨潤し)、水分量が減った側では電解質膜が収縮するので、第1アクチュエーター10は電極11側(図3において左側)に湾曲して曲がる。
一方、図3の右図に示すように、直流電源から電極11および12にそれぞれ負電圧と正電圧とが印加されると、電解質膜15中の陽イオンは電極11側に移動する。この陽イオンの移動に伴って水分子(溶媒)も移動するので、電極11側の水分が相対的に増大し、電極11側の水分が相対的に減少する。このため、電解質膜15の正電極側と負電極側とでは、電解質膜15中の水分(溶媒)量に差が生じる。電解質膜15中の水分量が増えた側では電解質膜が膨らみ(膨潤し)、水分量が減った側では電解質膜が収縮するので、第1アクチュエーター10は電極12側(図3において右側)に湾曲して曲がる。
また、第1アクチュエーター10の電解質膜15は、力(外的応力)が加えられると電位差(電圧)が発生する。力を加えることによって電解質膜15に電圧が発生する理由は正確に解明されているわけではないが、概略、次のように説明することができる。
図4は、図1および図2に示した第1アクチュエーター10に力を加えた場合の動作を説明する説明図である。図4の左図に示すように、第1アクチュエーター10の電極12に外部から力(外的応力)が加わると、第1アクチュエーター10は左側に湾曲して曲がる。このとき、電解質膜15中の水分子(溶媒)は電極12側に移動する。この水分子(溶媒)の移動に伴って陽イオンも移動するので、電極12側の陽イオン密度が相対的に高くなり、電極11側の陽イオン密度が相対的に低くなる。このため、電解質膜15の電極12側と電極11側とでは、電解質膜15中の電位に差が生じ、第1アクチュエーター10の電極11および12がそれぞれ負電位と正電位になる電位差(電圧)が発生する。
一方、図4の右図に示すように、第1アクチュエーター10の電極11に外部から力(外的応力)が加わると、第1アクチュエーター10は右側に湾曲して曲がる。このとき、電解質膜15中の水分子(溶媒)は電極11側に移動する。この水分子(溶媒)の移動に伴って陽イオンも移動するので、電極11側の陽イオン密度が相対的に高くなり、電極12側の陽イオン密度が相対的に低くなる。このため、電解質膜15の電極11側と電極12側とでは、電解質膜15中の電位に差が生じ、第1アクチュエーター10の電極11および12がそれぞれ正電位と負電位になる電位差(電圧)が発生する。
図5は、図1および図2に示した第1アクチュエーター10に加える力と発生する電圧との関係を説明する説明図である。図5に示すように、第1アクチュエーター10の電極12に外部から力F0が加わると、第1アクチュエーター10は加えられた力F0に比例する変位量d0だけ下側に変位する。このとき、第1アクチュエーター10には、電極11および12がそれぞれ負電位と正電位となる電圧V0が発生する。図示を省略するが、同様に、第1アクチュエーター10の電極11に外部から力F0が加わると、第1アクチュエーター10は変位量d0だけ上側に変位する。このとき、第1アクチュエーター10には、電極11および12がそれぞれ正電位と負電位となる電圧V0が発生する。
図6は、図5に示した第1アクチュエーター10における変位量と電圧との関係を示すグラフである。なお、図6のグラフは、横軸が時間、左側の縦軸が電圧、右側の縦軸が変位量を示し、図5に示すように、電圧は電極11および12がそれぞれ正電位と負電位になる場合を正、変位量は第1アクチュエーター10が下側に変位する場合を正として表したものである。また、実線L1が電圧V0、破線L2が変位量d0を表している。電極12側および電極11側に、経時的に変化する力F0を交互に加える場合に、第1アクチュエーター10の変位量d0と、第1アクチュエーター10の電極11および12に発生する電圧V0とを測定すると、図6に示すようなグラフになる。図6に示すように、第1アクチュエーター10に発生する電圧V0は、そのレベルが第1アクチュエーター10の変位量d0に比例しており、第1アクチュエーター10の変位量d0の変化に応答する応答性を有していることが分かる。
図7は、金属板Aに設置した第1アクチュエーター10に加える圧力と発生する電圧との関係を説明する説明図である。図7に示すように、第1アクチュエーター10の電極11側を金属板Aの上に載置して固定した上で、第1アクチュエーター10の電極12の中央部に外部から圧力(力)F0が加わると、第1アクチュエーター10は上側に反って湾曲する。このとき、前述したように、第1アクチュエーター10の電極11および12がそれぞれ負電圧と正電圧になる電圧(電位差)が発生する。
図8は、図7に示した第1アクチュエーター10における圧力と電圧との関係を示すグラフである。なお、図8のグラフは、横軸が時間、左側の縦軸が電圧、右側の縦軸が圧力を示し、四角でプロットした実線L3が電圧V0、菱形でプロットした破線L4が圧力F0を表している。第1アクチュエーター10に所定時間の間、圧力F0を加えた後、加えていた圧力F0を取り除く場合に、第1アクチュエーター10の電極11および12に発生する電圧V0を測定すると、図8に示すようなグラフになる。図8に示すように、第1アクチュエーター10に発生する電圧V0は、そのレベルが圧力F0の大きさに比例しており、圧力F0の変化に応答する応答性を有していることが分かる。また、第1アクチュエーター10に発生する電圧V0は、圧力F0が加えられている間は発生し続け、圧力F0が除去されるとそのレベルがゼロになることが分かる。
このように、電解質膜15を有する第1アクチュエーター10および電解質膜25を有する第2アクチュエーター20は、軽量で、弾力性(弾性)を有し、密着性に優れ、加工が容易で、動作時(作動時)に振動がなく、圧力を加えると即座に応答して電圧(電位差)が発生し、圧力が続く限り信号(電圧)を出力して、圧力が取り除かれると信号(電圧)の出力が停止する、という特徴を有する。
図9は、図1に示した圧力センサー100の要部拡大斜視図である。図9に示すように、第1アクチュエーター10および第2アクチュエーター20は、例えば、第2アクチュエーター20が第1アクチュエーター10の上に積み重ねられるように、交差している。言い換えれば、第1アクチュエーター10が第2アクチュエーター20の下に、交差している。その結果、第1アクチュエーター10と第2アクチュエーター20とが交差する位置(交差位置)において、第1アクチュエーター10の電極12と第2アクチュエーター20の電極21を介して、第1アクチュエーター10の電解質膜15および第2アクチュエーター20の電解質膜25が積層され、積層構造体Sが形成される。
なお、図9では、第2アクチュエーター20が第1アクチュエーター10の上に交差する例を示したが、これに限定されない。圧力センサー100は、第1アクチュエーター10が第2アクチュエーター20の上に交差する、言い換えれば、第2アクチュエーター20が第1アクチュエーター10の下に交差することもある。この場合も同様に、第1アクチュエーター10と第2アクチュエーター20とが交差する交差位置において、第2アクチュエーター20の電極22および第1アクチュエーター10電極11を介して、第2アクチュエーター20の電解質膜25および第1アクチュエーター10の電解質膜15が積層され、積層構造体Sが形成される。
図1に示すように、各第1アクチュエーター10および各第2アクチュエーター20は、上下方向(高さ方向)に所定の順序(規則)で交差している。すなわち、例えば、第1方向の第1行の第1アクチュエーター10(X1)は、第2方向の第1列の第2アクチュエーター20(Y1)の下に交差するとともに、第2方向の第2列の第2アクチュエーター20(Y2)の上に交差している。このとき、第1行の第1アクチュエーター10(X1)の電極12と第1列の第2アクチュエーター20(Y1)の電極21とを介して第1行の第1アクチュエーター10(X1)の電解質膜15および第1列の第2アクチュエーター20(Y1)の電解質膜25が積層されるとともに、第1行の第1アクチュエーター10(X1)の電極11と第2列の第2アクチュエーター20(Y2)の電極22とを介して第1行の第1アクチュエーター10(X1)の電解質膜15および第2列の第2アクチュエーター20(Y2)の電解質膜25が積層される。一方、第2方向の第1列の第2アクチュエーター20(Y1)は、前述したように第1方向の第1行の第1アクチュエーター10(X1)の上に交差するとともに、第1方向の第2行の第1アクチュエーター10(X2)の下に交差している。このとき、第1列の第2アクチュエーター20(Y1)の電極21と第1行の第1アクチュエーター10(X1)の電極12とを介して第1列の第2アクチュエーター20(Y1)の電解質膜25および第1行の第1アクチュエーター10(X1)の電解質膜15が積層されるとともに、第1列の第2アクチュエーター20(Y1)の電極22と第2行の第1アクチュエーター10(X2)の電極11を介して第1列の第2アクチュエーター20(Y1)の電解質膜25および第2行の第1アクチュエーター10(X2)の電解質膜15が積層される。
また、例えば、第1方向の第2行の第1アクチュエーター10(X2)は、第2方向の第2列の第2アクチュエーター20(Y2)の下に交差するとともに、第2方向の第3列の第2アクチュエーター20(Y3)の上に交差している。このとき、第2行の第1アクチュエーター10(X2)の電極12と第2列の第2アクチュエーター20(Y2)の電極21とを介して第2行の第1アクチュエーター10(X2)の電解質膜15および第2列の第2アクチュエーター20(Y2)の電解質膜25が積層されるとともに、第2行の第1アクチュエーター10(X2)の電極11と第3列の第2アクチュエーター20(Y3)の電極22とを介して第2行の第1アクチュエーター10(X2)の電解質膜15および第3列の第2アクチュエーター20(Y2)の電解質膜25が積層される。一方、第2方向の第2列の第2アクチュエーター20(Y2)は、前述したように第1方向の第2行の第1アクチュエーター10(X2)の上に交差するとともに、第1方向の第3行の第1アクチュエーター10(X3)の下に交差している。このとき、第2列の第2アクチュエーター20(Y2)の電極21と第2行の第1アクチュエーター10(X2)の電極12とを介して第2列の第2アクチュエーター20(Y2)の電解質膜25および第2行の第1アクチュエーター10(X2)の電解質膜15が積層されるとともに、第2列の第2アクチュエーター20(Y2)の電極22と第3行の第1アクチュエーター10(X3)の電極11を介して第2列の第2アクチュエーター20(Y2)の電解質膜25および第3行の第1アクチュエーター10(X3)の電解質膜15が積層される。
このように、複数の第1アクチュエーター10のうちの一の第1アクチュエーター10は、当該一の第1アクチュエーター10における電極11および電極12のうちの一方と複数の第2アクチュエーター20のうちの一の第2アクチュエーター20における電極21および電極22のうちの一方とを介して当該一の第1アクチュエーター10の電解質膜15および前述の一の第2アクチュエーター20の電解質膜25が積層されるように、前述の一の第2アクチュエーター20の下に交差し、当該一の第1アクチュエーター10における電極11および電極12のうちの他方と複数の第2アクチュエーター20のうちの他の第2アクチュエーター20における電極21および電極22のうちの他方とを介して当該一の第1アクチュエーター10の電解質膜15および前述の他の第2アクチュエーター20の電解質膜25が積層されるように、前述の他の第2アクチュエーター20の上に交差し、前述の一の第1アクチュエーター10の上に交差する前述の一の第2アクチュエーター20は、当該一の第2アクチュエーター10における電極21および電極22のうちの他方と複数の第1アクチュエーター10のうちの他の第1アクチュエーター10における電極11および電極12のうちの他方とを介して当該一の第2アクチュエーター20の電解質膜25および前述の他の第1アクチュエーター10の電解質膜15が積層されるように、前述の他の第1アクチュエーター10の下に交差することにより、織物のようなシート状(布状)の構造を形成することが可能となり、加えられる力(応力)に対する強度が高められる。
また、複数の第1アクチュエーター10のそれぞれを第1方向に延びるように配置するとともに、複数の第2アクチュエーター20のそれぞれを第1方向と交差する第2方向に延びるように配置して、織物のようなシート状(布状)の構造を形成することで、圧力検出素子である第1アクチュエーター10および第2アクチュエーター20が二次元の所定領域内に配置される。
本実施形態では、第1方向および第2方向が互いに直交する例を示したが、これに限定されない。第1方向と第2方向が交差していればよい。また、第1アクチュエーター10および第2アクチュエーター20の数は、それぞれ複数であればよく、同一であっても異なっていてもよい。
ここで、圧力センサー100に圧力が加えられると、各第1アクチュエーター10および各第2アクチュエーター20に電圧が発生し、加えられる圧力を検出することが可能である。一方、第1アクチュエーター10および第2アクチュエーター20に発生する電圧V0は、例えば、2[mV]程度であり、最大でも数[mV]程度である。そのため、各第1アクチュエーター10および各第2アクチュエーター20に発生する電圧は、加えられる圧力を検出する信号(圧力検出信号)として、信号レベルが低いことがある。以上のことを考慮すると、圧力センサー100は、後述するように、複数の第1アクチュエーター10と複数の第2アクチュエーター20とがそれぞれ交差する交差位置において、積層される第1アクチュエーター10の電解質膜15および第2アクチュエーター20の電解質膜25に発生する電位差(電圧)を検出することが好ましい。
図10は、図9に示した積層構造体Sに加える圧力と発生する電圧との関係を説明する説明図である。図10に示すように、積層構造体Sの電極11側を金属板Aの上に載置して固定した上で、積層構造体Sの電極22の中央部に外部から圧力(力)F0が加わると、積層構造体Sは上側に反って湾曲する。このとき、第1アクチュエーター10には、電極11および12がそれぞれ負電圧と正電圧になる電圧V1が発生し、第2アクチュエーター20には、電極21および22がそれぞれ負電圧と正電圧になる電圧V2が発生する。
図11は、図7に示した第1アクチュエーター10と図10に示した積層構造体Sにおける電圧の関係を示すグラフである。なお、図11のグラフは、横軸が圧力、縦軸が電圧を示し、四角のプロットが図10に示した積層構造体Sに発生する電圧、菱形のプロットが図7に示した第1アクチュエーター10に発生する電圧、を表している。図11に示すように、加えられる圧力F0の全ての範囲において、積層構造体Sに発生する電圧(V1+V2)は、図7に示した単体の第1アクチュエーター10に発生する電圧V0より高いレベルであり、2倍または略2倍となることが分かる(V1+V2≒2×V0)。
図12は、図1に示した圧力センサー100に形成される積層構造体Sを説明する平面図である。なお、図12では、図1と同様に、第1方向の各行に左端から順番に番号を付与して第m行(但し、mは正の整数)をXmと表記するとともに、第2方向の各列に上端から順番に番号を付与して第n列(但し、nは正の整数)をYnと表記している。また、第m行第n列の交差位置の積層構造体をSmnと表記している。図12に示すように、各積層構造体Sは、各第1アクチュエーター10および各第2アクチュエーター20のそれぞれの交差位置に形成されている。各積層構造体Sの電位差(電圧)は、電解質膜15の下面および上面にそれぞれ設けられた電極11および22と電解質膜25の下面および上面にそれぞれ設けられた電極21および12とによって、検出することが可能である。よって、複数の第1アクチュエーター10と複数の第2アクチュエーター20とがそれぞれ交差する交差位置において、積層構造体Sの電位差、すなわち、積層される第1アクチュエーター10の電解質膜15および第2アクチュエーター20の電解質膜25の電位差(電圧)を検出することにより、加えられる圧力に対する検出信号(圧力検出信号)として、1つの電解質膜15を有する第1アクチュエーター10に発生する電圧より高いレベルの電圧を得ることが可能となる。
また、図1に示すように、複数の第1アクチュエーター10および複数の第2アクチュエーター20は、それぞれ上下方向に交互に交差する、すなわち、前述の一の第1アクチュエーター10と前述の他の第1アクチュエーター10とが隣り合い、前述の一の第2アクチュエーター20と前述の他の第2アクチュエーター20とが隣り合うように、配置されることが好ましい。これにより、複数の第1アクチュエーター10および複数の第2アクチュエーター20により形成されるシート状(布状)の構造において、加えられる力(応力)に対する強度をさらに高めることができる。
図1では、複数の第1アクチュエーター10および複数の第2アクチュエーター20は、それぞれ上下方向に交互に交差する例を示したが、これに限定されない。複数の第1アクチュエーター10および複数の第2アクチュエーター20は、織物のようなシート状(布状)の構造を形成するように、複数の第1アクチュエーター10のうちの一の第1アクチュエーター10が複数の第2アクチュエーター20のうちの一の第2アクチュエーター20の下に交差するとともに複数の第2アクチュエーター20のうちの他の第2アクチュエーター20の上に交差し、当該一の第2アクチュエーター20が複数の第1アクチュエーター10のうちの他の第1アクチュエーター10の下に交差していればよい。例えば、複数の第1アクチュエーター10および複数の第2アクチュエーター20は、複数本(複数個)ごとに上下方向に交差するようにしてもよいし、1つごと(交互)に交差する場合と複数本(複数個)ごとに交差する場合とを組み合わせてもよい。
図13は、図1に示した圧力センサー100の変形例を説明する平面図である。なお、図13では、図1と同様に、第1方向の各行に左端から順番に番号を付与して第m行(但し、mは正の整数)をXmと表記するとともに、第2方向の各列に上端から順番に番号を付与して第n列(但し、nは正の整数)をYnと表記している。また、第1方向の第m行の第1アクチュエーターを10(Xm)と表記するとともに、第2方向の第n列の第2アクチュエーターを20(Yn)と表記している。図13に示すように、圧力センサー100は、2つの第1補強部材30と、2つの第2補強部材40とをさらに備えるようにしてもよい。
各第1補強部材30は、例えば、繊維質材料で、帯状(テープ状)の形状を有し、複数の第1アクチュエーター10のうちの一の第1アクチュエーター10と複数の第1アクチュエーター10のうちの他の第1アクチュエーター10との間に、織り込まれている。すなわち、各第1補強部材30は第1方向に延びるように配置されており、例えば、第1行の第1アクチュエーター10(X1)と第2行の第1アクチュエーター10(X2)との間に配置されるとともに、第2行の第1アクチュエーター10(X2)と第3行の第1アクチュエーター10(X3)との間に配置される。これにより、複数の第1アクチュエーター10および複数の第2アクチュエーター20により形成されるシート状(布状)の構造において、第1補強部材30によって第1方向の強度を補強することが可能となり、加えられる力(応力)に対する強度をさらに高めることができる。
図13では、圧力センサー100が2つの第1補強部材30を備える例を示したが、これに限定されない。第1補強部材30は、1つであってもよいし、3つ以上の複数であってもよい。また、第1補強部材30は、複数の第1アクチュエーター10の一部の間にのみ配置してもよいし、複数の第1アクチュエーター10の全ての間に配置してもよいし、複数の第1アクチュエーター10の間に所定の間隔で配置してもよい。
各第2補強部材40は、例えば、繊維質材料であり、例えば、繊維質材料で、帯状(テープ状)の形状を有し、複数の第2アクチュエーター20のうちの一の第2アクチュエーター20と複数の第2アクチュエーター20のうちの他の第2アクチュエーター20との間に、織り込まれている。すなわち、各第2補強部材40は第2方向に延びるように配置されており、例えば、第1列の第2アクチュエーター20(Y1)と第2列の第2アクチュエーター20(Y2)との間に配置されるとともに、第2列の第2アクチュエーター20(Y2)と第3列の第2アクチュエーター20(Y3)との間に配置される。これにより、複数の第1アクチュエーター10および複数の第2アクチュエーター20により形成されるシート状(布状)の構造において、第2補強部材40によって第2方向の強度を補強することが可能となり、加えられる力(応力)に対する強度をさらに高めることができる。
図13では、圧力センサー100が2つの第2補強部材40を備える例を示したが、これに限定されない。第2補強部材40は、1つであってもよいし、3つ以上の複数であってもよい。また、第2補強部材40は、複数の第2アクチュエーター20の一部の間にのみ配置してもよいし、複数の第2アクチュエーター20の全ての間に配置してもよいし、複数の第2アクチュエーター20の間に所定の間隔で配置してもよい。
また、図13では、圧力センサー100が第1補強部材30および第2補強部材40の両方を備える例を示したが、これに限定されない。圧力センサー100は、第1補強部材30および第2補強部材40のいずれか一方のみを備えるようにしてもよい。また、第1補強部材30および第2補強部材40は、それぞれ異なる数であってもよい。また、第1補強部材30および第2補強部材40は、上下方向(高さ方向)に所定の順序(規則)で交差することが好ましく、図13に示すように、上下方向に交互に交差することがさらに好ましい。さらに、第1補強部材30および第2補強部材40は、それぞれ、複数の第1アクチュエーター10および複数の第2アクチュエーター20とも上下方向に交差することが好ましく、図13に示すように、交互に交差することがさらに好ましい。
このように、本実施形態の圧力センサー100によれば、複数の第1アクチュエーター10のうちの一の第1アクチュエーター10は、当該一の第1アクチュエーター10における電極11および電極12のうちの一方と複数の第2アクチュエーター20のうちの一の第2アクチュエーター20における電極21および電極22のうちの一方とを介して当該一の第1アクチュエーター10の電解質膜15および前述の一の第2アクチュエーター20の電解質膜25が積層されるように、前述の一の第2アクチュエーター20の下に交差するとともに、当該一の第1アクチュエーター10における電極11および電極12のうちの他方と複数の第2アクチュエーター20のうちの他の第2アクチュエーター20における電極21および電極22のうちの他方とを介して当該一の第1アクチュエーター10の電解質膜15および前述の他の第2アクチュエーター20の電解質膜25が積層されるように、前述の他の第2アクチュエーター20の上に交差する。また、前述の一の第1アクチュエーター10の上に交差する前述の一の第2アクチュエーター20は、当該一の第2アクチュエーター10における電極21および電極22のうちの他方と複数の第1アクチュエーター10のうちの他の第1アクチュエーター10における電極11および電極12のうちの他方とを介して当該一の第2アクチュエーター20の電解質膜25および前述の他の第1アクチュエーター10の電解質膜15が積層されるように、前述の他の第1アクチュエーター10の下に交差する。これにより、織物のようなシート状(布状)の構造を形成することが可能となり、加えられる力(応力)に対する強度が高められる。したがって、電解質膜15を有する第1アクチュエーター10および電解質膜25を有する第2アクチュエーター20を用いて、加えられる力に対する強度を高めることができる。
また、複数の第1アクチュエーター10のそれぞれを第1方向に延びるように配置するとともに、複数の第2アクチュエーター20のそれぞれを第1方向と交差する第2方向に延びるように配置して、織物のようなシート状(布状)の構造を形成することで、圧力検出素子である第1アクチュエーター10および第2アクチュエーター20が二次元の所定領域内に配置される。したがって、圧力センサー100に所定の広がりをもった二次元の圧力が加えられる場合に、二次元の圧力に対する分布(圧力分布)を得ることができる。さらに、こうして得られた圧力分布は、二次元の圧力を加える対象物との間の滑り(ズレ)、当該対象物の硬さや重さなどの情報を得るのに利用することができる。
さらに、電解質膜15を有する第1アクチュエーター10および電解質膜25を有する第2アクチュエーター20は、軽量で、弾力性(弾性)を有し、密着性に優れ、加工が容易で、動作時(作動時)に振動がなく、圧力が加わると即座に応答して電圧(電位差)生じ、圧力が続く限り信号(電圧)を出力して、圧力が取り除かれると信号(電圧)の出力が停止する、という特徴を有する。したがって、複数の第1アクチュエーター10および複数の第2アクチュエーター20を備える本発明の圧力センサー100は、これらの特徴のうち少なくとも1つを要件とする用途に、好適に適用することができる。
また、本実施形態の圧力センサー100によれば、複数の第1アクチュエーター10と複数の第2アクチュエーター20とがそれぞれ交差する交差位置において、積層される第1アクチュエーター10の電解質膜15および第2アクチュエーター20の電解質膜25の電位差(電圧)が検出される。これにより、加えられる圧力に対する検出信号(圧力検出信号)として、1つの電解質膜15を有する第1アクチュエーター10に発生する電圧より高いレベルの電圧を得ることが可能となる。したがって、電解質膜15を有する第1アクチュエーター10および電解質膜25を有する第2アクチュエーター20を用いて、加えられる圧力に対する検出信号のレベルを高めることができ、圧力に対する検出感度を高めることができる。
また、本実施形態の圧力センサー100によれば、複数の第1アクチュエーター10および複数の第2アクチュエーター20は、前述の一の第1アクチュエーター10と前述の他の第1アクチュエーター10とが隣り合い、前述の一の第2アクチュエーター20と前述の他の第2アクチュエーター20とが隣り合うように、配置される。これにより、複数の第1アクチュエーター10および複数の第2アクチュエーター20により形成されるシート状(布状)の構造において、加えられる力(応力)に対する強度をさらに高めることができる。
また、本実施形態の圧力センサー100によれば、第1補強部材30が、複数の第1アクチュエーター10のうちの一の第1アクチュエーター10と複数の第1アクチュエーター10のうちの他の第1アクチュエーター10との間に、第1方向に延びるように配置される。これにより、複数の第1アクチュエーター10および複数の第2アクチュエーター20により形成されるシート状(布状)の構造において、第1補強部材30によって第1方向の強度を補強することが可能となり、加えられる力(応力)に対する強度をさらに高めることができる。
また、本実施形態の圧力センサー100によれば、第2補強部材40が、複数の第2アクチュエーター20のうちの一の第2アクチュエーター20と複数の第2アクチュエーター20のうちの他の第2アクチュエーター20との間に、第2方向に延びるように配置される。これにより、複数の第1アクチュエーター10および複数の第2アクチュエーター20により形成されるシート状(布状)の構造において、第2補強部材40によって第2方向の強度を補強することが可能となり、加えられる力(応力)に対する強度をさらに高めることができる。
[ロボットハンド]
図14は、本発明に係るロボットハンドの一実施形態を示すためのものであり、同図は、本発明に係るロボットハンドの一例を説明する概略側面図である。なお、前述した本発明に係る圧力センサーの実施形態と同一構成部分は同一符号をもって表し、その説明を省略する。また、図示しない構成部分は、前述した本発明に係る圧力センサーの実施形態と同様とする。
前述した本発明に係る圧力センサー100は、例えば、対象物(図示量略)を把持するロボットハンドに好適に適用することができる。すなわち、図14に示すように、ロボットハンド200は、アーム部110と、前述した本発明に係る圧力センサー100を含むハンド部150と、を備える。
ハンド部150は、屈曲可能な関節部151を有しており、対象物が接触可能な範囲、例えば、先端部から関節部151を含むハンド部150の表面に、シート状(布状)に形成された前述した本発明に係る圧力センサー100が設けられている。
圧力センサー100は、ハンド部150が対象物を把持したときの圧力を検出し、検出した信号(圧力検出信号)を制御部(図示省略)に出力する。制御部は、入力された圧力検出信号に基づいて、ロボットハンド200の動作を制御する。このように、本実施形態の圧力センサー100は、ロボットハンド200の触覚センサーとして使用される。
一般に、ロボットハンド200の触覚センサーは、軽量で、弾力性(弾性)を有し、密着性に優れ、加工が容易で、動作時(作動時)に振動がなく、圧力が加わると即座に応答して信号を生じ、圧力が続く限り信号を出力して、圧力が取り除かれると信号の出力が停止する、という特徴を有することが好ましい。
ここで、ハンド部150が対象物を把持すると、対象物からハンド部150に所定の広がりをもった二次元の圧力が加えられるので、ハンド部150に設けられた圧力センサー100は二次元の圧力に対する圧力分布を得ることができる。
本実施形態では、圧力センサー100をハンド部150に設ける例を示したが、これに限定されない。圧力センサー100は、アーム部110の可動部分、例えば、肘関節に相当する部分に設けるようにしてもよい。
また、図14では、説明の簡略化のため、圧力センサー100のみを備えるロボットハンド200の例を示したが、これに限定されさない。ロボットハンド200が、例えば、近接センサー、六軸力センサー、トルクセンサー、など各種のセンサーを、これらのセンサー情報に基づいて、ロボットハンド200の動作を制御するようにしてもよい。
このように、本実施形態におけるロボットハンド200によれば、前述した本発明に係る圧力センサー100を備える。これにより、本発明に係る圧力センサー100は、加えられる力に対する強度を高めることができるので、圧力の検出位置(検出場所)、例えば、アーム部110や関節部151が、動いたり、曲がったりするロボットハンド200を容易に実現(構成)することができる。
ここで、ハンド部150が対象物を把持すると、対象物からハンド部150に所定の広がりをもった二次元の圧力が加えられるので、ハンド部150に設けられた圧力センサー100は二次元の圧力に対する圧力分布を得ることができる。また、こうして得られた圧力分布を利用して、把持する対象物との間の滑り(ズレ)、当該対象物の硬さや重さなどの情報を検出するロボットハンド200を実現することができる。
一般に、ロボットハンド200の触覚センサーは、軽量で、弾力性(弾性)を有し、密着性に優れ、加工が容易で、動作時(作動時)に振動がなく、圧力が加わると即座に応答して信号を生じ、圧力が続く限り信号を出力して、圧力が取り除かれると信号の出力が停止する、という特徴を有することが好ましい。本発明に係る圧力センサー100が備える複数の第1アクチュエーター10および複数の第2アクチュエーター20のそれぞれは、これらの特徴を有するので、理想的な(最適な)触覚センサーを有するロボットハンド200を実現(構成)することができる。
なお、前述した実施形態の構成を組み合わせたり、あるいは、一部の構成部分を入れ替えたりしてもよい。また、本発明の構成は、前述した実施形態のみに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加えてもよい。