以下、本発明の実施の形態について図面を用いて説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。
無線基地局装置は、自らの形成するセルおよび周辺セルについての情報、すなわち無線信号の周波数および周辺セルのID(identification)等を無線端末装置に通知する。無線端末装置は、無線基地局装置から通知された情報に基づいて、周辺セルの検出および測定を行なう。無線端末装置は、この測定結果に基づいて、周辺セルへの移動を開始する。ここで、無線端末装置の「移動」とは、ハンドオーバを意味することに加えて、アイドル状態の無線端末装置が今後通信を開始する、すなわち通話またはデータ通信を開始する際にどのセルを介して通信を行なうかを選択することを意味する。
たとえば、無線端末装置が無線基地局装置と通信しているときには、無線端末装置の移動先は無線基地局装置またはコアネットワークにおける上位装置が決定する。また、たとえば、無線端末装置が無線基地局装置と通信していないときには、無線端末装置の移動先は無線端末装置が決定する。
また、ハンドオーバとは、通話中またはデータ通信中の無線端末装置の通信相手となる無線基地局装置が切り替えられることを意味する。
また、無線端末装置がセルに在圏している、とは、無線端末装置が、当該セルを形成する無線基地局装置を通信先として選択し、かつ当該無線基地局装置と通信可能な状態または通信中である状態を意味する。
フェムトセルおよびアクセスモードは、3GPP(Third Generation Partnership Project) SPEC TS22.220において以下のように説明されている。すなわち、フェムト基地局は、無線インタフェースを介して接続されている無線端末装置を、IPバックホール(backhaul)を用いて、移動通信事業者網に接続する顧客構内装置である。
また、フェムトセルのアクセスモードにおいて、クローズドアクセスモードのフェムト基地局は、関連するCSG(Closed Subscriber Group)メンバーにのみサービスを提供する。また、ハイブリッドモードのフェムト基地局は、関連するCSGメンバーおよびCSGノンメンバーにサービスを提供する。また、オープンアクセスモードのフェムト基地局は、通常の基地局として動作する。
本発明の実施の形態に係る通信システムにおいても、このような3GPPの定義を適用してもよい。
また、上記定義と合わせて、あるいは別個に、以下のような定義を適用することも可能である。
マクロ基地局およびピコ基地局は、事業者の管理下にあり、事業者と契約している無線基地局装置が通信可能な無線基地局装置である。また、マクロ基地局およびピコ基地局は、基本的に電源がオフになることはないと考えられる。
また、フェムト基地局は、主に個人または法人の建物内に設置され、ユーザの事情により移動するまたは電源がオフとなる可能性がある無線基地局装置である。
また、フェムト基地局は、オープン/ハイブリッド/クローズドのいずれかのアクセスモードで動作する。フェムト基地局は、クローズドアクセスモードで動作する場合には、登録済みのメンバー(端末)のみ接続可能となる。また、クローズドアクセスモードで動作する場合には、登録済みのメンバーにのみサービスを提供する。また、ハイブリッドモードで動作する場合には、登録済みのメンバー、および未登録のメンバーすなわちノンメンバーの両方にサービスを提供する。また、オープンアクセスモードで動作する場合には、マクロ基地局およびピコ基地局と同じ動作をする。
[構成および基本動作]
図1は、本発明の実施の形態に係る通信システムの構成を示す図である。
図1を参照して、通信システム401は、たとえば3GPPで規格化されたLTE(Long Term Evolution)に従う移動体通信システムであり、無線基地局装置101A,101Bを備える。図1では、2つの無線基地局装置を代表的に示しているが、さらに多数の無線基地局装置が設けられてもよい。通信システム401は、さらに、コアネットワーク301に設けられたS−GW(Serving Gateway)161と、MME(Mobility Management Entity)162と、P−GW(Packet Data Network Gateway)163とを含む。
無線端末装置202は、無線基地局装置101Aまたは無線基地局装置101Bと、S−GW161と、P−GW163と、ルータ171〜173とを介してIP網302におけるサーバ174と通信コネクションを確立し、たとえばIP(Internet Protocol)パケットを含む通信データを送受信する。IP網302では、経由するルータの数に応じてIPパケットの伝送遅延時間が増大する。
より詳細には、無線基地局装置101A,101Bは、無線信号を無線端末装置202と送受信することにより、無線端末装置202との通信を行なう。
S−GW161は、無線基地局装置101A,101BとIP網302との間に接続されている。S−GW161は、無線基地局装置101A,101B経由で無線端末装置202から受信した通信データをP−GW163経由でIP網302へ送信するとともに、IP網302におけるサーバ174からルータ171〜173およびP−GW163経由で受信した通信データを無線基地局装置101A,101B経由で無線端末装置202へ送信する。
MME162は、通信システム401における無線基地局装置101A,101B、および無線端末装置202等を管理する。MME162は、無線基地局装置101A,101Bとの間で制御メッセージを送受信する。
無線基地局装置101A,101Bは、S−GW161およびP−GW163を介してIP網302との間で通信データを送受信する。
無線基地局装置101A,101BおよびS−GW161は、論理的なインタフェースであるS1−Uインタフェースに従う通信データを互いに送受信することにより、S1−Uインタフェース経由で種々の情報を互いにやり取りする。
無線基地局装置101A,101BおよびMME162は、点線で示すように、論理的なインタフェースであるS1−MMEインタフェースに従う通信データを互いに送受信することにより、S1−MMEインタフェース経由で種々の情報を互いにやり取りする。
MME162およびS−GW161は、論理的なインタフェースであるS11インタフェースに従う通信データを互いに送受信することにより、S11インタフェース経由で種々の情報を互いにやり取りする。
S−GW161およびP−GW163は、論理的なインタフェースであるS5インタフェースに従う通信データを互いに送受信することにより、S5インタフェース経由で種々の情報を互いにやり取りする。
図2は、本発明の実施の形態に係る通信システムにおいてハンドオーバ動作が行なわれる状況の一例を示す図である。
図2を参照して、無線基地局装置101A,101Bは、たとえばフェムト基地局、ピコ基地局またはマクロ基地局である。
無線基地局装置101Aは、セルCAを形成し、セルCA内に存在する無線端末装置202と無線信号を送受信することにより、当該無線端末装置202と通信することが可能である。無線基地局装置101Bは、セルCBを形成し、セルCB内に存在する無線端末装置202と無線信号を送受信することにより、当該無線端末装置202と通信することが可能である。
ここで、無線端末装置202からコアネットワーク301への方向を上り方向と称し、コアネットワーク301から無線端末装置202への方向を下り方向と称する。
また、無線端末装置202と通信中の無線基地局装置またはハンドオーバ元の無線基地局装置をサービング基地局とも称し、ハンドオーバ先の無線基地局装置をターゲット基地局とも称する。以下、無線基地局装置101Aがサービング基地局であり、無線基地局装置101Bがターゲット基地局である場合について説明する。
本発明の実施の形態に係る通信システムにおける無線基地局装置および無線端末装置は、以下の各シーケンスの各ステップを含むプログラムを図示しないメモリから読み出して実行する。このプログラムは、外部からインストールすることができる。このインストールされるプログラムは、たとえば記録媒体に格納された状態で流通する。
本発明の実施の形態に係る無線基地局装置では、ハンドオーバ動作の実行判断に電力測定処理(Measurement)を利用する。この電力測定処理は、たとえば3GPPでは、レイヤ3スタックのRRC(Radio Resource Control)に対応する。
電力測定処理には、たとえば、周期的電力測定処理(Periodic Measurement)およびイベント起動電力測定処理(Event Triggered Measurement)の2種類がある。イベント起動電力測定処理における測定結果通知の送信は、無線端末装置202における電波環境が所定条件を満たしたことによって開始される。
たとえば3GPPでは、周期的電力測定処理の報告周期は120ミリ秒〜60分で設定可能あり、イベント起動電力測定処理の報告周期は0〜5120ミリ秒で設定可能であるが、”TS36.508”および”TS36.523”において推奨値として記載されているように、測定結果の報告周期の最短時間は、イベントA1の256ミリ秒であり、それほど短くない。
図3は、本発明の実施の形態に係る通信システムにおけるハンドオーバ動作およびデータフォワーディング動作のシーケンスの一例を示す図である。
ここでは、図2に示すように、無線端末装置202が、セルCA内に位置し、無線基地局装置101Aと通信中である状態から、セルCAおよびセルCBの重複領域へ移動した場合を想定する。また、基地局−基地局間の論理インタフェースであるX2インタフェースが無線基地局装置101Aおよび無線基地局装置101B間で用いられない場合について説明する。
図3を参照して、まず、無線基地局装置101Aおよび無線端末装置202間でRRCコネクションが確立している状態において、無線基地局装置101Aは、自己および他の無線基地局装置から送信される無線信号の受信電力を無線端末装置202に測定させるための指示を含むRRCコネクション再構成指示(RRC Connection Reconfiguration)を無線端末装置202へ送信する。このRRCコネクション再構成指示には、周辺セル情報、すなわち測定対象となる無線基地局装置のセルIDが含まれる。また、この測定開始要求には、各無線基地局装置の送信周波数が含まれる(ステップS1)。
次に、無線端末装置202は、無線基地局装置101Aから測定開始要求を受信して、電力測定処理を開始する、すなわち受信した測定開始要求の示す周波数において、測定開始要求の示す無線基地局装置から送信される無線信号の受信電力を測定する。ここでは、無線端末装置202は、イベント起動電力測定処理を行なうものとする。
そして、無線端末装置202は、たとえば、受信電力の測定を定期的に行ない、無線基地局装置101Aとの通信状態が悪くなった場合、および無線基地局装置101A以外の他の無線基地局装置との通信状態が良くなった場合に、受信電力の測定結果を示す測定結果通知(Measurement Report)を無線基地局装置101Aへ送信する(ステップS2)。
次に、無線基地局装置101Aは、無線端末装置202から受信した測定結果通知に基づいて、当該無線端末装置202のハンドオーバ動作を実行すべきか否かを判断し、ハンドオーバ動作を実行すべきであると判断すると、周辺セル情報を参照してたとえば無線基地局装置101Bをハンドオーバ先として決定する(ステップS3)。
次に、無線基地局装置101Aは、無線基地局装置101Bを示すハンドオーバ要求をMME162へ送信する(ステップS4)。
次に、MME162は、無線基地局装置101Aからハンドオーバ要求を受信して、無線基地局装置101Bへ当該ハンドオーバ要求を送信する(ステップS5)。
次に、無線基地局装置101Bは、無線基地局装置101Aからハンドオーバ要求を受信して、RRCコネクション確立処理を行ない(ステップS6)、MME162へ当該ハンドオーバ要求に対するハンドオーバ応答を送信する(ステップS7)。
次に、MME162は、無線基地局装置101Bからハンドオーバ応答を受信して、無線基地局装置101Aへハンドオーバ指示を送信する(ステップS8)。
次に、無線基地局装置101Aは、MME162からハンドオーバ指示を受信して、無線端末装置202へハンドオーバ指示を含むRRCコネクション再構成指示(RRC Connection Reconfiguration)を送信する(ステップS9)。
次に、無線基地局装置101Aは、MME162へ自己の通信状態等を示す状態通知を送信する。この状態通知に、データフォワーディングにおいて、ターゲット基地局である無線基地局装置101Bが転送パケットを処理するための、パケットのシリアル番号等の情報が含まれる(ステップS10)。
次に、MME162は、無線基地局装置101Aから受信した状態通知の内容を含む、無線端末装置202との通信内容等を示す状態通知を無線基地局装置101Bへ送信する(ステップS11)。
そして、無線基地局装置101Aは、S1インタフェース経由のデータフォワーディングを開始する、すなわち、自己に蓄積されているかまたはS−GW161から新たに受信する当該無線端末装置202宛のパケットである対象パケットをS−GW161経由で無線基地局装置101Bへ転送する(ステップS12およびステップS13)。以下、このようにS1インタフェースを用いる転送動作をインダイレクトデータフォワーディングとも称する。
次に、無線端末装置202および無線基地局装置101B間でRRCコネクションが確立されると、無線端末装置202は、無線基地局装置101BへRRCコネクション再構成完了通知(RRC Connection Reconfiguration Complete)を送信する(ステップS14)。
次に、無線基地局装置101Bは、無線端末装置202からRRCコネクション再構成完了通知を受信して、無線基地局装置101Aから転送されたパケットを無線端末装置202へ送信する。ここで、無線基地局装置101Bは、無線基地局装置101Aから受信した状態通知の示すシリアル番号等を用いて、パケットの順序制御を行なう(ステップS15)。
また、無線端末装置202は、無線基地局装置101Bへパケットを送信し、無線基地局装置101Bは、当該パケットをS−GW161へ送信する(ステップS16)。
また、無線基地局装置101Bは、無線端末装置202からRRCコネクション再構成完了通知を受信して、MME162へハンドオーバ完了通知を送信し(ステップS17)、RRCコネクションが確立する(ステップS18)。このハンドオーバ完了通知に、S−GW161に対するパス切り替え要求が含まれる。
次に、MME162は、無線基地局装置101Bからハンドオーバ完了通知を受信して、上記パス切り替え要求を含むベアラ変更要求をS−GW161へ送信する(ステップS19)。
次に、S−GW161は、MME162からベアラ変更要求を受信して、パスの切り替え処理を行なう、すなわち、当該無線端末装置202宛の対象パケットの送信先を無線基地局装置101Aから無線基地局装置101Bへ切り替える(ステップS20)。
次に、S−GW161は、ベアラ変更要求に対する、パス切り替え応答を含むベアラ変更応答をMME162へ送信する(ステップS21)。
次に、S−GW161は、エンドマーカが付された対象パケットを無線基地局装置101Aへ送信する(ステップS22)。
そして、S−GW161は、対象パケットの無線基地局装置101Aへの送信を終了し、対象パケットの無線基地局装置101Bへの送信を開始する(ステップS23)。
次に、無線基地局装置101Bは、無線基地局装置101Aを経由していないS−GW161からの対象パケットの無線端末装置202への送信を保留し、蓄積しておく(ステップS24)。
次に、無線基地局装置101Aは、S−GW161から受信したエンドマーカ付きの対象パケットをS−GW161経由で無線基地局装置101Bへ転送する。無線基地局装置101Aは、無線基地局装置101Bへ転送する対象パケットの最後を、このエンドマーカ付きの対象パケットとする(ステップS25およびステップS26)。
次に、無線基地局装置101Bは、無線基地局装置101Aからエンドマーカ付きの対象パケットを受信して、無線基地局装置101Aによる自己へのデータフォワーディングが完了したことを認識する。そして、無線基地局装置101Bは、無線基地局装置101Aから転送された対象パケットをすべて無線端末装置202へ送信した後、蓄積していたS−GW161からの対象パケットの無線端末装置202への送信を開始する(ステップS27)。
また、MME162は、S−GW161からベアラ変更応答を受信して、端末情報解放指示を無線基地局装置101Aへ送信する(ステップS28)。
次に、無線基地局装置101Aは、MME162から端末情報解放指示を受信して、無線端末装置202に関する情報を解放し(ステップS29)、MME162へ端末情報解放完了通知を送信し(ステップS30)、RRCアイドル状態となる(ステップS31)。
図4は、本発明の実施の形態に係る通信システムにおけるハンドオーバ動作およびデータフォワーディング動作のシーケンスの一例を示す図である。
ここでは、図2に示すように、無線端末装置202が、セルCA内に位置し、無線基地局装置101Aと通信中である状態から、セルCAおよびセルCBの重複領域へ移動した場合を想定する。また、基地局−基地局間の論理インタフェースであるX2インタフェースが無線基地局装置101Aおよび無線基地局装置101B間で用いられる場合について説明する。
図4を参照して、ステップS41〜ステップS43の動作は、図3に示すステップS1〜ステップS3の動作と同様である。
次に、無線基地局装置101Aは、無線基地局装置101Bを示すハンドオーバ要求を無線基地局装置101Bへ送信する(ステップS44)。
次に、無線基地局装置101Bは、無線基地局装置101Aからハンドオーバ要求を受信して、RRCコネクション確立処理を行ない(ステップS45)、無線基地局装置101Aへ当該ハンドオーバ要求に対するハンドオーバ応答を送信する(ステップS46)。
次に、無線基地局装置101Aは、無線基地局装置101Bからハンドオーバ応答を受信して、無線端末装置202へハンドオーバ指示を含むRRCコネクション再構成指示を送信する(ステップS47)。
次に、無線基地局装置101Aは、無線基地局装置101Bへ自己の通信状態等を示す状態通知を送信する。この状態通知に、データフォワーディングにおいて、ターゲット基地局である無線基地局装置101Bが転送パケットを処理するための、パケットのシリアル番号等の情報が含まれる(ステップS48)。
そして、無線基地局装置101Aは、X2インタフェース経由のデータフォワーディングを開始する、すなわち、自己に蓄積されているかまたはS−GW161から新たに受信する当該無線端末装置202宛のパケットである対象パケットを無線基地局装置101Bへ転送する(ステップS49)。以下、このようにX2インタフェースを用いる転送動作をダイレクトデータフォワーディングとも称する。
次に、無線端末装置202および無線基地局装置101B間でRRCコネクションが確立されると、無線端末装置202は、無線基地局装置101BへRRCコネクション再構成完了通知を送信する(ステップS50)。
次に、無線基地局装置101Bは、無線端末装置202からRRCコネクション再構成完了通知を受信して、無線基地局装置101Aから転送されたパケットを無線端末装置202へ送信する。ここで、無線基地局装置101Bは、無線基地局装置101Aから受信した状態通知の示すシリアル番号等を用いて、パケットの順序制御を行なう(ステップS51)。
また、無線端末装置202は、無線基地局装置101Bへパケットを送信し、無線基地局装置101Bは、当該パケットをS−GW161へ送信する(ステップS52)。
また、無線基地局装置101Bは、無線端末装置202からRRCコネクション再構成完了通知を受信して、MME162へハンドオーバ完了通知を送信し(ステップS53)、RRCコネクションが確立する(ステップS54)。このハンドオーバ完了通知に、S−GW161に対するパス切り替え要求が含まれる。
次に、MME162は、無線基地局装置101Bからハンドオーバ完了通知を受信して、上記パス切り替え要求を含むベアラ変更要求をS−GW161へ送信する(ステップS55)。
次に、S−GW161は、MME162からベアラ変更要求を受信して、パスの切り替え処理を行なう、すなわち、当該無線端末装置202宛の対象パケットの送信先を無線基地局装置101Aから無線基地局装置101Bへ切り替える(ステップS56)。
次に、S−GW161は、ベアラ変更要求に対する、パス切り替え応答を含むベアラ変更応答をMME162へ送信する(ステップS57)。
次に、S−GW161は、エンドマーカが付された対象パケットを無線基地局装置101Aへ送信する(ステップS58)。
そして、S−GW161は、対象パケットの無線基地局装置101Aへの送信を終了し、対象パケットの無線基地局装置101Bへの送信を開始する(ステップS59)。
次に、無線基地局装置101Bは、無線基地局装置101Aを経由していないS−GW161からの対象パケットの無線端末装置202への送信を保留し、蓄積しておく(ステップS60)。
次に、無線基地局装置101Aは、S−GW161から受信したエンドマーカ付きの対象パケットを無線基地局装置101Bへ転送する。無線基地局装置101Aは、無線基地局装置101Bへ転送する対象パケットの最後を、このエンドマーカ付きの対象パケットとする(ステップS61)。
次に、無線基地局装置101Bは、無線基地局装置101Aからエンドマーカ付きの対象パケットを受信して、無線基地局装置101Aによる自己へのデータフォワーディングが完了したことを認識する。そして、無線基地局装置101Bは、無線基地局装置101Aから転送された対象パケットをすべて無線端末装置202へ送信した後、蓄積していたS−GW161からの対象パケットの無線端末装置202への送信を開始する(ステップS62)。
また、MME162は、S−GW161からベアラ変更応答を受信して、当該ベアラ変更応答を無線基地局装置101Bへ送信する(ステップS63)。
無線基地局装置101Bは、MME162からベアラ変更応答を受信して、端末情報解放指示を無線基地局装置101Aへ送信する(ステップS64)。
次に、無線基地局装置101Aは、無線基地局装置101Bから端末情報解放指示を受信して、無線端末装置202に関する情報を解放し(ステップS65)、無線基地局装置101Bへ端末情報解放完了通知を送信し(ステップS66)、RRCアイドル状態となる(ステップS67)。
次に、データフォワーディングがパケットの伝送遅延に与える影響について説明する。
図5は、本発明の実施の形態に係る通信システムにおけるハンドオーバ動作中の下りパケットの流れを示す図である。
図5を参照して、ハンドオーバ動作におけるS−GW161から無線端末装置202へのパケットPの伝送経路として、S−GW161からサービング基地局101Aを経由して無線端末装置202へ到達する経路RA、およびS−GW161からターゲット基地局101Bを経由して無線端末装置202へ到達する経路RBがある。
また、データフォワーディングが行なわれる場合には、これらの経路に加えて、S−GW161からサービング基地局101Aおよびターゲット基地局101Bを経由して無線端末装置202へ到達する経路RCが存在する。
図6は、図4に示すハンドオーバ動作およびデータフォワーディング動作のシーケンスを概略的に示す図である。
図6を参照して、ハンドオーバ動作の性能に影響を与える要因として、(1)ハンドオーバ準備時間、(2)ハンドオーバ実行時間、(3)データフォワーディングによるパケットの遅延時間、(4)パス切り替え時間、および(5)ターゲット基地局における転送パケットの処理がある。
図7は、ハンドオーバ準備時間を説明するための図である。
図7を参照して、(1)ハンドオーバ準備時間は、サービング基地局101Aがハンドオーバ動作の実行を判断してから、ハンドオーバ指示を無線端末装置202へ送信するまでの時間である。
ハンドオーバ準備時間において、無線端末装置202は、サービング基地局101Aと通信する。ハンドオーバ準備時間が長いと、ターゲット基地局101Bからの電波干渉によって無線リンク断(RLF:Radio Link Failure)の発生確率が高くなる。
図8は、ハンドオーバ実行時間を説明するための図である。
図8を参照して、(2)ハンドオーバ実行時間は、無線端末装置202およびターゲット基地局101B間のRRCコネクションが確立してから、無線端末装置202およびターゲット基地局101B間をパケットPが流れ始めるまでの時間である。
ハンドオーバ実行時間は、たとえば3GPPで規定されているランダムアクセス手順(Random Access Procedure)およびアタッチ手順(Attach Procedure)に要する時間に相当する。ハンドオーバ実行時間が長いと、パケットの伝送遅延が大きくなる。
図9は、データフォワーディングによるパケットの遅延時間を説明するための図である。
図9を参照して、(3)データフォワーディングによるパケットの遅延時間は、データフォワーディングにおいてサービング基地局101Aからターゲット基地局101Bへパケットを転送するのに要する時間である。この遅延時間が長いと、S−GW161から無線端末装置202までのパケットの伝送遅延が大きくなる。
インダイレクトデータフォワーディングが行なわれる場合、すなわちサービング基地局101Aおよびターゲット基地局101B間でX2インタフェースが存在しない場合には、各無線基地局装置とS−GW161との間で論理パスを確立することにより、すなわちS1インタフェースを用いることにより、パケットの転送が行なわれる。この場合、パケットの伝送遅延がより大きくなる。
図10は、パス切り替え時間を説明するための図である。
図10を参照して、(4)パス切り替え時間は、S−GW161におけるパス切り替えの実行をターゲット基地局101Bが判断してから、サービング基地局101Aを経由せずにS−GW161からターゲット基地局101Bへ直接パケットが流れ始めるまでの時間である。
パス切り替え時間が長いと、サービング基地局101A経由の伝送経路すなわちデータフォワーディング用の伝送経路が長時間使用されることになるため、パケットの伝送遅延が大きくなる。
図11は、ターゲット基地局における転送パケットの処理を説明するための図である。
図11を参照して、S−GW161がパスを切り替えてからある程度の時間が経過するまでは、S−GW161からターゲット基地局101Bへ直接送信されるパケットP11と、S−GW161からサービング基地局101A経由でターゲット基地局101Bへ送信されるパケットP12とが併存することになる。
この場合、ターゲット基地局101Bは、前述のようにエンドマーカを用いることにより、最後の転送パケットを送信した後、S−GW161から直接送信されるパケットの送信を開始する。
ここで、前述のように、サービング基地局101Aは、ハンドオーバ動作によって無線端末装置202宛のパケットの無線区間における伝送経路を切り替える際、自己のバッファに残っている当該無線端末装置202宛のパケットについては、基本的にデータフォワーディングを行なう。
一方、非特許文献1に記載されているように、サービング基地局101Aは、たとえば、再送処理中のパケットについては、データフォワーディングを行なわない。サービング基地局101Aおよび無線端末装置202は、たとえば、ハンドオーバ動作の準備完了、すなわちハンドオーバ指示が無線端末装置202へ送信された後、当該ハンドオーバ指示に対する応答の送受信を待つことなく、再送処理中のパケットをすべて廃棄する。
図12は、フェムト基地局においてデータフォワーディングが行なわれる場合のパケットの伝送経路を示す図である。
図12を参照して、特に、家庭内またはオフィスに設置されたフェムト基地局においてデータフォワーディングが行なわれる場合には、コアネットワーク301およびマクロ基地局間のような専用回線ではなく、コアネットワーク301およびフェムト基地局間をDSL(Digital Subscriber Line)およびFTTH(Fiber To The Home)等の一般回線経由でパケットが往復するため、パケットの伝送遅延が大きくなる。
このため、パケットの伝送遅延時間が、QCI(QoS Class Identifier)等で定義される許容遅延時間を越えてしまう可能性が高くなる。
図13は、QCIの具体的な内容を示す図である。図13は、3GPP TS 23.203 table 6.1.7に記載された内容と同様である。
図13を参照して、無線端末装置202に提供されるサービスすなわちアプリケーションに対応する論理チャネルには、QCI(QoS Class Identifier)が付される。
QCIは、Qos(Quality of Service)の異なる9つのクラスを、1〜9の数字で表したものである。Qosの各クラスにおいて、サービスに応じて異なる許容遅延時間(Packet Delay Budget)が設定されている。
より詳細には、QCI=1のリソースタイプはGBR(Guaranteed Bit Rate)すなわち速度保証型であり、優先度は2であり、許容遅延時間は100msであり、許容されるパケットエラーロスレートは10-2であり、会話音声(Conversational Voice)等のサービスに用いられる。
QCI=2のリソースタイプはGBRであり、優先度は4であり、許容遅延時間は150msであり、許容されるパケットエラーロスレートは10-3であり、会話映像(Conversational Video(Live Streaming))等のサービスに用いられる。
QCI=3のリソースタイプはGBRであり、優先度は3であり、許容遅延時間は50msであり、許容されるパケットエラーロスレートは10-3であり、リアルタイムゲーム(Rea Time Gaming)等のサービスに用いられる。
QCI=4のリソースタイプはGBRであり、優先度は5であり、許容遅延時間は300msであり、許容されるパケットエラーロスレートは10-6であり、非会話映像(Non-Conversational Video(Buffered Streaming))等のサービスに用いられる。
QCI=5のリソースタイプはNon−GBRすなわち速度非保証型であり、優先度は1であり、許容遅延時間は100msであり、許容されるパケットエラーロスレートは10-6であり、IMSシグナリング(IMS Signaling)等のサービスに用いられる。
QCI=6のリソースタイプはNon−GBRであり、優先度は6であり、許容遅延時間は300msであり、許容されるパケットエラーロスレートは10-6であり、映像(Video(Buffered Streaming))又はTCPに従うデータ送信(たとえば、www、e−mail、chat、ftp、p2p file sharing、およびprogressive videoなど)等のサービスに用いられる。
QCI=7のリソースタイプはNon−GBRであり、優先度は7であり、許容遅延時間は100msであり、許容されるパケットエラーロスレートは10-3であり、音声(Voice)、映像(Video(Live Steaming))または双方向ゲーム(Interactive Gaming)等のサービスに用いられる。
QCI=8,9のリソースタイプはNon−GBRであり、優先度はそれぞれ8,9であり、許容遅延時間は300msであり、許容されるパケットエラーロスレートは10-6であり、映像(Video(Buffered Streaming))又はTCPに従うデータ送信(たとえば、www、e−mail、chat、ftp、p2p file sharing、およびprogressive videoなど)等のサービスに用いられる。
QCI=1等、高いリアルタイム性が要求されるサービスでは遅延要求が厳しく設定されており、また、許容遅延時間が比較的短く設定されている。一方、QCI=8等、リアルタイム性がさほど要求されないサービスでは、遅延要求が緩く、許容遅延時間が比較的長く設定されている。
データフォワーディングによってパケットの伝送遅延が大きくなると、このようなQCIで定められた要求を満たせない可能性がある。
そこで、本発明の実施の形態に係る無線基地局装置では、以下のような構成および動作により、データフォワーディングに伴うパケットの伝送遅延の増大を抑制する。
[無線基地局装置]
図14は、本発明の実施の形態に係る無線基地局装置の構成を示す図である。
図14を参照して、無線基地局装置101は、アンテナ91と、サーキュレータ92と、無線受信部93と、無線送信部94と、信号処理部95と、制御部98と、ネットワーク処理部99とを備える。信号処理部95は、受信信号処理部96と、送信信号処理部97とを含む。信号処理部95、制御部98およびネットワーク処理部99は、CPU(Central Processing Unit)またはDSP(Digital Signal Processor)等によって実現される。
サーキュレータ92は、アンテナ91において受信された無線端末装置202からの無線信号を無線受信部93へ出力し、また、無線送信部94から受けた無線信号をアンテナ91へ出力する。
無線受信部93は、サーキュレータ92から受けた無線信号をベースバンド信号またはIF(Intermediate Frequency)信号に周波数変換し、この周波数変換した信号をデジタル信号に変換して受信信号処理部96へ出力する。
受信信号処理部96は、無線受信部93から受けたデジタル信号に対してCDMA(Code Division Multiple Access)方式における逆拡散等の信号処理を行ない、この信号処理後のデジタル信号の一部または全部を所定のフレームフォーマットに変換し、変換後の通信データをネットワーク処理部99へ出力する。
ネットワーク処理部99は、受信信号処理部96から受けた通信データをコアネットワーク301へ送信するとともに、コアネットワーク301から受信した通信データを送信信号処理部97へ出力する。
送信信号処理部97は、ネットワーク処理部99から受けた通信データを所定のフレームフォーマットに変換した通信データまたは自ら生成した通信データに対してOFDM(Orthogonal Frequency Division Multiplex)方式におけるIFFT(Inverse Fast Fourier Transform)等の信号処理を行ない、この信号処理後のデジタル信号を無線送信部94へ出力する。
無線送信部94は、送信信号処理部97から受けたデジタル信号をアナログ信号に変換し、変換したアナログ信号を無線信号に周波数変換してサーキュレータ92へ出力する。
制御部98は、無線基地局装置101における各ユニットおよびコアネットワーク301との間で、各種情報をネットワーク処理部99経由でやり取りする。
図15は、本発明の実施の形態に係る無線基地局装置におけるネットワーク処理部および制御部の構成を示す図である。
図15を参照して、ネットワーク処理部99は、ネットワーク送信部11と、ネットワーク受信部12と、バッファ13と、送信制御部(送信部)14と、転送制御部15とを含む。制御部98は、遅延情報取得部21と、遅延測定部22とを含む。
ネットワーク受信部12は、たとえばIPパケットを含む通信データを、コアネットワーク301におけるS−GW161から受信し、受信した通信データをバッファ13に保存する。
送信制御部14は、バッファ13から取り出した通信データを信号処理部95における送信信号処理部97へ出力する。
転送制御部15は、データフォワーディング動作において、バッファ13から通信データを取り出してネットワーク送信部11へ出力する。
ネットワーク送信部11は、信号処理部95における受信信号処理部96、または転送制御部15から受けた、たとえばIPパケットを含む通信データをコアネットワーク301におけるS−GW161へ送信する。
遅延情報取得部21は、コアネットワーク301およびIP網302等の上位ネットワークから受信したパケットを自己の無線基地局装置へ転送する転送動作、すなわち自己の無線基地局装置へのデータフォワーディングを他の無線基地局装置が行っている状態において、ネットワーク受信部12によって受信されたパケットの伝送遅延時間を評価可能な遅延情報を取得する。
送信制御部14は、上記転送動作が行なわれている状態において、遅延情報取得部21によって取得された遅延情報に基づいて、バッファ13から取り出したパケットの無線端末装置202への送信において優先制御を行なう。たとえば、送信制御部14は、自己の無線基地局装置および無線端末装置202間の論理チャネルごとの優先制御を行なう。
また、たとえば、送信制御部14は、遅延情報取得部21によって取得された遅延情報、および他の装置によってパケットに与えられた優先度たとえばQCIに基づいてパケット送信の優先制御を行なう。
図16は、本発明の実施の形態に係る通信システムにおけるパケットの伝送経路を示す図である。
図16を参照して、通常パス経由でコアネットワーク301からターゲット基地局101Bへ伝送されたパケットよりも、データフォワーディングによってサービング基地局101Aからターゲット基地局101Bへ転送されるパケットの方が、伝送遅延が大きい。
さらに、インダイレクトデータフォワーディング、すなわちS1インタフェース経由のデータフォワーディングでは、S−GW161と無線基地局装置101との論理パスを確立するための処理が必要となるため、ダイレクトデータフォワーディング、すなわちX2インタフェース経由のデータフォワーディングよりもパケットの伝送遅延が大きい。すなわち、X2インタフェース経由では、S1インタフェース経由とは異なり、無線基地局装置間で直接、論理パスを確立してメッセージのやり取りが行なえるため、パケットの伝送遅延が小さくなる。
なお、図16は、パケットの論理的な伝送経路を示しており、ダイレクトデータフォワーディングによって転送されるパケットも、物理的にはコアネットワーク301におけるS−GW161経由で伝送される。
図17は、本発明の実施の形態に係る無線基地局装置におけるパケット送信の優先制御を示す図である。
図17を参照して、本発明の実施の形態に係る通信システムでは、ターゲット基地局において下りパケットの優先制御を行なう。
制御部98において、遅延情報取得部21は、パケットが他の無線基地局装置から転送された転送パケットであるか否かを遅延情報として取得する。
送信制御部14は、遅延情報取得部21によって取得された遅延情報を参照し、転送パケットを他のパケットよりも優先して送信する。
より詳細には、ターゲット基地局における送信制御部14は、たとえばMACスケジューラを含み、MACスケジューラは、(1)インダイレクトデータフォワーディングによって転送されたパケットP1、(2)ダイレクトデータフォワーディングによって転送されたパケットP2、(3)通常パス経由、すなわちサービング基地局を経由せずにS−GW161から直接送信されたパケットP3を、この順番で優先して無線端末装置202へ送信する。
たとえば、MACスケジューラは、このような優先順位を加味してQCIの優先度を補正する。具体的には、たとえば、MACスケジューラは、QCIの優先度を1ランクまたは2ランク上げるかまたは下げた補正後の優先度に基づいて、パケット送信の優先制御を行なう。
ここでは、ある一定期間において、パケットP1〜P3のうち、パケットP1が最も優先され、3つのパケットP1が無線端末装置Xへ送信されている。また、パケットP2がパケットP1の次に優先され、2つのパケットP2が無線端末装置Yへ送信されている。また、パケットP3が最も優先順位が低く、1つのパケットP3が無線端末装置Zへ送信されている。
なお、MACスケジューラは、下りパケットが、マクロ基地局から転送されてきたか、ピコ基地局から転送されてきたか、あるいはフェムト基地局から転送されてきたかに基づいて、上記優先度の補正をさらに細かく行なう構成であってもよい。
また、制御部98は、ハンドオーバ動作のシーケンスから、インダイレクトデータフォワーディングのパケット、ダイレクトデータフォワーディングのパケット、および通常パス経由のパケット、を判別することができる。制御部98は、この判別結果を送信制御部14に通知する。
より詳細には、制御部98は、ハンドオーバ動作において、ハンドオーバ要求をMME162から受信した場合には、バッファ13に蓄積されたパケットのうち、当該ハンドオーバ動作に対応する無線端末装置202宛のパケットは、インダイレクトデータフォワーディングによる転送パケットである、と判断する。
また、制御部98は、ハンドオーバ動作において、ハンドオーバ要求をサービング基地局から受信した場合には、バッファ13に蓄積されたパケットのうち、当該ハンドオーバ動作に対応する無線端末装置202宛のパケットは、ダイレクトデータフォワーディングによる転送パケットである、と判断する。
また、制御部98は、現在実行中のハンドオーバ動作に対応しない無線端末装置202宛のパケットは、通常パス経由のパケットである、と判断する。
図18は、本発明の実施の形態に係る無線基地局装置の通信プロトコルにおける各レイヤ、およびレイヤ間でやり取りされる情報を示す図である。
図18を参照して、無線基地局装置101は、たとえば、自己および無線端末装置202間について、RRCレイヤ、PDCP(Packet Data Convergence Protocol)レイヤ、RLC(Radio Link Control)レイヤ、MACレイヤおよびPHYレイヤを有する通信プロトコルに従って動作する。ここでは、RRCレイヤが最上位レイヤであり、PHYレイヤが最下位レイヤである。また、無線基地局装置101は、たとえば、自己およびコアネットワーク301間について、U−Planeレイヤ、C−PlaneレイヤおよびS1APレイヤを有する通信プロトコルに従って動作する。また、以上のようなレイヤのさらに上位レイヤとして、アプリケーションレイヤが存在する。
QCIは、コアネットワーク301からC−Planeレイヤ、S1APレイヤおよびアプリケーションレイヤ経由でMACスケジューラに与えられる。また、パケットの遅延情報は、アプリケーションレイヤ経由でMACスケジューラに与えられる。
図17において説明したパケットP1〜P3は、コアネットワーク301からU−Plane、アプリケーションレイヤ、PDCPレイヤおよびRLCレイヤを経由してMACスケジューラに与えられ、バッファに蓄積される。
MACスケジューラは、MACレイヤからバッファ情報すなわちバッファ13に蓄積されているパケットの情報を取得する。MACスケジューラは、パケットを無線端末装置202へ送信するための無線基地局装置101におけるリソースの割り当てを行ない、この割り当て情報をMACレイヤおよびPHYレイヤに与える。
図19は、MACスケジューラによるパケットの優先制御の具体例を示す図である。
図19を参照して、MACスケジューラは、論理チャネルごとの、バッファの蓄積量、RNTIすなわち通信先の無線端末装置202の識別番号、QCI、および遅延情報をMACレイヤおよび上位レイヤから取得する。
また、MACスケジューラは、MACレイヤに対する割り当て情報として、論理チャネルごとの、割り当て量すなわちバッファ13から取り出し可能なパケットのデータ量を、MACレイヤに通知する。
また、MACスケジューラは、PHYレイヤに対する割り当て情報として、RNTIごと、すなわち無線端末装置202ごとの、MCS(Modulation Coding Scheme)すなわち1リソースブロックあたりのビット数、リソースブロック数およびリソースブロック位置をPHYレイヤに通知する。
ここで、リソースブロックは、無線端末装置202への無線信号の送信において割り当てられる、周波数および時間によって分割された単位である。
具体的には、MACスケジューラがMACレイヤおよび上位レイヤから取得する情報において、論理チャネル番号が1のパケットについて、バッファ蓄積量が100KB(キロバイト)であり、RNTIが1であり、QCIが2であり、インダイレクトデータフォワーディングによる転送パケットである。論理チャネル番号が2のパケットについて、バッファ蓄積量が200KBであり、RNTIが1であり、QCIが3であり、インダイレクトデータフォワーディングによる転送パケットである。論理チャネル番号が3のパケットについて、バッファ蓄積量が100KBであり、RNTIが2であり、QCIが4であり、ダイレクトデータフォワーディングによる転送パケットである。論理チャネル番号が4のパケットについて、バッファ蓄積量が300KBであり、RNTIが3であり、QCIが5であり、通常パス経由のパケットである。
また、MACスケジューラがMACレイヤに与える割り当て情報において、論理チャネル番号が1のパケットの割り当て量が100KBであり、論理チャネル番号が2のパケットの割り当て量が200KBであり、論理チャネル番号が3のパケットの割り当て量が0KBであり、論理チャネル番号が4のパケットの割り当て量が0KBである。
また、MACスケジューラがPHYレイヤに与える割り当て情報において、RNTIが1の無線端末装置202のMCSが12ビットであり、リソースブロック数が50であり、リソースブロック位置がゼロである。RNTIが2,3の無線端末装置202には、リソースブロックが割り当てられていない。
なお、ここでは、MACスケジューラは、論理チャネルごとの優先制御を行なう構成であるとしたが、これに限定するものではない。MACスケジューラは、無線端末装置202ごとに優先制御を行なう構成であってもよいし、あるいは、パケットごとに優先制御を行なう構成であってもよい。
次に、データフォワーディングの有無および種別による方法以外の、パケットの伝送遅延を推定する方法の他の例について説明する。
図20は、本発明の実施の形態に係る通信システムにおけるパケットの伝送遅延の相違を説明するための図である。
P−GW163から無線基地局装置101に至るまでの経路において、途中のホップ数が多いほど、パケットの伝送遅延が大きくなる。
具体的には、図20に示すネットワーク構成では、P−GW163、S−GW161、ルータ165およびルータ166経由で基地局Bに到着するパケットの伝送遅延が最も大きく、P−GW163、S−GW161およびルータ164経由で基地局Aに到着するパケットの伝送遅延が次に大きく、P−GW163およびS−GW161経由で基地局Cに到着するパケットの伝送遅延が最も小さい。
すなわち、制御部98において、遅延情報取得部21は、上位ネットワークにおいてパケットが経由した装置の数であるホップ数を遅延情報として取得する。
送信制御部14は、遅延情報取得部21によって取得された遅延情報を参照し、ホップ数の大きいパケットを他のパケットよりも優先して送信する。
このホップ数を得る方法としては、たとえば、通信事業者にとって、自己が保有しているネットワーク内の構成を知ることは容易であり、通信事業者が無線基地局装置101に設定することが考えられる。
図21は、本発明の実施の形態に係る通信システムにおけるパケットの伝送遅延の相違を説明するための図である。
図21を参照して、バックホール、すなわちP−GW163から無線基地局装置101に至るまでの経路において無線通信方式を採用する中継装置が存在する場合、有線通信方式と比べてパケットの伝送遅延が大きくなる。
ここで、無線通信方式の他に、バックホールにおいて使用される通信方式としては、DSLおよびイーサネット(登録商標)等がある。
パケットの伝送遅延の大小関係は、経路長にもよるが、おおよそ以下のようになる。
イーサネット<DSL<3GPP TS 36.216に規定された無線通信方式<3GPP以外の無線通信方式
具体的には、図21に示すネットワーク構成では、3GPP以外の無線通信方式に従う中継装置169,170経由で基地局Bに到着するパケットの伝送遅延が最も大きく、3GPP TS 36.216に従う無線通信方式の中継装置168経由で基地局Aに到着するパケットの伝送遅延が次に大きく、DSLのゲートウェイ167経由で基地局Cに到着するパケットの伝送遅延が最も小さい。
すなわち、制御部98において、遅延情報取得部21は、パケットの経路選択を行って自己の無線基地局装置へパケットを送信する装置たとえばS−GW161と自己の無線基地局装置との間におけるパケットの通信方式、すなわちパケットの中継装置の通信方式を遅延情報として取得する。
送信制御部14は、遅延情報取得部21によって取得された遅延情報を参照し、上記通信方式が無線通信方式であるパケットを他のパケットよりも優先して送信する。
バックホールにおける通信方式を知る方法としては、たとえば、通信事業者にとって、自己が保有しているネットワーク内の構成を知ることは容易であり、通信事業者が無線基地局装置101に設定することが考えられる。
図22は、本発明の実施の形態に係る通信システムにおけるパケットの伝送遅延の相違を説明するための図である。
図22を参照して、制御部98において、遅延測定部22は、上位ネットワーク側の特定の装置と自己の無線基地局装置との間のパケットの伝送遅延時間を測定する。
遅延情報取得部21は、遅延測定部22によって測定された伝送遅延時間を遅延情報として取得する。
送信制御部14は、遅延情報取得部21によって取得された遅延情報を参照し、上記伝送遅延時間が長いパケットを他のパケットよりも優先して送信する。
遅延測定部22は、たとえばPingコマンドを実行することにより、パケットの伝送経路における特定の装置、たとえば、ゲートウェイまたはパケットの送信元の装置までのラウンドトリップタイムを測定する。
具体的には、遅延測定部22は、たとえば、自己およびS−GW161間のラウンドトリップタイムT1、または自己およびパケットの送信元であるアプリケーションサーバ181間のラウンドトリップタイムT2を測定する。
そして、送信制御部14は、ラウンドトリップタイムT1およびT2に基づいて、たとえばMACスケジューラにおけるQCI優先度の補正内容を調整する。
図23は、本発明の実施の形態に係る通信システムにおけるパケットの伝送遅延の相違を説明するための図である。
図23を参照して、無線基地局装置101は、パケットの伝送経路が、自社網以外のネットワークを含むか否かに基づいて、パケット送信の優先制御を行なう。
他の通信事業者網を含んだ通信を行なう場合の通信データの伝送遅延時間T11は、自社網だけで閉じた通信を行なう場合の伝送遅延時間T12と比べて大きくなる。これは、通信事業者は、他社のネットワーク構成を完全には把握できないからである。
すなわち、制御部98において、遅延情報取得部21は、パケットが所定のネットワークを経由したか否かを遅延情報として取得する。
送信制御部14は、遅延情報取得部21によって取得された遅延情報を参照し、上記所定のネットワークを経由したパケットを他のパケットよりも優先して送信する。
このネットワーク構成を知る方法としては、たとえば、無線基地局装置101が、コアネットワーク301から受信したパケットの送信元までの経路に他通信事業者網が含まれるか否かの情報を、MME162から取得することが考えられる。
なお、送信制御部14は、図17および図20〜図23で説明した優先制御の基準の一部または全部を組み合わせた基準に基づいて、パケットの優先制御を行なう構成であってもよい。
また、制御部98において、遅延測定部22は、送信制御部14によって優先制御が行なわれたパケットの、少なくとも自己の無線基地局装置における伝送遅延時間を、他の装置によってパケットに与えられた優先度たとえばQCIごとに測定する。
具体的には、無線基地局装置101は、たとえば、OAM(Operation Administration and Maintenance)のための統計データを取得する。
3GPP TS 36.314 v10.1.0「Layer2 Measurements」の4.1.4節「Packet Delay」に記載されているように、無線基地局装置は、OAMのために、QCIごとの、自己の無線基地局装置内におけるパケットの伝送遅延時間M(T,qci)を測定する。
前述のように、本発明の実施の形態に係る無線基地局装置では、QCIだけでなく、データフォワーディングの有無および種別等に応じてパケットの優先順位を調整する。
そこで、OAMのために測定するパケットの遅延時間も、以下のようにパケットを分類して測定する。すなわち、(1)インダイレクトデータフォワーディング、(2)ダイレクトデータフォワーディング、および(3)通常パス経由のグループにパケットを分類し、グループごとの遅延時間を測定し、OAMにおいて使用可能とする、すなわち、保守管理者が参照可能とする。
これにより、保守管理者は各グループの遅延時間がQCIの許容遅延時間を超えてしまっているか等を確認し、無線基地局装置101が実行しているパケット送信の優先制御が適切か否かを判断することができる。そして、保守管理者は、無線基地局装置101が実行しているパケット送信の優先制御が不適切であると判断した場合には、パケットの遅延情報に基づくQCI優先度の補正内容を変更する。これにより、無線基地局装置101において、より適切なパケット送信の優先制御を行ない、パケットの伝送遅延時間を低減させることができる。
ところで、非特許文献1に記載されるようなデータフォワーディングを行なう場合、パケットの伝送遅延時間は、転送に要する時間分長くなる。特に、フェムト基地局においてデータフォワーディングが行なわれる場合には、上位ネットワークおよびフェムト基地局間をパケットが一般回線経由で往復することになるため、パケットの伝送遅延時間が大幅に増大し、QCI等で定義されるパケットの許容遅延時間を超えてしまう可能性がある。
すなわち、データフォワーディングが行なわれる場合には、コアネットワーク301から無線基地局装置101までのパケットの伝送遅延時間が、同じ無線基地局装置101に接続された無線端末装置202間で異なる。このため、パケット送信の優先制御を行なうことが重要となる。
そこで、本発明の実施の形態に係る無線基地局装置では、遅延情報取得部21は、コアネットワーク301およびIP網302等の上位ネットワークから受信したパケットを自己の無線基地局装置へ転送する転送動作、すなわち自己の無線基地局装置へのデータフォワーディングを他の無線基地局装置が行っている状態において、ネットワーク受信部12によって受信されたパケットの伝送遅延時間を評価可能な遅延情報を取得する。そして、送信制御部14は、上記転送動作が行なわれている状態において、遅延情報取得部21によって取得された遅延情報に基づいて、ネットワーク受信部12によって受信されたパケットの無線端末装置202への送信において優先制御を行なう。
このように、無線基地局装置から無線端末装置へのパケット送信において、パケットの伝送遅延時間を評価してパケット送信の優先制御を行なう構成により、パケットの伝送遅延に応じた適切な送信制御を行なうことができる。
したがって、本発明の実施の形態に係る無線基地局装置では、データフォワーディングに伴う伝送遅延の増大を抑制し、通信の安定化を図ることができる。
また、本発明の実施の形態に係る無線基地局装置では、送信制御部14は、遅延情報取得部21によって取得された遅延情報、および他の装置によってパケットに与えられた優先度に基づいて優先制御を行なう。
このような構成により、予め与えられたパケットの優先度に遅延情報を加味することができるため、より適切な優先制御を行なうことができる。
また、本発明の実施の形態に係る無線基地局装置では、遅延情報取得部21は、パケットが他の無線基地局装置から転送された転送パケットであるか否かを遅延情報として取得する。
すなわち、無線基地局装置およびコアネットワーク間のパス切り替えも含めたハンドオーバ動作を考慮して、パケットの送信制御を行なう。より詳細には、無線基地局装置および無線端末装置間すなわち無線区間のパケットの伝送に加えて、S−GWおよび無線基地局装置間、ならびにサービング基地局およびターゲット基地局間のパケットの流れを考慮する。
このように、データフォワーディングの有無を遅延情報として用いる構成により、優先制御を適切に行なうことができる。
また、本発明の実施の形態に係る無線基地局装置では、送信制御部14は、転送パケットを他のパケットよりも優先して送信する。
すなわち、データフォワーディングがパケットの伝送遅延に与える影響を考慮して、QoSの観点からデータフォワーディング対象のパケットを優先的に送信する。
このような構成により、データフォワーディングによるパケットの伝送遅延の影響を、無線基地局装置におけるパケット送信の優先制御によって軽減することができる。
また、本発明の実施の形態に係る無線基地局装置では、遅延情報取得部21は、上位ネットワークにおいてパケットが経由した装置の数であるホップ数を遅延情報として取得する。
このように、ホップ数を遅延情報として用いる構成により、優先制御を適切に行なうことができる。
また、本発明の実施の形態に係る無線基地局装置では、送信制御部14は、ホップ数の大きいパケットを他のパケットよりも優先して送信する。
このような構成により、装置を経由することによるパケットの伝送遅延の影響を、無線基地局装置におけるパケット送信の優先制御によって軽減することができる。
また、本発明の実施の形態に係る無線基地局装置では、遅延情報取得部21は、パケットの経路選択を行って自己の無線基地局装置へパケットを送信する装置と自己の無線基地局装置との間におけるパケットの通信方式を遅延情報として取得する。
このように、上位ネットワークおよび無線基地局装置間におけるパケットの中継装置の通信方式を遅延情報として用いる構成により、優先制御を適切に行なうことができる。
また、本発明の実施の形態に係る無線基地局装置では、送信制御部14は、上記通信方式が無線通信方式であるパケットを他のパケットよりも優先して送信する。
このような構成により、中継装置の通信方式に起因するパケットの伝送遅延の影響を、無線基地局装置におけるパケット送信の優先制御によって軽減することができる。
また、本発明の実施の形態に係る無線基地局装置では、遅延測定部22は、上位ネットワーク側の特定の装置と自己の無線基地局装置との間のパケットの伝送遅延時間を測定する。そして、遅延情報取得部21は、遅延測定部22によって測定された伝送遅延時間を遅延情報として取得する。
このように、無線基地局装置が実際に測定した遅延時間を遅延情報として用いる構成により、優先制御を適切に行なうことができる。
また、本発明の実施の形態に係る無線基地局装置では、送信制御部14は、伝送遅延時間が長いパケットを他のパケットよりも優先して送信する。
このような構成により、伝送遅延時間の長いパケットの伝送遅延を、無線基地局装置において低減することができる。
また、本発明の実施の形態に係る無線基地局装置では、遅延情報取得部21は、パケットが所定のネットワークを経由したか否かを遅延情報として取得する。
このように、パケットの経由したネットワーク種別を遅延情報として用いる構成により、優先制御を適切に行なうことができる。
また、本発明の実施の形態に係る無線基地局装置では、送信制御部14は、所定のネットワークを経由したパケットを他のパケットよりも優先して送信する。
このような構成により、所定のネットワークを経由することによるパケットの伝送遅延の影響を、無線基地局装置におけるパケット送信の優先制御によって軽減することができる。
また、本発明の実施の形態に係る無線基地局装置では、送信制御部14は、無線端末装置202ごとの優先制御を行なう。
このような構成により、上位ネットワークから無線基地局装置までのパケットの伝送遅延時間が、同じ無線基地局装置に接続された無線端末装置間で異なる場合に、無線端末装置ごとの伝送遅延に応じてパケットの送信制御を適切に行なうことができる。
また、本発明の実施の形態に係る無線基地局装置では、送信制御部14は、自己の無線基地局装置および無線端末装置202間の論理チャネルごとの優先制御を行なう。
このような構成により、上位ネットワークから無線基地局装置までのパケットの伝送遅延時間が、同じ無線基地局装置に接続された無線端末装置の、さらに論理チャネル間で異なる場合に、論理チャネルごとの伝送遅延に応じてパケットの送信制御を適切に行なうことができる。
また、本発明の実施の形態に係る無線基地局装置では、遅延測定部22は、送信制御部14によって優先制御が行なわれたパケットの、少なくとも自己の無線基地局装置における伝送遅延時間を、他の装置によってパケットに与えられた優先度ごとに測定する。
このような構成により、優先度ごとの遅延時間の測定結果をパケット送信の優先制御にフィードバックすることができるため、当該優先制御をより適切に行なうことができる。
上記実施の形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記説明ではなく特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。