JP5870652B2 - 被膜付きセラミックス基複合材料およびその製造方法 - Google Patents
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Description
従来、このようなセラミックス基複合材料を適用した各種部品やその製造方法がいくつか提案されている。
すなわち、本発明は製造が簡便で、被膜の厚さが薄く、高温雰囲気と低温雰囲気に繰り返し曝されても剥がれ難い被膜を表面に有する耐熱応力性(耐熱衝撃性)を備え、また使用環境において水蒸気と反応して消失しない耐水蒸気性、被膜が酸化してコーティング機能を失わない耐酸化性を備える被膜付きセラミックス基複合部材およびその製造方法を提供することを目的とする。
本発明は、以下の(1)〜(7)である。
(1)セラミックス基複合材料の表面に中間膜およびセラミックス膜をこの順で有し、
前記中間膜が、高融点酸化物と1〜60体積%のガラス成分とから実質的になる、
被膜付きセラミックス基複合材料。なお、高融点酸化物とは使用温度(環境温度)より融点(軟化点)が高く、外部から力を受けない限り構造が変化しない酸化物のことである。
(2)前記中間膜が、高融点酸化物およびガラス成分の原料を用いて溶射法によって形成されたものである、上記(1)に記載の被膜付きセラミックス基複合材料。
(3)前記高融点酸化物が酸化ハフニウム、ケイ酸ハフニウム、ケイ酸ルテチウム、ケイ酸イッテルビウム、酸化チタニウム、酸化ジルコニウム、チタン酸アルミニウム、ケイ酸アルミニウムおよびルテチウムハフニウム酸化物からなる群から選ばれる少なくとも一つを主成分とする、上記(1)または(2)に記載の被膜付きセラミックス基複合材料。
(4)セラミックス膜が酸化ハフニウム、ケイ酸ハフニウム、ケイ酸ルテチウム、ケイ酸イッテルビウム、酸化チタニウム、酸化ジルコニウム、チタン酸アルミニウム、ケイ酸アルミニウムおよびルテチウムハフニウム酸化物からなる群から選ばれる少なくとも一つを主成分とする、上記(1)〜(3)のいずれかに記載の被膜付きセラミックス基複合材料。
(5)前記中間膜および前記セラミックス膜以外の被膜を有さず、前記中間膜の厚さが200μm以下であり、耐水蒸気性、耐酸化性および耐熱応力性を備える、上記(1)〜(4)のいずれかに記載の被膜付きセラミックス基複合材料。
(6)上記(1)〜(5)のいずれかに記載の被膜付きセラミックス基複合材料を用いてなる、ジェットエンジン用部品。
(7)セラミックス基複合材料の表面に、高融点酸化物およびガラス成分の原料を用いて溶射して前記中間膜を形成する工程を備え、上記(1)〜(6)のいずれかに記載の被膜付きセラミックス基複合材料が得られる、被膜付きセラミックス基複合材料の製造方法。
本発明は、セラミックス基複合材料の表面に中間膜およびセラミックス膜をこの順で有し、前記中間膜が、高融点酸化物と1〜60体積%のガラス成分とから実質的になる、被膜付きセラミックス基複合材料である。
このような被膜付きセラミックス基複合材料を、以下では「本発明の複合材料」ともいう。
初めに、本発明の複合材料におけるセラミックス基複合材料について説明する。
本発明の複合材料においてセラミックス基複合材料はセラミックス繊維とセラミックスマトリックスとからなり、一般的にCMC(Ceramic Matrix Composite)と称されるものである。
セラミックス基複合材料におけるセラミックス繊維およびセラミックスマトリックスの材質は特に限定されない。例えばSiC、C、Si3N4、Al2O3、ZrO2などからなるセラミックス繊維やセラミックスマトリックスであってよい。セラミックス繊維とセラミックスマトリックスとは同じ材質であってもよく、異なる材質であってもよい。
本発明の複合材料は前記セラミックス基複合材料を含み、その表面の少なくとも一部に、高融点酸化物と1〜60体積%のガラス成分とから実質的になる中間膜を有する。
中間膜は、前記セラミックス基複合材料の表面に存し、本発明の複合材料が水蒸気雰囲気や酸化雰囲気内にある場合に、水蒸気や酸素が前記セラミックス基複合材料と直接、接触することがないようにシールする機能を主に果たす。また、本発明の複合材料が有する被膜に亀裂が入った場合に、中間膜に1〜60体積%で含まれるガラス成分が、その亀裂内に浸透して亀裂を埋める役割を果たす。したがって、本発明の複合材料の被膜に亀裂が生じても、その亀裂を通じて水蒸気や酸素がセラミックス基複合材料と直接接することを防止できる。ここで中間膜に含まれるガラス成分の含有率が高すぎると、被膜が剥がれやすくなったり、前述のシール機能(水蒸気や酸素からセラミックス基複合材料を守る機能)が低下したりする傾向があり、逆に含有率が低すぎると、ここでいう亀裂を埋める役割を果たし難くなる傾向がある。
高融点酸化物がこれらの成分からなると、セラミックス膜や前記セラミックス基複合材料との化学的親和性が高まり、被膜がより剥がれ難くなり好ましい。前記セラミックス基複合材料を構成するセラミックス繊維がSiCからなり、かつセラミックスマトリックスもSiCからなる場合に、このような効果が高まる傾向がある。
溶射法の具体的内容については、後述する本発明の好適製造方法と同様である。
本発明の複合材料は、前記セラミックス基複合材料の表面に前記中間膜およびセラミックス膜をこの順で有する。また、本発明の複合材料は、前記セラミックス基複合材料の表面に前記中間膜を有し、その中間膜の表面にセラミックス膜を有することが好ましく、その他の膜を有さないことがさらに好ましい。被膜全体の厚さが薄くなるからである。また、製造工程が簡略化されるからである。
セラミックス膜がこれらの成分からなると、本発明の複合材料の耐熱応力性がより高まるからである。また、中間膜との化学的親和性が高まり、被膜がより剥がれ難くなり好ましい。
本発明の複合材料を用いてなるジェットエンジン用部品としては、タービン動静翼、燃焼器、アフターバーナ部品が挙げられる。
本発明の複合材料の製造方法は特に限定されないが、セラミックス基複合材料の表面に、高融点酸化物およびガラス成分の原料を用いて溶射して前記中間膜を形成する工程を備える製造方法であることが好ましい。この好ましい製造方法を、以下では本発明の好適製造方法ともいう。
以下に本発明の好適製造方法について説明する。
例えば、セラミックス繊維を数百〜数千本程度束ねて繊維束とした後、この繊維束をXYZ方向に織ることによって3次元の織物繊維を得て、さらにCVI法(Chemical Vapor Infiltration:気相含浸法)によって処理することで、セラミックス基複合材料を製造することができる。
また、例えば前記繊維束をマンドレル上にブレード織りして所望の立体形状とし、さらにCVI法によって処理してセラミックス基複合材料を得ることができる。ブレード織りとは、円柱形状等のマンドレルの周りにマンドレルの長手方向に延在する複数の中央糸(繊維束)と、螺旋状に巻回される組糸(繊維束)とを編み込むことによって、中空織物を形成する方法である。
また、例えば、縦糸と横糸からなる通常の平織り、ロービングを一方向に並列したプリプレグシート、3軸織物などを用意し、さらにCVI法によって処理して、平面形状のセラミックス基複合材料を得ることができる。
ここでCVI法は、例えば立体形状の繊維織物を専用治具に固定して炉内に置き、密閉し、加熱し、減圧雰囲気にした後、原料ガス(例えばメチルトリクロロシラン)を流入させることで、繊維織物における繊維表面や繊維間にマトリックスを形成する処理である。
初めに原料粉末を用意する。そして、得られる中間膜におけるガラス成分の含有率を調整し、高融点酸化物となる原料とガラス成分となる原料とを混合する。
そして、100〜1000℃に加熱したセラミックス基複合材料に、アルゴン、水素などの作動ガスを使用してセラミックス基複合材料に対して垂直に吹き付けて溶射する。
具体的には、セラミックス膜となる原料粉末を用意し、これを用いて100〜1000℃に加熱したセラミックス基複合材料に、アルゴン、水素などの作動ガスを使用して、セラミックス基複合材料に対して垂直に吹き付けて溶射する。溶射の後は、セラミックス膜の厚さが所望の値となるようにダイヤモンド、SiC等の研磨剤を用いて表面を削ってもよい。
SiC繊維織物にSiCマトリックスを形成した直方体形状のセラミックス基複合材料(大きさ:10mm×10mm、厚さ:4mm)を2つ用意した。そして、各々のセラミックス基複合材料の表面へ、原料粉末を溶射して中間膜を形成した。ここで原料粉末は、高融点酸化物としてのムライトと、ガラス成分としてのPyrexガラス(登録商標)とを混合したものである。減圧下、不活性ガス雰囲気中にセラミックス基複合材料を設置し、これを100〜1000℃に加熱した後、セラミックス基複合材料の主面に略垂直に原料粉末を吹き付けて溶射し、中間膜を形成した。また、中間膜の厚さは75±25μmとした。
次に、中間膜の上面に、HfO2の原料粉末を溶射してセラミックス膜を形成した。溶射は中間膜を形成した場合と同様の方法で行った。ただし、大気雰囲気で大気圧下にて行った。また、セラミックス膜の厚さは300μmとした。
このようにして試験片を2つ作成した後、一方の試験片を、さらに1000℃で1h熱処理した。熱処理をしていない試験片を「試験片1」、熱処理した試験片を「試験片2」とした。
図1(a)、(b)から、試験片1、試験片2のいずれもムライトとPyrexガラス(登録商標)とからなり、Pyrexガラス(登録商標)を概ね50体積%含む中間膜が存在していることを確認できた。
断面組織観察試験で用いたものと同じセラミックス基複合材料を7つ用意した。そして、その中の6つのセラミックス基複合材料の両表面へ、断面観察試験の場合と同様の条件で同様の中間膜およびセラミックス膜を形成した。ここで中間層の厚さは断面組成観察試験の場合と同様に75±25μmとしたが、セラミックス膜は、3つを150μm、3つを300μmとした。
このようにして作成したセラミックス膜の厚さが150μmの3つの試験片と、300μmの3つの試験片と、中間膜およびセラミックス膜を形成していない1つの試験片について、水蒸気暴露試験を行った。
具体的には、各試験片を水蒸気暴露試験装置に入れて暴露した後、試験片の表面状態を観察し、割れや剥離等の有無を調査した。
・東伸工業株式会社製
・最高温度:1500℃(常用1400℃)
・ヒーター:MoSi2
・試験チャンバー内の最大圧力:9.5気圧
・熱電対:Rタイプ熱電対(Pt−Rh)
・最大ガス流量:空気、窒素=〜2.01/min、
酸素、炭酸ガス=〜0.51/min
・試験チャンバー内のサイズ:φ80×180(420)Lmm
・導入ガス:空気、窒素、酸素、炭酸ガス
そして、このような水蒸気暴露試験の暴露時間を、0h、60h、125h、185hと変化させた。具体的には、セラミックス膜の厚さが150μmの3つの試験片について、暴露時間を、1つを0h(試験片3)、もう1つを125h(試験片4)、さらにもう1つを185h(試験片5)とした。また、セラミックス膜の厚さが300μmの3つの試験片について、暴露時間を、1つを0h(試験片6)、もう1つを60h(試験片7)、さらにもう1つを185h(試験片8)とした。そして、中間膜およびセラミックス膜を形成していない1つの試験片について、暴露時間を60h(試験片20)とした。
これに対して、本発明の範囲外である試験片20は、暴露によって形状が維持できないほど腐食していた。
断面組織観察試験で用いたものと同じ、中間膜およびセラミックス膜を形成していないセラミックス基複合材料を1つ用意し、これを試験片21とした。
次に、水蒸気暴露試験に供した後の7つの試験片および試験片21の残存強度を測定した。具体的には、試験片3〜8、試験片20および試験片21を、常温、大気中で3点曲げ強度試験に供し、得られた強度測定結果から、次の式(I)に従い残存強度率(%)を求めて評価した。試験片形状は、図2の形状とした。クロスヘッド速度は、0.5mm/minとした。
残存強度率=暴露試験後の試験片強度÷暴露試験前の試験片強度×100・・式(I)
結果を図3に示す。
これに対して本発明の範囲外である試験片20の強度は0%となった。
SiC繊維織物にSiCマトリックスを形成した直径が15mmの円盤状のセラミックス基複合材料を用意した。そして、セラミックス基複合材料の表面へ、ムライトとPyrexガラス(登録商標)とを体積比で1:1に混合した原料粉末を溶射して中間膜を形成した。ここで溶射条件は、断面組織観察試験の場合と同様とした。また、中間膜の厚さは75±25μmとした。
次に、中間膜の上面に、HfO2の原料粉末を溶射してセラミックス膜を形成した。ここで溶射条件は断面組織観察試験の場合と同様とした。また、セラミックス膜の厚さは150μmとした。
このようにして試験片を「試験片9」とした。
バーナーリグ試験はバーナーリグ試験機を用いて行った。バーナーリグ試験機は、TP保持治具に保持した試験片の被膜表面の温度を、放射温度計(パイロメーター)を用いて常に測定できるようになっていて、被膜表面の温度が所定のサイクルとなるように、被膜表面へ加熱バーナーの火炎を当てて調整できる構成となっている。なお、放射温度計による被膜表面温度の校正は黒体塗料を塗布した部分と試験片部分とで同等な温度となるように試験片の放射率を調整した。また、バーナーリグ試験機の内部には被膜表面を撮影できるカメラも設置されていて、所望のタイミングで被膜表面を撮影して観察することができる。
Claims (4)
- セラミックス基複合材料の表面に中間膜およびセラミックス膜をこの順で有し、前記中間膜および前記セラミックス膜以外の被膜を有さず、
前記中間膜は、厚さが200μm以下であり、高融点酸化物およびガラス成分の原料を用いたものであり、高融点酸化物と1〜60体積%のガラス成分とからなり、
前記高融点酸化物は、酸化ハフニウム、ケイ酸ハフニウム、ケイ酸ルテチウム、ケイ酸イッテルビウム、酸化チタニウム、酸化ジルコニウム、チタン酸アルミニウム、ケイ酸アルミニウムおよびルテチウムハフニウム酸化物からなる群から選ばれる少なくとも一つを主成分とし、
前記ガラス成分は、軟化点が700℃以上である耐熱ガラスであり、
1300℃、9.5atmの雰囲気内に保持した場合に、前記ガラス成分が流動性を備え、前記中間膜または前記セラミックス膜に生じた亀裂に入り込み、これを塞ぐ役割を果たす、耐水蒸気性、耐酸化性および耐熱応力性を備える、被膜付きセラミックス基複合材料。 - セラミックス膜が酸化ハフニウム、ケイ酸ハフニウム、ケイ酸ルテチウム、ケイ酸イッテルビウム、酸化チタニウム、酸化ジルコニウム、チタン酸アルミニウム、ケイ酸アルミニウムおよびルテチウムハフニウム酸化物からなる群から選ばれる少なくとも一つを主成分とする、請求項1に記載の被膜付きセラミックス基複合材料。
- 請求項1または2に記載の被膜付きセラミックス基複合材料を用いてなる、ジェットエンジン用部品。
- セラミックス基複合材料の表面に、高融点酸化物およびガラス成分の原料を用いて溶射して前記中間膜を形成する工程を備え、請求項1〜3のいずれかに記載の被膜付きセラミックス基複合材料が得られる、被膜付きセラミックス基複合材料の製造方法。
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