JP5868093B2 - 現像ローラの製造方法 - Google Patents
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Description
接触現像方式に用いられる現像ローラには、現像ローラ上のトナーが所望の帯電極性や帯電量を得ること、圧接による圧縮変形から十分な回復力を持つこと、現像ローラ表面にトナーが融着又は固着しないことなど、様々な機能が要求される。そこで、これらの機能を満足するため、弾性層上にさらに表面層として被覆層を設けた多層構成の現像ローラが好適に用いられている。
多層構成の現像ローラの弾性層の製造方法として、成形用金型を用いて軸体の外周面に弾性層を形成する製造方法が開示されている(特許文献1)。特許文献1は、弾性層形成用金型の型面に施された無電解複合めっき層の表面を粗面に形成し、弾性層の形成の際に型面を弾性層の外周面に転写する現像ローラの製法である。特許文献1によれば、弾性層の外周面を、現像ローラとして適正な粗面に形成することができ、トナー搬送性を確保しつつ、かぶり現象の発生を抑制することができる現像ローラを得ることができるとしている。
そこで、本発明の目的は、大量の画像出力を行った場合でも部分的な高抵抗化を生じにくい現像ローラの製造方法を提供することにある。
つまり、現像ローラのカーボンブラックを含む導電性の弾性層、および、カーボンブラックを含む導電性の表面層との間には、各層中のカーボンブラックによる導電パスが形成され、当該導電パスによって弾性層と表面層との間の導電性が維持されているものと考えられる。ところが、現像ローラが繰り返しせん断ストレスを受けることによって、部分的に現像ローラの弾性層と表面層の界面における導電パスが徐々に分断され、その結果として、現像ローラの一部に高抵抗化した部分が生じるものと考えられる。
この現象は、弾性層としてシリコーンゴムを使用する場合に特に起こりやすいものであった。現像ローラの高抵抗化した部分を詳細に分析すると、弾性層表面において、高抵抗化した部分は高抵抗化しなかった部分に比べ、カーボンブラックの存在量が少ないことが判明した。つまり、弾性層表面において、高抵抗化した部分は、高抵抗化しなかった部分に比べ、相対的にシリコーンゴム成分が多い部位といえる。すなわち、高抵抗化した部分は高抵抗化しなかった部分に比べて、シリコーンゴムの持つ非接着性が強く発現した箇所と考えられる。
以上から、現像ローラが回転に伴うせん断ストレスを受けた場合に起こる部分的高抵抗化は、下記2点の要因が重なることにより生じていることを突き止めた。
(1)弾性層表面のカーボンブラックの存在量が少ない部分は、カーボンブラックの存在量が多い部分と比べて相対的にシリコーンゴム成分が多くなり、弾性層と表面層との接着性の確保が困難となっていること。
(2)弾性層表面のカーボンブラックの存在量が少ない部分は、弾性層表面の導電性の確保が困難となっていること。
上記現象は、以下に述べる作用により生じるものと推測する。
以下、本発明につき、さらに詳しく説明する。
本発明に係る現像ローラの一例を図1に示す。図1に係る現像ローラ1は、軸芯体2の外周に、弾性層3と、さらにその外周に表面層4を有している。
軸芯体2としては、良好な導電性を有するものであれば、いずれのものも使用でき、炭素鋼、合金鋼及び鋳鉄及び、導電性樹脂の中から、適宜選択して用いることが出来る。なかでも、強度の観点から金属製のものが好ましい。軸芯体2の外径の目安は、通常4mmから10mmの範囲が適当である。
弾性層3は例えば、図2に示す成形用金型5を用いて成形されている。弾性層3は、軸芯体2を予め配した成形金型5のキャビティ内に、酸性カーボンブラックと液状シリコーンゴムとを混練した混合物を注入して作製することができる。
成型用金型5のキャビティ内の軸芯体の表面と対向する面は、フッ素樹脂を含む粒子を共析させた金属めっき層28で構成されている。めっき金属種としては、ニッケル、コバルト、銅、錫、パラジウム、金等が挙げられ、なかでも、汎用性、耐摩耗性、耐食性の観点及び、シリコーンゴム注入時の摩擦帯電の観点から、ニッケルまたはニッケル合金が好ましい。また、めっき方法としては被膜均一性の観点から、無電解めっきが好ましく、また本発明においては、粒子分散型の無電解複合めっきが好ましい。
分散粒子は金型内でのシリコーンゴムとの濡れ性の観点から、フッ素樹脂を含む粒子が必須である。粒子径の目安としては、めっき層の厚さよりも十分小さい直径の粒子径を選択すればよく、また、金型内でシリコーンゴム表面に酸性カーボンブラックを均一に存在させるために、平均粒径が0.1μm以上5μm以下の範囲内のものを用いることが好ましい。また、分散粒子を構成するフッ素樹脂としては、例えば、完全フッ素化樹脂であるポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFEまたはCTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリフッ化ビニル(PVF)、テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、四フッ化エチレン・六フッ化プロピレン共重合体(FEP)、エチレン・四フッ化エチレン共重合体(ETFE)、エチレン・クロロトリフルオロエチレン共重合体(ECTFE)などを例示することができる。これら樹脂は1種または2種以上混合されていても良い。また、異なる粒子を2種以上併用しても良い。上記フッ素樹脂を含む粒子としては、シリコーンゴム材料との離型性に優れる点から、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)粒子が好ましい。また、金属めっき層28中における共析量が5体積%以上35体積%以下の範囲内となるよう、めっき浴にフッ素樹脂を含む粒子を分散させることが好ましい。金属めっき層28中における共析量を上記範囲とすることで、金型のキャビティ表面におけるシリコーンゴムの対流箇所を十分に確保しつつ、酸性カーボンブラックが吸着・保持されるめっき中の金属成分の面積を十分に確保することができる。
弾性層3の構成材料は、感光体との当接幅を安定的に確保し、画像の均一性や長時間安定な画像を出力し続けるために、弾性に富むものが好ましく、本発明ではシリコーンゴムを用いる。また、本発明において、弾性層3の導電性付与剤としては酸性のカーボンブラックを用いることが必須となる。本発明におけるカーボンブラックの酸性度、すなわち、pHは、カーボンブラック表面の官能基の数により決まるもので、酸性、塩基性を知る指標となるものである。一般的に、カーボンブラックの表面には、フェノール性水酸基、カルボキシル基、キノン型酸素などの含酸素官能基が存在する。これらの表面官能基の数はカーボンブラックの種類により異なることが知られている。
(1)カーボンブラック5gとpH7の蒸留水50mlを容器に採取し混合する。
(2)これを15分間煮沸し、その後常温まで30分で冷却する。
(3)この上澄み液中にpHメータ「HM30R」(東亜ディーケーケー社製)の電極を浸し、pHを測定する。
弾性層3の外周に形成される表面層4に用いられる材料としては、ジエンゴム(ブタジエンゴム、イソプレンゴム、アクリロニトリルブタジエンゴム、クロロプレンゴム、エチレンプロピレンゴム)、シリコーンゴム、ウレタンゴムが挙げられる。これらの材料は単独で又は複数種を組み合わせて用いることができる。特に被膜の硬度を小さくでき、トナーの帯電性の高いウレタンゴムを用いることが好ましい。また、表面層4には、導電性を確保するためカーボンブラックを配合する必要がある。表面層4に用いられるカーボンブラックの種類としては、導電性のカーボンブラック、ゴム用カーボンブラック、カラー(インク)用カーボンブラック等を用いることができる。
表面層4を構成する材料は、サンドミル、ペイントシェーカー、ダイノミル、ボールミルの如きビーズを利用した従来公知の分散装置を使用して、分散させる。ここで得られた表面層4形成用の分散体を、スプレー塗工法、ディッピング法等により弾性層3の表面に塗布し、必要に応じて加熱処理を行うことで表面層4が形成される。
〔実施例1〕
[弾性層成形用金型]
弾性層成形用金型として、表1に記載の円筒形金型を用意した。
軸芯体2として外径6mm、長さ260mmの芯金(材質名:SUS304)にプライマ−(商品名:DY39−051、東レダウコーニングシリコーン社製)を塗布し、焼付けしたものを用いた。軸芯体2を上記金型に同心となるように配置し、表2に記載の配合の付加型シリコーンゴム組成物を、金型内に形成されたキャビティに注入した。
上記の弾性層の外周に、表3に記載した材料からなる表面層を設けた。
次にこの表面層の原料液を液流速250cc/min、液温23℃で循環させた直径32mmのシリンダ中に浸入速度100mm/secで前記弾性層外周に浸漬させ、10秒間停止させた。その後に、初速40mm/sec、終速20mm/secの条件で引上げて、10分間自然乾燥させた。次いで、温度140℃にて60分間加熱処理することで表面層の原料の硬化を行い、表面層を設けた弾性層(以下、現像ローラ)を得た。
本実施例における、弾性層の成形に用いた金型のめっき被膜の種類およびシリコーンゴム組成物中のカーボンブラックの諸条件を表4に示す。
まず、現像ローラの軸に沿う方向の抵抗ムラの測定方法を、図4を用いて説明する。測定対象である現像ローラ1の軸芯体2の両端をV字型の切れ込みを有する絶縁性のブロック(不図示)で支持し、現像ローラ1を水平に保つ。厚み2mm、直径20mmの金属製の円盤41を、転がり方向が現像ローラ1の軸方向と平行になるように、現像ローラ1に4.9Nの荷重で押し当てた。そして、50Vの電圧を印加しながら現像ローラ1の軸方向に60mm/secの速度で円盤41を転がしながら移動させた。現像ローラ1の軸芯体と直列につないでいる1kΩの抵抗にかかる電圧値から、現像ローラ1に流れる電流値を1.0mmピッチで求めた。測定が終了すると、現像ローラ1を30°回転させ同様の測定を行った。これを計12回(現像ローラの1周分)繰り返し、得られた電流値の結果から抵抗値の計算を行った。次に、任意の軸方向位置において現像ローラ周方向の抵抗値(12点)を平均し、これを周方向の平均抵抗値とした。この計算を、各軸方向位置(1.0mmピッチ)に対して行い、それらの最大値と最小値の比を、その現像ローラの抵抗ムラとした。
(1)作製した現像ローラを温度23℃、湿度50%の環境下に24時間静置し、その後同環境下で抵抗ムラを求めた。
(2)図5に示す冶具を用いて、現像ローラに物理的ストレスを与えた。具体的には、温度23℃、湿度50%の環境下で現像ローラ1の軸芯体両端部に4.9Nずつ荷重をかけ、現像ローラ1を外径24mmの金属ドラム29に押し当てた。続いて、荷重をかけたまま現像ローラ1を周速160mm/sec、金属ドラム29を周速90mm/secの速度で順方向に回転させ、現像ローラ1を金属ドラム29に摺擦させながら4時間回転させた。
(3)上記のように現像ローラ1に物理的ストレスを与えた後、再び現像ローラを温度23℃、湿度50%の環境下に24時間静置し、その後同環境下で抵抗ムラを求めた。
(4)物理的ストレスを与える前後の抵抗ムラの変化比を、下記式を用いて算出した。
抵抗ムラの変化比=物理的ストレスを与えた後の抵抗ムラ÷物理的ストレスを与える前の抵抗ムラ
上記性能評価試験を行ったものとは別の現像ローラを、カラーレーザープリンタ用の電子写真プロセスカートリッジ(商品名:シアンプリントカートリッジCC531A)に装着し、カラーレーザープリンタ(商品名:Color LaserJet CP2025dn ヒューレットパッカード社製)を用いて評価した。カートリッジとプリンタは、温度23℃、湿度50%の環境下にて24時間静置したものを使用した。評価手順は、温度23℃、湿度50%の環境下にて2%印字画像を、カートリッジ交換警告が出るまで出力し、さらに同じカートリッジを用いて1000枚出力した。その後、画像出力に使用したカートリッジから現像ローラを取り出し、新品のカートリッジに組み込んでプリンタ内に装着した。その後、ハーフトーン画像を記録用紙1枚に出力した。記録用紙にはカラーレーザーA4紙(商品名:セレクトペーパー SC-250 A4、キヤノン株式会社製)を用いた。得られたハーフトーン画像を、左上から順に5cm×5cmの領域に分割し、各領域の中心における濃度を反射濃度計(商品名:マクベス反射濃度計RD918 マクベス社製)を用いて測定した。また、右側および下側で5cmに満たない部分は、測定しなかった。
各領域の画像濃度の最大濃度(MAX)と最小濃度(MIN)との濃度差(MAX−MIN)を算出し、ハーフトーン画像濃度ムラを評価した。
性能評価、画像評価の結果を表5に示す。
弾性層の成形に用いる金型のめっき被膜の種類およびシリコーンゴム組成物中のカーボンブラックの諸条件を表4に示す通りにした以外は実施例1と同様の方法で現像ローラを得た。
得られた現像ローラを用い、実施例1と同様の性能評価および画像評価を行った。結果を表5に示す。
キャビティ内のめっき被膜を、フッ素樹脂を含む粒子を共析させず、単なる無電解ニッケルめっき被膜とした以外は、実施例1と同様の方法で現像ローラを得た。
得られた現像ローラを用い、実施例1と同様の性能評価および画像評価を行った。結果を表5に示す。
めっき被膜やシリコーンゴム中のカーボンブラックの諸条件を表4に示す通りにした以外は実施例1と同様の方法で現像ローラを得た。
得られた現像ローラを用い、実施例1と同様の性能評価および画像評価を行った。結果を表5に示す。
2‥‥軸芯体
3‥‥弾性層
4‥‥表面層
Claims (5)
- 軸芯体、カーボンブラックとシリコーンゴムとを含む導電性の弾性層およびカーボンブラックを含む導電性の表面層を有する現像ローラの製造方法であって、
該軸芯体を配置した円筒状の成形金型のキャビティ内にカーボンブラックを含む液状シリコーンゴム混合物を注入し、該液状シリコーンゴム混合物を硬化させて該弾性層を形成する工程、および
該弾性層の上にカーボンブラックを含む該表面層を形成する工程を有し、
該成形金型のキャビティ内の、該軸芯体の表面と対向する面の少なくとも一部は、フッ素樹脂を含む粒子を共析させた金属めっき層で構成されており、
該液状シリコーンゴム混合物中の該カーボンブラックは酸性カーボンブラックであり、該酸性カーボンブラックのpH値が、2以上5以下であることを特徴とする現像ローラの製造方法。 - 前記フッ素樹脂が、ポリテトラフルオロエチレンである請求項1に記載の現像ローラの製造方法。
- 前記金属めっきが、ニッケルめっきまたはニッケル合金めっきである請求項1または2に記載の現像ローラの製造方法。
- 前記液状シリコーンゴム混合物がビニル末端ポリシロキサンを含む請求項1〜3のいずれか一項に記載の現像ローラの製造方法。
- 前記金属めっき層中の前記フッ素樹脂を含む粒子の共析量が、5体積%以上35体積%以下である請求項1〜4のいずれか一項に記載の現像ローラの製造方法。
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