本発明による遮光領域を変更可能な光学フィルタリングデバイスとそれを用いた光学フィルタリング方法について、図面を用いて説明する。
本発明におけるマイクロシャッタアレイを用いた光学フィルタリングデバイス2000の一例について、図1を用いて説明する。
光学フィルタリングデバイス2000は、マイクロシャッタアレイ2100、配線パターン2022が形成された配線パターン付ガラス基板2020、電源供給部材(コネクタ含む)2080を有している。透過型のシャッタアレイとしての機能を維持しつつも、動作時には電極部に直流の高電圧がかかるので手等の接触による感電事故発生のリスクを低減させるため、パッケージング部材2070、透過光用ガラス窓材2090を備えることが望ましい。またマイクロシャッタの湿気が原因で生じる貼りつき・開閉動作不良を防ぐため、パッケージング部材2070にはOリングなどの気密性保持部材2091を備えることが望ましい。なお、フィルタリングデバイス2000中のマイクロシャッタアレイ2100を開閉動作させるために、電源供給部材2080を介して駆動用制御回路を含む電源2200が接続されている。
次に図2A乃至図2Dを用いて、マイクロシャッタアレイ2100に関する説明をする。
図2Aの点線2010で囲んだ領域は、単一のマイクロシャッタを表わす。単一のマイクロシャッタ2010は、光学的に不透明なシャッタ2001、動作電極2002、サスペンション2003、開口2004を備えて構成されるが、配線パターン付きガラス基板2020のシャッタ2001の側に形成された配線パターン2021のシャッタ2001近傍部分、及び、配線パターン付きガラス基板2020のシャッタ2001と反対の側に形成された遮光パターン2022のシャッタ2001近傍部分も単一のマイクロシャッタ2010の動作に寄与するため、以下の説明ではこれらも合わせて説明する。
図2Bは、マイクロシャッタ2010のシャッタ2001が閉じた状態のSOI部の平面図、図2Cは、シャッタ2001が開いた状態の平面図である。図2Aは、図2BのA−A断面図である。図2Bに示すように、シャッタ2001はサスペンション2003とは、サスペンション2003の中心付近でつながり一体になっている。このため、サスペンション2003が長手方向と垂直方向にねじれるのに伴い、一体となっているシャッタ2001が開閉する。この状態でSOI部2016ではねじれが生じないため、サスペンション2003とSOI部2016との接続部分であるサスペンション2003の長手方向の両端付近2003−1及び2003−2では、ねじれに伴って生じるねじれ応力の変化が急激に大きくなり、破断する可能性が高くなる。このため、サスペンション2003の両端付近2003−1及び2003−2を連続的に太くすることで、サスペンション2003の両端近傍で生じるねじれ応力がなだらか変化するようにすることが望ましい。
次に、図2A、図2B、及び図2Gを用いて単一のマイクロシャッタ構造およびその作製方法について説明する。
マイクロシャッタアレイは、SOI(Silicon on Insulator)ウェハ201を用いて製作される。SOIウェハ201は、図2Eに示すように、Si基板2012の上に、酸化絶縁膜(BOX層:Buried Oxide 層)2014、表面Si膜(以下SOI部と記す)2016が形成された構造をしている。シャッタ2001及びサスペンション2003は、SOI部分2016をリソグラフィ等の技術を用いてレジストをパターニングし(S2301)、エッチングを行って(S2302)切込み2006、2007を入れることにより作製する。
次にSi基板2012の側から深溝エッチングに加工することにより、図2Aに示すようにSi基板2012の一部を電極2002として残しつつ開口2004を形成する(S2303)。この際、装置によってはエッチング可能な溝の深さに限界があったり、電極2002の開口2004側の面が傾いた状態の溝が形成されたりするため、Si基板部を削って薄くした上で深溝エッチングにより加工してもよい。更にSOIウェハ201のSi基板2012の側からエッチング加工することによって、開口2004の底のBOX層2014の部分を除去する(S2304)。以上によりマイクロシャッタを作製する。
次に図2Fを用いて、光学フィルタリングデバイス2000の製作手順について説明する。
リソグラフィやエッチング技術などのMEMS工程にてSOIウェハを加工することで、マイクロシャッタアレイ2010を作製する(S2201)。また、リソグラフィやエッチング技術などのMEMS工程、もしくは塗布などの手法により、図2Dに示すように、配線パターン付きガラス基板2020の上面に遮光パターン2022を下面に配線パターン2021、2023を、それぞれ形成する(S2202)。このとき漏れ光発生を避けるため、配線パターン付きガラス基板2010の下面に形成される配線パターン2021のパターン凹み部分2027と、上面に形成される遮光パターン2022の形成される位置がほぼ合うように形成する。次に、SOIウェハ上に形成したマイクロシャッタアレイ2100と配線パターン付ガラス基板2020を、位置合わせをした上で電気的に接続すると共に接着する(S2203)。更に、電気供給部材2080に接続された配線をパターン付ガラス基板2020上の配線パターン2021、2023に、それぞれ接続する(S2204)。
以上で、光学フィルタリングデバイス2000を構成しても良いが、上記の通り、感電事故発生のリスク低減 を考慮し、マイクロシャッタアレイ2100が内側となるようにパッケージング部材2070、透過光用ガラス窓材2090を用いて、より望ましくは乾燥雰囲気中にて、光学フィルタリングデバイス2000を組み立てる(S2205)のが望ましい。そして、外部の湿度の影響を受けにくくするために、図1に示すようにパッケージング部材2070と配線パターン付きガラス基板2020及び透過光用ガラス窓材2090との間にOリングなどの機密性保持部材2091を介在させるとよい。
次に、シャッタ2001と配線パターン2021、2023、遮光パターン2022との位置関係について説明する。
SOIウェハを用いてシャッタ2001として用いる部分とサスペンション2003を作製するには、SOIウェハ上のSOI部にエッチングやレーザ加工又はEB(Electron Beam)加工によって図2B及び図2Cに示すような切り込み部2006及び2007を形成することが必須であるが、図2Bのようにシャッタ2001が閉じた状態であっても、この切り込み部を通って光が透過してしまう。この切り込み部2006及び2007を透過した光がそのまま光学フィルタリングデバイス2000から出力されてしまうと、ノイズとなり光学フィルタリングデバイス2000の性能を低下させる原因となってしまう。
そこで、切り込み部2006及び2007を透過した光が光学フィルタリングデバイス2000から出力されるのを防ぐため、本発明における光学フィルタリングデバイスでは、SOI部2016の切り込み部2006及び2007を透過した光(図2Aで太い矢印で表示)を遮光するように、配線パターン付きガラス基板2020上でSOI部2016の切り込み部2006及び2007に対抗する位置に配線パターンを形成するようにした。
但し、シャッタ2001と配線パターン付ガラス基板2020上の配線パターン2021には電位差がある場合もあるので、両者の接触によるショートが発生しないよう、形状を工夫している。すなわち図2Bに示すように、シャッタ2001の端部に突起2008を残すことにより、シャッタ2001がパターン付ガラス2020基板側に回転しすぎた場合に、配線パターン付ガラス基板2020と接触する可能性のある部分を突起2008のみとなるようにする。そして、突起2008が接触する可能性のある配線パターン付ガラス2020側の領域には、図2Dに示すように配線パターン凹み部分2027を形成することにより、突起2008が配線パターン付ガラス基板2020に接触した場合でもショートの発生を回避することが可能となる。但し、このままでは突起2008の近傍部分の切込み部2006から漏れ光が発生する可能性があるため、配線パターン付ガラス基板2020の配線パターン2021が形成されている側と反対側の面に遮光用の金属パターン(遮光パターン)2022を形成する。上記により、シャッタ−ガラス上配線接触によるショートの回避と、切り込み部2006からの漏れ光の遮光を両立させている。
次に図3Aを用いて、マイクロシャッタアレイ2010のSOI部2016の構造について説明する。マイクロシャッタアレイ2010は、図2Bで示したSOI部に形成されたマイクロシャッタを縦横に配列したものである。
図3Aに示されたマイクロシャッタアレイでは、SOI部2016を絶縁膜2014が見えるまで掘り込まれた溝2017により、縦方向に並んだシャッタ列2018はそれぞれ電気的に導通し、横に並んだシャッタ列は非導通となっている。後記述するように、横方向に導通するようにした配線へ印加する電圧を工夫することにより、配列中の任意のシャッタを開閉することが可能となっている。
次に図3Bを用いて、マイクロシャッタアレイ2010のSi基板2012側の構造について説明する。マイクロシャッタを縦横に配列したピッチで、Si基板2012に形成した開口2004が縦横に並んでいる。開口2004は、Si基板2012の側からSi部分2012を深溝エッチングして穴を開けたのち、Si基板2012の開口2004の底にある酸化絶縁膜(BOX層)2014部分をエッチング等の手段によって取り除いたものである。このため、SOI基板201の下面側から、SOI部2016に形成したシャッタ2001が見えるようになっている。
次に図4を用いて、配線パターン付ガラス2020の下面に作製された配線について説明する。
配線パターン付ガラス2020のマイクロシャッタアレイ2100が搭載される側の面には、SOI部2016に形成されたシャッタ2001を動作させるための2系統の電力を供給する配線パターン2021、2023とが形成されており、マイクロシャッタアレイ2100が搭載されている側と反対側の面には通電を伴わない遮光パターン2022が形成されている。図4は、配線パターン付きガラス基板2020のマイクロシャッタアレイ2100が搭載されている側の面を示しており、反対側の面に形成された遮光パターン2022は示されていない。
配線パターン2023は、シャッタアレイの各列(図4の上下方向)に電位を供給するのに用いる。配線パターン2021は、閉じた状態のシャッタ2001をラッチ閉状態にするために利用する。配線パターン2021は、シャッタ2001よりもわずかに小さな配線開口2301を備えており、シャッタ2001が開状態の場合に、シャッタ2001を透過した光を透過するようになっている。シャッタ2001を形成するために掘り込まれた配線パターン2021、2023、及び遮光パターン2022は、クロム膜を10nm程度ガラス基板上に形成し、さらに金もしくはアルミの膜を50nm以上、望むらくは100nm以上形成した上で、ホト工程を施して金もしくはアルミ、クロムの順にエッチングすることによって、所望のパターンを得るのが良い。これは、金やアルミは所望の遮光パターンを得るのに便利な材料ではあるが、間に薄いクロム層を形成することにより、不足しがちなガラスとの密着性を高めるのが狙いである。
なお本実施例では、配線パターン付ガラス2020を透過型の光学デバイスとして用いている。この場合、配線パターン2021、2023、及び遮光パターン2022をエッチングする方法は、ウェットエッチによることが肝要である。これは、ドライエッチングによるパターン形成を行うと、基材となるガラス基板に微小な傷が多数発生し、これが光の散乱源となるだけでなく、透過型の光学デバイスとしては致命的な光透過率の低下を招くためである。このため、半導体等では、膜と膜の密着性向上のためチタンや窒化チタンなどを用いることがあるが、これらのようなドライエッチを前提とする膜は本実施例における配線パターン付ガラス2020上のパターン形成には不向きである。
次に図5A乃至図5Cを用いて、光学フィルタリングデバイス2000の断面構造を説明する。
光学フィルタリングデバイス2000は、基本的には、図2Aで説明した単一のシャッタ2010が、XY方向格子状に配列している。図5Cは、SOIウェハ201上に形成されたマイクロシャッタ2010の平面図である。図5Aは、光学フィルタリングデバイス2000に搭載した図5Cのマイクロシャッタ2010に対して、図5CのA−A’断面から見た図、図5Bは、図5CのB−B’断面から見た図を示す。
この構成において、導電性接着剤2028によって配線パターン2023とSOI部分2016とが導通するように固定されている。この導電性接着剤2028、2028’は、半自動のダイボンダもしくはディスペンサを用いることにより、サイズをある程度揃えることが容易である。
図5のような位置関係で固定することで、ガラス2020とシャッタ2001が接触して吸着しないようにするための、スペーサの役割も果たしている。導電性接着剤2028、2028’によって形成されるガラス2020とSOI部分2016の間隔は、15乃至35μm程度に制御されているが、より好ましくは20〜25μmに制御されているとよい。
なお本実施例に類似したものとして特開2000−352943号公報(特許文献7)に記載されている発明があるが、本実施例とは構造が異なっていることを、図2A乃至図5Cを用いて説明する。
特許文献7に記載されている発明では、特許文献7の図3に示されるように、開口2004の真上にシャッタをラッチさせる電極が設けられている。同図中には、バックライト型にはITO(Indium Tin Oxide)、反射型にはAlを用いるとの注釈も付記されている。
このうち、本実施例と同様に光透過型の光学デバイスとして利用可能な発明は、上記バックライト型に相当する。金属電極としてITOを用いており、可視光を透過させるデバイスとして機能することが想定される。
一方本実施例では、図2に示すように開口2004の真上には電極は存在しない。これは、シャッタ閉時に遮光率が高くなるように、光を透過させない金属を電極に用いているためである。
開口2004の真上に光を透過させない金属電極を存在させると、光透過型の光学デバイスとして機能しなくなる。すなわち、特許文献7に記載されている発明と本実施例の発明ではデバイスの立体構造が異なっている。
なお、特許文献7に記載されている発明では金属電極としてITOを用いている。本実施例の発明の空間フィルタリングデバイス2000を用いた半導体の欠陥検査装置では、欠陥検出感度確保のため、一般的に紫外〜深紫外の波長の照明光が使用されている。ITO膜は特に深紫外の光を透過させないため、特許文献7に記載されている発明のデバイスでは代替できないことを付記する。
なお現在、深紫外光の透過率が高く、かつ安定した平らな膜を形成可能な透明金属膜は存在が知られていない。特許文献7に記載されている発明のデバイス構造でかつ電極材料を変更しても、本発明と同じ機能を実現することは、現在では困難である。
上記とは別に、本実施例には特許文献7との相違点がある。以下ではこの点について説明する。
シャッタ本体等の薄いシリコンの膜がガラスなどに面で接触すると、スティッキング(貼り付き)現象が起こることが知られている。本実施例で言うと、ラッチ閉状態(シャッタが配線パターン付ガラス基板に引き寄せられた状態)の際に、発生しやすくなる。特許文献7では数種類のシャッタが示されているが、いずれのシャッタにも突起が付加されていない。このため、シャッタの先端がアドレス電極上のスペーサーフィルムに接触してもなおアドレス電極とシャッタの間の電位が大きくなる場合には、サスペンションとシャッタ先端が支点、シャッタの重心近傍が力点となって大きな反りが生じ、シャッタ先端近傍がスペーサーフィルムに、広い面で接触する。接触した面積に応じてスティッキングによる付着力が大きくなる。スティッキングによる付着力が大きいと、静電力ではシャッタがはがれなくなってシャッタ本体が開閉可能でなくなったり、無理にはがすとシャッタ本体が破損したりする可能性が大きくなる。
一方本実施例のシャッタは、先端に突起を付加している。これにより、接触する領域を突起部分に限定している。また、突起部分を小さく形成することで、突起部分がガラス基板に接触しても大きな反りは生じない構造になっている。すなわち、特許文献7に記載されている発明と本実施例の発明では、デバイスの立体構造が異なっている。
図5A及び図5Bに関する実施例の説明において、ガラス基板2020とSOI部分2016の間隔は15乃至35μm程度に制御されているとしたが、このように非常に近接した場所に電位の異なる導電部(配線、シャッタ等)が設置されているため、ガラス基板2020上もしくはシャッタアレイ2100上の導電部に高い電圧をかけると、これらが乾燥空気にて封止されていたとしても、絶縁破壊が起こって放電し、導電部にダメージを生じる可能性がある。一般的に乾燥空気の絶縁破壊の目安電界強度は3kV/mm程度とされている。すなわち、ガラス基板2020とSOI部分2016の間隔は好ましくは20〜25μm程度であるから、ガラス2020上の配線パターン2021,2023とシャッタ2001との電位差が60〜75Vを超えると絶縁破壊が生じる可能性がある。従って、ガラス基板2020上の配線パターン2021,2023とシャッタ2001との電位差の絶対値|ΔV2|は、60V以下となることが安全性を考慮した運用上、必須である。
本発明者らがデバイスを試作した範囲では、シャッタをラッチ状態にするための電位差Vlatchは40V程度であった。この場合、上記絶縁破壊を考慮しても問題なくラッチ動作させることが可能である。
なお、ラッチ状態になったシャッタは、よりガラス基板2020上の配線パターン2021,2023との間隔が狭くなる。設計にもよるが、最も狭い場所でおよそ10μmとなる。従って、ラッチ状態になったシャッタへ印加する電位差は、図7Bで説明するVitmed に素早く下げることが、不要な絶縁破壊を回避することにつながる。
次に図6Aを用いて、シャッタ2001単体の動作原理を説明する。
まず、図6Aの左側のようにシャッタ2001が閉じた状態(初期状態)で酸化絶縁膜2014で、電気的に絶縁された状態で接続しているシャッタ2001と動作電極2002の間に電位差ΔVを与えると、電位差ΔVを動作電極2002とシャッタ2001との平均間隔d(図6C参照)で割った電界強度の絶対値|ΔV/d|の自乗に比例した静電引力2107が両者に働く。このとき、動作電極2002とシャッタ2001の電位は、どちらかが必ずしも接地電位でなくてもよく、相対的に上記した電位差を発生させればよい。この力の強さに応じてサスペンション2003がねじれ、図6Aの右側のようにシャッタ2001が開く。このとき、シャッタ閉(図6Aの左側:初期状態)→開(図6Aの右側)の動作を開始した時点よりもシャッタ2001と動作電極2002の間隔d’が狭くなるため、電界強度の絶対値|ΔV/d’|はシャッタ2001が閉じた状態の時に働く引力2107よりも大きくなる。
サスペンション2003のねじれが復元する力と電界によって生じる引力とのバランスでシャッタと動作電極の平均間隔dが狭くなるため、同じ電圧印加状態においても静電引力はより強くなる。このため、一旦シャッタ2001が開いてしまえば、より低い電位差ΔV’に電位差を変更しても、シャッタの開状態は維持される(ラッチ開状態)。
サスペンション2003のねじれ復元力は、ねじれの角度に依存して大きくなる。ここで電位差ΔVが小さくなって0に近づくと、サスペンション2003のねじれの復元力が優位となり、サスペンション2003のねじれが復元するのに伴ってシャッタ2001が閉じられる。
以上がシャッタ2001の開閉のサイクルである。
なお、引力2107の大きさは電界の絶対値|ΔV/d|の自乗に比例し、電位差ΔVが正か負かには関係がない。そこで以下では、電位差ΔVが正の場合について説明する。
シャッタ2001の動作サイクルを、図6Bを用いて説明する。
図6Bのグラフで、横軸はシャッタ2001−動作電極2002間の電位差ΔV、縦軸をサスペンション2003のねじれ角Δθとする。Δθがほぼ0であればシャッタ2001は閉状態、Δθがほぼ90であればシャッタ2001の開状態を示す。
初期状態(S701)は電位差ΔV=0である。ここからΔVをVstayまで上昇させた状態(S702)でもシャッタ2001は閉じた状態(初期状態)である。更にΔVを上昇させると、Vopenを越えた時点でシャッタが完全に開く(θ≒90°:ラッチ開状態)。更にΔVを上昇させても、しばらくはその状態が維持される(S703)。ここからVopenを超えてVstayまでΔVを下降させた状態(S704)でも、シャッタが完全に開いた状態(ラッチ開状態)が維持される。すなわち、電位差ΔVが同一であっても、シャッタが閉じた状態(S702)と開いた状態(S704)を実現することが可能である。更にΔVを下降させてVcloseよりも小さくなると、シャッタ2001は閉じる。最後にΔVを0まで下降させ、初期状態に戻る(S701)。
上記の説明から明らかなように、初期状態(S701)での電位差の絶対値|ΔV|はVcloseよりも小さければ任意の電位差でもよく、中間状態(S702、S704)の|ΔV|はVcloseとVopenに近すぎない任意の電位差であればよく、完全開状態(S703)の|ΔV|はVopenを超える電位差であればよい。
次に図7A乃至図7Cを用いて、シャッタ2001を強制的に閉じる動作を説明する。
まず、図7Aの左側に示したような状態(初期状態)で、シャッタ2001と配線パターン付ガラス基板2020上の動作配線パターン2021の間に電位差ΔV2を与えると、電位差ΔV2を間隔d2´(図7Cの左側の閉状態の図を参照)で割った電界強度の絶対値|ΔV2/d2´|の自乗に応じた静電引力2207が両者に働く。この力の強さに応じてサスペンション2003がねじれ、シャッタ2001が配線パターン付ガラス基板2020の方向に回転する。この回転の最大角Δθmaxは、シャッタ2001の突起部2008が配線パターン付ガラス基板2020にほぼ接触する角度である。ほぼΔθmaxまで回転した状態を、以下ラッチ閉状態と記す。
シャッタ2001と動作電極2002の間に電位差ΔVを加えた場合と同様に、シャッタ閉(初期状態)→閉動作を開始した時点のシャッタ2001と配線パターン2021の間隔d2(図7Cの左側の初期状態の図を参照)よりもシャッタ2001と配線パターン2021の間隔d2’ (図7Cの右側のラッチ閉の状態の図を参照)が狭くなるため、電界強度の絶対値|ΔV2/d2’|は|ΔV2/d2|よりも大きくなる。また、一旦シャッタ2001がラッチ閉の状態になってしまえば、より低い電位差ΔV2’(ΔV2>ΔV2’)であってもラッチ状態は維持される。更に電位差ΔV2を小さくしてほぼ0とすると、サスペンション2003のねじれが復元する力が優位となり、シャッタ2001が初期状態(図7Aの左側)に戻る。
次に、シャッタ2001の動作サイクルを図7Bを用いて説明する。
図7Bのグラフの横軸はシャッタ2001−配線パターン2021間の電位差ΔV2、縦軸をサスペンション2003のねじれ角Δθ2とする。但し、回転方向は図6Aの場合とは逆方向である。
Δθ2がほぼ0であればシャッタ2001は閉状態(図7Cの左側の状態)、Δθ2がほぼΔθmaxであればシャッタ2001は強制閉(ラッチ閉)状態(図7Cの右側の状態)であることを示す。
初期状態(S801)は電位差ΔV=0である。ここからΔV2をVitmedまで上昇させた状態(S802)でも、シャッタ2001はほぼ閉じた状態(図7Cの左側の状態)である。更にΔV2を上昇させると、Vlatchを越えた時点でシャッタがラッチ閉状態(図7Cの右側の状態)になる(Δθ≒90°)。更にΔV2を上昇させても、しばらくはその状態が維持される(S803)。ここからVlatchを超えてVitmedまでΔV2を下降させた状態(S804)でも、シャッタ2001のラッチ閉状態が維持される。すなわち、電位差ΔV2が同一であっても、シャッタが閉状態(S802)とラッチ閉状態(S804)を実現することが可能である。更にΔV2を下降させてVrelよりも小さくなると、シャッタ2001は解放され閉状態になる。最後にΔV2を0まで下降させ、初期状態に戻る(S801)。
上記の説明から明らかなように、初期状態(S801)での電位差の絶対値|ΔV|はVrelよりも小さければ任意の電位差でもよく、中間状態(S802、S704)の|ΔV|はVrelとVlatchに近すぎない任意の電位差であればよく、完全開状態(S803)の|ΔV|はVlatchを超える電位差であればよい。
次に、図8A乃至図8Fを用いて、所望のシャッタ2001を閉じておき、それ以外のシャッタを開く方法を説明する。
まず、図8Aに示すように、着目したシャッタ2001が閉状態(図8FのS802)であれば、図6A及び図6Bで説明したように動作電極2002に電位差ΔVを付加することによって、図8Bに示すようにシャッタを2001を開くことができる(ラッチ開状態:図8FのS703’)。但し、シャッタ2001と配線パターン付ガラス基板2020上の配線パターン(電極)2021との間にΔV=Vitmdだけ電位差が発生しているため、シャッタ2001自体には図6A乃至図6Cにて説明したシャッタ2001を開こうとする力の他に、図7A乃至図7Cにて説明したシャッタ2001をガラス基板側に引き付けようとする力がかかっている。このため、シャッタ2001を開くための電位差ΔVは、図8Fに示すようにVopenよりも大きいV’openだけ必要である。
一方、図8Cに示すように、着目したシャッタ2001’がラッチ閉状態(図8FのS803もしくは804)であれば、動作電極2002に電位差ΔVを付加してもシャッタ2001’を閉じておくことができる(図8FのS804’)。これは、配線パターン2021とシャッタ2001’の距離d3(図8E参照)がシャッタ2001’と動作電極2002の距離d4と比べて圧倒的に短く、シャッタ2001’にかかる力が、配線パターン2021方向には|ΔV2/d3|の自乗に、動作電極2002方向には|ΔV/d4|の自乗に、それぞれ比例するが、d3≪d4のため、ΔV2<ΔVであっても|ΔV2/d3|≫|ΔV/d4|となり、シャッタ2001’が動作電極2002に引き寄せられる力が有効に働かないためである。
なお、図8Fに示すように、電位差ΔVをV'openを超えてV''openまで印加した場合には、図7A乃至図7Cにて説明したシャッタ2001を配線パターン付ガラス基板2020の側に引き付けようとする力よりも大きな力が動作電極2002とシャッタ2001との間にかかり、シャッタ2001が動作電極2002の側に引き寄せられて開く(ラッチ開)。このため、シャッタ2001の動作電位差ΔVは、V'open< ΔV<V''openの範囲で設定・運用すべきである。
ここで、動作電極2002はマイクロシャッタアレイ2100上の全てのシャッタで同一の電位となるため、予め閉じておきたいシャッタを全てラッチ閉状態にしておき、動作電極2002に電位差ΔVをかけてラッチ閉状態になっていないシャッタ2001を全て開いた後、開いたシャッタ2001を開いた状態(ラッチ開の状態)で維持するよう、動作電極2002にかけた電位差を、シャッタ2001が閉じない程度に低くする。この時、ラッチ状態のシャッタ2001´をΔV2→0として閉状態(初期状態)に戻してもよい。
シャッタアレイ2010全体のシャッタを閉じたい場合には、シャッタ2001・動作電極2002・配線パターン2021にかける電位差を0にする。
本発明に関わる光学フィルタリングデバイス2000の、所望のフィルタリング状態を得るための設定フローを図9に示す。
まず着目したシャッタ2001の真上を通るパターン配線2021に電圧を印加し(S901)、着目したシャッタ2001を通るシャッタ列2018にパターン配線2021との電位差がVlatchとなるように電圧を印加(S902)して着目したシャッタ2001をラッチ閉状態にした後、シャッタ列2018とパターン配線2021との電位差がVitmedとなるように電圧を修正(S903)して着目したシャッタ2001のラッチ閉状態を保持する。
上記S901〜S903の手順を、所望のシャッタ全てがラッチ閉状態になるまで繰り返す(S905)。
所望のシャッタ全てがラッチ閉状態になったら、各シャッタ2001との電位差がVopenとなるように動作電極2002に電圧を印加して(S906)、着目したシャッタ以外の全てのシャッタを開く。更に、各シャッタ2001との電位差がVstayとなるように動作電極2002に印加する電圧を調整(S907)して、着目したシャッタ以外のシャッタが開いた状態(ラッチ開状態)を保持することにより、所望のフィルタリング状態を得る設定を終了する。
次に、図10A及び図10Bを用いて、本発明のマイクロシャッタアレイを用いた光学フィルタリングデバイス2000における配線パターン付ガラス基板2020の変形例を説明する。
配線パターン付ガラス基板2020の配線はシャッタ2001を強制的に閉とする機能と、切り込み部(図2Bの2006,2007)からの漏れ光を遮る機能を持つ。従って、シャッタ2001を強制閉にできれば配線部分がどこにあってもよい。本変形例は、強制閉用配線パターン2021’を配線パターン付ガラス基板2020に対してシャッタアレイ2100とは反対側の面に形成して、図2Aに示した構成において配線パターン2021と2022(遮光パターン)とを統合したものである。図10A及び図10Bにおいて、図2と同じ番号の部品は同じ構成を示す。
図10Bには、配線パターン付ガラス基板2020とその上(シャッタアレイ2100)に形成された配線パターン2021'を示す。
本変形例によれば、強制閉用配線パターン2021’を配線パターン付ガラス基板2020に対してシャッタアレイ2100とは反対側の面に形成したので、シャッタ2001が配線パターン2021’と接触することによるショート事故を未然に防ぐことが可能である。また、配線パターン2021’及び図2Aに示した遮光パターン2022により遮光される領域を分割することなく配線パターン付ガラス基板2020上に形成すればよく、図2Aに示したような、配線パターン付ガラス基板2020の下側(シャッタアレイ2100の側)に形成する配線パターン2021とガラス基板2020の上側に形成する金属パターン(遮光パターン)2022の位置あわせをする必要がないため、配線形成プロセスの簡易化が見込まれる。
なお本実施例によれば、シャッタ2001はSOIウェハのSOI部に切り込みを入れることによって形成されるとしたが、SOI部の上にアルミや金などの金属膜を薄く形成することにより、シャッタ2001による遮光性能を向上させてもよい。
上記までは電位差のみを用いてシャッタ開閉動作について説明してきたが、以下では具体的に配線パターン付ガラス基板2020上の配線パターン2021,2023、及びシャッタ2001に電圧を印加する実施例を、図11A及び図11Bを用いて説明する。
まず基底状態1は、全ての電位が0の場合であり、本実施例のデバイスの電源投入の初期状態であり、シャッタ2001は閉状態(図7Aの左側の状態)である。次に、安定状態(S1101)は、配線パターン2021,2023、及びシャッタ2001に−5Vが印加された状態で、電位差の絶対値|ΔV2|は0Vであり、シャッタは閉状態である。次に、基準状態1(S1102)は、安定状態(S1101)から配線パターン2021,2023に印加する電圧を−5Vから+5Vに変えた状態で、電位差の絶対値|ΔV2|は10Vであり、シャッタ2001は閉状態である。
次に、中間状態1(S1103)は、基準状態1(S1102)からシャッタ2001に印加する電圧を−5Vから−20Vに変えた状態で、電位差の絶対値|ΔV2|は25Vであり、シャッタ2001は閉状態である。
次に、移行準位(S1104)は、中間状態1(S1103)から配線パターン2021,2023に印加する電圧を+5Vから+20Vに変えた状態で、電位差の絶対値|ΔV2|は40Vであり、シャッタ2001は閉状態からラッチ閉状態(図7Aの右側の状態)に移行する。次に、中間状態2(S1105)は、移行準位(S1104)から配線パターン2021,2023に印加する電圧を+20Vから+5Vに変えた状態で、電位差の絶対値|ΔV2|は25Vであり、シャッタ2001はラッチ閉状態である。
次に、基準状態2(S1106)は、中間状態1(S1103)からシャッタ2001に印加する電圧を−20Vから−5Vに変えた状態で、電位差の絶対値|ΔV2|は10Vであり、シャッタ2001はラッチ閉状態である。
更に、基準状態2(S1106)から配線パターン2021,2023に印加する電圧を+5Vから−5Vに変えることにより、安定状態(閉状態:S1101)に戻る。
以上が、シャッタ開閉動作サイクルのうちのシャッタ閉動作サイクル時に配線パターン付ガラス基板2020上の配線パターン2021,2023、及びシャッタ2001に印加する電圧値の実施例である。
なお、図11A及び図11Bの説明からもわかるように、中間状態1(S1103)からシャッタ2001に印加する電圧を−20Vから−5Vに変えると、電位差の絶対値|ΔV2|は10Vでありシャッタ2001は閉状態のままとなって基準状態1(S1102)に戻る。一方、基準状態2(S1106)からシャッタ2001に印加する電圧を−5Vから−20Vに変えると、電位差の絶対値|ΔV2|は25Vでありシャッタ2001はラッチ閉状態のままとなって中間状態2(S1105)に戻る。すなわち、基準状態1(S1102)と中間状態1(S1103)、中間状態2(S1105)と基準状態2(S1106)は交換可能な、行き来の可能な状態の対である。
図11A及び図11Bの説明からわかるように、基準状態2(S1106)を経なければシャッタはラッチ閉の状態から閉状態には移行しない。この特性を利用して、遮光したい領域全体に含まれるシャッタを閉状態からラッチ閉の状態に移行させることが可能である。
図12は、遮光したい領域全体に含まれるシャッタ2001を閉状態からラッチ閉の状態に移行させる手順を示している。図3A、図3B及び図4に示されているように、縦に並んでいるシャッタがそれぞれ電気的に導通しており、また横に並んでいる配線パターン付ガラス基板2020上の配線パターン2021に導通している。図11Bの説明からわかるように、どちらか一方が高電圧状態(VA2、VB2)になっても閉状態→ラッチ閉の状態の移行は生じないが、双方が同時に極性が異なる高電圧状態になると閉状態→ラッチ閉の状態の移行が生じ、一旦ラッチ閉の状態に移行すると双方が低電圧状態(VA1、VB1)になってもラッチ閉の状態が継続される。
そこで図12では、電気的に接続された縦方向のシャッタ列を右から順に選んで高電圧状態(VA2)にし、遮光しようとする領域に含まれるシャッタの上部分に形成されている横方向の配線パターン付ガラス基板2020上の配線パターンの行を選んで高電圧状態(VB2)にすることで、遮光しようとする領域に含まれるシャッタ2001をラッチ閉の状態(図12中の3:S1104又は4:S1105の状態)に移行させることをS1201からS1212にかけて順次繰り返すことにより、所望の遮光領域に含まれる全てのシャッタ2001をラッチ閉の状態に移行させている。
所望の遮光領域に含まれる全てのシャッタがラッチ閉の状態になったら、動作電極2002に図6Bに示したVOPENに相当する電圧として高電圧(典型的には200V以上)を印加して、閉状態のシャッタを全てラッチ開の状態(図6A参照)に移行させる。この後、動作電極2002に印加する電圧を図6Bに示したVSTAYに相当する電圧として中間電圧(典型的には40V程度)に下げても、一旦ラッチ開の状態になったシャッタ2001はラッチ開の状態を維持する。以上によって、本発明の光学フィルタリングデバイス2000を用いた所望の領域の遮光が実現される。
更に、シャッタ2001がラッチ開の状態で動作電極2002に印加する電圧を図6Bに示したVCLOSEに相当する電圧として−5Vに設定するとシャッタ2001と動作電極2002とが同電位となり、シャッタ2001と動作電極2002との間に静電引力が働かなくなり、シャッタ2001はサスペンション2003のねじれの復元力により初期の閉の状態(図6Aの左側)に戻る。シャッタ2001が閉→ラッチ開→閉の動作の間、シャッタ2001に印加する電圧は−5Vである。
なお、図12に示したS1102〜S1106及びS703、S704は、それぞれ図11Aで説明した初期状態(閉の状態)とラッチ閉の状態、及び図6で説明したラッチ開の状態に相当する。
次に、図13及び図14A乃至図14Cを用いて、本発明の光学フィルタリングデバイス2000 の遮光状態を制御するための制御電源システム実装の実施例について示す。
図12でも説明したように、各シャッタ2001は縦横の各制御信号を用いて状態が制御されるため、縦横の信号線の数だけ、基本的には全ての信号線には互いに異なる信号を印加するが必要ある。すなわち、図13に丸印1301で示されたシャッタを4×3のアレイ上に配列したシャッタアレイであれば横方向に5231〜5234の4本、縦方向に5211〜5213の3本、即ち、4+3=7本、例えば100×40のシャッタアレイであれば、ラッチ制御用の信号線は100+40=140本の信号線があるが、これらの信号線には、基本的には異なる信号を印加する必要がある。このため、例えば7本、もしくは140本の信号を出力する専用ICを製作したり、7本分もしくは140本分のD/A出力を準備しても良い。
但し、各配線に同時に似たような信号を印加するので、スイッチ配列と信号出力を組み合わせて使う方法が、より実装が容易である。そこで、図14A乃至図14Cを用いて説明する。図14Aには、丸印1301で示されたシャッタアレイとスイッチ配列5311〜5313及び5331〜5334との関係を示す。図14Bは、状態遷移用信号源出力(5301及び5303)と安定状態の電圧出力(5302及び5304)との関係を示すグラフである。図14Cには、ある時間(0〜t0の時間とt0〜2×t0の時間)における各スイッチ5311〜5313及び5331〜5334の信号線5301〜5304との接続の状態を示した表である。シャッタアレイを駆動するための制御電源として、スイッチ配列(横方向に5331〜5334、縦方向に5311〜5313)と状態遷移用信号源出力(5301及び5303)、及び安定状態の電圧出力(5302及び5304)を用いる実施例について説明する。
シャッタアレイは全体にわたって非常に似た開閉特性を持つシャッタの配列であるため、印加電圧をうまく選べば、シャッタ列毎に印加電圧を一つにした実装が可能である。本実施例はそのようなシステムである。
所望のシャッタ5238をラッチ状態にするための、制御電源システムの動作順序を説明する。
シャッタ列5231〜5234、及び配線列5211〜5213は、それぞれスイッチ5311〜5313、及び5331〜5334に電気的に接続されている。スイッチ5311〜5313は信号線5303及び5304を、スイッチ5331〜5334は信号線5301及び5302を、それぞれ切り替えることができるようになっている。
信号線5301〜5304には、周期t0で図14Bに示すような周期的な信号が流れされている。図14B中のVA1、VA2、VB1、VB2の電位は、図11A及び図11Bにて示したものと同様に、Vrel<|VB1−VA1|<Vlatch、Vrel<|VB2−VA1|<Vlatch、Vrel<|VB1−VA2|<Vlatch、|VB2−VA2|>Vlatchを満たすように選択する。ここで、5301がVB1からVB2に変わった後、5303が一旦VA2になった上でVA1に戻り、更に5301がVB2からVB1に変わるのが肝要である。
次に、図14Cの表を用いて、所望のシャッタ5238をラッチさせる手順を説明する。
まず時間0からt0までの間、スイッチ5311〜5313及び5331〜5334を、表の中央の列1401に示された信号線と接続するように切り替える。同様に、時間t0から2×t0までの間、スイッチ5311〜5313及び5331〜5334は、表の右側の列に示された信号線と接続するように切り替える。これによって、所望のシャッタ5238全てが、ラッチ閉の状態となる。
この制御方法では、ラッチ閉の状態に直接かかわらないシャッタ列の信号線(今回の場合は時間0〜t0であれば5212、時間t0〜2×t0であれば5213、および5231、5232)は、ある一定電圧(既にラッチされていればラッチ閉の状態を、単なる閉状態であれば閉状態を、それぞれ維持する電圧)を印加されていれば、シャッタの閉状態⇔ラッチ閉の状態間の状態遷移は発生しない。ラッチ閉の状態に直接かかわるシャッタ列のみ必要な制御信号が印加されるよう、スイッチ配列の制御を併用してシャッタ1301のラッチ制御を実現する。なお、全シャッタのラッチ閉の状態解除のためには、スイッチ5311〜5313を信号線5304に、スイッチ5331〜5334を信号線5302に接続した上で、信号線5302に流す信号をVA1とすることによって、実現する。
次に図15を用いて、シャッタアレイを駆動するための制御電源として、スイッチ配列と安定状態の電圧出力を用いる実施例について説明する。本実施例は、定電圧源とスイッチ配列だけを利用することで、シャッタのラッチ制御を実現する実装例である。
所望のシャッタ5238をラッチ状態にするための、制御電源システムの動作順序を説明する。
シャッタ列5231〜5234、及び配線列5211〜5213は、それぞれスイッチ5341〜5343、及び5351〜5354に電気的に接続されている。スイッチ5341〜5343は信号線5323及び5324を、スイッチ5351〜5354は信号線5321、5322、及び5324を、それぞれ切り替えることができるようになっている。信号線5321〜5324には、周期t0で図15Bに示すように一定電圧が信号として流れされている。図中のVA1、VA2、VB1、VB2の電位は、図14Bで説明したのと同様、Vrel<|VB1−VA1|<Vlatch、Vrel<|VB2−VA1|<Vlatch、Vrel<|VB1−VA2|<Vlatch、|VB2−VA2|>Vlatchを満たすように選択する。
次に、図15Cの表を用いて、所望のシャッタ5238をラッチさせる手順を説明する。見方は図14Cの場合と同様である。時間0〜t0、t0〜2×t0、 2×t0〜3×t0の間、各スイッチを表に示された信号線と接続するように切り替える。この手順により、所望のシャッタ5238全てが、ラッチ状態となる。3×t0〜の列に示す信号線に各スイッチを接続することにより、ラッチ閉の状態を維持することができる。なお、スイッチ5341〜5343、5351〜5354を信号線5324に接続することにより、全シャッタのラッチ閉の状態が解除される。
次に図16を用いて、光学フィルタリングデバイス2000の多機能化について説明する。
本発明の光学フィルタリングデバイス2000では、シャッタ2001が配線パターン付ガラス基板2020に吸着したり破損したりしても、動作電極2002や配線パターン2021と接触してショートが発生しない限り、所望の電圧を印加することが可能である。すなわち、印加電圧を監視しているだけではシャッタ2001の開閉状態を管理することができない。
そこで、光学フィルタリングデバイス2000とシャッタの開閉状態を確認するための拡大観察系3210とを備える2次元空間フィルタシステム32を構成する(図16A参照)。
拡大観察系3210は、少なくとも照明3211、レンズ3212、カメラ3213、絞り3218を備えて構成される。カメラ3213の位置は、レンズ3212を介してシャッタ2001と共役な位置に設置する。着目したシャッタ2001からの反射光3214がカメラ3213に到達して明るく見えれば(図16B)シャッタ2001は閉状態であり、反射光が無く暗く見えればシャッタ2001は開状態(図16C)と判定する。
ここで、図16Dに示すようにラッチ閉の状態になっているシャッタ2001はΔθmaxを最大としてΔθだけ傾いているため、直接反射光はシャッタ以外の部分とは2×Δθだけずれた方向に反射される。空間フィルタリングデバイス2000において、シャッタ2001の動作特性を実測することが重要であり、シャッタ2001が閉状態かラッチ閉の状態かを判別する必要がある。そこで絞り3218の開口サイズを変えてカメラ3213に撮像することで状態判別を行う。
絞り3218の開口が小さく、ラッチ閉の状態のシャッタ2001からの反射光がレンズ3212に入らなくなると、シャッタ2001が真っ暗に見える。 (図16D)一方、絞り3218の開口3219を大きくして、ラッチ閉の状態のシャッタ2001からの反射光がカメラ3213に到達するようにするとシャッタ2001が明るく見える(図16E)。そこでまず絞り3218の開口3219を大きくし、シャッタ2001の表面で反射してレンズ3212で集光され開口3219を通過した光による像をカメラ3213にて撮像し、シャッタ2001の位置の明暗からシャッタ2001の開閉状態を判別する。続いて、絞り3218の開口3219を小さくしてシャッタ2001の表面で反射してレンズ3212で集光され開口3219を通過した光による像をカメラ3213にて撮像し、シャッタ2001の位置の明暗からシャッタ2001が閉状態かラッチ閉の状態かを判別する。なお、シャッタ2001の開閉状態を確認しない場合には、照明3211は消灯するか遮光して、光学フィルタリングデバイス2000に照明光が当たらないようにするのが望ましい。
図17A乃至図17Cを用いて、各シャッタ2001における閉状態⇔ラッチ閉の状態の遷移に必要な電位差ΔV2にばらつきが生じる原因について説明する。図17Bに示すようなシャッタ2001のサスペンション2003の幅1761は、MEMSのホト工程やエッチング工程におけるばらつきの発生のために、幅1761がシャッタによってばらつく。ばらつく範囲は、一般的には幅1761全体の10%程度である。
本実施例の光学フィルタリングデバイス2000にかかわるシャッタアレイでは、シャッタ2001が閉状態を回復するためにサスペンション2003のねじれが回復する力を利用しているが、このねじれの回復力はサスペンション2003の断面積に反比例する。サスペンション2003の幅1761がばらついてサスペンション2003の断面積が変化すると、サスペンション2003のねじれの回復力も変化するため、サスペンション2003の動作特性にばらつきが生じることになる。
一方、各シャッタ2001には、シャッタ2001と配線パターン付きガラス基板2020の上に形成した配線2021との間に生じる電位差に基づく静電気力に比例した力が発生することで、閉状態⇔ラッチ閉の状態間の遷移が生じる。ここで、シャッタ2001と配線パターン付きガラス基板2020の上に形成した配線の間に生じる静電気力は、シャッタ2001と配線パターン付きガラス基板2020の間のすき間距離の自乗に反比例する。このため、シャッタ2001と配線パターン付きガラス基板間のすき間距離のばらつきに依存して、閉状態からラッチ閉の状態へ遷移する際の電位差がばらつく。
以上が、各シャッタ2001の開閉動作に関連して、動作電位差にシャッタ毎のばらつきが生じる原因である。
各シャッタの動作特性のばらつきは根源的なものではあるが、もともとシャッタアレイ全体にわたって非常に似た開閉特性を持つシャッタが並んでいるため、印加電圧をうまく選べば、シャッタ列毎に印加電圧を変える必要は無い。そこで次に図18と図19A乃至図19Bを用いて、光学フィルタリングデバイス2000に含まれるシャッタ開閉の電圧特性を確認し、印加電圧を設定するためのGUIの実施例を示す。
シャッタ2001と動作電極2002との間の電位差を大きくしていくと、しばらく状態変化は無く(図18のS1801)、まずシャッタ2001が1つだけ開き(S1802)、だんだん開くシャッタ2001の数が多くなり、ついには開閉動作可能な全てのシャッタ2001が開く(S1803)。その状態から電位差を小さくすると、同様にしばらく状態変化は無く、ある電位差でまずシャッタが1つだけ閉じ、だんだん閉じるシャッタの数が多くなり(S1804),(S1805)、ついには、全シャッタが閉じる(S1806)。ここでシャッタ全体の動作として必要な電位差は、図8A乃至図8Eでも説明したように、(1)開いている全てのシャッタが安定して開く電位差V’stay、(2)全シャッタが開く電位差V’open、の2つである。これらを求めるため、(A)シャッタが開き始める電位差Vopen、(B)全シャッタが開く電位差V’open、(C)シャッタが閉じ始める電位差V’closeを実測する。(1)は(A)と(C)から求められ、(2)は(B)の値となる。
図19Aにユーザインタフェース4721の一例を示す。ユーザインタフェース4721には、シャッタアレイの像4731、駆動電極2002とシャッタ2001との電位差とシャッタ2001の回転角との関係を示すグラフ4732、駆動電極2002とシャッタ2001との電位差を設定する電位差設定ボタン4751、設定した結果を保存するための保存ボタンP1804,表示した内容をクリアして元の状態に戻すためのボタンP1805が表示される。このユーザインタフェース4721の電位差設定ボタン4751を右へドラッグするか、もしくは+ボタン4752を押すことで、シャッタ2001と動作電極2002とに印加するそれぞれの電圧の差、即ちシャッタ2001と動作電極2002との電位差を大きくしていく。インタフェース上には、シャッタの開閉状態を確認するための拡大観察系3210のカメラ3213から出力されたシャッタアレイの像4731が表示されている。
シャッタ2001と動作電極2002との電位差があるところまでくるとシャッタ2001がひとつ開いてシャッタ部分が暗く見える。ここで、グラフ4732上でP1801のボタンをクリックすることで、(A)シャッタが開き始める電位差Vopen が記録される。
更に電位差設定ボタン4751または+ボタン4752を操作して電位差を大きくして、全てのシャッタが開いてシャッタ部分が暗く見えるようになった時点で、グラフ4732上でP1802のボタンをクリックして、(B)全シャッタが開く電位差V’openを記録する(図19B)。その時点から、電位差設定ボタン4751を左へドラッグするか−ボタン4753を押すことにより、シャッタ2001と動作電極2002との印加電位差を小さくすると、同様にしばらく全シャッタが開いた状態に変化は無く、ある電位差でまで小さくなるとまずシャッタが1つだけ閉じるので、その時点でグラフ4732上でP1803のボタンをクリックして、(C)シャッタが閉じ始める電位差V’close を記録する(図19C)。上記した(1)のV’stayは、(C)のV’closeから(A)のVopenの範囲で選択し、(2)のV’openは、(B)の値そのまま選択する。
以上により、シャッタが動作し、かつシャッタ列に印加する電圧を選択する。
次に図21Aを用いて、本発明におけるマイクロシャッタアレイを用いた光学フィルタリングデバイスを検査装置に適用した実施例について説明する。
実施例1におけるマイクロシャッタアレイを用いた光学フィルタリングデバイスを適用した検査装置1のブロック図を図21Aに示す。
検査装置1は、照明光学系10、基板搬送系20、検出光学系30、フォーカス測定系50、画像処理系60、制御処理系80、インターフェース系90、瞳面観測系310を備えて構成されている。
照明光学系10は、レーザ光源11とビーム整形用のレンズ12を備え、レーザ光源11から出射された光をレンズ12にて適宜整形して、被検査基板100を照明する。本実施例においては、被検査基板(半導体ウェハ:基板)100上の一方向に長い線状の領域を照明する。
基板搬送系20は、Xステージ21、Yステージ22、Zステージ23、基板チャック24、θステージ25を備えている。また、基板チャック24に隣接し、かつ、ウェハ表面とほぼ同じ高さに、点光源109が載置されている。
検出光学系30は、対物レンズ31、光学フィルタリングデバイス2000、結像レンズ33、光センサ35、A/D変換ユニット36を備えている。光センサ35としては、積分型のセンサ(TDI(Time Delay Integration)センサ)を用いることで、より高速に検査を行うことが可能になる。また、結像レンズ33と光センサ35の間に偏光フィルタ34を設置してもよい。図21Aでは、偏光フィルタ34が含まれた構成図が示されている。
瞳面観測系310は、対物レンズのフーリエ変換面上の光強度分布を観測できるように、ハーフミラー319、レンズ311及び313、エリアセンサ315を備えて構成されている。ハーフミラー319は、照明光学系10により照明された基板100からの散乱光のうち対物レンズ31で集光されて光学フィルタリングデバイス2000を透過した光の一部を透過させて結像レンズ33の方向へ導くと共に、残りの光を反射させて瞳面観察系310の方向へ導くようになっている。
フォーカス測定系50は、照明光学系51、検出光学系52、光センサ53、フォーカスずれ算出処理ユニット54を備えている。
画像処理系60は、隣接ダイ間画像位置ずれ情報算出ユニット61、ダイ間差画像を用いて欠陥判定・検出処理を行うデータ処理ユニット62を備えている。隣接ダイ間画像位置ずれ情報算出ユニット61及びデータ処理ユニット62は、それぞれ画像データを記憶しておく十分な容量を持ったメモリーを備えている。
制御・処理系80は、少なくとも搬送系20を制御するための搬送系制御ユニット81、照明光源制御ユニット82、第1の検出光学系30と第2の検出光学系40を同期して画像を取得するためのセンサ制御ユニット83、第1の画像処理系60及び第2の画像処理系70から出力される欠陥情報600のマージ処理や分類処理を実施する欠陥情報処理ユニット84、そして全体をつかさどる制御ユニット89を備えている。図24Aでは光学フィルタリングデバイス2000の制御回路を含む電源ユニット86も図示している。
インターフェース系90は、少なくとも制御・処理系80にて処理・出力された欠陥情報650を蓄積するデータ蓄積部91、検査条件設定や制御処理情報入力を実施する入力部92、欠陥情報650を表示したり制御処理情報を表示する表示部93を備えている。
図21B及び図21Cに、本実施例で整形用レンズ12として用いられている円錐曲面レンズの効果について示す。
図21Bに示すように、ウェハのy軸方向に対してφ回転し、かつz軸方向に角度α傾斜した方向から、レーザを照射する場合に用いる。この時に、円錐曲面レンズ12を用いると、ウェハ100上にx軸方向に短軸を、y方向に長軸を持つスリット上ビーム199を形成することが可能である。
一方、図21Cに示すように、ウェハのy軸方向からz軸方向に角度α傾斜させてレーザを照射する場合には、通常のシリンドリカルレンズ128を用いることによりウェハ100上にx軸方向に短軸を、y方向に長軸を持つスリット上ビーム199を形成することが可能である。
本実施例に関わる検査装置を用いた基板検査工程のフロー図を図22に示す。
基板100が検査装置1にロードされ(S2201)基板チャック24で保持される。検査装置1はアライメント動作することにより(S2202)、基板100の傾きをなくすと同時に、ウェハ原点座標190(図20A参照)を求める(S2203)。
次に、基板100を走査して(S2204)、基板100の表面近傍の光学的画像301(図26C参照)を取得する(S2205)。得られた画像をもとに、基板100の表面近傍の欠陥及び異物の有無を欠陥判定処理(S2206)を行うことによって実施する。欠陥判定処理の方法としては、取得した光学画像301を予め記憶しておいた参照画像と比較して不一致部分を欠陥として検出する方法や、光学画像301の信号を予め設定しておいたしきい値信号レベルと比較して、しきい値信号レベルよりも大きい部分を欠陥として検出する方法などがある。S2205の処理とS2206の処理とは非同期で独立に実行され、表面近傍の光学的画像301の取得が完了し次第、基板100は検査装置1からアンロードされ(S2207)、検査結果が出力される(S2208)。
本発明に関わる検査装置を用いた基板検査条件の設定フローを図23に示す。
まず被検査ウェハ(基板100)のダイサイズや配列等の基本的な設計情報を入力部92から入力する(S2301)。次に、照明角度(方位、仰角)や照明偏光などの照明条件を入力部92から入力して設定する(S2302)。更に、空間フィルタ設定以外の検出光学条件(光学倍率、検光の有無等)を入力部92から入力して設定し(S2303)、欠陥処理パラメータを設定する(S2304)。
ここでもし被検査ウェハ100が装置にロード済でなければウェハ100をロードし(S2305)、アライメントを合わせる(S2306)。被検査ウェハ100上のパターンのうち、空間フィルタ(光学フィルタリングデバイス2000)で回折光を除去したいパターンのある領域が、照明光が照射される領域199に入るように被検査ウェハ100を移動させる(S2307)。このときの瞳面観察系310で対物レンズ31の瞳面に形成されるフーリエ変換面画像3235を見ながら、光学フィルタリングデバイス2000で遮光する領域3220を設定する(S2308)。
以上で設定された検査条件で被検査ウェハ100を試し検査し(S2311)、十分な欠陥検出感度が達成できれば(S2312)基板検査条件設定を終了する。欠陥検出感度が不足している場合は、照明条件の設定(S2302)に戻って設定した条件を修正する。
次に、図24を用いて、被検査基板表面をシートビーム照明し光センサ(TDIセンサ)35を用いて基板表面の検査画像を検出する場合の、動作フローを示す。
まず基板100を検査装置1にロードし、ウェハチャック34にて基板100を固定する(S2401)。
次に基板100上のアライメントマーク108(図20B参照)を用いて、ウェハアライメントを実施し、基板100上の座標と基板走査系の座標とのオフセット2101(図20B参照)と傾き2102(図20B参照)を測定する(S2402)。基板100の傾き2102が予め設定した角度しきい値よりも大きい場合には、搬送系制御ユニット81でθステージ25を制御して傾き1302だけ逆方向に回転して傾きがほぼ0になるようにした後、基板100のアライメントを再度実施して基板100上の座標と基板走査系の座標とのオフセット2101を再度測定する。次に、光学フィルタリングデバイス2000を制御して、予め設定した領域を遮光する(S2403)。
次にXステージ21を走査する(S2404)。Xステージ21は基板100上の線状の領域199にビーム形成用レンズ12により成形されたレーザが照射されている間はほぼ等速で移動させる。ビーム形成用レンズ12により成形されたレーザの照明領域199が基板100上にある範囲で、光源11のシャッタ(図示せず)を開け、ビーム形成用レンズ12により成形されたレーザによる照明を実施する(S2405)。Xステージ21の走査に同期してTDIセンサを動作させ、基板100の表面画像を一括して取得する(S2406)。Xステージ21の1回の走査が完了したら、予め指示しておいた基板上の測定領域全体の基板表面画像を取得するまで(S2407)、光センサ35で一括して測定できる幅だけYステージ22を移動させ(S2408)、Xステージ21の走査を繰返し実施する。完了したら基板100をアンロードして(S2409)、検査装置としての動作が完了する。
次に図25及び図26A乃至図26Dを用いて図24のS2406で一括取得した基板100の表面の画像を用いて欠陥を検出する欠陥判定処理のフローの例について説明する。
まず搬送系制御ユニット81でXステージ21を駆動して基板100を検出光学系30に対して図26Bに矢印で示す方向に連続的に移動させながら検出光学系30で基板100を撮像する。図26Aに示すような撮像して得られた検査画像301、参照画像となる隣接ダイ画像302から図26Cに示すように両者間の位置ずれ情報を用いて差画像303を算出し(S2601)、これをxステージ1回走査分(以下1列分と呼ぶ)だけ繰り返す。次に、1列分の複数ダイの同一部分に相当する場所の差画像303の明度値のばらつきを各画素ごとに算出する(S2602)。
図26Dの一番上には、検査画像301と隣接ダイ画像302とを重ね合わせた像304を示す。中段のグラフは、上段の重ねた像のうちのA−A´のライン上における検査画像301の各画素の明度値と隣接ダイ画像302の各画素の明度値とを重ねて表示したものである。欠陥307が存在する検査画像301の信号波形301´は、欠陥307が存在しない隣接ダイ画像302の信号波形302´に対して、欠陥が存在する部分にピーク値を有している。この検査画像301の各画素の明度値と隣接ダイ画像302の各画素の明度値との差分をとると、図26Dの一番下のグラフのように、欠陥部にピーク306を持つ波形信号が得られる。
次に、ユーザインタフェースを用いて予め設定しておいた係数を上記明度値ばらつき304に掛け合わせることによって、注目している画素の欠陥判定しきい値305を決定する(S2603)。図26Dに示した例では、検査画像301の画素の明度値と隣接ダイ画像302の対応する画素の明度値との差分が小さい場所では欠陥判定のしきい値305を比較的大きく設定し、差分が大きい場所では欠陥判定のしきい値305を比較的小さく設定するようにしている。そして、決定した欠陥判定しきい値305と差画像303の明度値の絶対値306を各画素ごとに比較し(図26の中段のグラフ)、欠陥判定しきい値305を差画像の明度値の絶対値が上回った場合、その画素位置に相当する基板100上座標307に欠陥が存在すると判定する(S2604)。このフローを、予め指定した検査領域の画像、もしくは取得された基板100上の全ての検査画像について、繰返し処理することによって、基板100上の欠陥判定及び欠陥座標を算出する。
なお上記では、隣接ダイ間画像の差画像304を求めた後明度値ばらつきを求め、明度値ばらつきからしきい値を算出し、このしきい値をもとに欠陥の判定を実施しているが、欠陥の判定方法は、特開2003−83907号公報(特許文献1)に記載されているような、隣接する2つの画像301,302の画像明度値を合わせこんだ後、上記処理と同様に差画像を算出して欠陥判定を実施する方法や、特開2003−271927号公報(特許文献3)に記載されているような、検査対象画像と参照画像の明度値やコントラストなどの特徴を軸に持つ多次元空間に投票したデータをもとに欠陥判定を実施する方法であっても良く、すなわち検査画像の明度値情報や、検査画像と参照画像の明度値の差情報を用いて欠陥判定するものであれば良い。
次に図27を用いて、基板100の表面近傍に形成されたパターンからの回折光を、対物レンズ31のフーリエ変換面上に設置された光学フィルタリングデバイス2000を用いて遮光するフローの実施例について説明する。
まず、基板100の検査に用いる照明条件を設定する(S2701)。次に、回折光を遮光したいパターン部が照明光照射領域に入るよう、ステージ系を動作させて基板100を移動する(S2702)。パターンからの回折光を含む、フーリエ変換面上での光強度分布画像3235(図28A参照)を瞳面観測系310で取得する(S2703)。このとき、光学フィルタリングデバイス2000上の正常に開閉動作が可能なシャッタ2001は全て開いた状態になっており、光学フィルタリングデバイス2000の開口2004に入射した光は全て透過するような状態になっている。瞳面において基板100の欠陥箇所からの散乱光を検出するときに、基板100に規則的に形成されたパターンからの散乱光により発生する比較的強い回折光が欠陥箇所からの散乱光の検出感度を低下させてしまう。そこで、欠陥箇所からの散乱光を比較的感度良く検出するためには、パターンからの散乱光により発生する比較的強い回折光を瞳面上で遮光することが有効になる。このような強い回折光を遮光して欠陥を検出するという考え方に基づいて、電源ユニット86で光学フィルタリングデバイス2000の個々のシャッタ2001を制御して光学フィルタリングデバイス2000の遮光領域を設定する(S2704)。
ここで、予め設定された割合を超えてフーリエ変換面を遮光していないかを確認する(S2705)。これは、遮光領域を大きくすると検査画像の解像度が落ち、欠陥検出感度が落ちる傾向があるので、これを防ぐためである。
続いて、光学フィルタリングデバイス2000の個々のシャッタ2001が制御されている(空間フィルタが設定されている)状態で、瞳面観測系310で対物レンズ31のフーリエ変換面での光強度分布を画像の形で実測し(S2706)、強い回折光が入射していた領域が遮光されていること、即ち、所望の遮光状態3235’(図18C)になっていることを確認する(S2707)。所望の遮光状態になっていれば、フーリエ変換面上の遮光領域設定を完了する。所望の遮光状態になっていない場合には、再びS2704に戻って光学フィルタリングデバイス2000の遮光領域の設定(調整)を行う。
図28A及び図28Bに、遮光領域設定用のGUI画面の例を示す。
図28Aは初期状態である。GUI画面3200上には、予め設定したパターン領域からの瞳面における回折光の強度分布3235を表示する領域3211と、回折光の強度分布3235を空間フィルタリングデバイス(空間フィルタ)2000の遮光領域3220と重ねて表示する領域3212、及びフィルタリング後の強度分布3235´を表示する領域3213とがある。更に、回折光強度に対する遮光しきい値を設定する領域3214として、スライドバー9352と数値入力用の窓9353が表示される。各回折光強度分布に対し、スライドバー9352を動かすか、もしくは窓9353に数値を入力することにより、遮光しきい値を設定する。
図28Bに、一部領域が遮光領域に設定された状態を示している。遮光しきい値を設定する領域3214で設定された遮光しきい値よりも明度値が大きい画素を含む、空間フィルタ2000のピクセルを自動的に遮光領域と指定して、回折光の強度分布3235と空間フィルタ2000の遮光領域3220とを重ねて表示する領域3212に表示する。また、フィルタリング後の強度分布3235´を表示する領域3213おいては、空間フィルタ2000により遮光された領域は塗りつぶされて表示される。
なお遮光領域に設定方法については、上記した遮光しきい値を設定する領域3214で設定する代わりに、マウス等のポインティングデバイスを用いて、所望の空間フィルタ2000のピクセルをクリックして、遮光領域の設定がON/OFFされると同時に、塗りつぶしもON/OFFされるようにしてもよい。この方法によって、空間フィルタ2000の各ピクセルの遮光ON/OFFを設定することも可能である。空間フィルタ2000の各ピクセルの遮光ON/OFF状態を反映させた、遮光領域設定後のフーリエ変換面の回折光強度分布3235’をフィルタリング後の強度分布3235´を表示する領域3213に表示する。遮光領域が大きくなりすぎると、欠陥検出感度への致命的な影響があるため、注意しながら設定を実施する。
なお、この図28A及び図28Bのように、現在設定中の遮光領域を検査に適用した場合の、標準欠陥であるPSL球の検査画像をシミュレーション計算した結果を示してもよい。計算方法は以下の通りである。
基板100上に散布したPSL球に照明した場合の瞳面上での光散乱光分布を、各照明条件について位相を含めて予め計算しておき、遮光領域を考慮してフーリエ変換及び逆フーリエ変換を用いて結像計算する。このとき、PSL球のサイズによって散乱光分布が大きく異なるため、遮光条件が同じでも受ける影響の大きさが変わってくる。本実施例では、大小2種類のPSL球のシミュレーション画像3215及び3216を示すことにより、現在設定中の遮光領域による欠陥検査感度への影響を、複数の観点から確認することとしている。
次に図29を用いて、基板100表面近傍に形成されたパターンからの回折光を、対物レンズ31のフーリエ変換面上に設置された本実施例にかかわる2次元空間フィルタシステム32を用いて遮光領域を設定するフローを説明する。
まず、ウェハ検査に用いる照明条件を設定する(S2901)。次に、回折光を遮光したいパターン部が照明光照射領域に入るよう、ステージ系を動作させて基板100を移動する(S2902)。パターンからの回折光を含む、フーリエ変換面の光強度分布を画像3235として取得する(S2903)。基板100の欠陥からの散乱光を検出するために、基板100に規則的に形成されたパターンからの散乱光により発生する比較的強い回折光を遮光するという考え方に基づいて、電源ユニット86で光学フィルタリングデバイス2000の個々のシャッタを制御して遮光領域3220を設定する(S2904)。ここで、予め設定された割合を超えてフーリエ変換面を遮光していないかを確認する(S2905)。これは、遮光領域を大きくすると検査画像の解像度が落ち、欠陥検出感度が落ちる傾向があるためである。
続いて、2次元空間フィルタリングシステム32のカメラ3213で光学フィルタリングデバイス2000のシャッタ2001の開閉の状態を撮像した出力画像を確認しながら、空間フィルタの遮光領域3220内のフィルタが閉じたことを確認し(S2908)、再度空間フィルタが設定されている状態でフーリエ変換面の光強度分布を画像3235’として測定し、画面に表示する(S2906)。強い回折光が遮光されていることを確認し(S2907)、所望の遮光状態になっていれば、フーリエ変換面上の遮光領域設定を完了する。なっていない場合には、所望の遮光状態になるまで上記S2908からの手順を繰り返す。
次に図30を用いて、基板100の表面近傍に形成されたパターンからの回折光を、対物レンズ31のフーリエ変換面上に設置された本実施例にかかわる2次元空間フィルタシステム32を用いて遮光領域を設定するフローを説明する。
まず、ウェハ検査に用いる照明条件を設定する(S3001)。次に、回折光を遮光したいパターン部が照明光照射領域に入るよう、ステージ系を動作させて基板100を移動する(S3002)。パターンからの回折光を含む、フーリエ変換面の光強度分布を画像3235として瞳面観察系310で取得する(S3003)。ここで、全ての回折光を遮光したいパターン部について、フーリエ変換面画像を取得する(S3004)。取得していない場合には、S3001〜S3003の手順を繰り返す。
次に、基板100の欠陥からの散乱光を検出するために、基板100に規則的に形成されたパターンからの散乱光により発生する比較的強い回折光を遮光するという考え方に基づいて、電源ユニット86で光学フィルタリングデバイス2000の個々のシャッタを制御して遮光領域3220を設定する(S3005)。このとき、先ほどS3003にて得たフーリエ変換面の光強度分布に基づいて、遮光領域3220を設定する。
この手順を繰り返すことによって得られた遮光領域をマージして、仮の遮光領域3020を得る。ここで、予め設定された割合を超えてフーリエ変換面を遮光していないかを確認する(S3006)。これは、遮光領域を大きくすると検査画像の解像度が落ち、欠陥検出感度が落ちる傾向があるためである。
続いて、カメラ3213の出力画像を確認しながら、空間フィルタの遮光領域3220内のフィルタが閉じたことを確認し(S3007)、再度空間フィルタが設定されている状態でフーリエ変換面の光強度分布を画像3235’として測定し、画面に表示する(S3008)。強い回折光が遮光されていることを画面上で確認し、所望の遮光状態になっていれば(S3009)、フーリエ変換面上の遮光領域設定を完了する。なっていない場合には、所望の遮光状態になるまで上記S3007からS3009までの手順を繰り返す。
図31は、半導体ウェハ100のあるダイの配置のイメージ図である。ピッチ(px,py)にて類似のパターンが繰り返し作りこまれているが、領域によって更に細かい繰り返し周期で類似パターンが作りこまれている場所もあれば(3101)、それ以上の細かい繰り返しパターンがない領域もある(3102)。これらのパターン領域に対して照明された光の回折光の出射方向のパターンはそれぞれ異なっており、領域3101からの回折光の強度分布は3235のようになり、領域3102からの回折光の強度分布は3235´のようになる。従って必要な遮光パターンも異なる。
以下では図32A及び図32Bを用いて、ダイ領域を分けて遮光パターンを設定しておくことで、高感度に欠陥検出する本実施例を説明する。
図32Aは遮光領域設定用のGUI画面9350で初期状態を示す。複数の予め設定したパターン領域からの、瞳面における回折光の強度分布9351及び9351´を、空間フィルタの遮光領域と重ねて表示する。各回折光強度分布9351及び9351´に対し、スライドバー9352又は9352´を動かすか、もしくは窓9353又は9353´に数値を入力することにより、遮光しきい値を設定する。遮光しきい値よりも明度値が大きい画素を含む、空間フィルタのピクセルを、自動的に遮光領域と指定する。図32Aの場合には、スライドバー9352及び9352´が右端の遮光明度値が最大の場合を示しており、実質的に空間フィルタによる遮光領域がない状態を示している。また、領域9354には、半導体ウェハ100全体の遮光領域を表示する
一方、スライドバー9352又は9352´を動かすか、もしくは窓9353又は9353´に数値を入力することにより、遮光しきい値を調整すると、遮光された領域は、図32Bに示す領域9361及び9361´のように瞳面における回折光の強度分布と重ねて表示される。
なお遮光領域については、マウス等のポインティングデバイスを用いて、所望の空間フィルタのピクセルをクリックすると、塗りつぶしがON/OFFする。この方法によって各ピクセルの遮光ON/OFFを設定することも可能である。
GUI画面9350には、図32Bに示すように、各回折光強度分布に対して設定した遮光領域9361,9361´を半導体ウェハ100全体に亘ってマージした遮光領域を領域9354に表示する。遮光領域が大きくなりすぎると、欠陥検出感度への致命的な影響があるため、注意しながら設定を実施する。
なお図32A及び図32Bのように、現在設定中の遮光領域を検査に適用した場合の、標準欠陥であるPSL球の検査画像をシミュレーション計算した結果を領域9355及び9356に示してもよい。計算は、図28で説明した方法と同様な方法で行う。
また、GUI画面9350上には、スライドバー9352と9352´又は窓9353と9353´で設定した遮光しきい値とそれに対応する遮光パターン9361,9361´を記憶させるための保存ボタン9357と、画面上で一操作前の状態に戻すための戻りボタン9358が表示されている。
図33に、被検査基板表面をシートビームで照明しTDIセンサを用いて基板表面の検査画像を検出する場合の、動作フローを示す。
まず基板100を検査装置1にロードし、ウェハチャック34にて基板100を固定する(S3301)。
次に基板100上のアライメントマーク108(図20A参照)を用いて、ウェハアライメントを実施し、基板100上の座標と基板走査系の座標とのオフセット2101(図20B参照)と傾き2102を測定する(S3302)。傾きき2102が予め設定した角度しきい値よりも大きい場合には、θステージ26を傾き2102だけ逆方向に回転して傾きがほぼ0になるようにした後、基板のアライメントを再度実施して基板100上の座標と基板走査系の座標とのオフセット2101を再度測定する。
次に、光学フィルタリングデバイス2000を制御して、予め設定した領域を遮光する(S3303)。次にXステージ21を走査する(S3304)。Xステージ21はウェハ100上にシートビーム198が照射されている間はほぼ等速で移動させる。シートビーム198によるウェハ100上の照明領域199がウェハ100上にある範囲で、光源11のシャッタ13を開け、シートビーム198による照明を実施する(S3305)。このとき、Xステージ21の走査に同期して光センサ(TDIセンサ)35を動作させ、基板100の表面画像を一括して取得する(S3306)。
Xステージ21の1回の走査が完了したらY方向1ダイ分の基板表面画像取得が完了したかをチェックする(S3307)。完了してない場合(S3307でNOの場合)には、予め設定した距離だけY方向にステージを移動させる(S3308)。このとき、1回の走査ごとに空間フィルタの遮光領域を設定可能であるので、遮光パターンが異なる操作を次に行う場合には、S3303に戻って予め設定した領域を遮光するように光学フィルタリングデバイス2000を制御して、S3304〜S3307までの操作を繰り返し実行する。
Y方向1ダイ分の基板表面画像を取得完了したら(S3307でYESの場合)、基板上の測定領域全体の基板表面画像の取得が完了したかをチェックし(S3309)、完了していない場合には(S3309でNOの場合)、次のY方向のダイ下端にセンサ位置が一致する位置の近傍にステージを移動し(S3308´)、S3303〜S3309までの走査を繰返し実施する。ここで、予め指示しておいた基板上の測定領域全体の基板表面画像が取得完了した場合は(S3309でYESの場合)、基板100をアンロードして(S3310)、検査装置としての動作が完了する。
次に図34を用いて、基板100の表面近傍に形成されたパターンからの回折光を、フーリエ変換面上に設置された本実施例にかかわる2次元空間フィルタシステム32を用いて遮光領域を設定するフローを説明する。
まず、基板100の検査に用いる照明条件を設定する(S3401)。次に、回折光を遮光したいパターン部が照明光照射領域に入るよう、ステージ系を動作させて基板100を移動する(S3402)。パターンからの回折光を含む、フーリエ変換面の光強度分布を画像3235として取得する(S3403)。この取得した画像を図28Aで説明したようにGUI画面3200上の領域3211と3212とに表示し、強い回折光を遮光する考え方に基づいて、領域3212上で領域3214に表示されているスライドバー9352を操作して又は数値入力用の窓9353から数値を入力して光学フィルタリングデバイス2000の遮光領域を設定する(S3404)。ここで、図28Bに示した光学フィルタリングデバイス2000の遮光領域を設定された画面上で、空間フィルタ2000の遮光領域3220が予め設定された割合を超えてフーリエ変換面を遮光していないかを確認する(S3405)。これは、遮光領域を大きくすると検査画像の解像度が落ち、欠陥検出感度が落ちる傾向があるためである。
続いて、図28Bに示した光学フィルタリングデバイス2000の遮光領域が設定されたGUI画面3200上でカメラ3213の出力画像を確認しながら、光学フィルタリングデバイス2000の遮光領域3220内のフィルタが閉じたことを確認し(S3406)、再度光学フィルタリングデバイス2000が設定されている状態でフーリエ変換面の光強度分布を画像3235’として測定し、画面に表示する(S3407)。GUI画面3200上で強い回折光が遮光されていることを確認し(S3408)、所望の遮光状態になっていれば(S3408でYESの場合)、フーリエ変換面上の遮光領域設定を完了する。なっていない場合(S3408でNOの場合)には、所望の遮光状態になるまで上記S3406からS3408までの手順を繰り返す。
図35A乃至図35Cを用いて、本実施例における光学フィルタリングデバイス2000の遮光領域設定方法の変形例について説明する。
例えば、シャッタの最終的な開閉状態が図35Aの白(開)およびグレー(閉)であった場合、図12で示した遮光領域設定方法によると、図35Bで示されるとおり、図では右側から順に所望のシャッタを閉状態からラッチ閉状態に移行させた後、残った閉状態のシャッタを全て開く(ラッチ開状態)ことで、所望の遮光状態が得られる。
一方、図8A乃至図8F及び図11Aと図11Bで説明したように、本実施例の方法によれば、一旦ラッチ閉状態に移行したシャッタは、印加電位差がVrelよりも小さくなるような特別な処理を行わない限り、ラッチ閉状態が維持される。このため、図35Aの左から1列目と3列目、2列目と4列目のように、ラッチ閉状態にすべきシャッタの位置関係が同じ場合には、1列目と3列目の縦方向の電位を、ある時間以上一度に高電位にすることによって、2列分同時に閉状態→ラッチ閉状態の遷移が可能である。この方法を用いると、所望の遮光領域に含まれる全てのシャッタについて閉状態→ラッチ閉状態を遷移させる時間を短縮することができる。具体的には図35Cに示すS3511→S3512 →S3506というような順序で状態遷移を実施すると、図35Bに示した手順では途中4段階を経て最終的なラッチ閉状態が得られるのに対し、図35Cに示した方法では途中2段階を経て最終的なラッチ閉状態が得られており、状態遷移時間が短縮されることがわかる。
図36に、半導体ウェハ(基板100)のメモリセル部、及びロジック部にレーザ光を照射したときの、対物レンズ31のフーリエ変換面上の回折光強度分布の例を示す。メモリセル部(メモリ部)のフーリエ変換像3601では、回折光の強い場所が繰り返し生じるため、本変形例に示された高速化手法による、2次元空間フィルタによる遮光パターン3603を形成するための遮光領域内シャッタの閉状態→ラッチ状態遷移のための時間短縮効果は顕著になる。またロジック部のフーリエ変換像3602においても、2次元空間フィルタによる遮光パターン3604により縦横に幅広い遮光領域を設定するには、本変形例の方法による遮光状態遷移高速化の効果が顕著である。
図37A及び図37Bに、遮光領域設定用のユーザインタフェース画面(GUI画面)3700の実施例を示す。図37Aに示したGUI画面3700の構成は、図28Aで説明したGUI画面3200の構成と同じであるが、本変形例においては、図37Bに示すように複数の遮光領域パターンを設定可能にするため、複数のタブ3711を表示する。GUI画面3700上で各タブ3711において記憶手段に記憶しておいた遮光領域パターンを設定する。遮光領域パターンの数は増減が可能なように、タブ3711の増減が可能になっている。各遮光領域の設定方法は、図28A及び図28Bで説明した内容と同一である。
図38A及び図38Bに、走査位置、及び走査位置と遮光領域の組合せを設定するユーザインタフェース画面(GUI)3800の実施例を示す。実際に製作されているウェハ(基板)100によっては、ダイ内に形成された同一形状のパターンが帯状に形成されているものもある。このようなウェハ(基板)100については、本変形例により、より高感度な欠陥検出が可能である。
図38Aは、インタフェース画面(GUI)3800により、ダイパターンとX方向への各走査回の走査領域を示す。ユーザは、ダイ領域に合わせてX方向への各走査回の走査領域のノッチ側端の位置を、走査位置ツマミ3812a〜eを上下に動かすことにより設定する。なお、ツマミ3812a〜eを上下に動かす際には、別のツマミも各走査回の走査領域幅が、予め設定した値(ラインセンサを検査光学系にてサンプル上に投影した際のセンササイズ等を参考にして決定)が上限となるように移動する。
図38Bではツマミ3812cを移動させた例を示しているが、この場合はその移動に伴ってツマミ3812a、3812bの位置も移動する。続いて、各走査回における遮光状態を選択する。遮光状態は図37A及び図37Bで説明したユーザインタフェース3700を用いて予め設定しておく。なお遮光状態を増やしたい場合には、新規フィルタボタン3811を押すことにより、ウィンドウに「フィルタ」タブ3812−1,3812−2,3812−3が増える。増えた遮光領域の設定は、新たに増えたタブを選択することで図37Bのインタフェースを表示させ、その中で設定する。
次に図39乃至図41を用いて、本実施例による装置の使用方法の変形例を説明する。
図39は、半導体ウェハ(基板)100の、あるダイ4000の配置のイメージ図である。
領域Aと領域A’、領域B、領域Cは、それぞれの領域内にほぼ同様なパターンが繰り返し形成され、領域A、A’、Bと領域Cは走査方向4010に沿った線L4001にて分割されている。領域A、A’、Bには周辺回路やロジックパターンなどの比較的大きなパターンが形成され、領域Cには、メモリなどの微細な繰り返しパターンが形成されている。本実施例では、ダイ4000の領域を分けて、各領域からの対物レンズ31のフーリエ変換面における回折光パターン形状に応じた遮光パターンを設定しておくことで、高感度に欠陥検出する例を説明する。
図40に、走査位置、及び走査位置と遮光領域の組合せを設定するユーザインタフェース画面(GUI)4100の実施例を示す。基本的な構成は、図38で説明したものと同様である。
このGUI画面4100上に、ダイパターンと各走査回の走査領域を示す。ユーザは、ダイ4101の領域に合わせて各走査回の走査領域のノッチ側端の位置を、走査位置ツマミ3812a〜dを上下に動かすことにより設定する。なお、ツマミ3812a〜dの何れかを上下に動かす際には、別のツマミも各走査回の走査領域幅が、予め設定した値(ラインセンサを検査光学系にてサンプル上に投影した際のセンササイズ等を参考にして決定)が上限となるように移動する。ここで3812bは、図40で説明した領域A、A’、Bと領域Cを分ける線L4001とほぼ一致するように調整する。続いて、走査時に使用するフィルタをフィルタタブ4111又は4112をクリックして選択する。図40に示した例は、領域C走査時にフィルタ1を、領域A、A’、B走査時にフィルタ2を、それぞれ使用するように選択した例を示している。
続いて、ユーザは、各走査回における遮光状態を選択する。遮光状態は図37で説明したユーザインタフェース画面(GUI)3700を用いて予め設定しておく。ここでフィルタ2を設定する場合に、領域A/A’及び領域Bの回折光パターンをそれぞれ測定し、それぞれに遮光領域を設定して、設定した遮光領域の排他的論理和などを用いて、全体の遮光領域を設定する。
図41に、被検査基板(基板)100の表面の線状領域199をシートビーム198で照明し光線差(TDIセンサ)35を用いて基板100の表面の検査画像を検出する場合の、動作フローの変形例を示す。
まず基板100を検査装置1にロードし、ウェハチャック34にて基板100を固定する(S5001)。次に基板100上のアライメントマーク108を用いて、ウェハアライメントを実施し、基板100上の座標と基板走査系の座標とのオフセット2101と傾き2102を測定する(S5002)。傾き2102が予め設定した角度しきい値1309よりも大きい場合には、θステージ26を傾き2102だけ逆方向に回転して傾きがほぼ0になるようにした後、基板のアライメントを再度実施して基板100上の座標と基板走査系の座標とのオフセット2101を再度測定する。
次に、光学フィルタリングデバイス2000を制御して、予め設定した領域を遮光する(S5003)。次にXステージ21を走査する(S5004)。Xステージ21はウェハ上にシートビーム1310が照射されている間はほぼ等速で移動させる。シートビームの照明領域がウェハ上になる範囲で、光源11のシャッタ13を開け、シートビーム状照明を実施する(S5005)。
Xステージ21の走査に同期してTDIセンサを動作させ、基板100の表面画像を一括して取得する(S5006)。Xステージ21の1回の走査が完了したら、予め設定した距離だけY方向にステージを移動させる(S5008)。このとき、1回の走査ごとに空間フィルタの遮光領域を設定可能であるので、遮光パターンが異なる操作を次に行う場合には、予め設定した領域を遮光するように光学フィルタリングデバイス2000を制御する(S5003)。
Y方向1ダイ分の基板表面画像を取得完了したら、次のY方向のダイ下端にセンサ位置が一致する位置の近傍にステージを移動し(S5009’)、Xステージ21の走査を繰返し実施する。ここで、予め指示しておいた基板上の測定領域全体の基板表面画像が取得完了した場合は(S5010)、完了したら基板100をアンロードして(S5011)、検査装置としての動作が完了する。
次に図42を用いて、本発明におけるマイクロシャッタアレイを用いた光学フィルタリングデバイスを半導体ウェハ(基板)の欠陥を検査する暗視野検査装置に適用した第2の実施例について説明する。
図42は、検査装置210のブロック図である。図21Aに示した第1の実施例による検査装置と同じ構成部品については、同じ番号を付してある。
第1の実施例との違いは、照明光学系110がレーザ光源111とビーム整形用のレンズ112、及びレーザ光源11001とビーム整形用レンズ11002を備え、レーザ光源111から出射された光をレンズ112にて、もしくはレーザ光源11001から出射された光をレンズ11002にて、それぞれ適宜整形して被検査基板100を照明する点である。
画像処理系2160は、隣接ダイ間画像位置ずれ情報算出ユニット2161、ダイ間差画像を用いて欠陥判定・検出処理を行うデータ処理ユニット2162を備えている。隣接ダイ間画像位置ずれ情報算出ユニット2161及びデータ処理ユニット2162は、それぞれ画像データを記憶しておく十分な容量を持ったメモリーを備えている。
制御・処理系2180は、少なくとも搬送系20を制御するための搬送系制御ユニット81、照明光源制御ユニット82、第1の検出光学系30からの検出信号から画像を取得するためのセンサ制御ユニット2183、画像処理系2160から出力される欠陥情報611の分類処理を実施する欠陥情報処理ユニット2184、そして全体をつかさどる制御ユニット2189を備えている。図42では光学フィルタリングデバイス2000の制御回路を含む電源ユニット86も図示している。
インターフェース系2190は、少なくとも制御・処理系2180にて処理・出力された欠陥情報を蓄積するデータ蓄積部2191、検査条件設定や制御処理情報入力を実施する入力部2192、欠陥情報を表示したり制御処理情報を表示する表示部2193を備えている。
次に、実施例2に係る検査装置を用いた基板検査条件の設定フローを図43に示す。
動作としては、基板100を装置にロードし、アライメントを合わせる(S306)までは実施例1で図23を用いて説明した動作と同一である。
照明光源としてレーザ光源110または11001の何れかの1波長を選び、基板100を照射する(S4321)。基板100上のパターンのうち、光学フィルタリングデバイス2000で回折光を除去したいパターンのある領域が、照明光が照射される領域に入るように搬送系制御ユニット81でXテーブル21またはYテーブル22を駆動して基板100を移動させる(S4307)。
次に、瞳面観測系310でフーリエ変換面画像3235(図28A)を見ながら、光学フィルタリングデバイス2000の遮光領域3220(図28B)を決定する(S4308)。ここで遮光領域3220は、別の波長を基板100に照明して決定しておいた遮光領域と、前段で決定した遮光領域3220を足し合わせた領域を検査時の遮光領域として設定することに注意する。
以下、順次検査に使用する照明光の全ての波長について遮光領域3220の設定するまでS4321、S4307、S4308の手順を繰り返す。
以上の手順により設定された検査条件で基板100を試し検査し(S4311)、十分な欠陥検出感度が達成できれば基板検査条件設定を終了する(S4312)。欠陥検出感度が不足している場合は、十分な欠陥検出感度が達成できるまで照明条件の設定(S4302)からの手順に従って設定した条件を修正する。
次に図44A及び図44Bを用いて、基板100に形成されたパターンからの回折光を、対物レンズ31のフーリエ変換面上に設置された光学フィルタリングデバイス2000を用いて遮光する実施例について説明する。
検査対象の基板100には、通常種々の繰り返しパターンがそれぞれ異なるピッチで形成されている。図44Aの401には、対物レンズ31のフーリエ変換面における検出光学系30の視野400内に発生する基板100に形成された第1の繰り返しパターンからの散乱光による発生する輝点410と、この輝点410を遮光するために従来用いられていた遮光パターン420の配置を示す。一方、図44Aの402には、基板100に形成された第2の繰り返しパターンからの散乱光により発生する輝点430と、この輝点410を遮光するために従来用いられていた遮光パターン420の配置を示す。基板100の全面を検査する場合、第1の繰り返しパターン領域を検査しているときには対物レンズ31のフーリエ変換面における検出光学系30の視野400内に輝点410が発生し、第1の繰り返しパターン領域を検査しているときには輝点430が発生するために、図44Aの403に示すように、遮光パターン420を輝点410と輝点430とに合わせて多数配置しなければならず、視野内の遮光領域を大きくしなければならなかった。その結果、検出精度が低下していた。
一方、本発明による光学フィルタリングデバイス2000を用いた場合、基板100に形成されたパターンからの散乱光により対物レンズ31のフーリエ変換面の視野400内に図44Bの404に示すような輝点410と430が発生した場合、対物レンズ31のフーリエ変換面に配置した光学フィルタリングデバイス2000に図44Bの405に2001−nで示すような遮光パターンを発生させることにより、輝点410と430が発生している箇所だけを遮光することが可能になり、光センサ35に入射する光量を落とすことなく検出することが可能になる。その結果、従来の直線状のフィルタ420を用いて輝点410,430からの強い光を遮光する場合と比べてより高い感度で欠陥を検出することが可能になる。
次に図45を用いて、基板100に形成されたパターンからの回折光を、対物レンズ31の瞳面上に設置された光学フィルタリングデバイス2000を用いて遮光する実施例の変形例について説明する。
まず基板100の検査に用いる照明条件を設定する(S4501)。次に、回折光を遮光したいパターン部が照明光照射領域に入るよう、ステージ系を動作させて基板100を移動する(S4502)。パターンからの回折光を含む、瞳面画像3235を取得する(S4503)。強い回折光を遮光する考え方に基づいて、遮光領域を設定する(S4504)。ここで、予め設定された割合を超えて対物レンズ31のフーリエ変換面を遮光していないかを確認する(S4505)。これは、遮光領域を大きくすると検査画像の解像度が落ち、欠陥検出感度が落ちる傾向があるためである。続いて、光学フィルタリングデバイス2000による空間フィルタが設定されている状態で瞳面観測系310で瞳面分布を実測し(S4506)、強い回折光が入射していた領域が遮光されていることを確認する(S4507)。以上により、光学フィルタリングデバイス2000を用いて遮光状態の設定が完了する。
図46を用いて、本発明の第3の実施例である、ランプを光源とした明視野検査装置の構成を説明する。
第1の実施例に対し、照明光学系の構成が変更されている。照明光学系10’は、ランプ光源17とビーム整形用のレンズ12、ビームスプリッタ15、照明絞り16と照明絞りの制御機器19からなる。なお、欠陥検出の高感度化のために、波長選択器18を照明光路中に設置しても良い。図46は、波長選択器18を照明光路中に設置している実施例を示している。ランプ光源17の像が、レンズ12を介して照明絞り16の位置に結像するように配置されている。照明絞り16の位置は、ビームスプリッタ15を介して対物レンズのフーリエ変換面に設置されている。この配置にすることで、照明光学系10’はケーラー照明光学系となっている。照明絞り16の遮光領域の大きさ・位置を適宜制御することにより、照明広がり角や照明仰角等の照明条件を変化させることができる。
検出光学系2530は、対物レンズ31、光学フィルタリングデバイス2000、結像レンズ33、光センサ35、A/D変換ユニット36からなる。光センサ35としては、積分型のセンサ(TDI(Time Delay Integration)センサ)を用いることで、より高速に検査を行うことが可能になる。
また、結像レンズ33と光センサ35の間に偏光フィルタ34を設置してもよい。図46では、偏光フィルタ34が含まれた構成図が示されている。
瞳面観測系310の構成は省略しているが、図21A及び図42で説明したのと同様に、対物レンズのフーリエ変換面上の光強度分布を観測できるように、レンズ311及び313、エリアセンサ315を備えている。
319はハーフミラーで構成されたビームスプリッタで、照明光学系10により照明された基板100からの散乱光のうち対物レンズ31で集光されて光学フィルタリングデバイス2000を透過した光を半分透過させて結像レンズ33の方向へ導くと共に、半分を反射させて瞳面観察系310の方向へ導くようになっている。
画像処理系2560は、隣接ダイ間画像位置ずれ情報算出ユニット2561、ダイ間差画像を用いて欠陥判定・検出処理を行うデータ処理ユニット2562を備えている。隣接ダイ間画像位置ずれ情報算出ユニット2561及びデータ処理ユニット2562は、それぞれ画像データを記憶しておく十分な容量を持ったメモリーを備えている。
制御・処理系2580は、少なくとも搬送系20を制御するための搬送系制御ユニット81、照明光源制御ユニット82、検出光学系2530からの検出信号から画像を取得するためのセンサ制御ユニット2583、画像処理系2560から出力される欠陥情報611の分類処理を実施する欠陥情報処理ユニット2584、そして全体をつかさどる制御ユニット2589を備えている。図46では光学フィルタリングデバイス2000の制御回路を含む電源ユニット86も図示している。電源ユニット86は制御ユニット2589と接続されているが、図46においてはその表示を省略している。
インターフェース系2590は、少なくとも制御・処理系2580にて処理・出力された欠陥情報を蓄積するデータ蓄積部2591、検査条件設定や制御処理情報入力を実施する入力部2592、欠陥情報を表示したり制御処理情報を表示する表示部2593を備えている。
本実施例では、対物レンズ31のフーリエ変換面における回折光分布は実施例2の場合以上に広がりを持つ。これは、ランプ照明光源は照明光の波長に分布をもつこと、およびレーザ光源に比べて輝度が低いので照明σを大きくとって照明光量を大きくする必要がある場合が多いためである。このため、従来知られているような等間隔で直線的なフィルタの組み合わせでは、不要な回折光を遮光する十分な性能を得ることができないが、本発明における光学フィルタリングデバイス2000を用いた空間フィルタシステム32であれば、任意の領域を遮光可能なため、回折光分布が広がっても遮光が可能となる。
次に図47を用いて、ウェハ表面近傍に形成されたパターンからの回折光を、瞳面上に設置された空間フィルタを用いて遮光する実施例について説明する。
まず、ウェハ検査に用いる照明条件を設定する(S4501)。次に、検査に用いる照明光の波長のうち遮光パターンを決定していない波長1つ選択し、該波長のみ基板100を照明させる(S4508)。回折光を遮光したいパターン部が照明光照射領域に入るよう、ステージ系を動作させて基板100を移動する(S4502)。パターンからの回折光を含む、瞳面画像3235を取得する(S4503)。強い回折光を遮光する考え方に基づいて、遮光領域を設定する(S4504)。ここで、予め設定された割合を超えて対物レンズ31のフーリエ変換面を遮光していないかを確認する(S4505)。これは、遮光領域を大きくすると検査画像の解像度が落ち、欠陥検出感度が落ちる傾向があるためである。続いて、空間フィルタが設定されている状態で瞳面分布を実測し(S4506)、強い回折光が入射していた領域が遮光されていることを確認する(S4507)。上記S4508及びS4502〜S4507の手順を、検査に使用する全ての波長の光について、繰り返し行う(S4509)。全ての波長について遮光領域を設定すれば、本手順は完了である。
次に図48を用いて、本発明におけるマイクロシャッタアレイを用いた光学フィルタリングデバイスを暗視野検査装置に適用した第4の実施例について説明する。
検査装置2700は、照明光学系2710、基板搬送系2720、上方検出光学系2730、第1のフーリエ変換面観測系27310、斜方検出光学系40、第2のフーリエ変換面観測系410、フォーカス測定系50、第1の画像処理系60、第2の画像処理系70、制御処理系2780、インターフェース系2790で構成されている。
照明光学系2710は、レーザ光源2711とビーム整形用のレンズ2712とを備え、レーザ光源2711から出射された光をレンズ2712にて適宜整形して、被検査基板100を照明する。実施例1で図21Aに示した暗視野検査装置1と同じ構成に対しては同じ番号を付している。
基板搬送系20は、Xステージ21、Yステージ22、Zステージ23、基板チャック24、θステージ25からなる。
上方検出光学系である検出光学系1:2730は、対物レンズ31、光学フィルタリングデバイス2000、結像レンズ33、光センサ35、A/D変換ユニット36を備えている。また、結像レンズ33と光センサ35の間に偏光フィルタ34を設置してもよい。図48では、偏光フィルタ34が含まれた構成が示されている。
対物レンズ31のフーリエ変換面上に光学フィルタリングデバイス2000が設置されているが、このフーリエ変換面上の光強度分布および光学フィルタリングデバイス2000による遮光状態を観測できるように、第1のフーリエ変換面観測系310が設置されている。第1のフーリエ変換面観測系310は少なくとも、光を分岐するための光学素子319、レンズ311及び313、エリアセンサ315を備えている。
斜方検出光学系である検出光学系2:2740は、第1の検出光学系2730と同様に、対物レンズ41、光学フィルタリングデバイス2400、結像レンズ43、光センサ45、A/D変換ユニット46を備えている。また、結像レンズ43と光センサ45の間に偏光フィルタ44を設置してもよい。図48では、偏光フィルタ44が含まれた構成図が示されている。
対物レンズ41のフーリエ変換面上に光学フィルタリングデバイス2400が設置されているが、このフーリエ変換面上の光強度分布および光学フィルタリングデバイス2400による遮光状態を観測できるように、第2のフーリエ変換面観測系410が設置されている。第2のフーリエ変換面観測系410は、光を分岐するための光学素子419、レンズ411及び413、エリアセンサ415を備えている。
フォーカス測定系50は、照明光学系51、検出光学系52、光センサ53、フォーカスずれ算出処理ユニット54を備えて構成されている。
第1の画像処理系60は、隣接ダイ間画像位置ずれ情報算出ユニット61、ダイ間差画像を用いて欠陥判定・検出処理を行うデータ処理ユニット62を備えている。
第2の画像処理系70は、隣接ダイ間画像位置ずれ情報算出ユニット71、ダイ間差画像を用いて欠陥判定・検出処理を行うデータ処理ユニット72を備えている。
制御・処理系2780は、少なくとも搬送系2720を制御するための搬送系制御ユニット2781、照明光源制御ユニット2782、上方検出光学系である検出光学系1:2730と斜方検出光学系である検出光学系2:2740を同期して画像を取得するためのセンサ制御ユニット2783、第1の画像処理系60及び第2の画像処理系70から出力される欠陥情報600と601とのマージ処理や分類処理を実施する欠陥情報処理ユニット2784、そして全体をつかさどる制御ユニット2789を備えている。図48では光学フィルタリングデバイス2000の制御回路を含む電源ユニット86、及び光学フィルタリングデバイス2400の制御回路を含む電源ユニット87も図示している。(図48においては、簡素化のために、電源ユニット86及び電源ユニット87と制御ユニット2789とを結ぶ信号線の表示を省略している)
インターフェース系2790は、少なくとも制御・処理系2780にて処理・出力された欠陥情報を蓄積するデータ蓄積部2791、検査条件設定や制御処理情報入力を実施する入力部2792、欠陥情報を表示したり制御処理情報を表示する表示部2793を備えている。
第1の実施例と最も異なっている点は、斜方検出光学系である検出光学系2:2740、第2のフーリエ変換面観測光学系410、及び第2の画像処理系70を持つことである。
図49A乃至図49Cに、基板100上に形成された繰り返しパターンからの回折光のうち、斜方検出光学系である検出光学系2:2740に入射した光がフーリエ変換面上に集光した状態を示す。
一般的な半導体基板等では、繰り返しパターンはXY方向に形成されることが多いため、基板100の表面とほぼ垂直方向に設置されている上方検出光学系である検出光学系1:2730におけるフーリエ変換面上の光強度分布は縦横の格子状になり格子の交点が輝点となるが、斜方検出光学系である検出光学系2:2740は基板100の表面の垂直方向から大きく傾いているため、検出光学系2:2740におけるフーリエ変換面上の視野400内の光強度分布は、特開2000−105203号公報(特許文献4)でも論じられているように、輝点410が一方向(図49AのY方向)が直線、それに直交する方向(図49AのX方向)では曲線の格子点上に並ぶ。この場合、輝点410をフィルタ420にて遮光しようとすると、図49Aのように、格子の直線の並びの方向に長いフィルタ420を入れる必要があり、格子間隔PXが狭い場合には、対物レンズ41の開口における、フィルタ420による遮光領域が大きくなって実質的に検査ができなくなってしまう可能性がある。
これに対して図49Bに示したような横方向のフィルタ420’で曲線上の格子点を遮光する場合、曲線401の曲がりが大きくなく(曲率が大きく)、横方向のフィルタ420’で遮光可能な場合にはよいが、図49Bのようにフィルタ420’の幅が十分でない場合には、全ての輝点を遮光することは困難であった。これに対し、本開発の空間フィルタリングデバイス2000を用いた光学フィルタリング方法によれば、図49Cのように、輝点の部分のみ遮光することができるので、対物レンズ41の開口を遮光する領域が狭い状態で所望の輝点を遮光することが可能となる。
図50に、本発明によるマイクロシャッタアレイを用いた光学フィルタリングデバイスを暗視野検査装置に適用した第5の実施例を示す。本実施例は、検出光学系2930の構成が第1の実施例と異なっている。リレーレンズ33を通った基板1表面からの散乱光は、偏光ビームスプリッタ37を用いて二つの偏光成分に分離され、それぞれセンサ35及びセンサ38上に結像される。得られた光強度分布をA/D変換ユニット36および39にてデジタル変換されたデータは、画像処理ユニット2960にて処理される。この時、基板100から散乱された光は、基板100の表面に形成されたパターンもしくは欠陥の特性に応じた偏光成分の散乱光が含まれているので、センサ35及び38の出力を適宜利用して欠陥の有無を判定する。
画像処理系2960は、隣接ダイ間画像位置ずれ情報算出ユニット2961、ダイ間差画像を用いて欠陥判定・検出処理を行うデータ処理ユニット2962を備えている。隣接ダイ間画像位置ずれ情報算出ユニット2961及びデータ処理ユニット2962は、それぞれ画像データを記憶しておく十分な容量を持ったメモリーを備えている。
制御・処理系2980は、少なくとも搬送系20を制御するための搬送系制御ユニット81、照明光源制御ユニット82、検出光学系2930からの検出信号から画像を取得するためのセンサ制御ユニット2983、画像処理系2960から出力される欠陥情報611の分類処理を実施する欠陥情報処理ユニット2984、そして全体をつかさどる制御ユニット2989を備えている。図50では光学フィルタリングデバイス2000の制御回路を含む電源ユニット86も図示している。電源ユニット86は制御ユニット2989と接続されているが、図46においてはその表示を省略している。
インターフェース系2990は、少なくとも制御・処理系2980にて処理・出力された欠陥情報を蓄積するデータ蓄積部2991、検査条件設定や制御処理情報入力を実施する入力部2992、欠陥情報を表示したり制御処理情報を表示する表示部2993を備えている。
図51に、本発明によるマイクロシャッタアレイを用いた光学フィルタリングデバイスを暗視野検査装置に適用した第6の実施例を示す。
本実施例は、照明光学系3010が備える複数の光源11a、11bから出射した光を一旦ビームスプリッタ11cを用いてほぼ同一の光学経路を通るようにした後、基板100を照射するようにしたものである。
画像処理系3060は、隣接ダイ間画像位置ずれ情報算出ユニット3061、ダイ間差画像を用いて欠陥判定・検出処理を行うデータ処理ユニット3062を備えている。隣接ダイ間画像位置ずれ情報算出ユニット3061及びデータ処理ユニット3062は、それぞれ画像データを記憶しておく十分な容量を持ったメモリーを備えている。
制御・処理系3080は、少なくとも搬送系20を制御するための搬送系制御ユニット81、照明光源制御ユニット3082、検出光学系30からの検出信号から画像を取得するためのセンサ制御ユニット3083、画像処理系3060から出力される欠陥情報611の分類処理を実施する欠陥情報処理ユニット3084、そして全体をつかさどる制御ユニット3089を備えている。図51では光学フィルタリングデバイス2000の制御回路を含む電源ユニット86も図示している。電源ユニット86は制御ユニット3089と接続されているが、図51においてはその表示を省略している。
インターフェース系3090は、少なくとも制御・処理系3080にて処理・出力された欠陥情報を蓄積するデータ蓄積部3091、検査条件設定や制御処理情報入力を実施する入力部3092、欠陥情報を表示したり制御処理情報を表示する表示部3093を備えている。
図52に、本発明によるマイクロシャッタアレイを用いた光学フィルタリングデバイスを暗視野検査装置に適用した第7の実施例を示す。
図16Aで説明した構成では、光学フィルタリングデバイス2000に拡大観察系3210を組み込んだ空間フィルタ32を用いることとしていたが、本実施例では、フーリエ変換面観測系3100に図16Aで説明した観察系3210の機能を含めるものである。すなわち、拡張されたフーリエ変換面観測系3100は、光源329と、ビームスプリッタ328を、第1の実施例のフーリエ変換面観測系310に追加して備えたものである。これにより、光源329から出射された光は、検出光学系3130のフーリエ変換面観測系の光軸にほぼ一致した経路を通るように配置されたビームスプリッタ328によって光軸が曲げられ、レンズ311、ビームスプリッタ319を通って、光学フィルタリングデバイス2000を照明する。着目したシャッタ2001からの反射光3214がカメラ315に到達して明るく見えればシャッタ2001は閉状態であり、反射光が無く暗く見えればシャッタ2001は開状態と判定する。
ここで図16A乃至図16Eを用いて説明したのと同様に、ラッチ閉状態になっているシャッタ2001はΔθmaxを最大としてΔθだけ傾いているため、直接反射光はシャッタ以外の部分とは2×Δθmaxだけずれた方向に反射されるので、この反射光もレンズ311に入るよう、十分大きい開口となるレンズをレンズ311として用いる必要がある。なおレンズ311の開口が小さく、ラッチ閉状態のシャッタからの反射光がレンズに入らない場合は、シャッタ2001が真っ暗に見えるため、開状態との区別がつかなくなる。
なお、基板100の表面からの回折・散乱光からの散乱光との混合を避けるため、図22に示したフロー図において、基板100を走査して(S2204)基板100の表面近傍の光学的画像を取得する(S2205)際には、照明329は消灯するか遮光して、光学フィルタリングデバイス2000に照明光が当たらないようにするのが望ましい。
画像処理系3160は、隣接ダイ間画像位置ずれ情報算出ユニット3161、ダイ間差画像を用いて欠陥判定・検出処理を行うデータ処理ユニット3162を備えている。隣接ダイ間画像位置ずれ情報算出ユニット3161及びデータ処理ユニット3162は、それぞれ画像データを記憶しておく十分な容量を持ったメモリーを備えている。
制御・処理系3180は、少なくとも搬送系20を制御するための搬送系制御ユニット81、照明光源制御ユニット82、検出光学系3130からの検出信号から画像を取得するためのセンサ制御ユニット3183、画像処理系3160から出力される欠陥情報611の分類処理を実施する欠陥情報処理ユニット3184、そして全体をつかさどる制御ユニット3189を備えている。図52では光学フィルタリングデバイス2000の制御回路を含む電源ユニット86も図示している。電源ユニット86は制御ユニット3089と接続されている。
インターフェース系3190は、少なくとも制御・処理系3180にて処理・出力された欠陥情報を蓄積するデータ蓄積部3191、検査条件設定や制御処理情報入力を実施する入力部3192、欠陥情報を表示したり制御処理情報を表示する表示部3193を備えている。
本発明におけるマイクロシャッタアレイを用いた光学フィルタリングデバイスを暗視野検査装置に適用した第8の実施例を図53A及び図53Bを用いて説明する。
本実施例に係る暗視野検査装置は、図53Aに示すように、照明部4100、検出部4200(4200a〜4200f)、試料4001を載置可能なステージ4300、信号処理部4500、全体制御部4600、表示部4700、入力部4800を適宜用いて構成される。
信号処理部4500は、欠陥判定部4510、特徴量抽出部4520、及び欠陥種・寸法判定部4530を有する。正反射検出部4290は、大面積欠陥検査あるいは試料表面計測等の目的で必要に応じて設置される。照明部4100は、レーザ光源4101、アッテネータ4102、偏光素子4103、ビームエキスパンダ4104、照度分布制御素子4105、反射ミラー4106、集光レンズ4107を適宜用いて構成される。レーザ光源4101を出射したレーザ光は、アッテネータ4102にて強度を、偏光素子4103にて偏光状態を、照度分布制御素子4105にて照明光束内の強度分布をそれぞれ調整され、反射ミラー4106と集光レンズ4107を用いて試料4001表面近傍に集光されて試料表面に照射される。
ステージ4300は、並進ステージ4310、回転ステージ4320、Zステージ4330、基板支持機構4340を有する。図59に、試料4001条の照明領域(照明スポット4020)と、回転ステージ4320及び並進ステージ4310の運動による走査方向との関係、及び、それによって試料4001条に描かれる照明スポット4020の軌跡を示す。
照明スポット4020は、回転ステージ4320の回転運動によって回転ステージ4320の回転軸を中心とした円の円周方向D1に、並進ステージ4310の並進運動によって並進ステージ4310の並進方向D2に走査される。照明スポット4020の長手方向が走査方向D2と平行となり、かつ走査方向D2の走査によって回転ステージ4310の回転軸を照明スポット4020が通過するように、照明部4100が構成される。Zステージは、試料4001表面が適切な位置にあるように移動される。以上の構成により、走査方向D1の走査によって試料4001が1回転する間に、照明スポット4020の長手方向の長さ以下の距離を走査方向D2に走査することで、照明スポット4020がらせん状の軌跡Tを描き、試料4001の全面が走査される。
検出部4200は、図53Bに示すように複数の検出部4200a〜4200fを備えており、試料4001表面にて散乱された、互いに異なる方位、仰角方向に伝播する散乱光を集光して検出するように構成される。
複数の検出部4200a〜4200fの詳細な構成を、検出部4200aを用いて説明する。
検出部4200aは、集光系4210a、2次元空間フィルタシステム32a、偏光フィルタ4220a、及びセンサ4230aを適宜用いて構成される。集光系4210aにより照明スポット4020の像が、センサ4230aの受光面もしくはその近傍に結像される。この際、 2次元空間フィルタシステム32aを用いて、所望の方向へ散乱された光を遮光することが可能である。偏光フィルタ4220aは、集光系4210aの光軸上への挿入・取出が可能となっている。センサ4230aには、光電子増倍管、アバランシェホトダイオード、イメージインテンシファイアと結像した半導体光検出器等を適宜用いる。
検出部4200で検出された散乱光信号がA/D変換等の処理実施した後、信号処理部4500に伝達される。信号処理部4500では、欠陥判定部4510にて欠陥の存在箇所が判定される。欠陥と判断された箇所については、特徴量抽出部4520にて特徴量が抽出され、特徴量は欠陥種・寸法判定部4530に送られて、欠陥種及び寸法が判定される。判定結果は、全体制御部4600へ送られ、表示部4700より装置操作者が確認可能な形態で出力される。
本実施例の光学系では、特許文献8(特開2010−2406号公報)において説明されているのと同様に、半導体ウェハ等の基板の表面荒れによる散乱光が検出光学系にて検出される。一方で、基板表面上に載った異物や基板表面の欠陥を感度良く検出したい場合には、表面荒れは背景雑音の原因となる。
図54A乃至図54Dに、試料4001に対して照明1を照射した場合に、試料4001の表面荒れによる散乱光の分布4003がどのようになるかを示したイメージを示す。光散乱に寄与した表面荒れの空間周波数に応じて、照明光1はさまざまな方向に散乱される。図54Aに示すような試料4001の空間周波数が高い成分によって散乱された光は、照明光1の直接反射方向に近い方向に散乱が出て(図43B)、図54Cに示すような空間周波数が低い成分によって散乱された光は、照明光1の入斜方向に近い方向に散乱が出る(図43D)。
ここで、表面荒れの度合いはウェハ製造もしくはウェハ再生のプロセスに起因するものであるため、例えば同一ロットであればほとんど変化しないと考えてよい。表面荒れの度合いが変化しなければ、表面荒れ起因によって生じる散乱光の散乱方向は、変化しない。
本実施例では、あらかじめ表面荒れ起因散乱光の散乱方向を取得しておき、本発明の光学フィルタリングデバイス2000を用いて表面荒れ起因散乱光を遮光することで、基板表面上に乗った異物や基板表面の欠陥を感度良く検出できる。
次に、実施例8の構成の変形例を図55A御世に図55Bを用いて説明する。本変形例は、空間フィルタ32a〜32fの駆動回路4250a〜4250fが、回転ステージ4320の回転角度出力器4322の出力と同期して遮光領域を動的に変えることができるよう、ステージ駆動ドライバ4610と空間フィルタ駆動回路制御システム4660との間に信号線4650を増設したものである。
シリコンのエピタキシャル成長膜を表面に持つシリコンウェハ(表面にパターンが形成されていないウェハ、以下、簡単に「シリコンエピウェハ」と記す)では、テラスと呼ばれる、原子層厚みに相当する段差が、ほぼ同一方向に並ぶことが知られている。(特開2006−100596号公報、”Step Pattern Formation on Si Vicinal Surfaces with Two Coexisting Structures”, M. Uwaha, http://www.ims.nus.edu.sg/Programs/nanoscale/files/muwaha1.pdf )
このため、シリコンエピウェハに白色の照明を照射した場合には、ウェハが虹色に見えることが知られている。この現象と同じ原因により、レーザ光をシリコンエピウェハに照明した場合には、照明光のウェハ表面からの直接反射方向から、テラスの並び方向に向かって、強い散乱光が発生することが知られている。すなわち、シリコンエピウェハにレーザ光を照射しつつウェハを回転させると、ウェハの向きに応じて強い散乱光が出る方向が変化する。しかしながら、シリコンエピウェハにおいてはテラスは欠陥ではないため、欠陥として検出したくないという強いニーズがある。
そこで本変形例では、ウェハの回転に合わせて光学フィルタリングデバイス2000の遮光領域を変えることで、テラスの段差部分が原因で発生する強い散乱光を遮光しつつ、それ以外の散乱光を光電子増倍管等の高感度な光センサにて検出できるように構成した。これにより、シリコンエピウェハ上の異物・欠陥の検出を効率よく検出することが可能である。
本発明に関わる検査装置を用いた基板検査条件の設定フローを図57に示す。
まず照明角度(方位、仰角)や照明偏光などの照明条件を設定する(S5701)。空間フィルタ設定以外の検出光学条件(光学倍率、検光の有無等)を設定する(S5702)。欠陥処理パラメータを設定する(S5703)。被検査ウェハ100が装置にロード済でなければウェハ100をロードし(S5705)、ノッチやオリフラを用いてアライメントを合わせる(S5706)。エピウェハ上のテラスを含む領域が、照明光の照射領域に入るようにウェハを移動する(S5707)。
図56Aに示すように、テラスの方向7451は、ウェハの水平方向とは5〜15°程度ずれている。このずれは結晶の成長方法によって異なることが知られている。この値を入力しておく(S5704)。ここでステージ角度を得ておき(S5708)、ウェハを図59中に示すD2方向に走査しながら、エピウェハ上のテラスにて回折した光を検出して、平均的に検出光量が最大となったセンサを特定し(S5709)、テラス角度7451とステージ角度、照明の照射方向と検出光量が最大となったセンサとの関係に矛盾がないかを確認する(S5710)。矛盾がある場合は、光学系の設定かテラス角度の入力値に誤りがあるため、手順S4601に戻る。
以上で設定された検査条件でウェハを試し検査し(S5711)、テラスからの回折光を低減していることを確認できれば(S5712)基板検査条件設定を終了する。欠陥検出感度が不足している場合は、照明条件の設定(S5701)に戻って設定した条件を修正する。
本発明の第2の実施例に関わる検査装置を用いた基板検査工程のフロー図を図58に示す。
基板100が検査装置1にロードされ(S5801)基板チャック24で保持される。検査装置1は基板100のアライメントを実行し(S5802)、アライメントされた基板100上のノッチ195の座標を取得することにより(S5803)、基板100の角度と回転ステージの基準方向とのなす角度を検知する。
次に、基板100を図59に示すように走査し(S5804)、基板100の表面から散乱された光を検出し、その光量分布を取得する(S5805)。得られた分布をもとに、基板100の表面近傍に欠陥及び異物の有無を判定する欠陥判定処理(S5806)を行うことによって実施する。続いて基板100は検査装置1からアンロードされ(S5807)、基板100の欠陥検査結果が出力される(S5808)。
図59に、試料4001上の照明領域(照明スポット4020)と、回転ステージ4320及び並進ステージ4310の運動による走査方向との関係、及び、それによって試料4001条に描かれる照明スポット4020の軌跡を示す。
照明スポット4020は、回転ステージ4320の回転運動によって回転ステージ4320の回転軸を中心とした円の円周方向D1に、並進ステージ4310の並進運動によって並進ステージ4310の並進方向D2に走査される。照明スポット4020の長手方向が走査方向D2と平行となり、かつ走査方向D2の走査によって回転ステージ4310の回転軸を照明スポット4020が通過するように、照明部4100が構成される。Zステージは、試料4001表面が適切な位置にあるように移動される。
以上の構成により、走査方向D1の走査によって試料4001が1回転する間に、照明スポット4020の長手方向の長さ以下の距離を走査方向D2に走査することで、照明スポット4020がらせん状の軌跡Tを描き、試料4001の全面が走査される。
以上、本発明者によってなされた発明を実施例に基づき具体的に説明したが、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、その要旨を逸脱しない範囲である実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。また、各実施例の構成の一部について、他の公知の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。