しかしながら、超大型のガラス基板(例えば、1m×1m角以上の面積のもの)をフッ酸処理する際に、特開2004−356379号記載の技術を適用しようとすると、次の問題点を招来する。
まず、特開2004−356379号記載の技術では、処理基板のロード・アンロードを、搬送ロボットによるオフライン処理としているため、超大型ガラス基板を搬送する際にその撓みなどが問題となるほか、搬送ロボットによるガラス基板の受け渡しに長時間を要し、インライン処理と比較して、効率的な搬送処理が困難となる。また、上記オフライン処理では、ロードロック室を準備したり、搬送ロボットを用いたりしているため、超大型のガラス基板を処理するには、その分搬送系部材を大型化せざるを得ず、搬送系ひいてはエッチング装置の容積ないしフットプリントの増大が深刻な問題となる。さらに、搬送系ないしエッチング装置が大型化すると、一般に処理基板の搬送時間や処理時間が長大化する他、装置全体の製造コストおよびランニングコストが増大するという問題も生じる。
そして、超大型基板では、基板内の処理ムラが中小型基板よりも深刻な問題となるが、基板全面を均一処理しようとしても、特開2004−356379号のように、処理基板を回転させることは、超大型のガラス基板では困難である。仮に回転させたとしても、通常矩形の超大型ガラス基板を回転させると極めてスペース効率が悪くなるほか、次の理由によって、基板内の均一処理を図ることは容易ではない。
すなわち、ガラス基板をフッ酸処理する場合、ガラス内部に含まれる酸化シリコンとフッ酸との反応(SiO2+4HF→SiF4+2H2O)によって水分が生成され、この生成水分によってエッチングレートが変化するが、前述のように、処理基板を回転させる方法では、超大型基板の内周部と外周部とで大きな回転速度差が生じ、処理基板に作用するエッチングガスの濃度分布を均一とすることができない。結果として、超大型基板の内周部と外周部とでは、生成水分量に差が生じ、基板内の処理ムラを抑制することが困難となる。
本発明は、以上の実情に鑑みなされたものであって、その目的は、大型基板を処理する場合であっても、エッチング装置やその搬送系をコンパクトなものとし、さらには、基板内の均一処理を可能とするエッチング装置を提供することにある。
本発明に係るエッチング装置は、上記課題を解決するために、基板を支持するステージと、前記基板を前記ステージ上に搬入するとともに、前記ステージ上の基板を該ステージ上から搬出する搬送手段と、前記ステージと対向するように配設され、少なくともフッ素系反応成分を含む処理ガスを、前記ステージ上の基板処理面に向けて吐出するノズルを具備した処理ガス供給ヘッドと、前記処理ガス供給ヘッドのノズルに前記処理ガスを供給するガス供給手段とを備えたエッチング装置において、前記処理ガス供給ヘッド及び前記ステージの少なくとも一方を、他方に対して離接させる駆動手段を更に備え、前記処理ガス供給ヘッドは、前記ステージと対向する面に凹部が形成されるとともに、前記ノズルが該凹部壁面に複数配設されてなり、前記駆動手段により、前記処理ガス供給ヘッド及び前記ステージの少なくとも一方を他方に対して接近させることにより、前記処理ガス供給ヘッドの周縁部が前記ステージ又は基板に当接して、前記処理ガス供給ヘッドの凹部内の空間が閉塞された処理室となるように構成されているエッチング装置に係る。
上記の構成によれば、前記搬送手段の動作によって、前記基板が前記ステージとその前後工程との間で連続的に搬入・搬出される。前記処理ガス供給ヘッドは、前記ステージと対向するように配設されており、前記ガス供給手段によって供給された処理ガスを前記ステージ上の基板処理面に向けて吐出するノズルを備えている。このノズルは、前記凹部壁面に複数配設されるものであり、前記凹部の底面に設けられてもよいし、前記凹部の内側面に設けられてもよい。前記凹部の壁面のいずれかに前記ノズルが配設されれば、前記凹部内の空間が閉塞された処理室となったときに、この処理室内に処理ガスを供給することが可能となる。
前記駆動手段は、前記処理ガス供給ヘッド及び前記ステージの少なくとも一方を、他方に対して離接させるものであり、前記処理ガス供給ヘッドには、前記ステージと対向する面に凹部が形成されているので、前記駆動手段により、前記処理ガス供給ヘッド及び前記ステージの少なくとも一方を他方に対して接近させることにより、前記処理ガス供給ヘッドの周縁部が前記ステージ又は基板に当接して、前記処理ガス供給ヘッドの凹部内の空間が閉塞された処理室を形成する。
上記の構成において、前記処理ガス供給ヘッドの周縁部が前記ステージ又は基板に当接したときに、前記処理ガス供給ヘッドが前記閉塞された処理室の壁面の一部となる構成とすることが好ましい。
上記の構成によれば、前記処理ガス供給ヘッドには凹部が設けられており、この凹部と前記ステージ又は基板とに囲まれた狭小な空間内が閉塞された処理室となり、この処理室内に処理ガスが供給されて基板が処理される。すなわち、極めてコンパクトに構築される処理室内で基板処理を実現することができる。
形成される処理室(閉塞空間)の容積をよりコンパクトにするという観点からは、前記処理ガス供給ヘッドに設けられる凹部の内部空間の(隙間)高さをできるだけ小さくする(例えば、高さ10mm以下)ことが好ましい。このようにして、形成される処理室をコンパクトなものとすれば、処理装置ないし搬送系の大型化を抑制し、そのフットプリントを低減することができる。
また、上記の構成によれば、従来必要な処理ガス供給ヘッドを、閉塞された処理室の壁面の一部として利用することができるので、大型基板を処理する場合であっても、処理ガス供給ヘッドと別途に大型の処理室を準備する必要がなく、その分、エッチング装置やその搬送系をコンパクトなものとすることが可能となる。
また、上記のように、処理室の構成をコンパクトなものとすれば、当該処理室を真空引きする場合などにも真空引きに要する時間やエネルギーを少なくできるほか、処理室内部にて使用する処理ガスの量などを低減することが可能となる。この結果、エッチング装置の製造コストやランニングコストを低減することが可能となる。
また、上記の構成によれば、処理室が閉塞された狭小な空間となっており、処理ガスを供給する処理ガス供給ヘッド(当該ヘッドが排気系を備える場合にはその排気系を含む)と基板との距離が極めて近くなるので、処理室内部でのガス分布のバラツキが小さく、仮に大型基板を処理する場合であっても、その均一な処理を可能とすることができる。
さらに、前記搬送手段をインライン化して、エッチング装置を前後の処理装置と連続的に構成することにより、搬送ロボット等を用いるオフライン処理と比較して、エッチング装置やその搬送系を更にコンパクトなものとし、空間を効率的に利用しながら基板処理を実現することができる。
上記の構成において、前記処理ガス供給ヘッドは、その凹部壁面に、外部に通じる排気孔が複数穿設され、前記エッチング装置は、更に、前記各排気孔に接続される排気手段を備えており、複数の排気孔は、前記各ノズルに対して千鳥位置に配設されている。
上記の構成によれば、前記処理ガス供給ヘッドは、前記閉塞された処理室に処理ガスを供給するとともに、処理後のガスや基板から生じた水分等を、前記凹部壁面の排気孔を通じて外部に排気することができる。これにより、上記処理室内の排気ガスや水分を速やかに排出し、処理雰囲気のコンディションを良好に保つことが可能となる。
上記の構成において、前記ステージには、その基板支持面に開口する複数の吸引孔が形成され、前記エッチング装置は、更に、前記各吸引孔に接続される負圧手段を備えていることが好ましい。
上記の構成によれば、前記基板支持面に開口する複数の吸引孔とそれに接続される負圧手段の機能によって、基板が前記ステージの基板支持面に吸引されるので、大型のガラス基板であっても安定的にステージ上に保持することができる。
上記の構成において、前記処理ガス供給ヘッドを加熱するヘッド加熱ヒータを前記処理ガス供給ヘッドに付設したことが好ましい。とりわけ、前記ヘッド加熱ヒータは、前記処理ガス供給ヘッドを所定の分割領域毎に独立して加熱するように構成されていることが好ましい。
上記の構成によれば、ヘッド加熱ヒータによって、前記処理ガス供給ヘッドないし同ヘッドから供給される処理ガスを加熱することができる。特に、大型基板をエッチング処理する場合には、当該大型基板に対応する前記処理ガスヘッドも大面積のものとなるが、この処理ガス供給ヘッドを所定の分割領域毎に独立して加熱するように構成すれば、領域毎の温度ムラを低減し、基板に供給する処理ガスの温度を基板全面において一様のものとすることができる。この結果、基板内のエッチング処理をより均一なものとすることが可能となる。
上記の構成において、前記ステージを加熱するステージ加熱ヒータを前記ステージに付設したことが好ましい。とりわけ、前記ステージ加熱ヒータは、前記ステージを所定の分割領域毎に独立して加熱するように構成されていることが好ましい。
上記の構成によれば、ステージ加熱ヒータによって、基板を載置するステージを加熱することができる。特に、大型基板を処理する場合には、当該大型基板に対応するステージも大面積のものとなるが、前記ステージを所定の分割領域毎に独立して加熱するように構成すれば、領域毎の温度ムラを低減し、基板温度を基板全面において一様のものとすることができる。この結果、基板内のエッチング処理をより均一なものとすることが可能となる。
本発明に係るエッチング装置によれば、大型基板を処理する場合であっても、エッチング装置やその搬送系をコンパクトなものとし、さらには、基板の均一処理を可能とすることができる。
以下、本発明の具体的な実施形態について、添付図面に基づき説明する。
〔1.装置の構成例〕
図1に示すように、本例の処理装置1は、板材によって形成されて独立したチャンバ21、22、23から構成されており、チャンバ21における前工程(プレヒート工程)およびチャンバ23における後工程(洗浄工程)との間のチャンバ22において、ガラス基板Kの上面をフッ酸ガスによりエッチング処理(テクスチャリング処理)するものである。
処理装置1の内部には、チャンバ21、22、23に渡って、複数の搬送ローラ18および搬送ローラ12が同一平面上に配設されており、これらローラが適宜駆動装置によって駆動され、その上に載置されたガラス基板Kをインライン搬送するように構成されている。ここで、搬送ローラ12は、チャンバ22の壁面に固設されている。ガラス基板Kは、チャンバ21、22、23の順に搬送され、チャンバ21からチャンバ22内の昇降ステージ6上に搬入されるとともに、昇降ステージ6上からチャンバ23へと搬出される。ガラス基板Kは、チャンバ21(プレヒート工程)においては、IRヒータ等によって加熱される一方、チャンバ23(洗浄工程)においては、シャワー洗浄によって洗浄される。
チャンバ21、22、23の相互を仕切る隔壁には、それぞれ開口部24が形成されており、ガラス基板Kは、この開口部24を通って各チャンバ間を搬送される。本例にて用いられるガラス基板Kの厚みには特に制限はないが、例えば5mm以下の厚みとすることが好ましい。
エッチング装置20は、チャンバ22の内部ないし上部に設けられている。ガラス基板Kは、前処理(プレヒート工程)が終わると、搬送ローラ18および搬送ローラ12によって、チャンバ21からチャンバ22に搬送され、エッチング装置20にてエッチング処理される。そして、エッチング処理が終わると、搬送ローラ12および搬送ローラ18によって、チャンバ22からチャンバ23に搬送され、後処理(洗浄工程)が施される。
図1に示すように、エッチング装置20においては、処理ガス供給ヘッド3と昇降ステージ6とが対向する形で設けられている。処理ガス供給ヘッド3は、処理ガスを導入するためのガス導入口2を側部に備え、上部の排気ダクト4を介して圧力制御ユニット5と接続されている。圧力制御ユニット5は、排気ダクト4を通じて、処理ガス供給ヘッド3が形成する処理室(後述)内の圧力を調整する構成となっている。
処理ガス供給ヘッド3は、ガス導入口2を通じて供給されたガスを昇降ステージ6上のガラス基板Kに向けて吐出するために、上記ガスを基板処理面に向けて吐出する複数の吐出孔3a(ノズル)を均等な間隔で具備している。
処理ガス供給ヘッド3には、昇降ステージ6と対向する面に凹部7が形成されている。本例では、処理ガス供給ヘッド3に凹部7を設け、昇降ステージ6を処理ガス供給ヘッド3に対して接近、当接させることにより、凹部7内の空間が閉塞された処理室となるように構成している。具体的には、昇降装置8の動作により、昇降ステージ6を処理ガス供給ヘッド3に対して接近させることにより、処理ガス供給ヘッド3の周縁部がガラス基板Kに当接し、処理ガス供給ヘッド3の凹部7内の空間が閉塞された処理室となる。このとき、処理ガス供給ヘッド3は、前記処理室の壁面の一部となっている。この処理室は、その狭小さに特徴があるが、前記処理室の容積をよりコンパクトにするという観点からは、凹部7の内部空間の(隙間)高さ(図2の高さtを参照)をできるだけ小さくすること(例えば、高さ10mm以下)が好ましい。
なお、昇降装置8は、駆動装置9とシャフト10と台座11とから構成されており、台座11を支持し、台座11と一体に構成されたシャフト10を駆動装置9の動作によって上下動させる構成となっている。
上記の説明では、処理ガス供給ヘッド3の周縁部は、基板Kの表面に当接するものとしたが、処理ガス供給ヘッド3の周縁部は、基板Kではなく昇降ステージ6の表面に当接することにより、処理ガス供給ヘッド3の凹部7内の空間が閉塞された処理室となるように構成されてもよい。
このようにして、処理ガス供給ヘッド3の周縁部がガラス基板Kに当接し、閉塞された処理室が形成されると、処理ガス供給ヘッド3に設けられた複数の吐出孔3aから、フッ酸ガスがその下方のガラス基板Kへと向けて供給される。吐出孔3aは、凹部7の壁面に配設されるものであり、より具体的には、図1のように凹部7の底面に設けられてもよいし、図1とは異なり凹部7の内側面に設けられてもよい。凹部7の壁面のいずれかに吐出孔3aが配設されれば、上述のように、凹部7内の空間が閉塞された処理室となったときに、この処理室内にフッ酸ガスを供給することが可能となる。同じく、処理ガス供給ヘッド3の凹部7の壁面に設けられた排気孔3bからは、排気ダクト4(図1参照)を通じて、圧力制御ユニット5へと排気が行われる。圧力制御ユニット5には、ガス排気のための排気装置13が接続されている。
また、処理ガス供給ヘッド3の上部には、処理ガス供給ヘッド3を加熱する複数のヘッド加熱ヒータ14が付設されており、このヘッド加熱ヒータ14の発する熱を処理ガス供給ヘッド3に均等に伝えるための伝熱体15が、ヘッド加熱ヒータ14と処理ガス供給ヘッド3との間に設けられている。他方、昇降ステージ6には、昇降ステージ6を加熱する複数のステージ加熱ヒータ16が付設されている。
処理ガス供給ヘッド3のガス導入口2には、窒素ガス・アルコール・フッ化水素ガス(フッ酸ガス)を選択的に供給するガス供給源17が接続されている。
図2は、図1の二点鎖線にて囲んだ円領域Aを拡大した拡大図である。なお、図2では、処理ガス供給ヘッド3の断面をハッチングで示している。同図に示されるように、処理ガス供給ヘッド3において、ガス導入口2から導入されたガスは、吐出孔3aから吐出されるが、各吐出孔3aの内部は上下二段の空間に分かれた構成となっており、上段は、処理ガス供給ヘッド3全体にガスを均一に広げるための第一ディフューザスペースd1、下段は、更にガス分布の均一性を高め、ガラス基板Kにガスを吐出するための第二ディフューザスペースd2である。第一ディフューザスペースd1と第二ディフューザスペースd2とは、それぞれ、全ての吐出孔3aに渡って図中横方向に連通した構成となっている。したがって、ガス導入口2から導入されたガスは、上段の第一ディフューザスペースd1において処理ガス供給ヘッド3の全面に拡がり、さらに、下段の第二ディフューザスペースd2に進むことにより均等に拡散した状態となって各吐出孔3aから吐出される。
このように、上段の第一ディフューザスペースd1において、ガスが処理ガス供給ヘッド3の全面に拡がってから、下段の第二ディフューザスペースd2に進み、更に拡散して吐出孔3aから排出されるように、第一ディフューザスペースd1と第二ディフューザスペースd2とを連結する連結孔h1の径は、第二ディフューザスペースd2と外部とを連結する連結孔h2の径よりも小さくなっている。このようにすれば、連結孔h1の径が小さいため、第一ディフューザスペースd1内のガスは直ぐに、第二ディフューザスペースd2へと進むのではなく、全ての第一ディフューザスペースd1内において十分に拡散してから、第二ディフューザスペースd2へと進むことになり、処理ガス供給ヘッド3の全面に均一にガスを拡散させることが容易となる。
また、処理ガス供給ヘッド3においては、その複雑な構造を実現するために、ヘッド全体を部材3c〜3eからなる3部構造としてもよい。すなわち、上部材3cに第一ディフューザスペースd1を形成する一方、下部材3eに第二ディフューザスペースd2及び連結孔h2を形成し、上部材3cと下部材3eとの間に、連結孔h1を設けた中部材3dを挟み込み、これら部材をロウ付けなどする構造とすれば、上部材3c、中部材3d、下部材3eを個別に成型したうえで、これら部材から処理ガス供給ヘッド3の構造を実現することができる。なお、排気孔3bについては、上部材3c、中部材3d、下部材3eの共通位置に同じ径で設けておき、組み上げ時に連通した排気孔3bとなるようにする。
排気孔3bは、各吐出孔3aに対して千鳥位置に配設されるとともに(図10参照)、処理ガス供給ヘッド3においてガラス基板Kに対向する面から伝熱体15側の面まで連通する構成であり、前記処理室内のガスを排出するものである。各排気孔3bを通じて排気される排気ガスは伝熱体15内の各空洞を通じて、排気ダクト4(図1参照)へと導かれる。図2に示されるように、伝熱体15は、ヘッド加熱ヒータ14の発する熱を上部材3cに伝えるための円柱状の柱を多数備えているが、各円柱間、すなわち円柱部分以外の空洞は全て一つに連結する構造となっており、各排気孔3bから排出された排気ガスは、上記空洞を通じて前記排気ダクト4へと流れていくことになる。
図3は、処理ガス供給ヘッド3とガラス基板K又は昇降ステージ6とによる処理室形成の様子を模式的に示した図である。同図(a)(b)の模式図では、処理ガス供給ヘッド3を凹部形状部材として示し、ガス導入口2、吐出孔3a、排気孔3b、排気ダクト4の各構成はその図示を省略している。
図3(a)は、処理ガス供給ヘッド3の周縁部が、Oリング25を介してガラス基板Kの表面に当接することにより、処理ガス供給ヘッド3の凹部7内の空間が閉塞された処理室となる様子を示したものである。ガラス基板Kの裏面に位置する昇降ステージ6には、Oリング26と基板支持面に開口する複数の吸引孔とが形成され、更に、前記各吸引孔は真空バルブ27に接続されている。
図3(b)は、処理ガス供給ヘッド3の周縁部が、Oリング28を介して昇降ステージ6の表面に当接することにより、処理ガス供給ヘッド3の凹部7内の空間が閉塞された処理室となる様子を示したものである。ガラス基板Kの裏面に位置する昇降ステージ6には、基板支持面に開口する複数の吸引孔が形成され、更に、前記各吸引孔は真空バルブ29に接続されている。
図3(a)(b)の構成においては、各真空バルブ27,29を開くことによって、ガラス基板Kは昇降ステージ6の表面に吸引されるので、大型のガラス基板Kであっても、安定的に昇降ステージ6上に保持することができる。併せて、ガラス基板Kを昇降ステージ6上に密着させることができるので、不要なフッ酸ガスが、ガラス基板Kの処理面と反対側の裏面に回り込むのを防止することが可能となる。
図4は、ガラス基板Kが載置される昇降ステージ6の構成例を示した模式図であり、同図(a)は、昇降ステージ6の構成例を斜視方向からみたもの、同図(b)は、同図(a)の矢示B−B方向の断面を示すものである。
図4(a)(b)に示されるように、昇降ステージ6上には、Oリング31が備えられている。そして、ガラス基板Kを搬送する際には、昇降ステージ6の上面には、搬送ローラ12の上部が突出しているが、前述のように、処理ガス供給ヘッド3の周縁部が昇降ステージ6(または基板K)に当接する際には、昇降ステージ6が上昇する一方、搬送ローラ12は動かないので、搬送ローラ12は自動的に昇降ステージ6の下方に格納され、そのとき、搬送ローラ12の位置した各開口部にてシャッタ32が閉じられる構造になっている。なお、図4(b)は、昇降ステージ6の各所定位置にて搬送ローラ12が突出し、シャッタ32が開いた状態を示している。
前述の通り、昇降ステージ6には、昇降ステージ6を加熱する複数のステージ加熱ヒータ16(図1参照)が付設されている。図4(a)において、ステージ加熱ヒータ16は、昇降ステージ6を所定の分割領域〔図4(a)中、一点鎖線において4分割領域を示している〕毎に独立して加熱するように構成されている。もちろん、ステージ加熱ヒータ16の分割様式は、同図(a)の4分割に限られるものでなく、9分割、16分割等してもよいし、ステージの内周領域と外周領域とで分割してもよい。このような構成を採用し、各ステージ加熱ヒータ16の出力を調整することにより、昇降ステージ6上に載置するガラス基板Kの温度を均一化することができる。
図5(a)は、昇降ステージ6の更なる構成例を斜視方向からみた模式図である。同図に示す昇降ステージ6には、Oリング34のほか、上記の搬送ローラ12に代えて、エア孔35が多数規則的に配置されており、このエア孔35から吹き出すエアによってガラス基板Kをエア搬送する構成となっている。
図5(b)は、図5(a)の矢示C−C方向の断面を示す断面図である。エア孔35は、開閉バルブ36、37と連結しており、開閉バルブ36はそれを開くことによってエア孔35からエア(不活性ガス)を上方に吹き付ける構成、開閉バルブ37はそれを開くことによってエア孔35からエアを吸引する構成となっている。この二種類の開閉バルブ36、37の開閉を自動制御することにより、ガラス基板Kを昇降ステージ6上で浮上させたり、吸着させたりすることが可能となる。
また、図5(a)においても、図4(a)と同様、昇降ステージ6には、複数のステージ加熱ヒータ16(図1参照)が付設されている。ステージ加熱ヒータ16は、昇降ステージ6を所定の分割領域〔図5(a)中、一点鎖線において4分割領域を示している〕毎に独立して加熱するように構成されている。ステージ加熱ヒータ16の分割様式を任意のものとしてよいのは、図4(a)と同様である。
ここで、図6〜図8を用いて、前記シャッタ構造の他のバリエーションを説明しておく。図6(a)(b)は、図1に示したエッチング装置20をガラス基板Kの進行方向と垂直な平面で分断した場合の断面図である。図1と同部材については同符号を付してその詳細な説明は省略する。同図(a)では、処理ガス供給ヘッド3の周縁部が昇降ステージ6と離れた状態におけるシャッタ41の様子が示されており、同図(b)では、処理ガス供給ヘッド3の周縁部がガラス基板Kに当接した状態におけるシャッタ41の様子が示されている。図6(a)(b)において、並設された搬送ローラ12は共通のローラ支持部材42によって支持されている。
図7(a)は、図6(a)の二点鎖線で囲んだ円領域Dを拡大した拡大図であり、図7(b)は、図6(b)の二点鎖線で囲んだ円領域Eを拡大した拡大図である。図7(a)に示されるように、昇降ステージ6が下降し、処理ガス供給ヘッド3の周縁部が基板K及び昇降ステージ6と離れた状態においては、ガラス基板Kは搬送ローラ12に支持されており、搬送ローラ12の上部が昇降ステージ6の表面から突出することを許すように、シャッタ41は開いた状態となっているのに対し、図7(b)に示されるように、昇降ステージ6が上昇し、処理ガス供給ヘッド3の周縁部がガラス基板K等と当接した状態においては、ガラス基板Kは搬送ローラ12の支持を離れ、前記処理室が完全に閉塞された状態となるように、シャッタ41は閉じた状態となっている。
図8(a)(b)は、前記シャッタ構造の更なるバリエーションを示す図である。同図(a)においては、昇降ステージ6が下降し、ガラス基板Kは搬送ローラ12に支えられており、搬送ローラ12の上部が昇降ステージ6の表面から突出することを許すように、回転シャッタ43は開いた状態となっているのに対し、同図(b)においては、昇降ステージ6が上昇し、処理ガス供給ヘッド3の周縁部がガラス基板Kと当接して、ガラス基板Kは搬送ローラ12の支持を離れており、上記当接によって形成される処理室が完全に閉塞された状態となるように、回転シャッタ43は閉じた状態となっている。回転シャッタ43は丸軸に搬送ローラ12が入るスリット孔が形成された構造となっており、回転シャッタ43が開いた状態では、搬送ローラ12とスリット孔とが一致する角度となって、搬送ローラ12がスリット孔に挿通する。これに対して、回転シャッタ43が閉じた状態では、上記丸軸が90度回転して上記のスリット孔が塞がれるようになっている。
図9は、処理ガス供給ヘッド3におけるフッ酸ガス(HF)の導入と排気との様子を示す模式図である。この模式図では、吐出孔3aにおける第一ディフューザスペースd1と第二ディフューザスペースd2との二段構成を省略して一段構成としている。図9(a)に示すように、処理ガス供給ヘッド3には、フッ酸ガスの吐出孔3aのほか、排気孔3bが複数穿設されている。各排気孔3bは、伝熱体15の空洞部を介して排気ダクト4に連通しており(図1、図2参照)、図中黒塗りの矢印は、フッ酸ガスの流れる方向を示している。すなわち、処理ガス供給ヘッド3の図中横方向から導入されたフッ酸ガスは、各吐出孔3aを通じて図中下方向に吐出され、その排気ガスは、各排気孔3bを通じて図中上方向へと排気される。
また、図9(b)に示すように、処理ガス供給ヘッド3において、フッ酸ガスの吐出孔3aと排気孔3bとの基板側各端面を段違いとした構成を採用することもできる。このような構成を採用すれば、各吐出孔3aからガラス基板Kの処理面に向けて吐出されたフッ酸ガスは、同図(b)の黒塗り矢印で示されるように、ガラス基板Kに対して平行方向に広がってから各排気孔3bを通じて排気されることになるので、ガラス基板Kに供給されるフッ酸ガスが基板全面において均等となりやすく、エッチング処理の均一性を保ちやすくなる。
処理ガス供給ヘッド3を、昇降ステージ6から見上げて平面視すると(図1参照)、図10のような構成となっている。図10に示されるように、処理ガス供給ヘッド3の表面には、ガスの吐出孔3aと排気孔3bとが千鳥に規則正しく多数配列されており、各種ガスの供給および処理後ガスの排気を、前記処理室ないしガラス基板Kの全面において均一に行えるようになっている。
図10において、処理ガス供給ヘッド3には、処理ガス供給ヘッド3を加熱する複数のヘッド加熱ヒータ14(図1参照)が付設されている。ヘッド加熱ヒータ14は、処理ガス供給ヘッド3を所定の分割領域(図10中、一点鎖線において、内周部から外周部にかけて、同心四角上の3分割領域を示している)毎に独立して加熱するように構成されている。
このような構成を採用し、各ヘッド加熱ヒータ14の出力を調整することにより、処理室に供給される処理ガスの温度を均一化することができる。もちろん、ヘッド加熱ヒータ14の分割様式は、図10のような3分割に限られるものでなく、任意の分割を施せばよい。
〔2.エッチング処理のフロー例〕
以上の構成を備えた処理装置1のエッチング装置20(図1参照)によれば、次のようにして、ガラス基板Kがエッチング(テクスチャリング)される。
ガラス基板Kは、チャンバ21にてIRヒータ等による照射により所定温度まで昇温され、チャンバ22の内部、昇降ステージ6の上に搬入される。ガラス基板Kが昇降ステージ6上の所定位置まで搬送されると、昇降ステージ6上にストッパが突出し、ガラス基板Kを係止してその進行を止め、ローラ搬送が停止される。図11は、図1におけるストッパ設置近傍の二点鎖線で囲んだ円領域Sを拡大した拡大図であり、図11(a)は、ストッパ51が昇降ステージ6上に突出してガラス基板Kを係止した状態、同図(b)は、ストッパ51が昇降ステージ6の下に設けられたストッパ収納部52に収納された状態を示す図である。
そして、昇降装置8(図1参照)の働きにより、ガラス基板Kを載置、吸着した昇降ステージ6が上昇し、処理ガス供給ヘッド3の周縁部がガラス基板Kないし昇降ステージ6に当接することにより、処理ガス供給ヘッド3とガラス基板Kないし昇降ステージ6との間が密封され、凹部7内の空間が閉塞された処理室となる。このとき、昇降ステージ6の上昇により、ガラス基板Kから搬送ローラ12は離れ、前述の各種シャッタにより、昇降ステージ6上において搬送ローラ12の突出していた領域は閉止される。
そして、処理ガス供給ヘッド3とガラス基板Kないし昇降ステージ6とを密閉することにより閉塞された処理室の内部において、処理ガス供給ヘッド3から吐出されるフッ酸ガスがガラス基板Kの上面に供給される。昇降ステージ6は、ガラス基板Kを吸着しているので、ガラス基板Kの裏面にフッ酸ガスが回り込むことはない。そして、前記処理室内にフッ酸ガスが流れ、ガラス基板Kがエッチング処理される。
ガラス基板Kを均一にエッチングするためには、前記処理室内の水分を除去することが好ましい。前述のとおり、フッ酸ガスとガラス基板Kに含まれる酸化シリコンとの反応により水分が生成されるが、プロセスガス量を少なくし、水分の発生を抑え、さらに前記処理室内を、例えば20〜30kPaの減圧環境とし、加えて、その室内温度を約45℃(40〜60℃)で制御することで、水分を蒸気として、迅速に排気し、処理室内の水分量を抑えた状態でエッチング処理することができる。より水分量の少ない環境を得るには、チャンバ内をより低圧側にし、チャンバ温度はより高温側にするのが望ましい。このようにプロセスで生じる水分量を極力少なくすることで、エッチング処理が基板全体で均一に進みやすくなるほか、水分によってガラス基板Kが昇降ステージ6上に付着することもなくなる。
上記の構成において、前記処理室内は、狭小な空間であるから、その分、外気から持ち込まれる水分量も少なく、さらに、処理ガス供給ヘッド3の排気孔3bは、ガラス基板Kの全面に隈無く設けられているから、各箇所で迅速な排気が行われる。したがって、エッチング中に生じた排気ガスは、排気孔3bを通じて排気ダクト4へと排気され、不要な排気ガスが前記処理室の特定箇所で淀むことはない。図1に示したように、エッチング装置20においては、ガラス基板Kと処理ガス供給ヘッド3との距離が近いので、処理後ガスの排気は、ガラス基板Kから生じた水分を含めてスムーズに行われる。
一般には、ガラス基板Kを大型化すると、ガラス基板Kと処理ガス供給口とを近づけることは難しいが、本例のエッチング装置20の構造によれば、大型のガラス基板Kであっても無理なく、ガラス基板Kと処理ガス供給口との間の距離を近づけることができる。これにより、上記のエッチング処理を均一なものとすることが可能となる。
また、ガラス基板Kのエッチング処理をドライ環境で均一に進めるためには、昇降ステージ6と処理ガス供給ヘッド3とにそれぞれ備えられた、ステージ加熱ヒータ16、ヘッド加熱ヒータ14の各出力を制御することにより、ガラス基板Kおよびフッ酸ガスの温度均一化を図ることが好ましい。このようにすれば、大型のガラス基板Kをエッチング処理する際にも、基板処理の均一化を図ることが可能となる。
そして、ガラス基板Kのエッチング処理が完了すると、ガラス基板Kを載置した昇降ステージ6が下降し、処理ガス供給ヘッド3の周縁部がガラス基板Kないし昇降ステージ6から離れて、処理ガス供給ヘッド3の凹部7内の空間が開放される。その後、搬送ローラ18ないし搬送ローラ12による基板搬送が再開され、エッチング処理の終わったガラス基板Kが、チャンバ22内の昇降ステージ6上からチャンバ23へと搬出され、チャンバ23においてシャワー洗浄される。このようにして、本例の処理装置1によれば、前工程(プレヒート工程)および後工程(洗浄工程)との間で、連続的にガラス基板Kがエッチング処理される。
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明の採り得る具体的な態様は、何ら上記に限定されるものではない。
例えば、上記では、ガラス基板Kのテクスチャリング処理を例として、本発明の実施形態を説明したが、本発明のエッチング装置の用途は、ガラス基板のテクスチャリング処理に限定されるものではなく、各種のエッチング処理に広く用いることができる。また、上記では、処理ガスとしてフッ酸ガスを例示したが、本発明のエッチング装置の処理ガスとしては、少なくともフッ素系反応成分を含むガスであれば、各種利用可能である。
また、以上の説明では、昇降装置8により、昇降ステージ6の方が、処理ガス供給ヘッド3に接近する構成を示したが(図1参照)、昇降ステージ6ではなく、処理ガス供給ヘッド3の方を可動として、処理ガス供給ヘッド3を昇降ステージ6に接近させることにより、処理ガス供給ヘッド3の凹部7内の空間が閉塞された処理室となるように構成してもよい。
図12に、処理ガス供給ヘッド3の方を可動とする場合の構成例を示す。同図において、図1と同様の構成については、図1と同符号を付してその説明を省略する。図12において、処理ガス供給ヘッド3は支持部材61によって支持されており、支持部材61は、基台62及びシリンダ63の働きによって上下動するようになっている。同図において、昇降ステージ6上は、図5(a)(b)と同様に、ガラス基板Kをエア搬送する構成となっており、エア孔64は、開閉バルブ65、66と接続されている。開閉バルブ65はそれを開くことによって、ガス供給源67から供給されたエア(不活性ガス)をエア孔64から上方に吹き付ける構成、開閉バルブ66はそれを開くことによって、エア孔64から排気装置68へとエアを吸引する構成となっている。図12のような構成によっても、処理ガス供給ヘッド3を昇降ステージ6ないしガラス基板Kに接近させることにより、処理ガス供給ヘッド3の凹部7内の空間が閉塞された処理室となるようにすることができる。