JP5864085B2 - 歯科用補綴物の製作方法、歯科用補綴物の製作システム、歯科用補綴物、及び歯科用補綴物製作装置 - Google Patents
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Description
(1)患者の歯の治療にあたり、支台歯を形成する。
(2)患者の歯型の印象を採取し、その印象に石膏材を流して、歯列模型を製作する。
(3)歯を分割できる歯列模型を製作する。
(4)上下の模型を合わせて噛み合わせを確認する。
(6)このようにして形成した歯モデルは、炉で焼成して焼き固めることで、オールセラミックスクラウンとして使用することができるようになる。
一方、ワックス材を用いて製作した歯モデルは、鋳型材によって型取りした後、熱を加えてワックス原型を溶かし出し、ワックスが流れ出た鋳型内に、溶解したセラミックスを流し込んで固めることで、オールセラミックスクラウンとして使用することができるようになる。
(8)さらに、色付け作業終了後、表面につや出しコーティングを行い、再び炉に入れて焼成することで、オールセラミックスクラウンが完成する。
しかし、この方法では、素材を盛り上げて形づくる元の歯の形状は、ある程度推測によらなければならず、治療前の歯を正確に再現することは極めて困難であった。
また、歯科技工士の力量の違いにより、完成する歯科用補綴物の品質に差が生じ、安定した品質の歯科用補綴物が得られにくいという問題もあった。
このような問題の解決に関連する従来の技術としては、例えば特許文献1に記載のCAD/CAMシステムを用いた歯科用補綴物の作製方法などがある。
この方法によれば、人手によらず、健康時の形状と同一の形状の歯科用補綴物を自動的に作製することができ、患者の歯を元の形状に近い状態によみがえらせることが可能になっている。
このため、築盛法により歯科用補綴物を作製する場合に行えるような、細やかな調整などは行うことができない。
例えば、築盛法によれば、色の異なる複数のセラミックス材を適宜築盛することでより自然な歯の色を再現することができるが、CAD/CAMシステムを用いる方法では、単色のブロック材料を切削・研削加工するため、このようなことを行うことはできない。
三次元印刷装置とは、三次元のオブジェクトを造型するための印刷装置(造形装置)である。印刷方式には、様々なものがあり、例えばアクリル系光硬化樹脂を使用したインクジェット紫外線硬化方式のもの、ABS樹脂を使用した熱溶解積層方式のもの、パウダーを使用した粉末固着方式のものなどを挙げることができる。
このような三次元印刷装置を用いれば、あらゆる立体的形状を出力することができ、三次元設計データに基づいて、様々な立体物を製作することが可能となっている。
すなわち、特許文献2には、歯の模型を、インクジェット印刷、立体平板印刷、溶融析出模型製造(FDM)などの三次元印刷により製造することが記載されている。
また、そのインクジェット印刷において、予め加熱したワックス、プラスチック、又は光ポリマー樹脂を液状で三次元印刷装置にセットして、部品上で固化させることが記載されている。
さらに、電圧を印加してセラミックス層を導電性領域上に析出させる技術についても記載されている。
また、セラミックス層を析出させる技術については記載されているが、この方法では、歯科用補綴物の形状を適切に再現することは困難であった。
すなわち、治療において実用可能なものとするためには、歯科用補綴物としての強度や安全性が必須であり、印刷材料として、例えばセラミックス材などの歯科用補綴物の材料を使用することが必要である。
しかし、これらの従来の技術では、セラミックス材などの粉体を用いて、元の歯に近い形状や、自然の歯に近い色彩を備えた歯科用補綴物を適切に製作することはできなかった。
このため、手作業の築盛法で行い得るような歯科用補綴物の材料の細やかな調整を行えるとともに、手作業の場合では得られない安定した品質の歯科用補綴物を容易に製造することが可能となる。
歯科用補綴物の製作方法をこのような方法にすれば、築盛により得られた歯科用補綴物を焼き固めることで、適切な強度を備えた歯科用補綴物を得ることが可能となる。
歯科用補綴物の製作方法をこのような方法にすれば、歯科用補綴物の色彩を適切に調整することができ、CAD/CAMシステムによる歯科用補綴物の製作方法では実現できなかった色彩の微調整を行うことも可能となる。
歯科用補綴物の製作方法をこのような方法にすれば、例えば予め色付けされた印刷材料を、三次元印刷装置により出力することで、歯科用補綴物の色彩を調節することが可能となる。
また、本発明の歯科用補綴物の製作方法は、三次元印刷装置により、印刷材料を層状に築盛するにあたり、三次元印刷データにもとづいて、後に築盛する印刷材料として、先に築盛する印刷材料よりも色が薄く、かつ透明度が高いものを用いる方法としてある。
歯科用補綴物の製作方法をこのような方法にすれば、自然な歯の質感をよりリアルに再現した歯科用補綴物を容易に製作することが可能となる。
歯科用補綴物の材料の層を斜めに形成する方が、層を水平に形成する場合よりも筋が目立たず、より良い品質の歯科用補綴物を製作することができるためである。なお、その傾斜角度は、第一実施形態において後述するように、自由に設定することが可能である。
歯科用補綴物の製作方法をこのような方法にすれば、セラミックスは勿論、レジンやジルコニアを印刷材料として用いた場合にも、優れた品質の歯科用補綴物を製作することが可能となる。
歯科用補綴物の製作方法をこのような方法にすれば、例えば現在手作業による築盛法で使用されている歯科用セラミックス粉末を印刷材料として三次元印刷(3D印刷)を行うことができる。
このため、従来と同じ材料を用いて、より安定した品質の歯科用補綴物を簡易に製造することが可能となる。
このように、三次元印刷装置を用いて歯科用補綴物を製作することにより、CAD/CAMシステムを用いた場合に比較して、より品質の高いオールセラミックスクラウンなどを製作することが可能となる。
このため、手作業の築盛法で行い得るような歯科用補綴物の材料の細やかな調整を行えるとともに、手作業の場合では得られない安定した品質の歯科用補綴物を容易に製造することが可能となる。
歯科用補綴物製作装置をこのような構成にすれば、印刷テーブル上に敷く印刷材料の量が減るため、印刷材料の残量が印刷テーブル全体に敷くことができないほど少ない場合でも、印刷対象物のサイズが小さい場合には、その印刷を行うことができ、より柔軟な印刷を実現することが可能となる。
歯科用補綴物製作装置をこのような構成にすれば、セラミックス粉末をその種類ごとに回収することができ、印刷材料をより効率的に使用することが可能となる。
このため、従来のCAD/CAMシステムによる製作方法では実現できなかった、歯科用補綴物の材料や色彩の微調整を行うことができる。
よって、自然な歯の質感をよりリアルに再現した歯科用補綴物を容易に製作することが可能となる。
本発明の第一実施形態の構成について、図1を参照して説明する。同図は、本実施形態の歯科用補綴物の製作システムの構成を示すブロック図である。
図1に示すように、本実施形態の歯科用補綴物の製作システムは、三次元形状計測装置10、色彩認識装置20、情報処理装置30、三次元印刷装置40、及び炉50を有している。
本実施形態の歯科用補綴物の製作システムにおける三次元形状計測装置10は、歯科用補綴物の三次元の形状データを取得する装置である。
三次元形状計測装置10は、天然歯の印象を用いて作成された歯列模型(作業模型、歯牙模型とも呼ばれる。)などの形状をスキャンし、得られた形状データを情報処理装置30に出力する。
この三次元形状計測装置10としては、メディア株式会社のDECSY(登録商標)における非接触レーザー方式による形状自動計測システムなどを好適に用いることができる。
また、歯列模型の形状をスキャンするのではなく、治療前のときの歯や歯の治療時に形成された支台歯を、直接スキャンすることで、その形状データを取得しても良い。なお、「支台歯」は、天然歯からなるもののみならず、例えばインプラントや、インプラントに上部構造物を形成したものなど人工的な支台歯を含むものとして用いている。
本実施形態の歯科用補綴物の製作システムにおける色彩認識装置20は、歯科用補綴物に着色する色彩を決定するための元データとなる色彩データを取得する装置である。
色彩認識装置20は、予め治療前の歯を直接撮影し、得られたカラー画像データを色彩データとして情報処理装置30に出力する。
この色彩認識装置20としては、特に限定されるものではなく、従来公知の一般的な色彩認識装置20を用いることが可能である。
このような三次元スキャナーは、三次元形状計測装置10と色彩認識装置20の機能を併せ持ち、歯の三次元形状データを取得することができるのみならず、歯の色彩データを取得することもできる。
本実施形態の歯科用補綴物の製作システムにおける情報処理装置30は、パーソナルコンピュータなどの情報処理装置である。
この情報処理装置30は、三次元形状計測装置10から歯の形状データを入力して三次元設計データを作成するとともに、色彩認識装置20から歯の色彩データを入力して歯科用補綴物の色彩を決定する。
そして、三次元形状データと色彩データにもとづき三次元印刷データを作成して、これを三次元印刷装置40に出力する。
以下、歯の形状データと歯の色彩データを合わせて、歯の形態データと称する場合がある。
歯の色彩データは、色彩認識装置20により、歯を直接撮影することで、得ることができる。この色彩認識装置20により、全顎の歯の色彩データや1本ずつの歯の色彩データを取得することもできる。
また、歯の治療時としては、特に支台歯を形成した直後とすることが好ましい。歯の形状データをこのようなタイミングで入力すれば、支台歯に適合する歯科用補綴物を好適に製作することができる。
また、歯の色彩データの入力タイミングは、歯の治療前であれば良く、歯が健康であるときとすることが好ましい。
図2は、この三次元設計データの作成手順の概要を表す図である。
まず、歯の治療前のときに、各歯の形状データを取得し、これを情報処理装置30に記憶させておく。
これらの形状データの取得において、まず歯の印象を採取し、その印象に石膏材を流して歯列模型を製作し、この歯列模型の形状を三次元形状計測装置10で読み取ることで取得することができる。また、口腔内において、歯の形状を直接三次元形状計測装置10により読み取るようにしてもかまわない。
まず、三次元形状設計手段33は、記憶手段32に形状データとして記憶されている治療時の全顎形状データ又は歯の形状データを用いて、情報処理装置30における表示手段34に上下顎模型等を表示する。
そして、三次元形状設計手段33は、このようにして表示手段34に表示された模型支台歯上に、記憶手段32に記憶されている治療前の全顎形状データ、歯の形状データを重ね合わせる。
三次元形状設計手段33は、このようにして歯科用補綴物の三次元設計データを作成すると、これを色彩決定手段36に出力する。
なお、歯科用補綴物の材料によっては、焼成工程において収縮するものがある。したがって、このような収縮する造形材料を使用して歯科用補綴物を製作する場合には、その造形材料の焼成による収縮率を考慮して、三次元形状設計手段33により歯科用補綴物の三次元形状を設計することが好ましい。
顎運動計算手段35は、治療前の歯の形状データ等と治療時の歯の形状データ等にもとづき、最新の噛み合わせ位置等を算出し、形状データ等の重ね合わせ位置を調整するシステムである。この顎運動計算手段35としては、メディア株式会社のDECSY(登録商標)における顎運動計測システムなどを好適に用いることができる。
このとき、色彩決定手段36は、三次元設計データの位置情報に色彩データを対応付けて三次元印刷データを作成することができる。
この場合、色彩データは、形状データの座標情報に対応して多数の色で表現することができ、治療前の歯をよりリアルに再現することが可能である。
印刷材料としては、予め着色された一種類又は二種類以上のセラミックス粉末などの造形材料を用いることができる。
また、印刷材料として、未着色や単色のセラミックス粉末などの造形材料と、顔料などの着色剤を用いることもできる。これらの場合、使用タイミングには、造形材料の塗布のタイミングと顔料の塗布のタイミングが含まれる。
また、色彩決定手段36は、透明度が互いに異なる複数の印刷材料を、順次層状に築盛するように、その使用タイミングを決定することができる。
このようにすることで、印刷材料を敷く際に生じる層の筋が歯科用補綴物において斜めに形成されるため、層が口腔内で水平に形成される場合に比較して、層の筋が目立たず、より品質に優れた歯科用補綴物を製作することができる。
このようにすれば、より本物に近い質感の歯科用補綴物を製作することが可能となる。
その方法としては特に限定されないが、例えば治療対象の歯の色彩の中間色に最も近い色の印刷材料を選択したり、あるいは治療対象の歯及びこれに隣接する歯の色彩値の平均に最も近い色彩値の印刷材料を選択することなどにより行うことが可能である。
印刷データ送信手段37は、三次元印刷データを色彩決定手段36から入力すると、これを三次元印刷装置40に送信する。
この場合、色彩決定手段36は、歯科用補綴物の三次元設計データと色彩データを含む三次元印刷データを印刷データ送信手段37に出力し、印刷データ送信手段37は、この三次元印刷データを三次元印刷装置40に送信する。
三次元印刷装置40は、三次元印刷データを受信すると、この三次元印刷データに含まれる歯科用補綴物の三次元設計データ及び色彩データにもとづいて、この三次元印刷データで指定された印刷材料を、指定されたタイミングで交換しつつ、歯科用補綴物を製作する。
印刷材料は、歯科用補綴物の材料である造形材料と、色付けを行うためのインクなどの顔料から構成される。また、既に着色済みの造形材料を印刷材料として用いることもできる。
これらの三次元印刷装置40は、印刷テーブル上に造形材料を層状に敷き詰めて、三次元印刷データにもとづき印刷対象となる部分における造形材料を硬化剤で固めるとともに必要に応じて顔料を塗布し、さらにその上に造形材料を層状に敷き詰め、これらの動作を繰り返し行うことで、立体物を印刷する。また、印刷テーブル上に余った造形材料は回収され、造形材料のカートリッジ(歯科用補綴物の材料を充填する容器)に再充填される。
印刷が完了すると、印刷テーブルから余分なセラミックス粉末を除去することで、歯科用補綴物の印刷物を得ることができる。
具体的には、歯科用セラミックス粉末を用いることが好ましく、例えばメタル用セラミックス、アルミナ用セラミックス、ジルコニア用セラミックスなどの各種歯科用陶材の粉末を用いることができる。
歯科用補綴物を製作するにあたり、複数の造形材料を使用する場合には、透明度の低いものから順次築盛していき、後に築盛するもの程透明度が高くなるようにすることが好ましい。このようにすれば、歯科用補綴物の質感をより本物らしくすることができる。
また、造形材料としては、そのほかにもレジンやジルコニアを素材とするものなど、歯科用補綴物の材料として適するものであれば用いることができ、セラミックス粉末に特に限定されるものではない。
顔料は、口腔内で使用するにあたって、安全性が高く、焼成後に目的の色を示すものであれば特に限定されず、歯科用の各種着色材料を使用することができる。例えば、歯科セラミックス用着色材料などを好適に用いることが可能である。
三次元印刷装置40により、これらの造形材料、硬化剤、顔料を交互に塗布することで、歯科用補綴物を色付けしつつ築盛することができる。
この場合、三次元印刷装置40は、三次元設計データと色彩データ、印刷材料及びその使用タイミングの情報にもとづき、塗布する一又は二以上の造形材料の選択を制御することで、色彩データに応じた色合いの歯科用補綴物を築盛することができる。
また、三次元印刷装置40において、三次元印刷データで指定されたタイミングで、指定された造形材料をそれぞれ充填した容器から一のノズルに搬送して、その塗布を制御する構成とすることもでき、その構成は特に限定されない。
炉50は、三次元印刷装置40により築盛されたセラミックスクラウンなどの歯科用補綴物を焼成する装置である。
この炉50としては、イボクラール ビバデント社のプログラマットP300などを好適に用いることが可能である。
例えば、三次元印刷装置40によりセラミックス粉末を材料として築盛して得られた歯科用補綴物の場合、400℃〜1000℃の温度で焼成させることができる。このとき、焼成開始温度から所定の速度で昇温させ、必要に応じて最終焼成温度で係留し、焼成させることができる。
なお、歯科用補綴物の種類や造形材料によっては、焼成を行わないものもある。
次に、本実施形態の歯科用補綴物の製作方法について、図1及び図5を参照して説明する。図1は、本実施形態の歯科用補綴物の製作システムの構成を示すブロック図であり、図5は、本実施形態の歯科用補綴物の製作システムによる歯科用補綴物の製作方法を示す図である。
歯の形態データとしては、上述したように、全顎形状データ、個別の歯の形状データなどの三次元形状データと、全顎色彩データ、個別の歯の色彩データなどの色彩データ等を含むものとすることができる。
このとき、三次元形状データについては、治療により支台歯が作成された後の歯の形状データが読み取られる。
色彩データについては、治療直前のものを読み取って用いることができる。また、色彩データとして、歯の健康が損なわれる直前のものを用いることができれば好ましい。したがって、定期的に歯の色彩データを読み取って、予め記憶手段32に記憶させておくことが望ましい。
なお、歯の形態データとして、治療対象の歯のみについて記憶させておくことのみならず、治療対象の歯とその周辺の歯についての三次元形状データ及び色彩データを記憶させておくこともできる。これは、以下の実施形態においても同様である。
次に、色彩決定手段36により、歯科用補綴物に印刷するための色彩、及び印刷材料の使用タイミング等が決定される(ステップ13)。
そして、印刷データ送信手段37により、三次元設計データ、歯科用補綴物の色彩データ、及び使用する印刷材料とその使用タイミング等の情報が三次元印刷データとして、三次元印刷装置40に送信される(ステップ14)。
このとき、三次元印刷装置40は、例えば、セラミックス粉末などの造形材料と練和液、及び顔料を層状に交互に塗布することにより、歯科用補綴物を印刷する。
このとき、三次元印刷装置40は、印刷テーブル上に造形材料を一層ごとに層全体に敷き詰め、練和液を歯科用補綴物の形状に合わせて塗布し、これを繰り返すことで、目的とする立体形状を印刷することができる。
これにより、三次元印刷装置40は、造形材料を色付けしつつ築盛して、歯科用補綴物を印刷することができる。
さらに、この印刷材料としては、透明度が異なる二以上のものを用いることができ、これらを順次積層することで、歯科用補綴物を築盛することができる。
このようにすれば、歯科用補綴物の質感をよりリアルに再現することが可能となる。
なお、歯科用補綴物の内部になるほど色が濃くかつ透明度の低い印刷材料を用い、外側になるほど色が薄くかつ透明度の高い印刷材料を用いるようにすることもまた好ましい。この場合、三次元印刷装置40は、三次元印刷データで指定されたタイミングで、指定された印刷材料をそれぞれ充填した容器からノズルに搬送し、各層内において異なる造形材料を塗布する制御を行う構成を備えたものとすることができる。
また、先に築盛する層よりも後に築盛する層の造形材料及び顔料の濃さを薄く、かつ透明度を高くすることにより、自然の歯に近い質感の歯科用補綴物を得ることが可能である。
次に、本発明の第二実施形態について、図6を参照して説明する。同図は、本実施形態の歯科用補綴物の製作システムにおける歯科用補綴物の印刷のようすを示す図である。
本実施形態の歯科用補綴物の製作システムにおける三次元印刷装置40は、より少ない印刷材料で印刷を行うことができる点で第一実施形態と異なる。その他の点については、第一実施形態と同様である。
ここで、第一実施形態における三次元印刷装置40では、どのような大きさや形状の歯科用補綴物についても、造形エリア全体に造形材料を層状に敷く構成となっている。
しかしながら、サイズの小さな歯科用補綴物を製作する場合、本来は造形エリア全体にセラミックス粉末を層状に敷く必要はない。
そこで、本実施形態の三次元印刷装置40は、図6に示すように、歯科用補綴物を上方から見た平面における印刷対象領域にのみ印刷材料を敷いて、三次元印刷を行う構成としてある。
これによって、本実施形態の歯科用補綴物の製作システムによれば、印刷テーブル上に敷く印刷材料の量が減るため、印刷材料の残量が印刷テーブル全体に敷くことができないほど少ない場合でも、印刷対象物のサイズが小さい場合には、その印刷を行うことができ、より柔軟な印刷を実現することが可能となる。
次に、本発明の第三実施形態について、図7を参照して説明する。同図は、本実施形態の歯科用補綴物の製作システムにおける歯科用補綴物の印刷のようすを示す図である。
本実施形態の歯科用補綴物の製作システムにおける三次元印刷装置40は、より効率よく印刷材料を回収できる点で第一実施形態又は第二実施形態と異なる。その他の点については、第一実施形態又は第二実施形態と同様のものとすることができる。
そこで、本実施形態の三次元印刷装置40では、図7に示すように、練和液で固定されなかったセラミックス粉末を、歯科用補綴物を一層印刷するごとに回収している。すなわち、練和液を塗布するたびに、練和液が塗布されなかった領域における余分な印刷材料を回収して、カートリッジに再充填する。
このようにすれば、セラミックス粉末をその種類ごとに回収することができ、印刷材料をより効率的に使用することが可能となる。
なお、セラミックス粉末の回収及び再充填自体は、従来既存の方法で行うことができる。また、例えば印刷テーブルをそれぞれ多数の孔を備えた上下の二層の板で構成し、これらの層の孔の位置を互いにずらすことで、印刷テーブルを孔の無い状態と、孔の有る状態に切り替え可能とすることができる。そして、印刷テーブルを孔の無い状態にして印刷を実行し、印刷テーブルを孔の有る状態にして造形材料を孔から下に落とし、これらを回収してカートリッジに再充填することができる。
例えば、歯科用補綴物としてクラウンのみならず、ブリッジやフレームなどを本発明の歯科用補綴物の製作システムにより製作することが可能である。
また、いずれの実施形態においても造形材料として、セラミックスのみならず、レジンやジルコニア粉末を使用するなど適宜変更することが可能である。
さらに、本発明の歯科用補綴物の製作システムにより、歯科用補綴物の形状を築盛法で再生し、色付けについては手作業で行うことも勿論可能である。
20 色彩認識装置
30 情報処理装置
31 データ入力手段
32 記憶手段
33 三次元形状設計手段
34 表示手段
35 顎運動計算手段
36 色彩決定手段
37 印刷データ送信手段
40 三次元印刷装置
50 炉
Claims (14)
- 三次元印刷装置を用いて、歯科用補綴物を築盛法により製作する歯科用補綴物の製作方法であって、
歯の治療前のとき、及び歯の治療時の歯の形状を計測して、得られた形状データにもとづき歯科用補綴物の三次元設計データを作成し、この三次元設計データを三次元印刷装置に入力して、当該三次元印刷装置により前記三次元設計データにもとづき前記歯科用補綴物の材料を印刷材料として用い硬化剤を塗布して振動を加えて築盛する
ことを特徴とする歯科用補綴物の製作方法。 - 前記三次元印刷装置により前記歯科用補綴物の材料を築盛した後、得られた前記歯科用補綴物を焼成することを特徴とする請求項1記載の歯科用補綴物の製作方法。
- 治療前に撮影して得られた歯の色彩データと、前記三次元設計データにもとづき前記歯科用補綴物の色彩を決定して三次元印刷データを作成し、この三次元印刷データを前記三次元印刷装置に入力して、前記三次元印刷装置により、前記三次元印刷データにもとづき前記歯科用補綴物の材料を敷くとともに、前記三次元印刷データにもとづき選択された着色剤を塗布して、前記歯科用補綴物の材料を色付けしつつ築盛する
ことを特徴とする請求項1又は2記載の歯科用補綴物の製作方法。 - 治療前に撮影して得られた歯の色彩データと、前記三次元設計データにもとづき前記歯科用補綴物の色彩を決定して三次元印刷データを作成し、この三次元印刷データを前記三次元印刷装置に入力して、前記三次元印刷装置により、前記印刷材料として予め着色された一又は二以上の歯科用補綴物の材料を前記三次元印刷データにもとづき選択して築盛する
ことを特徴とする請求項1又は2記載の歯科用補綴物の製作方法。 - 前記三次元印刷装置により、透明度が異なる二以上の前記印刷材料を、順次層状に築盛する
ことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の歯科用補綴物の製作方法。 - 前記三次元印刷装置により、前記印刷材料を層状に築盛するにあたり、前記三次元印刷データにもとづいて、後に築盛する印刷材料として、先に築盛する印刷材料よりも色が薄く、かつ透明度が高いものを用いる
ことを特徴とする請求項5記載の歯科用補綴物の製作方法。 - 前記歯科用補綴物の材料が、少なくともセラミックス、レジン、もくしはジルコニアのいずれか、又は少なくともセラミックス、レジン、もくしはジルコニアのいずれかを含む複合物である
ことを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の歯科用補綴物の製作方法。 - 前記歯科用補綴物の材料が、歯科用セラミックス粉末であることを特徴とする請求項7記載の歯科用補綴物の製作方法。
- 三次元印刷装置を用いて、歯科用補綴物を築盛法により製作する歯科用補綴物の製作システムであって、
歯の治療前のとき、及び歯の治療時の歯の形状を計測する形状計測装置と、
歯の治療前の歯の色彩データを取得する色彩認識装置と、
前記形状計測装置により計測して得られたそれぞれの時点の歯の形状データを入力して、これらの形状データにもとづき歯科用補綴物の三次元設計データを作成し、この三次元設計データを三次元印刷装置に出力する情報処理装置と、
前記三次元設計データにもとづき前記歯科用補綴物の材料を印刷材料として用いて築盛する前記三次元印刷装置と、を有し、
前記情報処理装置が、前記治療前の歯の色彩データを前記色彩認識装置から入力して、この色彩データと、前記三次元設計データにもとづき前記歯科用補綴物の色彩を決定して三次元印刷データを作成し、この三次元印刷データを前記三次元印刷装置に出力し、
前記三次元印刷装置が、前記三次元印刷データにもとづき前記歯科用補綴物の材料を敷くとともに、前記三次元印刷データにもとづき選択された着色剤を塗布して、前記歯科用補綴物の材料を色付けしつつ硬化剤を塗布して振動を加えて築盛する
ことを特徴とする歯科用補綴物の製作システム。 - 三次元印刷装置を用いて、歯科用補綴物を築盛法により製作する歯科用補綴物の製作システムであって、
歯の治療前のとき、及び歯の治療時の歯の形状を計測する形状計測装置と、
歯の治療前の歯の色彩データを取得する色彩認識装置と、
前記形状計測装置により計測して得られたそれぞれの時点の歯の形状データを入力して、これらの形状データにもとづき歯科用補綴物の三次元設計データを作成し、この三次元設計データを三次元印刷装置に出力する情報処理装置と、
前記三次元設計データにもとづき前記歯科用補綴物の材料を印刷材料として用いて築盛する前記三次元印刷装置と、を有し、
前記情報処理装置が、前記治療前の歯の色彩データを前記色彩認識装置から入力して、この色彩データと、前記三次元設計データにもとづき前記歯科用補綴物の色彩を決定して三次元印刷データを作成し、この三次元印刷データを前記三次元印刷装置に出力し、
前記三次元印刷装置が、前記印刷材料として予め着色された一又は二以上の歯科用補綴物の材料を前記三次元印刷データにもとづき選択して硬化剤を塗布して振動を加えて築盛する
ことを特徴とする歯科用補綴物の製作システム。 - 前記三次元印刷装置が、透明度が異なる二以上の前記印刷材料を、前記三次元印刷データにもとづいて、後に築盛する印刷材料として、先に築盛する印刷材料よりも色が薄く、かつ透明度が高いものを用いて、順次層状に築盛する
ことを特徴とする請求項10記載の歯科用補綴物の製作システム。 - 歯科用補綴物を築盛法により製作する歯科用補綴物製作装置であって、
歯の治療前のとき、及び歯の治療時の歯の形状データにもとづき作成された歯科用補綴物の三次元設計データと、治療前に撮影して得られた歯の色彩データとにもとづき前記歯科用補綴物の色彩が決定されて作成された三次元印刷データを入力し、
前記三次元印刷データにもとづき前記歯科用補綴物の材料を敷くとともに、前記三次元印刷データにもとづき選択された着色剤を塗布して、前記歯科用補綴物の材料を印刷材料として用いて色付けしつつ硬化剤を塗布し振動を加えて築盛し、又は、印刷材料として予め着色された一又は二以上の歯科用補綴物の材料を前記三次元印刷データにもとづき選択して硬化剤を塗布し振動を加えて築盛する
ことを特徴とする歯科用補綴物製作装置。 - 請求項12記載の歯科用補綴物製作装置が、
前記三次元印刷データにもとづいて、歯科用補綴物を上方から見た平面における印刷対象領域にのみ前記印刷材料を敷き、前記印刷材料と硬化剤とを層状に交互に塗布して、前記歯科用補綴物を築盛する
ことを特徴とする歯科用補綴物製作装置。 - 請求項13記載の歯科用補綴物製作装置が、
前記硬化剤を塗布するたびに、前記硬化剤が塗布されなかった領域における余分な印刷材料を回収する
ことを特徴とする歯科用補綴物製作装置。
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