JP5862541B2 - 低騒音送風機 - Google Patents

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Description

本発明は、ファン騒音を効果的に低減させた送風機に関する。
特許文献1には、翼(ブレード)の前縁部分全体に亘って翼弦方向に突き出した、複数の三角形状の突起(以下、セレーションという)を設け、送風ファンによる回転騒音の低騒音化を行うようにしたものが開示されている。送風機のブレードの正圧面と負圧面とは、図12Cに示すようになっており、特許文献1の従来技術のセレーションの前縁形状は、図1に示すように、負圧面から正圧面に抜けるようにして形成された厚みある複数の三角形状となっている。しかしながら、従来技術のセレーションでは、正圧面から負圧面に流入する流れが、正圧面でのセレーション端部Cで剥離してしまい、負圧面での縦渦生成に寄与しないことが分かってきた。
特開2000−087898号公報
本発明は、上記問題に鑑み、セレーション正圧面での流れの剥離を低減させることで、負圧面での縦渦の流速を増加させて翼後縁まで縦渦を維持することができる低騒音送風機を提供するものである。
上記課題を解決するために、請求項1の発明は、駆動モータ(300)、並びに、該駆動モータに取り付けられるハブ(5)、及び、該ハブ(5)に設けられた複数のブレード(3)を有する送風ファン(1)を具備する送風機であって、前記ブレード(3)の翼前縁(6)には、翼前縁(6)に沿って複数の三角形状突部からなるセレーションを設けるとともに、気流方向に垂直な前記セレーションの断面において、前記ブレード(3)の正圧面が、前記ブレード(3)の正圧面の少なくとも1部分から前記ブレード(3)の負圧面に移行する移行位置(T)まで、該移行位置(T)の両側ともそれぞれ滑らかな丸みを帯びた第1曲線で構成されたことを特徴とする。
なお、上記に付した符号は、後述する実施形態に記載の具体的実施態様との対応関係を示す一例である。
従来技術のセレーションの翼前縁形状を示す斜視図とセレーション断面図である。 本発明の第1実施形態の正面概略図である。 基礎技術における前縁セレーションまわりの流れの構造を解析したシミュレーション結果の一例である。 図3のシミュレーション結果の説明図である。 図3のシミュレーションの翼断面図である。 本発明の第1実施形態の斜視図である。 本発明の第1実施形態の要部斜視図とセレーション断面図である。 本発明の第1実施形態における前縁セレーションまわりの流れの構造を解析したシミュレーション結果の一例である。 本発明の第1実施形態における前縁セレーションまわりの流れの構造を解析したシミュレーション結果の一例である。 本発明の第1実施形態のセレーション断面図の一例である。 本発明の第1実施形態のセレーション断面図の一例である。 本発明の第1実施形態のセレーション断面図の一例である。 本発明の第1実施形態のセレーション断面図の一例である。 本発明の第1実施形態のセレーション断面図の一例である。 本発明の第1実施形態のセレーション断面図の一例である。 本発明の第2実施形態の正圧面側から見たセレーション形状の概要図である。 本発明の第2実施形態の正圧面側から見たセレーション形状の概要図である。 一般的な軸流送風機の説明のための説明図である。 図12AのA−A線に沿って展開した断面図である。 図12Bのブレードの正圧面と負圧面などを説明する説明図である。
以下、図面を参照して、本発明の一実施形態を説明する。各実施態様について、同一構成の部分には、同一の符号を付してその説明を省略する。
図2を参照すると、送風機10は、送風ファン1がシュラウド200内に配設されて、駆動モータ(電動モータ)300によって回転駆動される送風機である。送風機10は、シュラウド200の四隅近傍に設けられた取付部250によって、自動車用ラジエータのエンジン側に固定され、ラジエータのコア部に冷却用の空気を送風するものである。
シュラウド200の外形形状は、ラジエータのコア部に対応する矩形状をなしており、その略中央には送風ファン1を内包する環状のシュラウドリング部210が形成されている。このシュラウドリング部210は、送風ファン1のリング2の径方向外側に位置するようになっている。送風ファン1のリング2がない場合であっても良い。本発明の送風機10及び後述するブレード3は、自動車用ラジエータ用に限定されるものではなく、一般的な産業用に適用しても良い。本実施形態では、軸流送風機として説明するが、遠心送風機、斜流送風機などにおいても本発明は適用可能である。
シュラウドリング部210とシュラウド200の矩形状外周部との間には、送風ファン1の風上側に向けて拡がる導風部220が形成されている。シュラウドリング部210の中心には円形のモータ保持部230が形成されており、このモータ保持部230は、放射状に径方向外側へ延びてシュラウドリング部210に接続される複数のモータステー部240によって支持されている。モータ保持部230には、駆動モータ300が固定され、駆動モータ300のシャフトと送風ファン1のハブ5(図6参照)とが固定されている。送風機10は、これらの送風ファン1や駆動モータ300などから構成される。送風ファン1のハブ5は、円筒形状であり放射状に複数のブレード3が設けられている。ブレード3の翼弦、正圧面、負圧面、迎え角α、揚力などは、図12A〜Cに示されるように一般的な定義と同じである。
まず、最初に基礎技術のセレーションの効果について述べる。図3のシミュレーションは、図5の翼断面(本発明の翼断面については後述)の場合である。図3は、ブレードの翼前縁を上方位置から眺めている図である。図3に表示された矢印は、Y−Z平面に垂直な投影面(図4のS面)に、セレーション回りの流れの速度ベクトルを投影したもの(Tangential Velocity)である。両側の谷部から山部上面に向って回り込む流れが、発生していることが見て取れる。セレーションにおいて、最初は、山の先端部において、小さな巻き込みが発生して、それが谷に向うにつれ大きな巻き込みに成長する。そして、山の後方には、下向きの流れが発生することにより、流速の大きい負圧面に特に発生しやすい剥離を下方に押さえつけて、流れの剥離を低減させているものと考えられる。これにより、翼面近傍の乱れを緩和し、翼面の圧力変動を抑える事で、低騒音化につながる効果を生み出すことが可能となっている。
(第1実施形態)
第1実施形態は、上述の基礎技術のセレーションの効果を利用しつつ、送風ファンによる回転騒音のさらなる低騒音化を行うようにしたものである。図6、7を参照して、以下、第1実施形態を説明する。送風ファン1のハブ5には、放射状に複数のブレード3が設けられており、その翼前縁6には、上述の基礎技術のセレーションと同様に設置されている。第1実施形態の場合には、後退翼で説明するが、前進翼に適用した場合も本実施形態に含まれる。また、本実施形態では、ブレード3の外周側にリング2が形成されているが、リング2がない場合であっても良い。
基礎技術では、従来技術と同様に図1のセレーション端部Cを有していた。これに対して、本実施形態では基礎技術とは異なり、図7のD−D線に関する断面図(気流方向に垂直なS面でのセレーションの断面S’)が示すように、正圧面の形状は正圧面での流れの剥離を低減することができるような形状に形成されている。これにより、正圧面での流れの剥離を発生することなく、図4に示すように、両側の谷部から山部上面に向って回り込む流れが発生して、負圧面での縦渦の流速を増加させ、翼後縁まで縦渦を維持することができるのである。
図8には、本実施形態の前縁セレーションまわりの流れの構造を解析したシミュレーション結果が示されている。この場合は、セレーション端部C(図1参照)にR形状を形成した場合で、谷部においてはほぼ半円に形成された実施形態である。正圧面から負圧面に移行する移行位置T(図7参照)の接線は、負圧面に垂直(θ=90°)となっている。断面S’での負圧面が直線の場合に、移行位置Tにおける接線の角度θは、90°から175°の範囲内にあれば効果が得られる。θ=90°が特に効果的である。なお、R形状とは、図10FのC1のような半径Rの形状を示しているが、これに限定されずに、図10A〜Eに示すような滑らかな丸みを帯びた曲線形状(第1曲線)であれば同じような効果を得ることができる。丸みを帯びた曲線形状とは、円弧、半円、楕円などを指し、正圧面の一部分U(図10C参照)から移行位置Tまで、連続した滑らかな凸状曲線であれば含まれるものである。さらには図10Eのように一部に直線を含んでいても良い。負圧面の断面形状は、必ずしもフラットな場合に限らず、任意の形状であっても良い。
本実施形態では、図8の結果から分かるように、図3の結果と比べて、両側の谷部から山部上面に向って回り込む流れがより強く発生して、縦渦による剥離抑制効果を向上させることがわかる。また、図9においては、R形状の半径Rの増加につれて、剥離位置が後方にシフトしていることが示されている。
以上述べたように、本実施形態においては、正圧面での流れの剥離を発生することなく、両側の谷部から山部上面に向って回り込む流れが発生して、負圧面での縦渦の流速を増加させ、翼後縁まで縦渦を維持することができるのである。
(第2実施形態)
第2実施形態は、第1実施形態のセレーション形状をさらに特定した場合の実施形態である。図11A、11Bは、第2実施形態の正圧面側から見たセレーション形状の概要図である。この場合、気流方向に垂直なセレーションの断面図は、図10Fであるとして説明するが、必ずしもこれに限定されるものではない。図11Aは、R形状の半径Rがセレーションの谷から山に向って一定値R0にした場合の実施形態である。図11Bは、R形状の半径Rがセレーションの谷から山に向って漸減した場合の実施形態である。図11Bの場合では、谷の位置でのR形状の半径RがR0であり、谷の位置で板厚tとする。これらの場合、好ましくはR形状の半径R0は、板厚tに対して0.06t以上とすると良い。
その他の実施形態として、これまで負圧面の断面形状についてフラットとしてきたが、気流方向に垂直な前記セレーションの断面において、ブレード3の負圧面の一部又は中央から移行位置Tまで、左右両側とも滑らかな丸みを帯びた第2曲線で構成され、この曲線の曲率半径が、移行位置Tに近づくにつれ単調増加するようにしても良い。図10Fの断面形状において、正圧面での端部C1、移行位置Tの形状がともにR形状であって、正圧面のR形状C1の半径が、移行位置TのR形状の半径よりも大きいことで気流の流速低下を抑えるようにしても良い。
本発明の第1実施形態では、図6に示すように、セレーションの方向を円周方向に向けた場合の実施態様が示されているが、送風ファン1の半径方向位置における気流の流れに応じて、セレーションのピッチ、高さ、又は、方向を変化させても良い。送風機の翼面近傍の気流の流れはその部位によって大きく異なり、送風ファンの半径方向に対しては外周側ほど流速が高く、また、前進翼では翼中心に集まる軸流、後退翼では翼外周方向に向かう斜流となる。さらには、翼端部では正圧面から負圧面側に巻き込む逆流も生じる。
このような送風ファン1の半径方向位置におけるこれらの気流の流れに応じて、セレーションのピッチ、高さ、又は、方向を変化させることは、流れの剥離を低減させる上で、極めて重要である(逆流や斜流の発生箇所においてはセレーションの方向を逆流や斜流の方向に合わせる等)。これにより、本実施形態の本来のセレーションの基礎的効果がより発揮され、翼面近傍の乱れを緩和し、翼面の圧力変動を抑える事で、低騒音化につながる効果を生み出すことが可能となる。
セレーションを構成する三角形状突部について、ここでは、三角形状突部の底辺を、セレーション(三角形状突部)のピッチと呼び、三角形状突部の頂角の二等分線を、セレーション(三角形状突部)の方向と呼び、頂角の二等分線が底辺にいたる距離を、セレーション(三角形状突部)の高さと呼ぶ。送風ファンの半径方向に対して外周側ほど流速が高くなるので、第1実施形態においても、セレーションのピッチや高さを外周側ほど大きくするとセレーションの効果がより向上する。
1 送風ファン
3 ブレード
3−1 谷部
3−2 山部
5 ハブ
6 翼前縁
300 駆動モータ

Claims (6)

  1. 駆動モータ(300)、並びに、該駆動モータに取り付けられるハブ(5)、及び、該ハブ(5)に設けられた複数のブレード(3)を有する送風ファン(1)を具備する送風機であって、
    前記ブレード(3)の翼前縁(6)には、翼前縁(6)に沿って複数の三角形状突部からなるセレーションを設けるとともに、気流方向に垂直な前記セレーションの断面において、前記ブレード(3)の正圧面が、前記ブレード(3)の正圧面の少なくとも1部分から前記ブレード(3)の負圧面に移行する移行位置(T)まで、該移行位置(T)の両側ともそれぞれ滑らかな丸みを帯びた第1曲線で構成されたことを特徴とする送風機。
  2. 前記第1曲線が、円弧又は楕円を含む曲線で構成されていることを特徴とする請求項1に記載の送風機。
  3. 前記セレーションの谷における気流方向に垂直な断面において、前記移行位置(T)の両側の前記第1曲線が、半円で構成されていることを特徴とする請求項2に記載の送風機。
  4. 気流方向に垂直な前記セレーションの断面において、負圧面が直線で形成されるとともに、前記移行位置(T)における前記ブレード(3)の正圧面の接線が、負圧面と直角又は鈍角に形成されたことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の送風機。
  5. 気流方向に垂直な前記セレーションの断面において、前記ブレード(3)の負圧面から前記移行位置(T)まで、滑らかな丸みを帯びた第2曲線で構成されることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の送風機。
  6. 前記送風ファンの半径方向位置における気流の流れに応じて、前記セレーションのピッチ、高さ、又は、方向を変化させたことを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の送風機。
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