以下に、図面を参照しながら開示された発明を実施するための複数の形態を説明する。各形態において先行する形態で説明した事項に対応する部分には同一の参照符号を付して重複する説明を省略する場合がある。各形態において構成の一部のみを説明している場合は、構成の他の部分については先行して説明した他の形態を適用することができる。また、後続の実施形態においては、先行する実施形態で説明した事項に対応する部分に百以上の位だけが異なる参照符号を付することにより対応関係を示し、重複する説明を省略する場合がある。各実施形態で具体的に組合せが可能であることを明示している部分同士の組合せばかりではなく、特に組合せに支障が生じなければ、明示してなくとも実施形態同士を部分的に組み合せることも可能である。
(第1実施形態)
図1において、本発明の第1実施形態に係る燃焼機関システム1は、燃焼機関2と、燃料供給装置3とを備える。燃焼機関2は、燃料を消費する燃料消費装置である。燃焼機関2は、燃料を燃焼することによって、熱および/または動力を提供する。燃焼機関2は、内燃機関によって提供することができる。燃焼機関2は、道路走行車両など移動機器の動力源として、または、熱電併給装置もしくは空調装置などの定置機器の動力源を提供する。燃料供給装置3は、燃焼機関2に燃料を供給する。燃料供給装置3は、液体燃料を蒸発させることにより気体燃料を生成し、生成された気体燃料を燃焼機関2に供給する。燃料供給装置3は、燃料蒸発装置、または燃料気化装置とも呼ぶことができる。
燃料供給装置3は、気体燃料を燃焼機関2に供給するための燃料噴射装置31を備える。燃料噴射装置31は、燃焼機関2に供給される燃焼用空気に気体燃料を供給する燃料噴射弁によって提供することができる。また、燃料噴射装置31は、燃焼機関2の燃焼室に直接的に気体燃料を供給する燃料噴射弁によって提供することもできる。
燃料供給装置3は、液体燃料を溜める燃料タンク32を有する。液体燃料は、プロパン、ブタン、CNG、LPGなどの液化石油ガス、エタノール、メタノールなどのアルコール類、ガソリンなどの炭化水素燃料、またはアンモニア等の非炭化水素系水素キャリヤである。
燃料供給装置3は、燃料タンク32内の燃料を汲み上げる燃料ポンプ33を備える。燃料ポンプ33は、電動ポンプによって提供することができる。燃料ポンプ33は、液体燃料を汲み上げ、加圧する。燃料ポンプ33は、燃料噴射装置31に向けて燃料を供給する。燃料ポンプ33と燃料噴射装置31との間には、供給経路34が設けられている。燃料ポンプ33は、供給経路34に燃料を供給する。燃料ポンプ33は、燃料タンク32から燃料噴射装置31へ燃料を圧送することができる唯一の機器である。
供給経路34の途中には、液体燃料を気化させて気体燃料を生成する燃料蒸発器10が設けられている。燃料蒸発器10は、熱媒体によって液体燃料を蒸発させる熱交換器である。燃料蒸発器10は、燃焼機関2の温度を調節するための流体を熱媒体として利用する。例えば、燃焼機関2を冷却するための冷却水を熱媒体として利用することができる。燃焼機関2と燃料蒸発器10との間には、熱媒体の供給経路41と、熱媒体の戻り経路42とが設けられている。燃料ポンプ33と燃料蒸発器10との間の供給経路34は、液体燃料が流れる液体経路34aである。燃料蒸発器10と燃料噴射装置31との間の供給経路34は、気体燃料が流れる気体経路34bである。
液体経路34aには、圧力調整器36が設けられている。圧力調整器36は、燃料蒸発器10に供給される液体燃料の圧力を調整する。圧力調整器36は、燃料ポンプ33と燃料蒸発器10との間に設けられている。
気体経路34bと燃料タンク32との間には、余剰燃料を燃料タンク32に戻すためのリターン経路35が設けられている。リターン経路35には、リリーフ弁37が設けられている。リリーフ弁37は、気体経路34bから燃料タンク32へ向かう順方向の流れだけを許容する。リリーフ弁37は、燃料タンク32から気体経路34bへ向かう逆方向の流れを阻止する逆流防止手段として機能する。リターン経路35には、気体燃料を凝縮させることにより液体燃料を生成する凝縮器38を備える。リターン経路35に凝縮器38が設けられることにより、燃料タンク32には液体燃料が戻される。リリーフ弁37は、気体経路34bと凝縮器38との間に設けられている。凝縮器38は、リリーフ弁37と燃料タンク32との間に設けられている。
燃料供給装置3は、燃料供給装置3の構成機器を制御するための制御システムを備える。制御システムは、制御装置(ECU)51を備える。制御装置51は、コンピュータによって読み取り可能な記憶媒体を備えるマイクロコンピュータによって提供される。記憶媒体は、コンピュータによって読み取り可能なプログラムを非一時的に格納している。記憶媒体は、半導体メモリまたは磁気ディスクによって提供されうる。プログラムは、制御装置51によって実行されることによって、制御装置51をこの明細書に記載される装置として機能させ、この明細書に記載される制御方法を実行するように制御装置51を機能させる。制御装置51が提供する手段は、所定の機能を達成する機能的ブロック、またはモジュールとも呼ぶことができる。
制御システムは、複数のセンサを備える。複数のセンサから出力される信号は、制御装置51に入力される。制御装置51は、複数のセンサからの信号に基づいて、燃料供給装置3の作動状態を検出する。制御システムは、燃焼機関2に供給される気体燃料の燃料温度Tfを検出する温度センサ52を備える。制御システムは、燃焼機関2に供給される気体燃料の燃料圧力Pfを検出する圧力センサ53を備える。
制御システムは、燃料蒸発器10における伝熱面温度Thexを検出する温度センサ54を備える。伝熱面温度Thexは、燃料が接触する壁面の温度である。温度センサ54は、燃料通路10bを区画し燃料へ熱を伝える伝熱面の伝熱面温度Thexを検出する手段である。
制御システムは、液体経路34aにおける液体燃料の燃料供給圧Paを検出する圧力センサ55を備える。
制御システムは、燃料タンク32内に溜められた液体燃料の性状を検出する燃料性状センサ56を備える。燃料性状センサ56は、液体燃料の物性を示す物理量を検出する。燃料性状センサ56は、液体燃料の組成、すなわち種類を示す物理量を検出する。
制御システムは、燃料供給装置3の作動状態を制御するための複数の機器として、燃料噴射装置31、燃料ポンプ33、および圧力調整器36を利用する。制御装置51は、複数の機器の制御信号を演算する。制御装置51は、燃料供給装置3の作動状態を望ましい目標作動状態に制御するように制御信号を演算する。制御装置51は、演算された制御信号を複数の機器に出力する。
制御装置51は、燃料噴射装置31を制御することにより、燃焼機関2に供給される気体燃料量を調節する。制御装置51は、燃焼機関2の回転数、燃焼機関2の出力指令値などに基づいて要求燃料噴射量を演算する。燃焼機関2の回転数は、図示されない回転数センサにより検出することができる。出力指令値は、図示されないアクセル開度センサにより検出することができる。さらに、制御装置51は、要求燃料噴射量、および燃料の温度ならびに圧力から燃料噴射装置31からの噴射期間を演算する。燃料の温度ならびに圧力は、温度センサ52ならびに圧力センサ53により検出される。制御装置51は、演算された噴射期間に基づいて燃料噴射装置31の制御信号を決定し、出力する。
制御装置51は、燃料ポンプ33を制御することにより、燃料の供給ならびに供給停止を制御し、さらに、燃料供給量を制御する。制御装置51は、基本的に燃料噴射装置31から噴射される量と同等の量の液体燃料を供給するように燃料ポンプ33を制御する。しかしながら、制御系の遅れにより、気化量が過剰であった場合、燃料蒸発器10内の圧力が過剰に上昇することがある。その際にはリリーフ弁37より過剰な圧力を開放し、凝縮器38により液化して燃料タンク32に戻す。また、燃焼機関2の温度が過度の高温となった場合、燃料蒸発器10における気体燃料の過熱度を制御目標として燃料供給量を制御すると燃料供給圧が過剰に高くなり、燃料蒸発器10を含む機器の耐圧の限界に接近する場合がある。このような事態を避けるために、制御装置51には、燃料供給圧に上限を設けた燃料供給圧制御マップが設定されている。
制御装置51は、圧力調整器36を制御することにより、燃料蒸発器10に供給される液体燃料の圧力を制御する。制御装置51は、燃料蒸発器10において熱媒体の熱が効率的に燃料に伝達されるように圧力調整器36を制御する。制御装置51は、燃料蒸発器10における熱媒体から燃料への熱流束を最大化するように燃料供給圧Paを制御する。制御装置51は、燃料蒸発器10内における気化燃料の過熱度が目標値になるように燃料供給圧Paをフィードバック制御する。これにより、熱媒体から燃料への熱流束が最大化される。この制御は、燃料蒸発器10内に液体燃料が存在する状態を維持する制御でもある。また、この制御は、燃料蒸発器10内の高さ方向HGの所定の位置の近傍に気液界面を維持する制御でもある。この結果、燃料蒸発器10内において確実に液体燃料の対流が発生する。
図2〜図6は、燃料蒸発器10の構成を示す。図2には、燃料蒸発器10の一部を分解した斜視図が図示されている。図中には、以下の説明において参照される直交座標系が図示されている。図3には、第1部材12内における熱媒体の流れが矢印HM1、HM2によって図示されている。図4には、第2部材13内における燃料の気液界面LGB、および液体燃料の中の気泡BBLが図示されている。また、図中には、液体燃料の流れが矢印CV1、CV2によって図示されている。図5は、先行図に図示されたV−V断面における燃料蒸発器10の部分断面図である。図6は、先行図に図示されたVI−VI断面における燃料蒸発器10の部分断面図である。
図2において、燃料蒸発器10は、熱媒体と燃料とを熱交換させる熱交換器によって提供される。燃料蒸発器10は、複数の流路要素を積層した積層型熱交換器によって提供される。燃料蒸発器10は、積層された複数の板部材11、12、13を備える。隣接する板部材11、12、13の間には、熱媒体を流すための薄い熱媒体通路10aと燃料を流すための薄い燃料通路10bとが形成されている。熱媒体通路10aと燃料通路10bとは、燃料蒸発器10の厚さ方向TH、すなわち積層方向に関して交互に配置されている。熱媒体通路10aと燃料通路10bとの間は、隔壁部材によって仕切られている。隔壁部材は、板部材12、13によって提供されている。よって、燃料蒸発器10は、熱媒体を流すための扁平な熱媒体通路10aと、燃料を流すための扁平な燃料通路10bとを厚さ方向THに積層して配置することによって構成されている。燃料蒸発器10は、熱媒体から燃料への熱伝達により燃料の液体成分を蒸発させ気体燃料を供給する。熱媒体通路10aと燃料通路10bとは、垂直方向に沿って配置されている。
燃料蒸発器10は、端板部材11を備える。端板部材11は、後述する積層要素の端部に設けられる。図示の例では、燃料蒸発器10の一端に配置された端板部材11が図示されている。燃料蒸発器10は、その両端に端板部材11を備えることができる。
燃料蒸発器10は、板状の第1部材12を備える。第1部材12は、底板と、底板の周縁部において厚さ方向THに立上った周壁とをもつ浅い皿状に形成されている。第1部材12は、隣接する部材によって周壁の開放端が閉塞されることにより、熱媒体のための通路を形成する。熱媒体通路は、主として第1部材12によって形成される。よって、第1部材12は、熱媒体通路部材12とも呼ばれる。
燃料蒸発器10は、板状の第2部材13を備える。第2部材13は、底板と、底板の周縁部において厚さ方向THに立上った周壁とをもつ浅い皿状に形成されている。第2部材13は、隣接する部材によって周壁の開放端が閉塞されることにより、燃料のための通路を形成する。燃料通路10bは、主として第2部材13によって形成される。よって、第2部材13は、燃料通路部材13とも呼ばれる。
複数の第1部材12と、複数の第2部材13とは、交互に積層されている。よって、ひとつの第1部材12は、必ずひとつの第2部材13と隣接して配置される。また、ひとつの第2部材13は、必ずひとつの第1部材12と隣接している。
燃料蒸発器10の端部を除く残余の部位において、ひとつの第1部材12は、その両側に配置された2つの第2部材13の間に配置される。また、燃料蒸発器10の端部を除く残余の部位において、ひとつの第2部材13は、その両側に配置された2つの第1部材12の間に配置される。
熱媒体通路と燃料通路10bとの間には、第1部材12または第2部材13が位置付けられている。よって、熱媒体の熱は、第1部材12または第2部材13を厚さ方向THに伝導した後に、第1部材12または第2部材13から燃料へ伝導する。
燃料蒸発器10は、熱媒体を導入するための第1の熱媒体入口14と、第2の熱媒体入口15とを有する。燃料蒸発器10は、熱媒体を排出するための熱媒体出口16を有する。燃料蒸発器10は、燃料、特に液体燃料を導入するための燃料入口17を有する。燃料蒸発器10は、燃料、特に気化した気体燃料を排出するための燃料出口18を有する。これらの出入口14、15、16、17、18は、端板部材11に設けられている。
燃料蒸発器10は、熱媒体の入口14に連通し、厚さ方向THに沿って延びる第1の熱媒体入口タンク部14aを有する。第1の熱媒体入口タンク部14aは、主として第1部材12によって区画される熱媒体通路に連通している。
燃料蒸発器10は、熱媒体の入口15に連通し、厚さ方向THに沿って延びる第1の熱媒体入口タンク部15aを有する。第2の熱媒体入口タンク部15aは、主として第1部材12によって区画される熱媒体通路10aに連通している。
燃料蒸発器10は、熱媒体の出口16に連通し、厚さ方向THに沿って延びる熱媒体出口タンク部16aを有する。熱媒体出口タンク部16aは、主として第1部材12によって区画される熱媒体通路10aに連通している。
燃料蒸発器10は、燃料入口17に連通し、厚さ方向THに沿って延びる燃料入口タンク部17aを有する。燃料入口タンク部17aは、主として第2部材13によって区画される燃料通路10bに連通している。
燃料蒸発器10は、燃料の出口18に連通し、厚さ方向THに沿って延びる燃料出口タンク部18aを有する。燃料入口タンク部18aは、主として第2部材13によって区画される燃料通路10bに連通している。
タンク部14a、15a、16a、17a、18aは、複数の第1部材12および複数の第2部材13に形成された開口部と筒状部とによって区画され、形成されている。第1部材12は、第1の熱媒体入口タンク部14aのための開口と、第2の熱媒体入口タンク部15aのための開口と、熱媒体出口タンク部16aのための開口とを有する。第1部材12は、燃料入口タンク部17aのための筒状部と、燃料出口タンク部18aのための筒状部とを有する。これら筒状部は、熱媒体通路10aと燃料通路10bとの連通を阻止する。第2部材13は、第1の熱媒体入口タンク部14aのための筒状部と、第2の熱媒体入口タンク部15aのための筒状部と、熱媒体出口タンク部16aのための筒状部とを有する。これら筒状部は、熱媒体通路10aと燃料通路10bとの連通を阻止する。第2部材13は、燃料入口タンク部17aのための開口と、燃料出口タンク部18aのための開口とを有する。
図2に図示されるように、燃料蒸発器10は、厚さ方向(積層方向)THおよび幅方向(左右方向)WDが水平方向に一致するように設置される。燃料蒸発器10は、やや長方形の第1部材12および第2部材13の長手方向を高さ方向(上下方向)HGとしている。燃料蒸発器10は、高さ方向HGが垂直方向に一致するように設置される。ここで、水平方向に一致、および垂直方向に一致は、やや傾いた状態を含む。燃料蒸発器10は、扁平な燃料通路10b内の液体燃料が重力の影響を受けることによって、伝熱面に沿って流れうる範囲で傾けることができる。言い換えると、燃料蒸発器10は、燃料通路10b内の液体燃料が、伝熱面に沿って対流できうる範囲で傾けて設置することができる。
第1の熱媒体入口タンク部14aと、第2の熱媒体入口タンク部15aと、熱媒体出口タンク部16aとは、燃料蒸発器10の重力方向に関する上下の一方の端部に配置されている。これらの熱媒体のためのタンク部14a、15a、16aは、燃料蒸発器10の上部、または下部に配置される。言い換えると、熱媒体のためのタンク部14a、15a、16aは、燃料蒸発器10の高さ方向HGのいずれか一方の端部に配置される。図示の例では、熱媒体のためのタンク部14a、15a、16aは、燃料蒸発器10の下部に配置されている。第1の熱媒体入口タンク部14aと、第2の熱媒体入口タンク部15aとは、熱媒体出口タンク部16aの両側に配置される。言い換えると、第1の熱媒体入口タンク部14aと、第2の熱媒体入口タンク部15aとは、燃料蒸発器10の幅方向WDに関して、熱媒体出口タンク部16aの両側に配置される。
主として第1部材12によって形成される扁平な熱媒体通路10aには、熱媒体通路10aを3つの部位に区画するための仕切部材12a、12bが配置されている。仕切部材12a、12bは、第1部材12に立設されたリブによって提供することができる。また、仕切部材12a、12bは、第1部材12とは別体の細い板状部材によって提供されてもよい。仕切部材12a、12bは、第1部材12の面に沿って、重力方向に長く延在している。仕切部材12a、12bは、第1部材12の高さ方向HGに延びている。仕切部材12a、12bの一端は、第1部材12の高さ方向HGの端部に達して周壁に接している。仕切部材12a、12bの他端は、第1部材12の高さ方向HGの端部に到達する前に、終端しており、周壁に接していない。図示の例では、仕切部材12a、12bの下端は、第1部材12の下端部に達して周壁に接している。仕切部材12a、12bの上端は、第1部材12の高さ方向HGの端部に到達する前に、終端しており、周壁に接していない。
仕切部材12a、12bは、第1部材12が形成する熱媒体通路10aをヨ字型、またはW字型と呼びうる形状に区画している。言い換えると、仕切部材12a、12bは、熱媒体通路10aを、ひとつの集合部と3つの先端部とを提供する3つの通路12c、12d、12eに区画している。サイド通路12cは、高さ方向HGに延びている。サイド通路12dは、高さ方向HGに延びている。センタ通路12eは、高さ方向HGに延びている。これらの通路12c、12d、12eは、第1部材12の高さ方向HGの端部において連通することにより集合部を形成している。図示の例では、集合部は、上端部に形成されている。
第1の熱媒体入口タンク部14aは、サイド通路12cの先端部に位置付けられている。第2の熱媒体入口タンク部15aは、サイド通路12dの先端部に位置付けられている。熱媒体出口タンク部16aは、センタ通路12eの先端部に位置付けられている。第1の熱媒体入口タンク部14aは、サイド通路12cの下端部に位置付けられている。第2の熱媒体入口タンク部15aは、サイド通路12dの下端部に位置付けられている。熱媒体出口タンク部16aは、センタ通路12eの下端部に位置付けられている。
燃料入口タンク部17aは、燃料蒸発器10の下部に位置付けられている。燃料出口タンク部18aは、燃料蒸発器10の上部に位置付けられている。
第2部材13が形成する燃料通路10bは、燃料が上下方向HGに沿って流れることができるように、さらに、上端部と下端部との両方においては、燃料が幅方向WDに沿って流れることができるように形成されている。図示の例では、第2部材13が形成するほぼ長方形の扁平な扁平通路部13aが燃料通路10bである。扁平通路部13aは、2つのサイド通路部12c、12dとセンタ通路部12eとの全体にわたって広がっている。燃料通路10bの内部には、後述する対流CV1、CV2を妨げる部材は設けられていない。燃料通路10bの内部には、後述する対流CV1、CV2を妨げない形状をもつインナフィンおよび/またはリブ状突起のような熱交換促進部を設けることができる。
図3において、熱媒体入口タンク部14a、15aおよび熱媒体出口タンク部16aは、高さ方向の下部に配置されている。この構成によると、熱媒体は、両側のサイド通路12c、12dにおいて下から上へ流れた後に、センタ通路12eに流入し、上から下へ流れる。
第1部材12は、熱媒体がサイド通路12c、12dを流れた後に、センタ通路12eを流れる熱媒体通路10aを提供する。図示の例では、熱媒体は、サイド通路12c、12dを下端部から上端部へ向けて流れる。熱媒体は、集合部において合流し、さらにセンタ通路12eに流れ込む。熱媒体は、センタ通路12eを上端部から下端部へ向けて流れる。
第1部材12は、高さ方向HGに沿ってU字状に往復するUターン流れ経路HM1、HM2を、2つ形成している。Uターン流れ経路HM1においては、熱媒体は、まず左側の側部を下から上へ流れ、上端部でUターンし、中央部を上から下へ流れる。Uターン流れ経路HM2においては、熱媒体は、まず右側の側部を下から上へ流れ、上端部でUターンし、中央部を上から下へ流れる。サイド通路12c、12dには、熱媒体入口タンク部14a、15aから供給された比較的高温の熱媒体が流れる。よって、サイド通路12c、12dは、高温通路とも呼ぶことができる。センタ通路12eには、燃料と熱交換した比較的低温の熱媒体が流れる。よって、センタ通路12eは、低温通路とも呼ぶことができる。
図4において、扁平通路部13aは、高さ方向の下部に配置された燃料入口タンク部17aから、高さ方向の上部に配置された燃料出口タンク部18aに向けて高さ方向に沿って延在する。この構成によると、液体燃料は、燃料入口タンク部17aから扁平通路部13aに導入され、扁平通路部13aの下部に溜まる。溜められた液体燃料の中では対流が生じる。液体燃料が蒸発することによって得られた気体燃料は、上部に配置された燃料出口タンク部18aから排出される。
第2部材13は、燃料が下から上へ向けて流れる燃料通路を提供する。燃料入口タンク部17aから導入された液体燃料は、燃料通路内に流れ込み、燃料通路の下部に溜まる。液体燃料は、隣接する熱媒体通路10aを流れる熱媒体によって加熱される。加熱された液体燃料は蒸発し、気化する。気体燃料は、燃料通路の上部に溜まる。気体燃料は、燃料通路の上部において、熱媒体によってさらに加熱され、過熱蒸気となる。気体燃料は、燃料出口タンク部18aから流出する。
この実施形態では、熱媒体通路10aにおける熱媒体の温度分布に応じて、燃料通路の壁面にも温度分布が形成される。すなわち、燃料への伝熱面に温度分布が形成される。しかも、この温度分布は、伝熱面の幅方向WDの側部に位置するサイド伝熱面の温度が、伝熱面の幅方向の中央部に位置するセンタ伝熱面の温度より高くなるように形成される。すなわち、サイド通路12c、12dに対応する燃料通路の壁面、すなわちサイド伝熱面の温度は、センタ通路12eに対応する燃料通路の壁面、すなわちセンタ伝熱面の温度より高い。
サイド伝熱面の温度と、センタ伝熱面の温度との差は、サイド伝熱面によって加熱された液体燃料に強い上昇流を発生させる。このため、液体燃料は、対流CV1、CV2を生じるように流れようとする。さらに、サイド伝熱面に接する液体燃料は、センタ伝熱面に接する液体燃料よりも多くの気泡を生じる。気泡BBLは、下から上へ浮上する。このため、液体燃料は、対流CV1、CV2を生じるように流れようとする。
燃料通路内には、側部において上昇し、中央部において下降する液体燃料の2つの対流CV1、CV2が形成される。対流CV1、CV2により、側部における液体燃料の上昇方向の流速は、Vfに達する。流速Vfは、燃料入口タンク部17aから燃料出口タンク部18aへ流れる流量に応じた流速よりも速い。流速Vfは、側部における熱的な境界層を抑制し、気泡BBLが伝熱面を覆うように広がることを抑制する。この結果、伝熱面から液体燃料への熱伝達率が向上する。
図示されるように、燃料通路の中には、気液界面LGBが形成される。燃料出口タンク部18aへの液体燃料の侵入を抑制するために、気液界面LGBは燃料出口タンク部18aより下方に形成される。
温度センサ54は、気液界面LGBが形成される高さよりやや上に配置されている。よって、温度センサ54は、燃料出口タンク部18aより下方であって、しかも燃料入口タンク部17aより上方に配置されている。温度センサ54は、気液界面LGBより上における伝熱面の表面の伝熱面温度Thexを検出する。気液界面LGBより上における伝熱面は、専ら気体燃料を加熱している。よって、温度センサ54が検出する伝熱面の温度は、気体燃料の過熱度を示すことができる。
図7に図示されるように、液体燃料の流速Vfと、伝熱面から液体燃料への熱伝達率HCRとは、ほぼ比例関係にある。流速Vfが高くなるほど、熱伝達率HCRが高くなる。この実施形態によると、対流CV1、CV2によって流速Vfを高めることができる。よって、燃料通路における伝熱面から液体燃料への熱伝達率HCRを高めることができる。
図8には、燃料供給装置3における燃料供給圧Paの制御フローチャートが図示されている。制御装置51は、燃料蒸発器10における熱伝達率を高く維持するために、燃料供給圧Paを制御する。制御装置51は、気体燃料の過熱度Tshが目標過熱度Ttgに一致するように圧力調整器36をフィードバック制御する。制御装置51は、燃料供給圧制御処理170を実行する。
ステップ171では、制御装置51は、燃料タンク32内の燃料の組成Cta、例えば燃料の種類を入力する。制御装置51は、燃料性状センサ56から組成Ctaを入力することができる。燃料の組成Ctaは、利用者が手動によって設定してもよい。
ステップ172では、制御装置51は、燃料の組成Ctaに対応する飽和蒸気圧曲線を入力する。飽和蒸気圧曲線は、燃料の沸点(温度)Taと、燃料圧力との関係を示す。制御装置51は、複数の燃料の組成Ctaに対応した複数の飽和蒸気圧曲線を予め記憶している。制御装置51は、ステップ171において入力された組成Ctaに応じて、組成Ctaに適合する飽和蒸気圧曲線を選択する。
ステップ173では、制御装置51は、燃料供給圧Paを入力する。制御装置51は、圧力センサ55から燃料供給圧Paを入力することができる。
ステップ174では、制御装置51は、飽和蒸気圧曲線と燃料供給圧Paとに基づいて、燃料供給圧Paにおける沸点Taを算出する。沸点Taは、燃料タンク32内の燃料が燃料供給圧Paにおいて沸騰する温度である。
ステップ175では、制御装置51は、燃料蒸発器10における燃料と接触している伝熱面の表面における伝熱面温度Thexを入力する。制御装置51は、温度センサ54から伝熱面温度Thexを入力することができる。温度センサ54は、燃料蒸発器10における気液界面LGBよりやや上に設けられているから、伝熱面温度Thexは、気体燃料と接触している部材12、13の表面温度に対応している。
ステップ176では、制御装置51は、気体燃料の過熱度Tshを算出する。気体燃料の過熱度Tshは、Tsh=Thex−Taから算出することができる。算出された過熱度Tshは、気体燃料の実際の実過熱度に対応する。
ステップ177では、制御装置51は、算出された過熱度Tshと、目標過熱度Ttgとを比較する。ステップ177においてTsh<Ttgである場合、処理は、ステップ178へ進む。ステップ178では、制御装置51は、燃料供給圧Paを減少させるように圧力調整器36を操作する。ステップ177においてTsh=Ttgである場合、処理は、ステップ179へ進む。ステップ179では、制御装置51は、燃料供給圧Paを維持するように圧力調整器36を操作する。ステップ177においてTsh>Ttgである場合、処理は、ステップ180へ進む。ステップ180では、制御装置51は、燃料供給圧Paを増加させるように圧力調整器36を操作する。ステップ177−180は、算出された過熱度Tshが目標過熱度Ttgに接近し、維持されるように燃料供給圧Paをフィードバック制御するフィードバック制御処理を提供する。
この実施形態では、制御装置51は、温度センサ54により検出された伝熱面温度Thexに基づいて、気体燃料の過熱度Tshが目標過熱度Ttgに接近し、維持されるように燃料蒸発器10に供給される液体燃料の燃料供給圧Paをフィードバック制御する制御手段を提供する。
図9に図示されるように、燃料蒸発器10における熱流束qは、燃料の過熱度Ttgが所定の値にあるときに、最大値となる。この実施形態では、燃料蒸発器10における熱流束qを最大化するために、熱流束qが最大値となる過熱度Tshを目標過熱度Ttgとして用いている。目標過熱度Ttgは、燃料蒸発器10の構成に依存して変化する。図中には、サンプル値が点によって図示され、サンプル値の分布範囲が破線によって図示されている。図中には、燃料としてブタンを使用した場合のサンプル値が図示されている。
この実施形態では、気体燃料に0を上回る目標過熱度Ttgを与えるように燃料供給圧Paが制御される。よって、燃料の沸点Taは伝熱面温度Thexより低く維持される。このように、目標過熱度Ttgは、伝熱面から液体燃料への熱流束qが最大化されるように設定することができる。これにより、熱流束を最大化することができる。
図10に図示されるように、最大値をもつ熱流束の特性Qshは、液体燃料の沸騰状態と関連付けて説明することができる。特性Qshの左半部では、過熱度が増加するほど、すなわち熱媒体の温度が高くなるほど、熱流束が増加している。この左半部においては、液体燃料は核沸騰領域にあると考えられる。核沸騰領域では、図中左上に図示されるように、気泡BBLが少ない。このとき、液体燃料と熱媒体との間に配置された伝熱板、すなわち第1部材12および第2部材13は、液体燃料と十分に接触することができる。この結果、伝熱面から液体燃料へ大量の熱を伝えることができる。
特性Qshの右半部では、過熱度が増加するほど、すなわち熱媒体の温度が高くなるほど、熱流束が減少している。この右半部においては、液体燃料は遷移沸騰領域にあると考えられる。遷移沸騰領域では、図中右上に図示されるように、気泡BBLが多い。しかも、大量の気泡が次々と伝熱面において発生する。このため、伝熱面を覆うように薄い層状の膜状気泡BBFが生じる。膜状気泡BBFは、液体燃料と伝熱面との直接的な接触を妨げる。膜状気泡BBFは、過熱度が高くなり、熱媒体温度が高くなるほど、広く拡がり、厚く成長する。この結果、伝熱面から液体燃料への伝熱が妨げられる。
目標過熱度Ttgは、核沸騰領域と遷移沸騰領域との境界に設定することができる。これにより、熱流束を最大化することができる。
図11に図示されるように、燃料供給圧Paが高くなるほど、沸点Taは高くなる。よって、Tsh<Ttgのときに燃料供給圧Paを減少させるステップ177−178の操作は、沸点Taを低下させ、その結果、過熱度Tshを増加させる。また、Tsh>Ttgのときに燃料供給圧Paを上昇させるステップ177−180の操作は、沸点Taを上昇させ、その結果、過熱度Tshを減少させる。
図12に図示されるように、ステップ177−180によって制御される燃料供給圧Paは、上限圧力Pamを上回ることがないように制限される。図中には、燃料供給圧Paが伝熱面温度Thexとの関係において図示されている。
この実施形態によると、燃料蒸発器10において燃料通路を形成する伝熱面に温度分布が与えられる。このため、温度分布に起因する対流CV1、CV2を燃料通路内において生成することができる。対流CV1、CV2は、液体燃料の流速を高めるから、伝熱面から液体燃料への熱伝達率が高められる。
この実施形態では、熱媒体通路10aは、高さ方向HGに沿って延在し、幅方向WDの一部を占め、高温の熱媒体が流れる高温部を有する。しかも、熱媒体通路10aは、高さ方向HGに沿って延在し、幅方向WDの他部を占め、高温部より低温の熱媒体が流れる低温部を有する。さらに、燃料通路10bは、高温部と低温部との両方にわたって広がる扁平通路部13aを有する。この構成によると、高温部と低温部とによって、燃料通路10bの扁平通路部13aには、温度分布が与えられる。扁平通路部13aの中では、高温部に対応する部位において上昇し、低温部に対応する部位において下降する液体燃料の対流が発生する。対流は、熱的な境界層を抑制する。また、対流は、伝熱面に沿って広がる膜状の気泡の成長を抑制する。この結果、対流は、熱伝達の低下を抑制し、伝熱面から液体燃料への熱伝達を促進する。よって、液体燃料を効率的に蒸発させることができる。
しかも、この実施形態では、伝熱面の幅方向両方の側部に高温部を配置し、中央部に低温部を配置している。この結果、両方の側部において上昇し、中央部において下降する2つの対流CV1、CV2が生成される。このため、対流CV1、CV2の流速Vfを高めることができる。よって、伝熱面から液体燃料への熱伝達率が高められる。
この実施形態では、高温部は、高さ方向HGの一方の端部に設けられた熱媒体入口タンク部14a、15aから高さ方向HGに沿って延在し、幅方向WDの両側の側部に設けられた2つのサイド通路部12c、12dを有する。しかも、低温部は、高さ方向HGの他方の端部においてサイド通路部と連通し、高さ方向HGの一方の端部に設けられた熱媒体出口タンク部16aに向けて高さ方向HGに沿って延在し、幅方向WDの中央部に設けられたセンタ通路部12eを有する。さらに、扁平通路部13aは、2つのサイド通路部12c、12dとセンタ通路部12eとの全体にわたって広がる。この構成によると、幅方向WDの両側から中央部に流れる対流が燃料通路10bの扁平通路部13aの中に形成される。
さらに、この実施形態では、燃料蒸発器10において気体燃料の過熱度Tshが目標過熱度Ttgになるように燃料供給圧Paが制御される。この結果、伝熱面から液体燃料への熱流束を大きくすることができる。
また、気体燃料に0を上回る過熱度が与えられるから、燃料蒸発器10内に確実に気液界面LGBが形成される。このため、燃料蒸発器10の燃料通路内に確実に液体燃料の対流CV1、CV2を生じさせることができる。
また、この実施形態では、伝熱面温度Thexを沸点Taに一致させる場合に比べて、伝熱面から液体燃料への熱流束を大きくすることができる。この結果、燃料蒸発器10における必要な伝熱面積を小さくすることができ、燃料蒸発器10を小型化することができる。
(第2実施形態)
図13および図14は、第2実施形態の燃料蒸発器10の部分断面図である。図13および図14は、図5および図6に対応する断面を示している。上記実施形態では、熱媒体の温度によって、燃料通路に面する伝熱面に温度分布を形成した。これに代えて、または加えて、熱媒体通路10aと燃料通路との間を区画する隔壁板の厚さ、すなわち隔壁における熱の伝わりやすさに差を与えることによって、燃料通路に面する伝熱面に温度分布を形成することができる。
図示の例では、第1部材212の底板は、複数の異なる暑さを有する。サイド通路12c、12dにおける隔壁板の厚さTH1は、センタ通路12eにおける隔壁板の厚さTH2より薄い。この結果、センタ通路12eにおける伝熱面の温度は、隔壁板の厚さの差に起因して、さらに低減される。
このように、燃料蒸発器10は、熱媒体通路10aと燃料通路10bとの間に配置された隔壁板212を有し、高温部における隔壁板212の厚さTH1は、低温部における隔壁板212の厚さTH2より薄いという構成を採用することができる。これによると、隔壁板212の厚さの差によって低温部と高温部との間の温度差を大きくすることができる。
(第3実施形態)
図15〜図18は、第3実施形態の燃料蒸発器10の構成を示す。図15は、第1部材12と第2部材313とを組み合わせた状態を示す平面図である。図16には、第2部材313の平面図を示し、第1部材12が破線で図示されている。図17は、先行図に図示されたXVII−XVII断面における燃料蒸発器10の部分断面図である。図18は、先行図に図示されたXVIII−XVIII断面における燃料蒸発器10の部分断面図である。
上記実施形態では、熱媒体通路10aと燃料通路10bとは、厚さ方向THに関してのみ、重複しており、互いに熱交換可能に配置されていた。これに代えて、この実施形態では、燃料通路10bは、熱媒体通路10aの周囲まで囲むように配置される。
第2部材313は、高さ方向HGおよび幅方向WDに関して第1部材12より大きく、広く形成されている。第2部材313の周縁部には、高い周壁が形成されている。第2部材313の周壁は、第1部材12に形成された周壁より高い。第2部材313の周壁は、最も近い他の第2部材313に到達している。この実施形態では、燃料通路10bは、第1部材12と第2部材313との厚さ方向THに間に形成される。さらに、燃料通路10bは、第1部材12の高さ方向HGの両側と、第1部材12の幅方向WDの両側とにも形成される。燃料通路10bは、第1部材12の周方向外側に、第1部材12の全周を完全に囲むように形成される。
この構成によると、熱媒体通路10aの外周においても、熱媒体から燃料へ熱を伝えることにより、燃料を加熱することができる。すなわち、熱媒体と燃料との間の熱交換面積、言い換えると伝熱面積を大きくすることができる。また、第1部材12の全周を囲む燃料通路10bは、対流CV1、CV2を促進する。
このように、燃料蒸発器10は、燃料通路10bが、熱媒体通路10aの幅方向の両側および/または高さ方向の両側に回り込んで配置された構成を採用することができる。この構成によると、熱媒体通路の熱を無駄なく燃料に伝達することができる。
(第4実施形態)
図19および図20は、第4実施形態の燃料蒸発器10の構成を示す。図19は、第1部材412の平面図である。図20は、第2部材413の平面図である。
上記実施形態では、熱媒体のための出入口14、15、16を燃料蒸発器10の下部に集中的に設けた。これに代えて、この実施形態では、熱媒体のための出入口14、15、16が、燃料蒸発器10の上部に集中的に設けられている。
主として第1部材412によって形成される扁平な熱媒体通路10aには、熱媒体通路10aを3つの部位に区画するための仕切部材12a、12bが配置されている。仕切部材12a、12bの上端は、第1部材12の上端部に達して周壁に接している。仕切部材12a、12bの下端は、第1部材12の高さ方向HGの端部に到達する前に終端しており、周壁に接していない。仕切部材12a、12bは、第1部材12の下端部において集合部を形成している。
第1の熱媒体入口タンク部14aは、サイド通路12cの上端部に位置付けられている。第2の熱媒体入口タンク部15aは、サイド通路12dの上端部に位置付けられている。熱媒体出口タンク部16aは、センタ通路12eの上端部に位置付けられている。
第1部材412は、高さ方向HGに沿ってU字状に往復するUターン流れ経路HM1、HM2を、2つ形成している。Uターン流れ経路HM1においては、熱媒体は、まず左側の側部を上から下へ流れ、下端部でUターンし、中央部を下から上へ流れる。Uターン流れ経路HM2においては、熱媒体は、まず右側の側部を上から下へ流れ、下端部でUターンし、中央部を下から上へ流れる。
このように、燃料蒸発器10は、熱媒体入口タンク部14a、15aおよび熱媒体出口タンク部16aが、高さ方向HGの上部に配置された構成を採用することができる。この構成によると、熱媒体は、両側のサイド通路12c、12dにおいて上から下へ流れた後に、センタ通路12eに流入し、下から上へ流れる。
この構成においても、燃料通路10bの伝熱面には、高温部と低温部とをもつ温度分布が現れる。この結果、燃料通路10b内には、上部において両外側から中央部へ流れる2つの対流CV1、CV2が形成される。しかも、この実施形態によると、幅方向WDの側部においては、熱媒体の流れ方向と燃料の対流方向とが逆方向となるから、対向流による熱交換が提供される。また、中央部においても、熱媒体の流れ方向と燃料の対流方向とが逆方向となるから、対向流による熱交換が提供される。よって、高効率の熱交換が実現される。
(他の実施形態)
以上、開示された発明の好ましい実施形態について説明したが、開示された発明は上述した実施形態に何ら制限されることなく、種々変形して実施することが可能である。上記実施形態の構造は、あくまで例示であって、開示された発明の技術的範囲はこれらの記載の範囲に限定されるものではない。開示された発明の技術的範囲は、特許請求の範囲の記載によって示され、さらに特許請求の範囲の記載と均等の意味及び範囲内での全ての変更を含むものである。
例えば、制御装置が提供する手段と機能は、ソフトウェアのみ、ハードウェアのみ、あるいはそれらの組合せによって提供することができる。例えば、制御装置をアナログ回路によって構成してもよい。
上記実施形態では、燃料性状センサ56によって液体燃料の組成、すなわち種類を検出し、その液体燃料の飽和蒸気圧曲線を特定した。これに代えて、燃料タンク32内の圧力と温度とを検出するセンサを設け、制御装置51に予め格納された複数の飽和蒸気圧曲線のデータから、観測された圧力変化と温度変化とに適合する飽和蒸気圧曲線を選択してもよい。
上記実施形態では、制御装置51によって制御される圧力調整器36によって燃料供給圧Paを制御した。これに代えて、機械的に液体経路34aにおける燃料供給圧を調節するバルブを用いてもよい。例えば、液体燃料の一部を燃料タンク32に戻すリリーフバルブ、または液体燃料の一部を燃料タンク32に戻すことなく圧力を調整するリターンレスバルブを用いることができる。また、燃料供給圧Paを調整するように燃料ポンプ33の吐出圧を制御装置51によって制御してもよい。
上記実施形態では、燃料通路内に対流を発生させることができる燃料蒸発器10と、燃料の過熱度を目標過熱度に制御する燃料供給圧制御処理170とを併用した。これに代えて、燃料通路内に対流を発生させることができる燃料蒸発器10だけを採用してもよい。例えば、燃料蒸発器10と、伝熱面温度Thexを沸点Taに制御する制御処理とを組み合わせて燃料供給装置を構成してもよい。また、燃料の過熱度を目標過熱度に制御する燃料供給圧制御処理170は、他の構成をもつ燃料蒸発器にも適用することができる。
上記実施形態では、第1部材12と第2部材13とを積層して熱媒体通路10aと燃料通路10bとを形成した。これに代えて、熱媒体通路10aを一組の板材の間に形成し、燃料通路10bを他の一組の板材の間に形成し、それらの板材の組を多数積層して燃料蒸発器を構成してもよい。例えば、図13および図14に図示した実施形態における第1部材212に代えて、熱媒体通路10aを一組の板材の間に形成してもよい。かかる構成においては、熱媒体通路10aの両面における厚さが、上記実施形態のように設定される。