以下、本発明の実施形態について説明する。本実施形態では、海水練りコンクリートの性状を把握するための試験として、圧縮強度試験、耐久性試験、及び、透水性試験を行った。
まず、今回の試験に用いた使用材料について説明する。使用材料を図1に示す。
セメントは、太平洋セメント株式会社製の高炉セメントB種を用いた。この高炉セメントB種において、密度は3.04cm3であり、比表面積は3750cm2/gである。なお、一部の試験では、比較例のセメントとして普通ポルトランドセメントを用いた。
ポゾランの一種であるシリカフュームは、エルケム株式会社製の商品名「エルケム940−U」を用いた。このシリカフュームにおいて、密度は2.20cm3であり、比表面積は19cm2/g程度である。このシリカフュームは、細孔閉塞剤としても作用する。
細骨材は、千葉県木更津産の陸砂を用いた。陸砂を用いた理由は、塩分濃度を管理するためである。すなわち、塩分(塩化ナトリウム)が入っていない陸砂を用い、混練時に所定濃度の塩水(後述する)を加えることで、管理された塩分濃度の海水練りコンクリートを人工的に作製している。上記の陸砂において、密度は2.62cm3であり、吸水率は1.76%であり、粗粒率は2.94である。粗骨材は、東京都青梅産の砂石を用いた。この砂石において、密度は2.66cm3であり、吸水率は0.71%であり、粗粒率は6.63であり、実積率は60.3%である。
鋼繊維は、株式会社神鋼建材製の商品名「ドラミックス」を用いた。この鋼繊維において、密度は7.85cm3であり、繊維径φは0.6mmであり、長さLは30mmである。この鋼繊維は、犠牲陽極としても機能する。鉄粉は、上記のドラミックスを用いて作製した。
亜硝酸塩系混和剤は、太平洋マテリアル株式会社製の商品名「ラスナイン」を用いた。この混和剤は、多価アルコールニトロエステルを主成分とし、液体状をしている。そして、当該混和剤10Lあたり3.7kg/m3の塩化物イオンを処理(固定化)できる。
AE減水剤、高性能AE減水剤、及び、空気量調整剤は、いずれもコンクリート用混和剤である。AE減水剤は、BASFポゾリス社製の商品名「ポゾリスNo.70」を用いた。このAE減水剤は、リグニンスルホン酸系化合物を主成分とし、液体状をしている。高性能AE減水剤は、BASFポゾリス社製の商品名「レオビルドSP−8SV」を用いた。この高性能AE減水剤は、ポリカルボン酸系化合物を主成分とし、液体状をしている。空気量調整剤は、BASFポゾリス社製の商品名「マイクロエア404」を用いた。この空気量調整剤は、ポリアルキレングリコール誘導体を主成分とし、液体状をしている。
次に、練混ぜ水について説明する。この試験における練混ぜ水は、上水道水に塩分を加えることで作製した人工海水である。この人工海水における塩分濃度は、海水と海砂の双方から由来する塩化物イオンの総量に相当する濃度に調整する。
採取された海水に含まれる標準的な塩化物イオン量は19g/Lである(Cl−濃度1.9%)。塩化ナトリウムの分子量を58,ナトリウムの原子量を23,塩素の原子量を35とすると、海水に由来する塩化ナトリウム量は、1Lあたり31gとなる。
海砂に関し、海砂の単位量を800kg/m3とし、練混ぜ水の単位量を175kg/m3とし、海砂中の塩化ナトリウム含有率を0.3%とする。この場合、単位量の海砂に含まれる塩化ナトリウムの量は、800kg/m3×0.3%=2.4kg/m3となる。従って、2.4kgの塩化ナトリウムを175kgの練混ぜ水に加えれば、塩化ナトリウムを含まない陸砂を用いたとしても、海砂を用いた場合と同等の塩分含有量になる。そして、この練り混ぜ水1Lに含まれる塩化ナトリウム量は14gとなる。
以上より、練り混ぜ水1Lあたり45g(=31g+14g)の塩化ナトリウムを加えることで、塩分が含まれていない上水道水や陸砂を用いても、海水や海砂を用いたものと同等のコンクリートを得ることができる。なお、1m3のコンクリートにおける塩化ナトリウム量は、7.8kg(=0.045kg/m3×175m3)となる。また、塩化物イオン濃度は4.7kg/m3となる。
以下、各試験について説明する。まず圧縮強度試験について説明する。圧縮強度試験は、前述の人工海水を用いたケースと相模湾で採取した海水(実海水ともいう)を用いたケースについて行った。
人工海水を用いた試験では、図2に示す7種類のサンプルを作製した。サンプル1は、高炉セメントを上水道水で練り混ぜたものであり、比較例である。サンプル2は、高炉セメントを人工海水で練り混ぜたものである。サンプル3は、高炉セメントに亜硝酸塩系混和剤を加え、人工海水で練り混ぜたものである。サンプル4は、高炉セメントにシリカフュームを加え、人工海水で練り混ぜたものである。サンプル5は、高炉セメントに亜硝酸塩系混和剤とシリカフュームとを加え、人工海水で練り混ぜたものである。サンプル6は、高炉セメントに鋼繊維を加え、人工海水で練り混ぜたものである。サンプル7は、高炉セメントに鉄粉を加え、人工海水で練り混ぜたものである。
水結合材比(W/B)は、全てのサンプルで50%にした。細骨材率は、サンプル1〜3,6において45%、他のサンプルにおいて44.7%であった。人工海水は、全てのサンプルで170kg/m3とした。結合材は、サンプル1〜3,6において高炉セメントを340kg/m3とし、他のサンプルについて高炉セメントを340kg/m3、シリカフュームを34kg/m3とした。細骨材は、サンプル1〜3,6において794kg/m3とし、他のサンプルにおいて782kg/m3とした。粗骨材は、全てのサンプルで985kg/m3とした。
また、亜硝酸塩系混和剤に関しては、サンプル3,5において13L/m3添加した。鋼繊維に関しては、サンプル6で78kg/m3混入させた。鉄粉に関しては、サンプル7で78kg/m3混入させた。混和剤に関し、サンプル1〜3,6においてAE減水剤を結合材量の0.25%添加し、他のサンプルにおいて高性能AE減水剤を結合材量の1.00%添加した。また、空気量調整剤は、全てのサンプルにおいて結合材量の0.0035%添加した。
練り混ぜは、2軸強制練りミキサーを用いバッチ式で行った。練り混ぜ量は、1バッチあたり30Lとした。練り混ぜは、粗骨材、細骨材、高炉セメントをミキサーに投入して10秒間空練りを行った後、人工海水及び混和剤を投入して60秒間に亘って練り混ぜた。なお、他の材料については、高炉セメントや人工海水と共にミキサーに投入した。
練り混ぜを行った後、各サンプルについて供試体を作製した。供試体の作製はJIS A 1132にて行った。すなわち、練り混ぜ終了後の各サンプルを、所定の型枠に打ち込んで養生した。養生は、水中に浸す標準水中養生と、高温(50℃)の雰囲気に曝した高温気乾燥養生と、封緘養生の3種類行った。養生期間は、7日、28日、91日の3種類とした。そして、養生直後の供試体に対して圧縮強度試験を行った。圧縮強度試験は、JIS A 1108にて行った。試験結果を図2の右欄及び図3に示す。
相模湾の海水(実海水)を用いた試験では、図4(a)に示す6種類のサンプルを作製した。サンプル1´は、普通ポルトランドセメントを上水道水で練り混ぜたものであり、比較例である。サンプル2´は、高炉セメントを上水道水で練り混ぜたものであり、やはり比較例である。サンプル1は、普通ポルトランドセメントを実海水で練り混ぜたものである。サンプル2は、高炉セメントを実海水で練り混ぜたものである。サンプル3は、高炉セメントに亜硝酸塩系混和剤を加え、実海水で練り混ぜたものである。サンプル4は、高炉セメントに亜硝酸塩系混和剤とシリカフュームとを加え、実海水で練り混ぜたものである。
実海水に関し、塩化物イオン濃度は1.83%であった。そして、塩化物イオン濃度が4.7kg/m3となるように塩化ナトリウムを加えて練混ぜ水とした。これにより、陸砂を細骨材として用いているが、海砂を用いた場合と同等の塩分含有量に調整される。なお、他の条件については、人工海水を用いたサンプルと同様である。このため説明は省略する。また、練り混ぜの条件も人工海水を用いたサンプルと同様であるため、説明は省略する。
練り混ぜを行った後、各サンプルについて供試体を作製した。供試体の作製はJIS A 1132にて行った。養生条件に関し、この試験では封緘養生のみとし、養生期間は、7日、28日の2種類とした。そして、養生直後の供試体に対し、JIS A 1108に基づく圧縮強度試験を行った。試験結果を図4(a)の右欄及び図4(b)に示す。
圧縮強度試験の結果について述べる。まず、練混ぜ水や細骨材の種類の違いについて考察する。練混ぜ水として人工海水あるいは実海水を用いたサンプルは、練混ぜ水として上水道水を用いたサンプルよりも圧縮強度が高くなる傾向が確認された。
具体的には、人工海水の試験におけるサンプル2(高炉セメント,人工海水)にて、材齢7日の圧縮強度は、31.9N/mm2(標準水中)、26.1N/mm2(高温気乾)、29.8N/mm2(封緘)であり、材齢28日の圧縮強度は、39.2N/mm2(標準水中)、27.6N/mm2(高温気乾)、36.7N/mm2(封緘)であり、材齢91日の圧縮強度は、43.6N/mm2(標準水中)、26.1N/mm2(高温気乾)、41.4N/mm2(封緘)であった。また、実海水の試験におけるサンプル2(高炉セメント,実海水)にて、材齢7日の圧縮強度は、37.0N/mm2(封緘)、材齢28日の圧縮強度は、47.4N/mm2(封緘)であり、材齢91日の圧縮強度は、53.1N/mm2(封緘)であった。
これに対し、人工海水の試験におけるサンプル1(高炉セメント,上水道水)にて、材齢7日の圧縮強度は、21.9N/mm2(標準水中)、19.6N/mm2(高温気乾)、20.9N/mm2(封緘)であり、材齢28日の圧縮強度は、34.2N/mm2(標準水中)、19.2N/mm2(高温気乾)、30.6N/mm2(封緘)であり、材齢91日の圧縮強度は、48.7N/mm2(標準水中)、19.1N/mm2(高温気乾)、39.8N/mm2(封緘)であった。また、実海水の試験におけるサンプル2´(高炉セメント,上水道水)にて、材齢7日の圧縮強度は、23.1N/mm2(封緘)、材齢28日の圧縮強度は、35.7N/mm2(封緘)であり、材齢91日の圧縮強度は、51.6N/mm2(封緘)であった。
材齢28日までの試験結果について検討する。図3(a)〜(c)の最左欄と左から2番目の欄、並びに、図4(b)の左から2番目の欄と4番目の欄とを比較すると容易に理解できるが、材齢28日までの期間においては、上水道水と陸砂等を用いて練り混ぜたコンクリートよりも、海水と海砂を用いて練り混ぜたコンクリートの方が高い値を示している。このことは、海水と海砂を用いた海水練りコンクリートが、一般的なコンクリートよりも早期に硬化することを意味する。そして、海水を用いた各サンプルにおける材齢7日の圧縮強度の値は、上水道水を用いたサンプルにおける材齢28日の圧縮強度と同等かそれ以上の値である。
型枠の脱型には、コンクリートの圧縮強度が規定値(5N/mm2)以上になっていることが求められる。今回の試験結果からすれば、海水練りコンクリートの圧縮強度が規定値以上となるまでの養生期間は、一般的なコンクリートの養生期間よりも十分に短いと考えられる。従って、海水と海砂を用いて作製した海水練りコンクリートを型枠内に打設した場合、脱型までの養生期間を一般的なコンクリートよりも十分に短くできるといえる。
材齢91日の試験結果について検討する。比較例である人工海水試験のサンプル1に関し、標準水中養生の圧縮強度は48.7N/mm2と高い値を示した。また、封緘養生の圧縮強度は39.8N/mm2であった。これに対し、人工海水試験のサンプル2において、標準水中養生の圧縮強度は43.6N/mm2であり、封緘養生の圧縮強度は41.4N/mm2であった。サンプル2の圧縮強度は、サンプル1の標準水中養生での圧縮強度よりは低いものの、同サンプルの封緘養生での圧縮強度よりは高い値を示した。このことは、海水と海砂を用いて作製した海水練りコンクリートであっても、一般的なコンクリートと遜色ない圧縮強度を長期間に亘って発現することを意味する。すなわち、圧縮強度の観点でみた場合、一般的なコンクリートを海水練りコンクリートに置き換えることが可能であるといえる。
次に、高炉セメントに加えられる各種の材料、具体的には、亜硝酸塩系混和剤、シリカフューム(ポゾラン)、鋼繊維、及び、鉄粉について考察する。
圧縮強度の観点からすると、人工海水の試験におけるサンプル3〜7の圧縮強度は、同サンプル2の圧縮強度よりも高い値を示している。同様に、実海水の試験におけるサンプル3,4の圧縮強度は、同サンプル4の圧縮強度よりも高い値を示している。このことから、亜硝酸塩系混和剤等の上記材料を加えて練り混ぜることで、海水練りコンクリートの圧縮強度を高めることができるといえる。ここで、図3(a)を参照し、人工海水の試験における材齢91日でのサンプル3〜7の圧縮強度を比較すると、各サンプルの圧縮強度にそれほど大きな違いはみられない。
以上より、上記材料を加えて作製された海水練りコンクリートはいずれも、上記材料を加えずに作製された海水練りコンクリートよりも高い圧縮強度を示すといえる。そして、加える材料の種類を換えても、同等の圧縮強度が得られるといえる。
なお、図4(b)に示すように、実海水の試験において、亜硝酸塩系混和剤を加えたサンプル3の圧縮強度は材齢7日及び28日のいずれにおいても、亜硝酸塩系混和剤を加えないサンプル2の圧縮強度よりも高い値を示した。このことより、亜硝酸塩系混和剤を加えることで、早期より圧縮強度を増加させる効果が得られるといえる。また、亜硝酸塩系混和剤とシリカフュームを加えたサンプル4の圧縮強度は材齢7日及び28日のいずれにおいても、サンプル3の圧縮強度よりも高い値を示した。このことより、亜硝酸塩系混和剤にシリカフュームを加えることで、亜硝酸塩系混和剤のみを加えた場合よりも、海水練りコンクリートの圧縮強度をさらに増加させる効果が得られるといえる。
次に、高炉セメントと普通ポルトランドセメントとの違いについて考察する。ここでは、図4(a),(b)におけるサンプル1´,2´,1,2を比較する。上水道水を用いて練り混ぜた場合、材齢28日までは、普通ポルトランドセメントを用いたサンプル1´の方が高炉セメントを用いたサンプル2´よりも圧縮強度の値が高いが、材齢91日では高炉セメントを用いたサンプル2´の方が普通ポルトランドセメントを用いたサンプル1´よりも圧縮強度が高かった。一方、海水を用いて練り混ぜた場合、高炉セメントを用いたサンプル2の方が、普通ポルトランドセメントを用いたサンプル1よりも、全ての材齢において圧縮強度の値が高かった。
高炉セメントをはじめとする高炉系セメントは、アルカリ骨材反応の抑制に効果があることが知られている。当該反応では、ナトリウムイオン等のアルカリイオンとある種の骨材とが反応し、膨張性を示す。高炉系セメントを用いた場合、高炉系セメントがアルカリ骨材反応を抑制するので、海水や海砂に含まれる塩化ナトリウムを起源とするナトリウムイオンが多量に存在しても、コンクリートの膨張を抑制できると考えられる。従って、海水と海砂を用いる場合には、コンクリートを耐久化する上で、高炉系セメントの利用は有効である。
次に、図5(a)〜(c)を参照し、海水及び海砂を用いることによるセメント量の削減について考察する。
図5(a)のサンプルaは、人工海水の試験におけるサンプル1(上水道水を用いた比較例)であり、サンプルbは、同じくサンプル2(海水及び海砂相当の塩分含有)である。サンプルa,bは何れも、養生方法が水中標準養生であり、材齢が28日である。また、サンプルcは、サンプルbと同程度の圧縮強度を、上水道水を用いたサンプルで得る場合の仮想サンプルである。このサンプルcは、図5(b)に示すfc28の関係式(fc28=24.769×C/W−12.924)を用いて算出したものである。
同様に、図5(a)のサンプルd,eは人工海水の試験におけるサンプル1,2であり、材齢は28日である。サンプルd,eは、養生方法が封緘養生である点でサンプルa,bと異なっている。そして、サンプルfは、サンプルeと同程度の圧縮強度を、上水道水を用いたサンプルで得る場合の仮想サンプルである。このサンプルfは、図5(c)に示すfc28(fc28=22.162×C/W−11.564)の関係式を用いて算出したものである。
サンプルa,bは何れも、340kg/m3のセメントを170kg/m3の水(上水道水又は人工海水)で練り混ぜたものである。サンプルaの圧縮強度が34.2N/mm2であるのに対し、サンプルbの圧縮強度は39.2N/mm2と、サンプルaの圧縮強度よりも高い値を示した。
図5(b)に示すfc28の関係式に、fc28に39.2N/mm2を代入することで対応するセメント水比(C/W)を求めた。さらに、求めたセメント水比において、W=170kg/m3を代入し、サンプルcのセメント量を求めた。そして、サンプルcのセメント量は358kg/m3であった。このため、材齢28日で圧縮強度39.2N/mm2のコンクリート構造物を標準養生で構築する場合、上水道水と陸砂の組み合わせに換えて海水と海砂を用いることで、コンクリート1m3あたり18kgのセメントを節約できることが判った。
サンプルd〜fについても同様の手順で計算を行った。その結果、材齢28日で圧縮強度36.7N/mm2のコンクリート構造物を封緘養生で構築する場合、上水道水と陸砂の組み合わせに換えて海水と海砂を用いることで、コンクリート1m3あたり30kgのセメントを節約できることが判った。
次に耐久性試験について説明する。耐久性試験では、図6及び図7に示す配合で補強材入りのサンプルを11種類作製した。そして、促進腐食試験を繰り返し行うことで各サンプルの耐久性を試験した。なお、図7に示すサンプル1´は、普通ポルトランドセメントを上水道水で練り混ぜた比較例である。
使用材料について説明する。ここでは、先に説明した使用材料と異なる材料について説明し、同じ材料については説明を省略する。
練り混ぜ水に関し、海水とあるのは茅ヶ崎漁港で採取した相模湾の海水(実海水)である。この実海水における塩化ナトリウム濃度は3.02%(塩化物イオン濃度で1.83%)であった。細骨材に関し、この耐久性試験においても陸砂を使用し、海砂相当分の塩分量を塩化ナトリウムで追加した。防錆材には、三菱マテリアル株式会社製の商品名「アーマー#1000」を用い、このアーマー#1000を普通鉄筋の表面に塗装した。補強材は、コンクリート構築物の引張り強度を高めるものであり、この耐久性試験では、普通鉄筋と、エポキシ塗装鉄筋と、格子状炭素繊維(樹脂で固めたもの)の3種類を用いた。
各サンプルについて説明する。結合材に関し、サンプル1,1´,8では、普通ポルトランドセメントのみを用いた。比較例のサンプル1´では1m3あたり350kgとし、サンプル1,8では1m3あたり340kgとした。サンプル2〜6,9,10では、高炉セメントB種(普通ポルトランドセメント+高炉スラグ)を用い、その量は1m3あたり350kgとした。サンプル7,11では、高炉セメントB種とシリカフュームとを混合したものを用い、その量は1m3あたり350kg(高炉セメントB種:315kg,シリカフューム:35kg)とした。
サンプル3,7,10では、亜硝酸塩系混和剤としてラスナインを添加した。その量は1m3あたり13Lとした。犠牲陽極材に関し、サンプル4,5では鋼繊維を用い、サンプル6では鉄粉を用いた。鋼繊維及び鉄粉の混入量は何れも1m3あたり78kgとし、練混ぜ時に混入させた。補強材に関し、サンプル1,1´,5〜7では普通鉄筋を用い、サンプル2〜4ではエポキシ塗装鉄筋を用い、サンプル9〜11では炭素繊維を用いた。なお、サンプル5,6の普通鉄筋は、アーマー#1000が表面に塗装されることで、防錆処理が施されている。
そして、各サンプルを直径φが100mm、高さが200mmの型枠に流し込んでオートクレーブ養生装置にて養生させた。このオートクレーブ養生装置でオートクレーブ法による促進腐食試験を行った。すなわち、養生装置内の温度を180℃とするともに圧力を10気圧とし、8時間に亘って保持した。この操作を1サイクルとし、1,5,10,20,33の各サイクルにおいて、補強材の腐食状況を確認した。
なお、上記条件における1サイクルは、自然暴露で3年に相当する。従って、5サイクルは自然暴露で15年に相当し、10サイクルは自然暴露で30年に相当する。同様に、20サイクルは自然暴露で60年に相当し、33サイクルは自然暴露で99年に相当する。なお、この評価では、33サイクルにて補強材の腐食がなければ、自然暴露で100年以上の耐久性を有すると判断している。試験結果を、図8〜21に示す。
まず、促進1サイクルと5サイクルの試験結果について述べる。なお、1,5サイクルは、図6,7で説明したサンプル1、すなわち補強材が普通鉄筋のサンプルを対象にしている。
図8は、促進1サイクルの試験結果である。(a)は、補強材である普通鉄筋の周面における腐食部分を転写した図である。(a)において、グレーの部分が腐食部分に相当する。(b)は、腐食面積及びその比率を説明する図である。(c)は、供試体に埋設された2本の普通鉄筋における内側(供試体の円柱中心側)を撮影した写真であり、(d)は外側(供試体の円柱周面側)を撮影した写真である。
ここで、促進腐食試験によって得られる鉄筋腐食量(mg/cm2)と腐食開始後の経過年数とは相関があることが知られている。また、鉄筋の全周にわたり断面欠損が認められるか、鉄筋断面が1/6以上欠損している場合には、補強材としての機能が失われたとして、新たな鉄筋を溶接する必要があるとされている。
図8(a),(d)に示すように、促進1サイクルでは部分的に軽微な腐食が認められるが、鉄筋の全周にわたる断面欠損は生じていないといえる。また、図8(b)に示すように、腐食面積率も6〜7%程度である。以上のことから、3年程度の暴露では、塩分を多量に含んだ海水練りコンクリートに、補強材として普通鉄筋を埋設したとしても、補強材としての機能は失われないと判断できる。
図9は、促進5サイクルの試験結果を示す。(a),(b),(d)は図8と同様であるため、説明は省略する。(c)は、供試体を直径方向に2分割した状態の写真である。図9(a)に示すように、促進5サイクルを行ったことで、鉄筋の全周に亘って欠損が生じたことが判る。また、図8(d)と図9(d)の比較により、促進5サイクルでは1サイクルの時よりも腐食面積が拡大していることが判る。さらに、図9(b)に示すように、腐食面積率が30〜40%程度に上昇している。以上のことから、海水練りコンクリートに普通鉄筋を埋設した場合、15年程度が経過すると、補強材としての機能が失われてしまうと判断できる。
次に、促進10サイクルの試験結果について説明する。図10〜13は、促進10サイクルの試験結果を写真付きで示す図である。すなわち、図10はサンプル1〜3の試験結果を示し、図11はサンプル4〜6の試験結果を示す。同様に、図12はサンプル7〜9の試験結果を示し、図13はサンプル10,11の試験結果を示す。
図10に示すように、サンプル1において普通鉄筋の全周腐食及び腐食欠損が確認された。促進5サイクルよりも腐食が進行していることから、促進5サイクルの結果を裏付る結果になったといえる。
図11,12に示すように、防錆材を塗装した普通鉄筋を補強材として用いかつ犠牲陽極(鋼繊維,鉄粉)を施したサンプル5,6、並びに、普通鉄筋を補強材とし、かつ、亜硝酸塩系混和剤を用いたサンプル7に関し、いずれも普通鉄筋において部分腐食の開始が確認された。これらの塩分対策は、海水練りコンクリートで構築されたコンクリート構造物において、その耐用年数が30年程度までの短期であれば有効と考えられるが、30年以上である場合には不適であると推察された。
図10に示すように、エポキシ塗装鉄筋を補強材として用いたサンプル2、エポキシ塗装鉄筋を補強材としかつ亜硝酸塩系混和剤を用いたサンプル3に関し、エポキシ塗装鉄筋は健全であり、不具合は確認されなかった。また、図11に示すように、エポキシ塗装鉄筋を補強材として用いかつ犠牲陽極(鋼繊維)を施したサンプル4に関し、鋼繊維に腐食はみられたもののエポキシ塗装鉄筋は健全であった。
以上の結果より、海水練りコンクリートで構築されたコンクリート構造物に対し、補強材としてエポキシ塗装鉄筋を用いることで、耐用年数が30年以上のコンクリート構造物であっても十分に使用できることが確認できた。
図12,13に示すように、補強材として炭素繊維を用いたサンプル8〜11については、いずれも良好な結果が得られた。すなわち、普通ポルトランドセメントを海水で練り混ぜ、炭素繊維を補強材としたサンプル8については、健全であることが確認できた。高炉セメントを海水で練り混ぜ、炭素繊維を補強材としたサンプル9についても、同じく健全であることが確認できた。高炉セメントに亜硝酸塩系混和剤を添加して海水で練り混ぜ、炭素繊維を補強材としたサンプル10については、健全であることが確認できた。高炉セメントにポゾランを添加して海水で練り混ぜ、炭素繊維を補強材としたサンプル11については、コンクリートが堅硬かつ新鮮であった。
以上の結果より、海水練りコンクリートで構築されたコンクリート構造物に対し、補強材として炭素繊維を用いることで、耐用年数が30年以上のコンクリート構造物であっても十分に使用できることが確認できた。
次に、促進20サイクルの試験結果について説明する。図14〜17は、促進20サイクルの試験結果を写真付きで示す図である。すなわち、図14はサンプル1〜3の試験結果を示し、図15はサンプル4〜6の試験結果を示す。同様に、図16はサンプル7〜9の試験結果を示し、図17はサンプル10,11の試験結果を示す。
図14,16に示すように、普通鉄筋を用いたサンプル1,7に関し、全周腐食が確認された。また、図15に示すように、防錆材を塗装した普通鉄筋を用いたサンプル5,6に関し、部分腐食が確認された。また、サンプル5,6については、犠牲陽極の腐食も確認された。サンプル5〜7に関し、促進10サイクルの試験結果よりも腐食の進行が確認できた。
以上の結果より、海水練りコンクリートで構築されたコンクリート構造物に対し、補強材として普通鉄筋を用いた場合には、防錆材を鉄筋表面に塗装しても、また亜硝酸塩系混和剤や犠牲陽極を用いたとしても、60年程度の耐用年数が想定される構造物には不適であることが確認された。この結果は、促進10サイクルの試験結果を裏付けるものである。
図14,15に示すように、補強材としてエポキシ塗装鉄筋を用いたサンプル2〜4に関し、いずれも促進10サイクルの試験と同様な結果が得られた。すなわち、サンプル2,3については健全であり、サンプル4については鋼繊維の腐食が確認されたもののエポキシ塗装鉄筋は健全な状態を保っていた。
以上の結果より、海水練りコンクリートで構築されたコンクリート構造物に対し、補強材としてエポキシ塗装鉄筋を用いることで、耐用年数が60年以上のコンクリート構造物であっても十分に使用できることが確認できた。
図16,17に示すように、補強材として炭素繊維を用いたサンプル8〜11については、いずれも良好な結果が得られた。特に、サンプル9,10ではコンクリートが堅硬であることが確認され、サンプル11ではコンクリートが堅硬かつ新鮮であることが確認された。
以上の結果より、海水練りコンクリートで構築されたコンクリート構造物に対し、補強材として炭素繊維を用いることで、耐用年数が60年以上のコンクリート構造物であっても十分に使用できることが確認できた。
次に、促進33サイクルの試験結果について説明する。図18〜21は、促進33サイクルの試験結果を写真付きで示す図である。すなわち、図18はサンプル1〜3の試験結果を示し、図19はサンプル4〜6の試験結果を示す。同様に、図20はサンプル7〜9の試験結果を示し、図21はサンプル10,11の試験結果を示す。
図18,20に示すように、普通鉄筋を用いたサンプル1,7に関し、全周腐食が確認された。特にサンプル1では、鉄筋に欠損も認められた。また、図19に示すように、防錆材を塗装した普通鉄筋を用いたサンプル5,6に関しても、全周腐食が確認された。そして、サンプル5に関しては、シリカフュームの腐食と供試体表面のひび割れが確認された。また、サンプル6に関しては、鉄粉の腐食、供試体表面の点錆、スケーリング(表面剥離)が確認された。この結果も、促進10サイクルの試験結果を裏付けるものである。
図18,19に示すように、補強材としてエポキシ塗装鉄筋を用いたサンプル2〜4に関し、亜硝酸塩系混和剤を用いたサンプル3については健全であることが確認された。これに対し、高炉セメントとエポキシ塗装鉄筋の組み合わせであるサンプル2については、エポキシ塗装鉄筋の節部に点錆が認められた。犠牲陽極(鋼繊維)を施したサンプル4については、鋼繊維に腐食が認められるとともに、エポキシ塗装鉄筋の節部と一般部とに点錆及び孔食が認められた。さらに、供試体表面のひび割れも確認された。
以上の結果より、海水練りコンクリートで構築されたコンクリート構造物に対し、補強材としてエポキシ塗装鉄筋を用いた場合には、亜硝酸塩系混和剤と組み合わせることで、耐用年数が100年以上のコンクリート構造物であっても十分に使用できることが確認できた。しかし、犠牲陽極を施した場合や高炉セメントのみの場合には、100年程度の耐用年数が想定される構造物には不適であることが確認された。
図20,21に示すように、補強材として炭素繊維を用いたサンプル8〜11については、いずれも良好な結果が得られた。特に、サンプル9,10ではコンクリートが堅硬であることが確認され、サンプル11ではコンクリートが堅硬かつ新鮮であることが確認された。
以上の結果より、海水練りコンクリートで構築されたコンクリート構造物に対し、補強材として炭素繊維を用いることで、耐用年数が100年以上のコンクリート構造物であっても十分に使用できることが確認できた。
ここで、補強材としてエポキシ塗装鉄筋を用いた場合の耐用年数について検討する。図22は、拡散理論に基づいて計算されたエポキシ塗装鉄筋の内部に存在する塩化物イオン量の経時変化を示す。この計算では、コンクリートに内在する塩化物イオンの量を5kg/m3とし、エポキシ塗装鉄筋における塩化物イオンの拡散係数を2.00×10−6cm2/yとし、エポキシ塗装鉄筋の被膜の厚さを0.02cmとした。
エポキシ塗装鉄筋の内部に存在する塩化物イオン量と鉄筋腐食量との間には相関がある。そして、エポキシ塗装鉄筋を補強材として機能させるためには、エポキシ塗装鉄筋の内部に存在する塩化物イオン量を1.200kg/m3以下にすることが求められる。図22の計算結果によれば、塩化物イオン量が1.200kg/m3に到達する経過年数は70年強である。そうすると、エポキシ塗装鉄筋を補強材として用いた場合、耐用年数が70年以下のコンクリート構造物であれば使用できると推察できる。
次に透水性試験について説明する。透水性試験では、図29に示す6種類のサンプルを作成した。各サンプルは、図6,7で説明したサンプルと同じ配合である。すなわち、サンプル1´は、普通ポルトランドセメントを上水道水で練り混ぜた比較例である。サンプル1は、普通ポルトランドセメントを実海水で練り混ぜたものである。サンプル2は、高炉セメントを実海水で練り混ぜたものである。サンプル3は、高炉セメントに亜硝酸塩系混和剤を加え、実海水で練り混ぜたものである。サンプル7は、高炉セメントに亜硝酸塩系混和剤とシリカフュームとを加え、実海水で練り混ぜたものである。なお、サンプル2´は、高炉セメントを上水道水で練り混ぜた比較例である。そして、海砂の保有する塩分量は、塩化ナトリウムの所要量を加えることで調整した。
各サンプルを直径φが100mm、高さが200mmの型枠に流し込み、材齢28日まで封緘養生して供試体を作製した。作製した供試体を加圧容器内にセットして加圧水を供給した。加圧水が供給された供試体を、軸方向に沿って半割り(2分割)し、加圧水の供試体内部への浸透深さを測定した。測定した浸透深さに基づいて拡散係数を求め、求めた拡散係数に基づいて推定透水係数を求めた。なお、1種類のサンプルについて、3つの供試体を作製し、3つの供試体における拡散係数の平均値を、そのサンプルにおける拡散係数とした(図29(a),(b)を参照)。
加圧水の浸透状況を示す断面写真を図23〜28に示す。なお、各図において、上段、中段、下段のそれぞれに3つの供試体の断面写真を示している。
図23はサンプル2´(高炉セメント,水道水)の断面写真であり、図24はサンプル2(高炉セメント,実海水)の断面写真である。なお、図24の上段において、加圧水の浸透方向と浸透深さを図示している。図25はサンプル3(高炉セメント,実海水,亜硝酸塩系混和剤)の断面写真であり、図26はサンプル7(高炉セメント,実海水,亜硝酸塩系混和剤,シリカフューム)の断面写真である。図27はサンプル1´(普通ポルトランドセメント,水道水)の断面写真であり、図28はサンプル1(普通ポルトランドセメント,実海水)の断面写真である。
図29(a)に示すように、拡散係数の平均値は、サンプル2´(高炉セメント,水道水)が8.16×10−2cm2/sec、サンプル2(高炉セメント,実海水)が4.82×10−2cm2/sec、サンプル3(高炉セメント,実海水,亜硝酸塩系混和剤)が2.11×10−2cm2/secであった。また、サンプル7(高炉セメント,実海水,亜硝酸塩系混和剤,シリカフューム)が1.60×10−3cm2/sec、サンプル1´(普通ポルトランドセメント,水道水)が3.51×10−2cm2/sec、サンプル1(普通ポルトランドセメント,実海水)が3.96×10−2cm2/secであった。
この透水試験により、次の点を確認することができた。第1に、高炉セメントの使用を前提とし、練混ぜ水に海水を用いた場合、上水道水を用いた場合に比べ、拡散係数(透水係数)を低減することができる。第2に、練混ぜ水に海水を用いた場合でも、普通ポルトランドセメントを用いた場合には、上水道水を用いた場合に比べ、拡散係数(透水係数)に顕著な違いは認められない。第3に、高炉セメントの使用を前提とし、亜硝酸塩系混和剤やシリカフュームを混入させることは、海水を練混ぜ水に用いた場合でも、拡散係数(透水係数)の低減に極めて有効である。なお、シリカフュームに代えて、フライアッシュを用いても拡散係数を低減できると解される。要するに、ポゾランを混入すれば同様の作用効果が得られると解される。
一般に、高炉セメントは上水道水で混練した場合、長期材齢(91日)において高炉スラグの効果で緻密になり、拡散係数を小さくできるといわれてきた。この透水試験によって、海水を練混ぜ水として用い海砂を細骨材として用いれば、材齢28日であっても拡散係数を小さくできることが確認できた。
以上説明した圧縮強度試験、耐久性試験、及び、透水性試験の結果に基づき、次のことが判った。
練混ぜ水に海水を、細骨材に海砂を用いた海水練りコンクリートでは、セメント成分として高炉セメントB種を用いると、緻密化が図れるため有効といえる。とりわけ、材齢28日までの期間においては、圧縮強度を上水道水を用いて作製したコンクリートよりも高くすることができる。これにより、早期の脱型が可能となる。そして、高炉セメントがアルカリ骨材反応を抑制するので、海水や海砂に含まれる塩化ナトリウムを起源とするナトリウムイオンが多量に存在しても、コンクリートの膨張を抑制できる。さらに、補強材を用いているので、必要な引張強度を確保することができる。
以上より、海水及び海砂を用いても、必要な耐久性を備えたコンクリート構造物を構築することができる。そして、海水や海砂は、上水道水の確保が困難な離島や沿岸地域であっても現地で容易に調達できるため、このような地域でコンクリート構造物を構築する場合に特に有用である。例えば、資材の輸送や上水の確保に際して、省エネルギーが実現でき、コストダウンが図れる。
補強材として、炭素繊維(本実施形態では格子状炭素繊維)と、普通鉄筋の表面にエポキシ樹脂を塗装したエポキシ塗装鉄筋と、普通鉄筋に防錆材(アーマー#1000)を塗装した防錆材塗装鉄筋の3種類を比較し、コンクリート構造物とした際に耐用年数が異なることを確認した。そして、補強材として炭素繊維を用いた海水練りコンクリートによって構築された構造物は、耐用年数が100年程度の長期間であっても使用に耐えると推定された。また、補強材としてエポキシ塗装鉄筋を用いた海水練りコンクリートによって構築された構造物は、耐用年数が70年程度の中期間であっても使用に耐えると推定された。さらに、補強材として防錆材塗装鉄筋を用いた海水練りコンクリートによって構築された構造物は、耐用年数が30年程度の短期間であっても使用に耐えると推定された。
従って、耐用年数が長期間の場合に補強材を炭素繊維とし、中期間の場合に補強材をエポキシ塗装鉄筋とし、短期間の場合に補強材を防錆材塗装鉄筋とする設計方法を採用することにより、用途に適した耐用年数のコンクリート構造物を設計できる。
また、海水練りコンクリートにおいて、ラスナインなどの亜硝酸塩系混和剤を含む場合には、塩化物イオンによる腐食等の不具合も抑制できるとともに、硬化後のコンクリートにおける拡散係数を低下させることができることが判った。これにより、海水や海風に起因する塩分、あるいは、炭酸ガスなどのコンクリート内部への侵入など、外部からの有害因子の侵入を抑制できる。
また、海水練りコンクリートにおいて、シリカフュームなどのポゾランを含む場合にも、硬化後のコンクリートにおける拡散係数を低下させることができることが判った。従って、亜硝酸塩系混和剤を含む場合と同様に、海水や海風に起因する塩分、あるいは、炭酸ガスなどのコンクリート内部への侵入など、外部からの有害因子の侵入を抑制できる。
ところで、以上の実施形態に関する説明は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定するものではない。本発明は、その趣旨、目的を逸脱することなく、変更、改良され得るとともに、本発明にはその等価物が含まれることは勿論である。
例えば、亜硝酸系混和剤に関し、多価アルコールニトロエステルを主成分とするものを例示したが、亜硝酸イオンを供給できれば、他の種類の亜硝酸系混和剤であっても同様の作用効果を奏する。例えば、亜硝酸カルシウムを主成分とするものや亜硝酸リチウムを主成分とするものを用いてもよい。
また、高炉系セメントに関し、高炉セメントB種以外のものであってもよい。要するに、セメント成分として高炉スラグが含まれていれば、他の種類のセメントであっても同様の作用効果を奏する。