<第1の実施形態>
まず、図1を用いて画像形成装置としてのプリンター1の全体の構成について説明する。図1は、本発明の第1の実施形態に係るプリンターの構成の概略を示す模式図である。
プリンター1は、箱型形状のプリンター本体2を備えており、プリンター本体2の下部には記録体としての用紙(図1では図示せず)を収納した給紙カセット3が設けられ、プリンター本体2の上部には第1の排紙トレイ4が設けられ、第1の排紙トレイ4の上方には第2の排紙トレイ5が設けられている。
プリンター本体2の内部には、像担持体としての中間転写ベルト6が複数のローラー間に架設され、中間転写ベルト6の下方には、レーザー・スキャニング・ユニット(LSU)で構成される露光器7が配置され、中間転写ベルト6の下部に沿って4個の画像形成部8がトナーの色ごとに設けられている。
各画像形成部8には、感光体ドラム9が回転可能に設けられており、感光体ドラム9の周囲には、帯電器10と、現像器11と、一次転写部12と、クリーニング装置13と、除電器14とが、一次転写のプロセス順に配置されている。
現像器11の下部には一対の攪拌ローラー15が設けられ、攪拌ローラー15の斜め上方には磁気ローラー16が設けられ、磁気ローラー16の斜め上方には現像ローラー17が設けられている。現像器11の上方には、各画像形成部8と対応する4個のトナーコンテナ18が、トナーの色ごとに設けられている。
プリンター本体2の一側(図面上右側)には、用紙の搬送経路20が上下方向に設けられている。つまり、本実施形態のプリンター1は、所謂「縦搬送」である。搬送経路20の上流端には給紙部21が設けられ、搬送経路20の中流部には中間転写ベルト6の一端(図面上右端)に二次転写部22が設けられ、搬送経路20の下流部には定着装置23が設けられている。
搬送経路20は、定着装置23よりも下流側の部分において上下に分岐している。下側の分岐経路24の下流端部には第1排紙部25が第1の排紙トレイ4の上方一側(図面上、上方右側)に設けられ、上側の分岐経路26の下流端部には第2排紙部27が第2の排紙トレイ5の上方一側(図面上、上方右側)に設けられている。第2排紙部27は、搬送経路20の一側(図面上右側)に設けられて両面印刷用の用紙を搬送する反転経路28に接続され、反転経路28は、搬送経路20の二次転写部22よりも上流側の部分と接続されている。
次に、このような構成を備えたプリンター1の画像形成動作について説明する。プリンター1に電源が投入されると、各種パラメーターが初期化され、定着装置23の温度設定等の初期設定が実行される。そして、プリンター1に接続されたコンピューター等から画像データが入力され、印刷開始の指示がなされると、以下のようにして画像形成動作が実行される。
まず、帯電器10によって感光体ドラム9の表面が帯電された後、露光器7からのレーザー光(矢印P参照)により感光体ドラム9に対して画像データに対応した露光が行われ、感光体ドラム9の表面に静電潜像が形成される。次に、この静電潜像を、現像器11がトナーにより対応する色のトナー像に現像する。このトナー像は、一次転写部12において中間転写ベルト6の表面に一次転写される。以上の動作を各画像形成部8が順次繰り返すことによって、中間転写ベルト6上にフルカラーのトナー像が形成される。なお、感光体ドラム9上に残留したトナー及び電荷は、クリーニング装置13及び除電器14によって除去される。
一方、給紙部21によって給紙カセット3又は手指しトレイ(図示せず)から取り出された用紙は、上記した画像形成動作とタイミングを合わせて二次転写部22へと搬送され、二次転写部22において、中間転写ベルト6上のフルカラーのトナー像が用紙に二次転写される。トナー像を二次転写された用紙は、搬送経路20を下流側へと搬送されて定着装置23に進入し、この定着装置23において用紙にトナー像が定着される。トナー像が定着された用紙は、下側の分岐経路24又は上側の分岐経路26のいずれかに進入する。下側の分岐経路24に進入した用紙は、第1排紙部25から第1の排紙トレイ4上に排出される。上側の分岐経路26に進入した用紙は、第2排紙部27から第2の排紙トレイ5上に排出されるか、又は、両面印刷のために反転経路28へと搬送される。
次に、図2〜図5を用いて、定着装置23について詳細に説明する。なお、図3に示される矢印Frは、各部材の正面側を示している。
定着装置23は、ユニット化されており、プリンター本体2に対して着脱可能となっている。図2に示されるように、定着装置23は、定着ローラー31と、定着ローラー31に周設される定着ベルト32と、定着ベルト32の下方に設けられる第1、第2サーミスター33、34と、定着ベルト32の左側(片側)を覆うように設けられるIH定着ユニット35と、定着ベルト32の右方に設けられる回転部材としての加圧ローラー36と、加圧ローラー36の下方に設けられる第3、第4サーミスター37、38と、加圧ローラー36の前後両側、上下両側及び右側を覆うように設けられる囲繞部材としてのフレーム部材40と、フレーム部材40の右下方に設けられる吹き出し口41と、吹き出し口41に接続される送風手段としての冷却ファン42と、加圧ローラー36の左下方に配置される進入ガイド43と、定着ベルト32の右上方と加圧ローラー36の左上方にそれぞれ配置される一対の搬送ガイド44と、各搬送ガイド44の更に上方に配置される一対の搬送ローラー45と、を備えている。なお、図3では、IH定着ユニット35、フレーム部材40、搬送ガイド44及び搬送ローラー45の記載が省略されている。
定着ローラー31は、前後方向に長い形状を成している。定着ローラー31は、例えば外径40mmであり、円筒状の芯材と、この芯材に周設される弾性層と、によって構成されている。定着ローラー31の芯材は、例えば、ステンレスやアルミニウム等の金属によって形成されている。定着ローラー31の弾性層は、例えば、厚さ10mmのシリコンスポンジによって形成されている。
定着ベルト32は、前後方向に長い形状を成している。定着ベルト32は、例えば、基材と、この基材に周設される弾性層と、この弾性層を被覆する離型層と、によって構成されている。定着ベルト32の基材は、例えば、ニッケル等の金属によって形成されている。定着ベルト32の弾性層は、例えば、厚さ0.2mmのシリコンゴムによって形成されている。定着ベルト32の離型層は、例えば、厚さ0.03mmのPFAチューブによって形成されている。
図3に示されるように、定着ベルト32の外周面49の前部から後部に亘る部分(二点鎖線P−Pの間の部分)には、第1サイズの用紙(例えばA4Rサイズ(幅210mm)の用紙)が通過する第1サイズ通過領域L1が形成され、第1サイズ通過領域L1の前後両側(二点鎖線P−Pの外側の部分。第1サイズ通過領域L1外)には、第1サイズの用紙より前後幅が大きい第2サイズの用紙(例えばA3サイズの用紙)が通過する第1サイズ非通過領域L2が形成されている。
図3に示されるように、第1サーミスター33は、定着ベルト32の前後方向中央に配置されており、定着ベルト32の第1サイズ通過領域L1に設けられている。第1サーミスター33は、温度制御用のサーミスターであって、定着ベルト32の外周面49と所定の間隔を介して配置される非接触式の検出手段である。
第2サーミスター34は、定着ベルト32の前端に配置されており、定着ベルト32の第1サイズ非通過領域L2に設けられている。第2サーミスター34は、温度上昇検出用のサーミスターであり、定着ベルト32の外周面49に接触する接触式の検出手段である。
図2に示されるように、IH定着ユニット35は、定着ベルト32の左側を覆う円弧状のボビン46と、ボビン46に支持されるIHコイル47と、IHコイル47を覆うように設けられるアーチコア48と、アーチコア48の両側に配置されるサイドコア50と、を備えている。
ボビン46の上端には、上方に向かって延出する上端延出部51が設けられ、ボビン46の下端には、左下方に向かって延出する下端延出部52が設けられている。IHコイル47は、定着ベルト32の外側に配置されている。即ち、本実施形態のIH定着ユニット35は、所謂「外包IH」である。アーチコア48とサイドコア50は、例えばフェライトによって構成されており、IHコイル47が発生させた磁束を通過させる磁路を形成するようになっている。なお、本実施形態のIH定着ユニット35は、磁束切り替え手段を有していない。
加圧ローラー36は、前後方向に長い形状を成している。加圧ローラー36は、例えば外径30mmであり、円筒状の芯材と、この芯材に周設される弾性層と、この弾性層を被覆する離型層と、によって構成されている。加圧ローラー36の芯材は、例えば、ステンレスやアルミニウム等の金属によって形成されている。加圧ローラー36の弾性層は、例えば、厚さ2mmのシリコンゴムによって形成されている。加圧ローラー36の離型層は、例えば、厚さ0.05mmのPFAチューブによって形成されている。加圧ローラー36は、付勢手段(図示せず)の付勢力によって定着ベルト32に圧接しており、定着ローラー31及び定着ベルト32の回転に伴って定着ローラー31及び定着ベルト32とは逆方向に従動回転するように構成されている。
定着ベルト32と加圧ローラー36の間には、用紙の搬送経路20に沿って定着ニップ53が形成されており、この定着ニップ53を用紙が通過することで、用紙上のトナー像が加熱及び加圧されて用紙に定着されるように構成されている。本実施形態では、上記定着ニップ53において前後幅の異なる複数サイズの用紙に対してトナー像を定着させることができるようになっている。
図3に示されるように、加圧ローラー36の外周面54の前部から後部に亘る部分(二点鎖線P−Pの間の部分)には、第1サイズの用紙が通過する第1サイズ通過領域M1が形成され、第1サイズ通過領域M1の前後両側(二点鎖線P−Pの外側の部分。第1サイズ通過領域M1外)には、第1サイズの用紙より前後幅が大きい第2サイズの用紙が通過する第1サイズ非通過領域M2が形成されている。
図3に示されるように、第3サーミスター37は、加圧ローラー36の前後方向中央に配置されており、加圧ローラー36の第1サイズ通過領域M1に設けられている。第3サーミスター37は、温度制御用のサーミスターであって、加圧ローラー36の外周面54と所定の間隔を介して配置される非接触式の検出手段である。
第4サーミスター38は、加圧ローラー36の前端に配置されており、加圧ローラー36の第1サイズ非通過領域M2に設けられている。第4サーミスター38は、温度上昇検出用のサーミスターであり、加圧ローラー36の外周面54に接触する接触式の検出手段である。
図2に示されるように、フレーム部材40は、内側(左側)が開口された矩形の箱型形状を成しており、加圧ローラー36からの放熱を低減するために加圧ローラー36を外部と遮断している。フレーム部材40は、外部への放熱を極力減少させるために、板金によって構成されている。フレーム部材40の右下部には、外気を導入するための開口部55が設けられている。開口部55の内周には、内側(左側)に向かって突出する筒状のガイド部材56が固定されている。ガイド部材56は、内側(左側)に向かって上下幅が縮幅する先細り形状を成している。図4に示されるように、ガイド部材56の先端部57(左端部)と加圧ローラー36の外周面54との距離Xは約3mmに設定されている。
図4に示されるように、吹き出し口41は、先端部58側(本実施形態では左側)に向かって上下幅が縮幅する先細り形状を成しており、先端部58から加圧ローラー36の外周面54に向かって冷却風を吹き付けられるようになっている。吹き出し口41からの冷却風の吹き付け方向aは、冷却風が吹き付けられる部分b(より正確には、冷却風が吹き付けられる部分の中心点)における加圧ローラー36の外周面54の接線方向cと垂直な方向(冷却風が吹き付けられる部分bにおける加圧ローラー36の外周面54の法線方向)になっている。
吹き出し口41の先端部58は、フレーム部材40の開口部55に挿入されている。吹き出し口41の先端部58は、ガイド部材56の上壁部60及び下壁部61とは所定の間隔を介した状態でガイド部材56内に挿入されている。吹き出し口41の先端部58とガイド部材56の上壁部60の間及び吹き出し口41の先端部58とガイド部材56の下壁部61の間には、フレーム部材40の内外を連通させる引き込み口62がそれぞれ形成されている。引き込み口62は、吹き出し口41の上側と下側に吹き出し口41と隣接して設けられている。吹き出し口41の先端部58と加圧ローラー36の外周面54との距離Yは約5mmに設定されている。吹き出し口41の開口長さZは3mmに設定されている。
図3に示されるように、吹き出し口41は、加圧ローラー36の各第1サイズ非通過領域M2と対応する位置(本実施形態では加圧ローラー36の前後両端)に、それぞれ設けられている。吹き出し口41の開口幅Wは40mmに設定されている。吹き出し口41内の空間には、左右方向(冷却風の搬送方向)に直線状に延びる複数個のリブ63が前後に所定の間隔をおいて設けられている。
冷却ファン42は、例えば、直径50mmのシロッコファンである。図3に示されるように、冷却ファン42は、加圧ローラー36の前後方向中央に設けられている。冷却ファン42は、前後一対の風路部材64を介して各吹き出し口41と接続されており、冷却ファン42から各吹き出し口41に冷却風を供給可能となっている。図2に示されるように、冷却ファン42には吸気口65が設けられている。
図2に示されるように、進入ガイド43は、定着ニップ53よりも上流側且つ搬送経路20の右側に配置されている。進入ガイド43は、上方に向かって僅かに左方に傾斜する方向に延びており、進入ガイド43の上端部は加圧ローラー36の外周面54に近接している。
左側の搬送ガイド44は、定着ニップ53の下流側且つ搬送経路20の左側に配置されている。左側の搬送ガイド44には、定着ベルト32の外周面49に接触又は近接する複数の分離爪(図示せず)が設けられていても良い。右側の搬送ガイド44は、定着ニップ53の下流側且つ搬送経路20の右側に配置されており、搬送経路20を挟んで左側の搬送ガイド44と対向している。
一対の搬送ローラー45は、各搬送ガイド44よりも下流側に配置されている。一対の搬送ローラー45の間には、用紙の搬送経路20に沿って搬送ニップ66が形成されている。
次に、図5を用いて、プリンター1の制御システムについて説明する。
プリンター1には、CPU(制御手段)70が設けられている。CPU70は、ROM、RAM等の記憶装置で構成される記憶部71と接続されており、記憶部71に格納された制御プログラムや制御用データに基づいて、CPU70がプリンター1の各部の制御を行うように構成されている。
CPU70は、プリンター本体2に設けられた操作表示部72と接続されている。操作表示部72には、例えば、スタートキー、ストップ/クリアキー、電源キー、テンキー、タッチパネル等の操作キーが設けられ、ユーザーが各操作キーを操作すると、その操作指示がCPU70に出力されるように構成されている。
CPU70は、第1サーミスター33、第2サーミスター34、第3サーミスター37及び第4サーミスター38と接続されている。そして、第1サーミスター33や第2サーミスター34が定着ベルト32の温度を検出したり、第3サーミスター37や第4サーミスター38が加圧ローラー36の温度を検出したりすると、各サーミスター33、34、37、38からの検出信号がCPU70に出力されるようになっている。
CPU70は、コイル駆動部73を介してIHコイル47と接続されている。そして、CPU70からの駆動指令信号に基づいて、コイル駆動部73からIHコイル47に高周波電流が流されることでIHコイル47に高周波磁界が発生するとともに、この高周波磁界によって定着ベルト32が加熱されるように構成されている。
CPU70は、冷却ファン42と接続されており、各サーミスター33、34、37、38からの検出信号に基づいて、CPU70が冷却ファン42の稼働と停止を切り替えるように構成されている。
CPU70は、モーター等の駆動手段74を介して定着ローラー31と接続されており、CPU70からの駆動指令信号に基づいて、駆動手段74が定着ローラー31を回転させるように構成されている。
以上のように構成された定着装置23において、第1サイズの用紙S(図2、図3参照)に対してトナー像を定着させる場合の冷却風の作用について、以下に説明する。
第1サイズの用紙Sに対するトナー像の定着が繰り返し行われると、定着ベルト32及び加圧ローラー36の温度が上昇する。特に、定着ベルト32の第1サイズ非通過領域L2の温度が第1サイズ通過領域L1の温度に対して上昇すると共に、加圧ローラー36の第1サイズ非通過領域M2の温度が第1サイズ通過領域M1の温度に対して上昇する。これに伴って、第4サーミスター38によって検出される加圧ローラー36の第1サイズ非通過領域M2の温度が200度以上になると、CPU70が冷却ファン42を稼働させる。
これに伴って、吸気口65(図2参照)から冷却ファン42に冷却風が取り込まれる。この冷却風は、冷却ファン42から風路部材64を介して各吹き出し口41に供給され、各吹き出し口41の先端部58から回転中の加圧ローラー36の第1サイズ非通過領域M2に向かって吹き付けられる。これに伴って、加圧ローラー36の第1サイズ非通過領域M2の付近に滞留する高温の空気が吹き飛ばされる。これにより、加圧ローラー36の第1サイズ非通過領域M2が冷却されるとともに、加圧ローラー36からの伝熱によって定着ベルト32の第1サイズ非通過領域L2も冷却される。そのため、加圧ローラー36及び定着ベルト32の温度分布が均一化される。なお、本実施形態では、先細り形状の吹き出し口41によって冷却風を加速させることが可能となっており、吹き出し口41の先端部58付近における冷却風の最大風速は、約12m/sである。
更に、上記のように加圧ローラー36の第1サイズ非通過領域M2の付近に滞留する高温の空気が吹き飛ばされることで、吹き出し口41の先端部58と加圧ローラー36の外周面54との間の空間に負圧が発生する。これに伴って、引き込み口62を介してフレーム部材40の外部から内部に空気が引き込まれ、フレーム部材40の内外の換気が行われる。これに伴って、加圧ローラー36の冷却効果を更に高めることができる。
また、引き込み口62を介してフレーム部材40の外部から内部に引き込まれた空気は、吹き出し口41からの冷却風とともに加圧ローラー36の第1サイズ非通過領域M2に吹き付けられる。これにより、加圧ローラー36の第1サイズ非通過領域M2が更に冷却されるとともに、加圧ローラー36からの伝熱によって定着ベルト32の第1サイズ非通過領域L2も更に冷却される。
特に、本実施形態では、図4に示されるように、ガイド部材56の先端部57と加圧ローラー36の外周面54との距離X(約3mm)が、吹き出し口41の先端部58と加圧ローラー36の外周面54との距離Y(約5mm)よりも短い。つまり、吹き出し口41よりも加圧ローラー36と接近する位置までガイド部材56が延出している。そのため、引き込み口62を介して引き込まれた空気を加圧ローラー36の近傍まで案内することができ、加圧ローラー36の冷却効果を更に高めることができる。また、ガイド部材56を用いてフレーム部材40の外部から内部に空気を効率的に引き込むことが可能となっており、加圧ローラー36の冷却効果をより一層高めることができる。
例えば、第1サイズ(A4Rサイズ)の用紙を50枚/分で飽和温度に達するまで約30分間連続通紙した際に、加圧ローラー36に吹き出し口41からの冷却風のみを吹き付ける場合には加圧ローラー36の第1サイズ非通過領域M2の温度は最大235℃にまで達する。これに対して、本実施形態の構成の場合、加圧ローラー36の第1サイズ非通過領域M2の温度を225℃以下まで抑制できることが分かっている。
また、本実施形態では、第4サーミスター38からの検出信号に基づいて冷却ファン42の稼働と停止をCPU70が切り替える構成を採用している。そのため、加圧ローラー36の温度に応じて冷却ファン42の稼働と停止を切り替えることが可能となり、加圧ローラー36の温度が過度に上昇したり低下したりするのを抑制することが可能となる。
また、吹き出し口41を先細り形状とすることで、冷却風を高速化することが可能となり、温度の高い空気を冷却風によって吹き飛ばす効果を高めることができる。また、吹き出し口41を先細り形状とすることで、スペースの節約にも繋がる。
本実施形態では、加圧ローラー36の第1サイズ非通過領域M2にのみ冷却風を吹き付ける場合について説明したが、他の異なる実施形態では、加圧ローラー36の第1サイズ通過領域M1と第1サイズ非通過領域M2の両方(即ち、加圧ローラー36の外周面54の全域)に冷却風を吹き付けても良い。このような構成を採用することで、加圧ローラー36の過熱化を防止することができるため、用紙中の空気や水分が膨張して用紙の表面が膨らんでしまう現象(所謂「ペーパーブリュースター」)の発生や、用紙中の水分が用紙上のトナーを持ち上げてしまう現象(所謂「トナーブリュースター」)の発生を防止することが可能となる。
本実施形態では、定着ベルト32の第1サイズ通過領域L1と第1サイズ非通過領域L2にそれぞれ第1サーミスター33、第2サーミスター34を設け、加圧ローラー36の第1サイズ通過領域M1と第1サイズ非通過領域M2にそれぞれ第3サーミスター37、第4サーミスター38を設ける場合について説明した。一方で、他の異なる実施形態では、定着ベルト32又は加圧ローラー36のいずれか一方のみにサーミスターを設けたり、第1サイズ通過領域又は第1サイズ非通過領域のいずれか一方のみにサーミスターを設けたりしても良い。
本実施形態では、1個の冷却ファン42のみを用いて加圧ローラー36の各第1サイズ非通過領域M2を冷却する場合について説明したが、他の異なる実施形態では、各第1サイズ非通過領域M2と対応する2個の冷却ファン42を用いても良い。もちろん、3個以上の冷却ファン42を用いても良い。
本実施形態では、各サーミスター33、34、37、38によって温度検出手段を構成する場合について説明したが、他の異なる実施形態では、赤外線センサー等の他の異なる温度検出手段を用いても良い。
本実施形態では、熱源としてIHコイル47を用いたが、他の異なる実施形態では、例えばハロゲンヒーターやセラミックヒーター等の他の熱源を用いても良い。
本実施形態では、プリンター1に本発明の構成を適用する場合について説明したが、他の異なる実施形態では、複写機、ファクシミリ等の他の画像形成装置に本発明の構成を適用することも可能である。
<第2の実施形態>
次に、図6及び図7を用いて、本発明の第2の実施形態に係る定着装置23について説明する。なお、吹き出し口41以外の構成については、ガイド部材56が板状である点を除いて第1の実施形態と同様であるため、説明を省略する。
図6に示されるように、吹き出し口41は、先端部58側(本実施形態では左側)に向かって上下幅が縮幅する先細り形状を成しており、先端部58から加圧ローラー36の外周面54に向かって冷却風を吹き付けられるようになっている。
図7に示されるように、冷却風の吹き付け方向dは、冷却風が吹き付けられる部分e(より正確には、冷却風が吹き付けられる部分の中心点)における加圧ローラー36の外周面54の接線方向fと垂直な方向(冷却風が吹き付けられる部分eにおける加圧ローラー36の外周面54の法線方向)から傾いている。冷却風の吹き付け方向dは、加圧ローラー36の中心gから上側(用紙の搬送方向下流側)にずれている。
吹き出し口41の先端部58は、フレーム部材40の開口部55に当接すると共にガイド部材56とは所定の間隔を介した状態で、フレーム部材40の開口部55に挿入されている。吹き出し口41の先端部58とガイド部材56の間には、フレーム部材40の内外を連通させる引き込み口62が形成されている。引き込み口62は、吹き出し口41の下側のみに吹き出し口41と隣接して設けられている。図7に示されるように、冷却風が吹き付けられる部分eにおける加圧ローラー36の外周面54の接線方向fと冷却風の吹き付け方向dとの成す角は、鋭角側の角αと鈍角側の角βが存在するが、引き込み口62は、鋭角側の角αと対応する領域に設けられている。
上記のように構成されたものにおいて、冷却ファン42を稼働させると、冷却ファン42から風路部材64を介して各吹き出し口41に供給された冷却風が、各吹き出し口41の先端部58から加圧ローラー36の第1サイズ非通過領域M2に吹き付けられる。また、加圧ローラー36の第1サイズ非通過領域M2の付近に滞留する高温の空気が吹き飛ばされることで、吹き出し口41の先端部58と加圧ローラー36の外周面54との間の空間に負圧が発生し、引き込み口62を介してフレーム部材40の外部から内部に空気が引き込まれる。この空気は、吹き出し口41からの冷却風とともに加圧ローラー36の第1サイズ非通過領域M2に吹き付けられる。
本実施形態では前述の通り、冷却風の吹き付け方向dが、加圧ローラー36の中心gから上側(用紙の搬送方向下流側)にずれている。この構成においては、冷却風は上側に流れるため、吹き出し口41の下側(用紙の搬送方向上流側)の負圧が吹き出し口41の上側(用紙の搬送方向下流側)の負圧よりも強くなる。従って、本実施形態のように吹き出し口41の下側のみに引き込み口62を設けることで、効率的に空気を引き込むことができる。また、吹き出し口41の下側のみに引き込み口62を設けることで、引き込み口62を極力低い位置に設けることができ、冷却ファン42の停止時に引き込み口62を介してフレーム部材40の内部から外部に放熱されるのを抑制することができる。
また、本実施形態では、鋭角側の角αと対応する領域に引き込み口62が設けられているため、吹き出し口41と引き込み口62を狭いスペースに密集させることができ、スペースを節約することができる。
<第3の実施形態>
次に、図8及び図9を用いて、本発明の第3の実施形態に係る定着装置23について説明する。なお、吹き出し口41及びガイド部材56以外の構成については、フレーム部材40に開口部55が設けられていない点を除いて第1の実施形態と同様であるため、説明を省略する。
吹き出し口41は、囲繞部材としてのIH定着ユニット35のボビン46に設けられた下端延出部52の近傍(右側)に配置されている。吹き出し口41は、先端部58側(本実施形態では上側)に向かって左右幅が縮幅する先細り形状を成しており、先端部58から回転部材としての定着ベルト32の外周面49に向かって冷却風を吹き付けられるようになっている。
ガイド部材56は、第1サーミスター33の左側部に固定されている。ガイド部材56は、上側に向かって左右幅が縮幅する先細り形状を成している。吹き出し口41の先端部58とガイド部材56の間には、IH定着ユニット35の内外を連通させる引き込み口62が形成されている。引き込み口62は、吹き出し口41の左側のみに吹き出し口41と隣接して設けられている。
上記のように構成されたものにおいて、冷却ファン42を稼働させると、冷却ファン42から風路部材64を介して各吹き出し口41に供給された冷却風が、各吹き出し口41の先端部58から定着ベルト32の第1サイズ非通過領域L2に吹き付けられる。また、定着ベルト32の第1サイズ非通過領域L2の付近に滞留する高温の空気が吹き飛ばされることで、吹き出し口41の先端部58と定着ベルト32の外周面49との間の空間に負圧が発生し、引き込み口62を介してIH定着ユニット35の外部から内部に空気が引き込まれる。この空気は、吹き出し口41からの冷却風とともに定着ベルト32の第1サイズ非通過領域L2に吹き付けられる。
また、図9に示されるように、定着装置23のうち、定着ローラー31と、定着ベルト32と、第1サーミスター33と、加圧ローラー36と、第3、第4サーミスター37、38と、フレーム部材40と、進入ガイド43と、搬送ガイド44と、搬送ローラー45と、ガイド部材56と、は、定着ユニット76としてユニット化されており、プリンター本体2(図1参照)に対して着脱可能となっており、定着ユニット76の取り外しに伴って、引き込み口62が吹き出し口41から分離するように構成されている。このような構成を採用することで、定着装置23のメンテナンス性の向上と設計の容易化を同時に実現することが可能になる。
本実施形態では、第2の実施形態と同様に、吹き出し口41の片側のみに引き込み口62を設けているため、省スペース化を図ることができる。そのため、吹き出し口41や引き込み口62がIHコイル47と干渉してしまうような虞が無いため、定着ベルト32の外側にIHコイル47を配置する所謂「外包IH」に対応可能となっている。
本実施形態では、定着ベルト32に吹き出し口41からの冷却風を吹き付ける場合について説明したが、他の異なる実施形態では、定着ベルト32を用いずに定着ローラー31に吹き出し口41からの冷却風を吹き付けても良い。
<第4の実施形態>
次に、図10〜図12を用いて、本発明の第4の実施形態に係るカラープリンター1について説明する。基本的な冷却構造は第1の実施形態と同じである。
図10に示されるように、フレーム部材40の下部には、外気を導入するための開口部55が設けられている。開口部55の内周には、内側(上側)に向かって突出する筒状のガイド部材56が固定されている。ガイド部材56は、内側(上側)に向かって左右幅が縮幅する先細り形状を成している。
フレーム部材40の下方(用紙の搬送方向上流側)には、搬送ユニット81が設けられている。搬送ユニット81は、搬送経路20を覆う被覆位置(図10参照)と、搬送経路20を露出させる露出位置(図11参照)と、の間で下端側に設けられた支点部82を中心にプリンター本体2に対して回転可能となっている。そして、JAM(紙詰まり)の発生時には、搬送ユニット81を露出位置まで回転させることで、搬送経路20から用紙を取り除くことができるようになっている。
搬送ユニット81の一側(右側)には、前述の反転経路28が設けられている。図12に示されるように、搬送ユニット81には、反転経路28側の前部から後部に亘る部分(二点鎖線P−Pの間の部分)に第1サイズの用紙が通過する第1通過領域N1が形成され、第1通過領域N1の前後両側(二点鎖線P−Pの外側の部分。第1通過領域N1外)には第1サイズの用紙より前後幅が大きい第2サイズの用紙が通過する第1非通過領域N2が形成されている。
図10に示されるように、搬送ユニット81の左側部には、二次転写ローラー83が軸支されている。二次転写ローラー83は、搬送ユニット81が被覆位置にある状態で、中間転写ベルト6に圧接して二次転写部22を形成するようになっている。
搬送ユニット81の上部右側には、吹き出し口41が固定されており、吹き出し口41が搬送ユニット81と共に回転するように構成されている。吹き出し口41の回転軌跡は、ガイド部材56とは重なっていない。そのため、搬送ユニット81が被覆位置にある状態、搬送ユニット81が露出位置にある状態、及び、搬送ユニット81が被覆位置から露出位置(又は露出位置から被覆位置)に回転している途中の状態において、吹き出し口41がガイド部材56とは接触しないようになっている。吹き出し口41は、搬送ユニット81の前端部と後端部にそれぞれ設けられている(図12参照)。つまり、吹き出し口41は、計2個設けられている。
搬送ユニット81には、吹き出し口41の下方に冷却ファン42が固定されている。図12に示されるように、冷却ファン42は、各吹き出し口41と対応して、搬送ユニット81の前端部と後端部にそれぞれ設けられている。つまり、冷却ファン42は、計2個設けられている。冷却ファン42には、搬送ユニット81の各第1非通過領域N2に吸気口65が設けられている。即ち、吸気口65は、搬送ユニット81の第1通過領域N1外に配置されている。
このように構成されたものにおいて、第1サイズの用紙に対する画像形成時(第1サイズの用紙が反転経路28を通過する時を含む)には、各冷却ファン42が稼働する。これに伴って、吸気口65から各冷却ファン42に冷却風が取り込まれる。この冷却風は、冷却ファン42から各吹き出し口41に供給され、各吹き出し口41の先端部58から加圧ローラー36の第1サイズ非通過領域M2に吹き付けられる。これにより、加圧ローラー36の第1サイズ非通過領域M2が冷却される。
ところで、上記のように吸気口65から各冷却ファン42に冷却風が取り込まれると、吸気口65に負圧が発生する。しかしながら、本実施形態では、第1サイズの用紙が通過しない各第1非通過領域N2に吸気口65が臨んでいるため、吸気口65に発生する負圧により第1サイズの用紙の搬送が乱れる虞はない(JAM・シワ・斜め搬送等の不具合が発生する虞はない)。本実施形態では特に、2個の冷却ファン42の吸気口65を搬送ユニット81の各第1非通過領域N2に臨ませているため、各冷却ファン42の吸気口65からバランス良く冷却風を取り込むことが出来るとともに、用紙の搬送への影響を最小限に抑えることができる。
また、第2サイズの用紙に対する画像形成時(第2サイズの用紙が反転経路28を通過する時を含む)には、各冷却ファン42の稼働が停止される。そのため、吸気口65の付近を第2サイズの用紙が通過しても、用紙の搬送には全く影響が無い。
また、本実施形態では、搬送ユニット81を被覆位置(図10参照)から露出位置(図11参照)までプリンター本体2に対して回転させると、この回転に伴って、吹き出し口41が引き込み口62から分離するように構成されている。そのため、フレーム部材40等の定着装置23側の部材に冷却ファン42を固定する場合と比較して、冷却ファン42の設置スペースの自由度が増し、大型の冷却ファン42を選定可能となるメリットがある。しかしながら、このように搬送ユニット81に冷却ファン42を設置する場合には、冷却ファン42から加圧ローラー36に至るダクトを、搬送ユニット81と共に回転する部分と、この回転部分を加圧ローラー36側に接続する非回転部分と、に分割する必要がある。このようにダクトを回転部分と非回転部分に分割する場合には、回転部分と非回転部分の間に隙間があると、冷却ファン42から風速・制圧の高い冷却風を加圧ローラー36に送ろうとしても、上記の隙間から冷却風が勢い良く周囲に漏れてしまい、加圧ローラー36の冷却効果が低下する。そこで、スポンジやゴム等のパッキン部材でダクトの回転部分と非回転部分の隙間を埋めることで、冷却ファン42から加圧ローラー36に至るダクトの密閉性を確保するのが一般的である。しかしながら、このような構成を用いると、パッキン部材が変形して搬送ユニット81の回転動作がスムーズでなくなったり、搬送ユニット81が回転動作を繰り返すことでパッキン部材に磨耗・変形が生じ、冷却風の漏れが発生したりするといった新たな問題が発生する。
これに対して、本実施形態では、冷却ファン42から加圧ローラー36に至るダクトの回転部分である吹き出し口41と上記ダクトの非回転部分であるガイド部材56の間に引き込み口62が存在しているものの、この引き込み口62を介してフレーム部材40の外部から内部へと空気を引き込むことで、引き込み口62を介してフレーム部材40の内部から外部へと冷却風が漏れ出すのを防止することができる。そのため、冷却ファン42からの冷却風を、風速・制圧を維持したまま加圧ローラー36に吹き付けることができ、加圧ローラー36の冷却効果を高めることが出来ると共に、冷却風を撒き散らして冷却が不要な部分を冷却したり、用紙に形成された未定着トナー像を散らしたりすることが無い。
また、上記のように、吹き出し口41とガイド部材56を非接触としても、冷却風が漏れ出す虞が無いため、吹き出し口41とガイド部材56の隙間をスポンジ等で詰める必要がなく、搬送ユニット81をスムーズに回転させることができる。また、冷却ファン42から加圧ローラー36に至るダクトを吹き出し口41とガイド部材56の間で分割することで、定着ユニット76をプリンター本体2に対して着脱するような構成(第3の実施形態参照)を採用する場合に、定着ユニット76の構成が簡易なものになり、定着ユニット76を容易に設計することができる。
本実施形態では、搬送ユニット81の第1非通過領域N2に臨むように各冷却ファン42の吸気口65を設ける場合について説明したが、他の異なる実施形態では、搬送ユニット81の前部、後部、下部等の通紙に影響のない部位に吸気口65を設けても良い。この場合にも、搬送ユニット81の第1通過領域N1外に吸気口65が配置されることになり、吸気口65に発生する負圧によって用紙の搬送に影響が出るのを抑制することができる。
本実施形態では、搬送ユニット81をプリンター本体2に対して回転可能としたが、他の異なる実施形態では、搬送ユニット81をプリンター本体2に対して所定方向に引き出し可能としても良い。