JP5855062B2 - 血漿レニンの質量分析法 - Google Patents

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Description

本発明は、レニン活性の測定に関する。特定の側面では、本発明は、HPLC質量分析法による、血漿レニン活性の測定のための方法に関する。
背景技術に関する以下の説明は本発明の理解の支援として単純に提供されるものであって、本発明に対して、従来技術を説明する、またはそれを構成すると認めるものではない。
Fredline et al.Clin.Chem.45:659−664(1999)において論じられているように、レニンは、腎臓の傍糸球体細胞によって血液中に分泌される、タンパク質分解酵素である。レニンは、アンジオテンシノゲンに作用し、アンジオテンシン1(Ang1)と称される、デカペプチドを生成する。Ang1は、アンジオテンシン変換酵素によってさらに開裂され、アンジオテンシン2(Ang2)と称される、オクタペプチドを形成する。Ang2は、細胞増殖、ナトリウムの尿細管輸送、およびアルドステロン分泌を刺激する。Ang2は、ヒト内の最も有力な昇圧剤のうちの1つであって、血圧調節において重要な役割を果たす。Ang2は、循環濃度が非常に低く、半減期が極端に短いため、直接測定を行うことが困難である。Ang2より安定しているAng1は、レニン−アンジオテンシン系の状態を測定するために、より優れた検体を提供する。Ang1の生成率に基づく「血漿レニン活性」(PRA)の測定は、高血圧の診断および管理のために、臨床的に使用されている。
PRAを測定するための従来の方法は、放射免疫測定法(RIA)である(Sealey,Clin.Chem.37:1811−1819(1991);Shionoiri
et al.,Horm Res.37:171−175(1992)参照)。典型的放射免疫測定法は、それぞれ、同濃度の標識抗原および特異抗体を含有する、一連の標準物質と未知の混合物を試験管内に同時調製することによって行われる。適切な反応時間後、標識抗原の抗体結合画分(B)と遊離(F)画分とは、種々の技術のうちの1つによって分離される。標準物質中のB/F比は、非標識抗原の濃度の関数としてプロットされ(標準曲線)、抗原の未知の濃度は、観察されたB/F比を標準曲線と比較することによって決定される。放射免疫測定法は、競合的結合原理に基づいており、使用される抗体は、内因性アンジオテンシン等の他の血漿タンパク質との非特異的結合を受け得る。この潜在的交差反応性は、PRAの過大評価を生じさせ得る。別のアプローチは、RIAによる定量化前に、HPLCを使用して、Ang1を他のアンジオテンシンから単離するものである(Meng et al.,J.Am.Soc.Nephrol.6:1209−1215(1995);Meng et al.,J.Chromatogr.21、614(1):19−25(1993);Kohara et al.,Peptides 12:1135−1141(1991)の例を参照)。Ang1の定量化のためのこれらのHPLC法は、紫外線、蛍光、および質量分析計による検出を使用して開発されてきた(Klickstein et al.Anal Biochem 120:146−150(1982);Miyazaki et al.J Chromatogr。490:43−51(1989)and Fredline et al.Clin.Chem.45:659−664(1999)の例を参照)。
例えば、Fredline et al.は、HPLCエレクトロスプレイタンデム質量分析法の使用による、血漿レニン活性の測定について説明している。この測定を行う際、Fredline et al.は、水感受性酵素阻害剤(すなわち、フッ化フェニル
メチルスルホニル(PMSF))の存在下で血漿試料をインキュベーションし、649の(m/z)を有する前駆体イオンの衝突誘起解離を観察することによって、インキュベーション中に生成されたアンジオテンシン1の量を測定する。
Fredline et al.Clin.Chem.45:659−664(1999) Sealey,Clin.Chem.37:1811−1819(1991) Shionoiri et al.,Horm Res.37:171−175(1992) Meng et al.,J.Am.Soc.Nephrol.6:1209−1215(1995) Meng et al.,J.Chromatogr.21、614(1):19−25(1993) Kohara et al.,Peptides 12:1135−1141(1991) Klickstein et al.Anal Biochem 120:146−150(1982) Miyazaki et al.J Chromatogr。490:43−51(1989)
本発明は、タンデム質量分析法を含む、質量分析法によって、アンジオテンシン1の量を測定し、血漿試料中のレニン活性を測定するための方法を提供する。
一側面では、試料中のアンジオテンシン1の量を測定するための方法が提供される。この方法は、(a)試料中のアンジオテンシン1をイオン化して、質量分析法によって検出可能な1つ以上のイオンを生成するステップと、(b)質量分析法によって、アンジオテンシン1イオンの量を検出するステップであって、イオンは、433.0±0.5、619.4±0.5、647.4±0.5、および1297±0.5の質量/電荷比をもつイオンから成る群から選択されるステップと、(c)検出されたアンジオテンシン1イオンの量を使用して、試料中のアンジオテンシン1の量を測定するステップと、を含むことができる。ある実施形態では、この方法の定量限界は、0.1ng/mL以下、例えば、0.05ng/mL以下、例えば、約0.03ng/mLである。さらなる実施形態では、この方法は、高性能液体クロマトグラフィー(HPLC)によって、試料からアンジオテンシン1を精製するステップを含む。ある実施形態では、この方法は、固相抽出カラムによって、試料中のアンジオテンシン1を精製するステップをさらに含む。他の実施形態では、アンジオテンシン1イオンの量は、内部標準物質との比較によって、試料中のアンジオテンシン1の量と関連付けられる。ある実施形態では、分解標準物質を使用して、その生成後のアンジオテンシン1の分解度を決定してもよい。
別の側面では、試料中のアンジオテンシン1の量を測定するための方法が提供される。この方法は、(a)試料中のアンジオテンシン1をイオン化して1つ以上のイオンを生成するステップと、(b)質量分析法によって、少なくとも1つのイオンの量を検出するステップであって、イオンは、433.0±0.5、619.4±0.5、647.4±0.5、および1297±0.5の質量/電荷比をもつイオンから成る群から選択されるステップと、を含むことができ、検出されたアンジオテンシン1イオンの量は、試料中のア
ンジオテンシン1の量の測定を提供する。ある実施形態では、分解標準物質を使用して、その生成後のアンジオテンシン1の分解度を決定してもよい。
別の側面では、試料中のアンジオテンシン1の量を測定するための方法が提供される。この方法は、(a)試料中のレニンによるアンジオテンシン1の生成に好適な条件下でレニンに対して有効ではない水安定性プロテアーゼ阻害剤と予混合された試料をインキュベーションするステップと、(b)液体クロマトグラフィーによって、試料中のアンジオテンシン1を精製するステップと、(c)精製されたアンジオテンシン1をイオン化して質量分析法によって検出可能な1つ以上のイオンを生成するステップと、(d)質量分析法によって、1つ以上のアンジオテンシン1イオンの量を検出するステップと、(e)検出されたイオンの量を使用して、試料中のアンジオテンシン1の量を測定するステップと、を含むことができる。ある実施形態では、この方法の定量限界は、0.1ng/mL以下、例えば、0.05ng/mL以下、例えば、約0.03ng/mLである。さらなる実施形態では、質量分析法によって生成されたイオンは、433.0±0.5、619.4±0.5、647.4±0.5、および1297±0.5の質量/電荷比をもつイオンから成る群から選択される。関連実施形態では、イオンは、433.0±0.5の質量/電荷比をもつ前駆体イオンと、619.4±0.5および647.4±0.5の質量/電荷比をもつイオンから成る群から選択される、1つ以上の断片イオンとを含む。他の実施形態では、アンジオテンシン1イオンの量は、内部標準物質との比較によって、試験試料中のアンジオテンシン1の量と関連付けられる。他の好ましい実施形態では、この方法は、固相抽出カラムによって、試料中のアンジオテンシン1を精製するステップをさらに含む。他の好ましい実施形態では、水安定性プロテアーゼ阻害剤は、フッ化アミノエチルベンジルスルホニルである。ある実施形態では、分解標準物質を使用して、その生成後のアンジオテンシン1の分解度を決定してもよい。
別の側面では、試料中のアンジオテンシン1の量を測定するための方法が提供される。この方法は、(a)試料中のレニンによるアンジオテンシン1の生成に好適な条件下で試料をインキュベーションするステップと、(b)固相抽出によって、試料中のアンジオテンシン1を精製するステップと、(c)オンライン処理を備えた液体クロマトグラフィーによって、ステップ(b)の後、アンジオテンシン1をさらに精製するステップと、(d)ステップ(c)から精製されたアンジオテンシン1をイオン化して、質量分析法によって検出可能な1つ以上のイオンを生成するステップと、(e)質量分析法によって、1つ以上のアンジオテンシン1イオンの量を検出するステップと、(f)検出されたイオンの量を使用して、試料中のアンジオテンシン1の量を測定するステップと、を含むことができる。ある好ましい実施形態では、液体クロマトグラフィーは、高性能液体クロマトグラフィー(HPLC)である。他の実施形態では、この方法の定量限界は、0.1ng/mL以下、例えば、0.05ng/mL以下、例えば、約0.03ng/mLである。さらなる実施形態では、この方法は、433.0±0.5、619.4±0.5、647.4±0.5、および1297±0.5の質量/電荷比をもつイオンから成る群から選択される1つ以上のイオンを含むイオンを生成するステップを含む。関連実施形態では、この方法は、アンジオテンシン1の前駆体イオンを生成するステップを含み、前駆体イオンのうちの少なくとも1つは、433.0±0.5の質量/電荷比を有する。好ましい関連実施形態では、この方法は、アンジオテンシン1前駆体イオンのうちの1つ以上の断片イオンを生成するステップであって、断片イオンのうちの少なくとも1つは、619.4±0.5または647.4±0.5の質量/電荷比を有するステップを含むことができる。さらなる実施形態では、インキュベーションは、レニンに対して有効ではない水安定性プロテアーゼ阻害剤の存在下において行う。ある好ましい実施形態では、水安定性プロテアーゼ阻害剤は、フッ化アミノエチルベンジルスルホニルである。ある実施形態では、アンジオテンシン1イオンの量は、内部標準物質との比較によって、試験試料中のアンジオテンシン1の量と関連付けられる。ある実施形態では、分解標準物質を使用して、その生成後の
アンジオテンシン1の分解度を決定してもよい。
別の側面では、試料中のレニン活性を測定するための方法が提供される。この方法は、(a)試料中のレニンによるアンジオテンシン1の生成に好適な条件下で試料をインキュベーションするステップと、(b)固相抽出によって、試料からアンジオテンシン1を精製するステップと、(c)オンライン処理を備えた液体クロマトグラフィーによって、アンジオテンシン1をさらに精製するステップと、(d)精製されたアンジオテンシン1をイオン化して、質量分析法によって検出可能な1つ以上のイオンを生成するステップと、(e)質量分析法によって、1つ以上のアンジオテンシン1イオンの量を検出するステップと、(f)検出されたイオンの量を使用して、試料中のアンジオテンシン1の量を測定するステップと、(g)試料中で測定されたアンジオテンシン1の量を使用して、試料中のレニン活性を計算するステップと、を含むことができる。ある好ましい実施形態では、液体クロマトグラフィーは、高性能液体クロマトグラフィー(HPLC)である。別の実施形態では、この方法の定量限界は、0.1ng/mL以下、例えば、0.05ng/mL以下、例えば、約0.03ng/mLである。さらなる実施形態では、この方法は、アンジオテンシン1の前駆体イオンを生成するステップであって、前駆体イオンのうちの少なくとも1つは、433.0±0.5の質量/電荷比を有するステップと、619.4±0.5または647.4±0.5の質量/電荷比をもつイオンから成る群から選択される、アンジオテンシン1前駆体イオンのうちの1つ以上の断片イオンを生成するステップと、を含む。ある実施形態では、インキュベーションは、水安定性プロテアーゼ阻害剤の存在下において行う。好ましい関連実施形態では、水安定性プロテアーゼ阻害剤は、フッ化アミノエチルベンジルスルホニルである。ある実施形態では、アンジオテンシン1イオンの量は、内部標準物質との比較によって、試験試料中のアンジオテンシン1の量と関連付けられる。ある実施形態では、分解標準物質を使用して、その生成後のアンジオテンシン1の分解度を決定してもよい。
別の側面では、試料中のレニン活性を測定するための方法が提供される。この方法は、(a)試料中のレニンによるアンジオテンシン1の生成に好適な条件下でレニンに対して有効ではない水安定性プロテアーゼ阻害剤と予混合された試料をインキュベーションするステップと、(b)液体クロマトグラフィーによって、アンジオテンシン1を精製するステップと、(c)精製されたアンジオテンシン1をイオン化して、質量分析法によって検出可能な1つ以上のイオンを生成するステップと、(d)質量分析法によって、アンジオテンシン1イオンの量を検出するステップと、(e)検出されたイオンの量を使用して、試料中のアンジオテンシン1の量を測定するステップと、(f)試料中のアンジオテンシン1の量を使用して、試料中のレニン活性を計算するステップと、を含む。ある好ましい実施形態では、液体クロマトグラフィーは、高性能液体クロマトグラフィー(HPLC)である。別の実施形態では、この方法の定量限界は、0.1ng/mL以下、例えば、0.05ng/mL以下、例えば、約0.03ng/mLである。さらなる実施形態では、この方法は、アンジオテンシン1の前駆体イオンを生成するステップであって、前駆体イオンのうちの少なくとも1つは、433.0±0.5の質量/電荷比を有するステップと、619.4±0.5または647.4±0.5の質量/電荷比をもつイオンから成る群から、アンジオテンシン1前駆体イオンのうちの1つ以上の断片イオンを生成するステップと、を含む。ある好ましい実施形態では、ステップ(b)は、固相抽出カラムによって、試料からアンジオテンシン1を精製するステップを含む。さらなる実施形態では、水安定性プロテアーゼ阻害剤は、フッ化アミノエチルベンジルスルホニルである。ある実施形態では、分解標準物質を使用して、その生成後のアンジオテンシン1の分解度を決定してもよい。
別の側面では、試料中のレニン活性を測定するための方法が提供される。この方法は、(a)試料中のレニンによるアンジオテンシン1の生成に好適な条件下で試料をインキュ
ベーションするステップと、(b)液体クロマトグラフィーによって、試料中のアンジオテンシン1を精製するステップと、(c)精製されたアンジオテンシン1をイオン化して、質量分析法によって検出可能な1つ以上のイオンを生成するステップと、(d)質量分析法によって、アンジオテンシン1イオンの量を検出するステップであって、イオンは、433.0±0.5、619.4±0.5、647.4±0.5、および1297±0.5の質量/電荷比をもつイオンから成る群から選択されるステップと、(e)検出されたイオンの量を使用して、試料中のアンジオテンシン1の量を測定するステップと、(f)試料中のアンジオテンシン1の量を使用して、試料中のレニン活性を計算するステップと、を含む。ある実施形態では、この方法の定量限界は、0.1ng/mL以下、例えば、0.05ng/mL以下、例えば、約0.03ng/mLである。ある実施形態では、インキュベーションは、水安定性プロテアーゼ阻害剤の存在下において行う。好ましい関連実施形態では、水安定性プロテアーゼ阻害剤は、フッ化アミノエチルベンジルスルホニルである。ある実施形態では、液体クロマトグラフィーは、高性能液体クロマトグラフィー(HPLC)である。ある実施形態では、この方法のステップ(b)は、固相抽出カラムによって、アンジオテンシン1を精製するステップをさらに含む。さらなる実施形態では、アンジオテンシン1イオンの量は、内部標準物質との比較によって、試験試料中のアンジオテンシン1の量と関連付けられる。ある実施形態では、分解標準物質を使用して、その生成後のアンジオテンシン1の分解度を決定してもよい。
ある実施形態では、インキュベーションから約3時間後、PRAが、毎時1mLあたり0.65ng未満のアンジオテンシンである場合、試験試料は、より長時間(例えば、最大約18時間)インキュベーションされ、PRA生成プロトコルを確立してもよい。
好ましい実施形態は、高性能液体クロマトグラフィー(HPLC)を、単独で、あるいは、例えば、固相抽出技術またはタンパク質沈殿を含むがそれらに限定されない1つ以上の精製方法と組み合わせて利用して、試料中のアンジオテンシン1を精製する。
本明細書に開示される方法のある好ましい実施形態では、質量分析法は、正イオンモードで行われる。あるいは、質量分析法は、負イオンモードで行うことが可能である。特に好ましい実施形態では、アンジオテンシン1は、正および負イオンモードの両方を使用して測定される。ある好ましい実施形態では、アンジオテンシン1は、正または負モードのいずれかにおいて、エレクトロスプレーオン化(ESI)あるいはマトリックス支援レーザー脱離イオン化(MALDI)を使用して測定される。
好ましい実施形態では、質量分析計において検出可能なアンジオテンシン1イオンは、1297±0.5、756±0.5、649±0.5、647.4±0.5、619.4±0.5、534±0.5、506±0.5、433.0±0.5、343±0.5、255±0.5、および110±0.5の質量/電荷比(m/z)をもつイオンから成る群から選択される。特に好ましい実施形態では、前駆体イオンは、433.0±0.5の質量/電荷比を有し、断片イオンは、619.4±0.5または647.4±0.5の質量/電荷比を有する。
好ましい実施形態では、別々に検出可能な同位体標識アンジオテンシン1が内部標準物質として試料に添加される。これらの実施形態では、試料中に存在する内因性アンジオテンシン1と内部標準物質の両方の全部または一部は、イオン化され、質量分析計において検出可能な複数のイオンを生成し、それぞれから生成された1つ以上のイオンが質量分析法によって検出される。関連実施形態では、同位体標識アンジオテンシン1は、13Cおよび15N同位体標識バリン、アルギニン、イソロイシン、ロイシン、リシン、フェニルアラニン、プロリンサブユニット、またはそれらの組み合わせを含んでいてもよい。さらに好ましい実施形態では、同位体標識アンジオテンシン1は、炭素原子が13C同位体と置換さ
れ、窒素原子が15N同位体と置換されており、天然アンジオテンシン1と比較して6Daの質量の増加をもたらす、バリンサブユニットを有する。好ましい関連実施形態では、同位体標識アンジオテンシン1は、炭素原子が13C同位体と置換され、窒素原子が15N同位体と置換されているバリンおよびイソロイシンサブユニットを有する。この同位体標識アンジオテンシン1の質量は、通常、天然アンジオテンシン1より13Da高い。
好ましい実施形態では、アンジオテンシン1イオンの有無および/または量は、内部標準物質との比較によって、アンジオテンシン1の有無および/または試験試料中の量と関連付けられる。
本明細書に開示される側面のある好ましい実施形態では、アンジオテンシン1の定量限界(LOQ)は、0.1ng/mL以下、例えば、0.05ng/mL以下、例えば、約0.03ng/mLであって、アンジオテンシン1の定量上限(ULOQ)は、100,000fmol/mL以上である。
別の側面では、アンジオテンシン1定量アッセイのためのキットが提供される。キットは、リン酸緩衝生理食塩水溶液中のフッ化アミノエチルベンジルスルホニル(AEBSF)を含み、リン酸緩衝生理食塩水溶液中のAEBSFは、少なくとも1つのアッセイのために十分な量として存在する。加えて、キットは、少なくとも1つのアッセイのために十分な量の内部標準物質およびマレイン酸を含んでいてもよい。
本明細書で使用される場合、別途記載がない限り、単数形「a」、「an」、および「the」は、複数形も含む。したがって、例えば、「タンパク質」とは、複数のタンパク質分子も含む。
本明細書で使用される場合、用語「精製」または「精製する」とは、着目検体以外の試料から全成分を除去することを指すわけではない。そうではなく、精製とは、着目検体の検出に干渉し得る試料中の他の成分と比較して、1つ以上の着目検体の量を濃縮する手順を指す。本発明において、試料は種々の手段によって精製されて、1つ以上の干渉物質、例えば、質量分析法において選択されたアンジオテンシン1親および娘イオンの検出に干渉するであろう1つ以上の物質を除去することができる。
本明細書で使用される場合、用語「試験試料」とは、アンジオテンシンを含有し得る、任意の試料を指す。本明細書で使用される場合、用語「体液」とは、個体の身体から単離可能な任意の流体を意味する。体液の例としては、血液、血漿、血清、胆汁、唾液、尿、涙、汗等が挙げられる。
本明細書で使用される場合、用語「クロマトグラフィー」とは、液体またはガスによって搬送される化学混合物が固定液相または固相の周囲またはまわりで流動するにしたがって、化学的単体が異なるように分布する結果として、成分に分離されるプロセスを指す。
本明細書で使用される場合、用語「液体クロマトグラフィー」または「LC」とは、流体が微粉化物質のカラムを通して、または毛細管路を通して、均一に浸透するにしたがって、流体溶液のうちの1つ以上の成分が選択的に遅延するプロセスを意味する。遅延は、流体が固定相に対して移動するにしたがって、1つ以上の固定相とバルク流体(すなわち、移動相)との間に混合物の成分が分布する結果として生じる。「液体クロマトグラフィー」を利用する分離技術の例としては、逆相液体クロマトグラフィー(RPLC)、高性能液体クロマトグラフィー(HPLC)、および乱流液体クロマトグラフィー(TFLC)(高乱流液体クロマトグラフィー(HTLC)または高スループット液体クロマトグラフィーとしても知られる)が挙げられる。ある実施形態では、SPEカラムは、LCカラ
ムと組み合わせて使用されてもよい。例えば、試料は、TFLC抽出カラムで精製後、HPLC分析カラムでさらに精製されてもよい。
本明細書で使用される場合、用語「高性能液体クロマトグラフィー」または「HPLC」(「高圧液体クロマトグラフィー」としても知られる)とは、固定相、典型的には、高密度に充填されたカラムを通して、移動相に圧力をかけることによって、分離度が増加する液体クロマトグラフィーを指す。
本明細書で使用される場合、用語「乱流液体クロマトグラフィー」または「TFLC」(高乱流液体クロマトグラフィーまたは高スループット液体クロマトグラフィーとしても知られる)とは、分離を行うための基礎として、カラム充填を通してアッセイされる成分の乱流を利用する、クロマトグラフィーの形態を指す。TFLCは、質量分析法による分析の前に、2つの不特定の薬物を含有する試料の調製に適用されている。例えば、Zimmer et al.,J Chromatogr A 854:23−35(1999)を参照されたい(また、TFLCについてさらに説明している、米国特許第5,968,367号、第5,919,368号、第5,795,469号、および第5,772,874号も参照)。当業者は、「乱流」について理解しているであろう。流体がゆっくりかつ平滑に流動する時、その流動は、「層流」と呼ばれる。例えば、低流速でHPLCカラムを通って移動する流体は、層流である。層流では、流体の粒子の運動は、整然としており、粒子は、略直線に移動する。より高速では、水の慣性によって、流体摩擦力が圧倒され、乱流が生じる。不規則境界に接触していない流体は、摩擦によって減速される、または不均一表面によって偏向される、流体を「追い越して流動する」。流体が乱流として流動する場合、渦流および環流(すなわち、渦動)状に流動し、流動が層流である場合より「遅滞」が生じる。流体流動が層流または乱流である場合の判定の補助として、多くの参考文献が利用可能である(例えば、Turbulent Flow Analysis:Measurement and Prediction,P.S.Bernard & J.M.Wallace,John Wiley & Sons,Inc.,(2000);An Introduction to Turbulent Flow,Jean Mathieu & Julian Scott,Cambridge University Press(2001))。
本明細書で使用される場合、用語「固相抽出」または「SPE」とは、それを通して、またはその周囲を溶液が通過する固体(すなわち、固体相)のための溶液(すなわち、移動相)中に溶解または懸濁される成分の親和力の結果として、化学混合物が成分に分離されるプロセスを指す。ある例では、移動相が固体相を通してまたはその周囲を通過するにしたがって、移動相の望ましくない成分は、固相によって滞留され、移動相中の検体が精製される。他の例では、検体は固体相によって滞留され、移動相の望ましくない成分を、固体相を通してまたはその周囲を通過させてもよい。これらの例では、次いで、第2の移動相を使用して、さらなる処理または分析のために、滞留された検体を固相から溶離させる。抽出カラムとして乱流液体クロマトグラフィー(TFLC)の利用を含むSPEは、一体型または混合モード機構を介して作動させることができる。混合モード機構は、同一カラム内において、イオン交換および疎水性滞留を利用する。例えば、混合モードSPEカラムの固相は、強アニオン交換および疎水性滞留を示してもよく、または強カチオン交換および疎水性滞留を示してもよい。
本明細書で使用される場合、用語「分析カラム」とは、検体の有無または量の判定を可能にするよう十分にカラムから溶離させるように、試料中の成分の分離をもたらすのに十分なクロマトグラフィープレートを有する、クロマトグラフィーカラムを指す。そのようなカラムは、多くの場合、さらなる分析のための精製された試料を得るために、非滞留成分から滞留成分を分離または抽出するという一般的目的を有する、「抽出カラム」と区別
される。好ましい実施形態では、分析カラムは、直径約4μmの粒子を含有する。
本明細書で使用される場合、例えば、「オンライン自動式」または「オンライン抽出」において使用される場合、用語「オンライン」または「インライン」とは、操作者の介入を必要とせずに行われる手順を指す。例えば、弁とコネクタ配管の精選によって、固相抽出および液体クロマトグラフィーカラムは、任意の手動ステップを必要とせずに成分が順次通過されるように、必要に応じて接続可能である。好ましい実施形態では、弁および配管の選択は、必要なステップを行うように、予めプログラムされたコンピュータによって制御される。最も好ましくは、クロマトグラフィーシステムもまた、そのようなオンライン式で、検出器システム、例えば、MSシステムに接続される。したがって、操作者は、自動試料注入器内に多穴または多管試料のトレイを定置し、残りの操作は、コンピュータ制御下で行われ、選択される全試料を精製および分析することができる。対照的に、本明細書で使用される場合、用語「オフライン」とは、操作者の手動介入を必要とする手順を指す。したがって、試料が沈殿状態にあって、次いで、上清が自動試料注入器に手動で装填される場合、沈殿および装填ステップは、続くステップからオフラインとなる。この方法の種々の実施形態では、1つ以上のステップがオンライン自動式で行われてもよい。
本明細書で使用される場合、用語「質量分析法」または「MS」とは、その質量によって化合物を同定する分析技術を指す。MSとは、その質量対電荷比または「m/z」に基づいて、イオンを濾過、検出、および測定する方法を指す。MS技術は、概して、(1)化合物をイオン化して荷電化合物を形成するステップと、(2)荷電化合物の分子量を検出し、質量対電荷比を計算するステップと、を含む。化合物は、任意の好適な手段によって、イオン化および検出することができる。「質量分析計」は、概して、イオン化装置と、イオン検出器と、を含む。一般に、1つ以上の着目分子がイオン化され、続いて、イオンは質量分析装置に導入され、ここでイオンは磁場と電界の組み合わせによって質量(「m」)および電化(「z」)に応じた空間内の経路を辿る。例えば、米国特許第6,204,500号「Mass Spectrometry From Surfaces」、第6,107,623号「Methods and Apparatus for Tandem Mass Spectrometry」、第6,268,144号「DNA Diagnostics Based On Mass Spectrometry」、第6,124,137号「Surface−Enhanced Photolabile
Attachment And Release For Desorption And Detecton Of Analytes」、Wright et al.,Prostate Cancer and Prostatic Diseases 2:264−76(1999)、およびMerchant and Weinberger,Electrophoresis 21:1164−67(2000)を参照されたい。
本明細書で使用される場合、用語「正イオンモード操作」とは、正イオンが生成および検出される質量分析法を指す。本明細書で使用される場合、用語「負イオンモード操作」とは、負イオンが生成および検出される質量分析法を指す。
本明細書で使用される場合、用語「イオン化」または「イオン化ステップ」とは、1つ以上の電子単位に等しい正味電荷を有する検体イオンを生成するプロセスを指す。負イオンは、1つ以上の電子単位の正味負電荷を有するものであり、一方、正イオンは、1つ以上の電子単位の正味正電荷を有するものである。
本明細書で使用される場合、用語「電子イオン化」または「EI」とは、気相または蒸気相にある着目検体が電子流と相互作用する方法を指す。電子の検体との衝突によって検体イオンが生成され、次いで、これを質量分析法技術に供する。
本明細書で使用される場合、用語「化学イオン化」または「CI」とは、試薬ガス(例えば、アンモニア)が電子衝突を受け、検体イオンが試薬ガスイオンと検体分子の相互作用によって形成される方法を指す。
本明細書で使用される場合、用語「高速原子衝撃」または「FAB」とは、高エネルギー原子(多くの場合、XeまたはAr)のビームが不揮発性試料に衝突し、試料中に含有される分子を脱離およびイオン化する方法を指す。試験試料は、グリセロール、チオグリセロール、m−ニトロベンジルアルコール、18−クラウン−6クラウンエーテル、2−ニトロフェニルオクチルエーテル、スルホラン、ジエタノールアミン、およびトリエタノールアミン等の粘性液体マトリクス中に溶解される。化合物または試料のための適切なマトリクスの選択は、経験的プロセスである。
本明細書で使用される場合、用語「マトリクス支援レーザー脱離イオン化」または「MALDI」とは、不揮発性試料がレーザー照射に曝露され、光イオン化、プロトン化、脱プロトン化、およびクラスター崩壊を含む種々のイオン化経路によって、試料中の検体を吸収およびイオン化する方法を指す。MALDIの場合、試料は、検体分子の脱離を促進するエネルギー吸収マトリクスと混合される。
本明細書で使用される場合、用語「表面増強レーザー脱離イオン化」または「SELDI」とは、不揮発性試料がレーザー照射に曝露され、光イオン化、プロトン化、脱プロトン化、およびクラスター崩壊を含む種々のイオン化経路によって、試料中の検体を吸収およびイオン化する別の方法を指す。SELDIの場合、試料は、典型的には、1つ以上の着目検体を優先的に滞留させる表面と結合される。MALDIにおけるように、このプロセスも、エネルギー吸収成分を用いてイオン化を促進してもよい。
本明細書で使用される場合、用語「エレクトロスプレーオン化」または「ESI」とは、溶液が短毛細管に沿って通過し、その末端で、正または負の高電位が印加される方法を指す。管の末端に達する溶液は気化(噴霧)されて、溶媒蒸気中のジェットまたはスプレー状の溶液の極小液滴となる。この霧状の液滴は、凝縮を防止し溶媒を蒸発させるように若干加熱された蒸発チャンバを通して流れる。液滴が小さくなるにつれて、同電荷間の自然反発作用によってイオンならびに中性分子が放出されるまで、表面電荷密度が増加する。
本明細書で使用される場合、用語「大気圧化学イオン化」または「APCI」とは、ESIと類似する質量分析法を指す。しかしながら、APCIは、大気圧のプラズマ中に生じるイオン分子反応によって、イオンを生成する。プラズマは、スプレー毛細管と対電極との間の放電によって維持される。次いで、イオンは、典型的には、一式の差動排気掬取段階の使用によって、質量分析器内に抽出される。乾燥かつ予加熱されたN2のガスの対
向流を使用して、溶媒の除去を向上させてもよい。APCIにおける気相イオン化は、低極性種を分析するために、ESIよりも効果的であり得る。
本明細書で使用される場合、用語「大気圧光イオン化」または「APPI」とは、質量分析法の形態を指し、分子Mの光イオン化のための機構は、分子イオンM+を形成するための光子吸収および電子放出である。光子エネルギーは、典型的にはイオン化電位を若干上回るため、分子イオンは解離を受けにくい。多くの場合、クロマトグラフィーの必要なく試料を分析することが可能であって、したがって、大幅な時間および費用を節約するであろう。水蒸気またはプロトン性溶媒の存在下で、分子イオンは、Hを抽出し、MH+を形成可能である。これは、Mが高プロトン親和力を有する場合に生じる傾向にある。これは、M+とMH+との和が一定であるため、定量の正確度に影響を及ぼさない。プロトン性溶媒中の薬物化合物は、通常、MH+として観察されるが、一方、ナフタレンまたはテ
ストステロン等の非極性化合物は、通常、M+を形成する。例えば、Robb et al.,Atmospheric pressure photoionization:An ionization method for liquid chromatography−mass spectrometry.Anal.Chem.72(15):3653−59(2000)を参照されたい。
本明細書で使用される場合、用語「誘導結合プラズマ」または「ICP」とは、大部分の元素が原子化およびイオン化されるように、十分な高温において、試料が部分的にイオン化されたガスと相互作用する方法を指す。
本明細書で使用される場合、用語「電界脱離」とは、不揮発性試験試料がイオン化表面上に定置され、強電界を使用して、検体イオンを生成する方法を指す。
本明細書で使用される場合、用語「脱離」とは、表面からの検体の除去および/または気相中への検体の流入を指す。
本明細書で使用される場合、用語「定量化限界」、「定量限界」、または「LOQ」とは、測定が定量的に有意義となる点を指す。このLOQにおける検体応答は、20%の精度および80%乃至120%の正確度によって、同定し、分離し、再現することができる。定量上限とは、検体応答の定量化可能な線形上限範囲を指す。
本明細書で使用される場合、用語「検出限界」または「LOD」とは、測定値がそれに付随する不確定性を上回る点である。LODは、任意単位で、ゼロ濃度から3標準偏差(SD)として定義される。
本明細書で使用される場合、イオンの質量の測定以外の定量的測定を参照する際の用語「約」とは、表示値+/−10%を指す。質量分析装置は、所与の検体の質量を判定する際、若干変動し得る。イオンの質量またはイオンの質量/電荷比の文脈においては、用語「約」とは+/−0.5の原子質量単位を指す。
上述の発明の開示は非限定的であって、本発明の他の特徴および利点は、以下の発明を実施するための形態および請求項から明白となるであろう。
図1は、Ang1(m/z=433.0)の衝突誘起解離完全走査スペクトルを示す。 図2は、内部標準物質(m/z=434.8)の衝突誘起解離完全走査スペクトルを示す。 図3は、Ang1の質量分析検出の例示的較正曲線を示す。 図4A、BおよびCは、低濃度較正物質についてのAng1(m/z=433.0±0.5)、内部標準物質(m/z=434.8±0.5)、および分解標準物質(m/z=437.3±0.5)の例示的質量クロマトグラムを示す。 図5A、BおよびCは、0.1ng/mL/時間を示す患者試料についてのAng1(m/z=433.0±0.5)、内部標準物質(m/z=434.8±0.5)、および分解標準物質(m/z=437.3±0.5)の例示的質量クロマトグラムを示す。
試料中のアンジオテンシン1の量を測定するための方法について、説明する。より具体的には、血漿試料中のレニン活性と関連付けられるアンジオテンシン1を検出およぼ定量
化するための方法について、説明する。この方法は、液体クロマトグラフィー(LC)、最も好ましくは、HPLCを利用して、選択された検体の精製を行い、この精製を固有の質量分析法(MS)と組み合わせ、それによって、試験試料中のアンジオテンシン1を検出および定量化するための高スループットアッセイシステムを提供する。好ましい実施形態は、自動PRAアッセイのための大規模臨床実験における用途に特に好適である。本発明により提供される方法は、感度を向上させ、他のPRAアッセイにおいて必要とされるものよりも短時間かつ少ない調製試料で行うことができる。
好適な試験試料として、着目検体を含むかもしれない任意の試験試料が挙げられる。ある好ましい実施形態では、試料は、生物学的試料、すなわち、動物、培養細胞、培養臓器等の任意の生物学的源から得られる試料である。ある好ましい実施形態では、試料は、イヌ、ネコ、ウマ等の哺乳類動物から得られる。特に好ましい哺乳類動物は、霊長類、最も好ましくは、男性または女性のヒトである。特に好ましい試料として、血液、血漿、血清、唾液、脳脊髄液、または他の組織試料が挙げられる。そのような試料は、例えば、患者、すなわち、疾患または病状の診断、予後、あるいは治療のための臨床的状況下にある、存命中の男性または女性のヒトから得ることができる。試験試料は、好ましくは、患者から得られる、例えば、血液血清または血漿である。血漿プロレニンの不可逆的低温活性化を回避するために、試料は、室温ですぐに処理するか、または完全に冷凍保存し、使用直前に急速解凍すべきである。
分析を自動化できるように、クロマトグラフィーおよび/またはMS試料分析の前に、種々のインキュベーション条件を使用してレニンによるアンジオテンシン1の調製および生成を促進してもよい。本発明には、アンジオテンシン1の生成を行うために好適な試薬カクテルを1回添加することが組み込まれる。試薬カクテルは、1つの単純ステップで全試薬を予混合するステップから作製される。この試薬カクテルの1回の生成は、典型的に利用される水感受性酵素阻害剤、例えばフッ化フェニルメチルスルホニル(PMSF)を、水安定性の、例えばフッ化アミノエチルベンジルスルホニル(AEBSF)で置き換えることによって行う。これは、大型試料サイズの自動化において特に有用である。労働集約的アッセイ設定は、水系試薬および水感受性酵素阻害剤、例えばPMSFの混合を必要とするため、この順次的添加は、インキュベーション前に、試薬溶液中の均質性を確保するために、各ステップ間で激しく撹拌する必要がある。さらに、PMSFは、水媒体中で不安定であるため、新たに調製しなければならなり。AEBSFは、PMSFよりも遥かに毒性が低いという点において、さらなる利点を有する。本発明によると、水安定性AEBSFを含む試薬カクテルは、PMSF保存溶液と比較して、予想外にも、長期安定性プロファイルを有する。AEBSF含有試薬カクテルは、−20℃で最大約6ヶ月間、または室温で約1週間、保存可能である。
本発明は、アンジオテンシン1定量アッセイのためのキットを企図する。本発明のアンジオテンシン1定量アッセイのためのキットは、少なくとも1つのアッセイのために十分な量のAEBSFをリン酸緩衝生理食塩水溶液中に含むキットを含むことができる。また、本発明によって企図されるキットは、同位体標識内部標準物質およびマレイン酸を含んでいてもよい。キット内に分解標準物質を含むことが所望される場合、マレイン酸、AEBSFおよび分解標準物質を含む生成バッファーを含めることが可能である。典型的には、キットは、アンジオテンシン1の量を測定するために、パッケージ化された溶液を測定アッセイの際に使用するための有形形式(例えば、紙または電子媒体上に含有される)内に記録された指示を含んでいてもよい。
較正およびQCプールは、ウシ血清アルブミン45mg/mLを添加したリン酸緩衝生理食塩水からなる疑似血清を使用して調製された。測定可能量のアンジオテンシン1を含有しないヒトまたは非ヒト血漿または剥離血清の起源は同定されなかった。
典型的には、冷凍血漿試料および対照は、インキュベーション前に急速解凍され、プロレニンからレニンへの低温活性化を防止する。試料は、最大約3時間、37℃でインキュベーションされた。得られた試料から満足のできるPRA測定値が得られない場合、インキュベーション時間は、最大約18時間まで延長可能である。次いで、試料は、インキュベーションを停止するために、冷凍され(例えば、約−20℃の温度まで)、分析までこの状態で保存される。本発明にしたがえば、血漿レニンは、変換酵素、分解標準物質(バリンおよびイソロイシン同位体標識アンジオテンシン1)、ならびにアンジオテンシナーゼ阻害剤(EDTAおよびAEBSF)の存在下で、約1乃至2時間、pH5.7で、内因性レニン基質(アンジオテンシノゲン)とともに37±1℃でインキュベーションすることができる。
インキュベーション終了後、試料は、LC精製前に、液液抽出または固相抽出が行われてもよい。本発明では、アンジオテンシン1の抽出は、(オンラインまたはオフラインのいずれかで)HPLCと連結された好適な固相抽出カラムを利用して行う。好ましい実施形態によると、この方法は、インキュベーション後に各試料にギ酸を添加し、HPLC質量分析計と連結された固相抽出カラムに試料を直接負荷することを含む。
高性能液体クロマトグラフィー(HPLC)等の液体クロマトグラフィー(LC)は、比較的ゆっくりした層流の技術に依存する。従来のHPLC分析は、カラム充填に依存しており、カラムを通る試料の層流が、試料からの着目検体の分離の基本となる。当業者は、そのようなカラム内の分離が拡散プロセスであることを理解しており、アンジオテンシン1に用いるのに好適なHPLC装置およびカラムを選択することができる。クロマトグラフィーカラムは、典型的には、媒体(すなわち、充填成分)を含み、化学部分の分離(すなわち、分画)を促進する。媒体は、微粒子を含んでいてもよい。粒子は、種々の化学部分と相互作用する結合表面を含み、化学部分の分離を促進する。一つの好適な結合表面は、アルキル結合表面等の疎水性結合表面である。アルキル結合表面は、C−4、C−8、C−12、またはC−18結合アルキル基、好ましくは、C−8またはC−18結合基を含んでいてもよい。クロマトグラフィーカラムは、連結されたSPEカラムから試料を直接または間接的に受容するための流入ポートと、分画された試料を含む、流出物を排出するための流出ポートとを含む。一実施形態では、試料(または、予め精製された試料)は、流入ポートからカラムに適用され、溶媒または溶媒混合物を用いて溶離され、流出ポートから排出されることができる。着目検体を溶離するために、異なる溶媒モードが選択されてもよい。例えば、液体クロマトグラフィーは、勾配モード、等張モード、または多型(すなわち、混合)モードを使用して行われてもよい。クロマトグラフィーの際、成分の分離は、溶離剤(「移動相」としても知られる)、溶離モード、勾配条件、温度等の選択肢のような変数によって行われる。
ある実施形態では、検体は、着目検体はカラム充填成分によって可逆的に滞留されるが、1つ以上の他の成分は滞留されないという条件下で、カラムに試料を適用することによって精製することができる。これらの実施形態では、第1の移動相条件を用いてカラムによって着目検体を滞留させ、続いて、第2の移動相条件を用いて非滞留成分を洗い流した後に、滞留された成分をカラムから除去することができる。あるいは、検体は、着目検体が1つ以上の他の成分と比較して異なる速度で溶離する移動相条件下で、カラムに試料を適用することによって精製されてもよい。そのような手順により、1つ以上の着目検体の量を試料のうちの1つ以上の他の成分と比較して濃縮させることができる。
別の実施形態では、疎水性カラムクロマトグラフィーシステムのHPLC前に、固相抽出(SPE)カラムを用いることができる。ある好ましい実施形態では、ポリマー吸着剤を含むカラムが、HPLCシステムとオンラインで連結されてもよい。ある好ましい実施
形態では、SPEカラムおよびHPLCによる試料の精製は、移動相として、水中0.1%のHPLC等級超純粋ギ酸およびアセトニトリル中0.1%のギ酸を使用して行われてもよい。好ましくは、これらの実施形態で使用されるSPEカラムは、血漿からアンジオテンシンの80%超を回収可能である。
弁およびコネクタ配管の精選によって、1つ以上の固相抽出およびクロマトグラフィーカラムは、任意の手動ステップを必要とせずに成分が順次通過するように、必要に応じて接続することができる。好ましい実施形態では、弁および配管の選択は、予めプログラムされたコンピュータによって制御され、必要なステップを行う。最も好ましくは、クロマトグラフィーシステムはまた、検出器システム、例えば、MSシステムにも、そのようなオンライン式で接続される。したがって、操作者は、自動試料注入器内に試料のトレイを定置し、残りの操作は、コンピュータ制御下で行われ、選択された全試料の精製および分析を行うことができる。
質量分析法は、断片化された試料をイオン化して、さらなる分析のために荷電分子を生成するためのイオン源を含む、質量分析計を使用して行われる。種々の実施形態では、試験試料中に存在するアンジオテンシン1は、当業者に知られる任意の方法によってイオン化することができる。例えば、試料のイオン化は、電子イオン化、化学イオン化、エレクトロスプレーオン化(ESI)、光子イオン化、大気圧化学イオン化(APCI)、光イオン化、大気圧光イオン化(APPI)、高速原子衝撃(FAB)、液体二次イオン化(LSI)、マトリックス支援レーザー脱離イオン化(MALDI)、電界イオン化、電界脱離、サーモスプレー/プラズマスプレーイオン化、表面増強レーザー脱離イオン化(SELDI)、誘導結合プラズマ(ICP)、および粒子ビームイオン化によって行うことができる。当業者は、イオン化方法の選択肢が、測定される検体、試料の種類、検出器の種類、正対負モードの選択等に基づいて決定しうることを理解するであろう。
好ましい実施形態では、アンジオテンシン1は、エレクトロスプレーオン化(ESI)またはマトリックス支援レーザー脱離イオン化(MALDI)によってイオン化されてもよい。さらに好ましい実施形態では、アンジオテンシン1は、正モードにおいて、加熱エレクトロスプレーオン化(HESI)によってイオン化される。
試料がイオン化された後、それによって生成された正荷電または負荷電イオンを分析し、質量対電荷比を決定することができる。質量対電荷比を決定するための好適な分析器としては、三連四重極分析器、四重極分析器、イオントラップ分析器、フーリエ変換分析器、オービトラップ分析器、および飛行時間分析器が挙げられる。イオンは、いくつかの検出モードを使用して検出することができる。例えば、選択されたイオンは、走査モード、例えば、高選択性反応モニタリング(H−SRM)、多重反応モニタリング(MRM)、または選択的反応モニタリング(SRM)を使用して検出されてもよく、あるいは、イオンは、選択的イオンモニタリングモード(SIM)を使用して検出されてもよい。好ましくは、質量対電荷比は、三連四重極分析器を使用して決定される。例えば、「四重極」または「四重極イオントラップ」装置では、振動高周波電界内のイオンは、電極間に印加されるDC電位、RF信号の振幅、および質量/電荷比に比例する力を受ける。電圧および振幅は、特定の質量/電荷比を有するイオンのみが四重極の全長にわたって移動するが、他の全イオンは偏向されるように選択することができる。したがって、四重極装置は、装置内に注入されるイオンの「質量フィルタ」および「質量検出器」の両方として作用することができる。3つの四重極の線系列は、三連四重極質量分析計として知られる。第1(Q1)および第3(Q3)の四重極は、質量フィルタとして作用し、中間の(Q2)四重極は、衝突セルとして用いられる。この衝突セルは、He、Ar、またはNガス(〜10-3Torr、〜30eV)を使用して、Q1から選択された親イオンの衝突解離を誘起する、RFのみの四重極(非質量濾過)である。次に断片は、Q3へと通り、ここで完全に
濾過または走査されてもよい。
「タンデム質量分析法」または「MS/MS」を用いることによって、MS技術の選択性を向上させることができる。この技術では、着目分子から生成される前駆体イオン(親イオンとも呼ばれる)は、MS装置内で濾過され、続いて前駆体イオンは断片化されて1つ以上の断片イオン(娘イオンまたは生成物とも呼ばれる)を生じ、次にこれは第2のMS手順において分析される。前駆体イオンを精選すると、ある検体によって生成されるイオンのみが分画チャンバを通過し、ここで不活性ガスの原子との衝突によって断片イオンが生成する。前駆体および断片イオンの両方とも、所与の一連のイオン化/断片化条件下で、再現可能なように生成されるため、MS/MS技術は、非常に強力な分析ツールを提供し得る。例えば、濾過/分画の組み合わせを使用して、干渉物質を排除することができ、生物学的試料等の複雑な試料において特に有用であり得る。
質量分析計は、典型的には、ユーザーに、イオン走査、すなわち、所与の範囲(例えば、100乃至1000amu)にわたる、特定の質量/電荷を有する各イオンの相対存在度を提供する。検体アッセイの結果、すなわち、質量スペクトルは、当技術分野において知られる多数の方法によって、原試料中の検体の量と関連付けることができる。例えば、試料採取および分析パラメータを注意深く制御すると、所与のイオンの相対存在度を、その相対存在度を元の分子の絶対量に変換するテーブルと比較することができる。あるいは、分子標準物質を試料とともに分析し、それらの標準物質から生成されたイオンに基づいて標準曲線を構築してもよい。そのような標準曲線を使用して、所与のイオンの相対存在度を元の分子の絶対量に変換することができる。ある好ましい実施形態では、アンジオテンシン1の量を計算するために、内部標準物質を使用して標準曲線を生成する。そのような標準曲線を生成および使用する方法は、当技術分野において知られており、当業者は適切な内部標準物質を選択可能である。例えば、同位体標識アンジオテンシン1が内部標準物質として使用されてもよい。ある好ましい実施形態では、標準物質は同位体標識アンジオテンシン1であり、そのバリンサブユニットは、炭素原子が13C同位体と置換され、窒素原子が15N同位体と置換されたバリンで完全に置き換えられたものである。イオンの量を元の分子の量と関連付けるための多数の他の方法は、当業者には知られているであろう。
前駆体イオンがさらなる断片化のために単離されるMS/MS等の実施形態では、多くの場合、衝突活性化解離を使用して、さらなる検出のために断片イオンを生成する。CADでは、前駆体イオンは、不活性ガスとの衝突によりエネルギーを得て、続いて、「単分子分解」と称されるプロセスによって断片化する。イオン内のある結合が振動エネルギーの増加によって破壊され得るように、十分なエネルギーが前駆体イオン内に蓄積されなければならない。
特に好ましい実施形態では、アンジオテンシン1は、以下のように、MS/MSを使用して定量化される。試料を、液体クロマトグラフィーに供し、好ましくは固相抽出カラムに続いてHPLCに供し、クロマトグラフィーカラムからの液体溶媒の流れは、MS/MS分析器の加熱された噴霧器界面に入り、界面の加熱された管内で溶媒/検体混合物が蒸気に変換される。噴霧された溶媒中に含まれる検体(例えば、アンジオテンシン1)は、噴霧された溶媒/検体混合物に高電圧を印加する界面のコロナ放電ニードルによってイオン化される。イオン、例えば、前駆体イオンは、装置の開口を通過し、第1の四重極に入る。四重極1および3(Q1およびQ3)は質量フィルタであって、その質量対電荷比(m/z)に基づいて、イオン(すなわち、「前駆体」および「断片」イオン)の選択を可能にする。四重極2(Q2)は、衝突セルであって、ここでイオンが断片化される。質量分析計(Q1)の第1の四重極は、アンジオテンシン1の質量対電荷比をもつ分子を選択する。正確な質量/電荷比のアンジオテンシン1を有する前駆体イオンは、衝突チャンバ
(Q2)内へと通過することができるが、任意の他の質量/電荷比を有する望ましくないイオンは、四重極の両側に衝突して排除される。Q2に流入する前駆体イオンは、中性衝突ガス分子、例えば、アルゴンガス分子と衝突し、断片化する。このプロセスは、衝突活性化解離(CAD)と呼ばれる。生成された断片イオンは、四重極3(Q3)内へと通過し、ここでは、アンジオテンシン1の断片イオンが選択されるが、他のイオンは排除される。
この方法は、正または負イオンモードのいずれかで行われるMS/MSを含むことができる。当技術分野において知られる標準方法を使用して、当業者は、四重極3(Q3)内での選択のために使用され得る、アンジオテンシン1の特定の前駆体イオンの1つ以上の断片イオンを特定することができる。
イオンが検出器と衝突すると、イオンはデジタル信号に変換される電子のパルスを生成する。取得されたデータは、コンピュータに中継され、収集されたイオン数対時間としてプロットされる。得られた質量クロマトグラムは、従来のHPLC法で生成されるクロマトグラムに類似する。特定のイオンに対応するピーク下の面積、またはそのようなピークの振幅が測定され、その面積または振幅は、着目検体(アンジオテンシン1)の量と相関する。ある実施形態では、断片イオンおよび/または前駆体イオンの曲線下の面積あるいはピークの振幅を測定して、アンジオテンシン1の量を決定する。上述のように、所与のイオンの相対存在度は、同位体標識アンジオテンシン1等の内部分子標準物質の1つ以上のイオンのピークに基づく較正標準曲線を使用して、元の検体、例えば、アンジオテンシン1の絶対量に変換されてもよい。
これらのデータは、コンピュータに中継され、イオン数対時間のプロットとして生成されてもよい。ピーク下の面積が決定され、Ang1/内部標準物質の標準物質濃度対ピーク面積比をプロットすることによって、較正曲線が構築される。較正曲線を使用して、試料中のアンジオテンシン1および選択された内部標準物質の量が決定される。所与の時間にわたるアンジオテンシン1の形成速度、すなわち、試料のインキュベーションの間に形成されるアンジオテンシン1の量は、これらの測定値から計算可能である。この速度は、試料中のレニン活性の指標である。
データ還元の基礎プロセスは、手動でまたはコンピュータソフトウェアの補助により行うことが可能である。以下の計算に従って、血漿の希釈および生成時間を考慮して、最終PRA値を決定する:
式中、xは血漿試料(plasma)の体積、yは添加される緩衝剤(buffer)の体積、およびzは試料のインキュベーション時間(hours)である。
次いで、ng/mLとして報告されたLC定量化による結果をfで乗じ、毎時mLあたりのngにおけるPRAアッセイの補正測定値を求める。最終結果gaアッセイの線形範囲に入るよう試料が希釈されている場合、最終結果にも希釈度を乗じる。
ある血漿試料は、高活性度を保有し、アンジオテンシン1の生成後にこれを分解する。ある実施形態では、分解標準物質を使用して、その生成後のアンジオテンシン1の分解度を測定してもよい。これらの実施形態では、分解標準物質は、インキュベーション前に試料に添加される。内部標準物質は、インキュベーション後、質量分析の前に添加される。分解度は、分解標準物質の観察量と内部標準物質の観察量との比較によって決定すること
ができる。分解標準物質は、1つ以上の13Cおよび/または15N標識アミノ酸が組み込まれた合成ペプチドであってもよい。これは、イオン化されたときに、非標識アンジオテンシン1および内部標準物質のイオン化により生成されるイオンとは異なるm/zを有する、少なくとも1つのイオンを生成する。そのような実施形態における分解係数の計算は、さらなる考慮を必要とする。%分解は、以下のように計算することができる。
最初に、3つのBio−Rad QC試料について、分解標準物質(DS)と分析内部標準物質(IS)の平均面積比を計算することによって、ベースライン比(BR)を計算する。
次いで、各患者試料の%分解を計算する。
以下の実施例は、本発明を例証するのに役立つ。これらの実施例は、この方法の範囲を限定するものとして意図されるものではない。
実施例1:試料および試薬の調製
試薬:アンジオテンシン1、フッ化アミノエチルベンジルスルホニル(AEBSF)、ウシ血清アルブミン(プロテアーゼ無し)、無水マレイン酸、リン酸緩衝生理食塩水錠剤(PBS錠剤)、ギ酸、およびBio−Rad Lyphocheck対照は、それぞれの供給者から購入した。同位体標識Ang1標準物質はカスタム合成した。内部標準物質は、質量差+6Daとなるように、天然バリンを13Cおよび15N原子を含有するバリンと全置換した単一同位体標識Ang1である。同様に、アッセイで使用される分解標準物質は、質量差+13Daとなるように、天然バリンとイソロイシンを13Cおよび15N原子を含有するバリンとイソロイシンと全置換した二重同位体標識Ang1である。
分析内部標準物質(分解標準物質を含む)は、1つ以上の13Cおよび/または15N標識アミノ酸を包含する合成ペプチドであってもよい。本実施例で使用される内部標準物質の一次配列は、バリン同位体標識Ang1(DR[V15N,13C]YIHPFHL)である。合成は、2−5mgの規模で行い、最終純度仕様>95%とした。ペプチドは、個々のアリコートに封入し、総ペプチド含有量をバイアルあたり2nmolとした。加えて、バリンおよびイソロイシン同位体標識Ang1を含む分解標準物質、すなわち、DR[V15N,13C]Y[I15N,13C]HPFHLを調製した。合成は、2−5mgの規模で行い、最終純度仕様>95%とした。ペプチドは、個々のアリコートに封入し、総ペプチド含有量をバイアルあたり2nmolとした。
検査全体を通して、2回蒸留脱イオン化水、HPLC用メタノールおよびアセトニトリルとを使用した。以下の手順に従って、疑似血清を調製した。最初に、PBS2錠とともに、300mLの水をメスシリンダーに加えた。次いで、22.5gのウシ血清アルブミンを添加し、完全に混合した。次に、0.02gのAEBSFを添加し、完全に混合した。最後に、最終体積500mLになるのに十分な水を添加した。
生成カクテル、すなわち、インキュベーション溶液の調製は、所与のアッセイ設定における試料の数に依存する。表1(以下)に示される体積は、移動のための十分な体積を確保するために、余剰分20%を含む。マレイン酸、AEBSF、および分解標準物質(例えば、DR[V15N,13C]Y[I15N,13C]HPFHL)を、15mLのPP管内で混合した。
AEBSF保存溶液の安定性を評価した。0.91グラムのAEBSF粉末を15mLのコーニング(Corning)管に入れ、10mLのペプチド溶媒に溶解させた。この溶液の0.5mLのアリコートを、1.5mLのヌンク(Nunc)クリオバイアルに入れた。このように保存することによって、溶液は、−20℃で保存した時に最大約6ヶ月、室温で保存した時に約1週間、安定であることが認められた。
実施例2:較正物質および対照
疑似血清を使用したマトリクスに既知の量のアンジオテンシン1を注入することによって、較正物質を調製した。較正系の濃度は、0.0(空包)、0.14、0.27、1.1、2.19、8.79、35.15、および43.2ng/mLとした。QCプールは、1.1、8.7、および35ng/mLで調製した。対照は、BioRadから入手し、高、中、低レニン活性の試料からなる。品質保証のために、QCプールおよび較正物質は、各試料バッチごとに用いた。
実施例3:生成のための試料調製
送風機または室温水浴を使用して、凍結試料を急速に室温に戻した。急速解凍は、プロレニンからレニンへの低温活性化を防止するために重要であるため、標本を断続的に反転されて解凍プロセスを加速させた。解凍後、試料を室温で静置した。全血漿試料は、試験前に十分にボルテックスした。
実施例4:インキュベーション手順
250uLのEDTA血漿を、25uLの生成カクテル(マレイン酸0.275M、AEBSF1mM、分解標準物質4uM)と混合した。約1−3時間、約37℃で試料をインキュベーションし、続いて、2uMの分析内部標準物質を含有する略等体積の10%ギ酸と混合した。
実施例5:試験試料からのアンジオテンシンIの精製
クロマトグラフィーステップはすべて、Cohesive TLX4経路式システムを使用して実行された。
溶媒A(水中0.1%ギ酸)を使用した2.1mmx20mm 25uM HLB抽出カートリッジに、100uLの酸性化した試料を注入した。抽出カートリッジを、溶媒A(水中0.1%ギ酸)と溶媒B(アセトニトリル中0.1%ギ酸)の80:20混合物1
00uLを使用して、溶離させた。溶出液を溶媒Aと1:3の比率で混合し、2.1mmx50mm5uM Xbridge 130 BEH分析カラムに適用した。検体を分析カラムに移した後、95%A乃至65%溶媒Aの勾配を作成した。勾配の間の適切な時間において、流れを廃棄物から変えて質量分析計に向けた。次の注入前に、抽出カートリッジおよび分析カラムの両方を洗浄し、その場で再平衡化した。
実施例6:MS/MSによるアンジオテンシン1の検出および定量
正イオンモードにおいて、HESI(加熱エレクトロスプレーイオン化)源を備えるTSQ Quantum Ultraを使用して、MS/MSを行った。検体および内部標準物質の定量的分析のために、選択的反応モニタリングを使用した。検体、分析内部標準物質、および分解標準物質それぞれに対して、2つずつ、6つの遷移をモニタリングした。検体と内部標準物質との間のピーク面積比を、一連の既知のアンジオテンシン1保存物に対して較正し、次いで、1/x加重線形回帰を使用して、較正曲線を構築した。選択されたMS/MSパラメータを、以下の表2に列挙する。
イオンを、質量対電荷比433.0±0.5m/z[M+3H]3+を有するイオンを選択するように設定された第1の四重極(Q1)を通過させた。四重極2(Q2)に流入するイオンをアルゴンガスと衝突させて、イオン画分を生成し、さらなる選択のために、四重極3(Q3)に通した。同時に、同位体希釈質量分析法を使用した同一プロセスを、同位体標識アンジオテンシン1内部標準物質または同位体標識アンジオテンシン1分解標準物質について行った。正極性での検証の際には、検出および定量のために、以下の質量遷移を使用した。
これらのデータは、コンピュータに中継され、イオン数対時間のプロットを生成した。ピーク下の面積を測定し、検体/内部標準物質の標準濃度対ピーク面積比をプロットすることによって、較正曲線を構築した。較正曲線を使用して、アンジオテンシン1および選択された内部標準物質の濃度を試料に対して定量化した。例示的較正曲線を図3に示す。それぞれ、低濃度較正物質のAng1(m/z=433.0±0.5)、内部標準物質(m/z=434.8±0.5)、および分解標準物質(m/z=437.3±0.5)の例示的質量クロマトグラムを、図4A、B、ならびにCに示す。同様に、図5A、B、およびCは、それぞれ、0.1ng/mL/時間PRAを示す患者試料のAng1(m/z=433.0±0.5)、内部標準物質(m/z=434.8±0.5)、ならびに分解標準物質(m/z=437.3±0.5)の例示的質量クロマトグラムを示す。
実施例7:アッセイ内およびアッセイ間の精度と正確度
単回アッセイにおいて、3つのQCプールのそれぞれから8つのアリコートを分析し、アッセイ内の試料の再現性(CV)を判定した。以下の値が測定された。
実施例8:分析感度:検出限界(LOD)および定量限界(LOQ)
検出限界(LOD)は、測定値がその付随する不確定性を上回る点である。アンジオテンシン1ゼロ標準物質を17回複製し、得られた面積比を、較正物質に基づいて濃度に逆算し、アッセイの検出限界を決定した。アンジオテンシン1アッセイの検出限界(LOD)は、30fmol/mLであった。
精度20%および正確度80%乃至120%で、定量限界(LOQ)を決定するために、予測されるLOQと近濃度の5つの異なる試料をアッセイし、それぞれに対して、再現性を測定した。アンジオテンシン1アッセイのLOQは、0.03ng/mLであった。
実施例9:アッセイ報告可能範囲および線形性
アッセイにおいて、アンジオテンシン1検出の線形性を確立するために、ゼロ標準物質として割り当てられた1つの空包と、8つの人工血清注入試料(較正物質)を調製し、連続しない5日間にわたって分析した。連続5回の加重(1/x)線形回帰分析から、相関係数0.995以上が得られ、正確度±20%で、77乃至100,000fmol/mLの定量化可能な線形範囲を示した。
実施例10:3時間インキュベーションの血漿レニン活性の計算
3時間インキュベーションに対して、データ還元の基礎プロセスを行った。以下の計算に従って、上述の実施例3−9で分析された試料の最終PRA値を決定する際、血漿の希釈および生成時間を考慮した。
次いで、ng/mLとして報告されたLC定量化の結果を0.367で乗じ、毎時mLあたりのngとして、PRAアッセイの補正測定値を求めた。この特定の実施例では、追加補正は必要なかったが、最終結果をアッセイの線形範囲に組み入れるために試料が希釈されている場合には、最終結果にも希釈度を乗じる。
本明細書に記述または引用された論文、特許、特許出願、ならびに他の全文書および電子的に利用可能な情報の内容は、各個々の刊行物が参照により具体的かつ個々に組み入れられるように示される場合と同程度において、参照により全体として本明細書に援用される。出願人は、いずれのそのような論文、特許、特許出願、または他の物理的および電子的文書からのあらゆる内容および情報も、物理的に本明細書に援用する権利を留保する。
本明細書に例証的に説明された方法は、本明細書に具体的には開示されていない、いずれの要素または複数の要素、限定あるいは複数の限定の不在下であっても、好適に実践され得る。したがって、例えば、用語「comprising(含む)」、「including(含む)」、「containing(含有する)」等は、限定されることなく、広義に捉えられるものとする。加えて、本明細書で使用される用語および表現は、限定ではなく、説明の観点から使用されており、そのような用語および表現の使用において、図示および説明される特徴またはその一部のいずれの同等物も除外することを意図するものではない。請求される発明の範囲内において種々の修正が可能であることを認識されたい。したがって、本発明は、好ましい実施形態および任意の特徴によって具体的に開示されているが、当業者は、本明細書に開示され具現化される本発明の修正および変形例をなすことができ、そのような修正および変形例は、本発明の範囲内であるとみなされることが理解される。
本発明は、本明細書において、広義かつ一般的に説明されている。一般的開示内の狭義の種および亜属群のそれぞれもまた、この方法の一部を形成するものである。これには、削除される成分が本明細書に具体的に列挙されているかどうかにかかわらず、分類群から任意の対象物を除去するという条件付きまたは消極的限定付きで、この方法の一般的説明も含まれる。
他の実施形態も、以下の請求項の範囲内である。加えて、この方法の特徴または側面がマーカッシュグループの観点から説明される場合、当業者は、本発明は、それによって、マーカッシュグループの任意の個々の部材または亜群の観点からも説明されることを認識
するであろう。

Claims (6)

  1. 試料中のアンジオテンシン1の量を測定するための方法であって、
    (a)レニンを含む試料をレニンに対して有効ではない水安定性プロテアーゼ阻害剤と混合するステップと、
    (b)レニンが試料中にアンジオテンシン1を生成するのに適した条件下で、前記試料をインキュベーションするステップと、
    (c)液体クロマトグラフィーによって、前記試料からアンジオテンシン1を精製するステップと、
    (d)精製したアンジオテンシン1をイオン化して、質量分析法によって検出可能な1つ以上のイオンを生成するステップと、
    (e)質量分析法によって、イオンの量を検出するステップであって、検出された前記イオンの量を使用して、前記試料中に生成したアンジオテンシン1の量を測定するステップと、
    を含む方法であって、定量限界が0.05ng/mL以下である前記方法
  2. 前記試料中のアンジオテンシン1の量に基づいて、試料中のレニンの活性を測定するステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
  3. 前記水安定性プロテアーゼ阻害剤は、フッ化アミノエチルベンジルスルホニル(AEBSF)である、請求項1または2に記載の方法。
  4. 前記イオンは、433.0±0.5、619.4±0.5、647.4±0.5、および1297±0.5の質量/電荷比をもつイオンから成る群から選択される1つ以上のイオンを含む、請求項1−3のいずれか1項に記載の方法。
  5. 前記イオン化ステップは、433.0±0.5の質量/電荷比をもつ前駆体イオンを生成するステップと、619.4±0.5または647.4±0.5の質量/電荷比をもつイオンから成る群から選択される、1つ以上の断片イオンを生成するステップとを含む、請求項1−4のいずれか1項に記載の方法。
  6. 前記液体クロマトグラフィーは固相抽出カラムを含む、請求項1−5のいずれか1項に記載の方法。
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