JP5854268B2 - 回転電機の固定子 - Google Patents

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Description

本発明は、車両等に搭載されて電動機や発電機として使用される回転電機に関する。
従来の回転電機の固定子として、例えば特許文献1及び2に開示されているように、周方向に配列された複数のスロットを有する円環状の固定子鉄心と、前記スロット内で複数の電気導体が径方向に並ぶようにして前記固定子鉄心に巻装された固定子巻線と、を備えたものが知られている。
特許文献1には、導体線の絶縁被膜の損傷発生を防止して電気絶縁性を向上させるために、固定子鉄心の各スロット内に、断面レーストラック状の複数の電気導体を径方向1列に整列した状態に収容させる構成が開示されている。
また、特許文献2には、周方向に分割された複数の分割コアを円環状に組み付けてなる固定子鉄心を備え、その分割コアは、バックコア部から径方向に突出してその側面でスロットを区画する2本のティース部を有し、そのティース部のコーナが面取り又はR仕上げされている構成が開示されている。
国際公開WO2004/062065号公報 特開2009−213309号公報
ところで、上記のように構成される回転電機では、一般にスロット内部が高磁気抵抗であるため、スロット内部への磁束流入を避けるような磁路、即ち低磁気抵抗のティース部を通過するような磁路が形成される。しかし、形成される磁路の一部にはスロット内部を貫く漏洩磁束が存在する。そのため、特許文献1の回転電機の場合には、漏洩磁束によってスロット内に配置された電気導体の内部に渦状に分布した電流が流れ、この渦電流により発生する損失(渦電流損)が高効率化の妨げとなり問題となる。
一方、特許文献2の回転電機の場合には、ティース部のコーナが面取り又はR仕上げされていることにより、渦電流損による高効率化の妨げを回避することが可能である。しかし、特許文献2の回転電機では、ティース部のコーナが面取り又はR仕上げされているために、ギャップと対向するティース部の突出先端面の表面積が小さく、高出力化が阻害されるという問題がある。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、高効率化と高出力化を両立し得るようにした回転電機の固定子を提供することを解決すべき課題とするものである。
上記課題を解決するためになされた請求項1に記載の発明は、周方向に配列された複数のスロットを有する円環状の固定子鉄心と、前記スロット内で複数の電気導体が径方向に並ぶようにして前記固定子鉄心に巻装された固定子巻線と、を備えた回転電機の固定子において、前記スロット内に配列された複数の前記電気導体のうち少なくとも最内径側に配置された電気導体は、内径側の周方向両側の角部に、径方向に広がる第1平面と前記第1平面と直角に交わる第2平面とにより形成された断面L字状の切欠き部を有し、内径側の周方向幅が外径側の周方向幅よりも狭くされていることを特徴とする。
請求項1に記載の発明によれば、スロット内に配列された複数の電気導体のうち少なくとも最内径側に配置された電気導体は、内径側の周方向幅が外径側の周方向幅よりも狭くされている。そのため、回転電機の作動時に発生する漏洩磁束は、スロット内部を通過するものの電気導体の内部を貫くことはないので、渦電流損が抑制され、高効率化が可能となる。また、ティース部のコーナの面取りやR仕上げが不要となり、ギャップと対向するティース部の突出先端面の大きな表面積を確保することができるので、高出力化が可能となる。したがって、本発明によれば、高効率化と高出力化を両立させることができる。
さらに、本発明では、最内径側に配置された電気導体が、内径側の周方向幅が外径側の周方向幅よりも狭くされていることから、その電気導体とスロットを区画するティース部の側面との間の隙間は、スロットの外径側よりも内径側の方が大きくなる。そのため、固定子巻線を固定子鉄心に固定するために固定子鉄心の内周側からワニスを塗布する際に、ワニスのスロット内部への浸透性を向上させることができる。
参考例1に係る回転電機の軸方向断面図である。 参考例1に係る固定子の全体斜視図である。 参考例1に係る固定子の部分的な断面図である。 参考例1において用いられる導体セグメントの模式的斜視図である。 参考例1において固定子鉄心のスロットに導体セグメントを挿入する状態を示す説明図である。 参考例1に係る固定子の接合側エンド部の一部を示す斜視図である。 参考例1において導体セグメントが収容される固定子鉄心のスロットを説明するための固定子の部分断面図である。 (a)は参考例1において各スロット内の最内径側に配置された電気導体の断面図であり、(b)参考例2に係る電気導体の断面図である。 (a)は参考例3に係る電気導体の断面図であり、(b)は参考例4係る電気導体の断面図である。 (a)は参考例5に係る電気導体の断面図であり、(b)は参考例6に係る電気導体の断面図である。 (a)は参考例7において各スロット内の最内径側に配置された電気導体の断面図であり、(b)参考例8に係る電気導体の断面図である。 参考例9に係る電気導体の断面図である。 実施形態1に係る電気導体の断面図であり、(b)は参考例10に係る電気導体の断面図である。
以下、本発明に係る回転電機の固定子の参考例及び実施形態について図面を参照して具体的に説明する。
参考例1
図1は、参考例1に係る回転電機の軸方向断面図である。図2は、参考例1に係る固定子の全体斜視図である。参考例1に係る回転電機1は、車両用交流発電機として用いられるものであって、図1に示すように、電機子として働く固定子2と、界磁として働く回転子3と、固定子2および回転子3を収容し、締結ボルト4cによって連結、固定されたフロントハウジング4aおよびリアハウジング4bと、交流電力を直流電力に変換する整流器5等を含んで構成されている。
固定子2は、図2に示すように、固定子鉄心22と、複数の導体セグメント23により構成されたセグメント型の固定子巻線21と、固定子鉄心22および固定子巻線21間を電気絶縁するインシュレータ24とを備えている。この固定子2は、フロントハウジング4aおよびリアハウジング4b間で挟持されることにより固定されており、回転子3の外周側に所定のエアギャップG(図3参照)を介して配置されている。固定子2の詳細な構造については後述する。
回転子3は、図1に示すように、フロントハウジング4aおよびリアハウジング4bに回転可能に支持されたシャフト33と一体になって回転するもので、ランデル型ポールコア32と、界磁巻線31とを備えている。なお、シャフト33の前端部には、自動車に搭載された走行用のエンジン(図示せず)に図示しないベルト等を介して連結されたプーリ20が固定されている。
ランデル型ポールコア32はフロント側およびリア側の一組のポールコア32a、32bを組み合わせて構成されている。各ポールコア32a、32bは、それぞれが6個の爪状磁極部32cを有し、絶縁処理された銅線を円筒状かつ同心状に巻回して構成された界磁巻線31を前後両側から挟み込むようにシャフト33に嵌挿されている。参考例1では、ポールコア32a、32bは、各8個の磁極を持ち、即ち、16極の回転子3を形成している。
フロントハウジング4aの軸方向端面(前端面)およびリアハウジング4bの軸方向端面(後端面)には、吸入孔42a、42bがそれぞれ設けられている。そして、フロント側の吸入孔42aから吸い込んだ冷却風を軸方向および径方向に吐き出すための斜流ファン35がフロント側のポールコア32aの前端面に溶接等により固着されている。同様に、リア側の吸入孔42bから吸い込んだ冷却風を径方向に吐き出すための遠心ファン36がリア側のポールコア32bの後端面に溶接等により固着されている。また、フロントハウジング4aおよびリアハウジング4bには、固定子鉄心22の軸方向両端から突出した固定子巻線21のコイルエンド部に対向した部分に冷却風の吐出孔41がそれぞれ設けられている。
シャフト33の後端部近傍には、界磁コイル31の両端に電気的に接続されたスリップリング37、38が形成されており、これらのスリップリング37、38を介してブラシ装置7から界磁コイル31に対して給電が行われるようになっている。
上述した構成を有する車両用交流発電機1は、ベルト等を介してプーリ20にエンジンからの回転力が伝えられると、回転子3がシャフト33と共に所定方向に回転する。この状態で、スリップリング37、38を介してブラシ装置7から回転子3の界磁コイル31に励磁電圧を印加することにより、ポールコア32a、32bのそれぞれの爪状磁極部32cが励磁されて、回転子3の回転周方向に沿って交互にNS磁極が形成される。これにより、固定子巻線21に三相交流電圧を発生させることができ、整流器5の出力端子から所定の直流電流を取り出すことができる。
次に、固定子2の詳細について説明する。図3は、参考例1に係る固定子の部分的な断面図である。図4は、参考例1において用いられる導体セグメントの模式的斜視図である。図5は、参考例1において固定子鉄心のスロットに導体セグメントを挿入する状態を示す説明図である。図6は、参考例1に係る固定子の接合側エンド部の一部を示す斜視図である。図7は、参考例1において導体セグメントが収容される固定子鉄心のスロットを説明するための固定子の部分断面図である。なお、以下の説明において、軸方向とは、固定子鉄心22の軸方向を意味し、径方向とは、固定子鉄心22の径方向を意味し、周方向とは、固定子鉄心22の周方向を意味するものとする。
固定子鉄心22は、円環状の複数の電磁鋼板を軸方向に積層して形成されている。この固定子鉄心22は、外周部を構成する円環状のバックコア部22aと、バックコア部22aから径方向内方へ突出し周方向に所定距離を隔てて配列された複数のティース部22bとを有する。固定子鉄心22の隣接する二つのティース部22bの間には、多相の固定子巻線21を収容できるように、断面略矩形状のスロット25が形成されている。参考例1では、回転子3の磁極数16に対応して、2組の3相の固定子巻線21を収容するように、96個のスロット25が周方向に等間隔に配置されている。なお、ティース部22bの突出先端部には、周方向両側へそれぞれ延出する鍔部が形成されており、周方向に対向する鍔部同士の間にスロット25の内径側開口部が形成されている。スロット25の内径側開口部には、インシュレータ24は配置されていない。
固定子鉄心22のスロット25に装備された固定子巻線21は、接合端部23f同士が互いに接合された複数の略U字状の導体セグメント23により構成されている。なお、導体セグメント23の外周には絶縁被膜23dが被覆されており、導体セグメント23両端の先端部には、絶縁被膜23dを剥離することによって内部の導体が露出した導体露出部23iが設けられている。
この導体セグメント23は、図5に示すように、一対の直線部23g、23gとそれぞれの直線部23g、23gの一端部同士を連結するターン部23hとからなるU字形状のものが採用されている。このU字形状の導体セグメント23は、一対の直線部23g、23gが所定のスロットピッチ離れた2個のスロット25内に軸方向に挿入された後、スロット25から軸方向の外部に延出する直線部23g、23gの開放端部が、周方向に所定の角度をもって斜めに斜行するように折り曲げられている。
これにより、導体セグメント23は、図4に示すように、スロット25内に収容され軸方向に沿って直線状に延びる一対のスロット収容部23a、23aと、スロット25から軸方向に露出し周方向に延び出すコイルエンド部とを有する。コイルエンド部は、各スロット収容部23a、23aの一端同士を連結するように一体に設けられてスロット25の軸方向一端側(車両用交流発電機1のリア側で図1の右側。以下、同様)から突出するターン側エンド部23bと、各スロット収容部23a、23aの他端に一体に設けられてスロット25の軸方向他端側(車両用交流発電機1のフロント側で図1の左側。以下、同様)から突出する一対の接合側エンド部23c、23cとから構成されている。
ターン側エンド部23bは、その先端に湾曲変形により形成された略V字状のターン部23hを有している。一方、接合側エンド部23cは、屈曲変形により形成されて固定子鉄心22の軸方向端面に対して所定の角度をもって斜めに斜行する接合側斜行部23eと、この接合側斜行部23eの先端に一体に形成され、屈曲変形により形成された接合端部23fとを有している。なお、この接合端部23fは、絶縁被膜23dが剥離されて内部の導体が露出した導体露出部23iとなっている。
固定子鉄心22の各スロット25には、それぞれ偶数本(参考例1では4本)の電気導体(各導体セグメント23のスロット収容部23a)が収容されている。一のスロット25内の4本の電気導体は、図3に示すように、径方向に沿って内側から内端層、内中層、外中層、外端層の順で一列に配列されている。なお、一のスロット25内の4本の電気導体は同相の固定子巻線21を形成している。
各スロット25内に配列された4本の電気導体のうち最内径側に配置された内端層の電気導体231aは、内径側の周方向幅が外径側の周方向幅よりも狭くされている。具体的には、内端層の電気導体231aは、図3及び図8(a)に示すように、内径側の周方向両側の角部に面取りが施されることによって、電気導体231aの周方向幅が外径側から内径側に向かって狭くなるように傾斜する傾斜面27を有する。この傾斜面27の径方向に対する傾斜角度は、回転電機1の作動時にスロット内を通過する漏洩磁束(鎖交磁束)の傾斜角度に応じて適宜設定されている。
各スロット25内に収容されたこれらの電気導体が所定のパターンで接続されることにより、固定子巻線21が形成される。なお、参考例1では、スロット25内の電気導体は、軸方向一端側のターン側エンド部23bにおいては、ターン部23hを経由することにより、また、軸方向他端側の接合側エンド部23cにおいては、接合端部23f同士をアーク溶接によって接合することにより、電気的に接続されている。即ち、固定子鉄心22の軸方向一端側には、スロット25から突出した多数のターン部23hによって第1コイルエンド群が形成され、固定子鉄心22の軸方向他端側には、スロット25から突出した多数の接合側エンド部23cによって第2コイルエンド群が形成されている(図6参照)。
各スロット25内の1本の電気導体は、所定の磁極ピッチ離れた他のスロット25内の1本の他の電気導体と対をなしている。
例えば、図7に示すように、一のスロット25内の内端層の電気導体231aは、固定子鉄心22の時計回り方向に向けて1磁極ピッチ(NS磁極ピッチ)離れた他のスロット25内の外端層の電気導体231bと対をなしている。同様に、一のスロット25内の内中層の電気導体232aは、固定子鉄心22の時計回り方向に向けて1磁極ピッチ離れた他のスロット25内の外中層の電気導体232bと対をなしている。そして、固定子鉄心22の軸方向一端側のターン側エンド部23bにおいて、これらの対をなす電気導体、すなわち内端層の電気導体231aと外端層の電気導体231bとはターン部23h(231c)を経由することにより接続され、また、内中層の電気導体232aと外中層の電気導体232bとはターン部23h(232c)を経由することにより接続されている。
したがって、固定子鉄心22の軸方向一端側においては、内中層の電気導体232aと外中層の電気導体232bとを接続するターン部23h(232c)を、内端層の電気導体231aと外端層の電気導体231bとを接続するターン部23h(231c)が囲むこととなる。このように、固定子鉄心22の軸方向一端側においては、対をなす電気導体同士の接続部としてのターン部23h(232c)が、同じスロット25内に収容された他の対をなす電気導体同士の接続部としてのターン部23h(231c)により囲まれる。そして、内中層の電気導体232aと外中層の電気導体232bとを接続するターン部23h(232c)により中層コイルエンドが形成され、また、内端層の電気導体231aと外端層の電気導体231bとを接続するターン部23h(231c)により端層コイルエンドが形成される。
一方、一のスロット25内の内中層の電気導体232aは、固定子鉄心22の時計回り方向に向けて1磁極ピッチ離れた他のスロット25内の内端層の電気導体231a’とも対をなしている。同様に、一のスロット25内の外端層の電気導体231b’は、固定子鉄心22の時計回り方向に向けて1磁極ピッチ離れた他のスロット25内の外中層の電気導体232bとも対をなしている。そして、固定子鉄心22の軸方向他端側の接合側エンド部23cにおいて、これらの対をなす電気導体、すなわち内中層の電気導体232aと内端層の電気導体231a’とは、接合端部23f同士(232dと231d’)の接合により接続されている。また、外端層の電気導体231b’と外中層の電気導体232bとは、接合端部23f同士(231e’と232e)の接合により接続されている。
したがって、固定子鉄心22の軸方向他端側においては、内中層の電気導体232aおよび内端層の電気導体231a’を接続する内側接合部(接合端部232dおよび231d’により構成されるもの)と、外端層の電気導体231b’および外中層の電気導体232bを接合する外側接合部(接合端部231e’および232eにより構成されるもの)とが、径方向および周方向に互いにずれた状態で配置されている。そして、内中層の電気導体232aおよび内端層の電気導体231a’を接続する内側接合部(接合端部232dおよび231d’により構成されるもの)と、外端層の電気導体231b’および外中層の電気導体232bを接合する外側接合部(接合端部231e’および232eにより構成されるもの)とにより、異なる同心円上に配置された2つの隣接層コイルエンドが形成される。
なお、外側接合部および内側接合部の導体露出部23iやその近傍には、これらの接合部の互いの絶縁と保持のために、図示しない絶縁樹脂部材によるコーティングがなされている。
さらに、図3に示すように、内端層の電気導体231aと外端層の電気導体231bとが、一連の導電体をほぼU字状に成形してなる大セグメント231(図5参照)により提供される。そして、内中層の電気導体232aと外中層の電気導体232bとが一連の導電体を略U字状に成形してなる小セグメント232(図5参照)により提供される。なお、基本となる略U字状の導体セグメント23は、大セグメント231および小セグメント232によって構成される。
以上の構成を、全てのスロット25の基本となる導体セグメント23について繰り返す。なお、固定子巻線21の各相について、基本となる導体セグメント23により、固定子鉄心22の周りを2周する巻線(コイル)が形成される。しかし、固定子巻線21の各相について、出力用引き出し線および中性点用引き出し線を一体に有するセグメント、並びに1周目と2周目とを接続するターン部23hを有するセグメントは、基本となる導体セグメント23とは異なる異形セグメントで構成される。これら異形セグメントを用いて、固定子巻線21の各相の巻線端が星型結線により結線される。
以上のように構成された参考例1の回転電機1によれば、スロット25内に配列された複数の電気導体のうち少なくとも最内径側に配置された電気導体231aは、内径側の周方向幅が外径側の周方向幅よりも狭くされている。そのため、回転電機1の作動時に発生する漏洩磁束(鎖交磁束)は、図3に示すように、スロット25内部を通過するものの電気導体231aの内部を貫くことはないので、渦電流損が抑制され、高効率化が可能となる。また、ティース部22bのコーナの面取りやR仕上げが不要となり、エアギャップGと対向するティース部22bの突出先端面の大きな表面積を確保することができるので、高出力化が可能となる。したがって、参考例1の回転電機1によれば、高効率化と高出力化を両立させることができる。
また、参考例1では、最内径側に配置された電気導体231aは、電気導体231aの周方向幅が外径側から内径側に向かって狭くなるように傾斜する傾斜面27により形成されているため、内径側の周方向幅が外径側の周方向幅よりも狭くされている電気導体を容易に形成することができる。
さらに、参考例1では、最内径側に配置された電気導体231aが、内径側の周方向幅が外径側の周方向幅よりも狭くされていることから、その電気導体231aとスロット25を区画するティース部22bの側面との間の隙間は、スロット25の外径側よりも内径側の方が大きくなる。そのため、固定子巻線21を固定子鉄心22に固定するために固定子鉄心22の内周側からワニスを塗布する際に、ワニスのスロット25内部への浸透性を向上させることができる。
また、参考例1で用いられた固定子鉄心22は、ティース部22bの突出先端部に、周方向両側へそれぞれ延出する鍔部を有するものである。そのため、スロット25の最内径側に配置された電気導体231aの外径側周方向幅に対する内径側周方向幅の削減量を低減することができるとともに、電気導体231aの表面を被覆する絶縁被膜23dの損傷を防止することができる。
参考例2
上記の参考例1では、電気導体231aの周方向両側の角部にそれぞれ設けられた傾斜面27の傾斜角度は、電気導体231aの断面形状が左右対称となるように同じにされているが、図8(b)に示す参考例2のように、電気導体231aの断面形状が左右非対称となるように、両傾斜面27の傾斜角度が異なるようにしてもよい。
参考例3,4
上記の参考例1では、電気導体231aの内径側の周方向両側にそれぞれ設けられた傾斜面27は、電気導体231aの周方向両側の角部に面取りを施すことにより形成されているが、図9(a)(b)に示すように、電気導体231aの周方向両側の側面全体を傾斜面27とするようにしてもよい。即ち、電気導体231aの断面形状は、台形にされている。図9(a)に示す参考例3の場合には、電気導体231aの断面形状が左右対称となるように、傾斜面27の傾斜角度が同じにされている。一方、図9(b)に示す参考例4の場合には、電気導体231aの断面形状が左右非対称となるように、傾斜面27の傾斜角度が異なるようにされている。
参考例5,6
上記の参考例3,4では、電気導体231aの断面形状が台形となるように傾斜面27が形成されていたが、図10(a)(b)に示すように、電気導体231aの断面形状が三角形となるように傾斜面27を形成してもよい。図10(a)に示す参考例5の場合には、電気導体231aの断面形状が左右対称となるように、傾斜面27の傾斜角度が同じにされている。一方、図10(b)に示す参考例6の場合には、電気導体231aの断面形状が左右非対称となるように、傾斜面27の傾斜角度が異なるようにされている。
参考例7
図11(a)は、参考例7において各スロット内の最内径側に配置された電気導体の断面図である。参考例7に係る回転電機1は、基本的構成が参考例1と同じであり、各スロット内の最内径側に配置された電気導体の断面形状のみが参考例1と異なる。よって、参考例1と共通する部材や構成については詳しい説明は省略し、以下、異なる点について説明する。なお、参考例1と共通する部材については同じ符号を用いる。
参考例7において各スロット25内の最内径側に配置された電気導体231aは、図11(a)に示すように、内径側の周方向両側の角部が、外径側の周方向両側に形成された角部の曲率半径rよりも大きい曲率半径Rの外方へ凸となった凸状円弧面28で形成されている。このようにして、電気導体231aは、内径側の周方向幅が外径側の周方向幅よりも狭くなるようにされている。
以上のように構成された参考例7の回転電機1によれば、参考例1と同様に、最内径側に配置された電気導体231aは、内径側の周方向幅が外径側の周方向幅よりも狭くされている。そのため、回転電機1の作動時に発生する漏洩磁束(鎖交磁束)は、電気導体231aの内部を貫くことがないので、渦電流損が抑制され、高効率化が可能となる。また、エアギャップGと対向するティース部22bの突出先端面の大きな表面積を確保することができるので、高出力化が可能となる。したがって、参考例7の場合にも、参考例1と同様に、高効率化と高出力化を両立させることができる。
特に、参考例7の電気導体231aは、内径側の周方向両側の角部が、外径側の周方向両側に形成された角部の曲率半径rよりも大きい曲率半径Rの凸状円弧面28で形成されている。そのため、参考例1のように傾斜面27とされている場合に比べて、電気導体231aの断面積が大きくなり、電気抵抗を小さくすることができるので、高効率化を図る上で有利となる。
参考例8
上記の参考例7では、電気導体231aの周方向両側の角部にそれぞれ設けられた凸状円弧面28の曲率半径は、電気導体231aの断面形状が左右対称となるように同じにされているが、図11(b)に示す参考例8のように、電気導体231aの断面形状が左右非対称となるように、両凸状円弧面28a,28bの曲率半径R1,R2が異なるようにしてもよい。
参考例9
図12は、参考例9において各スロット内の最内径側に配置された電気導体の断面図である。参考例9に係る回転電機1は、基本的構成が参考例1と同じであり、各スロット内の最内径側に配置された電気導体の断面形状のみが参考例1と異なる。よって、参考例1と共通する部材や構成については詳しい説明は省略し、以下、異なる点について説明する。なお、参考例1と共通する部材については同じ符号を用いる。
参考例9において各スロット25内の最内径側に配置された電気導体231aは、図12に示すように、内径側の周方向一方側(図12の左側)に、当該電気導体231aの周方向幅が外径側から内径側に向かって狭くなるように傾斜する傾斜面27を有し、内径側の周方向他方側(図12の右側)に、外径側の周方向両側に形成された角部の曲率半径rよりも大きい曲率半径Rの凸状円弧面28を有する。このようにして、電気導体231aは、内径側の周方向幅が外径側の周方向幅よりも狭くなるようにされている。
以上のように構成された参考例9の回転電機1によれば、参考例1と同様に、最内径側に配置された電気導体231aは、内径側の周方向幅が外径側の周方向幅よりも狭くされている。そのため、回転電機1の作動時に発生する漏洩磁束(鎖交磁束)は、電気導体231aの内部を貫くことがないので、渦電流損が抑制され、高効率化が可能となる。また、エアギャップGと対向するティース部22bの突出先端面の大きな表面積を確保することができるので、高出力化が可能となる。したがって、参考例9の場合にも、参考例1と同様に、高効率化と高出力化を両立させることができる。
特に、参考例9の電気導体231aは、内径側の周方向一方側に形成が容易な傾斜面27を有し、内径側の周方向他方側に高効率化を図る上で有利となる曲率半径Rの凸状円弧面28を有するので、作り易さと高効率化をバランス良く達成することができる。
実施形態1
図13(a)は、実施形態1において各スロット内の最内径側に配置された電気導体の断面図である。実施形態1に係る回転電機1は、基本的構成が参考例1と同じであり、各スロット内の最内径側に配置された電気導体の断面形状のみが参考例1と異なる。よって、参考例1と共通する部材や構成については詳しい説明は省略し、以下、異なる点について説明する。なお、参考例1と共通する部材については同じ符号を用いる。
実施形態1において各スロット25内の最内径側に配置された電気導体231aは、図13(a)に示すように、内径側の周方向両側の角部に、断面L字状の切欠き部29が形成されている。即ち、断面L字状の切欠き部29は、径方向に広がる第1平面29aと第1平面29aと直角に交わる第2平面29bとにより形成されている。このようにして、電気導体231aは、内径側の周方向幅が外径側の周方向幅よりも狭くなるようにされている。
以上のように構成された実施形態1の回転電機1によれば、参考例1と同様に、最内径側に配置された電気導体231aは、内径側の周方向幅が外径側の周方向幅よりも狭くされている。そのため、回転電機1の作動時に発生する漏洩磁束(鎖交磁束)は、電気導体231aの内部を貫くことがないので、渦電流損が抑制され、高効率化が可能となる。また、エアギャップGと対向するティース部22bの突出先端面の大きな表面積を確保することができるので、高出力化が可能となる。したがって、実施形態1の場合にも、参考例1と同様に、高効率化と高出力化を両立させることができる。
実施形態1の電気導体231aは、内径側の周方向両側の角部に、直角に交わる第1及び第2平面29a,29bからなる切欠き部29が形成されているので、参考例7の凸状円弧面28の場合に比べて、容易に形成することができる。
参考例10
上記の実施形態1では、電気導体231aの周方向両側の角部にそれぞれ切欠き部29が設けられていたが、図13(b)に示す参考例10のように、電気導体231aの断面形状が左右非対称となるように、電気導体231aの周方向一方側の角部にのみ、第1及び第2平面29a,29bからなる断面L字状の切欠き部29を設けるようにしてもよい。
〔他の実施形態〕
本発明は、上記の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変更することが可能である。
例えば、上記の実施形態では、スロット25内に配列された複数の電気導体のうち最内径側に配置された電気導体231aのみが、内径側の周方向幅が外径側の周方向幅よりも狭くされているが、最内径側に配置された電気導体231a以外の電気導体も、内径側の周方向幅が外径側の周方向幅よりも狭くするようにしてもよい。即ち、スロット25内に配列された複数の電気導体のうち少なくとも最内径側に配置された電気導体231aが、内径側の周方向幅が外径側の周方向幅よりも狭くされていればよい。
また、上記の実施形態では、固定子巻線21を構成する導体セグメント23は、U字形状のものが採用されているが、これに代えてI字形状の導体セグメントを採用してもよい。また、固定子巻線21は、複数の導体セグメント23を接続して形成されるものではなく、連続線で形成されるものでもよい。
また、上記の実施形態では、本発明に係る回転電機の固定子を車両用交流発電機1の固定子2に適用した例を説明したが、本発明は、車両に搭載される回転電機として、発電機、あるいは電動機、さらには両者を選択的に使用し得る回転電機の固定子にも利用することができる。また、本発明は、車両用交流発電機に限らず、同様の空冷構造をもつ車両用又は汎用の電動機などの回転電機にも適用することができる。
1…車両用交流発電機(回転電機)、 2…固定子、 3…回転子、 4…ハウジング、 5…整流器、 21…固定子巻線、 22…固定子鉄心、 22a…バックコア部、 22b…ティース部、 23…導体セグメント、 231…大セグメント、 231a…スロット内の最内径側に配置された電気導体、 232…小セグメント、 23a…スロット収容部(電気導体)、 23b…ターン側エンド部、 23c…接合側エンド部、 23d…絶縁被膜、 23e…接合側斜行部、 23f…接合端部(接合部)、 24…インシュレータ、 25…スロット、 27…傾斜面、 28,28a,28b…凸状円弧面、 29…切欠き部。

Claims (1)

  1. 周方向に配列された複数のスロットを有する円環状の固定子鉄心と、前記スロット内で複数の電気導体が径方向に並ぶようにして前記固定子鉄心に巻装された固定子巻線と、を備えた回転電機の固定子において、
    前記スロット内に配列された複数の前記電気導体のうち少なくとも最内径側に配置された電気導体は、内径側の周方向両側の角部に、径方向に広がる第1平面と前記第1平面と直角に交わる第2平面とにより形成された断面L字状の切欠き部を有し、内径側の周方向幅が外径側の周方向幅よりも狭くされていることを特徴とする回転電機の固定子。
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