図1乃至図13をもとに、本発明における第1の実施例について説明する。無線機能を用いたワイヤレス生体センサは、利用者の行動を束縛することなく生体データを収集したり、健康状態を把握したりすることが可能である。とくに、侵襲性を要さず利用者への負担が少ないワイヤレス生体センサは、内蔵するバッテリーに予め充電を行って使用することが一般的である。なぜなら、充電するためのケーブルをワイヤレス生体センサに接続している充電中は、利用者の動きが制限されてしまうからである。そのため、ワイヤレス生体センサを利用している最中は、できるだけ充電を行わずに計測を行えるよう、センサ使用中の消費電力を抑えることが求められる。
本実施例では、生体データとして人の心電図を収集し、センサを装着した利用者の睡眠姿勢に応じた送信電力で収集した生体データを送信する場合について記述するものとする。特に本実施例では、利用者が生体データを収集する際に意識しない非侵襲性の生体センサに好適な制御方法を提供する。なお、実際にはセンサが収集する生体データは心電図に限らず、体温、体表面抵抗、脈波、心拍数、呼吸数、血圧、血中酸素飽和度や血糖値等であっても構わない。また、センサは、必ずしもワイヤレス生体センサ内に内蔵する必要はなく、外部のセンサを電気的に接続するコネクタを設け、そのコネクタに接続されたセンサから生体データを収集することも可能である。さらに、センサは、必ずしも生体データを収集する必要はなく、放射線や花粉等のデータを収集することも可能である。
図1に示すように、本発明におけるワイヤレス生体センサシステムは、送信機能を備えたワイヤレス生体センサ100と受信機200を含んでいる。また、本発明におけるワイヤレス生体センサシステムは、さらにサーバ1を含んでいてもよい。
当該ワイヤレス生体センサシステムは、病院または家庭等において使用され、ワイヤレス生体センサ100が装着された利用者の、睡眠時における心電を収集し、受信機200に無線送信する。利用者の心電図を受信した受信機200は、その内部に備えられた記憶部に前記心電図を記憶する。あるいは、表示装置に前記心電図を表示してもよく、外部のサーバ1等に前記心電図を有線または無線で送信し、前記サーバ1等が前記心電図を記憶してもよい。また、受信機200は携帯電話等のモバイル端末や、パーソナルコンピュータであってもよい。
このようにして記憶された前記利用者の心電図は、例えば医師等の観察者によって閲覧され、前記医師等の観察者が、前記利用者に適切なアドバイスを行うための情報として使用される。
なお、本実施例におけるワイヤレス生体センサシステムは、受信機に備えられたモニタまたは受信機に接続された外部モニタ等(図示せず)の表示装置を備え、利用者の心電図をリアルタイムで表示するようにしてもよい。また、表示装置は、受信機に設けられたものに限らず、ネットワークを介して接続されるモバイル端末や、パーソナルコンピュータに備えられた表示装置であってもよい。
図2は、ワイヤレス生体センサ100の制御回路を例示した回路図である。本実施例におけるワイヤレス生体センサ100は、CPU(Central Processing Unit)101、RAM(Random Access Memory)102、ROM(Read Only Memory)103、入力ポート104、無線通信インタフェース105、入力インタフェース106を含み、バス107によって相互に接続されている。
さらに、無線通信インタフェース105には送信アンテナ108が接続され、送信電力を決定するレジスタを有している。そのレジスタに送信電力を決定する値を書き込むことにより送信電力を変更し、生体データ送信に必要な消費電力を変更できる。無線通信インタフェース105は、送信回路のみを有するものに限らず、送受信回路を有していてもよい。その場合には、受信回路の消費電力を削減できるように、受信回路の電源を制御できることが望ましい。例えば、送信後のACK(ACKnowledgement)信号を受信するかどうかを設定するレジスタと、ACK信号を受信すると設定された場合に受信回路を動作させる時間を設定できる機能を有する無線通信インタフェースを用いてもよい。その場合には、ACK信号を受信しないようレジスタに設定することにより、受信回路で消費される消費電力を削減できる。入力インタフェース106には加速度センサ110、生体センサ109が接続され、接続された各種センサが出力するデータを取得する。
RAM102には、例えばSRAM(Static RAM)やDRAM(Dynamic RAM)を用いてもよく、ROM103には、例えばEPROM(Erasable Programmable ROM)やEEPROM(Electrical Erasable Programmable ROM)、あるいはフラッシュメモリを用いてもよい。また、入力ポート104には、例えばUSB(Universal Serial Bus)インタフェースを用いてもよい。ROM103には、ワイヤレス生体センサを動作させるプログラムと、当該プログラムを動作させるために必要なデータが記録されている。ワイヤレス生体センサ100は、起動されるとプログラムをROM103からRAM102に読み込み、そのプログラムをCPU101が実行する。
図3は、受信機200の制御回路を例示した回路図である。本実施例における受信機200は、CPU201、HDD(Hard Disc Drive)202、RAM203、出力ポート204、入力装置205、無線通信インタフェース206を含み、バス207によって相互に接続されている。
無線通信インタフェース206には、受信アンテナ208が接続されている。また、RAM203には例えばSRAMやDRAMを用いてもよく、出力ポート204には例えばUSBインタフェースを用いてもよい。HDD202には、受信機200を動作させるプログラムと、そのプログラムを実行するために必要なデータが記録されている。受信機200は、起動されるとプログラムをHDD202からRAM203に読み込み、そのプログラムをCPU201が実行する。
図4は、ワイヤレス生体センサシステムの送信電力パターン生成時における機能を表す機能ブロック図である。本実施例におけるワイヤレス生体センサ100は、生体センサ109、加速度センサ110、推定部111、送信電力パターン記憶部112、決定部113、送信部114、試験信号用送信電力記憶部115、入力ポート104を含む。
生体センサ109は、本実施例では使いきりタイプの心電用電極1と機械的かつ電気的に着脱可能な端子によって接続されており、睡眠時における利用者の心電を測定する。さらに、心電用電極によって、生体センサ109を利用者に固定している。もちろん、本実施例に限らず、体表面温度、体表面抵抗、脈波、心拍数、呼吸数、血圧、血中酸素飽和度や血糖値等、他の生体データを測定するセンサを有してもよい。もしくは、生体データ以外のデータを測定するセンサを有してもよい。
加速度センサ110は、直交する3軸方向の加速度を検出する。加速度センサ110を内蔵したワイヤレス生体センサ100を利用者の体に装着することで、加速度の変化から利用者の睡眠姿勢の推定が行われる。
睡眠姿勢算出部111は、加速度センサ110が検出した加速度の値から、仰臥位、伏臥位など、利用者の睡眠姿勢を推定する。
送信電力パターン記憶部112には、利用者の姿勢に応じた送信電力が記載された送信電力パターンが記憶されている。当該送信電力パターンは、後述する送信電力パターン第二記憶部212に格納された送信電力パターンが複写されたものである。なお、送信電力パターン記憶部112は、過去に記憶された送信電力パターンと併せて複数の送信電力パターンを記憶可能であってもよい。その場合は、新たな送信電力パターンを複写する際に、例えば最も古いデータから順に上書きするなどの手段によって順次記憶内容の更新を行う。
送信部114は、例えばアンテナを含み、決定部113によって決定された送信電力で、生体データ、睡眠姿勢データなどの情報を送信する。
試験信号用送信電力記憶部115は、試験信号を送信する場合に設定する送信電力値を記憶する。入力ポート104は、ケーブル等によって出力ポート204と電気的に接続されるインタフェースである。
受信機200は、受信部209、計測部210、計算部211、送信電力パターン第二記憶部212、出力ポート204を含む。
受信部209は、例えばアンテナを含み、前記ワイヤレス生体センサ100の送信部114から送信された試験信号を受信し、計測部210は、試験信号受信時の受信電力強度を計測する。
計算部211は、利用者の姿勢と受信信号強度とを関係づけ、送信電力パターンを生成する。送信電力パターン第二記憶部212は生成された送信電力パターンを利用者の姿勢と関連付けて格納する。なお、送信電力パターン第二記憶部212は、過去に格納された送信電力パターンと併せて複数の送信電力パターンを記憶可能であってもよい。
なお、受信した姿勢について、すでに送信電力値が記録してある場合には、新たに求めた送信電力値と、すでに記憶してある送信電力値とを比較して、いずれか一方を記憶するようにしてもよい。例えば、生体データの冗長性が高い場合には、より低い送信電力値を記憶することにより、省電力性を向上させることが可能となる。一方で、緊急性の高い生体データを扱う場合には、より高い送信電力値を記憶することにより、省電力化しつつも確実性の高いデータ転送が可能となる運用が考えられる。また、受信した姿勢データと、受信信号強度とをすべて記憶しておき、姿勢データが同じ複数の受信信号強度に基づいて、統計的な処理を行ってもよい。
また、送信電力パターンを、利用者によって切り替えてもよい。例えば、大人向けと子供向けの送信電力パターンを用意しておき、ワイヤレス生体センサを使用する際に、図示しないボタンによって利用者の属性を入力することで、適切な送信電力パターンを選択してもよい。
出力ポート204は、ケーブル等によって入力ポート104と電気的に接続されるインタフェースである。入力ポート104と出力ポート204は、USB等の汎用インタフェースである。
図5は、ワイヤレス生体センサ100の装着例を表す模式図である。このように、心電用電極2を備えたワイヤレス生体センサ100が、利用者の胸部に装着されている。心電用電極2は、心電の収集対象である利用者に装着されており、ワイヤレス生体センサ100は、心電用電極2から利用者の心電を収集する。このとき、心電図電極1は、電極に備えられたシールにより利用者の第4肋骨と第5肋骨の間に平行に装着されるのが望ましいが、他の装着方法であっても構わない。また、心電用電極1は、機械的かつ電気的に着脱可能な端子によってワイヤレス生体センサ100と接続される、市販の使い捨て電極であってもよい。
本実施例において、生体データの収集、送信を行う手順について説明する。図6は、基準座標系及び加速度センサ110の座標系を表す模式図である。図6(A)は、ワイヤレス生体センサシステム使用時の状況を表した模式図である。このように、ワイヤレス生体センサ100を装着した利用者がベッドの上に寝ており、利用者から離れた場所に受信機200が設置されている。
受信機200は、例えば左側のベッドサイド等に設置されているのが望ましいが、ワイヤレス生体センサから送信される信号を受信でき、利用者の動作を制約しない位置であればよい。また、基準座標系及び加速度センサ110の座標系は、図6(A)に記載のように設定するものとする。
基準座標系はX軸、Y軸、Z軸からなり、それぞれの軸は互いに直交する。X軸は鉛直上向きを正の向きとし、Z軸は利用者が寝るベッドのフットボードからヘッドボードに向かう向きを正の向きとする。また、Y軸は、X軸とZ軸に直交し、仮にZ軸正方向が北向きであった場合、東向きがY軸の正方向になるような位置関係に設定する。
加速度センサ座標系はXAC軸、YAC軸、ZAC軸からなり、それぞれの軸は互いに直交する。ワイヤレス生体センサ100を利用者の胸部に装着し、利用者の睡眠姿勢が仰臥位となったときに基準座標系に一致するものとする。ただし、これはあくまで理解を容易にするための便宜的な設定であり、現実の運用においては完全に一致させる必要はない。例えば、各軸ともにある程度のマージンを持った設計をすることで、運用上の誤差は吸収でき、理論的な説明と同様の操作を行うことが可能である。
図6(B)は、基準座標系及び加速度センサ110の座標系の相対角を表した模式図である。また、X軸に対するXAC軸の傾きθACは、図6(B)に示すようにX軸とXAC軸が重なっているときを0°とし、θACの回転方向は、利用者の睡眠姿勢が仰臥位から右側臥位へ寝返りする方向を正の回転方向とする。
言い換えると、前記医師等の観察者がZ軸正方向を向いたとき、Z軸を中心軸とし、XAC軸から−YAC軸へ回転する方向をθACの正の回転方向とする。さらに別の言い方をすれば、当該観測者がZ軸正方向に視線を向けたとき、Z軸を中心軸とした反時計回りの回転方向に見える回転方向をθACの正の回転方向とする。θACの回転方向は、利用者の睡眠姿勢が仰臥位から左側臥位へ寝返りする方向を負の回転方向とする。また、θACは−180°<θAC≦+180°の範囲で変化できるものとし、仰臥位の場合に0°、右側臥位の場合に+90°、左側臥位の場合に−90°、伏臥位の場合に+180°とする。
以下では、鉛直下向き(基準座標系のマイナスX軸方向)に重力が作用することを利用して睡眠姿勢を推定する。なお、睡眠姿勢を推定する方法は本手法に限定されるものではなく、例えば加速度センサ110の代わりに特開2004−201758に記載されているようなジャイロセンサ、ロータリエンコーダ等を用いてもよい。
図7は、ワイヤレス生体センサ100、受信機200において、送信電力パターン記憶部112に送信電力パターンを格納するまでの一連の手順を表すフローチャートである。ワイヤレス生体センサ100および受信機200は、姿勢に対する無線電力を測定するモードで起動した場合の動作を説明する。ただし、受信機200は、受信したデータの内容から無線電力を測定するモードであることを自動的に判断してもよい。
まず、利用者に装着されたワイヤレス生体センサ100において、決定部113は、試験信号用送信電力格納部115を参照し、送信電力を試験信号用の送信電力に決定する(ステップS1)。なお、前記試験信号用の送信電力とは、試験信号用送信電力格納部115に格納された、計算部211が送信電力パターンを算出する際に用いる一定の値であり、例えば前記ワイヤレス生体センサ100が送信可能な最大電力であってもよい。
次に、加速度センサ110がXAC、YAC、ZAC軸方向の加速度を測定し(ステップS2)、睡眠姿勢算出部111が、以下に示す計算手順で利用者の睡眠姿勢を算出する(ステップS3)。
睡眠中の利用者が、加速度センサ座標系のZAC軸と基準座標系Z軸とを常に一致させて寝返りをうつとき、加速度センサが検出するZAC軸方向の加速度aZは実質的にゼロである。本実施例では、理解を容易にするために、以降特別な記載がない限り、この条件が成り立っている場合について記載するものとする。
なお、ZAC軸方向の加速度aZを実質的にゼロと判定する仕組みは、電子情報通信学会技術研究報告.MBE.105(456)(2005-12)第45頁〜第48頁「3軸加速度センサを用いた睡眠時における姿勢の推定」で開示される睡眠姿勢を推定する方法を用いてもよい。加速度センサで検出したXAC方向、YAC方向の加速度値が、それぞれaX、aYであるとすると、基準座標系のX軸に対する座標軸XACの傾きθACは、式(1)または式(2)で与えられる。
θAC=cos-1(−aX/g) ・・・(1)
θAC=−sin-1 (aY/g) ・・・(2)
なお、gは重力加速度である。XAC軸の傾きが上記の式で算出されるとき、例えば、θAC=0°のときは仰臥位、θAC=±90°のときは側臥位、θAC=180°のときは伏臥位となる。
睡眠姿勢算出後、送信部114は利用者の睡眠姿勢データを含む試験信号を、決定部113によって予め決定された送信電力で送信を行う(ステップS4)。次に、待機時間をカウントする(ステップS5)。例えば5ミリ秒待機することにより、1秒間に200回データを送信する。このような待機時間のカウントは、電源監視ICやCPUに内蔵されているタイマを利用してもよいし、コンデンサと抵抗で調整するような回路で実現してもよい。また、電源監視ICに内蔵されたタイマを利用する場合は、タイマにスリープ時間または起動周期を設定しておき、ステップS5でスリープ処理を行えばよい。その結果、電源監視ICが設定された時間に基づいてワイヤレス生体センサ100を起動するため、設定した周期でデータを送信することが可能となる。
次に、送信電力パターンを生成するための測定を終了するか判定を行い(ステップS6)、終了しない場合はステップS2からステップS5までの一連の動作を繰り返し、終了する場合は後述のステップS7に進む。
ワイヤレス生体センサ100の送信部114から送信された試験信号が、受信部209によって受信され(ステップS101)、計測部210は、試験信号受信時の受信電力強度を計測する(ステップS102)。
図8に、睡眠姿勢θACと受信電力PS(θAC)との関係をプロットしたグラフの一例を示す。目標電力PDとは、受信部209が安定して受信することが可能な最低受信電力であり、受信電力が目標電力以上かつ目標電力に近ければ、電波強度の減衰に起因する通信障害を軽減しつつ、ワイヤレス生体センサ100の消費電力を抑えることが可能である。
XAC軸の傾きθACが0°付近のとき、睡眠姿勢は仰臥位であり受信電力は最大となる。傾きθACが+90°から+180°(または−90°から−180°)に変化すると、センサが徐々に体の下方になり、電波が人体に遮られるようになるため、受信電力が徐々に低下する。
次に、計算部211が、受信した試験信号に含まれるXAC軸の傾きθACと受信信号強度との関係から、利用者の姿勢に応じた送信電力パターンを算出する(ステップS103)。
ここで、データを安定して受信するために必要な目標電力を前記のようにP
Dとしたとき、送信電力P
T(θ
AC)を次の式を用いて算出する。
ただし、P
T0はステップS1で決定した試験信号の送信電力であり、ここでは、ワイヤレス生体センサ100の最大送信電力である。wは送信電力P
T(θ
AC)が目標電力P
Dをできるだけ下回ることのないように設定された定数である。
上記の式で算出された送信電力PT(θAC)と睡眠姿勢θACを、送信電力パターンとして送信電力パターン第二記憶部212に格納する(ステップS104)。
次に、送信電力パターンの生成を終了するか判定を行い(ステップS105)、終了する場合は測定を終了し、終了しない場合はステップS101からステップS104までの一連の動作を繰り返す。測定の終了は、予め測定時間を設定しておいて、設定時間経過後、自動的に終了してもよい。または、送信電力パターン第二記憶部に格納されたデータがそろった時点で終了してもよい。
または、利用者の動作を監視している操作者が、すべての姿勢のデータが取得できたと判断できた場合に終了できるよう、手動で終了できるようにしてもよい。受信機200の終了処理を行った場合には、ワイヤレス生体センサ100を利用者から取り外して、ワイヤレス生体センサ100の動作を終了してもよい。また、ワイヤレス生体センサ100は、利用者の姿勢を監視しておき、加速度センサが検出するZAC軸方向の加速度の値が大きくなったことを検出して自動的に終了してもよい。
また、利用者が予め決められた順序(例えば、仰臥→右側臥→伏臥→左側臥→仰臥・・・)で姿勢を変化するときの遷移を監視しておき、遷移回数が設定回数以上となったときに終了できるようにしてもよい。
測定を終了した後に、上記手順で生成された送信電力パターンを、ワイヤレス生体センサ100側の送信電力パターン記憶部112に複写する(ステップS7)。図9は送信電力複写時におけるワイヤレス生体センサシステムの機能を表す機能ブロック図、図10は送信電力複写時の手順(ステップS7の詳細手順)を表すフローチャートである。
送信電力パターン複写時、ワイヤレス生体センサ100の入力ポート104と受信機200の出力ポート204は、ケーブル等によって電気的に接続されていることを確認する(ステップS201)。なお、入力ポート104と出力ポート204は、USB等の汎用インタフェースである。
受信機に備えられた入力装置205(キーボード、スイッチなど)を操作すると、送信電力パターンの複写処理が開始され(ステップS202)、全データの複写が終わると複写処理は終了する(ステップS203)。複写処理終了後、ケーブルを取り外す。
図11は、ワイヤレス生体センサシステムの運用時における機能を表す機能ブロック図である。本実施例におけるワイヤレス生体センサ100は、生体センサ109、加速度センサ110、睡眠姿勢算出部111、送信電力パターン記憶部112、決定部113、送信部114を含む。
生体センサ109は、本実施例では心電用電極2と接続されており、睡眠時における利用者の心電を測定する。もちろん、心電に限らず、体表面温度、体表面抵抗、脈波、心拍数、呼吸数、血圧、血中酸素飽和度や血糖値等、他の生体データを測定するセンサを有してもよい。もしくは、生体データ以外のデータを測定するセンサを有してもよい。
加速度センサ110は、直交する3軸方向の加速度を検出する。加速度センサ110を内蔵したワイヤレス生体センサ100を利用者の体に装着することで、加速度の変化から利用者の睡眠姿勢の算出に用いられる。
睡眠姿勢算出部111は、加速度センサ110が検出した加速度の値から、仰臥位、伏臥位など、利用者の睡眠姿勢を推定する。
送信電力パターン記憶部112には、利用者の姿勢に応じた送信電力が記載されたデータである、送信電力パターンが記憶されており、当該送信電力パターンは、後述する送信電力パターン第二記憶部212に格納された送信電力パターンが複写されたものである。なお、送信電力パターン記憶部112は、過去に記憶された送信電力パターンと併せて複数の送信電力パターンを記憶可能であってもよい。その場合は、新たな送信電力パターンを複写する際に、例えば最も古いデータから順に上書きするなどの手段によって順次記憶内容の更新を行う。
送信部114は、例えばアンテナを含み、決定部113によって決定された送信電力で、生体データ、睡眠姿勢データなどの情報を送信する。
ワイヤレス生体センサシステムの運用時における受信機200は、受信部209、受信データ記憶部213を含む。また、受信機200は、さらに表示部214、送信部215のどちらかまたは両方を含んでいてもよく、さらに処理部216を含んでいてもよい。なお、後述する第二、第三、第四の実施例におけるワイヤレス生体センサシステムの運用時における受信機も、本実施例における受信機200と共通の機能を有する。
受信部209は、ワイヤレス生体センサ100の送信部114から送信された生体データ、睡眠姿勢データ等の情報を受信する。受信データ記憶部213は、受信部209が受信した生体データ、睡眠姿勢データ等の情報を記憶する。
表示部214は、受信データ記憶部213に格納されたデータを読み出し、ディスプレイ(図示せず)等の表示装置に表示する。送信部215は、受信データ記憶部213に格納されたデータを読み出し、サーバ1等の外部装置に送信する。
処理部216は、受信機200のディスプレイの解像度、CPUの性能、通信帯域や回線の混雑状況等を考慮して、受信データ記憶部213に格納されたデータのうち一部を間引いて表示部214や送信部215へ送る処理を行ってもよい。これにより、データの表示やデータの送信をスムーズに行うことができるようになる。
図12は、送信電力パターンの複写を行ったワイヤレス生体センサ100を実運用する際の手順を表すフローチャートである。ワイヤレス生体センサ100および受信機200は、利用者の生体データを測定するモードで起動した場合の動作を説明する。ただし、受信機200は、受信したデータの内容から利用者の生体データを測定するモードであることを自動的に判断しても構わない。
まず、送信電力パターン記憶部に複数の送信電力パターンが記憶されている場合は(ステップS8)、今回の生体データ測定に使用する送信電力パターンを選択する(ステップS9)。この場合、ワイヤレス生体センサ100はボタン等の入力装置(図示せず)を別途含み、当該ボタン等の入力装置が操作されることで送信電力パターンの選択が可能であってよい。
次に、利用者に装着されたワイヤレス生体センサ100において、加速度センサ110がXAC、YAC、ZAC軸方向の加速度を測定し(ステップS10)、推定部5が、ステップS4と同様の手順で利用者の睡眠姿勢θACを推定する(ステップS11)。
睡眠姿勢推定後、決定部113は、送信電力パターン記憶部112に格納された送信電力パターンを参照し、推定された睡眠姿勢θACに対応する送信電力PT(θAC)を決定する(ステップS12)。
送信部114は、生体センサ109によって取得された利用者の心電図を、上記手順で決定された送信電力PT(θAC)で送信する(ステップS13)。もちろん、生体センサ109は心電に限らず、体温、体表面抵抗、脈波心拍数、呼吸数、血圧、血中酸素飽和度や血糖値等、他の生体データを測定するセンサを有してもよい。もしくは、生体データ以外のデータを測定するセンサを有してもよい。
最後に、測定を終了するかどうか判定を行い、終了する場合はそのまま処理を終了し、そうでない場合はステップS9からの一連の処理を繰り返す(ステップS14)。
このように、予め利用者の睡眠姿勢と送信電力を対応付けておくことで、通信時の送信電力を抑えつつ、利用者の睡眠姿勢変化等の装着状態の変化によって通信が途絶しにくい送信電力で生体データを送信することが可能となる。なお、通信状態が良好な睡眠姿勢(例えば、仰臥位)であるにもかかわらず受信電力が低い場合は、生体センサの装着位置がずれている可能性があるので、利用者に対し、受信機200に備えられたディスプレイ等に、その旨のメッセージを出力することも考えられる。
なお、上記ワイヤレス生体センサ2の説明では、送信電力パターンと、試験信号用送信電力とがそれぞれ異なる記憶部に記憶されるものとして説明を行ったが、実際の形態はこれに限らず、共通の記憶部に記憶されても構わないことは言うまでもない。また、受信機200においても、送信電力パターンと受信データは共通の記憶部に記憶されても構わない。これはほかの実施例においても同様であり、それぞれ異なる記憶部に記憶されるものとして説明された情報であっても、実際には共通の記憶部に記憶されても構わない。
生体センサと受信機の距離が変化するなど、通信環境が変化すると、最大送信電力で試験信号を送信してもデータを送れないことがある。図13乃至図17をもとに、当該状況でのデータの欠落を防止する、本発明における第二の実施例について説明する。
本実施例では、通信が可能である睡眠姿勢θACの範囲を事前に取得しておき、θACが通信可能範囲を外れたとき(θACが通信途絶範囲となったとき)は、ワイヤレス生体センサ内のメモリに生体データを一時的に格納することでデータの欠落を防止する。
図13は、最大送信電力で試験信号を送信しても、受信機側の受信電力が目標に到達しない、あるいは、受信できない場合における睡眠姿勢θACと受信電力PSとの関係をプロットしたグラフの一例である。受信電力が目標以下となる睡眠姿勢角の範囲
θAC≦θACL1 または θACL2≦θAC
では、データの送信を停止し、センサに搭載した内蔵メモリへ生体データを格納する。睡眠姿勢角が、通信可能範囲
θACL1<θAC<θACL2
に復帰したときは、通信を再開し、取得した生体データとともに内蔵メモリ内のデータを順次送信する。
本実施例においても、利用者の心電を生体データとして収集し、センサを装着した利用者の睡眠姿勢に応じた送信電力で収集した生体データを送信する場合について記述するものとする。また、本実施例における利用者への装着例及び心電用電極については第一の実施例と同様であるので、説明は割愛する。
図14は、ワイヤレス生体センサシステムの送信電力パターン生成時における機能を表す機能ブロック図である。本実施例におけるワイヤレス生体センサ300は、生体センサ301、加速度センサ302、推定部303、判定部304、送信電力パターン記憶部305、決定部306、送信部307、送信データ記憶部308、通信可能範囲記憶部309、試験信号用送信電力記憶部310、入力ポート311を含む。
生体センサ301、加速度センサ302、睡眠姿勢算出部303は、それぞれ第一の実施例における生体センサ109、加速度センサ110、推定部111と同一であるので、ここでの説明は割愛する。また、送信電力パターン記憶部305、決定部306、送信部307も、それぞれ第一の実施例における送信電力パターン記憶部112、決定部113、送信部114と同一であり、説明は割愛するものとする。さらに、試験信号用送信電力記憶部310、入力ポート311についても、それぞれ第一の実施例における試験信号用送信電力記憶部115、入力ポート104と同一であるため、詳細な説明は行わない。
判定部304は、睡眠姿勢算出部303によって算出された利用者の睡眠姿勢が通信途絶範囲にあるかどうか判定する。なお、通信途絶範囲を求める方法については後述する。
送信データ記憶部308には、通信姿勢判定部205によって利用者の睡眠姿勢が通信途絶範囲にあると判定されたとき、生体センサ301が取得した生体データが一時的に格納される。
通信可能範囲記憶部309には、通信が可能であったときの利用者の姿勢θACが格納されており、利用者の睡眠姿勢が通信途絶範囲にあるかどうか判定するとき、判定部304によって参照される。
なお、本実施例におけるワイヤレス生体センサ300内部の回路構成は、図2に示した第一の実施例におけるワイヤレス生体センサ100内部の回路構成と共通であるので、ここでの説明は割愛するものとする。
受信機400は、受信部401、計測部402、計算部403、送信電力パターン第二記憶部404、通信可能範囲第二記憶部405、出力ポート406を含む。
受信機400、受信部401、計算部403については、それぞれ第一の実施例における受信機200、受信部209、計算部211と同一であるので、ここでの説明は割愛する。
また、送信電力パターン第二記憶部404、出力ポート406についても、それぞれ第一の実施例における送信電力パターン第二記憶部212、出力ポート204と同一であるので、詳細な説明は行わない。
計測部402は、第一の実施例と同様の処理に加えて、受信部401が受信した試験信号の受信電力強度が、安定して通信を行うために必要な目標電力に達しているか判定を行う。
通信可能範囲第二記憶部405は、計測部402で計測された受信電力が目標電力に達しているときの利用者の睡眠姿勢θACの範囲を記憶する。
なお、本実施例における受信機400内部の回路構成は、図3に示した第一の実施例における受信機200内部の回路構成と共通であるので、ここでの説明は割愛する。
本実施例において、生体データの収集、送信を行う手順について説明する。基準座標系及び加速度センサ302の座標系については、第一の実施例と同様に設定するものとする。
図15は、ワイヤレス生体センサ300において、送信電力パターン記憶部305に送信電力パターンを格納するまでの手順を表すフローチャートである。ステップS301からステップS306までの処理は、第一の実施例におけるステップS1からステップS6までの処理と共通であるので、説明は割愛する。また、ステップS401、S402、S405、S406の処理も、それぞれ第一の実施例におけるステップS101、S102、S103、S104と共通であるので、説明は割愛する。
ステップS301〜S304、S401、S402の処理を行った後、試験信号の受信電力強度が目標電力に達しているか判定を行う(ステップS403)。受信電力強度が目標電力に達している場合、試験信号に含まれる睡眠姿勢θACを通信可能範囲第二記憶部405に格納し(ステップS404)、ステップS405からの処理を継続する。
次に、送信電力パターンの生成を終了するか判定を行い(ステップS407)、終了しない場合はステップS401からステップS406までの一連の動作を繰り返す。
測定を終了した後に、上記手順で生成された送信電力パターンと通信可能範囲を、ワイヤレス生体センサ300側の送信電力パターン記憶部305と通信可能範囲記憶部309に、それぞれ複写する(ステップS307)。ステップS307は、データの種別が増える以外は図9および図10で説明した処理(ステップS7)と同様であるため、説明は省略する。図16は送信電力及び通信可能範囲複写時の機能ブロック図である。なお、複写の手順については第一の実施例と同様であるので説明は割愛する。
図17は、本実施例において、ステップS308からステップS311までの処理は第一の実施例におけるステップS7からステップS10までの処理と共通であるので、説明は割愛する。
睡眠姿勢算出後、判定部304は通信可能範囲記憶部309を参照し、算出された睡眠姿勢θACが通信可能範囲にあるかどうか判定する(ステップS312)。θACが通信可能範囲にない場合は、生体センサ301によって取得された生体データを送信データ記憶部308に格納する(ステップS316)。
θACが通信可能範囲にある場合は、決定部306は、送信電力パターン記憶部305を参照し、睡眠姿勢θACに対応する送信電力PT(θAC)を決定する(ステップS313)。
次に、送信部307は送信データ記憶部308にデータが格納されているかどうか判定する(ステップS314)。データが格納されていない場合は、取得されたデータのみを送信電力PT(θAC)で送信し(ステップS317)、データが格納されている場合は、取得されたデータと送信データ記憶部308に格納されたデータの両方を送信電力PT(θAC)で送信する(ステップS315)。
生体データ送信後、測定を終了するかどうか判定を行い、終了する場合はそのまま処理を終了し、そうでない場合はステップS310からの一連の処理を繰り返す(ステップS318)。
なお、送信データ記憶部308に格納されたデータを送信する際は、必ず1データずつ送信を行わなければならないわけではなく、例えば一度に5データ分送信するなど、一度に複数のデータを送信することも可能である。
上記の手順で本発明を実施することにより、最大送信電力で通信を行っても通信の途絶が発生し、データを送信できない場合であっても、データの欠落を防止することが可能となる。
睡眠姿勢が右(左)側臥位から伏臥位に短時間で変化する場合、格納されている送信電力パターン通りにデータを送信すると、姿勢変化に追従できずに送信が失敗する場合がある。そこで、図18及び図19をもとに、睡眠姿勢の遷移を事前に検知し、送信電力にマージン分を加算することで、通信途絶に対する耐性を大きくした、本発明第三の実施例について説明する。
本実施例においても、人の心電を生体データとして収集し、センサを装着した人の睡眠姿勢に応じた送信電力で収集した生体データを送信する場合について記述するものとする。また、本実施例における利用者への装着例及び心電用電極については第一の実施例と同様であるので、説明は割愛する。
図18は、ワイヤレス生体センサシステムの送信電力パターン生成時における機能を表す機能ブロック図である。本実施例におけるワイヤレス生体センサ500は、生体センサ501、加速度センサ502、推定部503、送信電力パターン記憶部504、決定部505、送信部506、算出部507、試験信号用送信電力記憶部508、入力ポート509を含む。
生体センサ501、加速度センサ502、睡眠姿勢算出部503は、それぞれ第一の実施例における生体センサ109、加速度センサ110、推定部111と同一であるので、ここでの説明は割愛する。また、送信電力パターン記憶部504、送信部506についても、第一の実施例における送信電力パターン記憶部112、送信部114と同一であり、説明は割愛するものとする。さらに、試験信号用送信電力記憶部508、入力ポート509についても、それぞれ第一の実施例における試験信号用送信電力記憶部115、入力ポート104と同一であるため、詳細な説明は行わない。
決定部505は、生体データを送信する際、後述する算出部によってマージンが算出されている場合は、送信電力パターン記憶部504を参照して得られた送信電力にマージンを加算した電力を、新しい送信電力として決定する。それ以外の機能は第一の実施例における決定部113と共通である。
算出部507は、利用者の睡眠姿勢の変化を判定し、睡眠姿勢の変化によってPT(θAC)が大きくなる(通信が難しくなる)場合にのみ送信電力マージンを加算する。具体的なマージン加算方法については後述する。ただし、利用者の姿勢が仰臥位に近いときは、多少睡眠姿勢θACが変化してもPT(θAC)が急激に大きくなることはないと考えられるので、省電力化を考慮し、予めマージンを加算するθACの範囲を限定してもよい。
なお、本実施例におけるワイヤレス生体センサ500内部の回路構成は図2に示した第一の実施例におけるワイヤレス生体センサ100内部の回路構成と共通であるので、ここでの説明は割愛する。
受信機600は、受信部601、計測部602、計算部603、送信電力パターン第二記憶部604、出力ポート605を含む。なお、受信機600の機能は、第一の実施例における受信機200と同一であるので、詳細な説明は行わない。
本実施例において、実際に生体データの収集、送信を行う手順について説明する。基準座標系及び加速度センサ502の座標系については、第一の実施例と同様に設定するものとする。
送信電力パターンを生成し、ワイヤレス生体センサ側の送信電力記憶部に複写するまでの手順は第一の実施例におけるステップS1からステップS7、ステップS101からステップS105までの手順と共通であるので、ここでは説明を省略する。
図19は、本実施例において、送信電力パターンの複写を行ったワイヤレス生体センサを実運用する際の手順を表すフローチャートである。ステップS508からステップS512までの処理は第一の実施例におけるステップS8からステップS12までの処理と共通であるので、ここでは説明を省略する。
ステップS508からステップS518までの処理を行った後、算出部507は、利用者の睡眠姿勢の変化を次の手順で判定する(ステップS513)。サンプリング時における姿勢角θ
AC(n)の絶対値が、前サンプリング時の姿勢角θ
AC(n-1)の絶対値よりも大きければ、通信に必要な送信電力が増加すると判断する。すなわち、
であれば、P
T(θ
AC)が大きくなる方向に睡眠姿勢が変化したと判断する。なお、θ
ACは−180°<θ
AC≦+180°の範囲で変化できるものとする。
また、加算するマージン量P
mを、姿勢角の変化率△θ
ACRから算出する(ステップS
514)。例えば、睡眠姿勢が急に変化するときのマージンを大きくするには、変化率に比例する次式(4),(5)に従って求めるとよい。
ただし、t
sampはサンプリング時間、kは比例定数である。
決定部505は、次式(6)に示すとおり、送信電力パターン記憶部504を参照して得られた送信電力PT(θAC)に、前記手順で算出されたマージンPmを加算し、
PTm = PT(θAC)+Pm ・・・(6)
得られた送信電力PTmを送信電力として決定する(ステップS515)。
送信部506は、生体センサ501によって取得された利用者の生体データを、上記手順で決定された送信電力PTmで送信する(ステップS516)。
生体データ送信後、測定を終了するかどうか判定を行い、終了する場合はそのまま処理を終了し、そうでない場合はステップS309からの一連の処理を繰り返す(ステップS517)。
このように、利用者の姿勢が短時間で変化する場合において、睡眠姿勢の変化を事前に検知し、送信電力記憶部に格納された送信電力にマージンを加算した電力で生体データの送信を行うことで、通信途絶に対する耐性を高めることができる。
また、本発明は利用者の姿勢が睡眠姿勢以外である場合でも適用可能である。そこで、以下に睡眠姿勢変化以外の行動への適用例である、本発明第4の実施例について図20乃至図23を用いて説明する。
図20(A)は、胸部にワイヤレス生体センサを装着した利用者が回転イスに着席している状態を示した模式図である。このように、ワイヤレス生体センサ700を装着した利用者が回転イスに座っており、利用者の周辺に受信機800が設置されている。
受信機が利用者の正面に配置されるときは、利用者による遮蔽がないため送信電力を小さくすることができる。一方、受信機が利用者の背後に位置する場合は、利用者が遮蔽物となり障害となるため送信電力を大きくする必要がある。また、図20(B)は、基準座標系及び地磁気センサ702(後述)の座標系の相対角を表した模式図である。
図21は、ワイヤレス生体センサシステムの送信電力パターン生成時における機能を表す機能ブロック図である。本実施例におけるワイヤレス生体センサ700は、生体センサ701、地磁気センサ702、回転角推定部703、送信電力パターン記憶部704、決定部705、送信部706、試験信号用送信電力記憶部707、入力ポート708を含む。
生体センサ701、送信電力パターン記憶部704、決定部705、送信部706については、それぞれ第一の実施例における生体センサ109、送信電力パターン記憶部112、決定部113、送信部114と同一であるので、説明は割愛するものとする。さらに、試験信号用送信電力記憶部707、入力ポート708についても、それぞれ第一の実施例における試験信号用送信電力記憶部115、入力ポート104と同一であるため、詳細な説明は行わない。
本実施例におけるワイヤレス生体センサ700の制御回路は、図2に示された第一の実施例におけるワイヤレス生体センサ100内の加速度センサ110を地磁気センサに置き換えたものに等しいため、これも説明は省略する。
地磁気センサ702は、方位磁石と同じように地磁気を検知し、XM,YM,ZM軸方向の磁界の強さを検出する。回転角算出部703は、基準座標系のX軸を中心軸とし、基準座標系Y軸、Z軸によって構成される平面内回転角θMを算出する。本実施例では、図21(B)に示すようにワイヤレス生体センサが真北を向いたときθM=0°となるものとし、反時計回りの回転方向(北→西方向)を正の回転方向とする。また、θMは−180°<θM≦+180°の範囲で変化できるものとする。
受信機800は、受信部801、計測部802、計算部803、送信電力パターン第二記憶部804、出力ポート805を含む。なお、受信機800の機能は、第一の実施例における受信機200と同一であるので、詳細な説明は行わない。
本実施例において、生体データの収集、送信を行う手順について説明する。図22は、ワイヤレス生体センサ700において、送信電力パターン記憶部704に送信電力パターンを格納するまでの手順を表すフローチャートである。ステップS601、ステップ604〜ステップS607は、それぞれ第一の実施例におけるステップS1、ステップS4〜ステップS7と共通であるので、説明は割愛する。
ステップS601の処理を行った後、地磁気センサ702が地磁気を検知し(ステップS602)、回転角算出部703が利用者の水平面内の回転角θMを算出する(ステップS603)。その後、ステップS604の処理を行う。
ステップS605の処理を行った後に受信機800側で行われる一連の処理ステップS701〜S705は、第一の実施例におけるステップS101からステップS105までの処理と共通であるので、ここでは説明を省略する。
図23は、本実施例において、送信電力パターンの複写を行ったワイヤレス生体センサ700を実運用する際の手順を表すフローチャートである。ステップS608及びステップS609は、それぞれ第一の実施例におけるステップS8及びステップS9と共通であるので、説明は割愛する。また、ステップS613及びステップS614はそれぞれ第一の実施例におけるステップS13及びステップS14と共通であるので、これも説明は省略する。
ステップS609までの処理を行った後、地磁気センサ702が地磁気を検知し(ステップS610)、回転角算出部703が利用者の水平面内の回転角θMを算出する(ステップS611)。
回転角θMを算出後、決定部705は、送信電力パターン記憶部704に格納された送信電力パターンを参照し、算出された回転角θMに対応する送信電力PT(θM)を決定する(ステップS612)。その後、ステップS613の処理によって生体データを送信する。
生体データ送信後、測定を終了するかどうか判定を行い、終了する場合はそのまま処理を終了し、そうでない場合はステップS610からの一連の処理を繰り返す(ステップS614)。
このように、利用者の姿勢が睡眠姿勢以外であっても、例えば本実施例のように地磁気センサを用いて利用者の水平面内の回転角を検知するなどの手段を用いることで、利用者の姿勢に応じた送信電力で生体データを送信することができる。
また、第1の実施例と第5の実施例を併用することも可能である。例えば、第1の実施例で、ZAC軸方向の加速度aZが重力加速度gと判定した場合に、第5の実施例に記載の実施例に切り換えてもよい。具体的には、利用者の姿勢推定に用いるモーションセンサを加速度センサから地磁気センサへ切り換え、送信電力パターンを睡眠姿勢に基づくパターンから回転角に基づくパターンへと切り換える。
また逆に、第5の実施例で、ZM軸方向に地磁気を検出した場合には、第1の実施例に切り換えてもよい。具体的には、利用者の姿勢推定に用いるモーションセンサを地磁気センサから加速度センサへ切り換え、送信電力パターンを回転角に基づくパターンから睡眠姿勢に基づくパターンへと切り換える。なお、本実施例では利用者として人を対象とした図を記載したが、取得する生体データは人の生体データに限るものではなく、人以外の生物に応用してもよい。