JP5851361B2 - 内燃機関の診断装置 - Google Patents

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Description

本発明は内燃機関の診断装置に係り、特に気筒間の空燃比のばらつきを診断する内燃機関の診断装置に関するものである。
自動車の自己診断規制が年々強化されてきており、内燃機関に使用される制御機器及び検出機器の機器自体の診断はもちろんのこと、制御の結果によって生じる内燃機関の挙動をも診断することが必要になってきている。
内燃機関の挙動診断の一つとして、気筒間の空燃比のばらつきによって排気が悪化する状態の有無を診断することが規制として取り上げられている。
この気筒間の空燃比のばらつきを検出するためには、一般的には気筒別に空燃比検出手段を取り付け、気筒毎の空燃比を検出して診断することが考えられる。しかしながら、気筒別に空燃比検出手段を取り付けることはコスト高となるため、このような方法は現実的ではなかった。
そこで、自動車メーカや部品メーカ等は一つの空燃比検出手段で気筒の空燃比ばらつきを推定する多くの方式を提案している。例えば、本出願人が出願した特開2011−252467号公報(特許文献1)においては、触媒上流の空燃比センサ信号の所定周波数成分及び触媒下流の空燃比センサ信号の所定周波数成分を併用して気筒間の空燃比のばらつきにより排気が悪化していることを検出する技術を提案している。
ここで、気筒間の空燃比のばらつきとは、例えば、一つの特定気筒に対応した空燃比が全気筒によって生成された全体の平均空燃比に対して、リッチ側もしくはリーン側にずれている状態を表している。
特開2011−252467号公報
ところで、気筒間の空燃比のばらつきを診断するにあたり、通常では任意気筒の燃料噴射量を基準の噴射量に対して所定量だけ増減させ、これによって他の気筒の燃料噴射量と差異を設けることで気筒間の空燃比ばらつきを発生させている。
図11は任意気筒の燃料噴射量を増減させた場合の燃料噴射量−排気性能特性(NOx排出量)の関係を示している。
横軸は燃料噴射量の増減を示し、縦軸はNOx排出量を示している。そして、規制値に対してNG(規制値を満足しない)となるNOx排出量と空燃比センサの出力変化の関係を示している。従来の方法では、この燃料噴射量−排気性能特性から規制に対してNGとなる燃料噴射量を求め、求められた燃料噴射量とした場合の触媒下流センサ信号の出力値をNG判定値として用いている。
ここで、図11に示すように燃料噴射量のリッチ側(増量側)と燃料噴射量のリーン側(減量側)で空燃比センサの感度が異なるため、規制に対してNGとなる燃料噴射量(燃料噴射量100[%]の基準時からの相対量)がリッチ側とリーン側で異なることが判明した。具体的にはリッチ側では+20%でNGとなり、リーン側では−30%でNGとなっていた。
同様に、図12に示すように触媒下流センサ信号の所定周波数成分もリッチ側とリーン側で異なるため、リッチ側もしくはリーン側のどちらにずれているか判定した上でNG判定値を設定するのが望ましいものであった。
しかしながら、今までの方法ではリッチ側もしくはリーン側のどちらにずれているか判定できないため、リッチ側もしくはリーン側どちらか一方の判定値しか設定できず、適切な診断ができないという課題があった。
本発明の目的は、空燃比のばらつきを生じている気筒がリッチ側及びリーン側のどちらにずれていても正確に空燃比のばらつき診断ができる内燃機関の診断装置を提供することにある。
本発明の特徴は、触媒上流センサ信号の所定周波数成分Aと、触媒下流センサ信号の所定周波数成分Bとにより気筒間の空燃比のばらつきにより排気が悪化していることを検出すると共に、内燃機関の回転数信号の所定周波数成分Cによってこの空燃比のばらつきがリッチ側もしくはリーン側のどちらにずれているか判定する、ところにある。
本発明によれば、内燃機関の回転数信号の所定周波数成分Cによってこの空燃比のばらつきがリッチ側もしくはリーン側のどちらにずれているか判定しているので、空燃比のばらつきの発生要因となる気筒の空燃比が全気筒によって生成された平均空燃比に対してリッチ側もしくはリーン側のどちらにずれているか、その確からしさを向上して判別することができるので診断性能をより向上することができる。
本発明が適用される内燃機関の制御システムの構成を示す構成図である。 本発明の一実施例になる内燃機関の制御装置の制御ブロック図である。 気筒間の空燃比のばらつきが発生した場合の触媒の上流側に設けた空燃比センサの出力を示す説明図である。 気筒間の空燃比のばらつきが発生した場合の触媒の下流側に設けたOセンサ出力の低周波成分の変化を示す説明図である。 気筒間の空燃比のばらつきがリーン側にばらついた場合の回転数検出手段の回転成分−周波数スペクトル特性を示す説明図である。 気筒間の空燃比のばらつきがリッチ側にばらついた場合の回転数検出手段の回転成分−周波数スペクトル特性を示す説明図である。 回転数信号から所定周波数成分Cを抽出するためのフィルタ処理装置の構成図である。 図6に示すフィルタ処理装置のボード線図である。 空燃比がリッチ側もしくはリーン側のどちらかにずれているか判定する判定手段の構成を示す構成図である。 排気が悪化していることを検出する排気悪化検出手段の構成を示す構成図である。 本発明の一実施例になる空燃比のばらつきを診断する制御フローを示すフローチャート図である。 任意気筒の燃料噴射量を他の気筒に対して増減させた時の燃料噴射量−排気性能特性図である。 任意気筒の燃料噴射量を他の気筒に対して増減させた時の触媒の下流に設けたO2センサ信号の所定周波数成分Bの出力を示す図である。 空燃比がリーン側での試験結果を示すチャート図である。 空燃比がリッチ側での試験結果を示すチャート図である。
以下、本発明の実施形態について図を用いて詳細に説明するが、本発明は以下の実施形態に限定されることなく、本発明の技術的な概念の中で種々の変形例や応用例をもその範囲に含むものである。
図1は本発明が適用される内燃機関の制御システムを示している。多気筒(ここでは4気筒)で構成される内燃機関1において、外部からの空気はエアクリーナ2を通過し、吸気管3、コレクタ4を経てシリンダー内に流入する。
流入空気量はスロットル弁5により調節され、この調節された流入空気量が流量センサ6において検出される。また、図示しない吸気温センサで吸気温が検出される。スロットル弁5は電動機で駆動される電子スロットル弁でも良く、最近ではこの電子スロットル弁が主流である。
クランク角センサ7ではリングギア8によってクランク軸の回転角10゜毎の信号と燃焼周期毎の信号が出力される。
図示しない水温センサはエンジンの冷却水温度を検出し、また、これも図示しないアクセル開度センサはアクセルの踏み込み量を検出し、それによって運転者の要求トルクを検出する。
燃料タンク9内の燃料は、燃料ポンプ10によって、吸引、加圧された後、プレッシャーレギュレータ11を備えた燃料管12を通って燃料噴射弁13の燃料入口に導かれ、余分な燃料は燃料タンク9に戻される。
排気系には三元触媒15が取り付けられており、排気ガスは三元触媒15で浄化された後に大気に排出される。
三元触媒15の上流には上流側空燃比センサ16が設けられており、本実施例では上流側空燃比センサ16として空燃に応じて連続的な検出信号を出力する空燃比センサ16が使用されている。
また、三元触媒15の下流には下流側空燃比センサ17が設けられており、本実施例では下流側空燃比センサ17として理論空燃比近傍でスイッチ的な検出信号を出力するO2センサ17が設けられている。
以下の説明では、上流側空燃比センサとして空燃に応じて連続的な検出信号を出力する空燃比センサ16、及び下流側空燃比センサとして理論空燃比近傍でスイッチ的な検出信号を出力するO2センサ17を用いた例を説明する。
スロットル弁5に取り付けられたスロットル開度センサ、流量センサ6、クランク角センサ7、アクセル開度センサ、吸気温センサ、水温センサ等のそれぞれの信号は後述のコントロールユニット18に送られ、これらセンサ出力から内燃機関の運転状態を検出し、空気量、燃料噴射量、点火時期等の内燃機関の主要な操作量が適切に演算される。
コントロールユニット18内で演算された目標空気量は、目標スロットル開度から電子スロットル駆動信号に変換され、スロットル弁5を駆動する電動機に送られる。
コントロールユニット18内で演算された燃料噴射量は、開弁パルス信号に変換され、燃料噴射弁(インジェクタ)13に送られる。
またコントロールユニット18で演算された点火時期は、通電タイミングと通電角に変換された点火信号として点火コイル19に送られ点火プラグ20で発火される。
そして、噴射された燃料は吸気マニホールドからの空気と混合され内燃機関1のシリンダー内に流入し混合気を形成する。混合気は点火プラグ20によって所定の点火時期で発生される火花により燃焼、爆発し、その燃焼圧によりピストンを押し下げてエンジンの動力となる。爆発後の排気は排気管21を経て三元触媒15に送り込まれる。
三元触媒15の上流に設けた空燃比センサ16は触媒に流入する前の排気ガスの空燃比を検出し、三元触媒15の下流に設けたO2センサ17は触媒で浄化された排気ガスの空燃比を検出するものである。
コントロールユニット18には、流量センサ6、触媒上流側の空燃比センサ16、触媒下流側のO2センサ17、アクセル開度センサ、水温センサ、スロットル開度センサ、吸気温センサ、車速センサ等の各センサ出力値がアナログ入力部22に入力されている。また、クランク角センサ7の角度信号はデジタル入力部23に入力されている。
アナログ入力部22に入力されたセンサ信号はノイズ除去等の信号処理を行った後、A/D変換器24でA/D変換されてRAM25に保管される。同様にデジタル入力部23に入力された角度信号は入出力ポート26を介してこれもRAM25に保管される。RAM25に保管された検出信号はMPU27内で演算処理される。
演算処理の内容を記述した制御プログラムはROM28に予め書き込まれており、制御プログラムに従って演算された各アクチュエータの作動量を表す値はRAM25に保管された後、入出力ポート26に送られる。
点火プラグ20の作動信号は出力回路29内の点火制御部に送られ、一次側コイルの通流時はONとなり、非通流時はOFFとなるON-OFF信号がセットされる。点火制御部にセットされた点火信号は点火コイル19で燃焼に必要なエネルギーに増幅され点火プラグ20に供給される。
また、燃料噴射弁13の駆動信号は出力回路29内の燃料制御部に送られ、開弁時ON、閉弁時OFFとなるON-OFF信号がセットされる。燃料制御部にセットされた噴射信号は燃料噴射弁13に送られる。その他の制御機器も同様にして駆動される。
以上のような内燃機関の制御システムにおいて、次に本発明の一実施例になる気筒間の空燃比のばらつきを診断する診断方法を詳細に説明する。
図2は本発明の制御ブロックを示しており、ブロック301は触媒の上流に設けた空燃比センサ16の空燃比信号に基づいて所定周波数成分Aを演算する機能を有する第1の周波数成分演算手段であり、この機能は気筒間の空燃比のばらつきの発生を検出するために必要な情報を演算して求めるものである。
このブロック301では、燃焼毎の処理周期で三元触媒15の上流に設けた空燃比センサ16の空燃比信号の2回転成分を演算する機能を有している。具体的には空燃比センサ信号の2回転成分を離散フーリエ変換を用いて演算する。フーリエ変換では、パワースペクトルと位相スペクトルが求まるが、ここでは、パワースペクトルを用いている。さらに、統計的性質を求めるために加重平均処理を行なって2回転成分とする。また、この他にバンドパスフィルタを用いて2回転成分を求めても良い。この場合は、フィルタ出力の絶対値を求めた後、加重平均処理を行なって2回転成分とする。加重平均の重み係数は、実機試験結果に応じて、収束性と追従性の双方を満たす値(トレードオフ値)となるように設定するのがよい。
ブロック302は触媒の下流に設けたO2センサ17の検出信号に基づいて所定周波数成分Bを演算する機能を有する第2の周波数成分演算手段であり、この機能は排気の悪化が規制値を超えたか判定するために必要な情報を演算して求めるものである。
このブロック302では、三元触媒15の下流に設けたO2センサ17の空燃比信号の低周波成分を演算する。具体的にはO2センサ17の空燃比信号の低周波成分をローパスフィルタを用いて演算する。本来は、O2センサ17の空燃比信号の直流成分を求めるのが望ましいが、過渡運転における追従性もある程度確保する必要があるので、ローパスフィルタの遮断周波数はそれを考慮して、十分に低い値としている。
ブロック303は回転数信号に基づいて所定周波数成分Cを演算する機能を有する第3の周波数成分演算手段であり、この機能は気筒間の空燃比のばらつきを発生させている気筒の空燃比が全気筒によって生成された平均空燃比に対して、リッチ側もしくはリーン側のどちらにずれているか判定するために必要な情報を演算して求めるものである。
ブロック304はブロック303で求められた所定周波数成分Cから空燃比がリッチ側もしくはリーン側のどちらにずれているか判定する機能を有する空燃比ずれ判定手段であり、周波数成分Cが所定値より大きい場合にカウントアップするカウンタを設け、カウンタが判定値より大きくなった場合にリーン側にずれていると判定し、カウンタが判定値より小さい場合はリッチ側にずれていると判定するようになっている。
ブロック305は排気が悪化していることを判定する機能を有する空燃比悪化判定手段であり、以下のような判定を行なうようになっている。
(1)所定周波数Aが判定値より大きいかどうかで気筒間の空燃比のばらつきが発生したか判定する。
(2)所定周波数Bが判定値より小さいかどうかで、排気の悪化が規制値を超えたか判定する。
そして、このブロック305は予めリッチ側とリーン側の判定を並行して実施し、最終的なNG判定にブロック304の判定結果を使用することで診断範囲を適切に設定して診断性能を向上している。
尚、この際、所定周波数成分A及び所定周波数成分Bと比較する判定値をブロック304の所定周波数成分Cに基づく判定結果に応じて切替えることで診断範囲を適切に設定して診断性能を向上することもできる。
次に、ブロック301乃至ブロック303の詳細について説明する。上述の通り、ブロック301は所定周波数成分Aから気筒間の空燃比のばらつきの発生を検出している。また、ブロック302は所定周波数成分Bから排気の悪化が規制値を超えたか判定している。更にブロック303は所定周波数成分Cから気筒間の空燃比のばらつきを発生させている気筒の空燃比が全気筒によって生成された平均空燃比に対して、リッチ側もしくはリーン側のどちらにずれているか判定している。
これらの機能は気筒間の空燃比のばらつきが発生した場合の空燃比センサ16、O2センサ17の出力が次のような特性を取ることに着目している。
図3に気筒間の空燃比のばらつきが発生した場合の空燃比センサ16の出力波形を示している。これは任意の気筒の燃料噴射量を他の気筒の1.1倍としたリッチ側にばらつかせた場合である。図3から空燃比センサ16の空燃比信号の出力は内燃機関1が2回転する周期に相当する周波数で振動していることが分かる。この特性から空燃比センサ16の空燃比信号を離散フーリエ変換を用いて2回転する周期に相当する周波数成分のみを抽出し、更に加重平均処理を実施することで所定周波数成分Aを演算している。
また、図4に上述した気筒間の空燃比のばらつきが発生した場合のOセンサ17の空燃比信号の低周波成分を示している。これも任意の気筒の燃料噴射量を他の気筒の1.1倍としたリッチ側にばらつかせた場合である。図4からOセンサ17の空燃比信号の出力は触媒浄化範囲(ストイキ)から逸脱することが分かる。この特性からローパスフィルタを用いて所定周波数成分Bを演算する。
次にブロック304で示す、空燃比がリッチ側或いはリーン側のどちらにずれているかを判定する判定手段について説明する。
図5a及び図5bは気筒間に空燃比のばらつきが発生した場合の回転数検出手段7の回転成分−周波数スペクトル特性を示している。これは任意の気筒の燃料噴射量を他の気筒の0.7倍(リーン側)、及び1.5倍(リッチ側)に振った場合の特性図である。
図5a、図5bからわかるように、燃料噴射量を0.7倍(70%)した場合のリーン側と、燃料噴射量を1.5倍(150%)した場合のリッチ側を比較すると、リーン側には内燃機関が2回転、及び1回転する周期に相当する回転成分に顕著なピークがあるのに対し、リッチ側にはピークが無いことが分かる。この特性から、図6に示すような構成のフィルタを用いてフィルタリング処理を実施することで内燃機関が2回転する周期に相当する周波数成分である所定周波数成分Cを演算することができる。このフィルタはデジタル処理によるバンドパスフィルタ、或いはこれと等価なフーリエ変換を用いた演算である。
図7は図6に示すフィルタリング処理のボード線図を示しており、2回転成分と1回転成分にゲインのピークが認められるが、本実施例においては鮮明なピークが現れる2回転成分を用いるようにしている。したがって、この回転数の2回転成分のピークが現れると空燃比がリーン側にばらついているということを推測することができ、この結果を利用して空燃比のばらつきや排気の悪化の診断を適切に行うことができる。
尚、回転数の所定周波数成分Cはこれ以外に特異的にリーン側とリッチ側を差別化できる周波数成分であれば限定されないものである。
上述したように所定周波数成分Cは燃料噴射量が少ないリーン側で顕著なピークを示すことから、図8に示すようなブロック304によってリッチ側もしくはリーン側のどちらにずれているか判定することができる。
ブロック304では、機関回転数と機関負荷によって決まる閾値が記憶されたマップ304Aから所定の大きさの閾値を検索し、この閾値とブロック303で得られた所定周波数成分Cを比較機能部304Bで比較する。この比較によって所定周波数成分Cが閾値を越える毎にNGカウンタ304Cが加算され、リーン側比較機能部304Eとリッチ側比較機能部304Fとで先の加算値が所定値メモリ304Dに記憶された予め定めた所定値と比較される。
NGカウンタ304Cのカウンタ値が所定値以上になるということは図5aにあるように空燃比がリーン側にばらついていることを表している。逆にカウンタ値が所定値に達しない場合はリッチ側にばらついていることを表している。したがって、どちらか一方、或いは両方の判断信号を用いて、空燃比がどちらにばらついているかが判定できる。
次に、ブロック305について説明するが、ブロック305は排気が悪化していることを判定する機能を有しており、(1)所定周波数成分Aが判定値より大きいか、或いは小さいかどうかで気筒間の空燃比のばらつきが発生したか判定する機能と、(2)所定周波数成分Bが判定値より大きいか、或いは小さいかどうかで排気の悪化が規制値を超えたか判定する機能を有し、これに図8の判定結果が反映されるように構成されている。
図9に示すようにブロック305の構成は、ばらつき発生検出部305Aと排気悪化判定部305Bを備えている。
ばらつき発生検出部305Aは、機関回転数と機関負荷により求められるリッチ側判定値メモリ305A-1に記憶された判定値1とリーン側判定値メモリ305A-2に記憶された判定値2、及び所定周波数成分Aと各判定値1、2を比較するリッチ側比較機能部305A-3、及びリーン側比較機能部305A-4より構成されている。ここで、判定値1と判定値2は判定値1>判定値2の関係を有しており、これは図11に示すようにリッチ側とリーン側での出力特性に基づいている。
排気悪化検出部305Bは、リッチ側判定値メモリ305B-1に記憶された判定値3とリーン側判定値メモリ305B-2に記憶された判定値4、及び所定周波数成分Bと各判定値3、4を比較するリッチ側比較機能部305B-3、及びリーン側比較機能部305B-4より構成されている。
尚、ばらつき発生検出部305Aと排気悪化検出部305Bで使用される判定値1乃至判定値4は変更、或いは調節可能であり、例えば、ブロック304で示す空燃比ずれ判定手段でのリーン側判定或いはリッチ側判定によって変更、或いは調節することができる。
ばらつき発生検出部305Aのリッチ側比較機能部305A-3、及び排気悪化検出部305Bのリッチ側比較機能部305B-3の出力はアンド機能部305Cで出力(両方ともリッチで出力)が発生され、ばらつき発生検出部305Aのリーン側比較機能部305A-4、及び排気悪化検出部305Bのリーン側比較機能部305B-4の出力はアンド機能部305Dで出力(両方ともリーンで出力)が発生される。
そして、各アンド機能部305C、305Dの出力でリッチ側NGタイマ305E、及びリーン側NGタイマ305Fのタイマが起動される。リッチ側NGタイマ305Eのタイマ値はリッチ側タイマ値メモリ305Gに記憶された所定タイマ値とリッチ側比較機能部305Hで比較され、またリーン側NGタイマ305Fのタイマ値はリーン側タイマ値メモリ305Iに記憶された所定タイマ値とリーン側比較機能部305Jで比較され、両比較機能部305H,305Jの出力はオア機能部305Kに送られる。
そして、リッチ側NGタイマ305Eのタイマ値がリッチ側タイマ値メモリ305Gに記憶された所定タイマ値を越えたとリッチ側比較機能部305Hで判断され、またリーン側NGタイマ305Fのタイマ値がリーン側タイマ値メモリ305Iに記憶された所定タイマ値を越えたとリーン側比較機能部305Jで判断されると、オア機能部305Kは気筒間の空燃比のばらつきが発生し、かつ排気の悪化が規制値を越えたというNG信号を出力する。
このようにブロック305はリッチ側NGタイマ305E、及びリーン側NGタイマ305Fによってリッチ側、及びリーン側の状態が一定期間継続した場合にNG判定を行なうものである。
ここで、リーン側比較機能部305Jの出力はアンド機能部305Lに入力され、このアンド機能部305Lに入力されているブロック304のリーン側出力のアンドをとってオア機能部305Kに出力している。したがって、回転数による所定周波数成分Cによるリーン側にばらついているという信号によってリーン側比較機能部305Jの判定を確定して判定の確からしさを向上している。
このように、あらかじめリッチ側とリーン側の判定を並行して実施し、最終的なNG判定にブロック304の判定結果を使用することで診断範囲を適切に設定することができる。ブロック304の判定結果については本実施例ではリーン側を使用しているが、リッチ側でも良いし、双方を使用しても良い。また、ここでは図示しないが、最終NG判定に、予め任意の条件で設定した診断領域判定の結果(診断しても良い領域に到達したか、していないか)を使用しても良い。
図10に上記した制御の流れを示すフローチャートを示している。尚、図9の図面を併せ参照して説明する。
ステップ1201では空燃比センサ16の空燃比信号に基づいて演算された所定周波数成分Aがリーン側判定値メモリ305A-2に記憶されたリーン側判定値2(判定値1>判定値2)より大きければステップ1202を実施し、条件が不成立の場合は条件が成立するまで待機する。
ステップ1202ではO2センサ17の空燃比信号に基づいて演算された所定周波数成分Bがリーン側判定値メモリ305B-2に記憶されたリーン側判定値以下であればステップ1203を実施し、条件が不成立の場合はステップ1204を実施する。
ステップ1203では、リーン側NGの条件が成立したことを受け、リーン側NGタイマ305Fをインクリメント(加算)した後にステップ1204を実施する。
ステップ1204では所定周波数成分Aがリッチ側判定値メモリ305A-1に記憶されたリッチ側判定値1より大きければステップ1205を実施し、条件が不成立の場合は1207を実施する。
ステップ1205では所定周波数成分Bがリッチ側判定値メモリ305B-1に記憶されたリッチ側判定値以下であればステップ1206を実施し、条件が不成立の場合はステップ1207を実施する。
ステップ1206では、リッチ側NGの条件が成立したことを受け、リッチ側NGタイマ305Eをインクリメント(加算)した後にステップ1207を実施する。
ステップ1207では所定周波数成分Cが所定値以下であればステップ1208を実施し、条件が不成立の場合はステップ1209を実施する。
ステップ1208では気筒間の空燃比のばらつきを発生させている気筒の空燃比が全気筒によって生成された空燃比に対して、リーン側にずれていることを受け、NGカウンタ304Cをインクリメント(加算)する。
ステップ1209では、ステップ1206でインクリメントしたリッチ側NGタイマ305Eが所定値以上であればステップ1212を実施し、条件が不成立であればステップ1210を実施する。
ステップ1210ではステップ1203でインクリメントしたリーン側NGタイマ305Fが所定値以上であればステップ1211を実施し、条件が不成立の場合はステップ1201から上記演算を繰り返す。
ステップ1211ではステップ1208でインクリメントしたNGカウンタ304Cが所定値以上であればステップ1212を実施し、条件が不成立の場合はステップ1201から上記演算を繰り返す。
ステップ1212では、リッチ側NGタイマ305Eが所定値以上もしくはリーン側NGタイマ305Fが所定値以上かつNGカウンタ304Cが所定値以上で、最終的にNGと判定する。
図13は燃料噴射量を0.7倍(リーン側)に設定した場合の実車評価結果である。時点t1で示す58秒付近で気筒間の空燃比のばらつきが発生すると、所定周波数成分Aは上昇し、リーン側の判定値(0.05)を越えることでリーン側NGカウンタ305Fがカウントアップを開始する。それとほぼ同時に所定周波数成分Cが大きくなるため、所定周波数成分CのNGカウンタ304Cもカウントアップを開始する。
リーン側NGタイマ305Fと所定周波数成分CのNGカウンタ304Cが所定値以上(リーン側NGタイマ:75[count]、所定周波数成分CのNGタイマ:500[count])となり、かつ所定周波数成分Bが判定値(125[mV])以下となる時点t2で示す69秒付近でリーン側NGフラグが成立し、NG判定していることが見て取れる。
図14は燃料噴射量を1.5倍(リッチ側)に設定した場合の実車評価結果である。時点t1で示す4秒付近で気筒間の空燃比のばらつきが発生すると所定周波数成分Aが上昇し,リッチ側NGタイマ305Eがカウントアップを開始する。この際,リーン側NGタイマ305Fもカウントアップを開始するが所定周波数成分Cが所定値より小さいため所定周波数成分CのNGカウンタ304Cはカウントアップせず、アンド機能部305Lの出力は“0”(ローレベル)となる。
そして、リッチ側NGタイマ305Eが所定値以上(リッチ側NGタイマ:500[count])となり,かつO2センサ出力が判定値(83[mV])以下となる時点t2で示す15秒付近でリッチ側NGフラグが成立し、NG判定していることが見て取れる。
尚、本実施例においては三元触媒の上流に空燃に応じて連続的な検出信号を出力する空燃比センサを設け、三元触媒の下流に理論空燃比近傍でスイッチ的な検出信号を出力するO2センサを設けている。
これに対して、三元触媒の上流に理論空燃比近傍でスイッチ的な検出信号を出力するO2センサを設け、三元触媒の下流に空燃に応じて連続的な検出信号を出力する空燃比センサを設けるようにしても良いものである。この場合、所定周波数成分Aと所定周波数成分Bはこれに合わせて変更させることが必要である。
更に、O2センサ及びを空燃比センサの一方を三元触媒の上流側と下流側に設けるようにしても良いものである。
以上のように本発明によれば、回転数に基づく所定周波数成分Cを用いて診断領域を適切に設定でき、気筒間の空燃比ばらつきにより排気が悪化していることを検出すすると共に、空燃比ばらつきの発生要因となる気筒の空燃比が全気筒によって生成された空燃比に対して、リッチ側もしくはリーン側どちらにずれているか容易に判別することができ、診断の検出性能が大きく向上できるようになる。
2…エアクリーナ、5…スロットル弁、6…流量検出装置、7…回転数検出手段、8…プレートまたはリングギア、9…燃料タンク、10…燃料ポンプ、11…プレッシャーレギュレータ、12…燃料管、13…燃料噴射装置、15…三元触媒、16…空燃比センサ、17…O2センサ、18…内燃機関の制御装置、19…点火装置、301…所定周波数成分A演算手段、302…所定周波数成分B演算手段、303…所定周波数成分C演算手段、304…リッチ側/リーン側のずれ判定手段、305…排気悪化検出手段。

Claims (11)

  1. 気筒間の空燃比のばらつきの発生を検出するために、触媒の上流側に設けた上流側空燃比センサの空燃比信号の所定周波数成分Aを演算する第1の周波数成分演算手段と、
    排気の悪化が規制値を超えたかを判定するために、前記触媒の下流側に設けた下流側空燃比センサの空燃比信号の所定周波数成分Bを演算する第2の周波数演算手段と、
    気筒間の空燃比のばらつきを発生させている気筒の空燃比が全気筒による平均空燃比に対して、リッチ側或いはリーン側のどちらにずれているか判定するために、内燃機関の回転数を検出する回転数検出手段からの回転数信号の所定周波数成分Cを演算する第3の周波数演算手段と、
    前記第3の周波数演算手段によって求められた前記所定周波数成分Cに基づいて、気筒間の空燃比のばらつきを発生させている気筒の空燃比が全気筒による平均空燃比に対して、リッチ側或いはリーン側のどちらにずれているか判定する空燃比ずれ判定手段と、
    前記空燃比ずれ判定手段からの判定信号と前記周波数成分A及び前記周波数成分Bに基づいて、前記内燃機関の気筒間の空燃比のばらつきにより排気が悪化していることを判定する排気悪化判定手段と、
    を備えることを特徴とする内燃機関の診断装置。
  2. 請求項1に記載の内燃機関の診断装置において、
    前記上流側空燃比センサは、空燃に応じて連続的な検出信号を出力する空燃比センサ、或いは理論空燃比近傍でスイッチ的な検出信号を出力するO2センサであり、
    前記下流側空燃比センサは、空燃に応じて連続的な検出信号を出力する空燃比センサ、或いは理論空燃比近傍でスイッチ的な検出信号を出力するO2センサであり、
    前記回転数検出手段はクランク角センサであることを特徴とする内燃機関の診断装置。
  3. 請求項1に記載の内燃機関の診断装置において、
    前記所定周波数成分Cを演算する前記第3の周波数演算手段は、内燃機関が2回転する周期に相当する周波数成分を演算することを特徴とする内燃機関の診断装置。
  4. 請求項3に記載の内燃機関の診断装置において、
    前記所定周波数成分Cを演算する前記第3の周波数成分演算手段は、バンドパスフィルタもしくはフーリエ変換を用いた演算であることを特徴とする内燃機関の診断装置
  5. 請求項3に記載の内燃機関の診断装置において、
    前記空燃比ずれ判定手段は、前記第3の周波数演算手段によって求められた所定周波数成分Cが所定値より大きい場合にカウントアップするカウンタを備えており、前記カウンタの計数値が所定の計数値より大きくなった場合に空燃比がリーン側にずれていると判定することを特徴とする内燃機関の診断装置。
  6. 請求項3に記載の内燃機関の診断装置において、
    前記空燃比ずれ判定手段は、前記第3の周波数演算手段によって求められた所定周波数成分Cが所定値より大きい場合にカウントアップするカウンタを備えており、前記カウンタの計数値が所定の計数値に至らない場合に空燃比がリッチ側にずれていると判定することを特徴とする内燃機関の診断装置。
  7. 請求項5或いは請求項6に記載の内燃機関の診断装置において、
    前記所定周波数成分Cと比較される前記所定値は記憶手段に記憶されており、前記内燃機関の回転数と負荷とによって決まる前記所定値が前記記憶手段から検索されることを特徴とする内燃機関の診断装置。
  8. 請求項5に記載の内燃機関の診断装置において、
    前記排気悪化判定手段は、前記所定周波数Aが判定値より大きいかどうかで気筒間の空燃比のばらつきが発生したか判定するばらつき発生検出部と、前記所定周波数Bが判定値より小さいかどうかで排気の悪化が規制値を超えたか判定する排気悪化判定部を備えていることを特徴とする内燃機関の診断装置。
  9. 請求項8に記載の内燃機関の診断装置において、
    前記排気悪化判定手段は、前記ばらつき発生検出部でのリーン側判定と前記排気悪化判定部でのリーン側判定が一致し、且つ前記空燃比ずれ判定手段でのリーン側判定が一致した時にリーン側にばらついていると判定することを特徴とする内燃機関の診断装置。
  10. 請求項8に記載の内燃機関の診断装置において、
    前記排気悪化判定手段は、前記ばらつき発生検出部でのリッチ側判定と前記排気悪化判定部でのリッチ側判定が一致し、且つ前記空燃比ずれ判定手段でのリッチ側判定が一致した時にリッチ側にばらついていると判定することを特徴とする内燃機関の診断装置。
  11. 請求項9或いは請求項10に記載の内燃機関の診断装置において、
    前記排気悪化判定手段は、前記空燃比ずれ判定手段でのリーン側判定或いはリッチ側判定によって、前記ばらつき発生検出部と前記排気悪化判定部で使用されるリーン側判定値或いはリッチ側判定値を変更することを特徴とする内燃機関の診断装置。
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