以下、図面を参照しながら本実施形態に係わる自動分析装置を説明する。なお、以下の説明において、略同一の機能及び構成を有する構成要素については、同一符号を付し、重複説明は必要な場合にのみ行う。
図1は本実施形態に係る自動分析装置のブロック構成図を示している。図1に示すよう
に、自動分析装置100は、反応機構30、判定部40、分析部50、出力部60、入力部70、システム制御部80、補正部90、インターフェース(以下I/Fと呼ぶ)700を備える。
反応機構30は、測光部32とサンプラ部34と反応機構制御部36とを有する。反応機構30は、血液や尿などの被検試料を検査項目ごとに試薬を用いて測定し、当該被検試料に関する測定データを発生する。反応機構30は、図示していない第1、第2試薬庫を有する。なお、反応機構30は、第1、第2試薬庫に加えて、さらに他の試薬庫を有していてもよい。第1、第2試薬庫は、被検試料の複数の測定項目に対応する複数の試薬容器を保持する。第1、第2試薬庫は、保持された複数の試薬容器を保冷する。第1、第2試薬庫は、複数の試薬容器を保持するための複数の区画を有する。
サンプラ部34は、複数のサンプル容器を収容したサンプルラックを、サンプル容器内のサンプルを吸引するための位置(以下、サンプル吸引位置と呼ぶ)へ移動する。サンプラ部34は、移動支持機構344、モータ345、回転カウンタ346、移動検出センサ348を有する。移動支持機構344のトレイには、トレイの長手方向である第1の方向に沿って、複数のサンプルラックが並列して載置される。トレイは、載置された複数のサンプルラックを、第1の方向に沿って移動する。
サンプルラックは、複数のサンプル容器を保持する。以下サンプルラックは、5つのサンプル容器を保持するものとして説明する。サンプルラックは、例えば光を反射する材質で構成される。なお、サンプルラックの側面には、サンプル容器を収容した位置に対応付けて、所定のマーカが設けられる。所定のマーカとは、例えば、光を反射しない非反射材である。
図2は、サンプルラック342の側面を示す図である。サンプルラック342の側面には、収容された複数のサンプル容器(31a、31b、31c、31d、31e)各々に対応付けられた位置に、所定の大きさで非反射材3429が設けられる。所定の大きさとは、サンプル容器の略直径に相当する幅を有する大きさである。第1の方向に直交する第2の方向沿いのトレイから遠い方のサンプルラックの側面(以下、サンプルラック背面と呼ぶ)には、ラックIDを示すバーコード(以下、ラック識別バーコードと呼ぶ)が設けられる。ラック識別バーコードは、図6に示されたラックIDバーコードリーダ250により読み取られる。
複数のサンプル容器(31a、31b、31c、31d、31e)各々は、標準物質や被検試料などのサンプルを収容する。サンプル容器の外表面には、被検体名、標準試薬名等の情報(以下サンプル情報と呼ぶ)を含む1次元コード(以下、サンプルバーコードと呼ぶ)が設けられる。なお、サンプル容器の外表面には、1次元コードもしくは2次元コードの替わりに、IC(Integrated Circuit)タグなどの記憶媒体が設けられてもよい。以下、説明の便宜上、サンプル容器にはバーコードが設けられているものとする。サンプルバーコードは、図6に示されたサンプルIDバーコードリーダ251により読み取られる。
移動支持機構344は、サンプルラック342を移動可能に支持する。移動支持機構344は、後述するモータ345で発生された動力により、トレイに載置されたサンプルラック342を、サンプル吸引位置へ移動する。移動支持機構344は、サンプル吸引位置からトレイへ、サンプルラック342を移動する。サンプル吸引位置へのサンプルラック342の移動は、移動支持機構344における後述するラック押し出し装置により実行される。以下、複数のサンプル容器各々をサンプル吸引位置へ移動させるために、サンプルラック342を逐次移動させることを、ピッチ移動と呼ぶ。ピッチ移動される距離は、図2のΔdに対応する。以下、図2のΔdの距離をピッチと呼ぶ。移動支持機構344の具体的な動作については、サンプルラック342の移動に関する機能(以下、ラック移動機能と呼ぶ)で詳述する。移動支持機構344は、後述する補正部90からの出力に基づいて、ピッチ移動の開始地点(以下、ピッチ移動開始地点と呼ぶ)を変更する。
モータ345は、後述する反応機構制御部36による制御の下で、サンプルラック342を移動するための動力を発生する。モータ345の回転軸には、後述する受光部に入射する光を遮断するためのカット板が設けられる。
回転カウンタ346は、例えば、光を照射する照射部と、照射部から照射された光を受光する受光部とを有する。図3は、本実施形態に係る自動分析装置100のモータ345を回転軸3442方向から見た図である。図4は、図3のモータ345の断面図である。照射部3460と受光部3462とは、カット板3444を挟んで対向し、かつ回転軸3442に平行にモータ近傍に設けられる。照射部3460は、受光部3462に向けて光を照射する。照射部3460から照射された光がカット板3444により遮断されたとき、回転カウンタ346は、回転軸の回転数をカウントする。回転カウンタ346は、コネクタ3470とケーブル3472とを介して、カウントに対応する第1信号を判定部40に出力する。照射部3460から照射された光を受光部3462が受光したとき、回転カウンタ346は、回転軸の回転数をカウントしない。この時回転カウンタは、第2信号を判定部40に出力する。
上記第1信号とは、例えば電圧信号である。以下、第1信号をRotHiとする。回転カウンタ346は、所定のカウント数npに達するまで、RotHiの回数をカウントする。所定のカウント数npとは、サンプルラック342を所定の距離移動させた時のRotHiの回数である。回転カウンタ346は、カウントされたRotHiの回数nが所定の回転数npに達した時点に、カウント終了を知らせるための第3信号を判定部40に出力する。なお、回転カウンタ346は、第3信号を、後述する補正部90に出力してもよい。以下、説明を簡単にするために、所定の回転数npは5であるとする。なお、所定の回転数npは、モータ345の種類、ピッチの長さ、モータの回転軸1回転当たりのサンプルラック342を移動させる距離などにより適宜変更可能である。第2信号とは、例えば0mVの電圧信号である。なお、回転カウンタは、第2信号の替わりに信号を出力しないことも可能である。
移動検出センサ348は、移動支持機構344により所定の移動距離を移動したことを検出する。所定の移動距離とは、例えば、図2に示されたような非反射材間の間隔Piに対応する。移動検出センサ348は、例えば、反射型光センサを有する。反射型光センサとは、例えば、反射された光を受光しないとき、所定の電圧を出力するセンサである。移動検出センサ348は、サンプルラック342に光を照射する。移動検出センサ348は、サンプルラック342から反射された光(以下、反射光と呼ぶ)を受光する。サンプルラック342に設けられた非反射材3429により反射光が受光されないとき、移動検出センサ348は、第1電圧を判定部40に出力する。なお、移動検出センサ348は、第1電圧を補正部90に出力してもよい。以下、第1電圧をPicHiとする。例えば、反射光が受光されないときの出力(PicHi)は、サンプルラック342に収容されたサンプル容器がサンプル吸引位置にあるときの出力、またはサンプルラック34に収容された複数のサンプル容器からサンプルが吸引された後、トレイにサンプルラック342が移動されているときの出力に対応している。
サンプルラック342からの反射光が受光されたとき、移動検出センサ348は、第2電圧を判定部40に出力する。第2電圧とは、例えば0mVである。なお、サンプルラック342からの反射光が受光されたとき、移動検出センサ348は、第2電圧の替わりに電圧を出力しないことも可能である。反射光が受光されたとき、すなわち0mV出力されたときは、例えば、サンプルラック342が所定の移動距離Piの間にサンプルラック342が位置していることを示している。
判定部40は、回転カウンタ346から出力された回転数とサンプルラック342の移動距離との関係が所定の関係から外れているか否かを判定する。以下、説明を簡単にするために、移動検出センサ348により検出される所定の移動距離は図2に示されたPiであって、ピッチΔdだけサンプルラック342を移動させるための回転数(所定の回転数np)は5であるとする。所定の関係とは、5回転で1ピッチΔdの距離だけサンプルラック342を移動させる関係である。以下、回転カウンタ346から出力された回転数とサンプルラック342の移動距離との関係が所定の関係から外れていると判定される場合(以下エラー状態と呼ぶ)について説明する。
まず、回転カウンタ346と移動検出センサ348とがともに故障していないときについて説明する。判定部40は、回転カウンタ346から1回転目の第1信号を受けてから5回転目の第3信号を受けるまでの期間(以下、監視期間と呼ぶ)、移動検出センサ348からの出力を監視する。判定部40は、監視期間に間に1回転目の第1信号を受けた後、第1電圧から第2電圧の変化を検知する。この検知がない場合、判定部40は、エラー状態と判定する。このエラー状態は、サンプルラック342が移動せずに停止したままの状態に対応している。図5は、このエラー状態に対応する移動検出センサ348からの出力a、bを、回転カウンタからの出力cとともに示す図である。図5における移動検出センサ348からの出力aは、いずれかのサンプル容器がサンプル吸引位置に位置している状態を示している。図5における移動検出センサ348からの出力bは、サンプルラック342の非反射材が設けられていないサンプルラック342の側面が移動検出センサ348の前方に位置している状態を示している。
判定部40は、監視期間に間に第3信号を受ける前までに、第2電圧から第1電圧の変化を検知する。この検知がない場合、判定部40は、エラー状態と判定する。このエラー状態は、サンプルラック342がピッチ移動の途中で停止したままの状態に対応している。図6は、このエラー状態に対応する移動検出センサ348からの出力dを、回転カウンタからの出力cとともに示す図である。図5における移動検出センサ348からの出力dは、時刻t1まではピッチ移動され、時刻t1でサンプルラック342の非反射材が設けられていないサンプルラック342の側面が移動検出センサ348の前方に位置したまま停止している状態を示している。
次に、移動検出センサ348が故障した場合について説明する。サンプルラック342がピッチ移動される前に移動検出センサ348が故障すると、移動検出センサ348の出力は、図5の出力bに対応する。すなわち、判定部40は、図5の出力bまたは図6の出力dに対応する状態を検知すると、サンプルラック342が停止、または移動検出センサ348が故障したものとして、エラー状態と判定する。
続いて、回転カウンタ346がピッチ移動前に故障した場合について、図7を参照して説明する。ピッチ移動前に回転カウンタ346が故障すると、移動検出センサ348からの出力eは、図7のように出力される。第1電圧から第2の電圧へ変化した時刻と、第2電圧から第1の電圧へ変化した時刻との間の時間Δt1において、回転カウンタ346出力された回転数は0である。このとき、判定部40は、エラー状態と判定する。
回転カウンタ346がピッチ移動中に故障した場合について、図8を参照して説明する。ピッチ移動中に回転カウンタ346が故障すると、移動検出センサ348からの出力eは、図8のように出力される。第1電圧から第2の電圧へ変化した時刻と、第2電圧から第1の電圧へ変化した時刻との間の時間Δt1において、回転カウンタ346から出力された回転数fは3である。回転数が3であるので、所定の回転数5が出力される前に、第2電圧から第1の電圧へ変化が検知される。時間Δt1を含み、所定の回転数を計測するための時間Δt2を予め設定することで、時間Δt2のうちに所定の回転数が計測されなければ、ピッチ移動中に回転カウンタ346が故障したものとして、判定部40は、エラー状態として判定する。
モータ345が故障し場合について説明する。モータ345が故障すると、移動検出センサ348と回転カウンタ346とから判定部40への出力は、皆無である。判定部40は、ピッチ移動に関する指示が後述する反応機構制御部36から出力された後、所定の時間経過するまでに回転カウンタ346からの出力がなければ、図7下部のグラフと同様に
エラー状態として判定する。
判定部40は、エラー状態と判定した判定結果を後述する表示部62に出力する。なお、判定部40は、Δt2内におけるΔt1の範囲が、複数のサンプルラック各々に対して一定時間ずれていく情報を図示していないメモリに記憶する。判定部40は、上記一定時間のずれに対して、エラー状態と判定した判定結果を後述する補正部90に出力してもよい。また、判定部40は、上記判定結果を後述するシステム制御部80と反応機構制御部36の少なくとも一方に出力してもよい。なお、判定部40は、回転カウンタ346からの出力と移動検出センサ348からの出力とを、時相を合わせて後述する表示部62に出力してもよい。時相を合わせた出力は、例えば、図5乃至図8のようにエラー状態と対応付けて表示部62に表示される。
補正部90は、判定部40からの出力に基づいて、ピッチ移動開始地点を補正する。具体的には、補正部90は、ずれを計測したサンプルラック数(以下、ずれラック総数と呼ぶ)を図示していないメモリから読み出す。補正部90は、上記ずれを解消するために、ピッチ移動開始地点を補正する。例えば、トリガ受信時にPicHiが未出力であって、その後PicHiが出力された(以下、後のPicHiと呼ぶ)時、補正部90は、トリガ受信時から後のPicHiが出力された時刻までの時間間隔(以下、補正時間間隔と呼ぶ)とずれラック総数に基づいて、ピッチ移動開始地点を補正する。その後補正部90は、例えば、モータ345の回転軸3442の1回転に対応したサンプルラック342の移動距離だけ、第2の方向または第2の方向の反対方向に、ピッチ移動開始地点を補正する。補正部90は、補正されたピッチ移動開始地点を、反応機構制御部36、システム制御部80、移動支持機構344に出力する。
反応機構制御部36は、入力部70を介して操作者により入力された分析項目、分析手順等に関するシステム制御部80からの信号に基づいて、図9に示す反応機構30の各要素に対してシーケンスを組む。反応機構制御部36は、組まれたシーケンスに基づいて、図9に示す反応ディスク310、第1試薬庫350、第2試薬庫370をそれぞれ所定のタイミングで所定の角度で回転させる。
反応機構制御部36は、組まれたシーケンスに基づいて、図9に示すトレイ349に配列された複数のサンプルラック342を第1の方向3491に沿ってラック引き込みレーン200に接続された地点(以下、引き込み地点202と呼ぶ)まで移動させるために、移動支持機構344を制御する。反応機構制御部36は、組まれたシーケンスに基づいて、引き込み地点202にあるサンプルラックを第2の方向201に沿ってラック引き込みレーン200に移動させるために、移動支持機構344を制御する。反応機構制御部36は、組まれたシーケンスに基づいて、ラック引き込みレーン200にあるサンプルラック342を第1の方向3491に沿ってサンプリングレーン204に横移動させるために、移動支持機構344を制御する。反応機構制御部36は、組まれたシーケンスに基づいて、第2の方向201の反対方向に沿ってサンプリングレーン204上で横移動されたサンプルラックをピッチ移動させるために、移動支持機構344を制御する。具体的には、反応機構制御部36は、サンプル吸引位置にサンプリングされるサンプル容器を移動させるために、移動支持機構344を制御する。
反応機構制御部36は、組まれたシーケンスに基づいて、図9に示すサンプルプローブ334、第1試薬プローブ354、第2試薬プローブ374をそれぞれ回動および上下動させる。反応機構制御部36は、組まれたシーケンスに基づいて、図9に示す攪拌子324、洗浄部325の洗浄ノズルおよび乾燥ノズルをそれぞれ上下動させる。反応機構制御部36は、組まれたシーケンスに基づいて、図示していないサンプル分注ポンプ、第1試薬分注ポンプ、第2試薬分注ポンプ、洗浄ポンプ、乾燥ポンプをそれぞれ駆動する。反応機構制御部36は、組まれたシーケンスに基づいて、図9に示す攪拌子324を振動させる。反応機構制御部36は、判定部40から出力された判定結果に基づいて、モータ345を停止させる。反応機構制御部36は、補正部90により補正されたピッチ移動開始地点からサンプルラックをピッチ移動させるために、移動支持機構344を制御する。
測光部32は、被検試料と試薬の混合物(以下被検混合物と呼ぶ)に光を照射する。測光部32は、被検混合物を透過した光を吸光度に変換し、被検試料に関する吸光度のデータを発生する。測光部32は、発生した吸光度のデータを後述するデータ記憶部52へ出力する。測光部32は、標準物質と試薬の混合物(以下標準混合物と呼ぶ)に光を照射する。標準物質とは、測定する物質と同じか共通の性質を有する物質または、試薬との反応に共通性のある物質のことである。測光部32は、標準混合物を透過した光を吸光度に変換し、標準物質に関する吸光度のデータを発生する。測光部32は、標準物質に関する吸光度のデータをデータ記憶部52へ出力する。
分析部50は、試料分析部51とデータ記憶部52とを有する。試料分析部51は、データ記憶部52に記憶された吸光度のデータと分析項目とに基づいて、検量線のデータを発生する。発生された検量線のデータは、データ記憶部52に記憶されるとともに、出力部60へ出力される。試料分析部51は、当該検量線のデータとデータ記憶部52に記憶された被検試料に関する吸光度のデータとに基づいて、検査項目に対応する成分の濃度および活性値などに関する分析データを発生する。発生された分析データは、データ記憶部52に記憶されるとともに、出力部60へ出力される。
データ記憶部52は、ハードディスク等の記憶媒体を有する。データ記憶部52は、反応機構30の測光部32により発生された吸光度のデータを記憶する。データ記憶部52は、試料分析部51により発生された検量線のデータを、標準物質ごとに記憶する。データ記憶部52は、試料分析部51により発生された分析データを、被検試料ごとに記憶する。
出力部60は、印刷部61と表示部62とを有する。出力部60は、分析部50で発生された検量線と分析データとを、印刷または表示として出力する。印刷部61は、例えばプリンタ等の出力デバイスを用いて、分析部50で発生された検量線と分析データを、プリンタ用紙に所定のレイアウトで印刷する。
表示部62は、例えばCRT(Cathode Ray Tube)ディスプレイ、液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ等の表示デバイスを用いて、分析部50で発生された検量線と分析データとを所定のレイアウトで表示する。表示部62は、判定部40から出力された判定結果に基づいて、所定の警告を表示する。所定の警告とは、例えば、例えば、赤色の表示、点滅などの表示態様により出力される。なお、図示していない音声出力部により、警告音を警告の表示とともに出力してもよい。また、表示部62は、各測定項目に関する被検試料の液量、試薬の液量、測光ビームの波長等の分析条件を設定するための分析条件設定画面、被検試料に関して被検体IDや被検体名等を設定するための被検体情報設定画面、被検試料ごとの測定項目を選択するための測定項目選択画面等を表示する。
入力部70は、キーボード、マウス、各種ボタン、タッチキーパネル等の入力デバイスを有する。入力部70は、入力デバイスを介して操作者により入力された各測定項目の分析条件、被検試料ごとに測定する測定項目、ラック引き込みレーン200にサンプルラックを引き込む距離などを、操作信号としてシステム制御部80へ出力する。また、入力部70を介して操作者により入力された情報は、図示していない記憶部に記憶されてもよい。
システム制御部80は、CPU(Central Processing Unit)を有する。システム制御部80は、本自動分析装置100における各部を統括して制御する。システム制御部80は、入力部70から供給される操作信号、判定部40から出力された判定結果等に基づいて、各部を制御する。なお、システム制御部80は、判定部40からの上記判定結果に基づいて、サンプルラックをサンプル吸引位置に移動するための指示を、反応機構制御部36に出力してもよい。なお、システム制御部80は、補正部90により補正されたピッチ移動開始地点からサンプルラックをピッチ移動させるための指示を、反応機構制御部36に出力してもよい。また、システム制御部80は、判定部40からの上記判定結果に基づいて、本自動分析装置100の動作を停止させてもよい。
I/F700には、例えばネットワークが接続される。ネットワークを介して本自動分析装置100は、PACS(Arrture Archiving and Communication System:医用画像保管通信システム)等に接続されてもよい。
図9は、反応機構30の外観を示す斜視図である。図9に示すように反応機構30は、
反応ディスク310、サンプラ部34、第1試薬庫350、第2試薬庫370、サンプルプローブ334、サンプルアーム336、第1試薬プローブ354、第1試薬アーム356、第2試薬プローブ374、第2試薬アーム376、攪拌部320、洗浄部325、測光部32を有する。
反応ディスク310は、円周上に複数配置された反応容器312を回転可能に保持する。反応容器312は、反応ディスク310内の恒温槽に収容されている。反応ディスク310は、分析サイクルごとに所定の角度で回転した後、停止する。これにより、反応容器312は、所定の角度だけ回転される。
第1試薬庫350は、複数の第1試薬容器352を有する。第2試薬庫370は、複数の第2試薬容器372を有する。第1試薬容器352および第2試薬容器372には、各検査項目の成分と反応する試薬が納められている。
図9におけるサンプラ部34の移動支持機構344は、ラック引き込み装置360、ラック横移動装置362、ラック押し出し装置364を有する。ラック引き込み装置360、ラック横移動装置362、ラック押し出し装置364各々は、サンプルラック342を移動するためのモータを有する。ラック引き込み装置360は、反応機構制御部36の制御のもとで、引き込み地点202にあるサンプルラックを、第2の方向201に沿ってトレイ349からラック引き込みレーン200に引き込む。ラック横移動装置362は、ラック引き込みレーン200に位置するサンプルラック3421を、第1の方向3491に沿ってサンプリングレーン204に横移動する。ラック押し出し装置364は、サンプリングレーン204にあるサンプルラック3423を、サンプル吸引位置に、第2の方向201の反対方向に沿ってピッチ移動する。移動検出センサ348は、サンプルラック3423に収容された複数のサンプル容器各々がサンプル吸引位置に到達したことを検出する。
サンプルプローブ334は、サンプルアーム336の先端に取り付けられている。サンプルアーム336は、サンプルプローブ334を回動可能に支持する。サンプルプローブ334は、サンプリングレーン204上におけるサンプル吸引位置にあるサンプル容器から、サンプル分注ポンプによりサンプルを吸引する。サンプルプローブ334は、吸引したサンプルを、反応ディスク310上のサンプルが吐出される位置にある反応容器312に吐出する。
第1試薬プローブ354は、第1試薬アーム356の先端に取り付けられている。第1試薬アーム356は、第1試薬プローブ354を回動可能および上下動可能に支持する。第1試薬プローブ356は、待機位置から、第1試薬庫350上における第1試薬を吸引する位置にある第1試薬容器352内へ降下する。第1試薬プローブ356は、第1試薬分注ポンプにより、第1試薬容器352から第1試薬を所定量だけ吸引する。第1試薬プローブ354は、所定量の吸引を終えると上記待機位置まで上昇する。第1試薬プローブ354は、吸引した第1試薬を、反応ディスク310上の第1試薬が吐出される位置にある反応容器312に吐出する。
第2試薬プローブ374は、第2試薬アーム376の先端に取り付けられている。第2試薬アーム376は、第2試薬プローブ374を回動可能および上下動可能に支持する。第2試薬プローブ374は、待機位置から、第2試薬庫370上における第2試薬を吸引する位置にある第2試薬容器372内へ降下する。第2試薬プローブ374は、第2試薬分注ポンプにより、第2試薬容器372から第2試薬を所定量だけ吸引する。第2試薬プローブ374は、所定量の吸引を終えると上記待機位置まで上昇する。
攪拌部320は、攪拌アーム322と攪拌子324とを有する。攪拌子324は、攪拌アーム322の先端に取り付けられている。攪拌アーム322は、攪拌子324を回動可能および上下動可能に支持する。攪拌アーム322は、反応ディスク310上における反応容器312内の被検混合物を攪拌する位置に停止した反応容器312内に、攪拌子324を待機位置から下降させて挿入する。攪拌子324の先端が反応容器312の内底面の近傍まで下降すると、攪拌アーム322は、攪拌子324の下降を停止させる。攪拌子324の停止後、攪拌子324は、反応機構制御部36の制御により振動する。攪拌子324が振動することにより、反応容器312内の混合液(サンプルと第1試薬、サンプルと第2試薬、サンプルと第1試薬と第2試薬など)は、攪拌される。攪拌後、攪拌アーム322は、攪拌子324を待機位置まで上昇させる。
測光部32は、反応ディスク310により回転させられている反応容器312に光を照射する。測光部32は、反応容器312内の混合液を透過した光を吸光度に変換することにより、吸光度のデータを発生する。測光部32は、発生された吸光度のデータをデータ記憶部52に出力する。
洗浄部325は、図示していない支持機構と洗浄ノズルと乾燥ノズルとを有する。支持機構は、洗浄ノズルと乾燥ノズルとを、それぞれ上下移動可能に支持する。洗浄ノズルは、反応ディスク310上における反応容器312を洗浄する位置にある反応容器312から、洗浄ポンプにより混合液を吸引する。混合液を吸引後、洗浄ノズルは純水を吐出して、反応容器312内を洗浄する。乾燥ノズルは、反応ディスク310上における反応容器312を乾燥する位置にある反応容器312内を、乾燥ポンプにより乾燥させる。
(ラック移動機能)
サンプルラック342の移動に関する機能を、図10を参照して説明する。
図10は、本自動分析装置100のサンプラ部34の平面図の一例を示す図である。
ラック検知センサ231は、トレイ349の引き込み地点202における第2の方向201手前側に設けられる。ラック検知センサ231は、第2の方向201の反対方向におけるサンプルラック3420の端部(以下、サンプルラック前面と呼ぶ)を検知する。ラック検知センサ231は、トレイ349における引き込み地点202に移動されたサンプルラック3420を検知する。ラック検知センサ231は、例えば、反射型光センサ等を有する。
ラック検知センサ231によりサンプルラック3420が検知されると、ラックIDバーコードリーダ250がサンプルラック前面の反対側の端部(以下、サンプルラック背面と呼ぶ)に設けられたラック識別バーコードを読み出す。ラックIDバーコードリーダ250は、ラック識別バーコードから読み出した識別情報をシステム制御部80に出力する。システム制御部80は、読み出された識別情報により、ラック引き込みレーン200に引き込まれるサンプルラック3420を特定する。
ラック引き込みレーン200の下部には、ラック引き込み装置360が設けられる。ラックIDバーコードリーダ250がラック識別バーコードを読み出すと、ラック引き込み装置360は、トレイ349から第2の方向201に沿って、ラック引き込みレーン200上の所定の位置(以下、引き込み位置と呼ぶ)まで、サンプルラック3420を引き込む。具体的には、ラック引き込み装置360は、サンプルラック3420を引き込むための引掛け部(図示していない)を有する。また、サンプルラック3420は、底面に凹部を有する。ラック引き込み装置360は、サンプルラック底面の凹部に前記引掛け部を引掛ける。ラック引き込み装置360は、引っ掛けられたサンプルラック3420を、トレイ349からラック引き込みレーン200に引き込む。
このとき、ラック検知センサ233、237、239からの出力を組み合わせ、ラック引き込みの動作におけるサンプルラックの位置を検知する。ラック検知センサ233、237は、ラック引き込みレーン200に沿って図10に示すように設けられる。また、ラック検知センサ239は、サンプルラック背面方向に設けられる。サンプルラックの位置の検知により、ラック引き込み装置360の動作、具体的には引き込み位置への停止に係る動作等が制御される。ラック検知センサ233、237、239には、主に反射型光センサ等が用いられる。
ラック引き込みレーン200に引き込まれるサンプルラックに関する位置の検知は、以下のとおりである。ラック引き込み装置360によりサンプルラックの引き込みが開始されると、ラック検知センサ233がONとなる。また、サンプルラックがラック検知センサ233の検知領域を通過すると、ラック検知センサ233がOFF、ラック検知センサ237およびラック検知センサ239がONとなる。これらON、OFF信号に基づいて、サンプルラックを引き込み位置に移動したことが検知される。上記複数のセンサ各々から出力に基づいて、ラック引き込み装置360は、サンプルラックの引き込みに係る動作を停止する。
ラック横移動装置362は、ラック引き込みレーン200に引き込まれたサンプルラック3421を、ラック引き込みレーン200に隣接したサンプリングレーン204に移動する。サンプリングレーン204に隣接して、ラック検知センサ241が設けられる。ラック横移動装置362は、ラック引き込みレーン200上のサンプルラック3421を、サンプリングレーン204に横移動する。ラック検知センサ241によりサンプルラック側面が検知されると、ラック横移動装置362は、サンプルラックの移動を停止する。このときトレイ349は、サンプルラック3421の横移動に連動して、第1の方向3491に沿って移動される。
サンプルラック3421がサンプリングレーン204に移動されると、ラック押し出し装置364は、移動されたサンプルラック3423を、サンプルラック背面からトレイ349に向かって、押し出す。この押し出しにより、サンプリングレーン204上のサンプルラック3423は、トレイ349に戻される。ラック押し出し装置364は、サンプルラック3423に収容された複数のサンプル容器(31a、31b、31c、31d、31e)各々を、サンプル吸引位置P1に到達するように順次ピッチ移動させる。サンプリングプローブ334は、サンプル吸引位置P1に位置するサンプル容器からサンプルを吸引する。複数のサンプル容器(31a、31b、31c、31d、31e)各々のサンプルに対する吸引が終了すると、ラック押し出し装置364は、ラック検知センサ243がOFF、ラック検知センサ245がONとなるまで、サンプルラック3423をトレイ349に向けて押し出す。
(ピッチ移動判定機能)
以下、サンプリングレーン204上のサンプルラック3423のピッチ移動の正誤を判定する機能(以下、ピッチ移動判定機能と呼ぶ)に係る処理(以下、ピッチ移動判定処理と呼ぶ)について説明する。
図11は、ピッチ移動判定処理の手順を示すフローチャートである。
移動支持機構344のラック押し出し装置364によるサンプルラック3423のピッチ移動に先立って、カウンタのカウンタ数nが初期化(n=0)される(ステップSa1)。ラック押し出し装置364におけるモータ345により、サンプリングレーン204上のサンプルラック3423に対して、ピッチ移動が開始される(ステップSa2)。ピッチ移動の開始に伴って、回転カウンタ346の出力RotHiが、判定部40に出力される(ステップSa3)。
ピッチ移動の開始から所定時間経過後、RotHiが判定部40に出力されなければ、判定部40によりエラー状態と判定される。所定時間とは、例えば、回転軸3442が1回転に要する時間である。この判定結果に基づいて、サンプルラック3423のピッチ移動が停止される(ステップSa4)。サンプルラック3423のピッチ移動の停止とともに、表示部62に所定の警告が表示される(ステップSa5)。なお、補正部90は、この判定結果に基づいて、ピッチ移動開始地点を補正してもよい。ピッチ移動開始地点の補正は、例えば、引き込み位置の変更である。引き込み位置の変更に関する情報は、反応機構制御部36およびシステム制御部80少なくとも一方に出力される。
RotHiが回転カウンタ346から判定部40へ出力されたとき、回転軸の回転数に対応するカウント数nがインクリメントされる(ステップSa6)。次のRotHiが回転カウンタ346から判定部40へ出力される前に、PicHiが移動検出センサ348から判定部40へ出力されれば、判定部40によりエラー状態と判定される(ステップSa7)。このとき、ステップSa4の処理とステップSa5の処理とが実行される。
次のRotHiが判定部40へ出力される前に、PicHiが判定部40へ出力されなければ、カウント数nが所定のカウント数npに等しくなるまで、上記ステップSa3、ステップSa6、ステップSa7の処理が繰り返される(ステップSa8)。カウント数nが所定の回転数npに達した時点において、PicHiが未出力であるとき、判定部40によりエラー状態と判定される(ステップSa9)。このとき、ステップSa4の処理とステップSa5の処理とが実行される。
ステップSa9の処理の後、サンプルラック3423のピッチ移動が停止される(ステップSa10)。サンプルラック3423の停止後、サンプル吸引位置P1にあるサンプル容器から、サンプルが吸引される(ステップSa11)。サンプルの吸引が終了すると(ステップSa12)、サンプルラック内の全てのサンプル容器(31a、31b、31c、31d、31e)に対するサンプルの吸引が終了するまで(ステップSa13)、ステップSa1乃至ステップSa13の処理が繰り返される。
図12は、一つのサンプルラックにおける4回のピッチ移動に関する回転カウンタ346からの出力(RotOut)を、移動検出センサ348からの出力(PicOut)とともに示す図である。図12は、表示部62に表示させることも可能である。図12の横軸は時間を示している。図12の縦軸は、移動検出センサ348から出力された電圧と回転カウンタ346から出力された電圧とを示している。
図12におけるPos1は、サンプルラック3423に収容されたサンプル容器31aがサンプル吸引位置P1に位置していることを示している。図12におけるPos2は、サンプルラック3423に収容されたサンプル容器31bがサンプル吸引位置P1に位置していることを示している。図12におけるPos3は、サンプルラック3423に収容されたサンプル容器31cがサンプル吸引位置P1に位置していることを示している。図12におけるPos4は、サンプルラック3423に収容されたサンプル容器31dがサンプル吸引位置P1に位置していることを示している。図12におけるPos5は、サンプルラック3423に収容されたサンプル容器31eがサンプル吸引位置P1に位置していることを示している。Pos5の時間幅は、Pos1乃至Pos4の時間幅に比べて短く、RotHiの間隔に略等しい。このことは、サンプル容器31eがサンプル吸引位置に停止せずに通過したことを示している。
図12におけるC12は、Pos1とPos2との間におけるサンプルラックのピッチ移動に対応する略時間幅を示している。図12におけるC23は、Pos2とPos3との間におけるサンプルラックのピッチ移動に対応する略時間幅を示している。図12におけるC34は、Pos3とPos4との間におけるサンプルラックのピッチ移動に対応する略時間幅を示している。図12におけるC45は、Pos4とPos5との間におけるサンプルラックのピッチ移動に対応する略時間幅を示している。C12、C23、C34、C45各々の時間間隔におけるRotHiの回数のカウント数は5である。
なお、本実施形態においては、反射材により構成されたサンプルラックにおけるサンプル容器の位置に非反射材が設けられているが、理論的には上記記載の逆であってもよい。すなわち、非反射材で構成されたサンプルラックにおけるサンプル容器の位置に、反射材を設けても、本実施形態を機能させることは可能である。このとき、移動検出センサ348からの出力を本実施形態と一致させるためには、移動検出センサ348からの出力は、本実施形態(入光時PicHiを出力)と逆(遮光時PicHiを出力)にする必要がある。
図13は、本実施形態に係り、サンプルラックの素材と所定のマーカの素材とを、移動検出センサの出力パターンとともに示す図である。図13に示すように、サンプルラックの素材とマーカ素材と移動検出センサ348からの出力との組み合わせによっては、本実施形態と逆になることがあるが、出力電圧を反転させることにより、本実施形態を機能させることも可能である。
以上に述べた構成によれば、以下の効果を得ることができる。
本自動分析装置100によれば、モータ345にカット板3444と回転カウンタ346とを設けることにより、モータ345の回転数とサンプルラックの移動距離との関係が所定の関係から外れているか否かを判定することができる。また、本自動分析装置100によれば、回転カウンタ346による出力と移動検出センサ348による出力とのうち少なくとも一方の出力波形を表示することができる。これらのことから、回転カウンタ346と移動検出センサ348との少なくとも一つのセンサの動作不良およびピッチ移動中のサンプルラックの異常動作などを、2重で確認することができる。
さらに本自動分析装置100によれば、回転カウンタ346からの出力波形の位相と移動検出センサ348からの出力波形の位相とがずれた(以下、出力波形異常と呼ぶ)場合、警告を表示することができる。また、出力波形異常に基づいて、サンプルラックのピッチ移動を停止させることができる。これにより、回転カウンタ346と移動検出センサ348とのうち少なくともひとつの誤作動によるサンプルの吸引を未然に防ぐことができる。加えて、出力波形異常に基づいて、サンプルラックのピッチ移動開始地点を補正することができる。以上のことから、本自動分析装置100は、低コストで、回転カウンタ346と移動検出センサ348との少なくとも一つのセンサの動作不良、およびピッチ移動中のサンプルラックの異常動作などを、2重で確認することができる。
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。