JP5849763B2 - ラベル紙の搬送制御方法およびプリンター - Google Patents

ラベル紙の搬送制御方法およびプリンター Download PDF

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Description

本発明は、ラベル紙に印刷するプリンターおよび当該プリンターにおけるラベル紙の搬送制御方法に関する。
従来から、紙送りモーターによって紙送りローラーを駆動して記録媒体を搬送するプリンターにおいて、記録媒体を精度良く搬送するため、PID制御を行うものがある。特許文献1には、記録媒体の位置制御および速度制御をPID制御(位置PID制御および速度PID制御)によって行うプリンターが開示されている。このプリンターでは、目標位置に対して所定距離の位置に到達するまでは速度PID制御を行い、目標位置から所定距離以内の範囲では位置PID制御を行う。
PID制御では、目標値と現在値(出力値)との差分を算出し、残留偏差や外乱の影響を考慮して、比例要素、積分要素、微分要素を反映させたフィードバック値を算出する。そして、フィードバック値に基づき、紙送りモーターを制御するための電流制御信号やPWM制御信号を生成してモータードライバーに入力し、紙送りモーターを駆動する。このようなフィードバック制御を周期的に行うことにより、記録媒体の搬送位置あるいは搬送速度を目標位置あるいは目標速度に収束させる。
特開2010−52295号公報
ここで、台紙の上に部分的にラベルが貼り付けられているダイカットラベル紙などのラベル紙を紙送りローラーで搬送する場合、台紙のみの部分とラベルが貼られた部分で用紙の厚さが異なっており、ラベルの端部が段差状になっている。このため、ラベルの端部が紙送りローラーを通過するときに搬送負荷が急激に変動する。すなわち、ラベルの端部に搬送ローラーが乗り上げるときは搬送負荷が増大し、ラベルの端部から台紙に向けて搬送ローラーが落下するときには搬送負荷が減少する。このような搬送負荷の変動に伴ってラベル紙の搬送速度が急激に変動するため、ラベルの端部が紙送りローラーを通過するときに搬送速度が大きく乱れて印刷乱れが起こりやすいという問題点がある。
PID制御では、比例要素、積分要素、微分要素の各ゲインパラメーター(係数)を予め適切に設定しておくことにより、目標値に収束させるための制御を良好に行うことができる。例えば、段差状になったラベルの端部が紙送りローラーを通過するときの速度変化に対する応答性を上げるには、ゲインパラメーターの値を大きく設定すればよい。しかしながら、ゲインパラメーターの値を大きく設定すると、段差部での速度変動に対する応答性が上がる一方、外乱などに起因するわずかな速度変動に対して過剰なフィードバックが行われ、かえって搬送速度を安定させることができない。従って、高品質な印刷を安定して行うことができないおそれがある。
本発明の課題は、このような点に鑑みて、ラベル紙の搬送制御をPID制御によって行うにあたって、段差のあるラベル紙の搬送速度を安定させることができ、高品質な印刷を安定して行うことのできるラベル紙の搬送制御方法およびプリンターを提供することにある。
上記の課題を解決するため、本発明は、長尺の台紙に所定間隔でラベル貼り付けられたラベル紙を紙送りローラーによる搬送位置を経由して搬送するプリンターにおけるラベル紙の搬送制御方法であって、
前記ラベル紙への印刷を行うときには、前記紙送りローラーを駆動する紙送りモーター
をPID制御によって駆動制御することにより、前記ラベル紙の搬送速度を制御し、
前記PID制御に用いられるゲインパラメーターの値は、前記ラベルの搬送方向の端部を含む前記ラベル紙の段差領域が前記紙送りローラーを通過する第1の搬送区間では、当該段差領域が前記紙送りローラーを通過していない第2の搬送区間よりも大きい値に設定されることを特徴としている。
本発明では、このように、ラベル紙の段差領域(ラベルの搬送方向の端部を含む部分)が紙送りローラーを通過する区間に限ってPID制御のゲインパラメーターの値を大きい値に変更し、この区間では、目標速度からのずれに対する応答性を高め、大きなフィードバックを行う。このようにすると、紙送りローラーが段差を乗り越えるとき、あるいは段差を落下することによって搬送速度が乱れたとき、これを速やかに解消するようなフィードバック制御を行うことができる。従って、段差が紙送りローラーを通過するときも安定した速度で搬送できる。その一方で、段差が紙送りローラーを通過していないときは応答性の小さいゲインパラメーターの値を用いることにより、外乱等に起因する速度変化に対して過剰なフィードバックが行われることがないようにすることができる。従って、搬送速度を安定させることができ、高品質な印刷を安定して行うことができる。
本発明において、前記ラベル紙は、前記紙送りローラーと、搬送される前記ラベル紙に
従動する従動ローラーによる各搬送位置を経由して搬送され、前記ゲインパラメーターの値は、前記段差領域が前記紙送りローラーおよび前記従動ローラーの少なくともいずれかを通過している第3の搬送区間では、前記段差領域が前記紙送りローラーおよび前記従動ローラーのいずれの搬送位置も通過していない第4の搬送区間よりも大きい値に設定されることが望ましい。ラベル紙の段差領域が従動ローラーを通過するときには、段差領域が紙送りローラーを通過するときと同様に搬送負荷が急激に変動し、これに起因して搬送速度が乱れる。従って、段差領域が紙送りローラーを通過する区間だけでなく、従動ローラーを通過する区間についてもゲインパラメーターを応答性の大きな値に切り換えることで、より搬送速度を安定させることができる。
ここで、本発明において、前記段差領域は、前記ラベル紙の搬送方向に隣接している2枚のラベル間に設けられたラベル間ギャップと、当該ラベル間ギャップを挟む2箇所のラベル端部を含む連続した領域であることが望ましい。ラベル紙において、ラベル間ギャップ(台紙のみの部分)は幅が狭く設定されているため、ラベルの端部毎に段差領域を設定すると、短い搬送区間の中でゲインパラメーターの切り換えが多数回行われ、速度変化に対して良好に追従できずにかえって搬送速度の安定性を損なうおそれもある。ラベル間ギャップを挟む2箇所の段差にまたがるように段差領域を設定することにより、単純な制御で搬送速度を安定させることができる。
ここで、本発明において、上位装置から、印刷対象の前記ラベル紙に関する情報の入力を受け付け、前記PID制御の実行時には、前記入力された情報に基づき、前記ラベル紙における前記段差領域の配置を確定して、当該確定した段差領域の搬送位置を監視することが望ましい。ラベル紙の情報(ラベル寸法やその配置)が分かれば、段差領域の配置をプリンター側で確定できる。また、各種のラベル紙について、各ラベル紙のラベル寸法やその配置に基づき、段差領域の配置を予め決定してそのデータをプリンターに記憶させておくことにより、ラベル紙の種類情報のみに基づいて段差領域の配置情報を読み出すこともできる。また、印刷時にはラベル紙上のラベルの頭出しを行うため、頭出し位置および頭出し後の搬送量に基づいて段差領域の搬送位置を監視することができる。
次に、本発明は、
長尺の台紙に所定間隔でラベルを貼り付けたラベル紙に印刷を行うための印刷ヘッドと、
当該印刷ヘッドによる印刷位置を経由して前記ラベル紙を搬送するための紙送りローラーと、
当該紙送りローラーを駆動する紙送りモーターと、
当該紙送りモーターを制御する制御手段とを有するプリンターであって、
前記制御手段は、
前記ラベル紙への印刷を行うときには、上記のラベル紙の搬送制御方法により、前記紙送りモーターをPID制御によって駆動制御することを特徴としている。
本発明によれば、ラベル紙の段差領域(ラベルの搬送方向の端部を含む部分)が紙送りローラーを通過する区間に限ってPID制御のゲインパラメーターの値を変更し、この区間では、目標速度からのずれに対する応答性を高め、大きなフィードバックを行う。これにより、紙送りローラーが段差を乗り越えるとき、あるいは段差を落下することによって搬送速度が乱れたとき、これを速やかに解消するようなフィードバック制御を行うことができる。従って、段差が紙送りローラーを通過するときも安定した速度で搬送できる。その一方で、段差が紙送りローラーを通過していない間は外乱等に起因する速度変化に対して過剰なフィードバックが行われることがないようにすることができる。従って、搬送速度を安定させることができ、高品質な印刷を安定して行うことができる。
本発明の実施の形態に係るプリンターの全体構成を示す概略縦断面図である。 記録紙(ラベル紙)およびその段差領域の説明図である。 減速機構および印刷動作を制御する制御系の説明図である。 印刷動作中におけるゲインパラメーターの変動パターンを示す説明図である。 記録紙の搬送速度制御のフローチャートである。 改変例の段差領域を示す説明図である。
以下、図面を参照しながら、本発明を適用したプリンター、およびこのプリンターにおけるラベル紙の搬送制御方法の実施形態を説明する。
(全体構成)
図1は、本発明の実施の形態に係るプリンター1の全体構成を示す概略縦断面図である。プリンター1は、複数種類のカラーインクを用いて長尺状の記録紙P(ラベル紙)に印刷を行うラインインクジェットプリンターである。プリンター1の後側部分にはロール紙装填部2が設けられており、ここに装填されたロール紙から引き出された記録紙Pは、インクジェットヘッド3(印刷ヘッド)による印刷位置Aを規定しているプラテン4の表面を経由する搬送経路5に沿って搬送される。
ロール紙装填部2の上方には、記録紙Pのスキューを防止するための用紙ガイド6が配置されている。用紙ガイド6の後方には、ロール紙から記録紙Pを引き出すための繰り出しローラー7が配置されている。繰り出しローラー7は、図示を省略する繰り出しモーターによって正逆方向に回転させられる。
記録紙Pは、ロール紙から繰り出しローラー7に向かって斜め後方に引き出された後、繰り出しローラー7に掛け渡される。そして、繰り出しローラー7を介して前方に引き出された記録紙Pは、用紙ガイド6の後方に配置された負荷ローラー8を経由した後、用紙ガイド6およびその前方に配置された紙送りローラー対9を経由してプラテン4の表面を通過するようにセットされる。紙送りローラー対9は、記録紙Pに下側から当接する紙送りローラー10と、紙送りローラー10の側に上方から付勢された押圧ローラー11とを備えている。紙送りローラー対9の下側には、紙送りローラー10を正逆方向に回転させるための紙送りモーター12が配置されている。紙送りローラー対9はプラテン4の上流側に配置されており、紙送りローラー10による搬送位置Bは、印刷位置Aの上流側に設定されている。紙送りモーター12と紙送りローラー10の間には、紙送りモーター12の回転を減速して紙送りローラー10に伝達する減速機構13が構成されている。
プラテン4の上方には、キャリッジ14に搭載されたインクジェットヘッド3が配置されている。プラテン4の下方には、インクカートリッジ装着部15が設けられている。インクカートリッジ装着部15には、シアン、マゼンダ、イエローおよびブラックの4色のインクのそれぞれを貯留するインクカートリッジが装着されている。インクカートリッジ装着部15にインクカートリッジが装着されると、図示を省略するインク供給用のポンプ機構がインクカートリッジ内のインクタンクと接続された状態になり、インクジェットヘッド3へのインクの供給が可能となる。
インクジェットヘッド3は、キャリッジ14に搭載された状態で、図1に示す印刷位置Aと、搬送経路5からプリンター幅方向の外側に外れたホームポジション(図示省略)との間を往復移動する。インクジェットヘッド3は、印刷位置Aに停止した状態で搬送経路5を搬送される記録紙Pに印刷を行い、印刷が終了するとホームポジションに退避させられて待機する。待機中には、インクジェットヘッド3のインクノズルの目詰まりを防止あるいは解消するためのメンテナンス動作が行なわれる。
プリンター1は、ロール紙から引き出された記録紙Pが搬送経路5にセットされた状態で上位装置から印刷指令を受けると、インクジェットヘッド3をホームポジションから印刷位置Aに向かって移動させて、印刷位置Aに位置決めして停止させる。この状態で、紙送りローラー10を回転させて記録紙Pを搬送する紙送り動作と、インクジェットヘッド3から記録紙Pに向かってインクを吐出するインク吐出動作とを並行して行うことによって、印刷位置Aを通過する記録紙Pに印刷を行う。
(記録紙)
図2は記録紙P(ラベル紙)およびその段差領域の説明図である。記録紙Pは、長尺の台紙P1と、この台紙P1の長手方向に沿って一定間隔で貼り付けられている定型のラベルP2を備えている。各ラベルP2は矩形状であり、隣接するラベルP2の間には、記録紙Pの搬送方向と直交する方向に延びるラベル間ギャップGが設けられている。本例では、各ラベルP2の後端P2a(搬送方向の上流側の端部)を含む記録紙Pの部分、および、各ラベルP2の前端P2b(搬送方向の下流側の端部)を含む記録紙Pの部分を段差領域P3に設定している。記録紙Pにおける段差領域P3の配置は、ラベルP2のサイズおよび配置に基づいて決定される。
プリンター1で印刷を行う各種の記録紙Pについては、各記録紙Pにおけるラベルサイズ及び配置が予め判明していれば、この情報に基づいて各記録紙Pにおける段差領域P3の配置を確定し、そのデータをプリンター1に記憶させておくことができる。このようにすると、印刷データと共に印刷対象の記録紙Pの種類情報を上位装置から受け取ることにより、この種類情報に基づき、印刷対象の記録紙Pにおける段差領域P3の配置情報を読み出すことができる。そして、印刷時にはラベルP2の頭出しを行うため、頭出し位置および頭出し後の搬送量に基づいて、確定した段差領域P3の搬送位置を監視することができる。
(減速機構および制御系)
図3は、減速機構13および印刷動作を制御する制御系の説明図である。減速機構13は、紙送りローラー10と平行に配置された中間軸20を備えている。また、減速機構13は、紙送りモーター12の出力軸に取り付けられる第1プーリー21と、第1プーリー21よりも大径で中間軸20に取り付けられる第2プーリー22と、第2プーリー22よりも小径で中間軸20に取り付けられる第3プーリー23と、紙送りローラー10および第3プーリー23よりも大径で紙送りローラー10の回転軸に取り付けられる第4プーリー24とを備えている。第2プーリー22は、中間軸20の軸方向の中央部分に固定されており、第3プーリー23は、中間軸20の一方の軸端部分に固定されている。第4プーリー24は、紙送りローラー10の回転軸の一方の軸端部分に固定されている。第1プーリー21と第2プーリー22の間には、第1無端ベルト25が架け渡されており、第3プーリー23と第4プーリー24との間には、第2無端ベルト26が架け渡されている。減速機構13において、中間軸20は、紙送りモーター12よりも低速で、かつ、紙送りローラー10よりも高速で回転する。
中間軸20の他方の軸端部分には、紙送りモーター12の回転速度を検出して紙送りモーター12をフィードバック制御するためのエンコーダー31と、インクジェットヘッド3におけるインクの吐出タイミングを制御するためのエンコーダー34とが設けられている。エンコーダー31は、円板状に形成されたエンコーダースケール32と、光学式のセンサー33とを備えている。エンコーダー34は、円板状に形成されたエンコーダースケール35と、光学式のセンサー36とを備えている。
エンコーダースケール32およびエンコーダースケール35は、中間軸20の軸方向に所定の間隔をあけた状態で中間軸20に固定されている。エンコーダースケール32、35の外周縁部分には、等角度間隔でスリットが形成されている。センサー33は、エンコーダースケール32のスリット部分を挟むように配置される発光素子および受光素子を備えている。センサー36は、エンコーダースケール35のスリット部分を挟むように配置される発光素子および受光素子を備えている。エンコーダー31の分解能は、エンコーダー34の分解能よりも高くなっている。
エンコーダー31は、印刷動作および搬送動作を司る印刷制御部40(制御手段)に接続されている。印刷制御部40には、エンコーダー31から出力される第1出力信号S1が入力される。印刷制御部40は、CPUやファームウエアを搭載するROMなどを備える電子回路である。この印刷制御部40は、第1出力信号S1に基づいて、紙送りモーター12の回転速度および回転量(すなわち、紙送りローラー10による記録紙Pの搬送速度および搬送量)を算出する。そして、この算出結果に基づいて、モータードライバー41を介して紙送りモーター12を制御して、紙送りローラー10による記録紙Pの搬送速度および搬送量を制御する。本例では、紙送りモーター12はPWM制御されており、モータードライバー41は、印刷制御部40から出力される制御信号S3に基づいてPWM信号S4を生成し、これに基づいて紙送りモーター12を駆動する。
エンコーダー34は、エンコーダー31と同様に、印刷制御部40に接続されており、印刷制御部40には、エンコーダー34から出力される第2出力信号S2が入力される。エンコーダー34は、中間軸20が1回転する間に(すなわち、紙送りローラー10による紙送り量が所定量に達する間に)、予め設定した数(分解能に依存する数)のパルス信号を第2出力信号S2として出力する。印刷制御部40は、第2出力信号S2に基づいてインクジェットヘッド3の各インクノズル列B、C、M、Yのインクノズルからインクを吐出するための駆動波形を生成する。また、印刷制御部40は、生成した駆動波形に基づいてインクジェットヘッド3に搭載されている圧電素子を駆動してインクジェットヘッド3からインクを吐出させる。
(PID制御による搬送速度制御)
印刷制御部40は、上述したように、エンコーダー31から出力される第1出力信号S1に基づいて紙送りローラー10による記録紙Pの搬送速度を算出すると共に、記録紙Pの搬送速度が予め設定した目標速度となるように、予め設定した単位時間(PID制御周期)毎に、紙送りモーター12の駆動をフィードバック制御(PID制御)する。印刷制御部40は、記録紙Pの各搬送位置(搬送量)に対する目標速度値を設定した速度プロファイルを用いてPID制御を行う。本例では、印刷時の搬送動作では、記録紙Pの搬送速度を一定に保つように設定しており、目標速度を一定値にした速度プロファイルを用いる。なお、各種の速度プロファイルを印刷制御部40に記憶させておき、指定された印刷条件等に基づき、記憶しているデータの中から適切な速度プロファイルを読み出して、これに基づいてPID制御を行うこともできる。
印刷制御部40は、記録紙Pの現在位置および現在速度を算出すると、速度プロファイルを参照して、現在位置に対応する目標速度の値を取得する。印刷制御部40は、目標速度と現在速度の差分である速度偏差ΔVを算出し、算出した速度偏差ΔVに基づき、比例制御値QP、積分制御値QI、微分制御値QDを算出する。比例制御値QPは速度偏差ΔVに比例ゲインKPを乗算した値である。また、積分制御値QIは速度偏差ΔVおよび積分ゲインKIに基づいて算出される積分値であり、微分制御値QDは速度偏差ΔVおよび微分ゲインKDに基づいて算出される微分値である。印刷制御部40は、比例制御値QP、積分制御値QI、微分制御値QDの加算値を算出し、算出した加算値に相当するデューティー比を決定する。そして、決定したデューティー比を紙送りモーター12を駆動するための制御信号S3としてモータードライバー41に出力する。モータードライバー41は、制御信号S3(デューティー比)に応じたパルス幅のPWM信号S4を生成し、これに基づいて紙送りモーター12を駆動する。
このように、PID制御では、紙送りモーター12を駆動するための制御信号S3(デューティー比)が比例制御値QP、積分制御値QI、微分制御値QDの加算値に基づいて決定される。加算値は、比例ゲインKP、積分ゲインKI、微分ゲインKDの3つのゲインパラメーターの設定値に応じた値となり、ゲインパラメーターの値を大きく設定すると、速度偏差ΔVが同じであっても紙送りモーター12の駆動量がより大きくなる。すなわち、ゲインパラメーターの値を大きく設定すると、少しの速度変動に対してより大きなフィードバックが行われ、目標速度からのずれに対するPID制御の応答性が大きくなる。
本例では、印刷対象の記録紙Pはラベル紙であり、各ラベルP2の縁が段差状になっている。この段差を紙送りローラー10が乗り越えるときの搬送速度の急激な変動に対して大きなフィードバックを行って搬送速度の乱れを抑制するため、記録紙Pの段差領域P3が紙送りローラー10を通過しているときは、目標速度からのずれに対して応答性の高いゲインパラメーターの値を用いている。その一方で、段差領域P3が紙送りローラー10を通過していないときは、外乱などによる微小な搬送速度の変動に過剰に応答してかえって搬送速度の安定性を損なうことのないように、応答性の低いゲインパラメーターの値を用いている。
図4は印刷動作中におけるゲインパラメーターの変動パターンを示す説明図であり、図4(a)は比例ゲインKP、図4(b)は積分ゲインKI、図4(c)は微分ゲインKDを示している。各図において、横軸は搬送区間(搬送量)、縦軸はゲインパラメーターの設定値である。図4(a)〜(c)において、記録紙Pの段差領域P3が紙送りローラー10による搬送位置Bを通過している搬送区間D1(第1の搬送区間)における各ゲインパラメーターの値はKP1、KI1、KD1であり、段差領域P3が紙送りローラー10を通過していない搬送区間D2(第2の搬送区間)における各ゲインパラメーターの値はKP2、KI2、KD2である。この図に示すように、搬送区間D1における各ゲインパラメーターの値KP1、KI1、KD1は、搬送区間D2におけるゲインパラメーターの値KP2、KI2、KD2よりも大きな値に設定されている。印刷制御部40は、搬送区間D1用と搬送区間D2用の2種類のゲインパラメーターの設定値を記憶しており、記録紙Pの搬送量(搬送位置)に基づいてゲインパラメーターを切り換えることにより、このような変動パターンでPID制御を行う。
図5は記録紙Pの搬送速度制御のフローチャートである。印刷制御部40は、印刷データと共に、印刷対象の記録紙Pについての情報を上位装置から受け取る。この情報は、記録紙Pにおけるラベルサイズおよびラベル配置の情報を含んでいる。印刷制御部40は、まず、ステップST1において、上位装置から受け取った情報に基づき、記録紙Pにおける段差領域P3の配置を確定する。なお、予め、各種の記録紙Pにおける段差領域P3の配置を確定し、そのデータを印刷制御部40に記憶させておいた場合は、上位装置から記録紙Pの種類情報を受け取るだけでよい。この場合には、記憶しているデータに基づき、段差領域P3の配置を確定できる。
次に、ステップST2では、印刷制御部40は、記録紙Pの頭出し処理を行う。すなわち、印刷対象のラベルP2上の印刷領域の先頭が印刷位置Aに位置決めされるまで記録紙Pを搬送する。続いて、ステップST3では、印刷制御部40は、PID制御によって紙送りモーター12を駆動し、インクジェットヘッド3によるインク吐出動作と並行して、紙送りローラー10の回転によって記録紙Pを搬送する紙送り動作を行う。
ステップST3では、印刷制御部40は、記録紙Pの搬送位置に応じてPID制御のゲインパラメーターを切り換えながら紙送りモーター12を駆動するために、ステップST31〜ST34の処理を行う。まず、ステップST31では、ゲインパラメーターの初期値を設定する。本例では、初期値として、段差領域P3が紙送りローラー10を通過していない搬送区間D2用の値KP2、KI2、KD2を採用する。次に、ステップST32に進み、紙送りモーター12を駆動開始する。ステップST32では、PID制御周期毎に記録紙Pの搬送位置(搬送量)を算出しながら、段差領域P3の前端が紙送りローラー10による搬送位置Bに到達するまで(言い換えれば、搬送区間D1が開始するまで)記録紙Pを搬送する。段差領域P3の前端が搬送位置Bに到達すると、ステップST33に進む。
ステップST33では、印刷制御部40は、PID制御のゲインパラメーターの値を、段差領域P3が紙送りローラー10による搬送位置Bを通過している搬送区間D1用の値KP1、KI1、KD1に変更する。続いて、ステップST34に進み、変更後のゲインパラメーターの値で紙送りモーター12を駆動する。そして、段差領域P3の後端が紙送りローラー10による搬送位置Bに到達するまで(言い換えれば、搬送区間D1が終了するまで)記録紙Pを搬送する。段差領域P3の後端が搬送位置Bに到達すると、ステップST31に戻り、ゲインパラメーターを初期値に戻す。そして、印刷が終了するまで、ステップST31〜ST34の処理を継続する。
以上のように、本例では、段差領域P3が紙送りローラー10を通過する区間に限ってPID制御のゲインパラメーターKD、KI、KPの値を変更し、この区間に限って記録紙Pの搬送速度変化に対する応答性を高めている。このようにすると、紙送りローラー10が段差を乗り越えるとき、あるいは段差から落下するときの急激な搬送負荷の変動に起因して急激に搬送速度が乱れたとき、これを速やかに打ち消すような大きなフィードバック制御を行うことができる。従って、段差領域P3が紙送りローラー10を通過するときの搬送速度の乱れを抑制でき、安定した速度で搬送できる。その一方で、段差領域P3が紙送りローラー10を通過していない間はゲインパラメーターKD、KI、KPの値を応答性の低い小さな値にしておく。これにより、外乱等に起因する速度変化に対して過剰なフィードバックが行われることがない。従って、記録紙Pの搬送速度を安定させることができ、高品質な印刷を安定して行うことができる。
(改変例)
(1)上記実施形態では、段差領域P3が紙送りローラー10を通過する区間に限ってPID制御のゲインパラメーターKD、KI、KPを大きな値に設定しているが、他のローラーを段差領域P3が通過するときも、同様に搬送速度の乱れが発生するおそれがある。例えば、プラテン4の下流側に、搬送される記録紙Pに追従して回転する従動ローラーおよび押圧ローラーを配置した場合には、段差領域P3が紙送りローラー10と従動ローラーの少なくとも一方を通過している搬送区間(第3の搬送区間)において、搬送速度の乱れが発生するおそれがある。そこで、この場合には、段差領域P3が紙送りローラー10と従動ローラーの少なくとも一方を通過している搬送区間(第3の搬送区間)では、ゲインパラメーターKD、KI、KPの値を応答性の高い大きな値にする。その一方で、段差領域P3が紙送りローラー10および従動ローラーのいずれの搬送位置も通過していない搬送区間(第4の搬送区間)では、ゲインパラメーターKD、KI、KPの値を第3の搬送区間のときよりも小さい値に設定する。これにより、複数の搬送ローラーを備えるプリンターにおいて、搬送速度の更なる安定化を図ることができる。
(2)図6は改変例の段差領域を示す説明図である。上記実施形態では、ラベルP2の端部ごとに段差領域P3を設定しているが、ラベル間ギャップGが狭い場合には、図6に示すように、ラベル間ギャップGを挟む2箇所の端部にまたがるような段差領域P4を設定することもできる。このようにすると、ラベル間ギャップGの部分で必要以上に細かくゲインパラメーターKD、KI、KPの値を切り換えずに紙送りモーター12を駆動できるため、速度変化に対して良好に追従できずにかえって搬送速度の安定性を損なうなどの不都合を防止できる。よって、より単純な制御で搬送速度を安定させることができる。
1…プリンター、2…ロール紙装填部、3…インクジェットヘッド(印刷ヘッド)、4…プラテン、5…搬送経路、6…用紙ガイド、7…繰り出しローラー、8…負荷ローラー、9…紙送りローラー対、10…紙送りローラー、11…押圧ローラー、12…紙送りモーター、13…減速機構、14…キャリッジ、15…インクカートリッジ装着部、20…中間軸、21…第1プーリー、22…第2プーリー、23…第3プーリー、24…第4プーリー、25…第1無端ベルト、26…第2無端ベルト、31…エンコーダー、32…エンコーダースケール、33…センサー、34…エンコーダー、35…エンコーダースケール、36…センサー、40…印刷制御部(制御手段)、41…モータードライバー、A…印刷位置、B…搬送位置、D1…搬送区間(第1の搬送区間)、D2…搬送区間(第2の搬送区間)、G…ラベル間ギャップ、P…記録紙(ラベル紙)、P1…台紙、P2…ラベル、P2a…端部、P2b…端部、P3…段差領域、P4…段差領域、S1…第1出力信号、S2…第2出力信号、S3…制御信号、S4…PWM信号

Claims (5)

  1. 長尺の台紙に所定間隔でラベル貼り付けられたラベル紙を紙送りローラーによる搬送位置を経由して搬送するプリンターにおけるラベル紙の搬送制御方法であって、
    前記ラベル紙への印刷を行うときには、前記紙送りローラーを駆動する紙送りモーターをPID制御によって駆動制御することにより、前記ラベル紙の搬送速度を制御し、
    前記PID制御に用いられるゲインパラメーターの値は、前記ラベルの搬送方向の端部を含む前記ラベル紙の段差領域が前記紙送りローラーを通過する第1の搬送区間では、当該段差領域が前記紙送りローラーを通過していない第2の搬送区間よりも大きい値に設定されることを特徴とするラベル紙の搬送制御方法。
  2. 請求項1において、
    前記ラベル紙は、前記紙送りローラーと、搬送される前記ラベル紙に従動する従動ローラーによる各搬送位置を経由して搬送され、
    前記ゲインパラメーターの値は、前記段差領域が前記紙送りローラーおよび前記従動ローラーの少なくともいずれかを通過している第3の搬送区間では、前記段差領域が前記紙送りローラーおよび前記従動ローラーのいずれの搬送位置も通過していない第4の搬送区間よりも大きい値に設定されることを特徴とするラベル紙の搬送制御方法。
  3. 請求項1または2において、
    前記段差領域は、前記ラベル紙の搬送方向に隣接している2枚のラベル間に設けられたラベル間ギャップと、当該ラベル間ギャップを挟む2箇所のラベル端部を含む連続した領域であることを特徴とするラベル紙の搬送制御方法。
  4. 請求項1ないし3のいずれかの項において、
    上位装置から、印刷対象の前記ラベル紙に関する情報の入力を受け付け、
    前記PID制御の実行時には、前記入力された情報に基づき、前記ラベル紙における前記段差領域の配置を確定して、当該確定した段差領域の搬送位置を監視することを特徴とするラベル紙の搬送制御方法。
  5. 長尺の台紙に所定間隔でラベルを貼り付けたラベル紙に印刷を行うための印刷ヘッドと、
    当該印刷ヘッドによる印刷位置を経由して前記ラベル紙を搬送するための紙送りローラーと、
    当該紙送りローラーを駆動する紙送りモーターと、
    当該紙送りモーターを制御する制御手段とを有するプリンターであって、
    前記制御手段は、
    前記ラベル紙への印刷を行うときには、請求項1ないし4のいずれかの項に記載のラベル紙の搬送制御方法により、前記紙送りモーターをPID制御によって駆動制御することを特徴とするプリンター。
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