JP5847885B2 - 水素トレーラ - Google Patents
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Description
高圧水素容器に通じる集合配管に緊急遮断弁が設けられていることは、可燃性の水素を水素トレーラにて安全に移送し供給するうえで重要である。しかし、緊急遮断弁を閉じたとしても、各容器から緊急遮断弁までの部分において十分な危険回避をなすためには、個々の高圧水素容器の元弁を閉じる必要がある。
発明の水素トレーラにおいては、上記のとおり、各高圧水素容器に取り付けた元弁が緊急遮断弁の閉鎖に連動して自動的に閉じるものである。そのため、緊急遮断弁を閉鎖するような緊急の事態には、複数ある元弁のそれぞれが自動的に一斉に閉鎖される。すなわち発明の水素トレーラでは、元弁操作に関する作業負担がきわめて軽減されるとともに、緊急時の安全性が迅速かつ確実に保たれるといえる。
緊急遮断弁としては、電動式のものを使用してもよいが、上記のように窒素ガスの力で開閉駆動するものを採用する方が防爆面での安全性に優れている。上記は、その点を考慮して窒素ガスにて開閉する緊急遮断弁を使用するとともに、各高圧水素容器に取り付ける元弁についても、窒素ガスの力で開閉するものを使用することを提案している。そのうえで、緊急遮断弁と各元弁とのそれぞれの駆動用窒素ガスとして、共通の窒素ボンベから供給されるものを使用する。そのようにすると、水素トレーラにおいて防爆上の安全性が高くなるうえ、窒素ボンベの重量や搭載スペースを削減できるという利点がある。
水素を扱うことから、水素トレーラには火災防止に関する緊急手段が必要であり、したがって緊急遮断弁には、上記のように可溶栓式安全弁と連携をとるものが適している。当該安全弁が所定の温度にまで上昇すると、栓の部分が溶けることによって自動的に窒素ガスのガス抜きが行われる。そのような安全弁を上記窒素ボンベからの窒素ガスの供給経路に設け、ガス抜きされたことによる窒素ガスの圧力変化(圧力の低下)によって上記緊急遮断弁を閉鎖し、もって火災に対する安全性確保するのである。
そうして緊急遮断弁を閉鎖する際、窒素ガスの上記圧力変化を各元弁にも伝えると、緊急遮断弁が閉じるとき各元弁も閉じることになる。そのようにすると、電気信号等を使うことなく、可溶栓式安全弁の状態変化を、配管を経由する窒素ガスの圧力伝播によって緊急遮断弁と各元弁とに伝え、安全かつ確実にすべての弁を閉じることができる。
窒素ガスの上記供給経路に押しボタン式の開閉操作バルブが設けられていると、それを操作することによって、窒素ガスの(下流側への)圧力を変化させることができる。前記のように緊急遮断弁と各元弁とを窒素ガスによって開閉するようにした場合、上のように窒素ガスの圧力を変化させたとき、緊急遮断弁が閉じるとともに上記の各元弁が自動的に閉じる。したがって、上記の開閉操作バルブが水素トレーラに設けられていると、緊急遮断弁と各元弁とが連動して閉じるという安全処置が、温度上昇等の状況変化に対応するのみではなく、監視員等の判断によっても適宜に実施できることになる。
格別の緊急性はないので緊急遮断弁は閉じる必要がないものの高圧水素容器の各元弁を閉じたい、という場合、上記のように分岐系統があってそれぞれに操作バルブが設けられていると有意義である。すなわち、上記した2〜5本の分岐系統における上記の各操作バルブを操作することにより、各系統に属するいくつかの元弁を閉じることができる。たとえば、メンテナンス等の対象とする特定の系統に属する複数の元弁を、一つの操作バルブによって閉じる(またその後に開く)ことが可能である。仮にすべての元弁を開閉するとしても、操作すべき操作バルブの数は2〜5個であり、1台の水素トレーラに搭載される高圧水素容器の一般的な数(すなわち元弁の数)に比べると大幅に少ないため、元弁ごとに開閉操作する場合と比較して操作負担は重くない。
また、このように構成した場合にも、上記した共通の窒素ボンベから供給される窒素ガスの力により、各元弁を安全かつ確実に開閉することができる。
このようにすると、搭載したいずれかの高圧水素容器またはその付近が温度上昇したとき、その近傍にある上記安全弁が作動し、当該高圧水素容器について元弁を閉じることができる。そのため、緊急遮断弁やそのための温度検知手段(前記した可溶栓式安全弁等)の設置部分の温度とは別に、高圧水素容器等のいずれかの設置部分の温度が局部的に上昇した場合にも、その温度が所定値に達したことに対応して、該当する容器の元弁を閉じ、水素トレーラの安全性を保つことができる。
一般に電磁弁は、防爆上の安全性に関し、窒素ガスで駆動される弁には及ばないとされるが、とくに防爆性能を高めた電磁弁であれば問題なく使用され得る。そして電磁弁は、電線(またはワイヤレス)を介した信号伝達によって遠隔操作が容易である点で窒素ガス駆動の弁よりも使いやすい。したがって、使用に適した防爆型の電磁弁を、上記した押しボタン式の開閉操作バルブまたは手動開閉可能な操作バルブに置き換えて水素トレーラで使用すると、たとえば水素トレーラとは離れた遠隔部分(水素ステーション等)からの操作によっても、緊急遮断弁とともに各元弁を一斉に閉じたり、各分岐系統ごとに元弁を閉じたりすることが可能になる。その場合、元弁の操作がきわめて簡単であるうえ、迅速かつ安全に行えることにもなる。
各高圧水素容器の元弁が、上述のように窒素ガスで開閉駆動されるものではなく、電磁石の力で開閉駆動される電磁弁(好ましくは防爆電磁弁)であると、やはり遠隔操作が容易であって、たとえば水素ステーションからの操作によってもそれぞれの開閉を容易に行うことができる。また、元弁の開閉を、緊急遮断弁の開閉と連動させたり、いくつかの分岐系統ごとに行ったり、各高圧水素容器の温度上昇に応じて行ったりすることを、ガスの圧力ではなく電気的信号を介して実施することが可能である。
緊急遮断弁が開の状態であっても、メンテナンス等の対象とする特定の系統に属する複数の元弁を、一つの操作バルブによって閉鎖できるようにすることも可能である。また、同じく緊急遮断弁の開閉状況とは別に、高圧水素容器のいずれかの設置部分の温度が局部的に上昇した場合に、該当する容器の元弁を閉じるようにすることもできる。
1) 上記のとおり架台10が3組あり、各架台10の上に11〜12本(合計では35本)の高圧水素容器Aを取り付けている。
2) 3組の架台10のうち後方の2組について、高圧水素容器Aの元弁Aa側同士が操作用スペース55をはさんで向かい合うように配置している。両組の容器Aについてのバルブ操作や保守点検を、上記1箇所の操作用スペース55において行えるようにしたものである。そして最前部の架台10には、元弁Aaの側を後方に向けて高圧水素容器Aを固定し、そのすぐ後ろの部分に操作スペース56を設けている。
高圧水素容器Aのそれぞれの元弁Aaは、図1・図5の水素トレーラ1・6のいずれにおいても、操作スペース55等での手動操作によって個々に開閉することができるが、緊急時等に必要があるときに、水素配管60の緊急遮断弁61(後述)と連動して一斉に閉じること等ができるようにしてある。
a) 水素配管60は、各高圧水素容器A内の水素が、容器Aごとに設けられている元弁Aaを介して集合配管に通じ、その先で分岐して2箇所の水素供給口62へ通じるよう構成している。また、水素供給口62と並列に2箇所の水素充填口63を設け、ここからは各高圧水素容器A内へ水素を充填できるようにしている。水素配管60における集合配管部分には緊急遮断弁61を設け、緊急の際、上記した水素の流れを遮断できるようにしている。
b) 窒素配管70は、第一には上記の緊急遮断弁61を開閉するために設けたもので、窒素ボンベ71による窒素の圧力を、押しボタン式開閉操作バルブ72および可溶栓式安全弁73の取付け部分を介して緊急遮断弁61の操作部分に伝達するよう構成している。
c) 窒素配管70は、第二には、各高圧水素容器Aの元弁Aaを開閉するために設けたもので、窒素ボンベ71からの上記配管の一部であるポイント70Xを、手動開閉可能な3台の操作バルブ74を介して各元弁Aaの操作部分に接続している。
d) 放出配管80は、緊急遮断弁61または上記の各元弁Aaが閉じたとき、高圧水素容器Aの水素または水素充填口63から送られる水素を安全な箇所から大気中に放出するためのものである。
窒素配管70のうち窒素ボンベ71の下流側に押しボタン式の開閉操作バルブ72を設け、それより下流側に可溶栓式安全弁73の取付け部分を設け、その先を緊急遮断弁61の操作部分に接続している。またこの窒素配管70については、開閉操作バルブ72の下流側にある図示のポイント70Xを経由し、図示右方の分岐配管70a・70b・70cを介して各元弁Aaの操作部分に接続してもいる。
緊急事態等において操作バルブ72が操作された場合、または、温度上昇によって可溶栓式安全弁73の栓が溶けた場合には、緊急遮断弁61の操作部分へ至る配管70内の窒素圧力が低下し、それによって緊急遮断弁61が自動閉鎖する。その場合、分岐配管70a・70b・70c内の窒素圧力も低下することから、すべての高圧水素容器Aの元弁Aaも自動閉鎖することになる。
前記の操作バルブ72が通常の開状態であるとき(したがって水素配管60の緊急遮断弁61が開いているとき)も、操作バルブ74のいずれかを手動操作することにより、いずれかの架台10上にある容器Aの全数について元弁Aaを閉じることができる。したがって、特定の架台10上の高圧水素容器Aについて、メンテナンス等のためまたは安全上の対応のために各組の元弁Aaを閉じることが、操作バルブ74のいずれかを手動操作することのみによって簡単に行えることとなる。
この図には、高圧水素容器Aに元弁Aaが取り付けられ、その元弁Aaが接続配管52を介して水素配管60に接続されていることが明示されている。元弁Aaとしては、ガス圧に応じて開閉駆動を行う操作部分AaNを有するものを使用しており、そこに、窒素配管70一部である上記分岐配管(の一つ)70bを接続している。操作部分AaNに作用する窒素の圧力が低いときは、元弁Aaが閉じて水素の流れを遮断する。
分岐配管70bにある操作バルブ74(図7)を手動操作して閉じると、それより下流側で窒素の圧力が低下するため、その分岐配管70bに接続されている架台10上の容器Aについて元弁Aaが閉鎖される。操作バルブ74が操作されない場合でも、前記のように緊急遮断弁61(図7等)が閉じるときには、分岐配管70bを含むすべての分岐配管において窒素の圧力が下がるため、すべての容器Aについて元弁Aaが閉じる。
このようにしたことにより、各元弁Aaは、それが取り付けられた容器Aの近傍の温度が上昇したとき個別に閉じることが可能になる。その容器Aの温度が上昇したとき、可溶栓式安全弁Abの栓が溶けて水素が放出配管80により大気中に放出される一方、元弁Aaに作用する水素の圧力が下がるため、元弁Aaが閉鎖されるのである。
なお、容器Aのうち元弁Aa側とは反対側の端部には、前述のように安全弁Acとともに引回し配管を取り付け、これらも放出配管80へ接続している。
a) 元弁Aaからの水素用の接続配管52や、上記の放出配管80には、図8や図4に示すとおり螺旋状の部分を含めている。高圧水素容器Aが水素の充填状態に応じて膨張・収縮すること等に起因してその元弁Aa等の位置が変わり得ることを考慮し、配管中の特定の部分に力学的ストレスが集中しないようにするためである。
b) 接続配管52は、固有振動数がトレーラ1の実測振動数(15〜20Hz)を超える25〜50Hz程度になるように、管の太さや長さ、取り付け位置等を定めている。
c) 窒素配管70における窒素ボンベ71(図7等)は、配管系50の他の部分にも接続可能なようにし、配管内の窒素パージを行えるようにしている。バルブや計器類の交換時等に、配管内に空気が混入しないようにするためである。
d) 配管系50内には、配管のいずれかの部分から水素が大量に流出することを防止するために、過流防止弁(図6の符号60f)を設けている。また、放出中の水素が燃焼し始めたときも火炎の逆流を防止するために、逆火防止器(図6の符号80g)を、配管系50内に組み込んでいる。
10 架台
11 フレーム
12 支持部材
20 固定装置
30 容器カバー
31 板
40 保護板
50 配管系
55・56 操作用スペース
60 水素配管
61 緊急遮断弁
70 窒素配管
70a・70b・70c 分岐配管
71 窒素ボンベ
72 押しボタン式の開閉操作バルブ
73 可溶栓式安全弁
74 手動開閉可能な操作バルブ
80 放出配管
A 高圧水素容器
Aa 元弁
AaN (元弁の)操作部分
Ab 可溶栓式安全弁
Claims (7)
- 高圧水素容器を複数本搭載した状態で移送および留置される水素トレーラであって、
上記高圧水素容器に通じる集合配管に緊急遮断弁が設けられているとともに、上記高圧水素容器のそれぞれに取り付けられた元弁が、上記緊急遮断弁の閉鎖に連動して自動的に閉じるものであること、
および、上記緊急遮断弁と上記の各元弁とが、トレーラ上に搭載された共通の窒素ボンベから供給される窒素ガスによって開閉するものであり、緊急遮断弁を閉鎖させる際の当該窒素ガスの圧力変化によって上記の各元弁が閉じること
を特徴とする水素トレーラ。 - 上記窒素ボンベからの窒素ガスの供給経路に、高温時に自動的にガス抜きするための可溶栓式安全弁が設けられていて、そのガス抜きによる窒素ガスの圧力変化によって上記緊急遮断弁が閉鎖され、同時に上記の各元弁が閉じることを特徴とする請求項1に記載の水素トレーラ。
- 上記窒素ボンベからの窒素ガスの供給経路に、押しボタン式の開閉操作バルブが設けられていて、その操作による窒素ガスの圧力変化によって上記緊急遮断弁が閉鎖され、同時に上記の各元弁が閉じることを特徴とする請求項1または2に記載の水素トレーラ。
- 上記の各元弁に至る上記窒素ガスの経路に2〜5本の分岐した系統があり、各系統に、手動開閉可能な操作バルブが設けられていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の水素トレーラ。
- 上記高圧水素容器と通じる水素ガスの経路であって各高圧水素容器の近傍の当該各容器と直結された部分に、高温時に自動的にガス抜きするための可溶栓式安全弁がそれぞれ設けられていて、そのガス抜きによる水素ガスの圧力変化によって上記の各元弁が閉じることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の水素トレーラ。
- 上記窒素ボンベからの窒素ガスの供給経路に設けられる上記押しボタン式の開閉操作バルブ、または、上記窒素ボンベから上記の各元弁に至る窒素ガスの各系統に設けられる上記手動開閉可能な操作バルブが、防爆電磁弁であることを特徴とする請求項3または4に記載の水素トレーラ。
- 上記高圧水素容器のそれぞれに取り付けられた上記元弁が電磁弁であることを特徴とする請求項1に記載の水素トレーラ。
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