JP5845236B2 - コラーゲンの分析方法、および安定同位体標識コラーゲンの製造方法 - Google Patents

コラーゲンの分析方法、および安定同位体標識コラーゲンの製造方法 Download PDF

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本発明は、安定同位体標識コラーゲンを用いたコラーゲンの分析方法、前記分析方法で使用できる安定同位体標識コラーゲン等、および前記安定同位体標識コラーゲンの製造方法に関する。
コラーゲンは生体内のタンパク質の約30%を占める重要な構成物質である。生体内には30種類近いコラーゲンが各組織に特有の組成で分布し、年齢や生理的条件、疾患などによりその組成を変化させることが知られている(非特許文献1)。また、コラーゲンに特有の翻訳後修飾アミノ酸として、3−hydroxyproline(3Hyp)、4−hydorxyproline(4Hyp)、hydroxylysine(Hyl)、galactosyl hydroxylysine(GHL)、glucosyl galactosyl hydroxylysine(GGHL)が知られ、同じコラーゲン型でも組織や疾患、その他の条件でその量が増減することも報告されている(非特許文献1)。組織中のコラーゲン型組成の変動や、コラーゲン翻訳後修飾アミノ酸量の変化は、癌、線維症、骨粗しょう症、骨形成不全症など様々な疾患で報告されており、各種コラーゲン値の測定は疾患の診断の予知に有効と考えられ、コラーゲン測定の意義が高まっている。このため、HILIC系カラムを用いて非常に構造の類似した3Hypと4Hypを分離し、それを液体クロマトグラフ質量分析(以下、LC/MS分析と称する)で分析する方法や(非特許文献2)、I〜V型コラーゲンをトリプシン消化した後、それぞれに特有のペプチドを用いてLC/MS分析により組織由来コラーゲンの型別の検出・定量を行う方法(非特許文献3)が開発されている。その他、このようなコラーゲンの測定方法として、コラーゲンに対するモノクローナル抗体を検体中のコラーゲンと結合させ、該検体中のコラーゲンを測定するコラーゲンの測定方法なども知られている(特許文献1)。
一方、安定同位体標識ペプチドを用いたタンパク質の定量方法も知られている(特許文献2)。定量対象タンパク質と、複数の評価ペプチドを含む人工標準タンパク質の既知量との混合液を消化酵素で分解するa工程と、a工程で得られた試料に、既知量の安定同位体標識評価用ペプチドと、前記定量対象タンパク質の消化物であるペプチドと同一配列の安定同位体標識ペプチドとを添加して質量分析を行うb工程と、添加した人工標準タンパク質の量と各評価ペプチドの定量値から、前処理効率の評価値を計算するc工程とを含む、タンパク質の定量方法である。前記評価ペプチドは、天然に存在するタンパク質およびその変異体と一致せず、質量分析によって検出が可能であるアミノ酸配列からなり、かつタンパク質消化酵素によって認識されるアミノ酸を有する。この評価ペプチドを使用することで、任意の測定試料の前処理の効率を評価することができ、タンパク質定量値の信頼性を確保しうるという。
また、標的タンパク質と、特定量の前記標識タンパク質に相当する安定同位体標識タンパク質との混合物にペプチド断片化処理を施し、得られるペプチド断片群に対して質量分析を行い、標的タンパク質由来ペプチド断片/安定同位体標識タンパク質由来ペプチド断片の比を定量し、全ての各標的タンパク質由来ペプチド断片の定量値の平均を求めて平均定量値とし、前記平均定量値と各標的タンパク質由来ペプチド断片との差を質量変化として検出する方法がある(特許文献3)。当該方法によれば、標的タンパク質の翻訳後修飾、遺伝子変異による標的タンパク質の配列異常、スプライシングバリアント、プロテアーゼによるタンパク質の切断や分解などによる質量変化を分析しうるという。
特開平6−242109号公報 特開2010−197110号公報 国際公開第2012/111249号
The collagens:biochemistry and pathophysiology,1992 Amino acid analysis by hydrophilic interaction chromatography coupled on−line to electrospray ionization mass spectrometry:Amino Acids,30(3),pp291−297,2006 Identification of collagen types in tissues using HPLC−MS/MS:J Sep Sci,31(20),pp3483−3488,2008 A novel functional role of collagen glycosylation interaction with the endocytic collagen receptor uparap/ENDO180:J Biol Chem,286(37),pp32736−32748、2011 Increased lysine hydroxylation in rat bone and tendon collagen and localization of the additional residues. M.Stoltz, H.Furthmayr, R.Timpl :Biochimica et.:Biophysica Acta,310,pp461−468,1973 Characterization and Quantitative Determination of the Hydrocylysine−linked Carbohydrate Units of Several Collagene. Robert G. Spiro:The Journal of Biological Chemistry Vol.244,No.3,pp602−612,1969
しかしながら、前記特許文献1に示す抗体を使う方法では、コラーゲンの型特異的な分析を行うことが容易でない。コラーゲンはグリシンをGly、アミノ酸をX、Yとした場合にGly−X−Yで示される繰り返し配列を主要部分とするため、コラーゲン型間の交差反応が生じやすいからである。また、マイナー成分を含む型別のコラーゲン定量や、コラーゲン翻訳後修飾の分析としても、3Hypと4Hypを区別した解析、微量な3Hyp、GHL、GGHLの分析などは困難である。
また、非特許文献2、非特許文献3に記載される質量分析による方法では、夾雑物の存在や、HILIC系カラムでの溶出時間の変動などにより、サンプル間でのイオン化効率の違いや、それに由来する定量値の測定誤差が生じる場合がある。特に、わずかに混在する他種型コラーゲンの定量や3Hyp、GHL、GGHL等の微量成分の定量ではこれらの誤差が測定値に大きく影響を及ぼし、微量コラーゲン型のタンパク質レベルでの定量やコラーゲン翻訳後修飾を網羅した正確な定量分析は困難である。
更に、前記特許文献2に記載される方法は、安定同位体標識評価用ペプチドの既知量を基準に、人工標準タンパク質の消化物であるペプチドの質量との比率を算出してタンパク質消化酵素による処理効率を加味するものである。消化効率を評価するため、人工標準タンパク質の消化物であるペプチドと同一配列であって安定同位体標識された4種の評価ペプチドを調製する必要がある。また、特許文献2では、13Cで6個標識されたロイシンなどを使用してF−moc法で前記安定同位体標識ペプチドを合成しているが、複数種類を大量に生産することは容易でない。しかも、特許文献2記載の方法は、いずれの評価ペプチドで評価した場合でもその評価率が平均0.8以上、すなわち消化率が平均80%以上の場合に前処理が十分に行われたと判断するに過ぎず、正確な定量を担保するものではない。従って、簡便な安定同位体標識タンパク質の調製方法、および正確な標的タンパク質の定量方法の開発が望まれる。
また、特許文献2および特許文献3記載の方法では、目的タンパク質のcDNAとタグ配列を挿入したベクターを大腸菌にトランスフォーメーションし人工標準タンパク質を合成しているが、その調製は容易でない。例えば特許文献3では内部標準物質として安定同位体標識タグタンパク質融合タンパク質を使用するが、実施例では、GSTとHisタグとを付加したネフリン(Nephrin)の全長アミノ酸配列を挿入したpET−vectorを大腸菌にトランスフォーメーションし、硫酸マグネシウム七水和物を添加したC.H.L培地で37度にてO.D.600nmが0.7になるまで培養し、安定同位体15Nで標識したアミノ酸を0.5g/Lになるように添加してネフリンの発現誘導を行った後、この発現誘導した大腸菌を超音波破砕し、コバルトカラムおよびグルタチオンカラムを用いて安定同位体標識ネフリンを精製している。このように、人工標準タンパク質の製造方法は煩雑であり、より簡便に標準タンパク質を調製しうる製造方法の開発が望まれる。
特許文献2および特許文献3記載の方法は、タンパク質の分解を酵素消化に限定しており、また特許文献3ではLC/MS分析にて翻訳後修飾アミノ酸を含むペプチドを検出して翻訳後修飾アミノ酸を測定している。他方、翻訳後修飾アミノ酸の分析法としては、従来よりアミノ酸加水分解による各翻訳後修飾アミノ酸単体としての分析が行われている。安定同位体標識標準タンパク質を用いることにより、酵素分解時と同様に、加水分解効率や分析時のイオン化効率の影響等を吸収した高精度な分析が可能となるが、特許文献3記載の方法では、安定同位体標識標準タンパク質の製造方法が煩雑であるのと同時に、Hisタグ等を用いて目的タンパク質の精製を行っても、他のタンパク質を全く含まず目的タンパク質を高純度に得ることは困難である。混入タンパク質がある場合、酵素処理によれば目的タンパク質由来のペプチドを用いた特異的な検出、定量が可能であるが、アミノ酸加水分解を行うと各翻訳後修飾がどのタンパク質由来であるかわからなくなるため、正確な定量分析が達成されない。よって、より高純度に安定同位体標識標準タンパク質を調製しうる製造方法の開発が望まれる。
また、特許文献2および特許文献3記載の方法は、測定対象タンパク質と内部標準物質との酵素による分解効率を問題とするため、タンパク質の分解を酵素消化に限定している。ペプチド以外を検出できないため、特許文献3ではLC/MS分析にて翻訳後修飾アミノ酸を含むペプチドを検出して翻訳後修飾アミノ酸を測定している。このため、測定対象アミノ酸における翻訳後修飾を受けるアミノ酸の位置が不明である場合や位置が変動する場合は、翻訳後修飾アミノ酸を定量することができない。従って、アミノ酸単位で分析しうる安定同位体標識標準タンパク質を用いた高精度な分析方法の開発が望まれる。
上記現状に鑑み、本発明は、安定同位体標識タンパク質として安定同位体標識コラーゲンを用いた、定量性および感度に優れるコラーゲンの分析方法を提供することを目的とする。
また、本発明は、安定同位体標識アミノ酸による置換率が高い安定同位体標識コラーゲンおよびその製造方法を提供することを目的とする。
本発明者らは上記課題を解決すべくLC/MS分析を用いたコラーゲンの分析方法について詳細に検討した結果、特定のアミノ酸が対応する安定同位体標識アミノ酸で90モル%以上置換された高純度安定同位体標識コラーゲンを内部標準物質として用いることで、酵素分解によらず酸やアルカリによる加水分解物でも正確にアミノ酸を定量しうること、安定同位体標識アミノ酸として安定同位体標識Proや安定同位体標識Lysを使用すると、これらアミノ酸およびこれらの翻訳後修飾アミノ酸の配合比を正確に定量しうること、更に安定同位体標識Argを指標として換算することでコラーゲン当たりのアミノ酸の定量が可能となることを見出し、本発明を完成させた。また、培養細胞を使用することで、安定同位体標識コラーゲンを簡単に製造することができる。
すなわち本発明は、コラーゲンを構成するPro、Lys、Arg、Leu、Met、Phe、Thr、Val、IleおよびHisからなる群から選択される少なくとも1以上のアミノ酸が対応する安定同位体標識アミノ酸(以下、標識アミノ酸とも称する。)で90モル%以上置換された安定同位体標識コラーゲン前駆体(以下、標識コラーゲン前駆体とも称する。)を翻訳後修飾してなる安定同位体標識コラーゲン(以下、標識コラーゲンとも称する。)を使用するコラーゲンの分析方法であって、
前記標識コラーゲンと、測定対象コラーゲンまたはコラーゲン由来アミノ酸もしくはペプチド成分との混合物を測定試料とし、
前記コラーゲン由来ペプチド成分、または前記測定対象コラーゲンを分解して得たペプチドを測定対象ペプチドとし、前記測定対象ペプチドの質量と、前記標識コラーゲンを分解して得た、前記測定対象ペプチドに対応する前記標識コラーゲン由来ペプチドの質量との質量比を測定するペプチド質量比測定工程、および/または
前記コラーゲン由来アミノ酸、または前記測定対象コラーゲンを分解して得たアミノ酸を測定対象アミノ酸とし、前記測定対象アミノ酸の質量と、前記標識コラーゲンを分解して得た、前記測定対象アミノ酸に対応する前記標識コラーゲン由来のアミノ酸の質量との質量比を測定するアミノ酸質量比測定工程を含み、かつ
下記(i)〜(iv)
(i)前記アミノ酸の質量比と前記測定試料に添加した安定同位体標識コラーゲン量とから測定試料に含まれる測定対象コラーゲン量を定量する、
(ii)前記アミノ酸の質量比と前記測定試料に添加した前記安定同位体標識コラーゲンに由来するアミノ酸量とから測定対象コラーゲン構成アミノ酸量を定量する、
(iii)前記ペプチドの質量比と前記測定試料に添加した安定同位体標識コラーゲン量とから、測定対象コラーゲンの型別コラーゲン量を定量する、
(iv)予め作成した前記アミノ酸の質量比または前記ペプチドの質量比の検量線を用いて測定対象コラーゲン由来成分を定量する、
のいずれかの定量工程を含むことを特徴とする、コラーゲンの分析方法を提供するものである。
更に本発明は、コラーゲン産生細胞に、少なくとも安定同位体標識Proを添加して培養する標識コラーゲンの製造方法であって、Glnを添加せずに前記コラーゲン産生細胞を培養し、
コラーゲンを構成するProの安定同位体標識Proへの置換率が90モル%以上である標識コラーゲンを取得することを特徴とする、標識コラーゲンの製造方法を提供するものである。
本発明によれば、標識コラーゲンを用いて、標識コラーゲンと測定対象コラーゲンとを分解し、測定試料に含まれる測定対象コラーゲン由来の翻訳後修飾アミノ酸量、ペプチド量、全測定対象コラーゲン量の定量、および測定対象コラーゲンの型別定量をすることができる。
本発明では、コラーゲンを分解して得たアミノ酸やペプチドをLC/MSで分析できるため、ペプチドの質量比とアミノ酸の質量比とを並行して取り扱うことができる。
また、本発明によれば、標識アミノ酸によって高置換された標識コラーゲン、前記標識コラーゲン由来のアミノ酸組成物やペプチド組成物、および前記標識コラーゲンの製造方法が提供される。
実施例1〜6の結果を示す図である。細胞に添加する安定同位体標識Proの添加量、およびGln添加・非添加の条件を変化させた場合の、細胞から産生される標識コラーゲンを構成する安定同位体標識Proの置換率の変化を示す。 実施例1〜6の結果を示す図である。細胞に添加する安定同位体標識Proの添加量、およびGln添加・非添加の条件を変化させた場合の、細胞から産生される標識コラーゲンを構成する安定同位体標識4Hypの置換率の変化を示す。 実施例1で得た標識コラーゲンの電気泳動の結果を示す図である。コラーゲンI型とIII型が混在している。 実施例12の結果を示す図である。実施例8で調製した標識コラーゲンを使用して、ラットの皮膚、骨、尻尾腱から分取したコラーゲンの型別コラーゲン量を定量したところ、皮膚由来のコラーゲンは22.3%のコラーゲンIII型が含まれていたが、骨および尻尾腱由来のコラーゲンは、約99%がコラーゲンI型であった。 実施例14の結果を示す図である。実施例13で調製した標識コラーゲンを使用してラットの皮膚、骨、尻尾腱から抽出したコラーゲンの翻訳後修飾を分析し、各組織間の相対比で評価したところ、既知報告と同様に尻尾腱での3Hypの構成量が高い等の結果が得られた。 実施例15の結果を示す図である。折れ線グラフは、加水分解の経過時間による4Hyp量の推移を示す。一方、棒グラフは、測定対象コラーゲンと添加した実施例13で調製した標識コラーゲンとを同時に加水分解した際の、測定対象コラーゲン由来の4Hypと、標識コラーゲン由来の4Hypとの比の変化を示す。 実施例16の結果を示す図である。折れ線グラフは、4Hyp標品の検出値をPBS無添加時に対する百分率で示したものであり、棒グラフは、標識コラーゲン由来の標識4Hypに対する4Hyp標品の値を、PBS無添加時に対する百分率で示したものである。 実施例17の結果を示す図であり、非標識4Hyp/標識4Hyp質量比を測定して血中遊離4Hyp濃度、4Hyp含有ペプチドなどの濃度を測定した結果を示す。 実施例17において、非標識4Hypのピーク面積に基づいて血中遊離4Hyp濃度、4Hyp含有ペプチドなどの濃度を測定した結果を示す参考図である。 実施例17の結果を示す図であり、非標識オリゴペプチド/標識オリゴペプチド質量比を測定して血中オリゴペプチド濃度を測定した結果を示す。 実施例18の結果を示す図であり、実施例13で調製した標識コラーゲンを使用して、細胞内取り込み量を評価したところ、E−64d投与により細胞内でのコラーゲンの分解が抑制された。 実施例20で得た標識コラーゲンのSDS変性ポリアクリルアミドゲル電気泳動の結果を示す図である。
本発明の第一は、コラーゲンを構成するPro、Lys、Arg、Leu、Met、Phe、Thr、Val、IleおよびHisからなる群から選択される少なくとも1以上のアミノ酸が対応する標識アミノ酸で90モル%以上置換された標識コラーゲン前駆体を翻訳後修飾してなる標識コラーゲンを使用するコラーゲンの分析方法であって、前記標識コラーゲンと、測定対象コラーゲンまたはコラーゲン由来アミノ酸もしくはペプチド成分との混合物を測定試料とし、前記ペプチド質量比測定工程、および/または前記アミノ酸質量比測定工程を含む、コラーゲンの分析方法である。測定試料に添加した標識コラーゲンを内部標準物質として使用するものであり、前記標識コラーゲンが酸等で分解された標識アミノ酸や、標識アミノ酸を含むペプチド(以下、標識ペプチドとも称する。)を内部標準物質として使用することができる。標識コラーゲンを分解すると、複数の標識アミノ酸や標識ペプチドが生成するため、標識コラーゲンはこれら内部標準物質の束として機能する。
標識アミノ酸を構成アミノ酸として含む標識コラーゲンの化学的性質は、標識アミノ酸を含まない非標識コラーゲンと同一であり、加水分解率や酵素分解率、操作過程での試料損失、LC/MS分析でのイオン化効率なども略同一である。一方、安定同位体標識原子の含有量により質量が異なり、これらの分解物であるペプチドやアミノ酸の質量分析を行うと標識体と非標識体とを質量差で区分することができる。よって、非標識体/標識体の質量比を検出し、前記質量比を試料に含まれる標識コラーゲン由来成分の質量で換算すれば、測定試料に含まれる測定対象コラーゲン由来成分の質量を定量することができる。本発明で使用する標識コラーゲンは標識アミノ酸による置換率が高いため、コラーゲンを酸やアルカリで加水分解物し、例えば、コラーゲン中の翻訳後修飾アミノ酸量の定量等の高精度な分析を行うことができる。更に、酵素分解物に含まれる特定のペプチドのLC/MS分析により、測定対象コラーゲンの型別定量などの高精度な分析を行うことができる。以下、本発明を詳細に説明する。
本分析方法で使用する「測定対象コラーゲン」としては、ブタ、ウシ、トリ、サカナ、ヒトなど、従来公知のいずれかのコラーゲンを対象とすることができる。コラーゲンは、生体内で3本鎖螺旋構造を形成するが「測定対象コラーゲン」としては、三本鎖螺旋構造を形成するものに限定されない。本発明において、測定試料に添加する測定対象コラーゲンは、これを予め酸、アルカリ、酵素その他で分解してなるアミノ酸組成物やペプチド組成物である場合を含むものとする。従って、コラーゲンを予め酸、アルカリ、酵素などによって分解されたゼラチンやコラーゲンペプチドであってもよい。
また、「コラーゲン由来アミノ酸もしくはペプチド成分」とは、コラーゲンを起源とする測定対象のアミノ酸またはペプチド成分を意味する。コラーゲンはプロリンがヒドロキシル化されたヒドロキシプロリン(Hyp)などを特有のアミノ酸として含有し、例えば3Hypや4Hypなどのアミノ酸や、ProHyp、GluHyp、LeuHypなどのHyp含有ペプチド、その他のコラーゲン代謝分解物がある。前記測定対象コラーゲンのアミノ酸組成物やペプチド組成物がコラーゲン分子を構成する全てのアミノ酸を含む組成物であるのに対し、「コラーゲン由来アミノ酸もしくはペプチド成分」は、コラーゲン分子を構成する一部のアミノ酸や一部のペプチドでもよい点で相違する。
本発明で使用する「標識コラーゲン」とは、コラーゲンを構成するPro、Lys、Arg、Leu、Met、Phe、Thr、Val、IleおよびHisからなる群から選択される少なくとも1以上のアミノ酸が対応する標識アミノ酸で90モル%以上置換された標識コラーゲン前駆体を翻訳後修飾したものである。ここに、「標識コラーゲン前駆体」とはmRNAの情報に基づいてアミノ酸が結合して生成されたものを意味する。測定対象コラーゲンの構成アミノ酸には4Hyp、3Hyp、Hylなどの翻訳後修飾アミノ酸が含まれるが、標識コラーゲン前駆体にはこれらは含まれない。このため本発明では、標識コラーゲン前駆体が翻訳後修飾された標識コラーゲンを使用することにした。
標識コラーゲン前駆体を構成する「標識アミノ酸」とは、アミノ酸を構成する少なくとも1以上の原子が、安定同位体標識原子で置換されたアミノ酸を意味する。従って、水素(H)に代えて重水素(D)で置換されたアミノ酸であってもよく、質量13の炭素(13C)で置換されたアミノ酸、質量15の窒素(15N)で置換されたアミノ酸などであってもよい。なお、当該安定同位体標識原子は、コラーゲンに組み込まれた際にコラーゲン中に含まれる位置に存在している必要がある。標識アミノ酸としては、炭素全てが13Cで置換されたLys(以下、13−Lysとも表記する。)、炭素全てが13Cで置換され窒素全てが15Nで置換されたArg(以下、13 15−Argとも表記する。)、炭素全てが13Cで置換され窒素全てが15Nで置換されたPro(以下、13 15−Proとも表記する。)などを例示することができる。ただし、これらに限定されるものではない。
標識アミノ酸による置換率は、使用する標識アミノ酸のそれぞれ90モル%以上、より好ましくは95モル%以上、より好ましくは97モル%以上である。使用する標識コラーゲンにおける置換率が低いと、LC/MS分析において標識コラーゲンに不純物として含まれる非標識コラーゲン由来のペプチドやアミノ酸のピークが測定対象コラーゲン由来のペプチドやアミノ酸のピークに含まれるため正確な定量ができない。本発明では、置換率が高い標識コラーゲンを使用することで測定誤差を低減させ、定量性を向上させることができる。なお、本発明における「置換率」は、後記する実施例に記載する方法で測定したものとする。
本発明で使用する標識コラーゲンは、いずれの方法で調製したものであってもよい。従って、標識アミノ酸を使用し、F−moc法で化学合成してもよく、標識アミノ酸を含む餌で飼育した動物の組織から、標識コラーゲンを抽出してもよい。しかしながらF−moc法によるコラーゲンの化学合成は容易でなく、動物組織から抽出したコラーゲンは、標識アミノ酸を含む餌のコストが高く、また年齢や疾患によって翻訳後修飾量が相異する場合がある。本発明では、コラーゲン産生細胞を使用することが好ましい。アミノ酸の翻訳後修飾が一定し、再現性に優れるからである。ここでコラーゲン産生細胞とは、実質的にコラーゲンを産生する細胞である。例えば皮膚線維芽細胞のように本来コラーゲン産生能を有する細胞であってもよく、例えばCHO細胞などのようにコラーゲン産生能を持たない細胞に、コラーゲン遺伝子を導入してコラーゲン産生能を付加したものであってもよい。
コラーゲン産生細胞に標識アミノ酸を添加して培養すれば、標識コラーゲン前駆体が産生され、ただちに翻訳後修飾される。細胞を破壊して細胞内に含まれるコラーゲンを抽出し、または培養上清または沈着コラーゲン層から翻訳後修飾された標識コラーゲンを抽出し、必要に応じて精製すればよい。これにより、置換率の高い標識コラーゲンを得ることができる。
使用するコラーゲン産生細胞は、その細胞が産生するコラーゲン型によって適宜選択することができる。例えば、I型の標識コラーゲンを得るには骨芽細胞や腱細胞などを、I型、III型の標識コラーゲンを得るにはヒト胎児肺線維芽細胞(HEL細胞)、皮膚線維芽細胞、星細胞などを、II型、IX型、XI型の標識コラーゲンを得るにはラット軟骨肉腫細胞(RCS細胞)や軟骨細胞などを例示することができる。その他、I〜XXVIII型コラーゲンのいずれも、当該コラーゲン産生細胞を使用することで標識コラーゲンを得ることができる。CHO細胞のようにコラーゲン産生能を持たない細胞に目的のコラーゲン遺伝子を導入し、目的とするコラーゲン型の標識コラーゲンを得てもよい。好ましくは、産生するコラーゲンの翻訳後修飾前のアミノ酸配列が解明されているコラーゲン産生細胞である。
コラーゲン産生細胞に添加する標識アミノ酸量は、培地1リットル当り20〜300mgであることが好ましく、より好ましくは40〜250mg、特に好ましくは40〜200mgである。Lys、Leu、Met、Phe、Thr、Val、IleおよびHisは必須アミノ酸であり、Argは準必須アミノ酸であるため標識アミノ酸として供給することで高い置換率を確保することができる。
ただし、安定同位体標識Proで置換した標識コラーゲンを製造する場合は、培地1リットル当り安定同位体標識Proを50〜500mg添加し、より好ましくは100〜400mg、特に好ましくは150〜350mg添加する。Proは必須アミノ酸ではなく細胞内で他のアミノ酸が変換してProとなりコラーゲンを構成するため、安定同位体標識Proの置換率が低下しやすい。しかしながら安定同位体標識Proの添加量を上記範囲に調整すると、安定同位体標識Proによる置換率を向上させることができる。
更に、後記する実施例に示すように、培地にGlnを供給することなく培養することで、安定同位体標識Proの置換率をより向上させうることが判明した。なお、Glnの供給がなくてもコラーゲン合成量は抑制されず、高収率で標識コラーゲンを製造することができる。
培養時間は2日以上、より好ましくは3日以上である。連続培養であってもよい。標識アミノ酸の供給量にもよるが、培養1日目は細胞に残存する非標識アミノ酸を使用してコラーゲンが産生されるため置換率が低いが、経時的に置換率が向上し、6日以降の置換率は略横ばいとなる。コラーゲン産生細胞により標識コラーゲン前駆体が産生され、順次翻訳後修飾が行われ標識コラーゲンが形成され細胞外に放出される。なお、培地には標識コラーゲンのほか、分泌タンパク質や血清由来タンパク質などが混在する場合がある。加水分解して測定する場合、これら不純物が標識コラーゲンに混入されると測定誤差となる。不純物が混在する場合には、培養後の培地に対しペプシンなどのタンパク分解酵素でコラーゲン以外のタンパク質を分解し、さらに塩析で標識コラーゲンを精製してもよい。この際、タンパク分解酵素を固定化酵素として分解反応を行うとこれらタンパク分解酵素の混入を回避することができる。
上記方法で得られる標識コラーゲンは溶液として分取される。当該溶液に含まれる標識コラーゲンの標識アミノ酸による置換率は、一般にアミノ酸毎に90モル%以上である。
なお、コラーゲン産生細胞として骨芽細胞を使用すると主としてコラーゲンI型が生産されるため、コラーゲンI型の型別定量、全コラーゲン量の定量や、翻訳後修飾アミノ酸量の定量などを行うことができる。一方、皮膚線維芽細胞を培養すると、コラーゲンI型のほかにコラーゲンIII型も混在する。このような標識コラーゲンI型とIII型との混合物を使用し、全コラーゲンの定量や翻訳後修飾アミノ酸量の定量、試料に含まれるI型コラーゲンとIII型コラーゲンとの型別定量を行うことができる。同様に、分析の用途に応じ、コラーゲンの特定の型のみが含まれるものであっても、異なる2種以上が含まれるものであっても、型別定量、全コラーゲン定量、翻訳後修飾定量を行う事ができる。
標識コラーゲンとしては、安定同位体標識Proおよび/または安定同位体標識Lysを含む標識コラーゲン、更に、Arg、Leu、Met、Phe、Thr、Val、IleおよびHisの少なくとも1以上の標識アミノ酸で置換した標識コラーゲンがある。測定対象コラーゲンの測定項目にあわせて適宜選択することができる。特に、Argなどの翻訳後修飾を受けないアミノ酸(以下、不修飾アミノ酸とも称する場合がある。)を含めると、標識コラーゲン由来の不修飾アミノ酸と測定対象コラーゲン由来の不修飾アミノ酸との質量比を用いて、コラーゲン当りのアミノ酸量を定量することができる。このような標識アミノ酸としては、コラーゲンにおける含有量が高く、コラーゲンでの組成比も安定している点で安定同位体標識Arg、安定同位体標識Val、安定同位体標識Leuが好ましく、より好ましくは安定同位体標識Argである。コラーゲンを、例えばトリプシンで消化するとC末端が安定同位体標識Argや安定同位体標識Lysとなるため、少なくともペプチド当たり1以上の標識アミノ酸を含有させることができる。
なお、本発明において、測定試料に添加する標識コラーゲンは、これを予め酸、アルカリ酵素、その他で分解してなるアミノ酸組成物やペプチド組成物である場合を含むものとする。なお、安定同位体標識Proや、安定同位体標識Lysで置換した標識コラーゲンの分解物には、標識コラーゲンに由来する安定同位体標識Proや安定同位体標識Lysの他、翻訳後修飾アミノ酸として、安定同位体標識4Hyp、安定同位体標識3Hyp、安定同位体標識Hyl、安定同位体標識GHL、安定同位体標識GGHL、およびこれらを含有するペプチドなどが含まれる。
上記標識コラーゲンのアミノ酸組成は、例えば、標識コラーゲンを酸やアルカリなどで分解してアミノ酸組成物を調製し、LC/MSにより各アミノ酸の質量比を分析することで求めることができる。また、全アミノ酸量から、標識コラーゲンの全コラーゲン濃度を算出することができる。更に、既知量の精製コラーゲンI型と標識コラーゲンとを共に酵素分解し、LC/MSにより、精製コラーゲンI型由来の所定ペプチドと標識コラーゲン由来の所定ペプチドとの質量比を求め、この質量比に精製コラーゲンI型の質量を乗じ、標識コラーゲンI型の濃度を求めることができる。コラーゲンII型などの濃度は上記に準じて定量することができる。
以下、上記標識コラーゲンを使用してコラーゲンを分析する方法を具体的に説明する。
本発明の分析方法で使用する測定試料には、標識コラーゲンと、測定対象コラーゲンまたはコラーゲン由来アミノ酸もしくはペプチド成分とが含まれる。前記したように測定対象コラーゲンおよび標識コラーゲンは、未分解のコラーゲンであってもよく、予め分解されたアミノ酸組成物やペプチド組成物であってもよい。測定対象コラーゲンと標識コラーゲンとの混合物に分解処理を行えば、分解工程で生じる両者間の誤差を相殺することができる。なお、測定対象コラーゲンに代えて、コラーゲン由来アミノ酸もしくはペプチド成分を分析する場合は、分析目的に応じて適宜加水分解や酵素分解を行い、更に分解した後に分析をすることができる。
コラーゲンをアミノ酸に加水分解する酸やアルカリとしては、従来タンパク質の分解に使用される各種の酸やアルカリを使用することができ、酵素分解によってアミノ酸を得てもよい。また、コラーゲンからペプチドを得る酵素としては、エンドペプチダーゼが好適である。例えば、トリプシン、Lys−Cエンドペプチダーゼ、リシルエンドペプチダーゼ、Arg−Cエンドペプチダーゼ、キモトリプシンなどを例示することができ、酸やアルカリ分解によってペプチドを得てもよい。酵素を使用する場合は、C末端がArgまたはLysとなるトリプシンが好適である。安定同位体標識Argや安定同位体標識Lysで置換された標識コラーゲンをトリプシンで分解すると、C末端が安定同位体標識Argや安定同位体標識Lysとなり、LC/MS分析に好適なアミノ酸長のペプチドを得ることができる。
本発明では、コラーゲン型に特有のペプチドを測定対象とすることで、コラーゲン型の分析および定量を行うことができる。このようなLC/MS分析の際に指標となる型特有のペプチドとして、アミノ酸数が8〜20であり、標識アミノ酸を1以上、より好ましくは2以上含み、コラーゲン型に特有のアミノ酸配列を有するペプチドがある。本発明では、このような指標ペプチドとして、たとえばGVQGPOGPAGPR(Oは4Hypを示す)、GVVGLOGQR、EGPVGLOGIDGR、GPSGPQGIR、GIVGLOGQR、GSOGAQGLQGPR、GROGLOGAAGAR、GLAGPOGMOGPR、GPOGIOGAOGK、GPTGELGDOGPRおよびLGVOGLOGYOGRからなる群から選択されるいずれかを好適に使用することができる。GVQGPOGPAGPR、GVVGLOGQR、EGPVGLOGIDGRおよびGPSGPQGIRはコラーゲンI型に特有の配列である。従って、コラーゲンI型の定性および定量を行うことができる。なお、このアミノ酸配列は、ヒト、ウシ、ラット、マウスなどのコラーゲンI型にも共通する。従って、上記ペプチドを使用してこれら動物種由来のコラーゲンの型別定量を行うことができる。同様に、GIVGLOGQRおよびGSOGAQGLQGPRは、コラーゲンII型に特有の配列であり、GROGLOGAAGARおよびGLAGPOGMOGPRはコラーゲンIII型に特有の配列であり、GPOGIOGAOGKおよびGPTGELGDOGPRは、コラーゲンIX型に特有の配列であり、LGVOGLOGYOGRはコラーゲンV型やXI型に特有の配列である。いずれも、コラーゲンの型別定量に好適に使用することができる。このような型特有のペプチドは、コラーゲンをトリプシンで分解することで生成させることができる。
本発明では、前記測定試料アミノ酸質量比や測定試料ペプチド質量比をLC/MS分析で定量する。なお、LC/MS分析は、従来公知の装置を使用し、従来公知の方法で行うことができる。測定試料アミノ酸質量比や測定試料ペプチド質量比は、質量分析の際の所定成分のピーク高さやピーク面積を測定することで定量することができる。
(1)コラーゲン構成アミノ酸量の定量方法
コラーゲンを構成するアミノ酸は、通常、コラーゲン1モルにおけるアミノ酸残基数を、コラーゲン1000残基当たりのアミノ酸残基数に換算して表記される。本発明によれば、上記標識コラーゲンを使用し、測定対象コラーゲンを構成するアミノ酸の組成比を定量することができる。
使用する標識コラーゲンとしては、測定対象となるProやLysが標識アミノ酸で90モル%以上置換され、更に、Arg、Leu、Met、Phe、Thr、Val、IleおよびHisからなる群から選択される少なくとも1以上の標識アミノ酸で90モル%以上置換された標識コラーゲン前駆体を翻訳後修飾したものを使用する。便宜のため、安定同位体標識Pro、安定同位体標識Lysおよび安定同位体標識Argで置換された標識コラーゲン前駆体を翻訳後修飾した標識コラーゲンを使用し、翻訳後修飾Proおよび翻訳後修飾Lysを定量する場合で説明する。
まず、測定対象コラーゲンに既知量の標識コラーゲンを添加して測定試料とする。測定対象コラーゲンおよび標識コラーゲンは、予めアミノ酸に分解したものを合一して測定試料としたものであってもよく、両者の混合物を同時に分解して得たアミノ酸組成物を測定試料としてもよい。なお、コラーゲンを酸で加水分解するとGHLやGGHLに含まれる糖鎖が切断される場合があり、目的に合わせて酸加水分解、アルカリ加水分解、酵素分解とを適宜選択し、組み合わせることが好ましい。例えば、酸加水分解物の分析により、Proが翻訳後修飾されてなる4Hypや3Hyp、Lysが翻訳後修飾されてなるHylを定量し、アルカリ加水分解物を使用してGHL、GGHLなどを定量することができる。
使用する標識コラーゲンの型は、測定対象コラーゲンと同じであることが好ましい。3Hyp、GGHLなどは、コラーゲンの型によって含有量が異なる場合があるからである。なお、4HypやArgなどはI型、II型、III型等、多くの主要なコラーゲン型で含有量がほぼ共通するため、何れかのコラーゲン型の4Hypを定量する際に標識コラーゲンI型を使用することができる。
測定対象コラーゲンを構成する4Hypを定量する場合には、LC/MS分析により、標識コラーゲン由来の安定同位体標識4Hyp(以下、標識4Hypと称する場合がある。)と測定対象コラーゲン由来の4Hyp(以下、非標識4Hypと称する場合がある。)との質量比、例えば、非標識4Hyp/標識4Hypを測定する。同様にして安定同位体標識Arg(以下、標識Argと称する場合がある。)と非標識Arg(以下、非標識Argと称する場合がある。)との質量比、例えば、非標識Arg/標識Argを測定する。
測定試料に添加した標識コラーゲン由来4Hypの質量がY4Hypの場合、Y4Hyp×非標識4Hyp/標識4Hyp=Z4Hypを算出すれば、測定試料に含まれる測定対象コラーゲン由来の4Hypの質量をZ4Hypとして求めることができる。
測定試料に含まれる測定対象コラーゲン1モル当たりの4Hyp量を求めるには以下の換算を行えばよい。コラーゲンを構成するArgはコラーゲンでの組成比が安定しているため、測定試料の非標識Arg/標識Argは、測定試料に含まれる標識コラーゲンに対する測定対象コラーゲンのモル比に相当する。測定試料に添加した標識コラーゲン量をMSIモルとすれば、MSI×非標識Arg/標識Argは、測定試料に含まれる測定対象コラーゲンのモル数MSamに該当する。Z4Hyp/MSam=Y4Hyp×(非標識4Hyp/標識4Hyp)×(標識Arg/(MSI×非標識Arg))を算出することで、測定対象コラーゲン1モルあたりの4Hyp量を求めることができる。
上記4Hypの定量と同様にして、Pro、Lys、Hyl、GHL、GGHLなどのアミノ酸も、測定試料に添加した標識コラーゲン構成アミノ酸の質量をYとし、測定試料に添加した標識コラーゲン量をMSIモルとした場合に、YA×(非標識アミノ酸/標識アミノ酸)×(標識Arg/(MSI×非標識Arg))を算出し、測定対象コラーゲン1モルあたりのアミノ酸を定量することができる。なお、測定対象コラーゲンと標識コラーゲンとの配合比を示すものとして、上記したArgの他にLeu、Met、Phe、Thr、Val、Ile、Hisなどの、コラーゲンでの組成比が安定したアミノ酸を使用することができる。Argに代えてLeuを指標とする場合は、安定同位体標識Argに代えて安定同位体標識Leuで90モル%以上置換された標識コラーゲンを使用する。本発明では、標識コラーゲンを分解してなる安定同位体標識されたアミノ酸をそれぞれ内部標準物質として扱うことができるため、複数のアミノ酸を同時に定量することができる。
なお、コラーゲン1000残基当りのアミノ酸残基数を算出するには、予め測定した標識コラーゲンを構成するアミノ酸1000残基当たりのアミノ酸残基数を使用すればよい。例えば、(非標識アミノ酸/標識アミノ酸)/(非標識Arg/標識Arg)は、コラーゲンあたりの標識コラーゲン構成アミノ酸に対する測定対象アミノ酸の質量比である。これに、標識コラーゲンを構成する前記アミノ酸の1000残基あたりの残基数としてMAを乗じ、MA×(非標識アミノ酸/標識アミノ酸)×(標識Arg/非標識Arg)を算出すれば、測定対象コラーゲンの前記アミノ酸の1000残基あたりの残基数を算出することができる。
(2)コラーゲン量の定量方法
使用する標識コラーゲンは、Pro、Lys、Arg、Leu、Met、Phe、Thr、Val、IleおよびHisからなる群から選択される少なくとも1以上の標識アミノ酸で90モル%以上が置換された標識コラーゲン前駆体を翻訳後修飾したものである。好ましくは、Proが安定同位体標識Proで90モル%以上置換された標識コラーゲン前駆体を翻訳後修飾したものである。Proが翻訳後修飾された4Hypは、コラーゲンにのみ存在する翻訳後修飾アミノ酸である。4Hyp量を指標にLC/MS分析を行うと、測定対象コラーゲンがコラーゲン以外のタンパク質を含む場合であっても測定対象コラーゲン量を正確に定量することができる。便宜のため、安定同位体標識Proで置換された標識コラーゲンを使用する場合で説明する。
測定対象コラーゲンに既知量の標識コラーゲンを添加して測定試料とする。測定対象コラーゲンおよび標識コラーゲンは、予め別個にアミノ酸に分解したものを合一して測定試料としたものであってもよく、両者を混合した後に同時に分解処理したものを測定試料としてもよい。測定対象コラーゲンと標識コラーゲンとを同時に分解処理する場合には、分解工程による測定誤差を相殺することができる。
得られた分解物をLC/MS分析により、例えば、標識コラーゲン由来の安定同位体標識4Hypに対する測定対象コラーゲン由来の4Hypの質量比、例えば、非標識4Hyp/標識4Hypを測定する。測定試料に添加した標識コラーゲンの質量として例えばYCを乗じると、YC×(非標識4Hyp/標識4Hyp)は、測定試料中の測定対象コラーゲンの質量となる。
なお、上記定量方法は4Hypを指標とするものであるが、4Hypがコラーゲンに特異に含まれるアミノ酸であり、コラーゲン組織間での変動が少なく、壊血病以外では疾患による大きな変化も報告がなく、かつコラーゲン中での構成量も安定しているからである。従って、測定対象コラーゲンに他のタンパク質などの不純物が含まれていない場合には、4Hypに代えて、Pro、Arg、Leu、Met、Phe、Thr、Val、IleおよびHisからなる群から選択されるいずれかのアミノ酸の上記質量比を定量し、全コラーゲン量を定量することができる。この場合には、測定対象のアミノ酸に対応して、Pro、Arg、Leu、Met、Phe、Thr、Val、IleおよびHisからなる群から選択される少なくとも1以上の標識アミノ酸で90モル%以上が置換された標識コラーゲン前駆体を翻訳後修飾した標識コラーゲンを使用する。なお、4Hyp以外のアミノ酸組成はコラーゲン型間で異なることが一般的である。従って、4Hyp以外のアミノ酸を指標とする場合は、使用する標識コラーゲンの型は、測定対象コラーゲンと同じものを使用する。
上記した全コラーゲン量の定量は、4Hypなどのアミノ酸の質量比を測定する際の感度が高いため、少量のサンプルでも測定できる。コラーゲンの特定配列のペプチドを測定してコラーゲン量を定量する場合は、このような特定配列ペプチドの含有量はタンパク質1モル当たり基本的に1モルであるが、4Hypその他のアミノ酸はコラーゲン1モル当たりのモル数が多いため、ペプチドを測定対象とする場合と比較して100倍以上も測定感度を向上させることができる。本発明で使用する標識コラーゲンは、標識アミノ酸による置換率が高く純度が高いため、このような高感度なアミノ酸の測定を行うことができる。
(3)型別コラーゲン量の定量方法
型別コラーゲンの分析に使用する標識コラーゲンとしては、Pro、Lys、Arg、Leu、Met、Phe、Thr、Val、IleおよびHisからなる群から選択される少なくとも1以上の標識アミノ酸で90モル%以上が置換された標識コラーゲンである。測定対象コラーゲンに含まれるコラーゲンI型の濃度を分析する場合には、コラーゲンI型の標識コラーゲンを使用する。便宜のため、安定同位体標識Pro、安定同位体標識Lys、および安定同位体標識Argで置換された標識コラーゲンI型前駆体を翻訳後修飾した標識コラーゲンI型を使用し、測定試料に含まれる測定対象コラーゲンI型を定量する場合で説明する。
まず、測定対象コラーゲンに既知量の標識コラーゲンI型を添加して測定試料とする。測定対象コラーゲンおよび標識コラーゲンは、予め同じエンドペプチダーゼを使用して別個に酵素分解したものを合一して測定試料としたものであってもよく、エンドペプチダーゼを使用して同時に酵素分解したものを測定試料としてもよい。
次いで、LC/MS分析により、コラーゲンI型に特有のアミノ酸配列を含みかつ標識アミノ酸を含むペプチドを指標として、測定試料に含まれる標識コラーゲン由来のペプチド(以下、標識I型ペプチドと称する。)と前記標識I型ペプチドに対応する測定対象コラーゲン由来のペプチド(以下、非標識I型ペプチドと称する。)との質量比を測定する。安定同位体標識Pro、安定同位体標識Lys、および安定同位体標識Argで置換された標識コラーゲンI型をトリプシンで酵素分解すると、Pro、4Hyp、3Hyp、Lys、Hyl、Argなどが標識アミノ酸で構成されたペプチドが得られる。従って、コラーゲンI型に特有のアミノ酸配列を有するペプチドとして、例えば、GVQGPOGPAGPR、GVVGLOGQR、EGPVGLOGIDGRおよびGPSGPQGIRなどを指標としてLC/MS分析を行うことで、測定時のイオン化効率の誤差を吸収した高精度な定量分析を行うことができる。
GVQGPOGPAGPRを指標として質量比を測定する場合、標識コラーゲン由来の前記ペプチド(以下、標識GVQGPOGPAGPRと称する。)と測定対象コラーゲン由来のペプチド(以下、非標識GVQGPOGPAGPRと称する。)との質量比として、例えば、非標識GVQGPOGPAGPR/標識GVQGPOGPAGPRを算出し、測定試料に添加した標識コラーゲンI型の質量として、YCIを乗ずれば、測定試料に含まれる測定対象コラーゲンI型の質量をYCI×非標識GVQGPOGPAGPR/標識GVQGPOGPAGPRから算出することができる。
なお、上記は既知量の標識コラーゲンI型を使用する場合で例示したが、更に標識コラーゲンとしてII型やIII型、その他が混在してもよい。I型の添加量が既知であれば、他のコラーゲンが含まれても測定誤差は生じないからである。
一方、測定対象コラーゲンにI型とIII型のコラーゲンが含まれる場合には、既知量の標識コラーゲンI型と既知量の標識コラーゲンIII型とが混在する標識コラーゲンを使用すれば、一度の測定でI型とIII型とを定量することができる。
測定試料の酵素分解液をLC/MS分析し、コラーゲンI型に特有のアミノ酸配列を有するペプチド(以下、I型指標ペプチドと称する。)とコラーゲンIII型に特有のアミノ酸配列を有するペプチド(以下、III型指標ペプチドと称する。)とをLC/MS分析で検出する。I型指標ペプチドとIII型指標ペプチドとが検出された場合は、測定対象コラーゲンには、コラーゲンI型とIII型とが含まれる。その各々について上記と同様に測定対象コラーゲンI型由来のペプチド(以下、非標識I型ペプチドと称する。)と、標識コラーゲンI型由来のペプチド(以下、標識I型ペプチドと称する。)との質量比、例えば、非標識I型ペプチド/標識I型ペプチドを測定し、測定試料に添加した標識コラーゲンI型の質量として、YCIを乗じ、YCI×非標識I型ペプチド/標識I型ペプチドを算出すれば測定試料に含まれるコラーゲンI型の質量を求めることができる。コラーゲンIII型も同様であり、測定試料に添加した標識コラーゲンIII型の質量として、YCIIIを乗じ、YCIII×非標識III型ペプチド/標識III型ペプチドを算出すれば測定対象コラーゲンに含まれるコラーゲンIII型の質量を求めることができる。
コラーゲン型の定量方法では、標識コラーゲンとして予め既知量の複数種のコラーゲン型を含むものを使用してもよい。例えば、予め所定量のコラーゲンI型、II型、III型およびIV型を含む標識コラーゲンを調製し、測定対象コラーゲンに含まれるそれぞれのコラーゲン型に特有のペプチドを検出することでコラーゲン型の定性分析および定量分析を行うことができる。
(4)ペプチド量の定量
コラーゲンを構成するペプチド量の測定方法は、前記した型別コラーゲン量の定量方法に準じて行うことができる。測定対象コラーゲンのGlyProAla量を標識ヒトコラーゲンI型を使いコラゲナーゼで分解して定量する場合で説明する。
測定対象コラーゲンに既知量の標識コラーゲンI型を添加して測定試料とする。測定対象コラーゲンおよび標識コラーゲンI型は、予め同じコラゲナーゼを使用して別個に酵素分解したものを合一して測定試料としたものであってもよく、コラゲナーゼを使用して同時に酵素分解したものを測定試料としてもよい。
次いで、LC/MS分析により、測定試料に含まれる標識GlyProAla(以下、標識GPAと称する。)と前記標識GPAに対応する測定対象コラーゲン由来のGlyProAla(以下、非標識GPAと称する。)との質量比(非標識GPA/標識GPA)を測定する。
コラゲナーゼはコラーゲンをGly-X-Y単位で分解し、分解反応が完全に行われる場合には前記標識コラーゲンI型1モルからGlyProAlaが88モル(α1鎖から30×2=60モル、α2鎖から28モル)生成される。GlyProAlaの分子量は243、コラーゲンの分子量は約3×10であるから、測定試料に添加した標識コラーゲンの質量をYCIとすれば、測定試料に含まれる標識GPAの質量YGPAはYCI×88×243/(3×10)で算出され、測定対象コラーゲンを構成するGPAの質量は、YGPA×(非標識GPA/標識GPA)として求めることができる。
本発明では、標識コラーゲンをコラゲナーゼで分解して生成されるGly-X-Yで示される数々のペプチドをそれぞれ内部標準物質として扱うことができるため、複数のペプチドを上記により同時に定量することができる。
(5)コラーゲン由来アミノ酸もしくはペプチド成分の定量
本発明の分析方法によれば、例えば、血漿に既知量の標識コラーゲンを添加したものを測定試料とすることで、血漿中のコラーゲン由来アミノ酸やペプチド成分を定量することができる。
測定試料に含まれるコラーゲン由来ペプチド成分とこれに対応する前記標識コラーゲン由来ペプチドとの質量比や、コラーゲン由来アミノ酸とこれに対応する前記標識コラーゲン由来アミノ酸との質量比を測定し、予め測定成分の標品と標識コラーゲンを用いて作成した前記ペプチドの質量比やアミノ酸の質量比の検量線を使用して、測定試料に含まれるコラーゲン由来アミノ酸やペプチド成分を定量することができる。コラーゲン由来アミノ酸やペプチド成分を含む定量対象物として、コラーゲン代謝物を含む生体成分、例えば全血、血漿、血清、尿、組織抽出液などがある。これらの定量対象物に含まれるコラーゲン代謝物の測定に好適である。
(i)コラーゲン由来アミノ酸の定量
血漿を定量対象物とし、コラーゲン代謝物として4Hypを測定する場合で説明する。
使用する標識コラーゲンは、少なくともコラーゲンを構成するProが標識アミノ酸で90モル%以上置換された標識コラーゲン前駆体を翻訳後修飾してなる標識コラーゲンである。予め酸、アルカリまたは酵素でアミノ酸を含有するように分解した既知量の標識コラーゲン分解物を血漿に添加して測定試料とする。この測定試料をエタノールで沈殿して得た上清には遊離型4Hypが含まれる。上清をLC/MSで分析し、上清に含まれる標識コラーゲン由来の4Hyp(標識4Hyp)に対する血漿由来の4Hyp(非標識4Hyp)の質量比(非標識4Hyp/標識4Hyp)を測定する。別個に、市販の4Hypと前記標識コラーゲン分解物とを所定質量比で混合して標準溶液列を調製し、LC/MSによって非標識4Hyp/標識4Hyp質量比を測定し、この値と4Hyp濃度との関係を示す検量線を作成し、この検量線に基づいて上記測定した質量比から血漿中の遊離型4Hyp量を定量する。
前記上清には遊離型4Hypと共にペプチド型4Hypが含まれている。従って、この上清を酸などで分解して血漿に含まれるペプチドを各アミノ酸に分解し、この分解物を使用し、上記と同様にして定量すれば、血漿に含まれる全4Hypを定量することができる。全4Hyp量と遊離型4Hyp量との差は、血漿に含まれるペプチド型4Hyp量となる。
本発明では、標識コラーゲンを分解してなる標識アミノ酸をそれぞれ内部標準物質として扱うことができるため、対応する標識アミノ酸を含有する標識コラーゲンを使用することで、測定試料に含まれる上記した4Hyp以外の複数のアミノ酸を同時に定量することができる。
(ii)コラーゲン由来ペプチド成分の定量
血漿を定量対象物とし、コラーゲン代謝物としてProHypを測定する場合で説明する。
使用する標識コラーゲンは、少なくともコラーゲンを構成するProが標識アミノ酸で90モル%以上置換された標識コラーゲン前駆体を翻訳後修飾してなる標識コラーゲンである。予め酸、アルカリまたは酵素でペプチドを含有するように分解した既知量の標識コラーゲン分解物を血漿に添加して測定試料とする。この測定試料をエタノールで沈殿して得た上清をLC/MSで分析し、測定試料に含まれる標識コラーゲン由来のProHyp(標識ProHyp)に対する血漿由来のProHyp(非標識ProHyp)の質量比(非標識ProHyp/標識ProHyp)を測定する。別個に合成オリゴペプチドProHypと前記標識コラーゲン分解物とを所定質量比で混合して標準溶液列を調製し、LC/MSにて非標識ProHyp/標識ProHyp質量比を測定し、この値とProHyp濃度との関係を示す検量線を作成し、この検量線に基づいて上記測定した質量比から血漿中のペプチド量を定量する。
本発明では、標識コラーゲンを分解してなる標識ペプチドをそれぞれ測定の際の内部標準物質として扱うことができるため、前記標識コラーゲンを使用することで、上記したProHyp以外の複数のペプチドを同時に定量することができる。更に、標識コラーゲン分解物が、アミノ酸とペプチドとを同時に含有する場合する場合がある。このような標識コラーゲン分解物を使用し、内部標準物質として使用することで、アミノ酸とペプチドとを同時に測定することができる。
(6)相対比評価
本発明において、定量方法には「絶対定量」と「相対定量」とが含まれる。従って、複数の測定試料のコラーゲンを分析する際、いずれかの測定試料の値を基準として、本発明の分析方法で得た前記アミノ酸量やペプチド量、コラーゲン量、型別コラーゲン量を相対比で評価することができる。例えば、複数の測定試料間で各測定試料に含まれる標識コラーゲン量と測定対象コラーゲン量とが一定であれば、分析により得た測定試料ペプチド質量比や測定試料アミノ酸質量比のみを用いて測定試料間の相違を簡便に検出しうる利点がある。また、複数の測定試料間で測定試料に添加した標識コラーゲン量と測定対象コラーゲン量とが異なる場合でも、正確に各測定試料間の相違を相対比で評価することができる。
(i)測定試料に含まれる標識コラーゲンと測定対象コラーゲンとがそれぞれ一定である複数の測定試料は以下の方法で評価することができる。このような試料としてプロリン水酸化酵素による変性コラーゲンの水酸化試料がある。コラーゲン試料の水酸化状態を所定時間毎にn回観察し、Proの水酸化状態を反応0時を基準として相対比を求める場合で説明する。
使用する標識コラーゲンとしては、測定対象となるProが標識アミノ酸で90モル%以上が置換され、更に、Arg、Leu、Met、Phe、Thr、Val、IleおよびHisからなる群から選択される少なくとも1以上の標識アミノ酸で90モル%以上が置換された標識コラーゲン前駆体を翻訳後修飾したものがある。便宜のため、安定同位体標識Proおよび安定同位体標識Argで置換された標識コラーゲン前駆体を翻訳後修飾した標識コラーゲンを使用し、加水分解によって生ずる4Hypの各測定試料間の相違を評価する場合で説明する。
測定対象コラーゲンから所定時間ごとにn回、その一部を等量ずつ取り出し、その測定対象コラーゲンに標識コラーゲンを等量ずつ添加して測定試料とする。これを例えば、酸またはアルカリで加水分解する。LC/MS分析により、安定同位体標識4Hypと非標識4Hypとの質量比、例えば、非標識4Hyp/標識4Hypを測定する。前記(1)に記載したように、測定試料に添加した標識コラーゲン由来の4Hyp量が既知であり、例えばY4Hypである場合には、Y4Hyp×非標識4Hyp/標識4Hypを算出し、測定試料に含まれる測定対象コラーゲン由来の4Hyp量を算出することができる。また、測定試料に添加した標識コラーゲン量をMSIモルとすれば、Y4Hyp×(非標識4Hyp/標識4Hyp)×(標識Arg/(MSI×非標識Arg))を算出することで、測定対象コラーゲン1モルあたりの4Hyp量を算出することもできる。
一方、反応0時の質量比を初期値として{Y4Hyp×(非標識4Hyp/標識4Hyp)×(標識Arg/(MSI×非標識Arg))で表し、各測定時の質量比を{Y4Hyp×(非標識4Hyp/標識4Hyp)×(標識Arg/(MSI×非標識Arg)),・・・,{Y4Hyp×(非標識4Hyp/標識4Hyp)×(標識Arg/(MSI×非標識Arg))とすれば、{Y4Hyp×(非標識4Hyp/標識4Hyp)×(標識Arg/(MSI×非標識Arg))/{Y4Hyp×(非標識4Hyp/標識4Hyp)×(標識Arg/(MSI×非標識Arg))を算出することで、各経過時の4Hyp量を初期値に対する相対比で評価することができる。上記式において「Y4Hyp」および「標識Arg/(MSI×非標識Arg)」は測定試料間で同一である。従って、各測定時の質量比として「非標識4Hyp/標識4Hyp」を用い、(非標識4Hyp/標識4Hyp)/(非標識4Hyp/標識4Hyp)を算出することで、初期値に対する経過時nの相対比を求めることができる。この方法は、濃度未知の標識コラーゲンを使用して、測定対象コラーゲン由来の4Hyp量を算出することなく分析しうる点で優れる。
上記は4Hypの経時変化を分析する場合で説明したが、測定試料に添加する酸やアルカリでの加水分解に代えて酵素分解によって発生するペプチド量を経時的にLC/MS分析し、酵素反応の経時変化を分析することもできる。
(ii)測定試料に含まれる標識コラーゲン量は一定であるが、測定対象コラーゲン量が異なる複数の測定試料は以下の方法で評価することができる。異なる疾患に罹患した組織から抽出したコラーゲンの4Hyp量を、健康時を基準として相対比を求める場合で説明する。
使用する標識コラーゲンは、測定対象となるProやLysが標識アミノ酸で90モル%以上が置換され、更に、Arg、Leu、Met、Phe、Thr、Val、IleおよびHisからなる群から選択される少なくとも1以上の標識アミノ酸で90モル%以上が置換された標識コラーゲン前駆体を翻訳後修飾したものである。便宜のため、安定同位体標識Proおよび安定同位体標識Argで置換された標識コラーゲン前駆体を翻訳後修飾した標識コラーゲンを使用し、各測定試料に含まれる4Hypを評価する場合で説明する。
健康時および異なる疾患に罹患した組織から抽出した測定対象コラーゲンそれぞれに同量の標識コラーゲンを添加して測定試料とする。測定対象コラーゲンおよび標識コラーゲンは、予め別個に加水分解したものを合一して測定試料としたものであってもよく、両者を混合して同時に加水分解したものを測定試料としてもよい。
次いで、LC/MS分析により、加水分解物に含まれる安定同位体標識4Hypと非標識4Hypとの質量比、例えば、非標識4Hyp/標識4Hypを測定する。前記(1)に記載したように、測定試料に添加した標識コラーゲンに含まれる4Hyp量をY4Hypとすれば、Y4Hyp×非標識4Hyp/標識4Hypを算出し、測定試料に含まれる測定対象コラーゲン由来の4Hyp量を算出することができる。また、「非標識4Hyp/標識4Hyp」と「標識Arg/非標識Arg」との2つの質量比からなる算術値に、測定試料に添加した標識コラーゲン量をMSIモルとして加え、Y4Hyp×(非標識4Hyp/標識4Hyp)×(標識Arg/(MSI×非標識Arg))を算出することで、測定対象コラーゲン1モルあたりの4Hyp量を求めることができる。
一方、健常時の質量比を初期値として{Y4Hyp×(非標識4Hyp/標識4Hyp)×(標識Arg/(MSI×非標識Arg))で表し、各疾患の質量比を{Y4Hyp×(非標識4Hyp/標識4Hyp)×(標識Arg/(MSI1×非標識Arg)),・・・,{Y4Hyp×(非標識4Hyp/標識4Hyp)×(標識Arg/(MSI×非標識Arg))とする。健常時に対する各疾患時の質量比は、{Y4Hyp×(非標識4Hyp/標識4Hyp)×(標識Arg/(MSI×非標識Arg))/{Y4Hyp×(非標識4Hyp/標識4Hyp)×(標識Arg/(MSI×非標識Arg))となる。測定試料に添加した標識コラーゲンに含まれる4Hyp量および標識コラーゲン量MSIは一定であるから、{(非標識4Hyp/標識4Hyp)×(標識Arg/非標識Arg)/{(非標識4Hyp/標識4Hyp)×(標識Arg/非標識Arg)を算出することで、健常時に対する各測定試料の相対比を評価することができる。
上記式より、測定試料に含まれる測定対象コラーゲン量が異なる場合であっても、質量比測定工程で得た質量比のみを使用し、簡便に各測定試料間の相対比を求めることができる。なお、上記は、各測定試料の質量比である「非標識4Hyp/標識4Hyp」と「標識Arg/非標識Arg」とを組み合わせて評価した一例となる。
なお、LC/MS分析において、4Hyp標品で作成した検量線を用いて測定対象コラーゲン由来4Hypのピーク面積から4Hyp量を求めることも可能であるが、後記する実施例に示すように、測定試料に塩などの夾雑成分が含まれる場合には試料間の測定誤差に由来する定量誤差が発生しやすい。このような場合であっても、標識コラーゲンを分解してなる標識4Hypを測定試料、検量線用試料に添加して内部標準物質として使用し、非標識4Hyp/標識4Hypを測定することで測定誤差を相殺し、正確な定量を行うことができる。
(iii)測定試料に含まれる標識コラーゲン量と測定対象コラーゲン量とが異なる複数の測定試料は以下の方法で相対比を評価することができる。上記(ii)の測定試料において標識コラーゲン量が異なる場合で説明する。
測定試料に添加した標識コラーゲン量をMSIモルとすれば、健常時に対する疾患時の質量比は{Y4Hyp×(非標識4Hyp/標識4Hyp)×(標識Arg/(MSI×非標識Arg))/{Y4Hyp×(非標識4Hyp/標識4Hyp)×(標識Arg/(MSI×非標識Arg))である。測定試料に含まれる標識コラーゲン量が異なるため、各測定試料に添加した4Hyp量と測定試料に添加した標識コラーゲン量MSIモルとは、測定試料毎に異なる。しかしながら、測定試料に添加した標識コラーゲン量と前記標識コラーゲンを構成する4Hyp量との比は一定であるから、Y4Hyp/MSIはいずれの測定試料でも同一である。従って、相対比で評価する場合は、上記(ii)と同様に、{(非標識4Hyp/標識4Hyp)×(標識Arg/非標識Arg)/{(非標識4Hyp/標識4Hyp)×(標識Arg/非標識Arg)を算出し、健常時に対する各測定試料の相異を検出することができる。
以上、本発明のコラーゲン分析方法における相対比の評価を、測定試料に含まれる標識コラーゲン量および測定対象コラーゲン量の一定、不定に区分して説明したが、これに限定されるものではない。例えば、複数の測定試料間で標識コラーゲン量と測定対象コラーゲン量とが等しい上記(i)の態様において、上記(iii)と同様に、{(非標識4Hyp/標識4Hyp)×(標識Arg/非標識Arg)/{(非標識4Hyp/標識4Hyp)×(標識Arg/非標識Arg)を算出してもよい。
(7)細胞内取り込み量の分析
本発明の分析方法を応用して、細胞による標識コラーゲンの取り込み量を定量することができる。従来から、コラーゲンの細胞内取り込み量の測定には放射性同位体ヨウ素標識コラーゲンや蛍光標識コラーゲンが用いられてきた。しかしながら、これらの方法ではコラーゲン全体が均一に標識されず、また標識物の分子量が大きいため物性変化の可能性があり、正確な定量が妨げられる懸念があった。本発明で使用する標識コラーゲンは、標識アミノ酸がコラーゲン配列全体に均一に取り込まれ、かつ標識コラーゲンの物性変化もないことから、正確なコラーゲン細胞内取り込み量の測定を行うことができる。
具体的には、標識コラーゲンを培養系に添加し、取り込まれた標識コラーゲンを細胞ごと酸加水分解した後、標識コラーゲン由来の標識アミノ酸、例えば4Hypを定量する。上記方法によれば、標識コラーゲン由来の標識アミノ酸を定量するため、細胞内で合成された内在性コラーゲンその他、非標識アミノ酸量の影響を排除することができる。
標識コラーゲンは、標識アミノ酸がコラーゲンに均一に取り込まれているため、標識コラーゲンの取り込みと同様にして酵素などで分解されたコラーゲンペプタイドの細胞内取り込み量も測定することができる。
次に実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、これらの実施例は何ら本発明を制限するものではない。
(実施例1)
HEL細胞1.5×10cellsを、13−Lys(Thermo scientific社製)100mg/L、13 15−Arg(Thermo scientific社製)100mg/L、13 15−Pro(Cambridge isotope laboratories社製)200mg/L、アスコルビン酸(Wako社製、商品名「L−アスコルビン酸リン酸エステルマグネシウム塩n水和物」)200μM、透析FBS(Thermo scientific社製、商品名「Dialyzed FBS」)0.5%を含有する安定同位体標識用DMEM(Thermo scientific社製、商品名「SILAC DMEM Media」)で培養した(100mm dish)。3日ごとに培地を回収し、上記組成の培地で交換した。
培養開始後3日目および6日目に得られた培養上清に0.1NとなるようにHClを加えて酸性とし、0.1mg/mLとなるようアガロース固定化ペプシン(SIGMA社製、商品名「Pepsin−Agarose」)を加え4℃で16時間消化反応を行った。反応後に遠心分離してアガロース固定化ペプシンを分離し、上清を得た。この上清に1MとなるようにNaClを添加し、氷上で3時間静置した後、遠心分離を行い、沈殿を分取した。
分取した沈殿を1M NaClと95%エタノールとで洗浄し、最後に5mM酢酸250μlで溶解したものを標識コラーゲンとした。
培養1〜3日および4〜6日で産生された標識コラーゲンにおける安定同位体標識Proおよび4Hypの置換率を後記する置換率の測定方法によって測定した。標識コラーゲンは、3個の培地を使用して生産した。安定同位体標識Pro置換率の結果を図1に安定同位体標識4Hyp置換率の結果を図2に示す。なお、図1および図2において、横軸の数値は安定同位体標識Pro添加量(mg/L)を示す。また、培養4〜6日で産生された標識コラーゲンの安定同位体標識Pro、4Hyp、3Hyp、Lys、Hyl、GHL、GGHLおよびArgの置換率を同様に測定した。結果を表1に示す。表1に示すように、実施例1の標識コラーゲンは、コラーゲンを構成するPro、4Hyp、3Hyp、Lys、Hyl、GHL、GGHLおよびArgの全てが、それぞれ標識アミノ酸で90%以上置換されていた。
(実施例2)
実施例1の培地に、更に300mg/LとなるようにGlnを添加した以外は実施例1と同様にして標識コラーゲンを得たのち、安定同位体標識Proおよび4Hypの置換率を測定した。結果を図1、図2に示す。
(実施例3)
培地に添加する13 15−Pro量を200mg/Lから50mg/Lに変更した以外は実施例1と同様にして標識コラーゲンを得たのち、安定同位体標識Proおよび4Hypの置換率を測定した。結果を図1、図2に示す。
(実施例4)
実施例3の培地に、更に300mg/LとなるようにGlnを添加した以外は実施例1と同様にして標識コラーゲンを得たのち、安定同位体標識Proおよび4Hypの置換率を測定した。結果を図1、図2に示す。
(実施例5)
培地に添加する13 15−Pro量を200mg/Lから350mg/Lに変更した以外は実施例1と同様にして標識コラーゲンを得たのち、安定同位体標識Proおよび4Hypの置換率を測定した。結果を図1、図2に示す。
(実施例6)
実施例5の培地に、更に300mg/LとなるようにGlnを添加した以外は実施例1と同様にして標識コラーゲンを得たのち、安定同位体標識Proおよび4Hypの置換率を測定した。結果を図1、図2に示す。
(結果)
図1および図2に示すように、13 15−Proを200mg/L添加し、Glnは非添加であるときPro、4Hypの標識アミノ酸による置換率に優れた。
(実施例7)
実施例1で得た標識コラーゲンについて、SDS変性ポリアクリルアミドゲル電気泳動を行った。結果を図3に示す。コラーゲンI型とコラーゲンIII型とが混在することが判明した。なお、参考のため、ヒトコラーゲンα1(I)およびヒトコラーゲンα2(I)のアミノ酸配列をそれぞれ配列番号12、配列番号13に示す。これは米国国立生物工学情報センター(NCBI)において配列番号NP_000079.2、NP_000080.2として登録されている。
(実施例8)
実施例1と同様の方法で培養4〜6日以上の培地から標識コラーゲンを調製し、その全コラーゲン量を定量した。標識コラーゲン80μlを遠心濃縮で乾固させた後、6N HCl(ガス)、110℃、20時間の条件で酸加水分解を行った。これを20mM HClに溶解して、半量を高速アミノ酸分析計L−8900(日立)で、陽イオン交換カラム、ニンヒドリン−ポストカラム法を用いて分析を行い、各アミノ酸のピーク面積を測定した。前記ピーク面積と既知量の標品のピーク面積との比から各アミノ酸の含有量を定量し、その総和を標識コラーゲン量とした。標識コラーゲンに含まれるアミノ酸のモル濃度、含有量および前記モル濃度から換算した各アミノ酸の1000残基当りの残基数を表2に示す。アミノ酸総量分析による上記標識コラーゲンのコラーゲン濃度は、209.3μg/mlであった。
(実施例9)
実施例8で得た標識コラーゲンの型別定量を行った。
標識コラーゲン40μlに、ヒト胎盤由来I型コラーゲンを5μgおよびIII型コラーゲンを5μg添加し、これに100mMとなるようにTris−HCl(pH7.6)、1mMとなるようにCaClを添加し、60℃、30分間変性処理を行った。その後、タンパク質量の1/100量のトリプシン(Promega社製、商品名「Sequencing Grade Modified Trypsin,Frozen」)を加え、37℃、16時間、酵素分解を行った。得られた分解液にギ酸を1%となるように添加して分析液とした。
上記分析液について後記する置換率測定の項のペプチド分析のLC/MS条件によりピーク面積を測定した。ペプチドは、コラーゲンI型α1鎖およびコラーゲンI型α2鎖に含まれる配列GVQGPOGPAGPR、GVVGLOGQR、EGPVGLOGIDGRおよびGPSGPQGIRのペプチドを対象とした。LC/MS分析におけるこれらペプチドのMRM(Multiple Reaction Monitoring)チャンネルを表3に示す。各ペプチドについて、ヒト胎盤由来I型コラーゲン構成ペプチドに対する標識コラーゲン構成ペプチドのピーク面積比を求めた。上記4ペプチド、各2チャンネル、合計8チャンネルのピーク面積比の平均を算出し、それにヒト胎盤由来I型コラーゲン量として5μgを乗じ、1.394×(5(μg)/40(μl))×1000=174.3(μg/ml)から、標識コラーゲンに含まれる標識コラーゲンI型の濃度を算出した。結果を表4に示す。
上記と同様にして、コラーゲンIII型α1鎖に含まれるペプチド配列GLAGPOGMOGPRおよびGROGLOGAAGARを指標としてヒト胎盤由来III型コラーゲン構成ペプチドに対する標識コラーゲン由来標識ペプチドのピーク面積比を求めた。上記2ペプチド、各2チャンネル、合計4チャンネルで測定したピーク面積比の平均を算出し、それにヒト胎盤由来III型コラーゲン量として5μgを乗じ、0.153×(5(μg)/40(μl))×1000=19.1(μg/ml)から、標識コラーゲンに含まれる標識コラーゲンIII型の濃度を算出した。結果を表4に示す。実施例8で得た標識コラーゲンは、標識コラーゲンI型を174.3μg/ml、標識コラーゲンIII型を19.1μg/ml含むものであった。
(実施例10)
実施例8で調製した標識コラーゲンを用いてラット皮膚から抽出したコラーゲン(以下、ラット皮膚コラーゲンとも称する。)の全コラーゲン量定量(実施例10)、型別コラーゲン定量(実施例11)を行い、その定量精度を確認した。まず、測定対象物であるラット皮膚コラーゲンの濃度を全アミノ酸量から算出しておき、その理論量20μgに実施例8で調製した標識コラーゲン20μlを添加して測定試料とした。9/10量を後述する型別コラーゲン定量用の試料とし、残りの測定試料を遠心濃縮で乾固させた後、6N HCl(ガス)、110℃の条件で、20時間、酸加水分解を行った。この酸加水分解物を、50%アセトニトリルに酢酸を0.1%となるように、酢酸アンモニウムを5mMとなるように添加した溶解液に溶解し、後記する置換率の測定方法の項におけるアミノ酸分析のLC/MS条件で分析を行った。
ラットは2個体を使用し、コラーゲンに特有の4Hypを指標として、標識コラーゲン由来4Hypに対するラット皮膚コラーゲン由来4Hypのピーク面積比を測定した。平均ピーク面積比は5.14であった。測定試料に使用した標識コラーゲンのコラーゲン含有量は実施例8より209.3(μg/ml)である。従って、測定試料に含まれる標識コラーゲンは209.3(μg/ml)×20(μl)となる。前記測定試料に含まれるラット皮膚コラーゲン量は、これに先の質量比を乗じ、5.14×0.2093(μg/μl)×20(μl)=21.5(μg)と算出された。全アミノ酸量から算出したコラーゲン量20μgと非常に近似する値となり、その定量精度が確認された。ラット皮膚コラーゲンの全コラーゲン濃度定量の結果を表5に示す。
(実施例11)
実施例8で調製した標識コラーゲンを用いて、実施例10で分析したラット皮膚コラーゲンの型別コラーゲン濃度を測定した。実施例10で使用したラット皮膚コラーゲン20μgに実施例8で調製した標識コラーゲン20μlを添加した測定試料の9/10量に100mMとなるようにTris−HCl(pH7.6)、1mMとなるようにCaClを添加し、60℃、30分間変性処理を行った。その後、タンパク質量の1/100量のトリプシン(Promega社製、商品名「Sequencing Grade Modified Trypsin,Frozen」)を加え、37℃、16時間、酵素分解を行った。得られた分解液にギ酸を1%となるように添加して分析液とした。
この分析液について後記する置換率測定の項のペプチド分析のLC/MS条件により分析を行った。表3に示すコラーゲンI型α1鎖およびコラーゲンI型α2鎖に含まれる4ペプチド、各2チャンネル、合計8チャンネルについて、標識コラーゲンI型由来ペプチドのピーク面積に対するラット皮膚コラーゲンI型由来ペプチドのピーク面積比を測定した。ラットは2個体を使用し、測定値の平均ピーク面積比は4.96であった。また、上記と同様にして、表3に示すコラーゲンIII型α1鎖に含まれる2ペプチドについて、各2チャンネル、合計4チャンネルで、標識コラーゲンIII型由来ペプチドのピーク面積に対するラット皮膚コラーゲンIII型由来ペプチドのピーク面積比を測定した。ラットは2個体を使用し、平均ピーク面積比は12.98であった。
実施例9に示すように標識コラーゲンは、コラーゲンI型を174.3μg/ml、コラーゲンIII型を19.1μg/ml含むものである。標識コラーゲン由来I型ペプチドに対する測定対象コラーゲン由来I型ペプチドのピーク面積比は4.96であるから、測定試料に含まれる測定対象コラーゲン量は、4.96×0.1743(μg/μl)×20(μl)=17.3(μg)と定量された。同様に、III型は、12.98×0.0191(μg/μl)×20(μl)=5.0μgと定量され、I型、III型コラーゲンを合計すると、22.3μgとなった。全アミノ酸量から算出したコラーゲン量20μgと非常に近似する値となり、その定量精度が確認された。結果を表5に示す。
(実施例12)
ラット皮膚コラーゲンに代えてラット骨から抽出したコラーゲンおよびラット尻尾腱から抽出したコラーゲンについて実施例10および実施例11と同様に操作して、全コラーゲン量、型別コラーゲン量を定量した。結果を表5に示す。各組織由来コラーゲンにおける、全コラーゲン定量、型別コラーゲン定量全てで、その算出コラーゲン量は、全アミノ酸量で規定されたコラーゲン量20μgと非常に近似する結果となり、その定量精度が確認された。また、ラット皮膚、骨、尻尾腱由来コラーゲンのI型とIII型との混合比を図4に示す。
(実施例13)
実施例1で得た培養4〜6日の3培地由来の標識コラーゲンを等量ずつ合一して標識コラーゲンを調製した。これを用いて、ラット皮膚、骨、尻尾腱から抽出したコラーゲンを測定対象コラーゲンとし、翻訳後修飾アミノ酸濃度を定量し、および1000アミノ酸残基当りの各アミノ酸残基数を定量した。
ラット皮膚、骨、尻尾腱からコラーゲンを分取した。それぞれの試料10μgに標識コラーゲン10μlを添加し、そのうち1/10量を分取して測定試料とした。この測定試料を遠心濃縮で乾固させた後、6N HCl(ガス)、110℃、20時間の条件で酸加水分解を行った。酸加水分解物による乾固物に、50%アセトニトリルに酢酸を0.1%となるように、酢酸アンモニウムを5mMとなるように添加した溶解液に溶解して、後記する置換率の測定方法におけるアミノ酸分析のLC/MS条件により、ピーク面積を基準として、Pro、3Hyp、4Hyp、Lys、HylおよびArgについて、標識コラーゲン構成アミノ酸に対する測定対象コラーゲン構成アミノ酸との質量比を測定した。
また、上記測定試料の残り9/10量に2Nとなるように水酸化ナトリウム溶液を添加し、110℃、20時間、アルカリ加水分解を行った。得られたアルカリ加水分解物を冷30%酢酸で中和した後、陽イオン交換カラム(Waters社、商品名「OASIS MCX」)で脱塩し、その溶出液を遠心濃縮により乾固した。上記アルカリ加水分解による乾固物に50%アセトニトリルに酢酸を0.1%となるように、酢酸アンモニウムを5mMとなるように添加した溶解液に溶解して、後記する置換率の測定方法におけるアミノ酸分析のLC/MS条件で、Hyl、GHLおよびGGHLについて、標識コラーゲン構成アミノ酸に対する測定対象コラーゲン構成アミノ酸との質量比を測定した。
ラット皮膚、骨、尻尾腱由来のコラーゲンは、3個体のラットからそれぞれ抽出したコラーゲンを使用し、前記質量比は3個体の平均値である。皮膚コラーゲンにおける標識コラーゲン由来Proに対する測定対象コラーゲン由来Proの質量比は7.402であり、Argの同質量比は7.766であった。Argの質量比は、標識コラーゲン量に対するラット皮膚コラーゲン量に相当する。よって、ラット皮膚コラーゲン1モル当りのPro質量比は7.402/7.766となる。標識コラーゲンを構成する安定同位体標識Proの1000アミノ酸残基当りの残基数は、表1より104.8であるから、ラット皮膚コラーゲンにおける1000アミノ酸残基当りのPro残基数は、(7.402/7.766)×104.8=99.9となる。同様にして、ラット皮膚、骨、尻尾腱から抽出したコラーゲンのPro、3Hyp、4Hyp、Lys、Hyl、GHLおよびGGHLの1000アミノ酸残基あたりの残基数を測定した。これらの結果および文献値を表6に示す。なお、表6において、Hylはアルカリ加水分解試料のHyl測定値である。また、total Hylは、HylとGHLおよびGGHLの糖鎖が外れたもの総和であり、塩酸加水分解試料のHyl測定値である。酸加水分解ではGHL、GGHLの糖鎖が外れてHylとなるからである。
(実施例14)
実施例13で調製した標識コラーゲンを用いて、ラット皮膚、骨、尻尾腱から抽出したコラーゲンを構成するアミノ酸の相対比を分析した。
まず、ラット皮膚、骨、尻尾腱からコラーゲンを分取した。それぞれの試料10μgに実施例13で調製した標識コラーゲン10μlを添加し、そのうち1/10量を分取して測定試料とした。この測定試料を遠心濃縮で乾固させた後、6N HCl(ガス)、110℃、20時間の条件で酸加水分解を行った。また、上記測定試料の残り9/10量に2Nとなるように水酸化ナトリウム溶液を添加し、110℃、20時間、アルカリ加水分解を行った。得られたアルカリ加水分解物を冷30%酢酸で中和した後、陽イオン交換カラム(Waters社、商品「OASIS MCX」)で脱塩し、その溶出液を遠心濃縮により乾固した。
上記酸加水分解物とアルカリ加水分解による乾固物とをそれぞれ、50%アセトニトリルに酢酸を0.1%となるように、酢酸アンモニウムを5mMとなるように添加した溶解液に溶解して、後記する置換率の測定方法におけるアミノ酸分析のLC/MS条件で、各測定試料のPro、3Hyp、4Hyp、Lys、Hyl、GHL、GGHLおよびArgについて、標識コラーゲン由来成分に対する測定対象コラーゲン由来成分の質量比(測定対象コラーゲン構成アミノ酸/標識コラーゲン構成アミノ酸)(以下、AMI質量比とも称する。)を測定した。次いで、各測定試料について、標識コラーゲン由来Argに対する測定対象コラーゲン由来Argの質量比(以下、Arg質量比とも称する。)を求め、各アミノ酸についてArg質量比に対するAMI質量比(AMI質量比/Arg質量比)を算出した。なお、ラット皮膚、骨、尻尾腱由来のコラーゲンは、3個体のラットからそれぞれ抽出したコラーゲンを使用し、上記質量比は3個体の平均値である。
ラット皮膚コラーゲン由来成分の(AMI質量比/Arg質量比)に対する骨コラーゲン由来成分および尻尾腱コラーゲン由来成分の(AMI質量比/Arg質量比)を百分率で求めた。結果を表7および図5に示す。なお、表7および図5において、Hylはアルカリ加水分解試料のHyl測定値であり、total Hylは、HylとGHLおよびGGHLの糖鎖が外れたものの総和であり、塩酸加水分解試料のHyl測定値である。
表7および図5に示すように、尻尾腱由来コラーゲンは3Hyp量が皮膚由来の3Hypと比較して441%と高く、一方GHLは33.9%、GGHLは21.6%と低いという特徴が明瞭に検出された。表6に示すように、表7および図5に示される特徴は、3Hyp値に関しては非特許文献5の値と、GHLおよびGGHL値は非特許文献6の値と一致した。
(実施例15)
実施例13で調製した標識コラーゲンを用いて、ラット皮膚コラーゲンの酸加水分解による4Hyp量の経時変化を測定した。
ラット皮膚コラーゲン1μgに実施例13で調製した標識コラーゲン1μlを添加して測定試料とした。この測定試料を遠心濃縮で乾固させた後、6N HCl(ガス)、110℃の条件で、1時間、酸加水分解を行った。この酸加水分解物を、50%アセトニトリルに酢酸を0.1%となるように、酢酸アンモニウムを5mMとなるように添加した溶解液に溶解し、置換率の測定条件に記載したアミノ酸分析のLC/MS条件で、標識コラーゲン由来4Hypのピーク面積と、測定対象コラーゲン由来4Hypのピーク面積、および標識コラーゲン由来4Hypに対する測定対象コラーゲン由来4Hypのピーク面積比をそれぞれ測定した。同様の操作を加水分解後2、4、8、16、24時間の測定試料について行った。
加水分解1時間後の標識コラーゲン由来4Hypに対する測定対象コラーゲン由来4Hypのピーク面積比(非標識4Hyp/標識4Hyp)に対する、加水分解後2、4、8、16、24時間のピーク面積比の百分率を算出した。結果を図6の棒グラフに示す。
一方、加水分解1時間の測定対象コラーゲン由来4Hypのピーク面積(非標識4Hyp)に対する加水分解後2、4、8、16、24時間の測定対象コラーゲン由来4Hypのピーク面積の百分率を算出した。結果を図6の折れ線グラフに示す。同様にして、Lysの翻訳後修飾アミノ酸であるHylについても測定した。
図6の折れ線グラフに示すように、測定対象コラーゲン由来4Hypは、加水分解の経過に伴い加水分解2時間以降、経時的に増加することが示された。なお、図6の棒グラフに示すように、標識コラーゲン由来標識4Hypに対する測定対象コラーゲン由来4Hypのピーク面積比は94.8〜100%の範囲にあり略均一であった。標識コラーゲンと測定対象コラーゲンとは同程度に加水分解されることが示された。各加水分解経過による測定対象コラーゲン由来Hylの変化、および標識コラーゲン由来Hylに対する測定対象コラーゲン由来Hylのピーク面積比も上記した4Hypと同様の傾向を示した(図示せず)。
図6に示すように、加水分解のいずれの時期においてもピーク面積比が略同一であるため、加水分解1時間後のピーク面積比に添加した標識コラーゲンの質量を乗ずることでコラーゲンを定量することができ、定量時間を短縮することができる。
(実施例16)
測定試料に含まれるコラーゲン以外の成分が測定値に与える影響を評価した。
PBS溶液(SIGMA社製、商品名「Dulbecco’s Phosphate Buffered Saline」)を希釈して、0×PBS、0.1×PBS、0.2×PBS、0.5×PBS、1×PBS溶液を作製し、ここに4Hyp標品(SIGMA社製、商品名「trans−4−Hydroxy−L−proline」)を0.5nmolずつ添加し、さらに実施例13で調製した標識コラーゲン4μlをあらかじめ酸加水分解したもののうち1/50量を各測定試料に添加した。これを下記条件によりLC/MS分析を行い、標識コラーゲン由来標識4Hypおよび4Hyp標品のピーク面積を測定し、標識コラーゲン由来標識4Hypに対する4Hyp標品のピーク面積比を算出した。PBS無添加時のピーク面積比を100%とした場合のPBS添加試料のピーク面積比を図7の棒グラフに示した。
また、PBS無添加系の4Hyp標品ピーク面積を100%とした場合のPBS添加試料の4Hyp標品の各測定試料のピーク面積を図7の折れ線グラフに示す。
図7の棒グラフに示すように、標識コラーゲン由来標識4Hypに対する4Hyp標品のピーク面積比は、各測定試料間でいずれも99.2〜105.9%と略一定していた。一方、いずれの系も、含まれる4Hyp標品の濃度が同じであるにも関わらず、図7の折れ線グラフに示すように、夾雑物として含ませたPBSの濃度が高くなるにつれ4Hypピーク面積値が急激に低下した。すなわち、測定対象物質のピーク面積は測定試料に含まれる成分によって測定値が影響を受けやすいが、測定対象コラーゲン由来成分と標識コラーゲン由来成分との質量比は、このような影響を相殺しうることが示された。
LC/MS分析測定条件
高速液体クロマトグラフ:1200Series(Agilent Technologies)、
質量分析装置:3200QTRAP(AB Sciex)、
分析カラム:Discovery HS F5 5μm, 4.6mmi.d.×250mm(SUPELCO)、
カラム温度:25℃
移動相:A液;0.1%ギ酸、B液;100%アセトニトリル、
グラジエント条件:
0〜7.5分:A液98%;B液2%、
7.5〜20分:A液98〜10%;B液2〜90%、
20.1〜25分:A液10%;B液90%、
25.1〜30分:A液98%;B液2%、
流速:0.6mL/min、
質量分析条件:
イオン化:ESI、ポジティブ、
分析モード:Multiple Reaction Monitoring(MRM)モード、
イオンスプレー電圧:3kV、
イオンソース温度:600℃
(実施例17)
コラーゲンペプチド摂取後の血中遊離型4Hyp、ペプチド型4Hypおよび全4Hypの定量を行った。
(1)魚鱗由来コラーゲンペプチド粉末25gを溶解した水100mlを健常者1名に空腹時に経口摂取させ、摂取前(0分)、摂取後30分、60分、120分、240分、360分に採血した。採取した血液はヘパリン処理して血漿を調製し、分析時まで−80℃で保管した。
(2)実施例13で調製した標識コラーゲン50μlを6N HCl(ガス)、110℃、20時間の条件で加水分解し、これを蒸留水1000μlに溶解して標識コラーゲン酸加水分解溶液を調製した。この溶液10μlを血漿20μlに添加し、更に90μlのエタノールを添加した。次いで混合液を遠心し上清を回収した。得られた上清10μlを、50%アセトニトリルにギ酸を0.1%含有させた測定溶媒190μlに加え、遊離型4Hyp測定試料とした。一方、前記上清50μlを遠心濃縮して乾固させ、6N HCl(ガス)、110℃、20時間の条件で酸加水分解を行い、得られた加水分解物を前記測定溶媒200μlに溶解し、全4Hyp測定用試料とした。更に、4Hyp標品を0.01、0.1、1および10nmol/mL含有する溶液100μlに前記標識コラーゲン酸加水分解溶液をそれぞれ1μl添加し、検量線用試料とした。これら各測定試料および検量線用試料について、後記する置換率の測定方法の項で記載するLC/MS条件で測定対象血漿由来4Hyp、標識コラーゲン由来標識4Hyp、標品4Hypの各ピーク面積を測定した。
検量線用試料に基づいて、4Hyp標品ピーク面積/標識4Hypピーク面積比と4Hyp濃度との関係を示す検量線を作成した。遊離型4Hyp測定試料の非標識4Hypピーク面積/標識4Hypピーク面積比を前記検量線で換算して、遊離型4Hyp濃度を求めた。同様にして、全4Hyp測定用試料に含まれる非標識4Hypピーク面積/標識4Hypピーク面積比から全4Hyp濃度を求め、全4Hyp濃度と遊離型4Hyp濃度との差を4Hyp含有ペプチド濃度とした。コラーゲンペプチド摂取後の血漿液量あたりの遊離型4Hyp、全4Hyp、4Hyp含有ペプチドの各濃度の経時変化を図8に示す。
一方、比較のため、検量線用試料に基づいて、4Hyp標品ピーク面積と4Hyp濃度との関係を示す検量線を作成した。遊離型4Hyp測定試料の非標識4Hypのピーク面積を前記検量線で換算して、遊離型4Hyp濃度を求めた。同様にして、全4Hyp測定用試料の非標識4Hypのピーク面積から全4Hyp濃度を求め、全4Hyp濃度と遊離型4Hyp濃度との差を4Hyp含有ペプチド濃度とした。このように求めたコラーゲンペプチド摂取後の血漿液量あたりの遊離型4Hyp、全4Hyp、4Hyp含有ペプチドの各濃度の経時変化を図9に示す。
図9に示すように、標識コラーゲン由来の4Hypと測定対象血漿由来の4Hypとの質量比を用いない場合は、測定試料に含まれる4Hyp量が0以下として算出される場合が存在した。血中に存在する種々のマトリックス成分が、LC/MS測定の際のイオン化に影響を与え、測定誤差を生ずるためである。しかしながら、図8に示すように、非標識4Hyp/標識4Hyp質量比に基づいて4Hypを算出すると、マトリックス成分による測定誤差が相殺され、0以下の測定値が存在せず、かつ定量値が約2倍に増加され、顕著なイオン化抑制を補正しうることが示された。
(3)実施例13で調製した標識コラーゲン150μlに100mMとなるように重炭酸アンモニウムを添加し、タンパク質量の1/20量のトリプシン(SIGMA社製、商品名「Trypsin from bovine pancreas」)を加えて37℃、16時間、酵素分解を行った。100℃で5分間加熱してトリプシンを失活させ遠心濃縮で乾固させた後、透析FBS50μlを加え37℃で24時間反応させた。これに150μlのエタノールを添加した後遠心し、上清を遠心濃縮で乾固させた後、蒸留水100μlに溶解し、これを安定同位体標識オリゴペプチド溶液とした。
上記(1)で得た各血漿10μlに安定同位体標識オリゴペプチド溶液10μlを添加し、60μlのエタノールを添加した後遠心し上清を得た。この上清60μlを遠心濃縮で乾固させた後、1%ギ酸50μlに溶解し、オリゴペプチド測定試料とした。
また、合成オリゴペプチドProHyp、GluHyp、LeuHyp、PheHyp、GlyProHyp、AlaHypGly、ProHypGlyおよびSerHypGlyの0.1、0.2、0.5および1nmol/mL溶液50μlに前記安定同位体標識オリゴペプチド溶液4μlを添加し、検量線用試料とした。これら測定試料および検量線用試料について、下記LC/MS分析条件で測定対象血漿由来オリゴペプチド、安定同位体標識オリゴペプチド、合成オリゴペプチドの各ピーク面積を測定した。
検量線用試料に基づいて、合成オリゴペプチドピーク面積/標識オリゴペプチドピーク面積比とオリゴペプチド濃度との関係を示す検量線を作成した。測定試料の非標識オリゴペプチドピーク面積/標識オリゴペプチドピーク面積比を前記検量線で換算して、各オリゴペプチド濃度を求めた。コラーゲンペプチド摂取後の血漿液量あたりの各オリゴペプチド濃度の経時変化を図10に示す。なお、4Hyp含有ペプチド全量の値は前記(2)で算出し、図8で示したものを用いた。
実施例13の標識コラーゲンの酵素分解物を内部標準として用いることで、含まれるマトリックス成分の影響を排除して正確な測定値を求めることができた。実際に、図10に示すように、上記(3)で得た8ペプチドの合計量と上記(2)で得た4Hyp含有ペプチド全量との値は非常に良く一致した。
(4)LC/MS分析測定条件
高速液体クロマトグラフ:1200Series(Agilent Technologies)、
質量分析装置:3200QTRAP(AB Sciex)、
分析カラム:Synergi Hydro-RP 4μm, 2.0mmi.d.×250mm(Phenomenex)、
カラム温度:40℃
移動相:A液;0.1%ギ酸、B液;100%アセトニトリル、
グラジエント条件:
0〜7.5分:A液100%;B液0%、
7.5〜20分:A液100〜50%;B液0〜50%、
20.1〜25分:A液20%;B液80%、
25.1〜30分:A液100%;B液0%、
流速:0.25mL/min、
質量分析条件:
イオン化:ESI、ポジティブ、
分析モード:MRMモード、
イオンスプレー電圧:4kV、
イオンソース温度:700℃
(実施例18)
非特許文献4に従い、48ウェルプレートの3ウェルに、それぞれ10%FBS(Intergen社製)含有DMEM(SIGMA社製)に分散したHEL細胞2×10cellsを播種し、一晩経過後に20mM HEPES、15mg/mL BSAを含むDMEMからなるアッセイバッファー150μlに置換し30分間インキュベートした。第1のウェルには実施例13で調製した標識コラーゲン0.75μgを添加してさらに5時間インキュベートした。
第2のウェルには以降に取り込まれたコラーゲンの分解を抑えるためリソソームシステインプロテアーゼ阻害剤(Merck Millipore社製 E−64d)を10μM添加して30分間インキュベートした後、第1のウェルと同様に標識コラーゲン0.75μgを添加してさらに5時間インキュベートした。
第3のウェルはコントロールとして標識コラーゲンを添加しないで、上記と同様に5時間インキュベートした。
それぞれの細胞をトリプシン(SIGMA社製、商品名「Trypsin−EDTA solution」)を使用して回収し、遠心濃縮で乾固させた後、6N HCl(ガス)、110℃、20時間の条件で酸加水分解を行った。得られた加水分解物を50%アセトニトリルに0.1%となるように酢酸、5mMとなるように酢酸アンモニウムを添加した溶解液に溶解し、置換率の測定方法に記載するLC/MS分析のアミノ酸測定条件で標識コラーゲン由来4Hyp量を測定した。0.75μgの標識コラーゲンを上記と同様に塩酸で加水分解して標識コラーゲン由来4Hypのピーク面積を測定し、この値に対する上記測定値の百分率を算出し、取り込み率とした。結果を図11に示す。培地にリソソームシステインプロテアーゼ阻害剤(E−64d)を添加することで、細胞内の標識コラーゲン由来標識4Hyp量が増加することが観察された。
(実施例19)
以下の方法により、安定同位体標識Proで置換された標識コラーゲンIIを製造した。
RCS細胞1.5×10cellsを、Lys(Thermo scientific社製)100mg/L、Arg(Thermo scientific社製)100mg/L、13 15−Pro(Cambridge isotope laboratories社製)200mg/L、アスコルビン酸(Wako社製、商品名「L−アスコルビン酸りん酸エステルマグネシウム塩n水和物」)200μM、透析FBS(Thermo scientific社製、商品名「Dialyzed FBS」)10%を含有する安定同位体標識用DMEM(Thermo scientific社製、商品名「SILAC DMEM Media」)で培養した(100 mm dish)。3日ごとに上記組成の培地で交換した。
培地上の細胞および沈着コラーゲンに、0.1mg/mLペプシン(SIGMA社製)(0.1N HCl)を添加し、4℃で16時間消化反応を行った。このペプシン消化溶液に2MとなるようにNaClを添加し、氷上で3時間静置してから遠心分離を行った。沈殿を2M NaClと95%エタノールで洗浄し、最後に5mM酢酸で溶解したものを標識コラーゲンIIとした。
(実施例20)
実施例19で得た標識コラーゲンIIについて、SDS変性ポリアクリルアミドゲル電気泳動を行った。結果を図12に示す。コラーゲンII型、コラーゲンIX型およびコラーゲンXI型とが混在することが判明した。
(標識アミノ酸・標識ペプチドの置換率の測定方法)
本発明において、標識コラーゲンにおける標識アミノ酸、標識ペプチドの置換率の測定は以下の方法に従った。なお、測定対象がペプチドである場合は、下記方法で、標識コラーゲン構成ペプチドと測定対象コラーゲン構成ペプチドの質量比を測定した。
(1)試料の調製
(i)酸加水分解による安定同位体標識Pro、3Hyp、4Hyp、Lys、HylおよびArgの置換率の測定方法
5mM酢酸に溶解した標識コラーゲン10μlを遠心濃縮で乾固させた後、6N HCl(ガス)、温度110℃で20時間加水分解した。この塩酸加水分解物を50%アセトニトリルに酢酸を0.1%となるように、酢酸アンモニウムを5mMとなるように添加した溶解液に溶解し、下記LC/MS分析測定条件にて質量分析を行い、各アミノ酸のピーク面積を測定した。ピーク面積を基準として標識アミノ酸と非標識アミノ酸との総和に対する標識アミノ酸の百分率(標識アミノ酸×100/(標識アミノ酸+非標識アミノ酸))を算出し、標識アミノ酸の置換率(モル%)とした。上記酸加水分解試料により、Pro、3Hyp、4Hyp、Lys、HylおよびArgの置換率を算出した。なお、Hylは、GHLおよびGGHLの糖鎖が外れてなるHylを含むため、これらを含む総Hylの値となる。
(ii)アルカリ加水分解による安定同位体標識Hyl、GHLおよびGGHLの置換率の測定方法
5mM酢酸に溶解した標識コラーゲン50μlに6N HCl(ガス)に代えて2Nとなるように水酸化ナトリウムを添加した後、上記と同様にして加水分解を行った。得られたアルカリ加水分解物を冷30%酢酸で中和した後、陽イオン交換カラム(Waters社、商品名「OASIS MCX」)で脱塩し、その溶出液を遠心濃縮により乾固したのち、50%アセトニトリルに酢酸を0.1%となるように、酢酸アンモニウムを5mMとなるように添加した溶解液に溶解し、下記LC/MS分析測定条件にて質量分析を行い、各アミノ酸のピーク面積を基準として置換率(モル%)を算出した。上記アルカリ加水分解試料により、GHLおよびGGHLの置換率を算出した。
(iii)安定同位体標識ペプチドの置換率の測定方法
5mM酢酸に溶解した標識コラーゲンと測定対象コラーゲンに、タンパク質量の1/100量のトリプシン(Promega社製、商品名「Sequencing Grade Modified Trypsin,Frozen」)を加え、37℃、16時間、酵素分解を行った。得られた分解液にギ酸を1%となるように添加した後、下記LC/MS分析測定条件にてペプチドのピーク面積を測定した。
(2)LC/MS分析測定条件
(i)アミノ酸分析
高速液体クロマトグラフ:1200Series(Agilent Technologies)、
質量分析装置:3200QTRAP(AB Sciex)、
分析カラム:ZIC-HILIC 3.5μm, 2.1mmi.d.×150mm(Merck SeQuant)、
カラム温度:25℃
移動相:A液;0.1%酢酸、5 mM酢酸アンモニウム、B液;100%アセトニトリル、
グラジエント条件:
0〜5分:A液10%;B液90%、
5〜20分:A液10〜95%;B液90〜5%、
20〜25分:A液95%;B液5%、
25.1〜30分:A液10%;B液90%
流速:0.2mL/min、
質量分析条件:
イオン化:ESI、ポジティブ、
分析モード:MRMモード、
イオンスプレー電圧:3kV、
イオンソース温度:600℃
(ii)ペプチド分析
高速液体クロマトグラフ:1200Series(Agilent Technologies)、
質量分析装置:3200QTRAP(AB Sciex)、
分析カラム:Ascentis Express C18 5μm, 2.1mmi.d.×150mm(SUPELCO)、
カラム温度:25℃
移動相:A液;0.1%ギ酸、B液;100%アセトニトリル、
グラジエント条件:
0〜2分:A液98%;B液2%、
2.1〜6分:A液98〜40%;B液2〜60%、
6.1〜8分:A液10%;B液90%、
8.1〜10分:A液98%;B液2%
流速:0.5mL/min、
質量分析条件:
イオン化:ESI、ポジティブ、
分析モード:(MRM)モード、
イオンスプレー電圧:4kV、
イオンソース温度:700℃

本発明によれば、安定同位体標識コラーゲンを使用し、コラーゲンの翻訳後修飾アミノ酸量、全コラーゲン量、および型別コラーゲン量などを定量することができ、コラーゲン関連疾患に対する診断、薬効評価などに用いることができ有用である。

Claims (2)

  1. コラーゲンを構成するPro、Lys、Arg、Leu、Met、Phe、Thr、Val、IleおよびHisからなる群から選択される少なくとも1以上のアミノ酸が対応する安定同位体標識アミノ酸で90モル%以上置換された安定同位体標識コラーゲン前駆体を翻訳後修飾してなる安定同位体標識コラーゲンを使用するコラーゲンの分析方法であって、
    前記安定同位体標識コラーゲンと、測定対象コラーゲンまたはコラーゲン由来アミノ酸もしくはペプチド成分との混合物を測定試料とし、
    前記コラーゲン由来ペプチド成分、または前記測定対象コラーゲンを分解して得たペプチドを測定対象ペプチドとし、前記測定対象ペプチドの質量と、前記安定同位体標識コラーゲンを分解して得た、前記測定対象ペプチドに対応する前記安定同位体標識コラーゲン由来ペプチドの質量との質量比を測定するペプチド質量比測定工程、および/または
    前記コラーゲン由来アミノ酸、または前記測定対象コラーゲンを分解して得たアミノ酸を測定対象アミノ酸とし、前記測定対象アミノ酸の質量と、前記安定同位体標識コラーゲンを分解して得た、前記測定対象アミノ酸に対応する前記安定同位体標識コラーゲン由来のアミノ酸の質量との質量比を測定するアミノ酸質量比測定工程を含み、かつ
    下記(i)〜(iv)
    (i)前記アミノ酸の質量比と前記測定試料に添加した安定同位体標識コラーゲン量とから測定試料に含まれる測定対象コラーゲン量を定量する、
    (ii)前記アミノ酸の質量比と前記測定試料に添加した前記安定同位体標識コラーゲンに由来するアミノ酸量とから測定対象コラーゲン構成アミノ酸量を定量する、
    (iii)前記ペプチドの質量比と前記測定試料に添加した安定同位体標識コラーゲン量とから、測定対象コラーゲンの型別コラーゲン量を定量する、
    (iv)予め作成した前記アミノ酸の質量比または前記ペプチドの質量比の検量線を用いて測定対象コラーゲン由来成分を定量する、
    のいずれかの定量工程を含むことを特徴とする、コラーゲンの分析方法。
  2. コラーゲン産生細胞に、少なくとも安定同位体標識Proを添加して培養する安定同位体標識コラーゲンの製造方法であって、
    Glnを添加せずに前記コラーゲン産生細胞を培養し、
    コラーゲンを構成するProの安定同位体標識Proへの置換率が90モル%以上である安定同位体標識コラーゲンを取得することを特徴とする、安定同位体標識コラーゲンの製造方法。
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